JP4123561B2 - ステアリングホイール用シート張着構造 - Google Patents
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Description
【発明の目的】
この発明は、自動車用内装部品のシート張着構造に関し、特に、ステアリングホイールの場合、利用者の手に頻繁に触れることから、その外観や感触、操作性等を重視した装飾用シートのステアリングホイール輪状基体への被着、一体化を可能とする新規な構造からなるステアリングホイール用シート張着構造を提供しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用内装部品は、デザインの自由度や軽量化等の目的から、現在、その多くを合成樹脂化されており、その素材としてポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ABS等が多く採用され、新たなデザインの付与と、製造コストの削減とを両立する様々な成形技術の開発が進められて来た。
例えば、インスツルメントパネルでは、ABSおよびポリ塩化ビニルシートを真空成形して表皮とした上、内部に半硬質ウレタンを注入、発泡させたものが現在、主流となっている。
【0003】
このような成形技術は、自動車市場の多様化、および高級化指向への移行に応えるべく、触感のソフト化や本革調表皮等の高品質化を実現するものとなり、更に、多くの部品を樹脂化可能とするものとなっている。
合成樹脂は、こうした自動車部品の樹脂化の流れにより、自動車の補助的材料から主材料の1つに位置付けられるまでになり、これに起因して廃自動車から発生されるシュレッダー・ダストの量を著しく増大してしまう結果となって、近年、更に強まる、大量廃棄社会からリサイクル社会への社会システムの変換をより困難なものとしてしまう要因の一つともなっている。
【0004】
このため、自動車メーカー各社では、てリサイクル容易な材料の開発と共に、自動車部品のリサイクルを進め、更に、環境負荷の少ない材料を採用する等の努力が行われており、消費者ニーズの多様化、個性化、質感、快適性等の乗る人の感性を満足させるものとしてだけでなく、車両室内環境の厳しい条件に対する耐久性に秀れる上、廃棄の際にも地球環境に優しい天然素材の採用が見直されるようになってきている。
【0005】
上述のような社会的要請を受ける自動車用内装部品の中、触感や質感を高め、外観を装飾して高級感を得ることができ、しかも適度に吸湿性があってステアリング操作時の安全性の確保がし安く、耐久性にも富むものとして本革巻ステアリングホイールが多く採用されているが、それは一般的に、図10の従前の本革巻ステアリングホイール1の斜視図に示されるような外観をもち、金属芯材をインサート成形された合成樹脂製の輪状基体の外周面側から、予め無端帯状に縫合された本革製の装飾シート体4を被着し、輪状基体の中心側で突き合わされた両縁部を手縫いによって縫合し、仕上げられるものである。
【0006】
このように手作業によって製造される本革巻ステアリングホイール1は、その縫合作業に非常な工数を必要とされることから、製造コストを引き下げるために海外生産に頼らざるを得ないのが現状となっており、もはや国内生産を可能とする部品ではないと云うのが常識となっているが、海外生産に頼る場合、確かに工賃は安くて済むものの、高度な技術を期待することは難しく、したがって、ステアリングホイール1が、操作時に常に手指に直接触れる部分であって、その触感、美観、操作性等を満足する品質を維持していなければならないにも拘らず、現状の体制で供給されているステアリングホイール1の縫合部分9は、縫合作業が未熟のために一定の品質を保つことが非常に難しく、自然に不良率も高くなると共に、その生産効率の向上も難しい製品となっている。また、実用上においても、複雑な縫い目部分の凹凸には汚れやゴミが付着し易く、非衛生的なものとなりがちな上、その部分から弱って耐久性にも支障を来してしまう虞もあった。
【0007】
