JP4104431B2 - 走査装置及びこの走査装置を用いた走査型プローブ顕微鏡 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、走査装置及びこの走査装置を用いた走査型プローブ顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、カウンタバランス機構を有した走査装置が知られている。例えば特許文献1にはこのような走査装置を用いた走査型プローブ顕微鏡が開示されている。図6はこの走査型プローブ顕微鏡の概略図である。走査型プローブ顕微鏡は、対向して配置され、Z方向に伸縮する2本のスキャナ1002,1003、Zスキャナ固定部1001、XYスキャナ1004、カンチレバー1及び支持部1010を有している。スキャナ1002が伸縮すると、カンチレバー1がZスキャナ固定部1001に対してZ方向に移動する。このとき、スキャナ1002には運動量が発生する。この運動量はZスキャナ固定部1001に伝わり、Zスキャナ固定部1001に振動が発生する。
【0003】
この振動を抑制するために、スキャナ1002,1003は、同時に逆方向に伸縮する。図6にはそれぞれがZスキャナ固定部1001に及ぼす力FD(実線),FD’(点線)が示されている。その際に、スキャナ1003は、スキャナ1002がZスキャナ固定部1001に与える運動量を打ち消す運動量を発生する。このため、Zスキャナ固定部1001に不要な振動が発生しなくなる。このような現象をカウンタバランスという。カウンタバランスにより、XYスキャナ1004には不要な振動が発生することがない。その結果、安定した測定ができる。
【0004】
特許文献2には別のカウンタバランス機構を有した走査装置が開示されている。図7(A)はこの走査装置の上面図であり、図7(B)は図7(A)の7B−7B断面線で切断された走査装置の断面図である。平板状である移動部101の周縁部は固定部110により囲まれている。移動部101と固定部110との間には隙間がある。移動部101の上面はZ方向に向けられている。X方向に面する移動部101の対向する2つの周縁部にはそれぞれ弾性部材112a,112bが、Y方向に面する移動部101の対向する2つの周縁部にはそれぞれ弾性部材111a,111bが固定されている。弾性部材111a,111bと固定部110との間には、X方向に移動部101を移動させるアクチュエータ104a,104bがそれぞれ配置されている。弾性部材112a,112bと固定部110との間には、Y方向に移動部101を移動させるアクチュエータ105a,105bがそれぞれ配置されている。Z方向に伸縮するアクチュエータ1101が移動部101の中央を貫いている。アクチュエータ1101は積層型圧電体を含んでいる。アクチュエータ1101は移動部101に接着されている。アクチュエータ1101の一端には走査対象物が取り付けられる。各アクチュエータを伸縮させることにより、走査対象物を固定部110に対して3次元方向に移動させることができる。
【0005】
アクチュエータ1101の積層型圧電体に電圧を印加すると、移動部101を挟んだアクチュエータ1101の両側は対称的に伸縮する。即ち、アクチュエータ1101の両端面は逆向きに動く。この結果、カウンタバランスが起こるので、移動部101に不要な振動が発生しない。
【0006】
【特許文献1】
米国特許第6323483号明細書
【0007】
【特許文献2】
特開2001−330425号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
(1)特許文献1の欠点は以下に述べるようなものである。カウンタバランスが適切に起こらないとZスキャナ固定部1001の振動が抑制されない。スキャナ1003の力FDとスキャナ1002の力FD’の比を適切に設定することによりカウンタバランスは調整される。力FDと力FD’の比を適切に設定するには振動を検出する必要がある。カンチレバーを用いた走査型プローブ顕微鏡はカンチレバーの変位を検出する変位センサを有している。カンチレバーを試料に近接させた状態でカンチレバーの変位を検出すれば振動を検出することができる。
【0009】
カンチレバーに取り付けられている探針の寸法は数nmであり、極めて鋭い。カウンタバランスが大きくずれていて、強い振動が起こると、探針が破損したり、探針が試料に接触したりするおそれがある。
