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JP4124455B2 - 配線転写シート、配線基板、及びトランジスタの製造方法 - Google Patents

配線転写シート、配線基板、及びトランジスタの製造方法 Download PDF

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JP4124455B2
JP4124455B2 JP2003179749A JP2003179749A JP4124455B2 JP 4124455 B2 JP4124455 B2 JP 4124455B2 JP 2003179749 A JP2003179749 A JP 2003179749A JP 2003179749 A JP2003179749 A JP 2003179749A JP 4124455 B2 JP4124455 B2 JP 4124455B2
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、薄型ディスプレイ、機構部品等に利用する配線基板及び配線転写シート等の電子デバイス、並びにその製造方法に関するものであり、特に、微細な導体配線パターンの形成を極めて高精度に行うことに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
配線基板及び配線転写シート等の微細な配線パターンやアクティブ回路の形成は、フォトプロセスやエッチングプロセスを用いて行うのが一般的であるが、この方法では製造費用が高価となり、廃棄物により環境にも悪影響を与えるものである。また、曲面や複数の平面から構成される面への回路形成が困難であった。
【0003】
そこで、従来ではフォトプロセスやエッチングプロセスを用いることなく、回路パターンを被転写物の表面に転写して回路形成をすることが行われている。例えば、特開平9−312460号公報に記載されているように、ベース部22上に回路パターン26を印刷して連続状態の回路転写物21を作成しておき、ベース部22の裏面より熱および/又は圧力を加えることにより、被転写物34の表面に回路パターン26を転写して回路形成を行っている。
また、特開平11−207959号公報には、基板に回路パターンを形成するとき、乾燥前に流動体が広がり過ぎず、乾燥後に回路パターンが分断されないように、前記基板に親水域又は疎水域からなる回路パターンを設けることが記載されている。
【0004】
【従来技術の問題点】
回路パターンを被転写物の表面に転写して回路形成をするものは、ベース部を剥離する時に配線の損傷等のダメージを与える恐れがあり、微細配線には適さないものである。
また、基板上で導電性インクの形状を制御するために親水域又は疎水域を形成するものにおいては、別途パターンニングプロセスが全ての基板において必要であるため、製造費用が高価となる。
【0005】
また、一般的に回路パターンは細長く繋がった線の集まりであり、この配線形成は導通のための連続性と形状精度の両方を満足する必要がある。
支持体上に導電性インクで微細パターンを印刷により形成して、回路パターンを有する配線基板や配線転写シートを製造する場合における導電性インクの粘度については、次のようなことが検討されなければならない。
【0006】
微細パターンを印刷により形成するためには、使用する導電性インクは低粘度である必要がある。このことは、インクジェット方式の場合は微少量の液滴を吐出する必要があり(高粘度の液体でピコリットルやフェムトリットルの液滴はできない)、また版(凸版、凹版、平版)による場合も、版に形成されたパターンの部分だけにインクを保持させるために、インクは低粘度である必要があるからである(高粘度の場合は、地汚れやそれが原因になって短絡する恐れがある)。
一方、基板上において導電性インクで形成した微細パターン形状を維持するためには、インクは高粘度(流動性が低い)である必要がある。基板上には、凹凸によるパターン形状や濡れ性の違いによるパターン形状は形成されてないので、水のような低粘度のインクは集まって水玉になってしまいパターン形状を維持することができない。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−312460号公報
