JP4191283B2 - 多層塗工装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウエブに塗工液を複数層連続塗工する多層塗工装置に関し、より詳細には、バッキングロールの周囲に複数のリップ型のノズルヘッドを間隔をおいて配して多数層の塗工層を形成する多層塗工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、バックアップロールに支持されて連続搬送されるウエブに多層塗工する装置としては、スライド型塗工装置や、リップ型塗工装置等が知られている。いわゆるスライド型多層塗工装置は、塗工液を噴出する複数のスロットと、噴出した塗工液をバッキングロールに支持されて搬送されるウエブ面に供給するスライド面とを備え、各スロットから塗工液をスライド面に供給し、スライド面に沿って流すことにより、スライド面で塗工液を順次下方へ積層し、連続搬送されるウエブ面に同時に多層塗工する。
【0003】
また、いわゆるリップ型塗工装置はノズルヘッド又はダイのバッキングロールの対向面(リップ面)に塗工液を供給する複数のスロットを形成し、各スロットから塗工液をリップ面に供給することにより、前方から順次、連続搬送されるウエブの面から上層へ積層し、連続搬送されるウエブに同時に多層塗工する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような塗工装置による多層塗工は、各層の塗工厚の調整が困難であり、高速では気泡等が発生して厚く塗工するのが困難であると共に、塗工時に殆ど剪断力をかけることができず塗工精度が悪かった。具体的には、スライド型塗工装置では、層毎に特定の粘度とか特殊な物性を持った塗工液を選ぶ必要があり、塗工速度又は塗工製品の用途が制限されると共に、塗工厚ムラが発生した。また、上記リップ型塗工装置では、リップ面とウエブとの間隙調整、塗工液物性の関連等との調節が困難であった。また、高速塗工において、塗工液に気泡が発生したり、塗工厚ムラが発生した。
【0005】
本発明者は上述した問題に対処して創案したものであって、種々多層塗工装置の高速化について研究し、塗工ヘッドを複数にして、間隔を置いて配置することで、高速塗工でき、各層の厚み調整が容易にできることを究明した。
【0006】
本発明の目的とする処は、各層の厚み調整が容易にできて、気泡等の発生を防いで高速でムラを発生することなく、塗工できる多層塗工装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そして、上記目的を達成するための手段としての本発明の多層塗工装置は、バッキングロールの下方に、第1ノズルヘッドを配し、前記第1ノズルヘッドの出口から第1の塗工液を圧力をかけて噴出してバッキングロールに支持されて走行されるウエブに塗工し、前記第1ノズルヘッドから間隔を置いてバッキングロールに対向して、第2ノズルヘッドを配し、前記第2ノズルヘッドの噴出口から第2の塗工液を圧力をかけて噴出して前記ウエブの前記第1の塗工液の上に塗工する多層塗工装置であって、前記第1ノズルヘッドは、ヘッド本体とドクターエッジと蓋体とから構成し、内部の幅方向に下液溜め室を設け、前記下液溜め室からドクターエッジの前方の前記出口に続く流出路を設け、前記流出路の出口の周囲の前記ドクターエッジからその前方にかけて、前記バッキングロールに対向する面に間隙を残して、液溜め壁を立設し、前記バッキングロールの下周面、前記液溜め壁及び前記ドクターエッジ前面とにより形成された部分を上液溜め室として前記流出路の出口より前方に脹らまして前記流出路の容積より大きく形成し、前記第2ノズルヘッドは、第2ヘッド本体部と噴出ヘッド部とから構成し、前記第2ヘッド本体部に塗工液入口を設け、前記噴出ヘッド部に第2塗工液をウエブ面に供給する噴出口を設け、前記噴出ヘッド部はバッキングロールに近設すると共に対向する面にリップ面を形成し、前記噴出ヘッド部のリップ面は前方の上流側リップ面を、後方の下流側リップ面より前記バッキングロールに対して段付に後退させると共に、前記上流側リップ面を傾斜させて、前記上流側リップ面と前記バッキングロールの接線とのなす角度を、前記下流側リップ面と前記バッキングロールの接線がなす角度より大きくし、前記第2ノズルヘッドにおける下流側リップ面とウエブの間隙によって決まる剪断圧力を、前記第1ノズルヘッドにおける前記ドクターエッジの刃先による線圧よりも低くして第2塗工液を塗工する。