【0010】
特許文献1の走査型プローブ顕微鏡のように走査装置がカンチレバーを走査する場合には、Zスキャナ固定部1001の振動は比較的鋭敏にカンチレバーに伝わるので、振動の検出が容易である。一方、走査装置が試料を走査する場合には、振動が試料などで吸収されるので振動がカンチレバーに伝わりにくい。従って、振動を精度良く検出できないので、カウンタバランスを適切に調節することが難しい。さらに、走査装置が試料を走査する場合、試料を交換するとZスキャナの負荷が変化する。このため、試料の交換毎にカウンタバランスを調整する必要がある。
【0011】
(2)特許文献2の欠点は以下に述べるようなものである。Z方向に伸縮するアクチュエータ1101の両側が移動部101にそれぞれ与える運動量は、特許文献1の走査装置のように、独立に変えることができない。従って、カウンタバランスを調整することができない。
【0012】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、カウンタバランスがずれたときに容易にカウンタバランスを調整することが可能な走査装置及び走査型プローブ顕微鏡を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係わる走査装置は、
移動部と、
移動部を平面内で移動させる2次元駆動部と、
前記移動部と走査対象物との間に配置されるよう移動部に固定されていて、印加される電圧に応じて伸縮する1次元駆動部であって、前記平面と直交するZ方向に伸縮して走査対象物をZ方向に移動させる1次元駆動部と、
移動部を挟んで1次元駆動部と対向するよう移動部に固定されていて、印加される電圧に応じて伸縮する相殺駆動部であって、Z方向に伸縮することにより移動部にZ方向の運動量を与えて、1次元駆動部が伸縮するときに移動部に与えるZ方向の運動量を打ち消す相殺駆動部と、
1次元駆動部と相殺駆動部のそれぞれの伸縮量に応じた第1信号電圧及び第2信号電圧をそれぞれ生成する信号電圧生成部と、
前記第1及び第2信号電圧を増幅し、増幅した第1及び第2信号電圧をそれぞれ1次元駆動部と相殺駆動部に向けて出力する高圧アンプと、
高圧アンプの第1信号電圧用及び第2信号電圧用のゲインを調整するゲイン調整部と、
1次元駆動部により与えられる運動量と相殺駆動部により与えられる運動量との間に差が生じたときに発生する移動部の駆動振動を検出する駆動振動検出手段と、
を備えており、
高圧アンプの前記ゲインは、駆動振動検出手段により検出される駆動振動が抑制されるよう、ゲイン調整部によりそれぞれ調整される。
【0014】
本発明の請求項2に係わる走査装置では、前記2次元駆動部は、前記移動部を移動させる圧電素子を有しており、この圧電素子は前記駆動振動に応じて伸縮して電圧を発生し、
前記駆動振動検出手段は、この圧電素子が発生する電圧を検出する電圧検出回路と、この検出された電圧に基づいて駆動振動を取得する駆動振動取得部を有している。
【0015】
本発明の請求項3に係わる走査装置では、前記2次元駆動部の圧電素子は積層圧電体を含んでいる。
【0016】
本発明の請求項4に係わる走査装置では、前記2次元駆動部の圧電素子は円筒形圧電体を含んでいる。
【0017】
本発明の請求項5に係わる走査装置では、前記駆動振動検出手段は、前記駆動振動に応じて歪む歪みゲージと、この歪みゲージの歪みに基づいて駆動振動を取得する駆動振動取得部を有している。
【0018】
本発明の請求項6に係わる走査装置は、前記駆動振動検出手段により検出された駆動振動に基づいて、駆動振動が抑制されるよう前記ゲイン調整部を制御する処理部をさらに備えている。
【0019】
本発明の請求項7に係わる走査型プローブ顕微鏡は、前記走査装置を備えており、前記走査対象物は試料を保持する試料保持部と、試料に沿って走査されるプローブとのいずれか一方を含む。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1〜図5を参照して、本発明の実施の形態に係わる走査装置及びこの走査装置を用いた走査型プローブ顕微鏡を説明する。先ず、図1(A)、図1(B)及び図2を参照して本発明の第1の実施の形態の走査装置及びこの走査装置を用いた走査型プローブ顕微鏡を説明する。図1(A)は走査装置を備えた走査型プローブ顕微鏡の一部の平面図であり、図1(B)は図1(A)の1B−1B断面線で切断された走査型プローブ顕微鏡の断面図である。本実施の形態の走査装置は、図7を参照して説明した特許文献2の走査装置に含まれた構成要素と実質的に同じものを含んでいる。実質的に同じ構成要素には同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0021】