【特許文献2】
特開平11−207959号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、フォトプロセスやエッチングプロセスを用いずに、微細配線パターンやアクティブ回路を、印刷や転写プロセス技術を用いることにより、安価で環境に悪影響を与えないで形成できるようにすると共に、曲面や複数の平面から構成される面へ回路形成を行うことを目的とするものであり、そのために解決しようとする課題は次のとおりである。
【0009】
【課題1】
請求項1、2に対応)
課題1は、配線基板や配線転写シート等の電子デバイスの製造工程において、支持体上に水溶性高分子からなる増粘層を形成することにより、前記支持体上に導電性インクで微細パターンを印刷(転写)する前後で、前記導電性インクの粘度を低粘度から高粘度へ変化させて、前記支持体上に導体配線パターンを導通のための連続性を保ちながら高精度に形成することである。
【0010】
【課題2】
請求項3〜5に対応)
課題2は、離型性の支持体上に水溶性高分子からなる増粘層を形成し、その増粘層上に導体配線パターンを形成して配線転写シートを構成することにより、被転写用支持体(基板)が曲面や複数の平面から構成されていても、高精度の導体配線パターンを有する配線基板やトランジスタ等の電子デバイスを製作することである。さらに、前記離型性の支持体を剥離するとき、配線の損傷等のダメッジを防止することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
【解決手段1】

上記課題1を解決するために講じた手段は、支持体上に水溶性高分子からなる増粘層を形成して配線形成用基板を製作する工程と、前記増粘層上に水性の導電性インクで所定のパターンを形成する工程と、前記導電性インクを硬化させて前記配線形成用基板上に所定の導体配線パターンを形成する工程と、からなる配線基板を製造する方法である。
【0012】
【作用】
配線形成用基板の増粘層の上に水性の導電性インクで所定のパターンを形成することにより、前記導電性インクと水溶性高分子の接触部分において、導電性インクの粘度が低粘度から高粘度となり、前記所定のパターンの形状が乱れるのを防止でき、支持体上に高精度で且つ連続性を備えた導体配線パターンを形成することができる。
【0013】
【実施態様1】

実施態様1は、上記解決手段1において、増粘層が水溶性セルロースからなる配線基板を製造する方法である。
【作用】
水性導電性インクと水溶性セルロースの接触部分でセルロースが溶解し、その部分の粘度が高くなり所定のパターンが乱れるのを防止することができる。また、水溶性セルロースは安全性が高く安価でもある。
【0014】
【実施態様2】

実施態様2は、上記解決手段1又は実施態様1において、増粘層の厚さが1μm以下である配線基板を製造する方法である。
【作用】
増粘層を薄くすることにより吸収による影響を排除することができ、導体配線パターンにおける導通のための連続性と形状精度の両方を満足することが可能となる。水分を吸収して粘度を高くするのとは異なり、増粘層が薄くても効果が発現できる。導電性インクに対して0.1Wt%でも増粘効果が有効であり、インク量にもよるが、0.1μm厚でも良い
【0015】
【実施態様3】

実施態様3は、上記解決手段1又は実施態様1〜2において、導電性インクは、水を主溶媒としたものに導電性微粒子を分散させて、溶媒中にOH基と反応する官能基を2個以上有する化合物を溶かしたものからなり、増粘層の一部が不溶化される配線基板を製造する方法である。
【作用】
導電性インクにOH基と反応する官能基が含まれているので、導体配線パターンの下部分を選択的に不溶化することができて、導体配線パターンの保護層とすることができる。このような保護層を有する配線基板は、水分に対して信頼性が高く、また保護層を別途形成する必要もない
【0016】
【実施態様4】

実施態様4は、上記実施態様3において、増粘層に不溶化溶液を塗布して、該増粘層全体を不溶化する配線基板を製造する方法である。
【作用】
増粘層に不溶化溶液を塗布することにより、前記増粘層全体を不溶化処理して不溶解層とすることができる。
