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JP4117551B2 - カラーホイール、その製造方法、およびそれを備えた分光装置並びに画像表示装置 - Google Patents

カラーホイール、その製造方法、およびそれを備えた分光装置並びに画像表示装置 Download PDF

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JP4117551B2 JP2003160612A JP2003160612A JP4117551B2 JP 4117551 B2 JP4117551 B2 JP 4117551B2 JP 2003160612 A JP2003160612 A JP 2003160612A JP 2003160612 A JP2003160612 A JP 2003160612A JP 4117551 B2 JP4117551 B2 JP 4117551B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、時分割型の分光装置のフィルタ素子として好適なカラーホイール、その製造方法、およびそのカラーホイールを備えた分光装置並びに投射型の画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、投射型の画像表示装置における色合成の方式は、画素毎の光量を調節して画像を生成するライトバルブ素子を1つ使用し、画素ごとにR(赤色)光、G(緑色)光、B(青色)光に分光する単板式、R光用、G光用、B光用にライトバルブ素子を3つ使用して並列に生成したR画像、G画像、B画像を合成する3板式などの方式が一般的であった。近年、たとえば強誘電性液晶表示素子やデジタルマイクロミラーデバイスなどの高速スイッチング可能なライトバルブ素子が実用化されるにつれて、1つのライトバルブ素子にR光、G光、B光を順次入射させ、そのライトバルブ素子を入射光の切り替えに同期させて駆動してR画像、G画像、B画像を時系列的に生成し、それらを順次スクリーン等に投射する時分割型の単板方式が広く使用されるようになってきている。この場合、画像の色合成はいわゆる残像効果により観察者の視覚系において実行されるものである。この方式は、装置の小型化、軽量化という単板式の特徴を比較的単純な光学系を用いて達成できるため、低コストで投射型の画像表示装置を実現する上で好適な方式である。カラーホイールは、このような画像表示装置において白色光源から出射する光をR、G、Bそれぞれの波長帯域の光に順次分光するための時分割型分光装置用のフィルタ素子として好適に使用されるものである。
【0003】
このようなカラーホイールを備えた時分割型の分光装置の例を図18に示す。図18において、分光装置200はカラーホイール100と、ハブ105と、モータ106とを備えている。カラーホイール100は、たとえば光学ガラスなどの光透過性材料からなる円盤状の基板101上にたとえばR光のみを透過させるフィルタ領域102、G光のみを透過させるフィルタ領域103、B光のみを透過させるフィルタ領域104が形成され、ハブ105を介してモータ106に同軸に固定されている。この分光装置200は、モータ106の回転につれてカラーホイール100が回転し、カラーホイール100に入射する白色光Sの入射面に対するフィルタ領域がR領域102、G領域103、B領域104と順次切り替ることによって、入射白色光SをそれぞれR光、G光、B光に順次分光するものである。
【0004】
ここで、フィルタ領域102、103、104を形成するフィルタには、通常、高屈折率の材料(例えば、TiO2 、ZrO2 、ZnS等)よりなる誘電体薄膜および低屈折率の材料(例えば、SiO2 、MgF2等)よりなる誘電体薄膜を、たとえば蒸着法やスパッタリング法等によって交互に複数積層した誘電体多層膜による光干渉フィルタが用いられる。この光干渉フィルタは、染色法や顔料分散法等で形成されるカラーフィルタに対し、耐久性(耐熱、耐光、耐薬品)に優れ、透過率が高く、シャープな分光特性が得やすい等の特長を有するため、高強度の光束の適用に耐え、かつ表示品位の高い画像を得るために好適なものである。
【0005】
このような誘電体多層膜を、その成膜領域を高精度に画定して形成するための方法として、いわゆるリフトオフ法を挙げることができる。リフトオフ法は、所定のフォトプロセスおよび必要な場合にはメッキプロセスを使用して、所望の成膜領域のみが露出されたレジスト膜または金属薄膜からなるマスクパターンを予め基板上に形成し、そのマスクパターンの上から所定の薄膜を全面に成膜し、その後、上記マスクパターンを溶解除去することによってマスクパターン上に形成された薄膜も除去(リフトオフ)して、上記所望の成膜領域に成膜された薄膜を得るものである。この方法によれば、通常は困難である誘電体多層膜のエッチングを実施することなく、フォトプロセスに特徴的な高精度でもって領域が画定された誘電体多層膜を形成することができる。