(構成)
本実施の形態の走査装置は2次元駆動部、1次元駆動部及び相殺駆動部を有している。2次元駆動部は移動部101をXY平面内で移動させる。1次元駆動部はXY平面と直交するZ方向に伸縮して走査対象物をZ方向に移動させる。相殺駆動部は、Z方向に伸縮することにより移動部101にZ方向の運動量を与えて、1次元駆動部が伸縮するときに移動部101に与えるZ方向の運動量を打ち消す。
【0022】
本実施の形態の走査装置は、走査対象物をZ方向に移動させるために、アクチュエータ1101の代わりにアクチュエータ102を備えている。アクチュエータ102は1次元駆動部に含まれている。アクチュエータ102は移動部101と走査対象物との間に配置されるよう移動部101に固定されていて、印加される電圧に応じて伸縮する。走査対象物は試料を保持する試料保持部と、試料に沿って走査されるプローブとのいずれか一方を含む。本実施の形態では走査対象物は試料1を保持する試料保持部1aを含む。アクチュエータ102はZ方向に延びており、一端が移動部101の中心に固定されている。他端には試料保持部1aが固定されている。アクチュエータ102はZ方向に伸縮して試料保持部1aを移動させる。アクチュエータ104a,104b,105a,105bは2次元駆動部に含まれており、それぞれ積層圧電体を含んでいる圧電素子により形成されている。
【0023】
アクチュエータ103が移動部101を挟んで1次元駆動部(アクチュエータ102)と対向するよう移動部101に固定されている。アクチュエータ103は相殺駆動部に含まれている。アクチュエータ103は印加される電圧に応じて伸縮する。アクチュエータ103もアクチュエータ102と同様にZ方向に延びており、一端が移動部101の中心に固定されている。他端には重量体2が固定されている。重量体2の質量は試料保持部1aの質量と試料1の質量との和に等しい。
【0024】
アクチュエータ102は試料保持部1aを移動させるために伸縮する。このとき、アクチュエータ102は移動部101に運動量を与える。この運動量は移動部101の駆動振動を引き起こす。アクチュエータ103はアクチュエータ102が縮むときに縮み、アクチュエータ102が伸びるときに伸びる。このときアクチュエータ103はアクチュエータ102が与える運動量を打ち消す運動量を移動部101に与える。この結果、カウンタバランスが起こり、移動部101の振動が抑制される。
【0025】
図2は走査装置の制御要素のブロック図である。図2は図1(A)のS−S断面線で切断された走査型プローブ顕微鏡の断面図を含んでいる。信号電圧生成部は、1次元駆動部と相殺駆動部のそれぞれの伸縮量に応じた第1信号電圧及び第2信号電圧をそれぞれ生成する。この第1及び第2信号電圧は高圧アンプ14により増幅される。高圧アンプ14は増幅した第1及び第2信号電圧をそれぞれ1次元駆動部と相殺駆動部に向けて出力する。高圧アンプ14の第1信号電圧用及び第2信号電圧用のゲインはゲイン調整部により調整される。1次元駆動部により移動部101に与えられる運動量と相殺駆動部により移動部101に与えられる運動量との間に差が生じたとき、移動部101には駆動振動が発生する。駆動振動は駆動振動検出手段により検出される。第1信号電圧用及び第2信号電圧用のゲインは、駆動振動検出手段により検出される駆動振動が抑制されるよう、ゲイン調整部によりそれぞれ調整される。
【0026】
走査制御回路11は、試料1の走査経路の指示を受け、指示された走査経路に基づいて第1及び第2信号電圧を出力する。走査制御回路11は信号電圧生成部に含まれている。走査制御回路11には、第1ゲイン調整器12と、第2ゲイン調整器13が接続されている。第1及び第2ゲイン調整器12,13はゲイン調整部に含まれている。第1ゲイン調整器12と第2ゲイン調整器13から出力された第1信号電圧及び第2信号電圧は、高圧アンプ14に入力される。高圧アンプ14によりそれぞれ増幅された第1信号電圧Vz1と第2信号電圧Vz2はそれぞれアクチュエータ103とアクチュエータ102に入力される。アクチュエータ104aの伸縮量を指示する信号電圧は、走査制御回路11により生成され、高圧アンプ14により増幅される。増幅されたアクチュエータ104aの信号電圧Vxaはアクチュエータ104aの圧電素子に印加される。アクチュエータ104aは信号電圧Vxaに応じて移動部101を移動させる。
