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JP4127455B2 - 光情報記録媒体およびその製造方法 - Google Patents

光情報記録媒体およびその製造方法 Download PDF

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JP4127455B2 JP2000277172A JP2000277172A JP4127455B2 JP 4127455 B2 JP4127455 B2 JP 4127455B2 JP 2000277172 A JP2000277172 A JP 2000277172A JP 2000277172 A JP2000277172 A JP 2000277172A JP 4127455 B2 JP4127455 B2 JP 4127455B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、相変化型記録材料により書き換え可能とした光情報記録媒体および該光情報記録媒体の製造方法に関し、特に高線速対応およびオーバーライトによる良好な記録が行えるとともに環境変化に強い光情報記録媒体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータ技術などの発達とともに、光情報記録媒体が用いられる機会も増加し、ますます重要な存在となっている。それに従って、光情報記録媒体の製造方法に関する発明も以下のように多数考案されている。
【0003】
特開平08−115536号公報が開示するところの光記録媒体(以下、従来例1)では、第二誘電体層を1nm以上50nm以下とし、急冷構造をとることによって、多数回記録消去の安定性を高める構成が開示されており、熱伝導率の大きい金属単体または合金の光吸収層が設けられている。
【0004】
また、特開平08−287515号公報が開示するところの光学的情報記録媒体(以下、従来例2)では、Nb25を30mol%以下含む誘電体が記載されている。
【0005】
また、特開平09−044904号公報が開示するところの光ディスクとその製法(以下、従来例3)では、照射による記録膜の温度特性が熱しやすくさめやすい特性を有するように、熱伝導制御層が設けられている。
【0006】
また、特開平05−217211号公報が開示するところの相変化型光記録媒体(以下、従来例4)では、ZnSSiO2とSiCとの積層構造が記載されており、記録層側がSiCとなっている。
【0007】
また、特開平06−314439号公報が開示するところの光学的情報記録媒体およびその製造方法(以下、従来例5)では、記録層周辺の誘電体膜を希ガスのみでスパッタして形成する。記録層から離れた誘電体は窒素または酸素と希ガスによりスパッタする。
【0008】
また、特開平11−086341号公報が開示するところの光記録媒体(以下、従来例6)では、ZnSSiO2とSiCとの交互積層とし、高線速対応およびDOW回数の向上が可能であることが記載されている。
【0009】
記録型光ディスクのうち、相変化型記録ディスクは、一般にプラスチック基板、ZnS・SiO2、カルコゲン系相変化記録媒体、ZnS・SiO2、およびAl系合金のような4層構成の膜構成を持っている。
【0010】
ここで、ZnS・SiO2は誘電体材料として用いられており、この誘電体材料は、瞬間的に融点以上に昇温する記録層の熱から基板を保護するとともに記録層の変形や破損を防ぐといった効果を有する。さらに、光干渉効果により記録情報再生時に十分な信号強度を得たり、記録時に良好な形状のアモルファスマークを形成するのに適した冷却速度を実現するといった効果も併せて持つ。
【0011】
そのために、この誘電体材料には、充分な耐熱性、大きな屈折率、および適当な熱伝導率等といった特性を有することが要求される。このような誘電体材料としては、各種の酸化物、窒化物、カルコゲナイド化合物あるいはこれらの混合物が知られている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に、最も頻繁に用いられている誘電体材料ZnS・SiO2と溶融系の相変化型記録材料AgInSbTeとの組み合わせでは、オーバーライト記録回数は1000〜10000回程度であり、固相記録消去系の相変化型材料GeSbTeに比べるとその回数は少ないとされていた。
【0013】
また、一方では、記録および消去の処理時間を短縮するために記録材料の相変化に関わる処理速度の向上も要求されていた。この要求を実現するためには、記録層材料の周辺における急冷構造を設ける必要がある。
【0014】
このような急冷構造の具体例としては、誘電体層と反射層側の間に熱伝導率が10W/mK〜200W/mKである金属の光吸収層を設ける構造(従来例1)、および誘電体材料の面からは熱伝導性に優れた材料を積層する構造(従来例6)などがある。
