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JP4195131B2 - 単塔式吸着分離方法及び装置 - Google Patents

単塔式吸着分離方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、単塔式吸着分離方法及び装置に関し、詳しくは、分子ふるいカーボンを用いて窒素ガスを含む混合ガス、特に空気から窒素ガスを分離濃縮する単塔式吸着分離方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
分子ふるいカーボンを用いた圧力変動吸着分離(PSA)法により窒素ガスを分離する装置として、2筒式と単筒式とがよく知られている。2筒式PSA装置は、吸着工程、再生工程及び均圧回収工程の3工程を基本とし、それぞれ順次に工程を切換えて実施しながら、窒素含有ガス中の窒素ガス、例えば空気中の窒素ガスを分離濃縮するものであって、装置規模は、小型装置から大型装置まで幅広く採用されている。しかし、この2筒式PSA装置は、窒素収率の向上や製品純度の維持を図るため、切換弁やその他の付属機器の数が多くなり、複雑で高価な装置になっている。一方の単筒式PSA装置は、吸着工程と再生工程とを繰返すものであり、2筒式PSA装置に比べると、構成機器が少なく単純であるという利点はあるものの、窒素収率や製品純度の点では劣っていた。
【0003】
上記単筒式PSA装置に対しても、特開平5−105410号公報や、特開昭60−36306号公報等に記載されているように、プロセス及び構成機器に関して種々改善が進められてきている。ところが、充填される分子ふるいカーボンが2筒式PSA装置に使用されるものと同じ性能のものであるため、単筒式PSA装置に適したコンパクト化を十分に発揮しているとはいえず、窒素ガス発生量に対して装置価格が安価であるとはいえなかった。また、単筒式では、2筒式で採用される均圧回収工程を実行できないため、回収率を向上させることは極めて困難なことであった。
【0004】
すなわち、従来は、窒素を濃縮分離する際には、2筒式PSA装置を使用することが普通であり、これに適する分子ふるいカーボンとしては、酸素/窒素の吸着速度比(選択係数)が大きく、かつ、酸素の吸着速度が遅いものを選ぶのが通常であったから、この条件に合致した分子ふるいカーボンが多く開発されてきた。
【0005】
ところが、単筒式PSA装置では、前述のように、2筒式PSA装置では可能な均圧工程でのガス回収を行うことができないため、再生工程終了時の大気圧から、吸着工程の最終圧まで加圧空気を供給しながら吸着工程を実施することになる。したがって、吸着筒内の供給ガスの流速が2筒式PSAより速くなるので、分子ふるいカーボンの分離効率が低下して窒素の濃縮が困難になってしまう。このように、2筒式PSA装置に適した分子ふるいカーボンを単筒式PSA装置にそのまま応用すると、分離効率を十分に発揮させることが不可能であった。
【0006】
また、単筒式PSA装置は、単純であるが故にシステムを改善する余地が少なく、一般に市販されているような特性の分子ふるいカーボンを使用して操作条件の最適化を図っても、装置の小型化には限界があるので、単筒式PSA装置を使用するのは、小規模の窒素発生装置に限られていた。
【0007】
そこで本発明は、単筒式の利点を生かして装置のコンパクト化が図れるとともに、窒素ガスの収率を大幅に向上させることができる単塔式吸着分離方法及び装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の単塔式吸着分離方法は、分子ふるいカーボンを充填した吸着筒を、吸着工程と再生工程とに切換えて窒素含有ガス中の窒素を分離濃縮する単塔式吸着分離方法において、前記分子ふるいカーボンとして、吸着開始300秒後における酸素吸着量の90%の酸素量を、吸着開始から20〜50秒間で吸着する能力及び選択係数が5〜10の範囲の能力を備えた分子ふるいカーボンを使用することを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明の単塔式吸着分離方法は、前記吸着工程において、吸着剤量1リットル