JP4116387B2 - 半導体発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体発光素子に関し、特に、大型の半導体発光素子(パワーLED)に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体発光素子は、PN接合に順方向電流を流し、注入キャリアがPN接合域でホールと再結合する過程で生じる自然放出光を利用した発光ダイオードである。この発光ダイオードとして、チップの横幅および奥行きの長さが300μm以下の小型LEDが多く用いられてきた。この小型LEDは、低消費電力・長寿命・小型軽量などの利点を有し、各種の表示装置や交通信号機等に広く使われている。特に、最近は、自動車のバックライト用として、低電流(20mA程度)下での高輝度発光が求められている。
【0003】
一般に、半導体発光素子は、入力電力に対し発光に寄与する割合を表した内部発光効率と、発光した光を半導体発光素子の外側に取り出す割合を表した外部光取出し効率と、が夫々高ければ高いほど、高輝度発光が可能となる。このうち、大きな内部発光効率が得られる構造としては、活性層に直接遷移型のInGaAlP系の材料を用いた構造が知られていた。もっとも、このInGaAlP系材料は、不透明なGaAs基板上に形成される。そこで、さらに、大きな外部光取出し効率を得られる構造として、GaAs基板上にInGaAlP系材料を結晶成長させた後、透明なGaP基板を接着し、不透明なGaAs基板を除去した、透明基板型の小型LEDが実用化されている。このような小型LEDは、例えば、特開2001−57441に提案されている。
【0004】
近時では、新たなLEDとして、大型で大電力が投入可能なパワーLEDの開発が進められている。このパワーLEDは、チップの上面の面積が0.1mm2以上となるような大型のLEDであって、パッケージの熱抵抗を低下させてあり、50mAを超えるような大きな電流が投入できる。このパワーLEDは、電球への置き換え、工業用装置類、分析装置類、医療用機器等への展開が期待されている。このパワーLEDにおいても、活性層にInGaAlP系材料を用い、かつ、透明なGaP基板を接着した、透明基板型のパワーLEDが実用化されている。
【0005】
図5は上記の従来の透明基板型のパワーLEDを示す図であり、図5(a)は断面図、図5(b)は上面図である。基板501の横幅および奥行きの長さは約550μm、基板501の内側面Aの面積は約0.3mm2であり、大型のLEDである。透明p型GaP基板501上には、p型GaP接着層502、p型InGaP接着層503、InAlPからなるp型クラッド層504、p型のInGaAlPを含むMQW構造の活性層505、InAlPからなるn型クラッド層506、n型のInGaAlPからなる電流拡散層507、GaAsからなるn型コンタクト層508、が順次形成されている。上記のp型GaP接着層502と、p型InGaP接着層503と、は接着により形成され、これらの間で接着界面が形成されている。p型GaP基板501の図中下側には、一方側の電極であるp側オーミック電極510が形成されている。他方側の電極であるn側オーミック電極511は、図中上側に形成される。なお、実際の厚さは、透明基板501(p型GaP接着層502を含む)の厚さが数百μm、結晶成長層503〜508の厚さが数μm程度であるが、図5では、説明をしやすくするため、縮尺を変えて示している。
【0006】
図5のパワーLEDでは、活性層505で発光した光は素子の図中上面、或いは図中側面から外部に出射される。上面から光を効率的に取り出すために、不透明なn側オーミック電極511は、図5(b)のように面積的に小さく配置されている。この様にして形成された透明基板型のパワーLEDは、不透明なGaAs基板上に形成された素子よりも、外部取出し効率が増大して高輝度発光が可能となる。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−57441号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来のパワーLEDよりもさらに光取出し効率が高いパワーLEDがあれば、上述の電球への置き換え等、さまざまな用途に有効に用いることができると考えられる。しかしながら、パワーLEDは、高い電流で使用されることが予定されており、動作電圧が低いことが極めて重要となる。そして、この動作電圧を上昇させることなく外部取出し効率を上昇させることは通常困難であると考えられていた。このため、従来のパワーLEDの光取出し効率をさらに高くすることは極めて困難であると考えられていた。
