JP4195604B2 - 動力伝達用ベルトの復旧方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、一対のプーリ間に掛け渡して使用する動力伝達用ベルトの復旧方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
台車搬送装置は、動力伝達用ベルトによって回転する駆動シャフトの両端にローラを備え、このローラの回転によってローラ上に載置した台車を搬送する。このような台車搬送装置をコンパクトにするために、上記したローラの内側にある軸受部のさらに内側に、プーリおよびプーリに掛け渡す動力伝達用ベルトを設定する場合がある。
【0003】
この場合、動力伝達用ベルトを交換する必要が生じ、新たな動力伝達用ベルトを取り付ける際には、ローラを取り外した後、軸受部を駆動シャフトから解体した状態で行わなければならず、ベルト復旧作業が煩雑で時間を要し、台車搬送装置を使用する生産ラインでの効率低下を招く。
【0004】
このため、例えば特許文献1には、連結端部を備えた補修用歯付きベルトを、連結端部で連結金具および連結ピンを用いて連結する例が記載されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−70953号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の補修用歯付きベルトは、正規の歯付きベルトとして使用するものではなく、ライン稼働時に応急的に使用するものであることから、そのまま正規の歯付きベルトと同様に使用し続けた場合には、連結端部に作用する負荷に耐えきれず、短時間で破損してしまう。
【0007】
そこで、この発明は、ベルト復旧作業を容易にしつつ、復旧用のベルトを、正規のベルトと同様に使用できるようにすることを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、この発明は、駆動シャフトの両端にローラを連結し、このローラの軸方向内側に位置する前記駆動シャフトに設けた一対のプーリ間に掛け渡して使用する動力伝達用ベルトの復旧方法において、環状の動力伝達用ベルトとしてあらかじめ存在する歯付きベルトをベルト長手方向に沿って螺旋状に切断した帯状のベルト構成体を、前記一対のプーリ間に複数回螺旋状に巻き付けつつその互いに隣接する側面相互を密着した状態として所定幅のベルト本体とし、前記螺旋状に切断したベルト構成体は、その端部を切除してベルト長手方向に対向する端面を備え、前記ベルト本体の互いに隣接する前記ベルト構成体相互を、該ベルト本体の表面の前記端面を含む部位にシート状の接続部材を貼付して接続固定する動力伝達用ベルトの復旧方法としてある。
【0009】
【発明の効果】
この発明によれば、帯状のベルト構成体を螺旋状に複数回巻き付けて所定幅のベルト本体とし、このベルト本体の互いに隣接するベルト構成体相互をシート状の接続部材の貼付により接続固定するので、ベルト取り付けの際には、一対のプーリ間に帯状のベルト構成体を巻き付けた後、シート状の接続部材をベルト本体の表面の端面を含む部位に貼付すればよく、したがってベルト復旧作業を容易にしつつ、復旧用のベルトを、正規のベルトと同様にして長時間使用することができる。
また、復旧用のベルト本体は、通常使用している環状の歯付きベルトを螺旋状に切断したベルト構成体を使用していることから、このベルト構成体をプーリに巻き付けることで、プーリに噛み合う歯部は、隣接するベルト構成体相互でベルト長手方向に沿って容易に一致させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0011】
図1は、この発明の実施の一形態を示す動力伝達用ベルトとしての歯付きベルト1および、この歯付きベルト1を掛け渡す一対のプーリ3の分解斜視図である。
【0012】
歯付きベルト1は、帯状のベルト構成体5を、一対のプーリ3相互間に螺旋状に巻き付けて構成する所定幅を備えた環状のベルト本体7と、このベルト本体7の表面2箇所に貼付するシート状の接続部材としての2枚の接続シート9とを有する。
【0013】
ベルト構成体5は、通常の所定幅を有する環状の歯付きベルトを、ベルト長手方向に沿って螺旋状に切断したものである。この切断により、二点鎖線で示す両端部11,13の先端から、螺旋状の一周分切断した部分まで、ベルト構成体5の幅が徐々に広くなる形状となる。そして、上記した両端部11,13を切除し、これによりベルト長手方向に対向する端面15,17を設ける。
【0014】
