JP4131798B2 - 液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画素電極と共通電極間に電場の強い領域と弱い領域とを形成し、この領域を生じさせる画素電極のストライプ電極部パターンを改良して、白色表示の輝度や透過率を改善した液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在のカラー液晶表示装置としては、隣接画素間でのクロストークがなく、良好な表示画像の実現が可能なことから、アクティブマトリクス型カラー液晶表示装置が主流となっている。このアクティブマトリクス型カラー液晶表示装置は、図14に示すように、透明なガラス材からなる基板51上にマトリクス状にスイッチング素子、例えばアモルファスシリコンを半導体層とした薄膜トランジスタ(TFT)52を設け、このTFT52を覆うようにアクリル材等から構成される青、緑、赤の3色カラーフィルタ層53を形成する複数の着色層53B,53G,53Rが設けられている。このカラーフィルタ層53に夫々スルーホール部54を形成して、このスルーホール部54を介してTFT52と接続される複数のITO等から構成される透明な画素電極55をカラーフィルタ層53上に配置し、更にこの画素電極55面上にポリイミド等から構成される配向膜56を形成したアレイ基板57を有している。
【0003】
このアレイ基板57と対向して配置される対向基板58は、同様に透明なガラス材にて形成された基板59を有し、この基板59のアレイ基板57と対向する対向面上には、ITO等から構成される透明な共通電極60が設けられ、この共通電極60上には、ポリイミド等から構成される配向膜61が設けられている。更に、表示領域の外周部分には、黒色の遮光膜によって形成された額縁部62が設けられ、この額縁部62によって非表示領域を覆い隠すようにしている。
【0004】
また、このアレイ基板57上から対向基板58へ電圧を印加する電極転移材として、銀ペースト(図示せず)等が画面周辺部に配置され、この電極転移材によってアレイ基板57と対向基板58間を電気的に接続するようになされている。
【0005】
このアレイ基板57と対向基板58間は、両基板57,58間に介在されるスペーサ63によって、そのギャップが規定されており、両基板57,58は所定の間隙を持って対向配置されるとともに、その周辺部を熱または紫外線硬化型のアクリル系あるいはエポキシ系の接着剤から構成されるシール材64を介して貼合わされており、この間隙部分には液晶層65が封止されて、液晶パネル(セル)66が構成されている。
【0006】
このスペーサ63は、カラーフィルタ層53を構成する着色層53G,53B,53Rと同じ材料を使用して積層形成することが可能なので、着色層53G,53B,53Rの形成時にスペーサ63を同時に同じ材料を使用して、フォトリソグラフィ法によって作り込むことで、工程の削減が図られている。
【0007】
更に、この液晶パネル66の両外表面には、偏光板67が接着剤によって貼付され、アレイ基板57側の偏光板67の外方には、必要に応じてバックライトもしくは反射板(図示せず)等が配置されて、カラー液晶表示装置を構成している。
【0008】
このように構成されたカラー液晶表示装置は、例えば光源となるバックライトを点灯し、TFT52を駆動することによって画素電極55をスイッチング制御して、画素電極55電圧と対向する共通電極60に供給される電圧との電位差により、各々の画素電極55上の液晶層65を制御して光シャッターの役目を行わせることにより、所定のカラー画像を表示している。
【0009】
このように構成されたカラー液晶表示装置においても、近時の情報量の増加に伴い画像の高精細化や、表示速度の高速化に対する要求が高まっている。この画像の高精細化については、アレイ基板57の構造を微細化することによって対応することが可能であり、また表示速度の高速化については、ネマチック液晶を用いた各種モードの採用や、スメクチック液晶を用いた界面安定型強誘電性液晶モードや反強誘電性液晶モードを採用することで対応するように、検討が進められている。
【0010】
これらの各種表示モードの中でも、従来のTNモードよりも速い応答速度が得られ、また垂直配向のためのラビング処理が不要なVAN(Vertical Aligned Nematic)モードが有望であり、特にマルチドメイン型VANモードは、視野角の補償設計が比較的容易なことから注目されている。
【0011】
通常、マルチドメイン型VANモードを採用する場合には、アレイ基板57だけでなく対向基板58に対しても畝状突起構造を形成したり、対向基板58の共通電極60にスリット等を設けている。このため、アレイ基板57と対向基板58との位置合せを、アライメントマークを用いる等して極めて高い精度で行う必要があり、コストの上昇や信頼性の低下を招くおそれがあった。
【0012】
また、最近のTNモードのカラー液晶表示装置においては、上述のように、アレイ基板57側にカラーフィルタ層53を形成することが行われるようになってきている。このようにアレイ基板57側にカラーフィルタ層53を設けた場合には、アレイ基板57と対向基板58とを貼り合せて液晶パネル66を形成する際に、カラーフィルタ層53を構成する各着色層53G,53B,53Rと画素電極55との位置合せを特に行う必要がないという利点を有している。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従って、このような技術をマルチドメイン型VANモードのカラー液晶表示装置に適用することが考えられるが、従来のマルチドメイン型VANモードのカラー液晶表示装置においては、アレイ基板57と対向基板58とを貼り合せて液晶パネル66を形成する際に、依然として畝状突起やスリットの位置合せを行う必要がある。そのために、マルチドメイン型VANモードのカラー液晶表示装置において、アレイ基板57側にカラーフィルタ層53を形成するようにしても、TNモードのカラー液晶表示装置で得られた位置合せが不要とのメリットを享受することができない。更に、高い光透過率や広い視野角及び応答時間の一層の改善も要望されているところである。