【0027】
アクチュエータ104aは移動部101を移動させるだけでなく、駆動振動を検出するためにも用いられる。移動部101に駆動振動が発生すると、アクチュエータ104aの圧電素子は移動部101の駆動振動に応じて伸縮して電圧Vxsを発生する。アクチュエータ104aには圧電素子が発生する電圧Vxsを検出する電圧検出回路15が接続されている。電圧検出回路15には電圧Vxsの周波数特性を表示するための周波数特性表示装置16が接続されている。周波数特性表示装置16は電圧Vxsに基づいて駆動振動を取得する駆動振動取得部に含まれている。電圧検出回路15と駆動振動取得部は駆動振動検出手段に含まれている。
【0028】
(作用)
本実施の形態の走査装置を用いれば、以下のようにして容易にZ方向のカウンタバランスを調整できる。最初に、カウンタバランスのずれの程度を検出する。カウンタバランスを調整する際には、正弦波形をもつ第1信号電圧Vz1、第2信号電圧Vz2をアクチュエータ103,102に印加する。先ず、電圧Vz1,Vz2が等しくなるよう、第1ゲイン調整器12と第2ゲイン調整器13を用いて高圧アンプ14の各ゲインを1に設定する。次に、電圧Vz1,Vz2の周波数を同時にスイープさせながら、電圧Vz1,Vz2をアクチュエータ103,102に印加する。アクチュエータ103,102が移動部101に与える運動量の大きさが等しくないと、与えられる2つの運動量の差分と等しい運動量が移動部101に発生し、移動部101の駆動振動が起こる。駆動振動はアクチュエータ104aを伸縮させる。このとき、アクチュエータ104aに含まれた積層圧電体で圧電効果が起こり、駆動振動に応じた電圧Vxsが発生する。電圧検出回路15により検出された電圧Vxsに基づいて周波数特性表示装置16は電圧Vxsの周波数特性を表示する。
【0029】
スイープする電圧Vz1,Vz2の周波数の範囲は、移動部101を含む振動系の共振周波数に基づいて決められる。移動部101はXY平面内で移動するように設計されている。このため、1次の振動モードはX方向(Y方向)の振動に関するモードになる。このように設計された移動部101はZ方向にも振動する。Z方向の振動に関するモードは2次以降の振動モードに含まれる。この振動モードの周波数fxz付近で電圧Vz1,Vz2の周波数をスイープすれば、移動部101を含む振動系の共振が起こる。このとき、移動部101はZ方向に強く振動する。この振動はアクチュエータ104aをZ方向に振動させる。この振動、即ち駆動振動は、電圧に変換され、電圧検出回路15及び周波数特性表示装置16を用いて検出される。
【0030】
Z方向に関する振動モードの代わりに、X方向又はY方向に関する振動モードの周波数fx,fy付近で電圧Vz1,Vz2の周波数をスイープしても良い。周波数fx付近でスイープすればX方向に移動部101が強く振動し、周波数fy付近でスイープすればY方向に強く振動する。これらの振動も電圧に変換された後、検出される。
【0031】
駆動振動が検出されることは、カウンタバランスがずれていることを意味する。検出される駆動振動の大きさはカウンタバランスのずれの程度を表す。カウンタバランスを調整するために、使用者は周波数特性表示装置16に表示された電圧Vxsの振幅ピークが最小になるように、第1ゲイン調整器12と第2ゲイン調整器13を用いて高圧アンプ14のゲインを調整する。高圧アンプ14のゲインを変化させることにより、電圧Vz1,Vz2の振幅をそれぞれ変えて、アクチュエータ103,102がそれぞれ移動部101に与える運動量を変えることができる。Vxsの振幅ピークが最小になったとき、アクチュエータ102の運動量とアクチュエータ103の運動量が打ち消し合い、駆動振動が抑制される。これにより、カウンタバランスのずれによる、不要な駆動振動が抑制されるので、走査装置は走査対象物を精度良く走査することができる。精度良く走査すれば、振動ノイズのない高画質の走査型プローブ顕微鏡像が得られる。
【0032】