【0006】
しかしながら、カラーホイールの製造工程に上記リフトオフ法を適用するには、次のような問題が存在する。第1の問題は、カラーホイールの場合には、通常は基板上に微細なパターニングが実施される半導体素子等の場合とは異なり、個々のリフトオフする領域が大面積を有する連続領域となることである。具体的には、図18に示すカラーホイール100においてフィルタ領域102を形成する場合、フィルタ領域103およびフィルタ領域104に相当する連続領域がリフトオフする領域となる。このような場合、マスクパターンを溶解除去する際には、そのマスクパターン表面上にも所定の誘電体多層膜が形成されているため、レジスト剥離液やエッチング液が作用する面として有効なのは、通常はμmオーダーの膜厚を有してこの連続領域103、104の外形を構成する側壁部分のみであり、リフトオフする面積に対してこの作用面の面積が極端に小さなものとなる。このことは、レジスト剥離液やエッチング液がリフトオフする領域に浸透し、マスクパターンを完全に除去するために必要な時間が長くなることを意味し、さらにその間に一旦剥離した膜の基板への再付着といった現象も発生するなど、作業効率の低下および製品の品質低下の要因となる。また、マスクパターンをレジスト膜によって形成する場合には、成膜時の熱、プラズマ、もしくはイオン照射等によってレジスト膜が変性する結果、通常のレジスト剥離液による溶解除去がさらに困難になり、上述した長時間処理に加えて、高温条件下での処理、もしくは高圧スプレーや超音波処理等の物理的手段が必要となる場合もある。
【0007】
第2の問題は、カラーホイールは、フィルタ領域を形成する基板全体がそのまま1つの素子を構成するものであり、外形を最小化して基板の面積を有効に利用するために、通常はその最外周部にまでフィルタ領域を形成する必要があることである。このことは、最終的には基板を切断して複数の素子を形成するものであるため、たとえば基板の外周部に素子を形成しない領域を設けることができ、成膜工程においてその領域を基板保持のために使用することが可能な半導体基板の場合(たとえば、特許文献1参照)とは異なり、上述した誘電体多層膜の成膜工程において、基板を成膜装置に保持することを困難にする。
【0008】
このようなことから、従来カラーホイールの製造には、形成するフィルタ領域の画定手段として、たとえば金属性の薄板からなるマスク治具(以下、メタルマスクと記す)を使用する方法も多く使用されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−90391号公報
【特許文献2】
特開2003−57424号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、カラーホイールにおけるフィルタ領域の形成では、各領域の形成に対して微細なパターニングは要求されないものの、各フィルタ領域間の境界部を通過した結果、色が確定せず画像生成用として使用できない光を低減させ、光の利用効率を高めるために、隣り合うフィルタ領域同士を高精度に突き合わせて形成する必要がある。この点に関して、メタルマスクを使用した領域の画定では、機械的な位置合わせ手段、およびその補助として使用される目視による位置合わせ手段によって実現可能な位置合わせ精度に限界があり、リフトオフ法のマスクパターン形成に使用されるフォトプロセスに匹敵する精度を実現することは困難である。
【0011】
上記課題に鑑みて、本発明は、リフトオフ法を使用して容易にフィルタ領域を形成可能なカラーホイールの製造方法を提供し、かつそのカラーホイールを使用した時分割型の分光装置並びに画像表示装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1によれば、光透過性の材料からなる円盤状の基板に、それぞれ異なる波長帯域の光を透過または反射する複数のフィルタ領域が形成されたカラーホイールの製造方法であって、前記基板に、所定の前記フィルタ領域を定めるようにフォトプロセスによりパターニングされたマスクパターンを形成する工程と、前記所定のフィルタ領域の範囲を含む、該範囲よりも僅かに大きな範囲を露出させるように形成された開口部を備え、前記マスクパターンの、前記開口部から露出しない部分を保護するマスク治具を、前記マスクパターン上に配置する工程と、前記マスク治具が配置された前記基板に、所定のフィルタを形成する工程と、前記所定のフィルタが形成された前記基板から、前記マスク治具を取り外す工程と、前記マスク治具が取り外された前記基板から、一部に前記所定のフィルタが形成された前記マスクパターンを除去する工程とを備えていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項2によれば、請求項1に記載のカラーホイールの製造方法において、前記マスクパターンを形成する工程は、前記基板にフォトレジストを塗布してレジスト膜を形成するステップと、前記レジスト膜に前記所定のフィルタ領域部分が露出されたネガパターンを形成するステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