【0009】
すなわち、小型LEDでは、光取出し効率を高めるために、電極を小さくしたり、素子を適当な形状にエッチングしたりする方法が行われていた。このように電極を小さくしたり素子をエッチングしたりすれば動作電圧が高くなるおそれもある。しかし、小型LEDは、低い電流で使用されるため、動作電圧が高くなることは大きな問題とはならなかった。これに対し、パワーLEDは、小型LEDと異なり、高い電流で使用されることが予定されている。このためパワーLEDは、消費電力、信頼性、寿命等の観点から、動作電圧が低いことが極めて重要となる。ところが、この動作電圧を上昇させることなく輝度を上昇させることは、実際上極めて困難であると考えられていた。この結果、従来のパワーLEDの光取出し効率をさらに高くすることは極めて困難であると考えられていた。
【0010】
本発明は、かかる課題の認識に基づくものであり、その目的は、光取出し効率が高いパワーLED(大型の半導体発光素子)を、動作電圧の上昇や信頼性の低下なしに得ることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の実施の形態の半導体発光素子は、第1導電型クラッド層と、前記第1導電型クラッド層上に形成されInGaAlP系材料からなり光を発生する活性層と、前記活性層上に形成された第2導電型クラッド層と、を有する結晶成長層と、GaPからなり厚さが150μm以上で第1の面を有し、前記第1の面は面積が0.1mm2以上であり前記第1導電型クラッド層の接着面に直接的にまたは接着層を介して接着されている透明第1導電型GaP基板と、前記基板の前記第1の面と向き合う第2の面上に形成され、前記活性層からの前記光を反射する第1電極と、前記第2導電型クラッド層上に形成された第2電極と、を備え、前記第1導電型クラッド層の前記接着面の面積は、前記基板の前記第1の面の面積の60%以上90%以下であり、前記第1の面または前記接着層の一部が露呈部として露呈され、前記第2導電型クラッド層を通る前記光と前記露呈部を通る前記光が、出力光として取り出されることを特徴とする。
【0012】
なお、InGaAlP系材料とは、主成分がInxGayAl1−x−yP(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)からなる材料であり、少量のドーパントを含有する材料も含まれる。
【0013】
また、本発明の実施の形態の半導体発光素子は、第1導電型クラッド層と、前記第1導電型クラッド層上に形成され光を発生する活性層と、前記活性層上に形成された第2導電型クラッド層と、を有し、前記第2導電型クラッド層を通る前記光が出力光の一部として取り出される結晶成長層と、前記活性層からの前記光に対して透明で厚さが150μm以上で互いに向き合う第1の面と第2の面とを有し、前記第1の面は面積が0.1mm2以上であり前記第1導電型クラッド層の接着面に直接的にまたは接着層を介して接着され、前記第1導電型クラッド層の前記接着面の面積は前記基板の前記第1の面の面積の60%以上90%以下であり、前記第1の面または前記接着層の一部が露呈部として露呈され、前記露呈部を通る前記光が出力光の他部として取り出される透明第1導電型半導体基板と、前記基板の前記第2の面上に形成され、前記活性層からの前記光を反射する第1電極と、前記第2導電型クラッド層上に形成された第2電極と、を備えることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照にしつつ、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態の半導体発光素子の特徴の1つは、図1に示すように、パワーLEDにおいて、結晶成長層103〜108の一部をエッチング除去し、接着層102の一部を露呈させた点である。