【0009】
本発明の多層塗工装置は、第1ノズルヘッドと第2ノズルヘッドを間隔を置いてバッキングロールの周囲に配し、第1ノズルヘッドは、ヘッド本体とドクターエッジと蓋体とから構成し、前記ドクターエッジの前方の本体に塗工液を供給する出口を設け、バッキングロールに対向する面に間隙を残して液溜め壁を立設し、バッキングロールの下周面、前記液溜め壁及び前記ドクターエッジ前面とにより形成された部分を上液溜め室として前記塗工液の出口より前方に脹らまして前記流出路の容積より大きく形成し、上液溜め室に塗工液を溜めて塗工し、ドクターエッジ先端で塗工を均一にならす。第2ノズルヘッドは、第2ヘッド本体部と噴出ヘッド部とから構成し、前記第2ヘッド本体部の塗工液入口を設け、前記噴出ヘッド部から第2塗工液をウエブ面に供給する噴出口を設け、噴出ヘッド先端のリップ面で塗工液を積層し、高速でムラなく塗工する。
【0010】
本発明において、ウエブとは、金属ストリップ、紙、フィルム、布、シート等の可撓性の帯状材を意味する。流出路の容積とは、下液溜め室と出口間の流出路の容積を意味する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。ここに、図1〜図5は本発明の一実施態様を示し、図1は本発明に係る多層塗工装置を示す側面図、図2は第1ノズルヘッドの圧力制御を行なうブロック図、図3は第2ノズルヘッドの正面図、図4は図3のA−A線断面図、図5は噴出ヘッド部の拡大図である。
【0012】
(多層塗工装置10の構造の概略)
多層塗工装置10は、バッキングロール12に支持されて走行されるウエブFに対向して、バッキングロール12の下方に配置された第1ノズルヘッド14と、これと間隔を置いて配置された第2ノズルヘッド15とを備えている。
【0013】
第1ノズルヘッド14は、概略、ヘッド本体16とドクターエッジ18と蓋体22とから構成し、第2ノズルヘッド15は、ノズル本体部52と噴出ヘッド部54とから構成している。
【0014】
そして、バッキングロール12に支持されて走行されるウエブFに対向して、第1ノズルヘッド14から第1の塗工液が塗工され、続いて、この塗工層の上に第1ノズルヘッド14と間隔を置いて配置された第2ノズルヘッド15から第2塗工液が塗工される。
【0015】
(第1ノズルヘッド14の構造)
第1ノズルヘッド14のヘッド本体16は、バッキングロール12と略同じ幅を有し、上部にドクターエッジ18が設けられている。このドクターエッジ18は、縦断面形状が円弧状に形成されたコンマ型をしている。ドクターエッジ18の最先端とバッキングロール12とは間隙を持って配置され、この間隙をウエブFが走行する。ヘッド本体16の前面16aはフラットな面に形成され、この前面16aに塗工液の供給口20が開口している。
【0016】
ヘッド本体16のドクターエッジ18が設けられた側と反対側の前方上流側には、蓋体22がボルトにより着脱自在に取付けられている。蓋体22の後面には、幅方向に凹部24によって第1ノズルヘッド14内部の幅方向に伸びて下液溜め室26が形成される。下液溜め室26の上部には流出路28が幅方向に第1液溜め室26に連続して形成されている。この流出路28は、垂直に上方に伸びて、ドクターエッジ18の前部と第1ノズルヘッド14の前端部との間に形成された出口28aに達している。そして、この出口28aの幅方向の長さをウエブFの概略の塗工幅にしている。ウエブFの塗工幅を変えるには、蓋体22の幅方向の長さを変化させる。蓋体22の前面の上部に液溜め壁30を設け、出口28aから供給された塗工液を貯えるようにしている。
【0017】
液溜め壁30は、蓋体22と略同じ幅を有し、蓋体22の前面の上部にボルト31により着脱自在に取付けられる。この液溜め壁30の上端とバッキングロール12の下端面の間には、ウエブFの走行用の間隙が残されている。そして、液溜め壁30とドクターエッジ18等により上液溜め室32が形成される。
【0018】
上液溜め室32は、第1塗工液をウエブFに塗工するように貯留する所で、ドクターエッジ18の前面、蓋体22の上面、液溜め壁30の後面とによって形成された空間と、この空間の両端面を第1ノズルヘッド14の上面とバッキングロール12の下周面との間に配された隔壁によって閉塞することにより形成されている。この上液溜め室32の容積は、流出路28の出口28aより前方が脹らんだ状態になっていることにより、流出路28の容積より大きくされている。隔壁は、第1ノズルヘッド14の上面とバッキングロール12の下周面との間を摺動自在に設けられている。また隔壁の底面は幅方向に開口した流出路28の出口28aを閉塞できるように形成されている。