【0017】
【実施態様5】

実施態様5は、上記解決手段1又は実施態様1〜4において、濡れ性の違いにより所定のパターンが形成されている版を用いて、増粘層上に導電性インクで所定のパターンを形成する配線基板を製造する方法である。
【作用】
濡れ性の違いにより導電性インクで版上に形成された所定のパターンを印刷(転写)することにより、増粘層上に導電性インクで所定のパターンを形成することができ、少ない工程で安価に配線基板を製作することができる
【0018】
【実施態様6】
請求項1に対応)
実施態様6は、増粘層に対して離型性を有する材料からなる支持体上に、水溶性高分子からなる増粘層を形成して配線形成用シートを製作する工程と、前記増粘層上に水性の導電性インクで所定のパターンを形成する工程と、形成されたパターンの下部分を不溶化する工程と、前記導電性インクを硬化させて前記配線形成用シート上に所定の導体配線パターンを形成する工程と、からなる配線転写シートを製造する方法である。
【作用】
配線形成用シートの増粘層の上に、水性の導電性インクで所定の導体パターンを形成することにより、前記導電性インクと水溶性高分子の接触部分において、導電性インクの粘度が低粘度から高粘度となり、前記所定のパターンの形状が乱れるのを防止でき、増粘層に対して離型性を有する支持体上に高精度の導体配線パターンを形成することができる。
また、導体配線パターンの下部分を選択的に不溶化することができて、導体配線パターンの保護層とすることができる。このような保護層を有することにより、水分に対して信頼性が高く、また保護層を別途形成する必要もない
【0019】
【実施態様7】
請求項2に対応)
実施態様7は、実施態様6において、所定の導体配線パターンと増粘層の上に、有機半導体層を形成する工程を具備する配線転写シートを製造する方法である。
【0020】
【解決手段2】
請求項3に対応)
上記実施態様6の製造方法により製造された配線転写シートを被転写用支持体上に接着して配線基板を製造する方法であって、前記被転写用支持体上に接着剤層を形成する工程と、前記配線転写シートを前記被転写用支持体上に加熱・加圧して接着する工程と、前記配線転写シートの支持体を剥離し不溶化されていない増粘層を水洗いにより除去する工程と、からなる配線基板を製造する方法である。
【0021】
【作用】
被転写用支持体上に上記実施態様6の製造方法により製造された配線転写シートを接着し、前記配線転写シートの不溶化されていない増粘層を除去することにより、被転写用支持体上に導体配線パターンを転写して配線基板を製造することができる。前記配線転写シートの増粘層は、水に溶ける配線保持層として機能し、転写後に支持体を剥離し、その後配線保持層(増粘層)を溶解除去することで、剥離に伴う配線の損傷等のダメージを回避することができる。また、増粘層のうち不溶化された不溶解部分は、導体配線パターンの保護層となるが、この保護層は一回の転写で同時に形成することができる。
【0022】
【実施態様1】
請求項4に対応)
実施態様1は、上記解決手段2おいて、被転写用支持体が曲面及び/又は複数の平面から構成される面を備えている配線基板を製造する方法である。
【作用】
被転写用支持体が、曲面及び/又は複数の平面から構成される面を備えている場合であっても、被転写用支持体上に導体配線パターンを高精度に形成することができる。
【0023】
【実施態様2】
請求項5に対応)
実施態様2は、上記解決手段2の製造方法により製造された配線基板と、上記実施態様7の製造方法により製造された配線転写シートを接合してトランジスタを製造する方法であって、前記配線基板の増粘層の不溶化部分を除去する工程と、前記配線基板上に絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層が形成された配線基板と、前記配線転写シートとを位置合わせした後、密着し加熱して接合する工程と、前記増粘層を溶解除去する工程と、からなるトランジスタを製造する方法である。
【作用】
解決手段2により製造された配線基板と、実施態様7により製造された配線転写シートとを絶縁層を介して接合し、前記配線転写シートの支持体を剥離することによりトランジスタを製造することができるから、印刷と転写プロセスによりトランジスタを製作できることになり、低コストで曲面や複数の平面から構成される面にもアクティブ回路を形成することができる。