(効果)
本実施の形態の走査装置を用いた走査型プローブ顕微鏡を用いれば、試料等の交換や、圧電体の経時変化等に起因して、カウンタバランスがずれても、高圧アンプ14のゲインを調整することで、容易にカウンタバランスを調整することができる。従来技術1の走査装置では、カウンタバランスがずれたとき、カウンタバランスを調整するためにプローブを試料に近接させる必要がある。このため、強い駆動振動が起こったときにプローブが破損したり、試料に接触したりするおそれがある。本実施の形態の走査装置ではプローブを試料から遠ざけたままカウンタバランスを調整することができるのでプローブの破損、試料への接触などが起こらない。
【0033】
本実施の形態の走査装置は走査型プローブ顕微鏡に用いられているが、その他の装置にも適用できる。
【0034】
図3(A)及び図3(B)を参照して本発明の第2の実施の形態に係わる走査装置とこれを用いた走査型プローブ顕微鏡を説明する。
【0035】
(構成)
図3(A)は走査装置を備えた走査型プローブ顕微鏡の斜視図である。図3(B)は一部が切りかかれた走査型プローブ顕微鏡の側面図である。本実施の形態の走査装置の2次元駆動部は、円筒形圧電体204を含む圧電素子を有している。円筒形圧電体204の一端面には固定部210が固定されており、他端面には平板状の移動部201が固定されている。円筒形圧電体204の中心軸はZ方向に向けられている。
【0036】
円筒形圧電体204の内周と外周には電極が貼り付けられている。外周の電極205は4枚あり、内2枚はX方向に面している対向する2つの部分にそれぞれ貼り付けられている。残りの2枚はY方向に面している部分に貼り付けられており、互いに対向している。内周にある電極は接地されている。内周面の電極とX方向に面する電極205との間に電圧を印加すれば移動部201をX方向に移動させることができ、内周面の電極とY方向に面する電極205との間に印加すればY方向に移動させることができる。円筒形圧電体204と、内周及び外周にある電極は圧電素子を形成している。
【0037】
移動部201にはアクチュエータ202,203が移動部201を挟んで互いに対向するよう固定されている。アクチュエータ202,203はともにZ方向に延びている。アクチュエータ202の一端は円筒形圧電体204とは反対側にある移動部201の面に固定されている。他端には試料1を保持する試料保持部1aが固定されている。アクチュエータ203の一端は移動部201に固定され、円筒形圧電体204の内部に向かって伸びている。他端には、試料1と試料保持部1aの質量の和に等しい質量をもつ重量体2が固定されている。アクチュエータ202は1次元駆動部に、アクチュエータ203は相殺駆動部に含まれている。
【0038】
本実施の形態の走査装置は、上記第1の実施の形態の走査装置と実質的に同じ制御要素、即ち走査制御回路11、第1ゲイン調整器12、第2ゲイン調整器13、高圧アンプ14、電圧検出回路15及び周波数特性表示装置16(図2参照)を有している。これらの制御要素の構成と作用は上記第1の実施の形態のものと同じである。アクチュエータ202には第2信号電圧Vz2が、アクチュエータ203には第1信号電圧Vz1がそれぞれ高圧アンプ14により印加される。円筒形圧電体204の外周にある4枚の電極205の内の1つが電圧検出回路15に接続されている。制御要素のその他の接続関係は第1の実施の形態と同じである。
【0039】
(作用)
カウンタバランスの調整は第1の実施の形態と同様にしてなされる。アクチュエータ202,203のそれぞれの運動量の大きさが等しくなく、カウンタバランスがずれている場合、移動部201の駆動振動が発生する。例えば、Z方向に関する振動モードの周波数fxz付近で電圧Vz1,Vz2の周波数をスイープさせると、共振が起こってZ方向に移動部201が強く振動する。その結果、円筒形圧電体204には電圧Vxsが発生する。電圧Vxsは電圧検出回路15により検出され、周波数特性表示装置16に電圧Vxsの周波数特性が表示される。電圧Vxsの振幅ピークを最小にするように、電圧Vz1,Vz2の振幅を変えることで、カウンタバランスを調整することができる。
【0040】
電圧Vxsの振幅ピークの大きさが小さく検出が困難な場合、円筒形圧電体204の外周にある4枚の電極205のすべてから電圧を取り出し、その平均演算を行っても良い。振幅ピーク検出時にノイズを除去できるので、検出感度を高くすることができる。