【0019】
また、ヘッド本体16のドクターエッジ18の下方には、スリット36が設けられている。このスリット36は、その一端がヘッド本体16の後上面に幅方向に開口し、かつ、前方にいくほど下方に傾斜して設けられている。また、スリット36と直交するように調整ボルト38が幅方向に複数本等間隔に貫通している。この調整ボルト38の端部は、第1ノズルヘッド14の後面16bに臨んでおり、この後面16bから調整ボルト38の螺合具合を調整することによってスリット36の幅を調整できる。スリット36の幅が変化することにより、ドクターエッジ18の刃先が上下動して、上下にそれぞれ2〜3μmの幅で調整ができる。なお、幅方向に複数個調整ボルト38が設けられていることから、上下動させたい刃先の一番近い調整ボルト38で調整できる。さらに、第1ノズルヘッド14には、第1ノズルヘッド14を保持する保持部材40が設けられている。
【0020】
保持部材40は、第1ノズルヘッド14の下方に設けられ、サーボモータ、エアーシリンダ、油圧シリンダ等の位置調整用の駆動手段に連結されている。保持部材40に保持されて第1ノズルヘッド14は、バッキングロール12に対して接近、離反できるようにされている。駆動手段は駆動により、第1ノズルヘッド14の中央部に設けられ、端部の位置をバッキングロール12の中心方向にそれぞれ20〜30μmの幅で調整する。また、保持部材40の下方にはスケール保持部材が配され、このスケール保持部材は位置計測用スケールを内蔵し、第1ノズルヘッド14のバッキングロール12に対する位置を検出する。
【0021】
第1塗工液の塗工厚を測定する第1厚み測定装置90が、第1ノズルヘッド14と第2ノズルヘッド15との間のウエブFの走行路に設けられている。厚み測定装置90の種類としては、β線厚み計、赤外線厚み計等が使用される。この厚み測定装置90で測定した厚み信号を制御装置のマイコン48に出力し、マイコン48で厚みの設定値と比較し、後述するように、第1塗工液の供給量、供給圧力、バッキングロール12とドクターエッジ18の間隙等を調節して塗工厚みが設定値になるように制御する。
【0022】
また、マイコン48は、図示しないバッキングロール12のモータ回転計、ギャップセンサ等に接続され、バッキングロール12の回転、バッキングロール12とドクターエッジ18の左右方向の所定位置におけるギャップの検出信号が入力されるようにされている。
【0023】
第1塗工液の供給量、供給圧力を制御する第1ポンプ46は、ヘッド本体16の第1塗工液の供給口に接続されている。このポンプ46は、マイコン48に接続され、マイコン46からの動作信号DSによって制御され、塗工液の供給量及び供給圧力を調節している。第1塗工液の供給圧力は上液溜め室32の内圧を圧力計49で測定して検出している。この圧力計49はマイコン48に接続され、測定した圧力を電気信号である圧力信号ASによってマイコン48へ出力する。
【0024】
(第1ノズルヘッド14の制御方法)
(1) 第1の制御系統
まず、第1の制御系統について説明する。
【0025】
第1塗工液の塗工厚みを制御する方法としては,塗工厚は供給される塗工液の量によって決定されるという原則に基づいて、供給量、供給圧力を制御して行なう。
【0026】
すなわち、この第1ポンプ46の単位時間当りの吐出量はライン速度と塗工幅と塗工厚の積、すなわち塗工量の体積によって決定される。なお、この場合の塗工厚はウェット状態の塗工厚である。また、単位時間当りの塗工液の吐出量はポンプ46の回転数によって決定される。したがって、第1ポンプ46の必要な回転数N(rpm)は、(1) 式によって決定される。
【0027】
N= D×W×V/K1 ×Q …… (1)
但し、Dはウェットの塗工厚(mm)、Wは塗工幅(mm)、Vはライン速度(m/分)、Qはポンプ46の1回転当りの吐出量(cc/REV)、K1 は定数である。
【0028】
Qはポンプ46のポンプ形式が決まれば定数と考えることができるので、(1) 式は、
N= D×W×V/K2 …… (2)
のようになる。
【0029】
但し、K2 =K1 ×Qである。