この発明は、上記のような本革巻ステアリングホイールの製造の現状に着目し、装飾シート体4の張着の効果を向上できる共に、熟練も必要とせず、国内生産においても十分コストバランスを維持可能とする新規な構造のステアリングホイール用シート張着構造の開発、研究に逸速く取り組み、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂にその完成を見るに至ったものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【0008】
【発明の構成】
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明に包含されるステアリングホイール用シート張着構造は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、自動車用ステアリングホイールの基部をなす輪状基体を設けると共に、当該輪状基体の内周面には、同内周面に沿って連続するか、もしくはステアリングシャフトに接続されるスポーク部分に分断された輪状となる所定深さの楔着用溝部を刻設し、予め輪状基体を充分に包囲する所定幅無端帯状に形成されるか、あるいは巻着後輪状基体を充分に包囲する所定幅無端帯状に繋ぎ合わせ可能な装飾シート体により、輪状基体を外周面側から包み込んだ上、ステアリングホイール中心に向けて巻き込まれた両縁部を楔着用溝部に挿入すると共に仮止めする一方、当該楔着用溝部に圧入可能に形成された楔着部を連続形成し、その基端側に、楔着用溝部の開口部を閉鎖可能とする断面鳩尾状またはそれに近い断面形状であって、表装面部に装飾シート体と同程度の表面処理を施した封着部を備えてなるシート張着用線体が、前記楔着用溝部に仮止めした装飾シート体の両縁部間から当該楔着用溝部内に向けて打ち込まれ、輪状基体の外周表面に装飾シート体を張着、一体化してなるステアリングホイール用シート張着構造である。
【0009】
輪状基体は、ステアリングホイールの形状と強度を維持、確保する骨格としての機能を果たすものであり、望ましくは、車衝突時の乗員保護のために少しでも軟質の外表面部分となるよう、例えば、金属製の輪状芯材の周囲に、木製、合成樹脂製、あるいは、これらと同等の性状をもつ硬質あるいは半硬質素材を組み合わせ、適宜太さの握持部となるようにしたものにするとよい。
また、輪状基体の内周面部の一箇所または複数箇所、一般的には3〜4箇所に、ステアリングシャフトに接続するための、中心部から放射状をなして形成された複数のスポーク部が一体形成され、必要に応じてホーンスイッチやエアバック装置等が設けられるものとする一方、当該スポーク部の接合される内周面部に沿ってか、あるいは、スポーク部の接合された部分の僅かに前部、または僅かに後部の内周面部に沿って楔着用溝部が形成されていなければならない。
【0010】
楔着用溝部は、装飾シート体の縁部を収容すると共に、打ち込まれたシート張着用線体を嵌合状に受け止め、固定する機能を果たすものであって、後述するシート張着用線体の打ち込みに耐える強度と、当接される装飾シート体縁部の抜脱を阻止する摩擦係数を有するものとする必要があり、例えば、内側壁に鉤状の小凹凸面が形成されるものとしたり、粘着剤の塗布されたものとすること等も可能であり、また、輪状基体そのものの素材、あるいは楔着用溝部の素材が、装飾シート体の縁部をホチキスや鋲等によって仮止め可能な、例えば木材や合成樹脂、その外それらに類した素材を採用し、一旦装飾シート体仮止めした上で、最終的にシート張着用線体を打ち込み、固定するようにしたものとすることも可能である。
【0011】
装飾シート体は、輪状基体の外観や質感を向上させると共に、手への触感を高め、運転時にはそのステアリング操作の確実性を維持できるようにする機能を果たすものであり、本革シートの外、例えば、合成樹脂シートやビニールレザー、スウェード調等の人工皮革シート、あるいは天然ゴムシート、その他これらと同等の機能を有するシート素材等の採用も可能であり、それらには、手垢その他の汚れが付き難く、しかも滑り止め効果が期待できるような表面凹凸加工処理やコーティング処理、薬液含浸処理等の施されたものとすると極めて好都合のものとなる。