【0015】
しかしながら、熱伝導性を過度に向上させると、記録パワーを増加させなければ完全なアモルファス化が行うことできないといった問題点の他、モデュレーションがとれないなどの問題点が生じてしまうため、その熱伝導性のレベルの調整が必要となる。
【0016】
さらに、多層構造で熱伝導性を向上させる構造では、記録時の加熱による熱膨張性の差から膜界面における応力が発生し、界面での剥離を生ずる可能性もある。また、プロセス上も、成膜するための成膜処理槽を設けなくてはならず、処理槽の数が増え、工程が増えるため歩留まりが落ちてしまうなどコストアップとなる要因が同時に発生してしまう。
【0017】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものでありオーバーライト記録回数が少ないといわれている溶融系の相変化型記録材料AgInSbTe系の特性改善を実現する光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、本発明は、以下の特徴を有する。
【0019】
本発明にかかる光情報記録媒体は、透明基板上に少なくとも、第一誘電体層、記録層、第二誘電体層、反射層を順次積層した相変化型の光情報記録媒体であって、記録層は、溶融記録系材料のAg、In、Sb、およびTeを含む系の材料で構成されており、第一誘電体層および第二誘電体層が記録層と接触する面を含む層のうち少なくとも一方は、Ti、Nb、又はCrの酸化物と、ZnSの混合物からなる誘電体材料により構成されており、ZnSの量が80〜92%であることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明にかかる光情報記録媒体において、第一誘電体層および第二誘電体層のうち少なくとも一方は、複数の誘電体層から構成されており、複数の誘電体層のうち記録層と接触する少なくとも1つの層は、誘電体材料により構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明にかかる光情報記録媒体において、第一誘電体層および第二誘電体層のうち少なくとも一方は、複数の誘電体層から構成されており、複数の誘電体層から構成される少なくとも一方は、記録層と接触する面近傍3nm以上誘電体材料により構成されていることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明にかかる光情報記録媒体の製造方法は、透明基板上に少なくとも、第一誘電体層、記録層、第二誘電体層、反射層を順次積層する相変化型の光情報記録媒体の製造方法であって、溶融記録系材料のAg、In、Sb、およびTeを含む系の材料で記録層を生成する記録層生成工程と、第一誘電体層および第二誘電体層が記録層と接触する面を含む層のうち少なくとも一方を、Ti、Nb、又はCrの酸化物と、ZnSの混合物からなる誘電体材料により生成する誘電体層生成工程と、を有し、ZnSの量が80〜92%であることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明にかかる光情報記録媒体の製造方法は、第一誘電体層および第二誘電体層のうち少なくとも一方を、複数の誘電体層で構成し、複数の誘電体層のうち記録層と接触する少なくとも1つの層を、誘電体材料により生成することを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明にかかる光情報記録媒体の製造方法は、第一誘電体層および第二誘電体層のうち少なくとも一方を、複数の誘電体層で構成し、複数の誘電体層で構成する少なくとも一方は、記録層と接触する面近傍3nm以上を誘電体材料により生成することを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明にかかる光情報記録媒体の製造方法は、誘電体材料をターゲットとし、希ガスのみでスパッタすることを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明にかかる光情報記録媒体の製造方法は、誘電体材料をターゲットとし、希ガスに加え酸素ガスを導入してスパッタすることを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明にかかる光情報記録媒体の製造方法は、誘電体材料をターゲットとし、記録層と接触する面近傍3nm以上希ガスに加え酸素ガスを導入してスパッタすることを特徴とするものである。
【0028】
【発明の実施の形態】
(実施例の構成)
一般的に、最も頻繁に用いられている誘電体材料ZnS・SiO2と溶融系の相変化型記録材料AgInSbTeとが組み合わせられた誘電体層では、オーバーライト記録回数は1000〜10000回程度であり、固相記録消去系の相変化型材料GeSbTeによる誘電体層と比べると、その回数は小さな値をとるとされている。