【0024】
【実施の形態】
フォトプロセスやエッチングプロセスを用いることなく印刷や転写技術により、高精度の導体配線パターンを有する配線基板等の電子デバイスを製造する方法、及びその製造方法により製作される電子デバイスについて、それらの実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0025】
【実施例1】
先ず、実施例1について、図1〜図3を参照しながら説明する。
実施例1の配線基板の製造方法は、次の工程(1)〜(4)からなる。
(1) 水溶性セルロース(信越化学:メトローズ)の4%水溶液をガラスからなる支持体1上に塗布し、乾燥させて厚さ0.4〜0.8μmの水に可溶な高分子層からなる増粘層2を形成して、図1に示される配線形成用基板を製作する。
(2) 濡れ性の違いによりパターンが形成された版上に、水性の導電性インク(日本ペイント)でパターンを形成した後、この導電性インクパターンを前記配線形成用基板の増粘層2(水溶性セルロース)の上に印刷(転写)して、所定の導電性インクパターン5を形成する(図3(a))。
【0026】
(3) 水性の導電性インクと水溶性セルロースの接触部分でセルロースが溶解しその部分の粘度が高くなり(高粘度部6)、パターン形状が乱れるのを防止できる(図3(b))。この時、水分の蒸発の促進とセルロースの溶解制御のために、加熱することが有効である。
(4) 150℃で30分間インクを硬化(ナノ金属の融着が発生する)させて、配線形成用基板上に導体配線パターン4が形成される(図3(c))。
なお、水溶性樹脂としては、水溶性セルロースの他にポリビニルアルコール、ポリビニルピロドリン等も有効である。
【0027】
上記実施例1の製造方法により製作された配線基板は、図2及び図3(c)に示されており、次のように構成されている。
配線形成用基板は、支持体1上に水溶性高分子からなる増粘層2が形成されて構成される。前記増粘層2上には、微少金属粒子が相互融着してなる所定の導体配線パターン4が形成され、該導体配線パターン4の下部には、微少金属粒子と高分子の混合部からなる保持層3が形成されている。
【0028】
【実施例2】
実施例2について、図4を参照しながら説明する。
実施例2の製造方法は、基本的には実施例1の製造方法と類似するものであり、次の工程(1)〜(4)からなる。
(1) 水溶性セルロース(信越化学:メトローズ)の4%水溶液をガラスからなる支持体1上に塗布し、乾燥させて厚さ0.4〜0.8μmの水に可溶な高分子層からなる増粘層2を形成して、配線形成用基板を製作する。
(2) 濡れ性の違いによりパターンが形成された版上に、水性の導電性インク(日本ペイント)にOH基と反応する官能基を2個以上有する化合物を0.1〜1%溶かしたものでパターンを形成した後、この導電性インクパターンを前記配線形成用基板の増粘層2(水溶性セルロース)の上に印刷(転写)して、所定のパターンを形成する。
【0029】
(3) 導電性インクは、水溶媒中に粒径が50nm以下の導電性微粒子を凝集防止用の高分子と共に分散させたものである。
架橋剤としては尿素ホルマリン樹脂、メチロールメラミン樹脂、グリオキザール、タンニン酸等がある。より具体的には、架橋剤としてメチロールメラミン樹脂(Sumitex Resin M−3:住友化学)0.1%と、架橋剤に対して10%の触媒(Sumitex Acce1erator:住友化学)をインクに加え、パターン印刷後に105℃で2時間キュアリングを行い、パターンの下部分を不溶化して不溶解部分8を形成する。
(4) その後、150℃で30分間インクを硬化させて、前記配線形成用基板上に導体配線パターン4を形成する。
【0030】
上記実施例2の製造方法により製作された配線基板は、図4に示されており、次のように構成されている。
配線形成用基板は、支持体1上に水溶性高分子からなる増粘層2が形成されて構成される。前記増粘層2上には、所定の導体配線パターン4が形成され、該導体配線パターン4の下部には、前記増粘層2が不溶化された不溶解部分8が形成されている。
【0031】
【実施例3】
次に、実施例3について、図5を参照しながら説明する。