これにより、動作電圧をほとんど上昇させることなく、光取出し効率を高くすることができる。以下では、3つの実施の形態について説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態の半導体発光素子を示す図であり、図1(a)は断面図、図1(b)は上面図である。厚さ300μmの透明p型GaP基板101の内側面A上には、p型GaP接着層102、p型InGaP接着層103、InAlPからなるp型クラッド層104、p型のInGaAlPからなる井戸層を含むMQW構造の活性層105、InAlPからなるn型クラッド層106、n型のInGaAlPからなる電流拡散層107、が順次形成されている。電流拡散層107上の一部には、GaAsからなるn型コンタクト層108が形成されている。このn型コンタクト層108上には、一方側の電極であるn側電極111が形成されている。他方側の電極であるp側電極110は、透明p型GaP基板101の裏面に形成される。なお、図1の素子では、透明p型GaP基板101の厚さが300μm、p型GaP接着層102の厚さが0.05μm、結晶成長層103〜108の厚さが数μm、であるが説明をしやすくするため縮尺を変えて表示している。
【0016】
上記の透明p型GaP基板101は、幅(W)が550μm、奥行き(L)が550μm、内側面Aから外側面Bまでの厚さ(H)が300μm、の直方体形状である。内側面Aの面積は約0.3mm2である。図1の素子は、このように大型の透明基板101を用いており、パッケージの熱抵抗を低下させることで、50mAを超えるような大きな電流が投入可能である。このような素子は、パワーLEDと呼ばれる。
【0017】
図1のパワーLEDでは、p側電極110と、n側電極111と、から活性層105に電流が注入される。そして、活性層105から赤色発光の光が放射され、この光は図中上側(n型クラッド層106側)から取り出される。より詳しくは、活性層105からの光は、まず図中主に上下方向に放射される。このうち、図中上方向に放射された光は、図中上側から直接取り出される。他方、活性層105から図中下方向に放射された光は、GaP基板101を透過した後、p側電極110によって上方向に反射されて、図中上側から取り出される。これは、図1のパワーLEDでは、活性層105から放射される赤色発光の光に対し、透明p型GaP基板101が透明であるためである。ここで、上側から効率よく光を取り出すために、不透明な金属からなるn側電極111は、図1(b)に示すように、面積的に小さく配置されている。具体的には、本実施形態では、図1(b)のn側電極111の内側部分のサイズは120μmφである。また、このn側電極111は、大電流を活性層105の全面に均一に流すために、図1(b)から分かるように、細線電極構造となっている。この細線構造の部分のn側電極111の幅は、3〜5μmである。なお、活性層105からの光の吸収を少なくするため、n型GaAsコンタクト層108も、所定の形状にエッチングされている。一方、p側電極110は、動作電圧を下げるため、透明p型GaP基板101の外側面B上のほぼ全面に形成される。
【0018】
図1のパワーLEDの特徴の1つは、結晶成長層103〜108の面積を透明p型GaP基板101の内側面Aの面積よりも小さくし、接着層102の外周部を露呈している点である。すなわち、図1のパワーLEDでは、透明p型GaP基板101(含むGaP接着層102)上の外周部の結晶成長層103〜108を幅約35μm除去している。このため、透明p型GaP基板101の内側面Aの面積は550×550≒3.0×105μm2になるのに対し、結晶成長層103〜108の面積は480×480≒2.3×105μm2になる。つまり、図1のパワーLEDでは、透明p型GaP基板101の内側面Aの面積に対する結晶成長層103〜108の被覆率は75%となっている。これにより、後述のように、光取り出し効率が高くなる。
【0019】
なお、上記の図1の素子は、次のように把握することもできる。すなわち、