【0029】
その理由は、AgInSbTeでは四族元素(特にIVb族のGe、Sn)が記録層材料中に入り込むと記録材の結晶化温度が上昇することが知られているが、オーバーライト記録消去時に経時的に誘電体材料ZnS・SiO2中のIVb族元素Siが徐々に膜中に入り込むため材料バランスが崩れ、結果として、熱的な特性が経時的に変化するためと考えられる。
【0030】
そこで、誘電体を周期率表のIVb族元素を含まない系で構成し誘電体層を形成する。ただし、これらの材料単体では成膜速度が遅く、生産効率性の面で不利となりかねないので、これらの酸化物材料と従来から使用されている高速性膜可能な誘電体材料ZnSとの混合物としてもよい。
【0031】
更に、誘電体層にはアモルファス化を容易に実現し、高速処理に適した材料が好ましいため誘電体の中でも比較的熱伝導性が調整できる材料が望ましい。このような材料としては、ある材料組成の欠損により電気伝導性が若干でも良くなる材料が好ましいので、そのような材料の中から選ぶことができる。具体的には、誘電体層は、Ti、V、Nb、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Rh、Ir、およびPtからなる群から選択される金属の酸化物で構成される。
【0032】
また、相変化記録材料を半導体レーザで照射した際に、必要となる適度な熱伝導性を得ることが重要となるが、一般的に使われている硫化亜鉛(ZnS)と硫化亜鉛より熱伝導が良好な上記の金属の酸化物を混合することによって、必要となる適度な熱伝導性を得ることができる。
【0033】
ZnS自体は熱伝導性が悪く熱を記録層周辺に保持するのに適している。一方これらの酸化物は熱伝導性が良好なので急冷構造を形成するのに適している。ZnS単体では相変化材料を高速で非結晶化しにくく更に材料自体が経時的に結晶化し易い。
【0034】
一方、上記の金属の酸化物単体では相変化記録材料に熱が保持されないので結晶化するためには過大なレザーパワーが必要になる。ZnSと上記の金属の酸化物との実用的な含有比率としては、酸化物の比率が5mol%以上60mol%以下である。
【0035】
誘電体材料を周期率表のIVb族元素を含まない系で構成した誘電体層を形成する厚みは少なくとも3nmあれば良い。記録層の両側でなくとも、少なくとも片側がIVb族元素を含まない系で構成した誘電体層であればオーバライト記録回数を向上することができる。
【0036】
また、第二誘電体層4を2層化し、反射層5側に熱伝導の良いSiC、あるいはAlNのような材料を用いることによって、書き換え可能な光情報記録媒体における書き換え回数と記録密度の向上を実現する構成も考えられる。さらに、2層化した際の材料配列順序を流動可能とする構成をとることによって、書き換え可能な光情報記録媒体におけるその線速対応冗長性の向上を実現する。
【0037】
次に、記録層材料との関連では、GeSbTeを主成分とした材料系は溶融温度が約600℃と高く、情報記録媒体として半導体レーザで照射した限りでは固相のままで一部が結晶化している。
【0038】
一方、AgInSbTe系は溶融温度が約200℃と低く、半導体レーザの照射により溶融変化して全体的に結晶化がすすんでいる。このような溶融して相変化させる場合の方が材料成分の拡散が起こりやすいので、これらの誘電体材料は溶融記録および消去系の材料であるAgInSbTeを含む記録材料に関して特に有効である。
【0039】
反射層用材料としては、熱伝導性の良好なAg系の反射層の方が高線速対応のための急冷構造が実現しやすい。Agを90%以上含む材料であれば、混合物による熱伝導性の劣化は光情報記録媒体としては問題とならない。誘電体材料として用いるZnS中のイオウとAgとの反応による反射層の腐食は添加する材料および製造条件により対処可能である。純Agを用いる場合でも反射層の誘電体側に2nm程度の薄いバリア層を設ければ良い。
【0040】
また、これらの膜の製造方法としては、ターゲットの状態で充分調整しておけば、希ガス元素Arのみにより最も簡便に成膜を実施できる。
【0041】
さらに、Arに加えて反応性ガスの酸素を導入して成膜してもよい。特にTi、V、Nb、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Rh、Ir、およびPtからなる群から選択される金属の酸化物材料は、元来酸素欠損により電気伝導性が優れているので、酸素を添加しながら成膜することでその電気伝導性、つまり熱伝導性を調整することができる。
【0042】
記録層近傍では熱伝導性を抑え、近傍から離れた部分では熱伝導性を向上させることで記録層の結晶化と非結晶化に必要な除冷と急冷という相反する温度プロファイルを実現できる。
【0043】