【0014】
本発明は、このような課題に対処するためになされたもので、画素内を夫々ストライプ電極部とスリットからなる複数の区画部分によって構成し、各区画部分内の配向方向が夫々中心点方向から同方向側にずれた方向で互いに直交する方向に設定することによって、これらの不具合を改善した液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基板の主面上に配置された画素電極を有するアレイ基板と、このアレイ基板の主面に対向して配置された共通電極を有する対向基板と、この対向基板とアレイ基板との間に挟持された液晶層とを備えた液晶表示装置において、画素電極と共通電極とに挟まれた画素領域内に少なくとも一方の電極の一画素電極を4区画部分以上の画素部分から構成し、この区画部分を画素電極の中心を通り当該区画部分を等分に区分する中心線に沿うように延在するストライプ電極部とスリットとを交互に繰返し配列させ且つ中心線に対して非対称となるパターンで構成し、このパターン構成を隣接する区画部分毎に順次所定の角度で回転移動させた同一パターン構成とすることにより、各区画部分の配向方向が夫々中心点方向から同方向側に順次ずれた方向で、その配向方向が異なる異方性を有するように互いに直交する方向に設定されるように構成した。
【0016】
このように構成することによって、高精度の位置合せを不要とするばかりでなく、画素電極上に電場の強さが異なる第1及び第2の領域を形成し、この配向方向を夫々中心点方向から同方向側にずれた方向で互いに直交する方向に設定することで、光透過率や視野角及び応答時間の向上を図ることが可能となった。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
本発明に係る液晶表示装置は、図1に示すように、透明なガラス材から構成される基板11の主面上に、成膜、パターニング等の微細技術を駆使して電極配線とスイッチング素子、例えばTFT12が設けられる。
【0019】
このTFT12上及び周囲には、赤(R)、青(B)、緑(G)に夫々色分けされたカラーフィルタ層13の役目を担うRGB着色層13R,13G,13Bが夫々の色毎にストライプ状に設けられる。この着色層13R,13G,13Bは、例えば第1色を赤で構成する場合には、まず赤色の顔料を分散させた紫外線硬化型アクリル樹脂レジストをスピンナーにて基板11の全面に均一になるように塗布し、次いで赤を着色したい部分に光が照射されるようなフォトマスクパターンを介して、365nmの波長で100mJ/cm2の強度の紫外線を照射して露光する。このフォトマスクパターンには、1色目に対応するストライプ形状のパターン部分と、積層型スペーサ用の四角形状のパターン部分とを有している。
【0020】
その後、KOHの1%水溶液で20秒間現像し、当該パターン部分に膜厚3.2μmの赤の着色層13Rを形成する。引続き緑の着色層13G及び青の着色層13Bを同様にして夫々形成する。このときTFT12部分にもコンタクトホール部14が併せて形成される。このカラーフィルタ層13の形成材料をパターニングする際に、カラーフィルタ層13を構成する各着色層13R,13G,13B材を順次積層させて形成した積層型スペーサ15を、選択された各色の画素パターン間に配置するように、夫々着色層13R,13G,13Bの形成と同時に形成する。
【0021】
そして、このカラーフィルタ層13上には、ITO等の透過性導電部材を1500Åの厚さにスパッタリング法によって成膜し、フォトリソグラフィ法によってパターニングすることにより、図1(b)に示すように、スリット16を有する透明な画素電極17を形成している。この画素電極17は、その1画素分の画素電極17が、夫々略等面積となるように、例えば4つの区画部分17a〜17dから構成されており、この各区画部分17a〜17dに設けたスリット16によって形成された複数のストライプ電極部17´は、長手方向に同じ幅を有するストライプ電極部17´として構成され、更にこの区画部分17a〜17dに夫々互いに略90°ずつ順次異なるように配置されている。例えば1つの区画部分17aの電極パターンを90°回転移動させた場合には、区画部分17bのパターンと一致し、更に90°回転移動させると区画部分17cのパターンと一致し、このパターンを更に90°回転移動させると区画部分17dのパターンと一致するように構成されている。そして、隣接する区画部分同士の電極パターンはピッチをずらすようにして配設されており、従って、各隣接する区画部分同士では、線対称の構成とはなっていない。
【0022】
この画素電極17は、これらに割当てられるカラーフィルタ層13上に夫々形成され、TFT12のソース・ドレイン通路と各コンタクトホール部14を介して夫々接続されている。また、カラーフィルタ層13の外周囲部分、即ち、表示領域の外周部分には、黒色の遮光膜からなる額縁部18をフォトリソグラフィ法によって設けている。この画素電極17上には、ポリイミド等からなる600Åの膜厚の配向膜19を設けてアレイ基板20を構成している。
【0023】