一方接続シート9は、ほぼ正方形を呈する弾性変形可能な例えばゴムシートであり、その内部には、補強繊維としての短繊維(繊維長10mm以下)19を、ベルト幅方向に向けて混入してある。なお、接続シート9の厚さは3.5mm程度である。
【0015】
また、図2に示すように、接続シート9は、ベルト長手方向(図2中で左右方向)両端部の表面側角部に、面取りCを施してある。
【0016】
このような接続シート9は、前記したベルト構成体5を一対のプーリ3に巻き付けてベルト本体7とした状態で、図3の平面図に示すように、ベルト構成体5の両端部の端面15,17をそれぞれ含む部分の表面に貼付する。
【0017】
このときベルト構成体5は、図3に示すように、隣接する部分の側面相互を密着させた状態とし、この状態のベルト本体7のベルト幅と、接続シート9のベルト幅方向の幅とがほぼ同一となる。なお、図1では、理解しやすくするために、ベルト構成体5の互いに隣接する部分の側面相互は、密着させず離間させた状態としてある。
【0018】
また、ベルト構成体5は、通常の所定幅を有する環状の歯付きベルトを、ベルト長手方向に沿って螺旋状に切断したものであることから、上記図1,図3のように巻き付けた状態では、プーリ3と噛み合う歯部は、ベルト長手方向に沿って容易に揃えることができる。
【0019】
図4は、上記した歯付きベルト1を、復旧用のベルトとして使用する台車搬送装置の一部を示す側面図である。図5はその平面図、図6は図4のA−A断面図である。
【0020】
この台車搬送装置は、搬送台車21を図4中で左右方向に移動搬送するもので、搬送台車21は、駆動シャフト23の両端に連結してあるローラ25上に載置し、ローラ25の回転によって移動する。駆動シャフト23およびローラ25は、搬送台車21の搬送方向に沿って適宜間隔で複数配置してある。
【0021】
上記した駆動シャフト23は、図6に示すように、ローラ25の内側を、左右のフレーム27の外側に設けた軸受部29が回転可能に支持する。フレーム27は、ベース部31に固定してある。
【0022】
そして、軸受部29より内側のフレーム27よりさらに内側部分の駆動シャフト23には、前記図1に示したプーリ3を固定してある。このプーリ3は、1本の駆動シャフト23につき2個設けてあり、図5中で左側2本の駆動シャフト23は、図5中で上部に位置するプーリ3同士を歯付きベルト33で連結する。なおこの歯付きベルト33は、通常使用する環状の動力伝達用のタイミングベルトであり、破損するなどして交換が必要となったときに、図1の歯付きベルト1と交換する。
【0023】
また、図5中で右側2本の駆動シャフト23は、図5中で下部に位置するプーリ3同士を歯付きベルト33で連結する。さらに、図5中で右側端部の駆動シャフト23と、この駆動シャフト23の右側に隣接する図示しない駆動シャフトとは、図5中で上部に位置するプーリ3同士を歯付きベルト33で連結する。
【0024】
このように、歯付きベルト33は、図5に示すように、台車搬送方向に沿って図5中で上下に互い違いとなるよう千鳥状に配置する。
【0025】
また、互いに隣接する駆動シャフト23相互間には、図4に示すように、前記ベース部31にブラケット35を介して取り付けたテンショナ37を設置し、歯付きベルト33の張力を下方から調整する。
【0026】
そして、図5中で左側端部の駆動シャフト23の図5中で下部側のプーリ3と、駆動モータ39のプーリ41とは、駆動用歯付きベルト43で連結する。すなわち、上記した駆動モータ39の駆動により、各駆動シャフト23がローラ25とともに回転し、ローラ25上に載置する搬送台車21を移動させる。
【0027】
このような台車搬送装置の稼働時に、歯付きベルト33が破損するなどして交換の必要が生じたときに、この歯付きベルト33に代えて、前記図1に示した歯付きベルト1を取り付ける。
【0028】
上記した歯付きベルト1を取り付ける際には、破損した歯付きベルト33に対応するテンショナ37を取り外した状態で行う。
【0029】
歯付きベルト1は、前述したように帯状のベルト構成体5からなり、このベルト構成体5を、破損した歯付きベルト33を装着していたプーリ3相互間に、図1のように螺旋状に巻き付けて取り付ける。このとき、互いに隣接するベルト構成体5の側面相互を密着した状態とする。
【0030】
ベルト構成体5をプーリ3に巻付けた後は、2枚の接続シート9を、図3のように、端面15,17を含む部分のベルト本体7の表面に貼付する。最後にテンショナ37で、新たに取り付けた歯付きベルト1の張力を調整し、これにより、歯付きベルト1の取付作業が終了する。
【0031】
次に、上記した実施形態の効果を以下に説明する。