また、請求項3によれば、請求項1に記載のカラーホイールの製造方法において、前記マスクパターンを形成する工程は、前記基板に導電性薄膜を成膜するステップと、前記導電性薄膜上にレジストを塗布してレジスト膜を形成するステップと、前記レジスト膜に、前記所定のフィルタ領域部分が被覆されたポジパターンを形成するステップと、前記基板に、前記導電性薄膜を電極とする電気メッキによりメッキ層を形成するステップと、前記レジスト膜を除去するステップと、前記所定のフィルタ領域部分の前記導電性薄膜を除去するステップとを含むことを特徴とする。
【0015】
また、請求項4によれば、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のカラーホイールの製造方法において、前記フィルタを形成する工程は、誘電体多層膜を成膜するステップを含み、前記基板は、前記マスク治具を前記誘電体多層膜の成膜装置に固定することによって前記マスク治具と共に前記成膜装置内に保持されることを特徴とする。
【0016】
また、請求項5によれば、光透過性の材料からなる円盤状の基板に、それぞれ異なる波長帯域の光を透過または反射する複数のフィルタ領域が形成されたカラーホイールであって、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の方法によって製造されていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項6によれば、光透過性の材料からなる円盤状の基板に、それぞれ異なる波長帯域の光を透過または反射する複数のフィルタ領域が形成されたカラーホイールと、それを回転させるモータとを有する分光装置であって、前記カラーホイールが請求項5に記載のカラーホイールであることを特徴とする。
【0018】
また、請求項7によれば、光透過性の材料からなる円盤状の基板に、それぞれ異なる波長帯域の光を透過または反射する複数のフィルタ領域が形成されたカラーホイールと、それを回転させるモータとを有する分光装置を備えた画像表示装置であって、前記カラーホイールは請求項5に記載のカラーホイールであることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の第1の実施形態であるカラーホイールを示す平面図である。このカラーホイール10は、たとえばガラスもしくは樹脂材料などの光透過性の材料からなる円盤状の基板1にフィルタ領域2、3、4を、後述する本発明に係る製造方法により形成してなるものである。ここで、フィルタ領域2はR光のみを透過させるR透過フィルタ、フィルタ領域3はG光のみを透過させるG透過フィルタ、フィルタ領域4はB光のみを透過させるB透過フィルタとし、すべてのフィルタ領域2、3、4は、蒸着法やスパッタリング法などによって成膜された誘電体多層膜からなる公知の光干渉フィルタとする。上記基板1を形成する光透過性の材料としては、たとえばホウケイ酸ガラス等の光学ガラス材料、またはポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン等の光学プラスチック材料が好適である。なお、以下の説明において、カラーホイール上に形成される各フィルタ領域は所望の波長帯域の光のみを透過させて入射光を濾波するものとするが、本発明は、所望の波長帯域の光のみを反射させて入射光を濾波するように形成されたフィルタ領域を備えるカラーホイールを含むものである。
【0020】
次に、図2〜図7を参照して、図1に示す本実施形態におけるカラーホイール10の製造工程を説明する。ここで、図2〜図7は、所定のフィルタ領域としてR透過フィルタ領域2を形成する場合を例として各工程を示す図であり、左側に平面図、右側にそのA−A'断面図を示す。本実施形態では、図2に示すように、まず基板1上にネガ型またはポジ型のフォトレジストをたとえばスピンコート法により全面に塗布してレジスト膜11を形成する。次に、露光、現像等のフォトレジストの仕様に応じた一連の適切なフォトプロセスを実施して上記レジスト膜11をパターニングし、図3に示すような、フィルタ領域2に対応する成膜領域12が露出し、その他の領域が被覆されたネガパターンとして本実施形態におけるマスクパターン11aを形成する。次に、図4に示すように、本発明に係るマスク治具であるメタルマスク20を基板1上に配置する。このメタルマスク20は、成膜領域12に対応する位置に、その範囲より僅かに大きく形成された開口部22を有するものである。また、本実施形態において、メタルマスク20の形状は、基板1の外周から突出する外周部23を有するように形成され、たとえばネジやその他の任意の適切なロック機構によって、この外周部23を図示しない成膜装置の基板保持機構に固着することにより、メタルマスク20と共に基板1がこの成膜装置内に保持されるものである。