一方、このアレイ基板20に対向して対向基板21が配置される。この対向基板21は、同じく透明なガラス材から構成される基板22の対向面上に、ITO膜を1500Åの厚さにスパッタリング法を用いて成膜して共通電極23を形成するとともに、この共通電極23上には、ポリイミド等を600Åの厚さに塗布して形成した配向膜24を配置することで、対向基板21を構成している。この配向膜24及びアレイ基板20の配向膜19は、いずれもラビング処理を施さずに垂直配向性を付与している。
【0024】
この対向基板21とアレイ基板20とは、スペーサ15によって所定の間隙を保ちながら、例えば注入口を除いて熱硬化性エポキシ系接着剤からなるシール材25によって周辺部を加熱接着して固定している。またアレイ基板20から対向基板21に電圧を印加するための電極転移材を、シール材25の周辺の電極転移電極(図示せず)上に形成している。この間隙部分には、例えばフッ素系液晶化合物からなる液晶部材を注入口から注入して液晶層26を形成し、その後に、この注入口を紫外線硬化樹脂によって封止して液晶パネル27を形成している。更に、この液晶パネル27のアレイ基板20及び対向基板21の外表面には、夫々偏光板28が接着固定されるとともに、アレイ基板20側の偏光板28の外側には、必要に応じてバックライトや反射板(図示せず)等が配置されて、液晶表示装置が構成されている。
【0025】
上記TFT12及び画素電極17、走査線、信号線等は、図2に示すように構成される。
【0026】
即ち、基板11の主面上にアンダーコーティング層30を形成し、このアンダーコーティング層30上にTFT12を構成するポリシリコン膜にて形成された半導体層31、及び不純物をドープしたポリシリコン膜によって形成された補助容量電極32が配置されている。この半導体層31は、チャネル領域33の両側に夫々不純物をドープすることによって形成されたドレイン領域34及びソース領域35を有している。これら半導体層31及び補助容量電極32上には、ゲート絶縁膜36が設けられ、このゲート絶縁膜36のドレイン領域34及びソース領域35、並びに補助容量電極32部分には、夫々コンタクトホールが形成されている。
【0027】
このゲート絶縁膜36上には、ゲート電極兼用の走査線37及び補助容量線38が形成される。この走査線37及び補助容量線38を覆うように層間絶縁膜39が被着されるとともに、ゲート絶縁膜36に形成したコンタクトホールに連接するコンタクトホールが形成されている。この層間絶縁膜39上には、ドレイン領域34上のコンタクトホールを介して、このドレイン領域34と電気的に接続されたドレイン電極と兼用の信号線40、及びソース領域35上のコンタクトホールを介して、このソース領域35と電気的に接続されたソース電極41が形成される。また補助容量電極32上のコンタクトホールを介してコンタクト電極42が形成されている。
【0028】
これら信号線40、ソース電極41及びコンタクト電極42を含む層間絶縁膜39上には、カラーフィルタ層13を構成する着色層13、例えば赤色着色層13Rと緑色着色層13G及び青色着色層13Bが形成される。この着色層13Rのソース電極41及びコンタクト電極42上には、コンタクトホールが形成されており、この着色層13R上には、これらコンタクトホールを介して、夫々ソース電極41とコンタクト電極42と電気的に接続される画素電極17が形成され、この画素電極17を含む着色層13R,13G及び13B上には、配向膜19が設けられている。なお、図示していないが、青色着色層13Bについても同様に形成されている。
【0029】
上記走査線37は、画素電極17の行方向に沿って形成され、また信号線40は、画素電極17の列方向に沿って形成されており、信号線40は走査線37及び補助容量線38に対して略直交するように配置されている。また補助容量電極32は、画素電極17と同電位に、補助容量線38は所定の電位に設定されている。この走査線37及び信号線40の交差位置近傍には、各画素電極17に対応してTFT12が配置される。また、これら走査線41及び補助容量線38は、モリブデン−タングステンによって、また信号線40は、主にアルミニウムによって形成されている。
【0030】
なお、画素電極17及び共通電極23上には、配向膜19,24のみを配置した場合について例示しているが、これらの電極17,23上には、種々の用途に応じて絶縁膜(図示せず)を配置することも可能である。この場合に使用される、絶縁膜としては、例えばSiO2、SiNx、Al2O3等の無機系薄膜、ポリイミド、フォトレジスト樹脂、高分子液晶等の有機系薄膜等を用いることができる。そして絶縁膜が無機系薄膜の場合には、蒸着法、スパッタ法、CVD法あるいは溶液塗布法等によって形成することができ、また絶縁膜が有機系薄膜の場合には、有機物質を溶かした溶液等を用いて、スピンナー塗布法、スクリーン印刷塗布法、ロール塗布法等によって塗布し、その後に加熱、光照射等の所定の硬化条件で硬化させて形成する方法、あるいは蒸着法、スパッタ法、CVD法、LB法等で形成することも可能である。
【0031】
このように構成されたアレイ基板20の等価回路は、図3に示すように、マトリクス状に配置されたm×n個の画素電極17、これら画素電極17の行方向に沿って形成されたm本の走査線(41)Y1〜Ym、これら画素電極17の列方向に沿って形成されたn本の信号線(40)X1〜Xn、及びm×n個の画素電極17に対応して走査線Y1〜Ym及び信号線X1〜Xnの交差位置近傍にスイッチング素子として配置されたm×n個のTFT12を有している。
【0032】
このTFT12は、画素電極17の行に沿って形成される走査線Yとゲート電極37が、及び画素電極17の列に沿って形成される信号線Xにソース電極41が夫々接続されており、走査線駆動回路43から走査線Yを介して供給される駆動電圧によってTFT12が導通し、信号線駆動回路44からの信号電圧をTFT12のソース・ドレイン通路を通して画素電極17に印加するように動作する。
【0033】