実施例3の製造方法は、基本的には実施例2の製造方法と類似するものであり、次の工程(1)〜(5)からなる。
(1)〜(4)は、上記実施例2と同じである。(図5(a))
(5) 最後に、前記架橋剤及び触媒を含む不溶化溶液7を塗布手段9により全体に塗布して(図5(b))、再度105℃で2時間キュアリングを行い、前記増粘層全体を不溶化して不溶解層10を形成した。(図5(c))
【0032】
上記実施例3の製造方法により製作された配線基板は、図5(c)に示されており、次のように構成されている。
配線形成用基板は、支持体1上に増粘層2を不溶化した不溶解層10が形成されて構成される。前記不溶解層10上には、所定の導体配線パターン4が形成されている。
【0033】
【実施例4】
次に、実施例4(請求項1に対応)について、図6を参照しながら説明する。
実施例4の製造方法は、基本的には実施例2の製造方法と類似するものであり、次の工程(1)〜(4)からなる。
(1) 水溶性セルロース(信越化学:メトローズ)の4%水溶液を、水溶性セルロースの熱ゲル化発生温度以上(55〜70℃)に加熱した厚さ30μmのテフロン(登録商標)フィルム(テフロン基板)上に塗布する。水溶性セルロースをゲル化することで、塗布後テフロンフィルムの撥水性により塗膜が不均一になるのを防止する。その後、乾燥させて0.4〜0.8μmの水に可溶な高分子層からなる増粘層を形成して、配線形成用シートを製作する。
【0034】
(2) 濡れ性の違いによりパターンが形成された版上に、水性の導電性インク(日本ペイント)にOH基と反応する官能基を2個以上有する化合物を0.1〜1%溶かしたインクでパターンを形成した後、この導電性インクパターンを前記配線形成用シートの増粘層(水溶性セルロース)の上に印刷(転写)して、所定のパターンを形成する。
(3) 架橋剤としては尿素ホルマリン樹脂、メチロールメラミン樹脂、グリオキザール、タンニン酸等がある。より具体的には架橋剤としてメチロールメラミン樹脂(Sumitex Resin M−3:住友化学)0.1%と、架橋剤に対して10%の触媒(Sumitex Acce1erator:住友化学)をインクに加え、パターン印刷後に105℃で2時間キュアリングを行い、パターンの下部分を不溶化して不溶解部分8を形成する。
【0035】
(4) しかる後、150℃で30分間インクを硬化さて、前記配線形成用シート上に導体配線パターンを形成する。
なお、架橋剤を含まない導電性インクを併用し、2種類のインクで印刷すれば、選択的に配線パターンの下部分を不溶化できる。
【0036】
上記実施例4の製造方法により製作された配線転写シートは、図6に示されており、次のように構成されている。
配線形成用シートは、テフロンフィルム等からなる支持体11上に増粘層2が形成されて構成される。前記増粘層2上には、所定の導体配線パターン4が形成され、該導体配線パターン4の下部には、前記増粘層2が不溶化された不溶解部分8が形成されている。
【0037】
【実施例5】
実施例5(請求項3及び4に対応)について、図7及び図8を参照しながら説明する。
実施例5の製造方法は、上記実施例4の製造方法で製造した配線転写シートを被転写基板上に接着することにより配線基板を製作する方法であり、次の工程(1)〜(4)からなる。
(1) 被転写基板21上に接着剤層22を形成する。(図7(a))
(2) 被転写基板21上に配線転写シートを接着剤で貼り合わせて、加熱・加圧手段30により加熱・加圧して接着する。(図7(b))
(3) 前記配線転写シートのテフロンフィルムからなる支持体11を剥離し、水溶性フィルムである増粘層2を水洗い手段31により水洗いして溶融除去する。(図7(c))
(4) 被転写基板21に導体配線パターン4が転写されて、配線基板が完成する。増粘層2のうち不溶化された部分は水洗により除去されないので、導体配線パターン4の保護層として残る。(図7(d))
【0038】
また、上記製造方法によれば、被転写基板21が曲面や複数の平面から構成されている面を備えるものであっても、その面に導体配線パターン4を高精度に形成することができる。このように被転写基板21が曲面等を備える場合には、ローラによる加熱・加圧が有効である。(図8参照)