【0030】
したがって、ウェットの塗工厚Dと塗工幅Wをマイコン48に数値入力し、バッキングロール12のライン速度VをA/D変換器を介してマイコン48に入力すれば、マイコン48は(2) 式によって求めたポンプ回転数Nになるようにポンプ46の回転用モータを制御する。
【0031】
これにより、ライン速度Vの変化にポンプ46の回転数が自動的に追従して、常に同じ塗工厚及び同じ塗工幅で塗工液を塗工することができる。
【0032】
(2) 第2の制御系統
次に、第2の制御系統について説明する。
【0033】
塗工作業中には塗工厚や塗工幅の変更はないと考えられているため、(2) 式における塗工厚Dと塗工幅Wは定数と考えられる。したがって、(2) 式は、
N=K3 ×V …… (3)
のように表される。但し、K3 =D×W/K2 である。
【0034】
ところで、塗工厚Dにおいて、全塗工幅に対してその平均値Dp を、厚み測定装置90から求めると上記定数K3 は下記のように与えられる。
【0035】
K3 =Ds /Dp ×K0 …… (4)
但し、Ds は設定塗工厚及びK0 は定数である。
【0036】
(4) 式で求めたK3 を(3) 式に代入することにより、設定塗工厚に対応するポンプ46の回転数が(5) 式のようになる。
【0037】
N= Ds ×V×K0 /Dp …… (5)
これにより、ライン速度Vの変化にポンプ46の回転数が自動的に追従して、常に同じ塗工厚及び同じ塗工幅で塗工液を塗工することができる。
【0038】
さらに、塗工厚みの制御をドクターエッジ18とバッキングロール12との間隙を調節して行なう制御としては、幅方向の塗工厚みを第1厚み測定装置90によりn区画して測定すると共に、ギャップセンサがドクターエッジ18とバッキングロール12の間隙を測定し、マイコン48に記憶させる。これらのn区画部のそれぞれの平均塗工厚をノズルの左側よりD1 (t) ,D2 (t) …Dn-1(t)、Dn (t) としてマイコン48が記憶する。
【0039】
そして、一定時間毎に入力するD1 (t) 、D2 (t) …Dn-1(t)、Dn (t) に応じて、マイコン48が下記の(6) 〜(8) 式の計算を行なって、ドクターエッジ18左側とバックアップロール12左側との間隙をGL (t) 、ドクターエッジ18右側とバックアップロール12右側との間隙をGR (t) 、ドクターエッジ18中央部とバックアップロール12中央部との間隙をGC (t) を求める。
【0040】
GL (t) =GL (t-1) +{(D2 (t) +Dn-1(t))/2−D2 (t) }×K4 …… (6)
GR (t) =GR (t-1) +{(D2 (t) +Dn-1(t))/2−D6 (t) }×K4 …… (7)
GC (t) =GC (t-1) +{(D2 (t) +Dn-1(t))/2−D4 (t) }×K4 …… (8)
但し、GL (t-1) 、GR (t-1) 及びGC (t-1) は、一定時間前の(6) 〜(8) 式によって求めたドクタエッジ18とバッキングロール12の間隙である。また、K4 は塗工係数である。
【0041】
マイコン48は、GL (t) 、GR (t) 、GC (t) になるように、一定時間毎にギャップを測定し、ギャップモータを駆動して、ドクタエッジ18とバッキングロール12の間隙を補正する。
【0042】
これにより、常にウエブFの幅方向の塗工厚が制御され、塗工厚にむらができたりすることがない。この場合において、幅方向のn区画のnの数はウエブFの幅にもよるが3以上が好ましい。厚みの精度を良くするには多い方が好ましいが、ウエブFの幅により選べばよい。また、塗工厚の制御をポンプ46の回転数調節や保持部材40の位置調節を併せて行なうことにより、より精度のよい塗工厚み調節ができる。
【0043】
このようにして、第1ノズルヘッド14で第1塗工液は、厚みを制御されてウエブFに塗工された後、続いて、第1塗工液の層に積層されて第2ノズルヘッド15で第2塗工液が塗工される。
【0044】
(第2ノズルヘッド15の構造)
第2ノズルヘッド15は、第1ノズルヘッド14と間隔を置いて配置され、ノズル本体部52と噴出ヘッド部54と支持部材56で形成されている。そして、第2ノズルヘッド15で、バッキングロール12に支持されて第1ノズルヘッド14で第1塗工液が塗工されて走行されてくるウエブFの塗工層の上に第2塗工液が塗工される。