【0041】
(効果)
2次元駆動部の圧電素子に円筒形圧電体が使用されているので、走査装置をより小型にできる。
【0042】
図4を参照して第3の実施の形態に係わる走査装置とこれを用いた走査型プローブ顕微鏡を説明する。
【0043】
(構成・作用)
本実施の形態の走査装置の構成は基本的に第1の実施の形態の走査装置の構成と同じである。図1(A)、図1(B)及び図2を参照して説明した第1の実施の形態と実質的に同じ構成要素には同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。図4は走査装置に含まれる制御要素の一部のブロック図である。図4は図1(A)のS−S断面線で切断された走査型プローブ顕微鏡の断面図を含んでいる。本実施の形態の走査装置は、移動部101の駆動振動に応じて歪む歪みゲージ301と、歪みゲージ301の歪みに基づいて駆動振動を取得する駆動振動取得部を有している。歪みゲージ301と駆動振動取得部は駆動振動検出手段に含まれている。
【0044】
本実施の形態では移動部101の駆動振動を検出するために、アクチュエータ104aの代わりに歪みゲージ301を用いる。歪みゲージ301は移動部101と固定部110の間に介在している弾性部材111aに取り付けられている。歪みゲージ301は、移動部101に発生する駆動振動の振動モードの内、所望の振動モードに基づく振動が発生したときに歪みゲージ301がより強く歪むように配置されている。歪みゲージ301には歪み検出回路17が接続されている。歪み検出回路17は歪みゲージ301の歪みに応じた信号を出力する。この信号に基づいて周波数特性表示装置16が歪みゲージ301の歪みの周波数特性を表示する。表示された歪みの振幅ピークを最小にするように、電圧Vz1,Vz2の振幅を変えてやることで、カウンタバランスを調整することができる。歪み検出回路17と周波数特性表示装置16は駆動振動取得部に含まれている。
【0045】
(効果)
所望の振動モードが感度良く検出されるよう歪みゲージ301を配置することができる。走査装置の振動特性に合わせて、適切に歪みゲージ301を配置すれば、カウンタバランスのずれをより鋭敏に検知できる。
【0046】
図5を参照して本発明の第4の実施の形態に係わる走査装置とこれを用いた走査型プローブ顕微鏡を説明する。
【0047】
(構成・作用)
本実施の形態の走査装置の構成は基本的に第1の実施の形態の走査装置の構成と同じである。図1(A)、図1(B)及び図2を参照して説明した第1の実施の形態と実質的に同じ構成要素には同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。図5は走査装置の制御要素のブロック図である。図5は図1(A)のS−S断面線で切断された走査型プローブ顕微鏡の断面図を含んでいる。本実施の形態の走査装置は、駆動振動検出手段により検出された駆動振動に基づいて、駆動振動が抑制されるようゲイン調整部を制御する処理部18をさらに備えている。処理部18は、駆動振動検出手段に含まれている周波数特性表示装置16と、ゲイン調整部に含まれている第1ゲイン調整器12及び第2ゲイン調整器13とに接続されている。
【0048】
処理部18は、周波数特性表示装置16から電圧Vxsの周波数特性を受け取る。受け取った周波数特性に基づいて処理部18は、Vxsの振幅のピークが最小になるよう第1ゲイン調整器12及び第2ゲイン調整器13を制御する。
【0049】
(効果)
使用者の手を介さずともカウンタバランスを調整できるので、短時間で調整を行うことができる。
【0050】
尚、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。
【0051】
【発明の効果】
駆動振動を低減して、ノイズが少なく高画質の走査型プローブ顕微鏡像を取得することができる。また、カウンタバランスがずれたときに容易にカウンタバランスを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の第1の実施の形態に係わる走査装置を備えた走査型プローブ顕微鏡の一部の平面図、(B)は(A)の1B−1B断面線で切断された走査型プローブ顕微鏡の断面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わる走査装置の制御要素のブロック図。