接着剤としては、熱硬化性、熱可塑性、紫外線硬化性等のものを適用することができるが、それらに限定されるものではない。また、転写面自体がパターン保持機能を有している場合も対象となる。(基板が熱可塑性樹脂材料で構成されている等が該当する)
【0039】
上記実施例5の製造方法により製作された配線基板は、図7(d)及び図8に示されており、次のように構成されている。
接着剤層22が形成された被転写用支持体21上に所定の導体配線パターン4が形成され、前記導体配線パターン4上には増粘層が不溶化処理されて不溶解部分8となった保護層が形成されている。
【0040】
【実施例6】
実施例6(請求項2に対応)について、図9を参照しながら説明する。
実施例6の製造方法は、上記実施例4の製造方法により製作された配線転写シートの上に有機半導体層12を形成して配線転写シートを製造する方法であり、次の工程(1)〜(5)からなる。
(1) 〜(4)の工程は、上記実施例4と同じである。
(5) 実施例4の製造方法により製作された配線転写シートの導体配線パターン4(ゲート電極に対応する)の上に有機半導体層12を形成する。
前記半導体層は、ポリチオフェン系を塗布し100〜250℃で処理して形成する。また、導体(ゲート電極)である導体配線パターン4には、PPV(ポリフェニレンビニレン)やPEDOT(ポリチオフェン系)などの導電性高分子を用いることも可能である。
【0041】
上記実施例6の製造方法により製作された配線転写シートは、図9に示されており、次のように構成されている。
配線形成用シートは、テフロンフィルム等からなる支持体11上に増粘層2が形成されて構成される。前記増粘層2上には、所定の導体配線パターン4が形成され、該導体配線パターン4の下部には、前記増粘層2が不溶化された不溶解部分8が形成されている。さらに、前記導体配線パターン4の上には有機半導体層12が形成されている。
【0042】
【実施例7】
実施例7(請求項5に対応)について、図10を参照しながら説明する。
実施例7の製造方法は、上記実施例5の製造方法により製作された配線基板と、上記実施例6の製造方法により製作された配線転写シートを接合してトランジスタを製造する方法であって、次の工程(1)〜(4)からなる。
(1) 実施例5の製造方法で製作された配線基板(図7(d)参照)において、増粘層の不溶解部分8(保護層)を除去する。
(2) 前記配線基板上に、PVPh(ポリビニルフェノール)などの絶縁部材23を塗布する。(図10(a))
【0043】
(3) 前記配線基板の所定の導体配線パターン4(ソース電極とドレイン電極)に対して、実施例6の製造方法で製作された配線転写シートの導体4(ゲート電極)と半導体12からなる所定のパターンを位置合わせした後、絶縁体23を介して密着させ、その後100〜250℃で処理して接合する。(図10(b))
(4) 次に、水溶性フィルムからなる増粘層2を溶解除去し、トランジスタを形成する。前記増粘層2の不溶解部分8は導体4(ゲート電極)の保護膜となる。(図10(c))
【0044】
上記実施例7の製造方法により製作された有機半導体トランジスタは、図10(c)に示されており、次のように構成されている。
被転写用支持体21上に所定の導体配線パターン4(ソース電極及びドレイン電極)が接着剤層22により接着され、その上に絶縁層23が形成され、さらにこの絶縁層の上に、保護膜付きの導体配線パターン4(ゲート電極)を有する有機半導体層12が形成されている。
【0045】
【発明の効果】
この発明の効果を主な請求項毎に整理すると次のとおりである。
1.請求項1の発明の効果
支持体上に水溶性高分子からなる増粘層を設けることにより、水性の導電性インクと水溶性高分子の接触部分において、導電性インクの粘度が低粘度から高粘度となり、前記所定のパターンの形状が乱れるのを防止でき、前記支持体上に高精度で且つ連続性を備えた導体配線パターンを形成することができる。
また、印刷(転写)技術を用いることにより、製造工程が少なく廃棄物もないため、資源生産性が高く省エネルギーで低コストである。
また、導体配線パターンの下部分を選択的に不溶化することができて、導体配線パターンの保護層とすることができる。このような保護層を有するので、水分に対して信頼性が高く、また保護層を別途形成する必要もない
0046
2.請求項3の発明の効果