【0021】
次に、図5に示すように、蒸着もしくはスパッタリング等によって所定の誘電体多層膜を成膜し、基板1上にR透過フィルタ2、2aを形成する。その後、図6に示すように、メタルマスク20を取り外し、次いで、R透過フィルタ2、2aが形成された基板1をたとえば有機アルカリや有機溶剤の混合溶液からなるレジスト剥離液に接触させることによってマスクパターン11aを溶解除去する。この際、マスクパターン11a上に形成されたフィルタ2aはリフトオフされて、図7に示す所定のフィルタ領域2を得る。以上の工程を他のフィルタ領域3、4についても繰り返すことによって、カラーホイール10を得ることができる。
【0022】
本実施形態では、図5に示したように、従来のリフトオフ法とは異なり、誘電体多層膜の成膜時に基板1上にメタルマスク20を配置するため、所定のフィルタが形成されるのは開口部22の範囲内に留まり、成膜領域12との境界部を除くマスクパターン11aの大部分の領域上には形成されない(なお、図5においてメタルマスク20上に堆積する誘電体多層膜の図示は省略する)。そのため、図6に示す状態から図7に示す状態へと至るマスクパターン11aを除去する工程において、レジスト剥離液は、マスクパターン11aの側壁部だけでなく、メタルマスク20によって保護されていた未成膜領域の表面全体から浸透し、レジストの溶解除去が実施されるものである。また、誘電体多層膜の成膜時に、メタルマスク20によって高温の蒸着物質、プラズマ、またはイオンの照射等からも保護される結果、レジスト膜からなるマスクパターン11a中に剥離困難な変性層が形成される可能性も軽減される。
【0023】
ここで、マスクパターン11aの膜厚は、フィルタ領域2をなす誘電体多層膜と、マスクパターン11a上に形成される誘電体多層膜2aが互いに分離して形成され得る程度に厚く、かつ蒸着源からの粒子の入射を制限することよって成膜領域12の周縁部における均一な成膜を著しく阻害しない程度に薄いことが望ましく、たとえば通常は1〜4μmであるフィルタ領域2の膜厚の2〜10倍程度に設定されるものである。この膜厚は、たとえばスピンコート法によるレジストの塗布の場合には、使用するレジストの粘度、塗布の際の回転速度、塗布の回数等を調整することによって制御することができる。
【0024】
次に、図8〜図15を参照して、本発明に係る第2の実施形態におけるカラーホイールの製造方法を説明する。ここで、本実施形態における製造方法が適用されるカラーホイールは図1に示すカラーホイール10と同一のものであるとし、以下の説明において図1および図2〜図7と同様の部分には同一の符号を付す。また、本実施形態においても、所定のフィルタ領域としてR透過フィルタ領域2を形成する場合を例として使用し、図8〜図15の各図の左側に各工程に対応する平面図、右側にそのA−A'断面図を示す。
【0025】
本実施形態では、図8に示すように、まず基板1上にたとえばクロム(Cr)薄膜からなる導電性薄膜31を蒸着法等により成膜し、その後、この導電性薄膜31上にネガ型またはポジ型のフォトレジストをたとえばスピンコート法により全面に塗布してレジスト膜32を形成する。次に、露光、現像等のフォトレジストの仕様に応じた一連の適切なフォトプロセスを実施して上記レジスト膜32をパターニングし、図9に示すような、フィルタ領域2に対応する領域を被覆し、その他の領域を露出させたポジパターン32aを形成する。次に、図10に示すように、たとえば硫酸銅電解メッキ処理によって、導電性薄膜31が露出した領域33上に銅(Cu)メッキ層34を析出させる。次に、たとえば有機アルカリや有機溶剤の混合溶液からなるレジスト剥離液によって上記ポジパターン32aを溶解除去し、次いで、露出したクロム薄膜をたとえば硝酸第二セリウムアンモニウムを主成分とするエッチング液によってウエットエッチングする。以上の工程によって、図11に示すような、成膜領域12が露出し、その他の領域が銅メッキ層34で被覆されたネガパターンとして、本実施形態におけるマスクパターン41aを形成する。なお、上記エッチング液が銅メッキ層34に対する侵食作用を有する場合でも、通常はクロム薄膜31の膜厚よりも銅メッキ層34の膜厚の方が十分厚く、クロム薄膜31の溶解除去が先に終了するため、上述したクロム薄膜31のエッチングにおいて上記銅メッキ被膜34はマスクとして機能するものである。
【0026】