この画素電極17及び共通電極23間には、画素電極17と同電位の補助容量電極32、及び所定の電位に設定された補助容量線38から構成される補助容量Cが並列に接続されており、これら共通電極23には、共通電極駆動回路45からの駆動電圧が供給されている。
【0034】
この画素電極17の基本的な構成は、図4(a)に示すように、1つの画素電極17を4つの区画部分17a〜dで構成されるように4分割形成されている。この画素電極17を構成する各区画部分17a〜dには、複数のスリット16が一定の周期で互いに平行に設けられており、スリット16の長手方向は、各区画部分17a〜d間で互いに異なる方向、例えばXY軸に対して夫々45°ずつ傾き、その延長線が中点で交わるように、互いが90°の角度ずつ回転対称となるように設定されている。
【0035】
このようにスリット16を設けることによって、画素電極17のストライプ電極部17´では電場の強い領域が形成され、またスリット16を形成した部分では、電場の弱い領域が形成されることとなり、これらのスリット16を形成する方向は、各部分17a〜17dで夫々異なる方向となるように設定されているために、電場の強弱の領域が4つの異なる方向成分を示すように異方性が付与されることとなる。従って、このような構成を採ることによって、異方性のパターンに従って液晶層26の配向方向が決定されるので、液晶分子46の配向は、0°、90°、180°及び270°の方向性を示す4つの等面積のドメインとなる。これらドメインは、互いに視野角特性を補償する効果があるので、広い視野角特性を有する液晶表示装置を構成することが可能となる。
【0036】
ここで、液晶層26として負の誘電異方性を示すネマチック液晶材料を用いると、液晶分子46は電場の強い領域と弱い領域が交互に配置された方向と平行な方向にチルト方向(ダィレクタ)を揃えて配向される。この4つの各部分17a〜17dの各異方性領域では、夫々異なる方向に配向するために、画素領域は画素電極17を構成する各区画部分17a〜17dに対応して、図4(b)に動作時の画素状態を示すように、液晶分子46のチルト方向が互いに異なる4つのドメインへと分割されている。
【0037】
この場合の液晶分子46の配向変化は、画素電極17と共通電極23との間に電圧を印加していない場合には、配向膜19,24は液晶層26を構成する誘電率異方性が負の液晶分子46に、それらを垂直配向させるように作用する。そのために、液晶分子46は、それらの長軸が配向膜19,24の膜面に対して略垂直となるように配向する。
【0038】
そこで、画素電極17と共通電極23との間に比較的低い第1の電圧を印加すると、画素電極17に設けたスリット16の上方には漏れ電界が発生する。即ち、スリット16上の電場の弱い領域16A,16Bによって挟まれた強い領域17Aが、図5(a)に示すように、直線状に配置されている場合には、電場の強い領域17Aから弱い領域16A,16Bに向かって生じる漏れ電界によって、傾きを持った電気力線が発生している。この傾きを持った電気力線に沿って液晶分子46の誘電異方性が生じるために、電場近傍の液晶分子46は、一定方向へのチルトを生じることになる。対向する電場の弱い領域16A,16Bによって夫々発生したチルトは、図5(b)に示すように、互いに干渉しあう方向成分を有し、このためにエネルギーが低い状態へと配向緩和するものと推察される。
【0039】
ここで、電場の弱い領域16A,16Bと強い領域17Aとは、2次元方向の異方性しか持っていないために、配向緩和方向は、図5(a)に符号A,A´で示す2方向に同じ確率で発生する。即ち、画素電極17と共通電極23との間に電圧を印加することによって生じる電界は、その電気力線に垂直な方向に液晶分子46を配向するように作用する。従って液晶分子46は、配向膜19,24及び電界からの作用によって、右側の液晶分子46の配向状態と左側の液晶分子46の配向状態とが干渉しあってしまうことになり、液晶分子46は、図中上向きA、または下向きA´にチルト方向を変化させて、より安定な配向状態をとるように働くことになる。
【0040】
ここで、図5(a)に示すように、画素電極17の一対のスリット16に挟まれた電極部17´及びその近傍が、図中上下方向に対して対称的な、若しくは等方的な形状を有していると、液晶分子46は、矢印Aで示すように、上向きにチルト方向を変化させる確率と、矢印A´で示すように、下向きにチルト方向を変化させる確率とが等しくなる。即ち、液晶分子46は、上向き若しくは下向きのいずれの方向に対してチルト方向を変化させるか判らない状態にあり、不安定な状態に陥ることになる。
【0041】
ここで、電場の弱い領域16A,16Bと強い領域17Aによって構成された異方性領域の長手方向の端部に、図5(c)、(d)に示すように、その端部の一方に電場の強い領域17Bを設け、他方に電場の弱い領域16Cを設けると、電場の強い領域17A,17Bと弱い領域16A〜16Cによって3次元の異方性が生じるために、同異方性領域内の液晶分子46は、図中矢印Bで示すように、平均的な傾斜方向に配向緩和される。
【0042】
換言すれば、画素電極17と共通電極23との間に印加する電圧を、第1の電圧よりも高い第2の電圧まで高めると、配向膜19,24が液晶分子46を垂直配向させようとする作用に対して、電界が液晶分子46をその電気力線に垂直な方向に配向させようとする作用の方がより強くなる。従って液晶分子46は、水平配向に近づく方向にチルト角を変化させる。
【0043】
しかしながら、画素電極17と共通電極23間に印加する電圧を、第1の電圧よりも高い第2の電圧とした場合でも、画素電極17及び共通電極23間に印加する電圧を第1電圧とした場合と同様に、液晶分子46が矢印A´で示す方向に配向した配向状態は、液晶分子46が矢印Aで示す方向に配向した配向状態に比較してより安定となる。