【0012】
シート張着用線体は、上記した楔着用溝部に挿入、あるいは挿入、仮着状とされた装飾シート体の両縁部間に割って入るように打ち込まれ、楔着用溝部内周壁との間にそれら装飾シート体両縁部を挾着状にした上、同両縁部を楔着用溝部内に引き込んで、装飾シート体を輪状基体の外表面に張着、一体化する機能を果たすものであって、その総全長が楔着用溝部の全長に略相当する長さとなるものであることを必要とし、打ち込まれることにより、楔着用溝部の内側壁面に装飾シート体の両縁部の夫々を押圧し、固着状となす楔着部を有する上に、楔着用溝部の開口を閉鎖する封着部を形成し、更に、打ち込み後に露出される封着部の表装面部には、装飾シート体の表面と同等の表面処理が施されている。
また、シート張着用線体は、その内部に金属製、またはそれに略相当する強度を有する芯材をインサート成形し、打ち込み作業に対する強度を高めたものとすることも可能であり、さらに、望ましくは芯材を打ち込み方向に長い断面形状としたり、打撃側に近い部分の面積を広く設定する等の構造のものを採用するようにし、より一層補強効果の期待できるものとするとよい。
【0013】
楔着部は、シート張着用線体に付随する構成要素の一つであり、圧入あるいは打ち込み後、シート張着用線体自体を楔着用溝部内に強固に固定し、不用意に抜脱しないよう係止する機能を果たすものであり、例えば、樽状またはひし形状の断面形状に形成され、打ち込みによって圧縮された膨出部分の弾性変形による復元力により、強い摩擦力を発生して固定する機能を発揮し得るものとしたり、あるいは、一つあるいは複数の鉤爪を左右双方もしくは左右何れか一方にのみ設けた断面形状をなしたものとし、打ち込み後にそれら鉤爪が楔着用溝部の内側壁面に向けて係合する如く構成されたものとすることも可能である。
【0014】
また、楔着部に形成される膨出形状や鉤爪等は、必ずしもシート張着用線体の長手方向に連続して形成されるものに限られるものではなく、長手方向に沿って、断続的に凹凸を繰り返す形状や、先割れ状に分断された上で連続的に連なる形状となるものであっても同等の機能を果たすものとなり得るものである。
更に、楔着部の高さ寸法を楔着用溝部の深さ寸法よりも僅かに短く設定し、装飾用シートの仮止め構造との干渉や、楔着用溝部の深さ寸法のバラツキ等に容易に対応できるよう構成することも可能である。
【0015】
封着部は、さらにシート張着用線体に付随する構成要素の他の一つであり、楔着用溝部の開口を封止する機能を果たすものであって、断面鳩尾状またはそれに近い断面形状として打ち込みの深さを制限する機能をもつものとされることが望ましいものであり、その際、楔着用溝部の開口側断面もこれに相似する形状とすることが必要となる。また、表装面部が輪状基体の外周壁面の曲率と略一致する如く形成され、挿着後に装飾シート体と連続する周壁面を形成し、違和感のある凹凸や段差の発生を阻止するものとするように構成することも可能である。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【0016】
【実施例1】
図1のステアリングホイールの断面図、図2のステアリングホイールの斜視図、図3のステアリングホイールの分解された状態の斜視図に示される事例は、この発明における最も代表的な構成からなるステアリングホイール1用シート張着構造の一例を示すものであって、輪状基体2の内周面に沿って、楔着用溝部3を刻設し、当該輪状基体2を包み込む皮革シート4の両縁部を楔着用溝部3内に仮止めすると共に、シート張着用線体5を打ち込み、皮革シート4を輪状基体2の外表面に張着、一体化することによって形成される。
【0017】
輪状基体2は、スチール製輪状芯材21を木製の円弧状基体部22,22,……によって挟み込むようにして接着、固定し、一体化され、握持部分がハンドリングに適する所定の直径となるように仕上げられたものであって、内周面の複数箇所からは、中心に位置される図示されないステアリングシャフトに向けて4本のスポーク部23,23,……が放射状に配置され、一体に形成されている。また、輪状基部2のスポーク部23,23,……の設けられていない内周面部分、およびこれに連続されるスポーク部23,23,……の周面部分には、略U字状断面の形状となる楔着用溝部3が連続的に刻設されており、その開口部31付近は輪状基部2の輪中心に向かう程拡開されている。