次に、図12に示すように、本発明に係るマスク治具であるメタルマスク20を基板1上に配置する。このメタルマスク20は、成膜領域12に対応する位置に、その範囲より僅かに大きく形成された開口部22を有するものである。また、本実施形態において、メタルマスク20の形状は、基板1の外周から突出する外周部23を有するように形成され、たとえばネジやその他の任意の適切なロック機構によって、この外周部23を図示しない成膜装置の基板保持機構に固着することにより、メタルマスク20と共に基板1がこの成膜装置内に保持されるものである。次に、図13に示すように、蒸着もしくはスパッタリング等によって所定の誘電体多層膜を成膜し、R透過フィルタ2、2aを形成する。その後、図14に示すように、メタルマスク20を取り外し、次いで、R透過フィルタ2、2aが形成された基板1を、たとえば塩化第二鉄水溶液等のエッチング液に接触させることによってマスクパターン41aを溶解除去する。この際、このマスクパターン41a上に形成されたフィルタ2aがリフトオフされて、図15に示す所定のフィルタ領域2を得る。以上の工程を他のフィルタ領域3、4についても繰り返すことによって、カラーホイール10を得ることができる。
【0027】
本実施形態でも、図13に示したように、従来のリフトオフ法とは異なり、誘電体多層膜の成膜時に基板1上にメタルマスク20を配置するため、所定のフィルタが形成されるのは開口部20の範囲内に留まり、成膜領域12との境界部分を除くマスクパターン41aの大部分の領域上には形成されない(なお、図13においてメタルマスク20上に堆積する誘電体多層膜の図示は省略する)。そのため、図14に示す状態から図15に示す状態へと至るマスクパターン41aを除去する工程において、エッチング液は、マスクパターン41aの側壁部だけでなく、メタルマスク20によって保護されていた上記未成膜領域の表面全体から浸透し、銅メッキ層およびクロム薄膜の溶解除去が実施されるものである。
【0028】
ここで、マスクパターン41aの膜厚は、フィルタ領域2をなす誘電体多層膜と、マスクパターン41a上に形成される誘電体多層膜2aが互いに分離して形成され得る程度に厚く、かつ蒸着源からの粒子の入射を制限することよって成膜領域12の周縁部における均一な成膜を著しく阻害しない程度に薄いことが望ましく、たとえば通常は1〜4μmであるフィルタ領域2の膜厚の2〜10倍程度に設定されるものである。この膜厚は、メッキ液の組成や温度、メッキ電流密度、メッキ時間などの通常のメッキ条件を調整することによって制御することができる。なお、本実施形態では、電極として使用する導電性薄膜をクロム薄膜とし、マスクパターンを形成するメッキ層として銅皮膜を析出させるものとしたが、本発明に係るメッキ処理はこの態様に限定されるものではなく、メッキ処理およびエッチング処理が可能な任意の金属もしくは金属化合物から、処理条件等を勘案の上所望の組み合わせを選択することができる。
【0029】
次に、本発明の第3の実施形態として本発明に係る分光装置を説明する。図16(a)は本発明に係る分光装置の一実施形態を示す正面図、図16(b)は同様に側面図である。本実施形態において分光装置60は、本発明に係るカラーホイール61と、カラーホイール61を回転させるモータ63と、カラーホイール61をモータ63に取り付けるためのハブ62を備えてなり、カラーホイール61は、その内周部がたとえば接着剤等によってハブ62に固着され、ハブ62とモータ63も接着剤もしくはねじ等の機械的手段によって固着されている。カラーホイール61は、上述した実施形態に記載された製造方法によってフィルタ領域が形成されたカラーホイールであって、各フィルタ領域間は領域の画定に使用されたマスクパターンの精度、たとえばフォトプロセスに特徴的な数μm程度の精度でもって位置合わせされているものである。なお、カラーホイール61は、ハブ62を介さずにモータ63と共通のシャフト等を使用してモータ63に固着するものであってもよい。
【0030】
次に、本発明の第4の実施形態として本発明に係る画像表示装置を説明する。図17は本発明に係る画像表示装置の一実施形態を示す概略構成図である。図17(a)には3種類の異なるフィルタ領域を有する3色カラーホイールを使用した分光装置と1つのライトバルブ素子を備えた画像表示装置の例を示し、図17(b)には2種類の異なるフィルタ領域を有する2色カラーホイールを使用した分光装置と2つのライトバルブ素子を備えた画像表示装置の例を示す。図17(a)において画像表示装置70は、たとえばメタルハライドランプ等からなる白色光源71と、3色カラーホイールを有する分光装置72と、たとえばデジタルマイクロミラーデバイスのような反射型のライトバルブ素子73と、投射レンズ系74とを備えている。白色光源71から出射された白色光は、3色カラーホイールを有する分光装置72によってたとえばR光、G光、B光に順次分光されてライトバルブ素子73に入射し、ライトバルブ素子73は各入射光を変調してR画像、G画像、B画像を順次生成し、生成された各画像は投射レンズ系74によって順次投射されてフルカラー画像が合成される。ここで、分光装置72は、たとえば上述した第3の実施形態に記載された本発明に係る分光装置であり、第1および第2の実施形態に記載されたような製造方法によって製造されたカラーホイールを有して入射光の分光を実行するものである。