ここで、酸素を導入して成膜する場合は酸素により記録層材料が酸化される場合があるが、1.0 ×10-4〜9.0 ×10-4Torrの酸素分圧であれば記録層を酸化劣化させずに光情報記録媒体を製造することが可能である。
【0044】
また、Ti、V、Nb、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Rh、Ir、およびPtからなる群から選択される金属の酸化物材料は導電性があるためターゲットにした状態で10Ωcm以下であれば、直流スパッタあるいは直流マグネトロンスパッタ、またはパルス印可的に改造した直流スパッタあるいは直流マグネトロンスパッタで成膜できる。このときの混合比は元の酸化物材料の含有量により異なるが、10-4Ωcm台の材料であれば、15vol%以上である。
【0045】
図1は、本発明の一実施例における光情報記録媒体の構造を示す図である。光情報記録媒体は、透明基板1と、第一誘電体層2と、記録層3と、第二誘電体層4と、反射層5と、保護層6と、を有する。
【0046】
透明基板1は、ポリカーボネートなどによる透明プラスチック基板であって、厚みは0.6mmまたは1.2mm厚である。第一誘電体層2は、厚みは50〜250nmである。
【0047】
相変化型記録層3は、基本的な材料組成はAg1−In8−Sb65−Te26(数字は原子%)となる四元系の材料、またはAg2−In5−Sb71−Te20−Ge2(数字は原子%)となる五元系材料を用い、厚みは8〜30nmである。第二誘電体材料層4は、厚みは10〜30nmである。
【0048】
反射層5は、Al、Ag、Cu、Auなどの金属層で、厚みは100〜200nmである。保護層6は、有機材料により構成されており、各層の膜厚は光学的熱的な特性上で最適化し微調整されるので、以下の各実施例では、幅をもって記述する。
【0049】
(第1の実施例における構成および動作)
プラスチック基板として厚さが0.6mmのポリカーボネートの透明基板1上にマグネトロンスパッタ装置を用いて光情報記録媒体を成膜した。第一誘電体層2は、ZnS・TiO2とした。組成はZnS80% TiO220%(モル比)であり、膜厚は70nmである。
【0050】
次に、相変化記録層である記録層3は、Ag2−In5−Sb71−Te20−Ge2(比率はモル比)を20nmの膜厚で成膜した。この組成の記録膜は結晶化速度が中程度で、中線速記録に適している。
【0051】
第二誘電体層4も、第一誘電体層と同組成のZnS・TiO2の混合膜とした。膜厚は15nmである。この記録層の組成で10m/sの線速に対応できる。一方、反射放熱層である反射層5は、Ag、膜厚は140nmである。
【0052】
このディスクを大出力レーザを使用して初期結晶化を行い、その後650nmNA0.6の光ピックアップを持つドライブで評価した。線記録密度0.267μm/bit、トラックピッチ0.74μm、記録線速度8.5m/s、信号は8/16変調した。
【0053】
このディスクの初期ジッタは、6%台であった。50000回の書換え後でも8%台を維持し繰り返し記録消去の特性変化が比較的小さく良好であった。両側ZnS・SiO2に比べ、周期率表のIVb族元素を含まない系で構成したため、IVb族元素のSiが膜中に入り込むことがないため材料バランスが崩れず熱的な特性が経時的に安定したためである。
【0054】
(第2の実施例における構成および動作)
プラスチック基板として厚さが0.6mmのポリカーボネートの透明基板1上にマグネトロンスパッタ装置を用いて光情報記録媒体を成膜した。第一誘電体層2は、ZnS・SiO2とした。組成は原子比でZnS80%SiO220%、膜厚は70nmである。また、ZnS・SiO2の熱伝導率は0.66W/mKである。
【0055】
記録層3は、第1の実施例と同組成の材料、および同じ膜厚で形成されている。第二誘電体層4は、ZnSと酸素含量の少ないNbの酸化物(Nb25とNbO2を50%ずつとした混合体)の混合ターゲットより成膜した。組成はモル比でZnS92%Nb酸化物8%である。膜厚は15nmとした。また、スパッタ成膜時のガス雰囲気はArガスのみで形成した。次に、反射放熱層である反射層5は、Agを用い膜厚140nmで成膜した。
【0056】
このディスクを第1の実施例と同様に大出力レーザを使用して初期結晶化した後で、同じ光ピックアップを持つドライブで評価した。図2は、本発明の一実施例における光情報記録媒体のDOW(繰り返しダイレクトオーバーライト)回数とジッタとの関係を示す図であり、DOWの結果を図2(IVb族なしと表示)に示す。
【0057】
このディスクの初期ジッタは、8%台と少し高めであったが、100000回の書換え後も8%台を維持し繰り返し記録消去の特性変化が小さく良好であった。両側ZnS・SiO2に比べ、少なくとも片側を周期率表のIVb族元素を含まない系で構成したため、IVb族元素Siが膜中に入り込む量が減少したために材料バランスが崩れず熱的な特性が経時的に安定したためである。