p型(第1導電型)クラッド層104と、前記p型クラッド層104上に形成されInGaAlP系材料からなり光を発生する活性層105と、前記活性層105上に形成されたn型(第2導電型)クラッド層106と、を有する結晶成長層104〜106と、互いに向き合う内側面Aと外側面Bとを有し、前記内側面Aが前記結晶成長層104〜106の前記p型クラッド層104に接着層102、103を介して接着され、前記内側面Aから前記外側面Bまでの厚さが150μm以上で、前記内側面Aの面積が0.1mm2以上であり、前記活性層105からの前記光に対して透明なGaPからなる透明p型GaP基板101と、を備え、前記結晶成長層104〜106の面積が前記透明p型GaP基板101の前記内側面Aの面積よりも小さく、前記接着層102の一部が露呈されているものと把握することもできる。
【0020】
次に、図1のパワーLEDの製造方法を簡単に説明すれば、以下の通りである。
【0021】
(1)まず、直径2インチ(約5cm)の透明p型GaP基板101上にMOCVD法により、p型GaP接着層102を形成する。
【0022】
(2)他方、直径2インチの不透明なGaAs基板(図示しない)上に、n型コンタクト層108、電流拡散層107、n型クラッド層106、活性層105、p型クラッド層104、p型InGaP接着層103、を順次形成する。ここで、結晶成長層103〜108は、いずれもInGaAlP系材料からなり、GaAs基板に格子整合する。
【0023】
(3)次に、透明p型GaP基板101上のp型GaP接着層102と、結晶成長層103〜108のp型InGaP接着層103と、を接着する。その後、不透明なGaAs基板を除去する。なお、InGaAlP系材料からなる結晶成長層103〜108と、透明p型GaP基板101と、は格子整合しないので、透明p型GaP基板101上に結晶成長層103〜108を直接形成することは極めて困難である。
【0024】
(4)次に、p型GaP接着層102上の結晶成長層103〜108に予備メサを形成し、個々の素子部分を図1に示す形状にする。このように、ダイシングやスクライブによる分離前に、個々の素子部分に分離前の予備メサを形成することで、寸法精度を高くすることができる。その後、2インチの基板101を、ダイシングやスクライブにより一辺が550μmの個々の素子に分離し、所定の形状に加工して、図1の素子が完成する。
【0025】
以上の製造方法によって形成される図1のパワーLEDでは、透明p型GaP基板101(含むp型GaP接着層102)上の外周部の結晶成長層103〜108を所望の面積で除去し、透明p型GaP基板101の内側面Aの面積に対する結晶成長層103〜108の被覆率を75%としたので、素子の上面(主出射光面)からの光取出し効率を向上させることができる。具体的には、本発明者の実験によれば、従来の素子(図5)に比べて光取出し効率を約1.2倍にすることができた。この理由について、本発明者は、次のように考えている。
【0026】
すなわち、図1の素子では、前述のように、活性層105から図中下側に放射された光は、透明基板101を経てp側電極110で図中上側に反射される。そして、図中上側に向かう光の一部は、再び活性層105を通過する。ところがこの光が活性層105を通過する場合には、この光の一部は活性層105に吸収されてしまう。つまり、活性層105は、主出射光の光取出しにおいて阻害要因となっている。そこで、図1の素子では、この阻害要因となる活性層105の外周部を除去している。このようにすると、p側電極110で図中上側に反射された光のうち外周部のものは、活性層105を通過せずに図中上側に向かう。このため、活性層105による光吸収を減少させ、光取出し効率を向上させることができると考えている。また、活性層105の面積を小さくし、狭い面積に電流を流すことで、非発光再結合に消費される電流成分を減らし、注入電流に対する発光再結合の割合を高くすることができるからであると考えている。
【0027】
また、図1のパワーLEDは、高い放熱性を維持できる。すなわち、図1のGaP基板101の熱伝導率は約0.77W/cm/degであり、前述のようにして剥離されるGaAs基板(図示しない)の熱伝導率約0.47W/cm/degに比べて高い。そして、GaP基板101のサイズは、550μm(W)×550μm(L)×300μm(H)の大型であり、このサイズは従来例(図5)と同様である。このため、図1のパワーLEDは、従来例(図5)と同様の高い放熱性を維持できる。
【0028】