【0044】
そのために、画素電極17及び共通電極23間に印加する電圧を、第1及び第2の電圧間で変化させた場合に、液晶分子46のチルト方向は、スリット16の配列方向に垂直な面内で変化することとなる。即ち、画素電極17及び共通電極23間に印加する電圧を、第1及び第2の電圧間で変化させた場合に、液晶分子46は、その平均的なチルト方向をスリット16の配列方向に垂直な面内に維持したまま、チルト角を変化させることになる。
【0045】
従って、画素電極17を構成する4つの区画部分17a〜17d間で、スリット16の長手方向を夫々異なる方向に設定することにより、液晶分子46のチルト方向を維持した状態のままで、そのチルト角を変化させることができる。即ち、アレイ基板20に設けた画素電極17で電界の強い領域17A,17Bと弱い領域16A〜16Cを形成することによって、1つの画素領域内に液晶分子46のチルト方向が互いに異なる4つのドメインを形成することができる。また、液晶分子46の平均的なチルト方向をスリット16の配列方向に垂直な面内に維持したままで、チルト角を変化させることができるために、より速い応答速度を実現することができるとともに、配向不良が発生し難く良好な配向分割が可能となる。
【0046】
このような構成を採ることによって、画素電極17と共通電極23との間に所定の電圧を印加した際に、液晶層26中の画素領域内に夫々一方向に延びた形状を有し、且つその方向と交差する方向に画素領域内で交互に繰返し配列した第1及び第2の領域、即ち、電場の強い領域と弱い領域とを形成し、これら第1及び第2の領域によって液晶分子46の配向を制御することが可能となる。これら第1及び第2の領域を形成する構成は、対向基板21に対してアレイ基板20側に設けているために、アレイ基板20と対向基板21とを貼り合せる際に、アライメントマークを使用する等の高精度な位置合せを行う必要がない優れた効果を発揮することができる。
【0047】
このような画素電極17においては、図6(a)に示すように、各区画部分17a〜17dの配向方向は画素電極17の中心方向を向くように構成されるので、液晶分子46は、図6(b)に示すように、各区画部分17a〜17d内のいずれもが中心方向に配向される。このように4つのドメインから中心に向かって液晶分子46が配向すると、中心部では電圧印加時に液晶分子46がチルトする方位が、この中心点を境として異なる方位となり、偏光板28の吸収軸と平行なチルト方向が発生するために、所謂シュリーレン構造が発生する。このシュリーレン構造は、一定の領域、例えば1画素内に液晶分子46のチルト方位が90°以上異なるような配列をなした場合に、その方位間が連続的に方位を変化させるような配列において発生しており、しかもシュリーレン構造の捩れ配向が左右いずれにも捩れることが可能なので、視野角の不均一性や表示品位の低下が懸念される。また、これら配向が中心部で一旦衝突した後にシュリーレン構造に移行するために、配向安定までに要する時間も長くかかるようになり、応答時間を低下させる要因となりうる。
【0048】
そこで、電極パターンを、図1(b)及び図7(a)に示すように、各区画部分17a〜17dに配置されているストライプ電極部17´とスリット16とのピッチを各区画部分17a〜17d毎にずらせて配設することにより、配向方向が中心点で衝突することなく回転するように設定することが可能となる。即ち、隣接する各区画部分17a〜17dでの配向方向が、夫々中心点方向からずれた方向で互いに直交する方向となるように設定される。この回転する方向は、電場の強い領域と電場の弱い領域との分布、即ち、ストライプ電極部17´とスリット16との配置方法によって制御することが可能である。このような構成とすることで、図7(b)に示すように、液晶分子46は、例えば左方向への回転を行うように配向され、左に渦を巻くようにして集束されることになり、中心点での衝突を回避することが可能となる。この結果、シュリーレン構造の中心停止位置が左右いずれかに特定することが可能なので、各配向領域の面積不均等等に起因する視野角の不均一性や表示品位の低下を防ぐことが可能となる。しかも配向安定までに要する時間も短縮されるので、応答時間を早くすることができる。
【0049】
このような電極パターンを、図8(a)に示すように、1画素内において、放射状パターンによる配向効果が有効に作用するように、画素電極17に設けた切欠部47によって2つの領域48a,48bに分割して構成し、そしてこの2つの領域48a,48bにおける配向方向を、領域48aにおいては左回りに回転する方向に、また領域48bにおいては右回りに回転する方向に交互に設定することができる。このように交互に配置することにより液晶配向方向に対称性を与えることができる。これによって視野角特性、特に斜め方向から見た場合の色変化を減少させることができるとともに、2つの領域48a,48b間の配向方向ベクトルが一致するためにスムースな安定した配向とすることができる。この画素電極17の動作状態は、図8(b)に示すようになり、液晶分子46は図中に示す配向方向で、画素電極17としては、図中矢印で示す回転方向となり、配向が安定する。
【0050】
このような2つの異なる方向に回転する2つの領域48a,48bの代わりに、図8(c)及び(d)に示すように、2つの領域48a,48bにおける配向方向が、ともに同じ左回りに回転するように構成することも可能である。
【0051】