【0032】
(1)歯付きベルト1を用いた復旧作業は、ローラ25を外すことなく、また軸受部29を駆動シャフト23から分解することなく、短時間で容易に行うことができ、台車搬送装置を使用する生産ラインでの効率低下を防止することができる。
【0033】
(2)復旧用の歯付きベルト1は、帯状のベルト構成体5を複数回巻き付けたものであるから、従来のように端部同士を連結するような応急的に使用するものとは異なり、台車搬送装置の稼働時において、通常使用している環状の歯付きベルト33と同様に長時間使用することができる。
【0034】
(3)復旧用の歯付きベルト1は、通常使用している環状の歯付きベルト33を、螺旋状に切断したベルト構成体5を使用していることから、このベルト構成体5をプーリ3に巻き付けることで、プーリ3に噛み合う歯部は、隣接するベルト構成体5相互でベルト長手方向に沿って容易に一致させることができる。
【0035】
(4)歯付きベルト1は、切断後の帯状のベルト構成体5の両端部11,13を切除し、端面15,17を有する構造としているので、ベルト構成体5をプーリ3に巻き付けるときに、端面15,17付近の環状としたベルト本体5の側面を揃えやすくなる。この結果、プーリ3の鍔部との干渉による端面15,17付近の剥がれを防止でき、歯付きベルト1の信頼性が向上する。ベルト構成体5の両端部11,13を切除しない場合には、その先端が鋭利となっているので、剥がれやすくなる。
【0036】
(5)接続用シート9は、ベルト幅方向に配向する補強用の短繊維19を混入しているので、ベルト長手方向の弾性率が低く伸びやすく、逆にベルト幅方向の弾性率が高く伸びにくいものとなる。このため、接続シート9は、ベルト長手方向に容易に伸縮して、装置稼働時での負荷に対応できるとともに、ベルト構成体5のベルト幅方向のずれを規制することができる。
【0037】
(6)接続用シート9は、図2に示すようにベルト長手方向の端部に面取りCを施してあるので、接続用シート9を貼付した部位がテンショナ37を通過するときに、歯付きベルト1の振動を抑制することができる。
【0038】
(7)歯付きベルト1は、プーリ3に巻き付けたベルト構成体5に接続シート9を貼付するだけの構造であることから、従来のように、連結金具および連結ピンを用いる場合に比べ、接続するための部品点数が少なくて済む。
【0039】
なお、接続シート9は、図3に示す端面15,17を含む部位以外についても貼付してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の一形態を示す歯付きベルトおよび歯付きベルトを巻き付ける一対のプーリの分解斜視図である。
【図2】図1の歯付きベルトに接続シートを貼付した部位を示す側面図である。
【図3】図1の歯付きベルトに接続シートを貼付した部位を示す平面図である。
【図4】図1の歯付きベルトを復旧用のベルトとして使用する台車搬送装置の一部を示す側面図である。
【図5】図4の台車搬送装置の平面図である。
【図6】図4のA−A断面図である。
【符号の説明】
1 歯付きベルト(動力伝達用ベルト)
3 プーリ
5 ベルト構成体
7 ベルト本体
9 接続シート(シート状の接続部材)
11,13 ベルト構成体の端部
15,17 端面
19 短繊維(補強繊維)
33 環状の歯付きベルト(環状の動力伝達用ベルト)
C 面取り
Claims (3)
- 駆動シャフトの両端にローラを連結し、このローラの軸方向内側に位置する前記駆動シャフトに設けた一対のプーリ間に掛け渡して使用する動力伝達用ベルトの復旧方法において、環状の動力伝達用ベルトとしてあらかじめ存在する歯付きベルトをベルト長手方向に沿って螺旋状に切断した帯状のベルト構成体を、前記一対のプーリ間に螺旋状に複数回巻き付けつつその互いに隣接する側面相互を密着した状態として所定幅のベルト本体とし、前記螺旋状に切断したベルト構成体は、その端部を切除してベルト長手方向に対向する端面を備え、前記ベルト本体の互いに隣接する前記ベルト構成体相互を、該ベルト本体の表面の前記端面を含む部位にシート状の接続部材を貼付して接続固定することを特徴とする動力伝達用ベルトの復旧方法。
- 前記シート状の接続部材に、ベルト幅方向に配向する補強繊維を設けたことを特徴とする請求項1に記載の動力伝達用ベルトの復旧方法。
- 前記シート状の接続部材におけるベルト長手方向端部の表面側角部に、面取りを施したことを特徴とする請求項1または2に記載の動力伝達用ベルトの復旧方法。
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