もっとも、パワーLEDにおいて、結晶成長層103〜108の一部を除去することは、通常の技術者にとっては思いもよらないことである。なぜなら、結晶成長層103〜108の面積を小さくし、活性層105の面積を小さくすれば、動作電圧が上昇すると考えられていたからである。すなわち、前述のように、パワーLEDは、高い電流で使用されることが予定されており、消費電力、信頼性、寿命等の観点から、動作電圧が低いことが極めて重要となる。ところが、活性層105の面積を小さくすると、動作電圧の増加を招くおそれがある。このことから、パワーLEDでは、動作電圧の増加を防止する観点から、結晶成長層103〜108の面積をあえて小さくするような構成は用いられてこなかった。
【0029】
しかしながら、本発明者は、ある時、図5のような従来のパワーLEDを得るべき製造工程で、エッチングに失敗し、基板101に比べて結晶成長層103〜108が小さくなった図1のようなサンプルを得た。本発明者は、当初、このサンプルの動作電圧は高くなっており、使い物にならないと考えた。ところが、測定を行ってみると、動作電圧の上昇は、製品としての動作に何ら問題のないレベルであることを独自に知得した。また、前述のように光取出し効率が高くなっていることも、知得した。この独自の知得に基づき、本発明者は、図1のように被覆率を75%としたサンプルを製造した。その結果、動作電圧Vfは約2.02V(図2参照)であり、これは従来のパワーLED(図5)と比べて差がないことが分かった。また、動作電圧Vfの上昇がないため、信頼性の低下も起こらないことが分かった。この理由について、本発明者は、パワーLEDでは、基板101の面積および体積が大きいために、結晶成長層103〜108が小さくなっても、動作電圧に与える影響が小さいからはないかと考えている。また、InGaAlP系材料からなる結晶成長層103〜108と、GaPからなる基板101と、を用いた場合には、結晶成長層103〜108よりも基板101の方がバンドギャップが広くなるため、結晶成長層103〜108の面積を小さくしても、基板101から結晶成長層103〜108に向けての電流が流れにくくなりずらいからであると考えている。
【0030】
以上のように、図1のパワーLEDでは、動作電圧の上昇や信頼性の低下なしに、光取出し効率を高くすることができる。
【0031】
次に、透明p型GaP基板101の内側面Aの面積に対する活性層105の被覆率の範囲について、図2を参照にして検討する。すなわち、図1のパワーLEDでは、GaP透明基板101上の外周部の結晶成長層103〜108を所望の面積で除去し、透明p型GaP基板101の内側面Aの面積に対する結晶成長層103〜108の被覆率を75%としたが、上記の除去する面積を変えることで、被覆率を変化させることもできるので、この被覆率の範囲について検討する。
【0032】
図2は、図1のパワーLEDにおいて、上記の被覆率を変化させた場合の、外部光取出し効率の値と、動作電圧Vfの値と、を示す図である。図中白丸は、左側の縦軸に対応し、外部光取出し効率を示す。この効率は、被覆率が100%のときの効率を1.0とした場合の、相対値である。また、図中黒丸は、右側の縦軸に対応し、動作電圧Vfを示す。また、横軸は、被覆率(%)を示す。なお、被覆率が100%の場合は、パワーLEDは、図5に示す従来例の形状である。
【0033】
図2の白丸から分かるように、被覆率が90%以下になると外部光取出し効率が従来(図5)の約1.1倍以上になり、被覆率が80%以下になると外部光取出し効率はさらに上昇する。そして、被覆率が45%以上の範囲では、被覆率を低下させるほど外部光取出し効率が上昇する。一方、図中黒丸から分かるように、被覆率が70%より小さくなると、動作電圧Vfが徐々に上昇してしまう。もっとも、被覆率が70%以上では、動作電圧Vfの上昇はほとんど起こらない。また、被覆率が60%以上なら、製品としての動作に大きな問題がない。以上の図2の外部光取出し効率(白丸)および動作電圧Vf(黒丸)のデータから、被覆率は、60%以上90%以下、好ましくは70%以上80%以下が良いことが分かる。
【0034】
以上説明した第1の実施の形態のパワーLEDでは、大電流を流して使用するという通常の使用方法の場合につい説明した。これに対し、パワーLEDを低電流で使用する場合には、動作電圧の上昇の問題は少なくなるので、光取出し効率を重視して、被覆率を60%未満にする(図2)こともできる。