また、これらの場合には、1つの画素電極17内において2つの領域48a,48bに分けて、夫々の領域48a,48bに回転して渦巻き状に集束するドメインを形成しているが、これを隣接する各画素電極17−1,17−2に夫々形成することも可能である。即ち、図9(a)に示すように、2つの領域48a,48bを夫々有する画素電極17−1,17−2の一方の画素電極17−1には、左回りに回転する領域48aと右回りに回転する領域48bとを形成し、これと対向する画素電極17−2には、右回りに回転する領域48bと左回りに回転する領域48aとを設けたもので、隣接する画素電極17−1,17−2の対向する領域48a,48b間では異なる回転方向のドメインを配置している。
【0052】
更に、2つの画素電極17−1,17−2の対向するドメインを、図9(b)に示すように、同じ回転方向のドメインを配置するようにすることも可能で、この場合でも同様に配向を安定化させることができる。
【0053】
なお、上記の実施の形態では、スリット16の幅を一定とした場合について説明しているが、図10(a)に示すように、スリット16及びストライプ電極部17´の幅を、その長手方向に沿って変化させることも可能で、その場合の液晶分子46の配向状態は、図10(b)に示すようになる。なお、図示の場合には、画素電極17を構成する4つの部分17a〜17dのうちの1つの部分17aの一部のみを図示している。このような構成においては、スリット16の幅は、画素電極17の中央部から周縁部に向けて連続的に増加している。このような構成を採ると、図10(b)に示すように、スリット16の下端における液晶配向及び画素電極17のスリット16に挟まれた部分の上端における液晶配向に加え、スリット16の両側端における液晶配向も、チルト方向が矢印Bで示す方向となるように作用する。従って、透過率や応答速度を更に向上させることができる。
【0054】
この画素電極17パターンは、図11及び図12に示すようなパターンとすることも可能である。
【0055】
このように、画素電極17にスリット16を設けることにより、各ドメイン内に電界の強さが強い領域と弱い領域とを交互に、しかも周期的に配列した電界分布を発生させている。このようにスリット16を利用した場合には、比較的高い自由度で設計を行うことが可能であり、また、画素電極17パターンの変更のみで対応することが可能であり、製造プロセスを増加させることがなく、このためにコストアップになることもない。
【0056】
このような電界分布は、他の方法によっても発生させることが可能である。
【0057】
即ち、図13に示すように、画素電極17にスリット16を設ける代わりに、画素電極17上にスリット16と同様のパターンで誘電体層49を設けることでも対応が可能である。この場合、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ノボラック系樹脂等のように、誘電体層49の誘電率が液晶材料の誘電率よりも低ければ、誘電体層49の上方に電界の強さがより弱い領域を形成することができる。従って、スリット16を形成した場合と同様の効果を得ることができる。なお、図示の場合は、放射状パターンによる配向効果が有効に作用するように、画素電極17に設けた切欠部47によって3つの領域に分割してある。
【0058】
更に、画素電極17にスリット16を設ける代わりに、画素電極17上に透明絶縁体層(図示せず)を介して配線(図示せず)を配置するようにしてもよい。この配線としては、例えば信号線40、走査線37、補助容量線38等が利用可能であり、スリット16と同様のパターンで配列させればよい。このような構造にすると、配線の上方に電界の強さがより強い領域を形成することができ、スリット16を形成した場合と同様な効果を得ることができる。
【0059】
なお、液晶表示装置が透過型である場合には、誘電体層49及び配線の材料は、透過率の観点から透明な材料であることが好ましい。また、液晶表示装置が反射型の場合には、これら材料を透明な材料とするばかりでなく、金属材料のように不透明な材料を使用することも可能である。
【0060】
そして、図10に例示するように、液晶層26中の電界の強さがより強い領域の幅W1と、電界の強さがより弱い領域の幅W2との合計幅W1+2が20μm以下であることが好ましい。この合計幅W1+W2が20μm以下であれば、液晶分子46の配向を制御することが可能であり、十分な透過率を得ることができる。また、合計幅W1+W2が6μm以上であることが好適である。この合計幅W1+W2が6μm以上であれば、液晶層26中に電界の強さがより強い領域とより弱い領域とを生じさせるための構造を、十分に高い精度で形成することが可能であり、更に液晶配向を安定に生じさせることができる。
【0061】
なお、この合計幅W1+W2は、画素電極17のスリット16に挟まれたストライプ電極部17´の幅とスリット16との幅との合計、画素電極17上の誘電体層49に挟まれたストライプ電極部17´の幅と誘電体層49の幅との合計、画素電極17上に設けた配線の幅と配線に挟まれた領域の幅との合計等と略等しい。従って、これらの幅も20μm以下で6μm以上とすることが好適である。
【0062】
上述のように、画素電極17を構成する4つの区画部分17a〜17d間で、スリット16の長手方向の向きを夫々異ならしめることにより、液晶分子46のチルト方向を維持したままの状態で、そのチルト角を変化させることができる。即ち、アレイ基板20に設けた構造のみで、1つの画素領域内に液晶分子46のチルト方向が互いに異なる4つのドメインを形成することができる。しかも液晶分子46の平均的なチルト方向を、スリット16の配列方向に垂直な面内に維持したままチルト角を変化させることができるために、より速い応答速度を実現することができるとともに、配向不良が発生し難く良好な配向分割が可能となる。
【0063】