配線転写シートに形成されている導体配線パターンを被転写用支持体上に転写することにより、配線基板等の電子デバイスを製作することができる。また、前記配線転写シートの支持体を剥離することに伴う配線の損傷等のダメッジを回避することができる。さらに、導体配線パターンを保護する保護層は、転写すると同時に形成することができる。
0047
3.請求項4の発明の効果
被転写用支持体が曲面及び/又は複数の平面から構成される面を備えるものであっても、導体配線パターンを低コストで高精度に形成することができる。
0048
4.請求項5の発明の効果
印刷と転写プロセスによりトランジスタを製作することができるから、低コストで曲面や複数の平面から構成される面にもアクティブ回路を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、増粘層が形成された支持体を表す模式図である。
【図2】は、支持体上の増粘層の上に導体配線パターンを形成した配線基板の模式図である。
【図3】は、図2に示された配線基板の製造方法を示す模式図である。
【図4】は、導体配線パターンの下部分の増粘層が不溶化された配線基板の模式図である。
【図5】は、図4に示された配線基板の増粘層全体を不溶化する方法を示す模式図である。
【図6】は、離型性を有する材料からなる支持体上に、導体配線パターンを形成した配線転写シートの模式図である。
【図7】は、図6に示された配線転写シートを基板上に接着して配線基板を製造する方法を示す模式図である。
【図8】は、配線転写シートを接着する基板が曲面からなる配線基板の模式図である。
【図9】は、導体配線パターンと増粘層の上に有機半導体層を形成した配線転写シートの模式図である。
【図10】は、配線基板と配線転写シートを接合してトランジスタを製造する方法を示す模式図である。
【符号の説明】
1:支持体(基板)
2:増粘層(水溶性高分子)
3:保持部
4:導体配線パターン
5:導電性インクパターン
6:高粘度部
7:不溶化溶液
8:不溶解部分
9:不溶化溶液塗布手段
10:不溶解層
11:支持体(離型性を有するシート状支持体)
12:有機半導体層
21:被転写用支持体(被転写用基板)
22:接着剤層
23:絶縁層
30:加圧・加熱手段
31:水洗い手段

Claims (5)

  1. 増粘層に対して離型性を有する材料からなる支持体上に、水溶性高分子からなる増粘層を形成して配線形成用シートを製作する工程と、
    前記増粘層上に水性の導電性インクで所定のパターンを形成する工程と、
    形成されたパターンの下部分を不溶化する工程と
    前記導電性インクを硬化させて前記配線形成用シート上に所定の導体配線パターンを形成する工程と、
    からなることを特徴とする配線転写シートの製造方法。
  2. 上記所定の導体配線パターンと増粘層の上に、有機半導体層を形成する工程を具備することを特徴とする請求項1に記載の配線転写シートの製造方法。
  3. 上記請求項1の製造方法により製造された配線転写シートを被転写用支持体上に接着して配線基板を製造する方法であって、
    前記被転写用支持体上に接着剤層を形成する工程と、
    上記配線転写シートを前記被転写用支持体上に加熱・加圧して接着する工程と、
    前記配線転写シートの不溶化されていない増粘層を水洗いにより除去する工程と、
    からなることを特徴とする配線基板の製造方法。
  4. 上記被転写用支持体が、曲面及び/又は複数の平面から構成されている面を備えていることを特徴とする請求項3に記載の配線基板の製造方法。
  5. 上記請求項3の製造方法により製造された配線基板と、上記請求項2の製造方法により製造された配線転写シートを接合してトランジスタを製造する方法であって、
    前記配線基板の増粘層の不溶化部分を除去する工程と、
    前記配線基板上に絶縁層を形成する工程と、
    前記絶縁層が形成された配線基板と、前記配線転写シートとを位置合わせした後、密着し加熱して接合する工程と、
    前記増粘層を溶解除去する工程と、
    からなることを特徴とするトランジスタの製造方法。
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