【0035】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施の形態の半導体発光素子(パワーLED)の断面図であり、図3(a)は断面図、図3(b)は上面図である。構成に伴う作用と効果は第1の実施の形態(図1)と同様であり、第1の実施の形態と同様の構成部分は同一の符号で示した。第1の実施の形態と異なる点は、パワーLEDの上面(主出射光面)の外周部のみならず該上面のやや中央の中央域にも、p型GaP接着層102を露呈させた事である。つまり図3のパワーLEDでは、露呈されたp型GaP接着層102の位置が、p型GaP接着層102の外周部と、この外周部よりも中央の中央域と、である。このようにすることにより、電流注入効果の弱い上記中央域での光吸収を防止して、活性層105からの発光を効率よく外部に取り出し、光取出し効率をさらに増加させることができる。
【0036】
図3の素子の構造をさらに詳細に説明すれば、次のとおりである。図3(b)の上面図で、電流拡散層107の大きさは、縦480μm、横480μmである。この電流拡散層107上に形成されたn側電極111の、内側部分のサイズは、120μmφである。また、n側電極111の、外側部分の細線構造の幅は、3〜5μmである。図3の素子では、この細線構造のn側電極111の周囲3〜5μmを残して、残りの部分の積層構造103〜107をエッチングして、中央域のp型GaP接着層102を露呈させている。ここで、この細線構造のn側電極111からの電流は、細線幅と同程度の幅だけ広がって、活性層105に注入される。しかし、その他の部分の活性層105は、電流注入効果が弱い。そこで、図3の素子では、この電流注入効果が弱い部分をエッチングしている。このようにエッチングを行っても、エッチングされた部分の活性層105はもともとほとんど発光しないので、エッチングにより輝度が低下することはない。むしろ、発光しない部分の活性層105を除去することで、この部分の活性層105が光吸収を起こすことを防止して、n側電極111の下側部分からの活性層105からの発光を有効に取り出すことができる。この結果、光取出し効率をさらに増加させることができる。
【0037】
以上説明した図3の素子では、n側電極111の細線部分を、n側電極111の中央部分と同心円状に、1重に設けたが、これを2重や3重に設けても良い。2重に設けた場合は、1重目の細線電極と、2重目の細線電極と、の間の部分のp型GaP接着層102を露呈させることもできる。ただし、細線電極の周囲の、細線電極と同程度の幅は、図3の素子と同様に、エッチングせずに残すことが好ましい。
【0038】
(第3の実施の形態)
図4は、本発明の第3の実施の形態の半導体発光素子(パワーLED)の断面図であり、図4(a)は断面図、図4(b)は上面図である。構成に伴う作用と効果は第1の実施の形態(図1)と同様であり、第1の実施の形態と同様の構成部分は同一の符号で示した。第1の実施の形態と異なる点は、図4から分かるように、p型GaP基板101の側面形状をテ−パ状にした事である。これにより、光取出し効率をさらに上昇させることができる。
【0039】
以上説明した実施の形態では、透明p型GaP基板101を接着層102、103を介してp型クラッド層104に接着したが、これを直接的に接着し、内側面Aの一部が露呈されるようにすることもできる。
【0040】
また、以上説明した実施の形態では、透明p型GaP基板101の大きさを、内側面Aの面積が約0.3mm2となるようにしたが、これが0.1mm2以上、好ましくは0.2mm2以上であれば、本発明を有効に用いることができる。また、透明p型GaP基板101の厚さを300μmとしたが、これが150μm以上であれば、本発明を有効に用いることができる。また、透明p型GaP基板101を略直方体形状とし、横幅を350μm以上、奥行きを350μm以上、とすることで、製造プロセスの観点から、さらに有効に本発明を用いることができる。
【0041】