【0031】
図17(b)において画像表示装置80は、たとえばメタルハライドランプ等からなる白色光源81と、2色カラーホイールを有する分光装置82と、ミラー83と、全反射プリズム84と、ダイクロイックプリズム85と、たとえばデジタルマイクロミラーデバイスのような反射型のライトバルブ素子86、87と、投射レンズ系88とを備えている。白色光源81から出射された白色光は、2色カラーホイールを有する分光装置72によって、たとえばY(黄色)光およびM(マゼンタ)光に順次分光され、ミラー83および全反射プリズム84によって光路が変更されてダイクロイックプリズム85に入射する。ダイクロイックプリズム85は、たとえばR光のみを透過させ、その他の波長帯域の光を反射する特性を有するものであり、入射したY光はR光およびG光に分光されてそれぞれライトバルブ素子86およびライトバルブ素子87に入射し、同様にM光はR光およびB光に分光されてそれぞれライトバルブ素子86およびライトバルブ素子87に入射する。ライトバルブ素子86は入射R光を変調してR画像を生成し、またライトバルブ素子87は入射G光および入射B光を変調してそれぞれG画像、B画像を生成する。生成されたR画像およびG画像、R画像およびB画像は、再びダイクロイックプリズム85に入射してそれぞれY画像およびM画像に順次合成され、合成されたY画像およびM画像は全反射プリズム84を透過した後投射レンズ系88によって順次投射されてフルカラー画像が合成される。ここで、分光装置82は、たとえば上述した第3の実施形態に記載された本発明に係る分光装置であり、第1および第2の実施形態に記載されたような製造方法によって製造された2色カラーホイールを有して入射光の分光を実行するものである。
【0032】
なお、上述した画像表示装置70および画像表示装置80において、ライトバルブ素子73およびライトバルブ素子86、87はすべて反射型のものとしたが、本発明に係る画像表示装置はこの態様に限定されるものではなく、これらのライトバルブ素子73またはライトバルブ素子86、87のいずれかもしくは両方を、たとえば液晶ライトバルブ素子のような透過型のライトバルブ素子としてもよい。また、本発明に係る画像表示装置において、図17(a)および図17(b)に図示されていない任意の光学系および制御系を追加できることは当業者にとって自明のことである。
【0033】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明に係るカラーホイールの製造方法によれば、基板上に形成されたフィルタ領域を定めるマスクパターン上に、さらにマスク治具を配置してフィルタを形成するため、後にリフトオフする領域上にフィルタが形成されることを防ぎ、さらにはフィルタ形成時の熱、プラズマ、イオン照射等からもマスクパターンが防護され、リフトオフ工程におけるマスクパターンの除去を容易かつ速やかに実施することが可能となる。また、フィルタ領域の範囲は、基板上に形成されたマスクパターンによって画定されるため、フィルタ形成工程におけるマスク治具の位置合わせに依存することなく、高精度に位置合わせされたフィルタ領域を形成することが可能となる。
【0034】
特に、請求項2に記載のカラーホイールの製造方法によれば、フォトレジストを使用してマスクパターンを形成するため、高精度なフォトプロセスによってフィルタ領域を画定することが可能となる。
【0035】
さらに、請求項3に記載のカラーホイールの製造方法によれば、フォトプロセスによるフィルタ領域の画定後、金属皮膜からなるメッキ層を使用してマスクパターンを形成するため、高精度にフィルタ領域を画定することが可能となると共に、フィルタの形成時に基板の加熱あるいは高真空状態が必要な場合でも、耐熱性および脱ガス特性の点で優れたマスクパターンを形成することが可能となる。
【0036】
さらに、請求項4に記載のカラーホイールの製造方法によれば、各フィルタ領域は誘電体多層膜からなる光干渉フィルタによって形成されるため、耐久性(耐熱、耐光、耐薬品)に優れ、透過率が高く、シャープな分光特性を有するカラーホイールを得ることが可能となる。その際、基板はマスク治具を成膜装置に固定することによって保持されるため、基板の最外周部に及ぶ成膜が必要な場合であっても、基板自体を保持するための特別な保持機構を使用することなく、容易に成膜装置に固定することが可能となる。
【0037】
また、請求項5に記載のカラーホイールによれば、フィルタ領域は基板上に高精度に形成されたマスクパターンによって画定され、各フィルタ領域間の境界部分はマスクパターンの精度に応じて最小化されているため、境界部分に入射した結果、色が確定せずに捨てられる光を低減させることが可能となる。