このように、画素領域内に平面波状の電界の強さの分布を形成するとともに、その強さを変化させて、液晶層26の光学特性を制御することによって表示を行うようにし、この制御を行う場合に、液晶層26中の画素電極17のストライプ電極部17´上の部分には、スリット16上の部分に比べてより強い電界が形成されることになる。このために、画素電極17のストライプ電極部17´上の部分では、スリット16上の部分に比べて液晶分子46はより大きく倒れることとなる。即ち、液晶層26の画素電極17のストライプ電極部17´上の部分とスリット16上の部分とでは、液晶分子46の平均的なチルト角は互いに異なることになる。このチルト角の違いは、光学的な違いとして観察可能である。
【0064】
このような液晶表示装置を、次のように構成して、その効果を確認した。
【0065】
即ち、TFT12形成プロセスと同様に、成膜とパターニングとを繰返して、基板11上に走査線37及び信号線40等の配線並びにTFT12を形成する。このTFT12を覆うようにしてカラーフィルタ層13を形成し、更にこのカラーフィルタ層13上に所定のパターンのマスクを介してITOをスパッタリング形成する。このITO膜上にレジストパターンを形成した後に、このレジストパターンをマスクとして用いてITO膜の露出部をエッチングすることにより、図11に示すようなストライプ電極部17´とスリット16からなる電極パターンを有する画素電極17を形成する。この各画素電極17に形成した各ストライプ電極17´幅とスリット16幅とは、いずれも5μmとなるように設定している。
【0066】
その後、この画素電極17を形成した面の全面に熱硬化性樹脂を塗布して、この塗膜を焼成することにより、垂直配向性を示す厚さ70nmの配向膜19を形成して、アレイ基板20を形成した。
【0067】
一方の対向基板21は、基板22の主面上にITOをスパッタリング法を用いてITO膜を形成し、これを共通電極23として構成する。更に、この共通電極23の全面に熱硬化性樹脂を塗布して、この塗膜を焼成することにより、垂直配向性を示す厚さ70nmの配向膜24を形成して、対向基板21を構成している。
【0068】
次いで、アレイ基板20と対向基板21とを画素電極17及び共通電極23とが互いに対向するように、アライメントマーク等を利用する高精度な位置合せを行うことなく、単に両基板20,21の端面位置を揃えることによって位置合せを行い、この対向面周縁部を液晶材料を注入するための注入口を残してシール材25により貼着させて液晶パネル27を形成した。この液晶パネル27のセルギャップは、高さ4μmのスペーサ15を両基板20,21間に介在させることにより、一定に維持するようにしている。
【0069】
この液晶パネル27中に誘電率異方性が負である液晶材料を注入して液晶層26を形成し、液晶材料の注入後に注入口を紫外線硬化樹脂によって封止し、更に液晶パネル27の両面に偏光板28を貼付して液晶表示装置を構成した。この液晶表示装置の表示特性としては、表1の実施品1として示すような結果が得られ、良好な液晶表示装置を得ることができた。
【0070】
更に、上記と同様にして、図12に示すパターンで、画素電極17のストライプ電極部17´の幅、及びスリット16の幅を、画素開口率を考慮して夫々4μmに設定した液晶表示装置を構成したところ、表1の実施品2として示すような表示特性が得られた。
【0071】
更に、上記と同様な方法にて、図13に示すパターンの画素電極17にスリット16を設けるとともに、画素電極17のストライプ電極部17´上に誘電体層49を形成し、この誘電体層を液晶層26中の誘電体層の上方に位置する領域での電場の強さが十分に弱められるように1.4μmの膜厚に設定するとともに、切欠部47によって3つの領域に分割形成した画素電極17を使用して液晶表示装置を構成した。この液晶表示装置においても表1の実施品3として示すような表示特性が得られた。
【0072】
また、上記と同様な方法にて、図8(a)に示すような切欠部47によって2つの領域48a,48bに分割し、この領域48a、48bに夫々異なる方向に回転する配向のパターンを使用して液晶表示装置を構成した。この液晶表示装置においても表1の実施品4として示すような表示特性が得られた。
【0073】
更に、上記と同様な方法にて、図9(a)に示すような2つの領域48a,48bを有し、隣接する画素電極17−1,17−2の対応する領域48a,48bで夫々異なる方向に回転する配向のパターンを使用して液晶表示装置を構成した。この液晶表示装置においても表1の実施品5として示すような表示特性が得られた。
【表1】
なお、表1の視野角は、左右±40°での白の色変化Δu′v′を基に測定したものである。
【0074】
この表1からも解るように、本発明に係る液晶表示装置によれば、アレイ基板20及び対向基板21を貼着する際に、高精度な位置合せを行っていないにもかかわらず、実施品1乃至3では、安定したドメイン分割による広い視野角特性と画素合せずれ等の光透過率低下要因の少ない液晶表示装置を得ることができ、しかもTFT12製造プロセスの工程を変更することなく実施が可能で、コスト及び生産性へのインパクトを最小限に抑えることが可能である。
【0075】
更に、実施品4及び5においては、高い光透過率と安定な応答時間を確保しつつ視野角が大幅に改善されており、特に実施品5においては、視野角の改善は一層顕著なものとなっている。
【0076】
なお、本発明は、上述した実施の形態にとらわれることなく種々の変更が可能であり、例えば、液晶層26中の電界の強さがより強い領域及びより弱い領域の双方を上下方向に対して対称として応答速度等の点で有利な構成としたが、これを上下方向に関して非対称となるような構成としてもよい。
【0077】