当たり、毎分11〜21リットル(標準状態換算)の空気を供給すること、前記吸着工程と再生工程との切換えサイクルが80〜170秒間であることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の単塔式吸着分離装置は、分子ふるいカーボンを充填した吸着筒を、吸着工程と再生工程とに切換えて窒素含有ガス中の窒素を分離濃縮する単塔式吸着分離装置において、吸着開始300秒後における酸素吸着量の90%の酸素量を、吸着開始から20〜50秒間で吸着する能力及び選択係数が5〜10の範囲の能力を備えた分子ふるいカーボンを吸着筒に充填したことを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の単塔式吸着分離装置の一形態例を示す系統図である。この単塔式吸着分離装置は、特定の分子ふるいカーボンを充填した吸着筒1の製品ガス出口側に、該吸着筒1から得られる製品窒素ガスを貯留する製品ガス槽2を接続したものであって、吸着筒1と製品ガス槽2とは、製品ガス経路3及びパージガス経路4で接続されている。また、吸着筒1の原料ガス入口側には、原料ガス経路5及び排ガス経路6が接続されており、製品ガス槽2には製品ガス供給経路7が接続されている。
【0012】
さらに、前記製品ガス経路3には逆止弁11が、パージガス経路4には流量制御弁12及び逆止弁13が、原料ガス経路5には制御弁14及び切換弁15が、排ガス経路6には切換弁16及び消音装置17が、製品ガス供給経路7には圧力制御弁18及び流量制御弁19が、それぞれ設けられている。前記切換弁15と切換弁16とは、工程の進行に伴って所定のタイミングで開閉されるものであり、その他の弁は、所定の圧力や流量が得られる開度にあらかじめ設定されている。
【0013】
この単塔式吸着分離装置は、吸着工程と再生工程とを繰返すことにより、窒素含有ガス中の窒素を分離濃縮して製品窒素ガスとする。例えば、原料となる窒素含有ガスが空気である場合、吸着工程では、切換弁15が開、切換弁16が閉となり、あらかじめ7kgf/cmに圧縮された原料空気が、制御弁14で流量と圧力とを制御された後、切換弁15を通って原料ガス経路5から吸着筒1内に導入される。空気中の酸素ガスは、吸着筒1内に充填されている分子ふるいカーボンに吸着されて窒素ガスと分離し、吸着しなかった窒素ガスが製品ガス経路3を通って製品ガス槽2に流入する。
【0014】
所定の時間が経過すると、吸着工程から再生工程への切換えが行われ、切換弁15が閉、切換弁16が開となる。これにより、吸着筒1内の酸素ガスが排ガス経路6を経て外部に放出される。また、吸着筒1内の圧力が低下すると、製品ガス槽2内の窒素ガスがパージガス経路4を通って吸着筒1内を逆流し、吸着筒1内に残留する酸素ガスをパージする。この製品窒素ガスの一部を使用した製品パージは、製品窒素ガスの純度を高めるために行われるものであって、パージガス量は、製品純度と製品供給量との兼ね合いで設定される。所定時間経過すると、切換弁15が開、切換弁16が閉となって再生工程から吸着工程に切換えられる。
【0015】
通常、吸着工程は、最高圧力が10kgf/cm以下であり、吸着筒1の圧力上昇過程から連続的に窒素ガスを製品ガス槽2に送る方式や、吸着筒1がある一定圧力になってから窒素ガスを製品ガス槽2に送り出す方式等がある。また、吸着工程の時間は、最長、数分から数十分程度であり、再生工程の時間は、数分程度である。さらに、吸着筒が一つだけの単筒式であるから、吸着筒1からの窒素ガスは、間欠的に製品ガス槽2に送られることになるが、製品窒素ガスは、製品ガス槽2から製品ガス供給経路7を経て所定の圧力及び所定の流量で需要先に連続的に供給される。
【0016】
前記吸着筒1に充填する分子ふるいカーボンとしては、吸着速度が速いものが選択されている。この吸着速度の速い分子ふるいカーボンとは、吸着開始300秒後における酸素吸着量の90%の酸素量を、吸着開始から20〜50秒間、好ましくは28〜45秒間で吸着する能力(以下、初期吸着能力という)を備えた分子ふるいカーボンである。このとき、初期吸着能力が20秒未満の場合は、酸素と窒素との吸着速度の差(選択係数)が必然的に小さくなるため、酸素/窒素の分離効率が低下してしまう。また、初期吸着能力が50秒を超えると、時間当たりの窒素発生量が少なくなり過ぎてしまう。