【0018】
装飾シート体として採用される皮革シート4は、本革シート材を輪状基体2の握持部外周寸法に張着作業代分を加えて余りある幅寸法の帯状とし、その両端を輪状基体2の外周に一致する無端状に縫合して繋ぎ合わせ、更に、ステアリングホイール形状をなす型枠に嵌める等して内周面部分が切開された円管輪状をなす如く成形することによって造られたものである。
当該皮革シート4により、輪状基体2を外周面側から包み込み、両縁部の余剰部分を切り揃え、更に、その両縁部を前記楔着用溝部3内底部まで挿入し、約1cm間隔毎にホチキス針32,32,……を打ち込んで仮止めされる。
【0019】
また、皮革シート4のスポーク部23に相当する部分は、輪状基体2に巻き着けられる帯状部分から枝分かれするように連続形成されて、輪状基体2の部分と同様にスポーク部23に形成された図示されない楔着用溝部の底部に両縁部を仮止めされる。
【0020】
皮革シート4の両縁部が仮止めされた楔着用溝部3には、更に、皮革シート4の両縁部間から、シート張着用線体5が、木槌による打撃、あるいは専用の加圧治具による締め付け等によって打ち込まれ、当該皮革シート4を輪状基体2の外周表面に張着、一体化したものとされる。
シート張着用線体5は、その断面形状を楔着用溝部3の深部まで打ち込まれる楔着部6、および、同楔着部6の基部を形成して楔着用溝部3の開口部31を封止する封着部7を有して、楔着用溝部3の長さに相当するよう線状に連続形成されたものとなっており、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレン等の合成樹脂から成形され、輪状基体2の円弧形状に沿って変形自在であると共に、プラスチックハンマー等による打撃にも圧潰されず耐えるものとなっている。
【0021】
楔着部6は、その高さ寸法を楔着用溝部3の深さ寸法よりも僅かに短く設定されており、厚み寸法は、楔着用溝部3に皮革シート4の両縁部を挿入して残された隙間間隔よりも僅かに厚めに設定されて、打ち込みの際に、皮革シート4の両縁部を楔着用溝部3の内側壁面に押圧し、強い摩擦力を発生する如く圧縮されながら楔着されるように構成されている。
【0022】
封着部7は、断面鳩尾状に形成されて楔着用溝部3の開口部31に係合され、打ち込み深さを規制する如く構成されると共に、打ち込み後、露出状態のままとなる表装面部71は、輪状基体2に被着された皮革シート4が形成する円弧状の外表面と略同じ曲率に設定され、連続する円周面をなす如く取着されるものとなっている上、その表装面部71には、皮革シート4の表面に似せた模様が成形されていると共に、皮革シート4と略同一色の塗装による着色、あるいは、皮革シート4と略同一色に調色された合成樹脂が使用されること等により、ステアリングホイール全体の外観を統一する如く構成されている。
【0023】
【実施例2】
図4のシート張着用線体の斜視図に示される事例は、楔着部6の楔着用溝部3内で皮革シート4の両縁部に接合状となる側壁部分に複数段の鉤爪状部61,61,……を形成したシート張着用線体の変形例を示すものであり、当該鉤爪状部61,61,……は打ち込み方向に対して楔状となり、抜脱に抗する摩擦を高めるよう構成されている。
【0024】
また、図5のシート張着用線体の斜視図に示される事例は、楔着部6の中央部を膨出し、断面樽型形状とすると共に、その断面中央部には、複数本の銅線あるいはステンレス線等の金属製ワイヤーを縒り合わせて略円形断面形状に作られた芯材8がインサート成形によって内蔵されている。
【0025】
更に、図6のシート張着用線体の斜視図に示される事例は、楔着部6の中央部を菱形断面形状とする如く膨出された上、封着部7の表装面部71近傍から楔着部6の中央部近傍にかける肉厚内部には、打ち込み方向に長い断面形状を有する金属製の帯板状線体に形成された芯材8がインサート成形されている。