【0058】
Arのみのスパッタでは、酸化物は化合物としての化学量論比がズレた酸素欠乏の状態のまま成膜されるので、熱伝導性の良いNb酸化物が含まれることになる。ZnSとNb酸化物の混合膜は急冷構造となるので、熱的なダメージの蓄積が起こり難くなる。
【0059】
(第3の実施例における構成および動作)
以下、ZnS・SiO2とZnS・TiO2の複層膜について、説明する。第一誘電体層2に、ZnS80%SiO220%(モル比)の組成のZnS・SiO2を膜厚60nmで成膜し、さらに第1の実施例で用いたZnSとTiO2の混合膜を膜厚10nmで積層し、第一誘電体層2を二層の膜とした。光学的な屈折率はこの二つの材料で同等である。したがって、膜厚構成は同じで良い。
【0060】
ここで、第一誘電体層2の記録層3に接する面はIVb族元素を含まない系である。さらに、記録層3以降は第1の実施例と同構成で光情報記録媒体を作製した。第2の実施例と同様にDOWの増加に対するジッタの変化率を評価した結果は、初期ジッタが6%台、50000回の書換え後で8%台と第1の実施例と同じ結果であった。
【0061】
(第4の実施例における構成および動作)
第2の実施例で、第二誘電体層4のZnSとNb酸化物の混合体の成膜する時に、ArのみでなくArに加え酸素を添加して成膜し、同構成の光情報記録媒体を作製した。添加した酸素の圧力は、4.2×10-4Torrである。
【0062】
本実施例の光情報記録媒体を初期結晶化後に評価したところ、初期ジッタが6%台で80000回の書換え後も8%台と良好であった。結果は、図2(IVb族なし酸素添加と表示)に示した。DOWは第2の実施例と比べると少なくなるが、10000回までのジッタ特性は改善されている。
【0063】
Arに加え酸素を添加して成膜した場合は、できた膜が化学量論比に近くなるので熱伝導性が第2の実施例の構成に比べて悪くなるため、光情報媒体としては熱がこもりやすくなる。その結果、熱的なダメージの蓄積が起こり難くなる傾向が第2の実施例に比べると弱くなる。DOWが悪くなるのは、そのためである。
【0064】
(第5の実施例における構成および動作)
第2の実施例の構成と同じZnSとNb酸化物の混合ターゲットを用い、酸素を導入した反応性スパッタにより誘電体膜を形成した。組成比はそれぞれモル比でZnS92%Nb酸化物8%である。導入した酸素ガスの量は酸素ガス単体の分圧で6×10-4Torrであった。
【0065】
酸素を導入した反応性スパッタにより誘電体膜を形成したのは、第一誘電体層2側は記録層3側から10nm、第二誘電体層4側も同じく記録層3側から5nmのところまでに相当する部分とし、その他の誘電体の部分は希ガスのみによりスパッタ成膜した。
【0066】
作製した光情報記録媒体を初期結晶化後に評価したところ、第4の実施例とほぼ同じ結果を得た。すなわち、初期ジッタが6%台であった。80000回の書換え後も8%台と良好であった。この場合では、成膜処理槽の増加を伴わず、成膜条件の変更のみで時間配分のみによって酸化物を含有する誘電体部分と含有しない誘電体部分を形成できた。
【0067】
(第6の実施例における構成および動作)
プラスチック基板として厚さが0.6mmのポリカーボネートの透明基板1上にマグネトロンスパッタ装置を用いて光情報記録媒体を成膜した。第一誘電体層2は、ZnS・Cr23とした。組成はZnS80%Cr2320%(モル比)であり、膜厚は70nmである。
【0068】
次に、相変化記録層である記録層3は、Ag1−In8−Sb65−Te26(比率はモル比)を17nmの膜厚で成膜した。第二誘電体層4も、第一誘電体層2と同組成のZnS・Cr23の混合膜とした。膜厚は20nmである。この記録層の組成で8.5m/sの線速に対応できる。一方、反射放熱層である反射層5はAg、膜厚は140nmである。
【0069】
このディスクを大出力レーザを使用して初期結晶化を行い、その後650nmNA0.6の光ピックアップを持つドライブで評価した。線記録密度0.267μm/bit、トラックピッチ0.74μm、記録線速度8.5m/s、信号は8/16変調した。
【0070】
このディスクの初期ジッタは、6.5%であった。50000回の書換え後でも8%台を維持し繰り返し記録消去の特性変化が比較的小さく良好であった。
【0071】
(第7の実施例における構成および動作)
純粋に近いものはNb25単体の電気抵抗は高抵抗であるが、酸素欠乏状態(NbO2あるいはNbO)とすることで金属相あるいは半導体相となり、10-2〜10-5Ωcm台まで比抵抗が下がる。この様な組成のNb酸化物を導電材として絶縁材料であるZnSと混合してターゲットを作製した。
【0072】