【図3】(A)は本発明の第2の実施の形態に係わる走査装置を備えた走査型プローブ顕微鏡の斜視図、(B)は一部が切りかかれた(A)の走査型プローブ顕微鏡の側面図。
【図4】図4は本発明の第3の実施の形態に係わる走査装置に含まれる制御要素の一部のブロック図。
【図5】図5は本発明の第4の実施の形態に係わる走査装置の制御要素のブロック図。
【図6】図6は特許文献1に開示された走査型プローブ顕微鏡の概略図。
【図7】(A)は特許文献2に開示された走査装置の上面図、(B)は(A)の7B−7B断面線で切断された走査装置の断面図。
【符号の説明】
1 試料
1a 試料保持部
2 重量体
11 走査制御回路
12 第1ゲイン調整器
13 第2ゲイン調整器
14 高圧アンプ
15 電圧検出回路
16 周波数特性表示装置
17 歪み検出回路
18 処理部
101 移動部
102 アクチュエータ
103 アクチュエータ
104a アクチュエータ
104b アクチュエータ
105a アクチュエータ
105b アクチュエータ
110 固定部
201 移動部
202 アクチュエータ
203 アクチュエータ
204 円筒形圧電体
210 固定部
301 歪みゲージ
Claims (8)
- 移動部と、
移動部を平面内で移動させる2次元駆動部と、
前記移動部と走査対象物との間に配置されるよう移動部に固定されていて、印加される電圧に応じて伸縮する1次元駆動部であって、前記平面と直交するZ方向に伸縮して走査対象物をZ方向に移動させる1次元駆動部と、
移動部を挟んで1次元駆動部と対向するよう移動部に固定されていて、印加される電圧に応じて伸縮する相殺駆動部であって、Z方向に伸縮することにより移動部にZ方向の運動量を与えて、1次元駆動部が伸縮するときに移動部に与えるZ方向の運動量を打ち消す相殺駆動部と、
1次元駆動部と相殺駆動部のそれぞれの伸縮量に応じた第1信号電圧及び第2信号電圧をそれぞれ生成する信号電圧生成部と、
前記第1及び第2信号電圧を増幅し、増幅した第1及び第2信号電圧をそれぞれ1次元駆動部と相殺駆動部に向けて出力する高圧アンプと、
高圧アンプの第1信号電圧用及び第2信号電圧用のゲインを調整するゲイン調整部と、
1次元駆動部により与えられる運動量と相殺駆動部により与えられる運動量との間に差が生じたときに発生する移動部の駆動振動を検出する駆動振動検出手段と、
を備えており、
高圧アンプの前記ゲインは、駆動振動検出手段により検出される駆動振動が抑制されるよう、ゲイン調整部によりそれぞれ調整されることを特徴とする走査装置。 - 前記2次元駆動部は、前記移動部を移動させる圧電素子を有しており、この圧電素子は前記駆動振動に応じて伸縮して電圧を発生し、
前記駆動振動検出手段は、この圧電素子が発生する電圧を検出する電圧検出回路と、この検出された電圧に基づいて駆動振動を取得する駆動振動取得部を有していることを特徴とする請求項1に記載の走査装置。 - 前記2次元駆動部の圧電素子は積層圧電体を含んでいることを特徴とする請求項2に記載の走査装置。
- 前記2次元駆動部の圧電素子は円筒形圧電体を含んでいることを特徴とする請求項2に記載の走査装置。
- 前記駆動振動検出手段は、前記駆動振動に応じて歪む歪みゲージと、この歪みゲージの歪みに基づいて駆動振動を取得する駆動振動取得部を有していることを特徴とする請求項1に記載の走査装置。
- 前記走査装置は、前記駆動振動検出手段により検出された駆動振動に基づいて、駆動振動が抑制されるよう前記ゲイン調整部を制御する処理部をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項に記載の走査装置。
- 請求項1乃至6いずれか1項に記載の走査装置を備えており、前記走査対象物は試料を保持する試料保持部と、試料に沿って走査されるプローブとのいずれか一方を含むことを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
- 請求項1乃至6いずれか1項に記載の走査装置を備えていることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡。
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