【0017】
原料となる窒素含有ガスが空気である場合、上記分子ふるいカーボンを使用して窒素を効率よく分離するためには、空気の供給量を、11〜21NL/(min・L)の範囲(吸着剤量1リットル当たり、毎分11〜21リットル(標準状態換算)の範囲)に設定することが好ましい。供給量がこれより少ないと時間当たりの窒素発生量が少なくなり、これより多くなると酸素/窒素の分離効率が低下する。また、初期吸着能力が28〜45秒間の分子ふるいカーボンの場合は、空気の供給量を13〜18NL/(min・L)の範囲に設定することにより、更に効率よく窒素を分離することができる。
【0018】
さらに、前記初期吸着能力が20〜50秒間の分子ふるいカーボンにおいては、その酸素/窒素の吸着速度比(選択係数K)が、5〜10の範囲であることが好ましい。ここで、選択係数Kとは、吸着開始300秒後の酸素吸着量の90%の酸素量をq(O)とし、それを吸着するのに要した時間と同じ時間で吸着した窒素吸着量をq(N)としたときに、K=q(O)/q(N)で表されるものである。この選択係数Kは、できるだけ大きいことが望ましいが、吸着速度を早くしながら選択係数を10より大きくすることには限度がある。一方、選択係数が5未満であると、分離効率が小さくなり過ぎるので実用的ではない。
【0019】
また、吸着筒1が吸着工程を開始してから、再生工程を経て次の吸着工程を開始するまでの時間、すなわち、1サイクルの時間は、吸着筒1の容量や原料の供給量にもよるが、通常は80〜170秒が適当である。この1サイクルの時間が80秒未満の場合は、酸素/窒素の分離効率が低下し、170秒を超えると、時間当たりの窒素発生量が少なくなってしまう。
【0020】
上述のような条件に設定することにより、窒素の収率を高めることができるとともに、所定の純度の製品窒素ガスを所定圧力、所定流量で連続的に製造することが可能となり、単筒式で非常にコンパクトな装置構成とすることができるので、装置コストや運転コストの低減が図れる。
【0021】
すなわち、2筒式PSA装置用として開発されていた比較的吸着速度の遅い従来の分子ふるいカーボンではなく、吸着速度の速い分子ふるいカーボンを使用して単筒式PSA装置を形成することにより、コンパクトで低コストの装置で窒素ガスを効率よく分離濃縮することが可能となる。
【0022】
【実施例】
実施例1
分子ふるいカーボンとして、吸着開始300秒後の酸素吸着量の90%の酸素量を47秒間で吸着する吸着速度の速い分子ふるいカーボンを使用した。吸着筒は内容積(吸着剤充填量)1リットルのものを、製品ガス槽には内容積2.5リットルのものをそれぞれ使用した。吸着終了圧力は6.5kgf/cmとし、再生は大気圧までの圧力放出として同時に製品パージも行った。パージガス量は1時間当たり15NL(NLは標準状態でのガスの体積(リットル)、以下同じ)とした。1サイクルの時間は、吸着工程80秒、再生工程80秒の160秒とした。運転は室温を25℃に調節した室内で行った。なお、1サイクルの時間は、使用した分子ふるいカーボンにおける最適な時間をあらかじめ実験により測定したものを選択した(以下同じ)。
【0023】
窒素含有ガスとして最も手軽な空気を使用して窒素ガスの分離濃縮を行った。得られた製品窒素ガスの純度を製品中の酸素濃度[容積%]で表し、製品中の酸素濃度が0.01%のときと、0.1%のときの空気供給量、窒素発生量(製品窒素量)及び窒素収率を表1に示す。
【0024】
なお、以下の表において、空気供給量[NL/min](標準状態に換算した1分当たりの流量(リットル)、以下同じ)は、吸着工程時に吸着筒に供給される空気の流量であり、窒素発生量[NL/min]は、製品ガス槽から需要先へ連続的に供給される流量である。窒素収率[%]は、製品窒素量÷{0.79×空気供給量×(吸着工程時間÷1サイクル時間)}×100で表した。
【0025】
【表1】
Figure 0004195131
【0026】
実施例2
吸着開始300秒後の酸素吸着量の90%の酸素量を37秒間で吸着する分子ふるいカーボンを使用し、1サイクルの時間は140秒(吸着工程70秒+再生工程70秒)とした。これ以外の条件は、実施例1と同じとした。その結果を表2に示す。