Nb酸化物15vol%以上(7mol%相当以上)では焼結体自体の比抵抗が小さくなり直流マグネトロンスパッタが可能である。本実施例では、Nb酸化物の含有量は20vol%とした。このときのターゲットの比抵抗値は4.5Ωcmであった。この誘電体を直流マグネトロン方式でスパッタした。アーク放電を起こすこともなく安定して成膜が可能であった。
【0073】
次に、このターゲットを用いて第3の実施例に示したものと同様な酸素添加した条件で誘電体膜を形成し、同構成で光情報記録媒体を作製し、第3の実施例と同等な光情報記録媒体の特性が得られた。
【0074】
以下、本発明の実施例に対する比較例について、説明する。
【0075】
(第1の比較例における構成および動作)
第二誘電体層4を第一誘電体層2と同じ組成のZnS・SiO2 とし、他は第2の実施例と全て同じ材質・膜厚条件で光情報記録媒体を製作した。
【0076】
本比較例のディスクを大出力レーザを使用して初期結晶化を行い、その後 650nmNA0.6 の光ピックアップを持つドライブで評価した。線記録密度0.267 μm/bit 、トラックピッチ 0.74 μm 、記録線速度 8.5m/s 、信号は 8/16 変調した。
【0077】
本比較例のディスクの初期ジッタは、6%台であった。5000回の書換え後は8.5%であるが、10000回の書換え後は10%にまで上昇した。DOWの結果を図2(IVb族ありと表示)に示す。
【0078】
第1の実施例に比較しDOWが悪くなるのは、ZnS・SiO2材料では熱的なダメージの繰り返しによりSiが記録層に拡散し、初期の熱バランスが崩れたことに原因している。
【0079】
(第2の比較例)
第一誘電体層2を第1の実施例と同じ組成のZnS・SiO2とし、第二誘電体層4を導電性SiCとした他は全て同じ材質・光学膜厚条件で光情報記録媒体を製作した。
【0080】
初期化後、この光情報記録媒体を評価したところ、16mWのパワーでもアモルファス・マークを記録することができなかった。この導電性SiCの比抵抗は、ターゲットの状態で2.1×10-3Ωcm、膜では2.1×102Ωcmであった。このように導電性がある場合は、熱伝導性も良くなるので記録材料の温度を溶融するまで充分に上げられずアモルファス・マークを記録することができないので実用的ではない。
【0081】
(第3の比較例における構成および動作)
記録層3をGeSbTeにした他は全て第1の実施例と同材料同条件にして光情報記録媒体を形成した。このディスクを大出力レーザを使用して初期結晶化を行い、その後650nmNA0.6の光ピックアップを持つドライブで評価した。誘電体層をZnSSiO2の場合と比べると、繰り返し記録・消去後の再現回数は全く差がなかった。
【0082】
(第4の比較例における構成および動作)
反射層5をAlにした他は全て実施例1と同材料同条件にして光情報記録媒体を形成した。このディスクを大出力レーザを使用して初期結晶化を行い、その後650nmNA0.6の光ピックアップを持つドライブで評価した。このディスクの初期ジッタは、Ag場合と同様7%であった。しかし、対応できる線速を測定してみると、1.5m/s遅い8.5m/sであった。
【0083】
(第5の比較例における構成および動作)
Arガス分圧が4.0〜4.1×10-3Torrとし酸素分圧が1.1×10-3Torrとして、Nb酸化物を約40mol%含有するZnSを誘電体として用い、AgInSbTe四元系相変化記録材料を記録層としてメディアを作製し評価した。850Wのレザーパワーにより初期化後、660nmの半導体レーザで書き込みしたところ、条件を色々と変えても記録層をアモルファス化することができず、情報の書き込みできなかった。
【0084】
(第6の比較例における構成および動作)
ZnSとNb酸化物の組成比で、Nb酸化物が15vol%未満(7mol%未満)の場合は、直流マグネトロンスパッタ放電時にアーク放電が起こり、直流スパッタ電源が異常電流を検出しダウンし、薄膜を形成することができなかった。スパッタ陰極電圧をパルス状に反転させ、陰極への電圧をパルス印可してもアーク放電が継続して発生し成膜できなかった。
【0085】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、時的に繰り返し記録および消去されることにより生じる記録材料への誘電体材料成分の拡散が起きても、初期の熱バランスを崩さない材料で誘電体層を形成することによって、繰り返し記録および消去の回数を飛躍的に向上することが可能となる。さらに、ZnSとの混合膜とした場合は、ZnSの成膜速度が速いので生産性を落とすことがなく、ZnSの結晶化による膜のクラック発生等の弊害を抑制することが可能となる。
【0086】
また、本発明によれば、ある程度の熱伝導性を有する金属の酸化物を誘電体層に用いることによって、高線速記録および消去に対応した適当な熱伝導の誘電体層を得ることが可能となる。
【0087】