【0026】
【実施例3】
図7の椅子の斜視図、図8の図7中矢印A部分の断面図、および図9の図7中矢印B部分の断面図に示される事例は、この発明に包含されるステアリングホイール用シート張着構造を家庭用の家具に応用した一例を示すものであって、上述した実施例に使用されたシート張着用線体5を椅子に用いた状態を示すものであり、背もたれや座面のシートクッション材を覆う装飾シート体4の縁部を椅子の骨格部分外表面部に刻設された楔着用溝部3に挿入して、ホチキス等で仮止めし、封着部7の表装面部71を家具の外表面と同じ平面状に形成されたシート張着用線体5を打ち込み、当該装飾シート体を張着、一体化されたものである。
【0027】
【作 用】
以上のとおりの構成からなるこの発明のステアリングホイール用シート張着構造は、輪状基体2をその外周面側から皮革シート4で包み込み、同皮革シート4のステアリングホイール1の中心に向けて巻き込まれた両縁部を楔着用溝部3内に挿入し、仮止めした後に、シート張着用線体5を皮革シート4の両縁部間から楔着用溝部3内に打ち込むことにより、当該皮革シート4を輪状基体2の外周表面に張着、一体化するものであって、シート張着用線体5の楔着部6は、皮革シート4の両縁部に強く当接して引き摺るように楔着用溝部3の深部側へ引き込み、皮革シート4を輪状基体2の表面に強く張着し、皺や弛み等による皮革シート4の浮き上がりを解消するものとなる。
【0028】
シート張着用線体5は、楔着部6の高さ寸法を楔着用溝部3の深さ寸法よりも僅かに短く設定されていて、封着部7が楔着用溝部3の開口部31を封止する前に、楔着部6の先端部が楔着用溝部3内の底部に当接して、打ち込み不良を発生してしまうことを阻止する上、打ち込み後も楔着用溝部3の底部に僅かな隙間を形成し、皮革シート4の縁部、仮止め用ホチキス針33,33,……あるいは接着剤等への干渉を防止する。
【0029】
また、封着部7は、断面鳩尾に形成され、また、楔着用溝部3の開口部31もその相似形に拡開形成されていて、シート張着用線体5の打ち込みの深さが、当該封止部7の開口部31への係合により規制され、シート張着用線体5の全長に渡り、過剰な打ち込みによる凹みや段差の発生が阻止される。
更に、封着部7の皮革シート4に当接する側面に複数段の楔状をなす鉤爪状部61,61,……を形成し、楔着用溝部3内への打ち込み時に発生する抵抗を軽減し得ると共に、打ち込み後は強く楔着して不用意な抜脱を阻止する。
【0030】
断面樽形状に形成され内部に芯材8を内蔵する楔着部6は、先細形状に形成され、楔着溝部3に挿入された皮革シート3の両縁部間への打ち込みをし易くし、封着部7側が再度細く形成されていて、打ち込み終了間際の摩擦抵抗を軽減するものとなる上、内蔵された芯材8が剛性を高めるので、楔着強度を必要にして充分な程度に保持し得るものとなり、断面菱形状の楔着部6も、前述の断面樽形状と同様に打ち込み作業を容易にし、更に、封着部7に、より近い部分から楔着部6の中央側に至る範囲の肉厚部分内に、打ち込み方向に長い帯状の芯材8がインサートされており、打ち込み打撃力や押圧力に対する強度を向上する。
更に、封着部7の表装面部71には、皮革シート4の表面に酷似する表面模様が施されている上に、輪状基体2と略同じ曲率の円弧状となるように形成され、楔着後の外観は皮革シート4の一部と看做し得るようにしてある。
【0031】
【効 果】
以上のとおり、この発明のステアリングホイール用シート張着構造によれば、手作業による縫製作業に代わる楔着用溝、および、これに楔着されて装飾シート体を張着するシート張着用線体を採用することによって革巻作業の熟練を不要とする上、張着に要する工数を格段に短縮することが可能となり、国内生産であっても比較的廉価に高品質の装飾シート巻きステアリングホイールの提供を実現可能とすることから、従前までの本革巻ステアリングホイールにあっては、その製造に高度な縫製技術とその熟練とを要するため、極めて高価なものとなり、生産台数の限られた高級車にしか採用しきれないという弊害が払拭され、近年の一般自動車市場における高級化指向に伴なう、安価、高品質の要請に応えることができるものとなって、各クラスの幅広い車種への採用も可能にするという秀れた特徴を発揮できるものとなる。