【0038】
また、請求項6に記載の分光装置によれば、使用されるカラーホイール上の各フィルタ領域が高精度に位置合わせされて形成されているため、分光装置に入射する白色光を高効率に利用することが可能となる。また、カラーホイールの最外周部まで成膜されていることから、小径のカラーホイールを使用することができ、ひいてはより小型で低消費電力の分光装置を実現することが可能となる。
【0039】
また、請求項7に記載の画像表示装置によれば、入射白色光を高効率に利用可能な分光装置を備えているため、表示品位の高い画像を表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるカラーホイールを示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるカラーホイールの製造方法において、レジスト膜を形成する工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A'における断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるカラーホイールの製造方法において、ネガパターンを形成する工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A'における断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態におけるカラーホイールの製造方法において、マスク治具を配置する工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A'における断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態におけるカラーホイールの製造方法において、フィルタを形成する工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A'における断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態におけるカラーホイールの製造方法において、マスク治具を取り外す工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A'における断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態におけるカラーホイールの製造方法において、マスクパターンを除去する工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A'における断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態におけるカラーホイールの製造方法において、導電性薄膜およびレジスト膜を形成する工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A'における断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態におけるカラーホイールの製造方法において、ポジパターンを形成する工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A'における断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態におけるカラーホイールの製造方法において、メッキ層を形成する工程を示す図であり、(a)は表面より見た平面図、(b)は(a)のA−A'における断面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態におけるカラーホイールの製造方法において、レジスト膜を除去する工程を示す図であり、(a)は表面より見た平面図、(b)は(a)のA−A'における断面図、(c)は裏面より見た平面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態におけるカラーホイールの製造方法において、マスク治具を配置する工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A'における断面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態におけるカラーホイールの製造方法において、フィルタを形成する工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A'における断面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態におけるカラーホイールの製造方法において、マスク治具を取り外す工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A'における断面図である。