また、本発明によれば、Ti、V、Nb、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Rh、Ir、およびPtからなる群から選択される金属の酸化物単独では熱伝導が大き過ぎる場合でも、ZnSを混合することによって、熱伝導の増大を押さえることができるとともに高線速に対応した反射放熱層への冷却効果を保持することが可能となる。
【0088】
また、本発明によれば、誘電体材料として、炭素を除くIVb族元素を含まない化合物と、その化合物と硫化亜鉛の混合体と、Ti、V、Nb、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Rh、Ir、Ptからなる群から選択される金属の酸化物と、のいずれかを用いる場合、誘電体材料を層全体として用いなくとも、記録材料への誘電体材料成分の拡散を起こさないためのバリア層として、上記の誘電体層を用いることによって、繰り返し記録および消去の回数を飛躍的に向上することが可能となる。
【0089】
また、本発明によれば、記録材料として溶融記録および消去系の材料であるAgInSbTeを用いることによって、溶融時に材料成分を容易に拡散させることが可能となる。
【0090】
また、本発明によれば、反射層用材料として、熱伝導性が良好であるAgまたはAgを90%以上含む合金を用いることによって、高線速対応のための急冷構造が容易に実現することが可能となる。また、誘電体材料として用いるZnS中のイオウとAgとの反応による反射層の腐食は添加する材料および製造条件により対処可能である。
【0091】
また、本発明によれば、時的に繰り返し記録および消去されることにより生じる記録材料への誘電体材料成分の拡散が起きても、初期の熱バランスを崩さない材料で誘電体層を形成することによって、繰り返し記録および消去の回数を飛躍的に向上することが可能となる。さらに、ZnSとの混合膜とした場合は、ZnSの成膜速度が速いので生産性を落とすことがなく、ZnSの結晶化による膜のクラック発生等の弊害を抑制することが可能となる。
【0092】
また、本発明によれば、ある程度の熱伝導性を有する金属の酸化物を誘電体層に用いることによって、高線速記録および消去に対応した適当な熱伝導の誘電体層を得ることが可能となる。
【0093】
また、本発明によれば、Ti、V、Nb、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Rh、Ir、およびPtからなる群から選択される金属の酸化物単独では熱伝導が大き過ぎる場合でも、ZnSを混合することによって、熱伝導の増大を押さえることができるとともに高線速に対応した反射放熱層への冷却効果を保持することが可能となる。
【0094】
また、本発明によれば、誘電体材料として、炭素を除くIVb族元素を含まない化合物と、その化合物と硫化亜鉛の混合体と、Ti、V、Nb、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Rh、Ir、Ptからなる群から選択される金属の酸化物と、のいずれかを用いる場合、誘電体材料を層全体として用いなくとも、記録材料への誘電体材料成分の拡散を起こさないためのバリア層として、上記の誘電体層を用いることによって、繰り返し記録および消去の回数を飛躍的に向上することが可能となる。
【0095】
また、本発明によれば、記録材料として溶融記録および消去系の材料であるAgInSbTeを用いることによって、溶融時に材料成分を容易に拡散させることが可能となる。
【0096】
また、本発明によれば、反射層用材料として、熱伝導性が良好であるAgあるいはAgを90%以上含む合金を用いることによって、高線速対応のための急冷構造が容易に実現することが可能となる。また、誘電体材料として用いるZnS中のイオウとAgとの反応による反射層の腐食は添加する材料および製造条件により対処可能である。
【0097】
また、本発明によれば、誘電体材料として、炭素を除くIVb族元素を含まない化合物、およびその化合物と硫化亜鉛の混合体を用いた場合、その誘電体材料をターゲットとし、希ガスのみでスパッタすることによって、簡便に成膜することが可能となり、生産性が向上する。
【0098】
また、本発明によれば、酸化物中の酸素含有量を増大させることによって、熱伝導性を低下させることが可能となるとともに、記録および消去時に半導体レーザからのエネルギーを記録層周辺に留めることが可能となる。また、記録層を囲む誘電体の熱伝導性の制御が容易になり、光情報記録媒体の熱的な面での設計上の対応範囲を拡大することが可能となる。
【0099】
また、本発明によれば、誘電体材料として、炭素を除くIVb族元素を含まない化合物、およびその化合物と硫化亜鉛の混合体を用いた場合、その誘電体材料をターゲットとし、誘電体膜と記録層と接触する面近傍3nm以上を希ガスに加え酸素ガスを導入してスパッタし、さらに記録層と離れた部分を希ガスのみでスパッタすることによって、酸素導入の時間制御のみで記録層を囲む誘電体の熱伝導性の制御を容易に実現し、光情報記録媒体の熱的な面での設計上の対応範囲を拡大することが可能となる。