【0032】
更に、この発明に包含されるステアリングホイールは、輪状基体の外周面に別体の装飾シート体を張着する構造を有することから、従前の外周表面部分を含む略全体を合成樹脂成形品によって製造される一般的なステアリングホイールと違い、その新規な構造故に、老朽化後や、老朽化にまでは至らなくとも交換を希望するとき等にも、輪状基体をそのままに、装飾シート体だけを簡単に新品に交換することができる上、その張り替え作業も、シート張着用線体を着脱することによって比較的容易に行えるものとなり、また、輪状基体部分を木製品とすることにより、殆ど全ての部品を簡便にリサイクル利用または焼却処理可能なものとすることができるという特徴も兼ね備えている。
【0033】
特に、実施例に取り上げたこの発明を代表する実施例によるものでは、楔着用溝部3に楔着されるシート張着用線体5の封着部7を断面鳩尾状に形成し、楔着用溝部3の開口部31に係止する構造としたことにより、シート張着用線体5の不要な没入を防ぐことができると共に、打撃面および押圧面として利用する表装面部71の面積を広く取り、打ち込み作業性の向上と、品質の安定化との両立を可能とすることができるという利点を有するものとなる。
【0034】
更に、装飾シート体4を所定厚みの皮革シート4とし、シート張着用線体5の封着部7における表装面部71を同皮革シート4の表面に酷似する表面模様に形成すると共に、輪状基体2と略同じ曲率の円弧状とする如く形成することにより、別部品であるシート張着用線体5が皮革シート4と視覚的に同化する上、握持部分の外表面に不要な段差を生じさせないので、ドライバーの触感を満足させることができ、加えて、ゴミや汚れの付着をも防止するので、衛生管理や掃除も容易となり、手入れが難しいとされてきた革巻ステアリングホイールのメンテナンスを簡便なものとすることができるという秀れた効果を奏するものとすることができる。
【0035】
また、シート張着用線体5における楔着部6の高さ寸法を楔着用溝部3の深さ寸法よりも短く設定することにより、楔着用溝部3の加工のバラツキによる溝深さの僅かな不足による楔着部6の打ち込み不良や、皮革シート4の仮止め部分への楔着部6先端部分の干渉等を防止し、高い生産性と品質維持とを確実に達成可能にするという利点が得られるものとなる。
【0036】
さらにまた、シート張着用線体5の楔着部6に複数の鉤爪状部61,61,……を形成したものとすれば、より一層強力な楔着を可能とすることができる外、楔着部6を断面樽形状あるいは断面菱形状とすることにより、楔着用溝部3への打ち込みに対する抵抗を軽減して作業性を高め、製造工数を低減することができるものとなる上、楔着部6または楔着部6から封着部7にかけて金属等の別素材からなる芯材8を内蔵したものとすれば、張着作業中の圧潰による破損等を防止することができ、また、打ち込み方向に長い芯材8を採用すれば、より高い信頼性を確保できるものとすることも可能となる。
【0037】
叙述の如く、この発明のステアリングホイール用シート張着構造は、従前までのステアリングホイールへの装飾シート体の張着構造に比較し、その特徴ある構成によって製造作業は勿論のこと、その外観上や操作性上、あるいはドライバーによる利用、破損時等の張り替え再生、および老朽後のリサイクル、廃棄処理の面等、あらゆる面において格段に秀れた特徴を備えており、効率的な生産を損ねることなく天然素材の利用を可能にし、高品質でありながら安価に市場に提供できる上、利用者に高級感を与えるものとなることから、今後益々自動車の再生利用と廃棄処理の責任が問われ、厳しい環境に直面する自動車メーカーにとっては勿論のこと、ドライバーを含む自動車関連市場全体にとっても極めて価値の高い技術と評価され、広く利用、普及されるものとなって自動車産業の発展と自然環境保護とに大いに貢献するものと予想される。
【図面の簡単な説明】