また、誘電率異方性が負のネマチック液晶を垂直配向させたVANモードを採用したが、誘電率異方性が正のネマチック液晶を用いることも可能で、特に高いコントラストが望まれる場合には、VANモードを採用し、且つノーマリブラックとすることにより、例えば400:1以上の高いコントラストと高透過率設計による明るい画面設計とすることが可能となる。
【0078】
更に、見掛け上、液晶の光学応答を早めるために、偏光フィルムの光透過容易軸あるいは光吸収軸と電界の強い領域と弱い領域との配列方向とがなす角度を45°から所定の角度θだけずらせてもよい。この角度θは、視野角等に応じて設定することもできるが、応答時間を短縮するには22.5°とすることが最も効果的である。
【0079】
また、画素電極17を構成する各区画部分17a〜17dの形状には特に制限はなく、例えば矩形や扇型とすることが可能であるばかりでなく、また、電圧の印加時に、液晶層26中に電場の強さが強い領域と弱い領域とを生じさせる構造をアレイ基板20側にのみ設けることで、アレイ基板20と対向基板21とを貼り合せて液晶パネル27を形成する際に、アライメントマーク等を利用した高精度な位置合せを不要としているが、この電場の強弱を発生させる構成を、アレイ基板20及び対向基板21の双方に設けるように構成してもよく、カラーフィルタ層13を対向基板21側に配設することも可能である。
【0080】
また、スペーサ15は、単層型として構成することも可能で、この場合には、画素電極17上に、感光性アクリル性透明樹脂をスピンナー塗布して90℃で10分間乾燥させた後に、単層型スペーサ用のパターンを有するフォトマスクを介して、365nmの波長で100mJ/cm2の強度の紫外線を照射して露光し、その後にpH11.5のアルカリ水溶液にて現像し、200℃で60分間の焼成を行うことによって、単層型スペーサ15を形成することができる。更に、この単層型スペーサ15を、額縁材を用いて額縁部18をフォトリソグラフィ法によって形成する際に、単層型スペーサ15も併せて作り込むことによって、額縁材をそのまま利用して形成すれば、製造工程の削減を図ることができる。また、ビーズ状のスペーサ15の使用も可能である。更にTFT12やその他の構成、形状、大きさ及び材質等は、これに限定されることなく適宜設計し得ることは言うまでもない。
【0081】
【発明の効果】
以上述べてきたように本発明によれば、電場の強い領域と弱い領域とを画素電極にて形成し、これら電場の強弱の領域によって液晶分子の配向を制御するようにし、これら領域の形成はアレイ基板側に設けることが可能であり、このように構成した場合には、アレイ基板と対向基板とを貼り合せる際の高精度な位置合せを必要とすることなく達成できるとともに、高い光透過率と安定な応答時間を確保することができ、更に視野角を大幅に改善することが可能な液晶表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る液晶表示装置及び画素電極パターンを示す断面及び平面図。
【図2】本発明に係る液晶表示装置を構成するアレイ基板の構成を示す断面図。
【図3】同じく本発明に係る液晶表示装置の回路構成を示す回路図。
【図4】同じく本発明に係る液晶表示装置を構成する画素電極構成を示す説明図。
【図5】同じく液晶分子の配向状態を説明するための説明図。
【図6】同じく画素電極の配向方向を説明するための説明図。
【図7】同じく異なる画素電極の配向方向を説明するための説明図。
【図8】同じく画素電極のパターン配置と液晶分子の配向状態を説明するための説明図。
【図9】同じく複数の画素電極のパターン配置と液晶分子の配向状態を説明するための説明図。
【図10】同じく画素電極の他の構成を示す平面図。
【図11】同じく画素電極の他のパターン配置を示す平面図。
【図12】同じく画素電極の更に他のパターン配置を示す平面図。
【図13】同じく画素電極の別のパターン配置を示す平面図。
【図14】従来の液晶表示装置を示す断面図。
【符号の説明】
11,22:基板
16:スリット
17:画素電極
17´:ストライプ電極部
17a〜17d:区画部分
20:アレイ基板
21:対向基板
23:共通電極
26:液晶層
46:液晶分子
47:切欠部
48:領域
49:誘電体層
Claims (3)
- 基板の主面上に配置された画素電極を有するアレイ基板と、
このアレイ基板の前記主面に対向して配置された共通電極を有する対向基板と、
この対向基板と前記アレイ基板との間に挟持された液晶層とを備えた液晶表示装置において、
前記画素電極と共通電極とに挟まれた画素領域内に前記少なくとも一方の電極の一画素電極を4区画部分以上の画素部分から構成し、この区画部分を前記画素電極の中心を通り当該区画部分を等分に区分する中心線に沿うように延在するストライプ電極部とスリットとを交互に繰返し配列させ且つ前記中心線に対して非対称となるパターンで構成し、このパターン構成を隣接する区画部分毎に順次所定の角度で回転移動させた同一パターン構成とすることにより、各区画部分の配向方向が夫々中心点方向から同方向側に順次ずれた方向で、その配向方向が異なる異方性を有するように互いに直交する方向に設定されていることを特徴とする液晶表示装置。 - 前記区画部分の隣接する区画部分の配向方向が夫々右及び左回りとなるように設定されている画素を複数有し、これら隣接する画素同士の配向方向を同じまたは反対方向に設定されたことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
- 前記ストライプ電極部とスリットの領域の幅を夫々W1、W2としたときに、6μm≦W1+W2≦20μmに設定したことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
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