【0100】
また、本発明によれば、酸素の分圧を1.0×10-4〜9.0 ×10-4Torrとすることによって、記録層の劣化を伴うことなく、誘電体への酸化物の導入を実施することが可能となる。
【0101】
また、本発明によれば、ターゲットの比抵抗が10Ωcm以下であり、Ti、V、Nb、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Rh、Ir、およびPtからなる群から選択される金属の酸化物、あるいはその酸化物と硫化亜鉛の混合体とからなる誘電体材料により構成される誘電体膜を高周波スパッタと比較して安価で成膜速度も速い直流スパッタあるいは直流マグネトロンスパッタにより製造することによって、装置コストを削減するとともに、光情報記録媒体製造面で効率的に生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における光情報記録媒体の構造を示す図である。
【図2】本発明の一実施例における光情報記録媒体のDOWとジッタとの関係を示す図である。
【符号の説明】
1 透明基板
2 第一誘電体層
3 記録層
4 第二誘電体層
5 反射層
6 保護層

Claims (9)

  1. 透明基板上に少なくとも、第一誘電体層、記録層、第二誘電体層、反射層を順次積層した相変化型の光情報記録媒体であって、
    前記記録層は、溶融記録系材料のAg、In、Sb、およびTeを含む系の材料で構成されており、
    前記第一誘電体層および前記第二誘電体層が前記記録層と接触する面を含む層のうち少なくとも一方は、Ti、Nb、又はCrの酸化物と、ZnSの混合物からなる誘電体材料により構成されており、前記ZnSの量が80〜92%であることを特徴とする光情報記録媒体。
  2. 前記第一誘電体層および前記第二誘電体層のうち少なくとも一方は、複数の誘電体層から構成されており、前記複数の誘電体層のうち前記記録層と接触する少なくとも1つの層は、前記誘電体材料により構成されていることを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体。
  3. 前記第一誘電体層および前記第二誘電体層のうち少なくとも一方は、複数の誘電体層から構成されており、前記複数の誘電体層から構成される前記少なくとも一方は、前記記録層と接触する面近傍3nm以上が前記誘電体材料により構成されていることを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体。
  4. 透明基板上に少なくとも、第一誘電体層、記録層、第二誘電体層、反射層を順次積層する相変化型の光情報記録媒体の製造方法であって、
    溶融記録系材料のAg、In、Sb、およびTeを含む系の材料で前記記録層を生成する記録層生成工程と、
    前記第一誘電体層および前記第二誘電体層が前記記録層と接触する面を含む層のうち少なくとも一方を、Ti、Nb、又はCrの酸化物と、ZnSの混合物からなる誘電体材料により生成する誘電体層生成工程と、を有し、
    前記ZnSの量が80〜92%であることを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。
  5. 前記第一誘電体層および前記第二誘電体層のうち少なくとも一方を、複数の誘電体層で構成し、前記複数の誘電体層のうち前記記録層と接触する少なくとも1つの層を、前記誘電体材料により生成することを特徴とする請求項4記載の光情報記録媒体の製造方法。
  6. 前記第一誘電体層および前記第二誘電体層のうち少なくとも一方を、複数の誘電体層で構成し、前記複数の誘電体層で構成する前記少なくとも一方は、前記記録層と接触する面近傍3nm以上を前記誘電体材料により生成することを特徴とする請求項4記載の光情報記録媒体の製造方法
  7. 前記誘電体材料をターゲットとし、希ガスのみでスパッタすることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の光情報記録媒体の製造方法。
  8. 前記誘電体材料をターゲットとし、希ガスに加え酸素ガスを導入してスパッタすることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の光情報記録媒体の製造方法。
  9. 前記誘電体材料をターゲットとし、前記記録層と接触する面近傍3nm以上を、希ガスに加え酸素ガスを導入してスパッタすることを特徴とする請求項6記載の光情報記録媒体の製造方法。
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