【0027】
【表2】
Figure 0004195131
【0028】
実施例3
吸着開始300秒後の酸素吸着量の90%の酸素量を23秒間で吸着する分子ふるいカーボンを使用し、1サイクルの時間は110秒(吸着工程60秒+再生工程50秒)とした。パージガス量は1時間当たり20NLとした。これ以外の条件は実施例1と同じとした。その結果を表3に示す。
【0029】
【表3】
Figure 0004195131
【0030】
比較例1
吸着開始300秒後の酸素吸着量の90%の酸素量を68秒間で吸着する吸着速度の遅い分子ふるいカーボンを使用した。1サイクルの時間は260秒(吸着工程130秒+再生工程130秒)とし、パージガス量は1時間あたり7NLとした。これ以外の条件は実施例1と同じとした。その結果を表4に示す。
【0031】
【表4】
Figure 0004195131
【0032】
比較例2
吸着開始300秒後の酸素吸着量の90%の酸素量を59秒間で吸着する分子ふるいカーボンを使用し、1サイクル時間は245秒(吸着工程130秒+再生115秒)とした。パージガス量は1時間当たり11NLとした。これ以外の条件は実施例1に同じとした。その結果を表5に示す。
【0033】
【表5】
Figure 0004195131
【0034】
実施例1〜3と比較例1〜2の対比
比較例1,2に対する実施例1,2,3の窒素発生量の比率及び窒素収率の比率を表6に示す。この表から明らかなように、本発明の実施例では、同じ吸着筒容積当たりの窒素発生量が、比較例に比べて最大では2.79倍、最小でも1.54倍であり、吸着筒当たりの窒素発生量が極めて多くなる効果が得られた。換言すると、窒素発生量当たりでは、極めて内容積の小さな吸着筒でよいことになり、PSA装置全体としても極めてコンパクトになる効果が得られる。また、窒素収率についても、実施例の収率を比較例の収率で除した値は表6の通りであり、大幅に改善されていることが認められる。
【0035】
【表6】
Figure 0004195131
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高い収率で、単位吸着筒容積当たり多くの窒素を発生することができる。すなわち、窒素発生量当たりでは、吸着筒を小さくすることができ、PSA装置全体を極めてとしてコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の単塔式吸着分離装置の一形態例を示す系統図である。
【符号の説明】
1…吸着筒、2…製品ガス槽、3…製品ガス経路、4…パージガス経路、5…原料ガス経路、6…排ガス経路、7…製品ガス供給経路、11…逆止弁、12…流量制御弁、13…逆止弁、14…制御弁、15…切換弁、16…切換弁、17…消音装置、18…圧力制御弁、19…流量制御弁

Claims (4)

  1. 分子ふるいカーボンを充填した吸着筒を、吸着工程と再生工程とに切換えて窒素含有ガス中の窒素を分離濃縮する単塔式吸着分離方法において、前記分子ふるいカーボンとして、吸着開始300秒後における酸素吸着量の90%の酸素量を、吸着開始から20〜50秒間で吸着する能力及び選択係数が5〜10の範囲の能力を備えた分子ふるいカーボンを使用することを特徴とする単塔式吸着分離方法。
  2. 前記吸着工程において、吸着剤量1リットル当たり、毎分11〜21リットル(標準状態換算)の空気を供給することを特徴とする請求項1記載の単塔式吸着分離方法。
  3. 前記吸着工程と再生工程との切換えサイクルが80〜170秒間であることを特徴とする請求項1記載の単塔式吸着分離方法。
  4. 分子ふるいカーボンを充填した吸着筒を、吸着工程と再生工程とに切換えて窒素含有ガス中の窒素を分離濃縮する単塔式吸着分離装置において、吸着開始300秒後における酸素吸着量の90%の酸素量を、吸着開始から20〜50秒間で吸着する能力及び選択係数が5〜10の範囲の能力を備えた分子ふるいカーボンを吸着筒に充填したことを特徴とする単塔式吸着分離装置。
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