また、以上説明した実施の形態では、p型とn型を逆にすることも可能である。また、結晶成長層103〜108をInGaAlP系材料、基板101をGaPとしたが、他の材料を用いることもできる。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、パワーLEDにおいて、基板に対する結晶成長層の被覆率を60%以上90%以下としたので、動作電圧の上昇や信頼性の低下なしに、光取出し効率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の半導体発光素子の断面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態の半導体発光素子における、被覆率と、外部光取し効率と、動作電圧Vfと、の関係を示す図。
【図3】本発明の第2の実施の形態の半導体発光素子の断面図。
【図4】本発明の第3の実施の形態の半導体発光素子の断面図。
【図5】従来のパワーLEDの断面図。
【符号の説明】
101 透明p型GaP基板
102 p型GaP接着層
103 p型InGaP接着層
104 p型クラッド層
105 活性層
106 n型クラッド層
107 電流拡散層
108 コンタクト層
110 p側電極
111 n側電極
A 内側面
B 外側面
Claims (6)
- 第1導電型クラッド層と、前記第1導電型クラッド層上に形成されInGaAlP系材料からなり光を発生する活性層と、前記活性層上に形成された第2導電型クラッド層と、を有する結晶成長層と、
GaPからなり厚さが150μm以上で第1の面を有し、前記第1の面は面積が0.1mm2以上であり前記第1導電型クラッド層の接着面に直接的にまたは接着層を介して接着されている透明第1導電型GaP基板と、
前記基板の前記第1の面と向き合う第2の面上に形成され、前記活性層からの前記光を反射する第1電極と、
前記第2導電型クラッド層上に形成された第2電極と、
を備え、
前記第1導電型クラッド層の前記接着面の面積は、前記基板の前記第1の面の面積の60%以上90%以下であり、前記第1の面または前記接着層の一部が露呈部として露呈され、
前記第2導電型クラッド層を通る前記光と前記露呈部を通る前記光が、出力光として取り出されることを特徴とする半導体発光素子。 - 第1導電型クラッド層と、前記第1導電型クラッド層上に形成され光を発生する活性層と、前記活性層上に形成された第2導電型クラッド層と、を有し、前記第2導電型クラッド層を通る前記光が出力光の一部として取り出される結晶成長層と、
前記活性層からの前記光に対して透明で厚さが150μm以上で互いに向き合う第1の面と第2の面とを有し、前記第1の面は面積が0.1mm2以上であり前記第1導電型クラッド層の接着面に直接的にまたは接着層を介して接着され、前記第1導電型クラッド層の前記接着面の面積は前記基板の前記第1の面の面積の60%以上90%以下であり、前記第1の面または前記接着層の一部が露呈部として露呈され、前記露呈部を通る前記光が出力光の他部として取り出される透明第1導電型半導体基板と、
前記基板の前記第2の面上に形成され、前記活性層からの前記光を反射する第1電極と、
前記第2導電型クラッド層上に形成された第2電極と、
を備えることを特徴とする半導体発光素子。 - 前記基板が略直方体形状で、前記基板の幅が350μm以上、奥行きが350μm以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の半導体発光素子。
- 前記結晶成長層の前記第1導電型クラッド層が前記基板の前記第1の面の中央部に接着され、前記第1の面の外周部または前記接着層の外周部が露呈されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の半導体発光素子。
- 前記結晶成長層の一部に溝が設けられ、前記溝の底面の前記第1の面または前記接着層が露呈されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の半導体発光素子。
- 前記基板の前記第1の面の面積に対する、前記結晶成長層の被覆率が、70%以上80%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の半導体発光素子。
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