図面は、この発明のステアリングホイール用シート張着構造の技術的思想を具現化した代表的な実施例、および従来例を示すものである。
【図 1】ステアリングホイールの一部断面を示す断面図である。
【図 2】ステアリングホイールを示す斜視図である。
【図 3】ステアリングホイールの一部分の分解状態を示す斜視図である。
【図 4】鉤爪状部を有するシート張着用線体の断面形状を示す斜視図である。
【図 5】樽形状のシート張着用線体の断面形状を示す斜視図である。
【図 6】菱形状のシート張着用線体の断面形状を示す斜視図である。
【図 7】この発明のシート張着構造を採用した家庭用の椅子を示す斜視図である。
【図 8】図7中矢印A部分を示す断面図である。
【図 9】図7中矢印B部分を示す断面図である。
【図10】従来の本革巻ステアリングホイールを示す斜視図である。
【符号の説明】
1 ステアリングホイール
2 輪状基体
21 同 スチール製輪状芯材
22 同 円弧状基体部
23 同 スポーク部
3 楔着用溝部
31 同 開口部
32 同 ホチキス針
4 皮革シート4(装飾シート体)
5 シート張着用線体
8 芯材
6 楔着部6
61 同 鉤爪状部
7 封着部
71 同 表装面部
9 縫合部分
Claims (5)
- 木材や合成樹脂といったホチキスや鋲等によって仮止め可能な素材からなる自動車用ステアリングホイールの輪状基体の内周面に沿って、所定深さの楔着用溝部が連続して刻設され、当該輪状基体の外周面側から、予め所定幅無端帯状に形成されるか、あるいは巻着後所定幅無端帯状に繋ぎ合わされる装飾シート体によって同輪状基体を包み込んだ上、ステアリングホイール中心に向けて巻き込まれた両縁部を夫々楔着用溝部に挿入し、夫々、対応する側部に沿わせてその端縁が底部内に臨むように配した上、夫々の縁部で底部内に臨んだ部分を、同溝方向に所定間隔置きにホチキスや鋲等によって仮止めする一方、その高さ寸法を楔着用溝部の深さ寸法よりも僅かに短く設定した楔着用溝部圧入用の楔着部が連続して形成されると共に、その基端側に、楔着用溝部の開口部を閉鎖可能であり、且つ打ち込み深さを規制する如くした断面鳩尾状またはそれに近い断面形状で、表装面部が装飾シート体と同程度の表面処理の施された封着部を備えてなるものとしたシート張着用線体を、前記楔着用溝部に仮止め状とされた装飾シート体両縁部間から当該楔着用溝部内に向け、封着部で規制された深さ分だけ打ち込み、その楔着部の奥部が楔着用溝部の底に到達しない構造として前記仮止め構造との干渉を無くすと共に、楔着用溝部の深さ寸法にバラツキがあっても対応可能となるようにした構造により、装飾シート体の輪状基体外周表面における張着、一体化を均質化すると共に、封着部表装面部のステアリングホイール輪状基体内周面からの露出割合を一定化してなることを特徴とするステアリングホイール用シート張着構造。
- ステアリングホイール輪状基体の内周面に形成される楔着用溝部は、その開口側断面が、シート張着用線体封着部の断面形状に略相似する形状に形成されてなるものとした、請求項1記載のステアリングホイール用シート張着構造。
- 装飾シート体が所定厚みの皮革シートであり、該皮革シートを輪状基体に張着、一体化するシート張着用線体が、その封着部の表装面部を同皮革シートの表面に酷似した表面模様に形成されると共に、予めステアリングホイール輪状基体と略同じ曲率の円弧状をなす如く成形されてなるものとした、請求項1または2何れか記載のステアリングホイール用シート張着構造。
- シート張着用線体は、楔着部が、その両側面に複数段の鉤爪状部を有する構造に形成されてなるものとした、請求項1ないし3何れか記載のステアリングホイール用シート張着構造。
- シート張着用線体は、弾性変形可能な合成樹脂からなり、その内部には、銅製もしくはそれと同等以上の強度を有する素材であって、打ち込み方向に長い断面形状とした芯材がインサート成形されてなるものとした、請求項1ないし4何れか記載のステアリングホイール用シート張着構造。
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