【図15】本発明の第2の実施形態におけるカラーホイールの製造方法において、マスクパターンを除去する工程を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A'における断面図である。
【図16】本発明の第3の実施形態における分光装置を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図17】本発明の第4の実施形態における画像表示装置の概略を示す構成図であり、(a)は3色カラーホイールを使用した例を示し、(b)は2色カラーホイールを使用した例を示すものである。
【図18】カラーホイールを使用した従来の分光装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 R透過フィルタ領域
2a R透過フィルタ
3 G透過フィルタ領域
4 B透過フィルタ領域
10 カラーホイール
11 レジスト膜
11a マスクパターン
12 成膜領域
20 メタルマスク
22 開口部
23 外周部
31 導電性薄膜
32 レジスト膜
32a ポジパターン
34 メッキ層
41a マスクパターン
60 分光装置
70 画像表示装置
80 画像表示装置

Claims (7)

  1. 光透過性の材料からなる円盤状の基板に、それぞれ異なる波長帯域の光を透過または反射する複数のフィルタ領域が形成されたカラーホイールの製造方法であって、
    前記基板に、所定の前記フィルタ領域を定めるようにフォトプロセスによりパターニングされたマスクパターンを形成する工程と
    記所定のフィルタ領域の範囲を含む、該範囲よりも僅かに大きな範囲を露出させるように形成された開口部を備え、前記マスクパターンの、前記開口部から露出しない部分を保護するマスク治具を、前記マスクパターン上に配置する工程と、
    前記マスク治具が配置された前記基板に、所定のフィルタを形成する工程と、
    前記所定のフィルタが形成された前記基板から、前記マスク治具を取り外す工程と、
    前記マスク治具が取り外された前記基板から、一部に前記所定のフィルタが形成された前記マスクパターンを除去する工程とを備えていることを特徴とするカラーホイールの製造方法。
  2. 前記マスクパターンを形成する工程は、
    前記基板にフォトレジストを塗布してレジスト膜を形成するステップと、
    前記レジスト膜に前記所定のフィルタ領域部分が露出されたネガパターンを形成するステップとを含むことを特徴とする請求項1に記載のカラーホイールの製造方法。
  3. 前記マスクパターンを形成する工程は、
    前記基板に導電性薄膜を成膜するステップと、
    前記導電性薄膜上にレジストを塗布してレジスト膜を形成するステップと、
    前記レジスト膜に、前記所定のフィルタ領域部分が被覆されたポジパターンを形成するステップと、
    前記基板に、前記導電性薄膜を電極とする電気メッキによりメッキ層を形成するステップと、
    前記レジスト膜を除去するステップと、
    前記所定のフィルタ領域部分の前記導電性薄膜を除去するステップとを含むことを特徴とする請求項1に記載のカラーホイールの製造方法。
  4. 前記フィルタを形成する工程は、誘電体多層膜を成膜するステップを含み、
    前記基板は、前記マスク治具を前記誘電体多層膜の成膜装置に固定することによって前記マスク治具と共に前記成膜装置内に保持されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のカラーホイールの製造方法。
  5. 光透過性の材料からなる円盤状の基板に、それぞれ異なる波長帯域の光を透過または反射する複数のフィルタ領域が形成されたカラーホイールであって、
    前記フィルタ領域は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の製造方法によって形成されていることを特徴とするカラーホイール。
  6. 光透過性の材料からなる円盤状の基板に、それぞれ異なる波長帯域の光を透過または反射する複数のフィルタ領域が形成されたカラーホイールと、それを回転させるモータとを有する分光装置であって、前記カラーホイールが請求項5に記載のカラーホイールであることを特徴とする分光装置。
  7. 光透過性の材料からなる円盤状の基板に、それぞれ異なる波長帯域の光を透過または反射する複数のフィルタ領域が形成されたカラーホイールと、それを回転させるモータとを有する分光装置を備えた画像表示装置であって、前記カラーホイールは請求項5に記載のカラーホイールであることを特徴とする画像表示装置。
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