【0045】
第2ノズルヘッド15のノズル本体部52は、前部ボデイ58と後部ボデイ60とを複数のボルト62で着脱自在に螺着して構成している。
【0046】
前部ボデイ58には、第2塗工液を第2ノズルヘッド15に供給する供給口64を設けると共に、供給口64に導通したマニホールド66を幅方向に伸ばして設けている。前部ボデイ58と後部ボデイ60との界面に、マニホールド66に導通した流路68が設けられている。前部、後部の各ボデイ58、60の先端面(バッキングロールに対向する面)にはそれぞれ係合突起70,72が設けられ、係合突起70,72間に凹面74が形成されている。そして、この凹面74に噴出ヘッド部54が嵌合され、複数本のボルト76を係合突起70,72に螺合して締め付けることにより、ノズル本体部52と噴出ヘッド部54とを着脱可能に一体化している。
【0047】
噴出ヘッド部54は、前部ヘッド54aと後部ヘッド54bが合わされて構成され、ノズル本体部52の凹面74に嵌合する底部とバッキングロール12に向かって突出した先端部80が形成され、内部に液溜82が設けられている。先端部80の先端に噴出口84が設けられ、噴出口84から液溜82を経てノズル本体部52の流路68に導通する塗工液流路86が設けられている。
【0048】
噴出ヘッド部54の噴出口84より前方(走行上流側)の、前方リップ面88aと噴出口84を形成する壁は、後方リップ面88bと後方の壁よりバッキングロール12周面から離れた段付に形成され、第2塗工液を噴出口84の前方により多く保持するようにしている。また、噴出口84前方のバッキングロール12に対向する前方リップ面88aの傾斜は、バッキングロール12の接線とのなす角度で、噴出口84後方の後方リップ面88bがなす角度より大きくされている。その結果、低剪断力で第2塗工液を第1塗工液層の上に積層できる。
【0049】
第2ノズルヘッド15の支持部材56は、第1ノズルヘッド14の保持部材40と同様に構成され、サーボモータ、エアーシリンダ、油圧シリンダ等の位置調整用の駆動手段に連結されている。この駆動手段は、バッキングロール12の半径方向に配され、第2ノズルヘッド15をバッキングロール12に対して中心方向にそれぞれ2〜30μmの幅で調整する。また、支持部材56にはスケール保持部材が配され、このスケール保持部材は変位計測用スケールを内蔵し、支持部材56の変位を検出する。そして、第2ノズルヘッド15における塗工厚みの調節は、第1塗工層の上に塗工された第2塗工層の厚みが設定値になるように、第2ノズルヘッド15の噴出口84の前後の各リップ面88a、88bとバッキングロール12の周面との間隙の大きさ、第2塗工液の供給圧力等を調節することにより行う。第2塗工層としては、第1塗工液の厚みの5〜30%で、数μm〜数十μmの厚みに積層する。
【0050】
また、第2ノズルヘッド15における第2塗工液の供給は、第1ノズルヘッド14における場合と略同様に行なわれる。第2塗工液の供給口64に接続されて第2ポンプ100が設けられ、この第2ポンプ100は、マイコン48からの動作信号によって制御され、第2塗工液の供給圧力を調節している。塗工液の供給圧力は液溜82の内圧を圧力計102で測定して検出している。この圧力計102は測定した圧力を電気信号である圧力信号によってマイコン48へ出力する。また、2層目の塗工した後の塗工層厚を測定する厚み測定装置92を、ウエブFの第2ノズルヘッド15以降の走行路に設けている。この厚み測定装置92で測定した厚み信号をマイコン48に出力し、マイコン48で厚みの設定値と比較し、第1塗工層の厚みと同様に、第2ノズルヘッド15の先端部80とバッキングロール12の間隙、又は塗工液の供給圧力を調節して設定値になるように制御する。
【0051】
(多層塗布装置10の作動状態)
次に、多層塗布装置10の作動状態について説明する。
【0052】
多層塗工装置10のウエブFへの第1塗工液の厚みは、バッキングロール12とドクターエッジ18の間隙と、上液溜め室32の内圧によって決定される。第2塗工液の塗工厚みは、第2塗工液の供給量の調節と、リップ面とウエブF表面との間隙の大きさによって調節する。ウエブFをバッキングロール12とドクターエッジ18の間隙に走行させる。第1塗工液は、第1ポンプ46から下液溜め室26において第1ノズルヘッド14の幅方向に拡散して流出路28を経て出口28aから上液溜め室32の内部へ均一に噴出し、上液溜め室32内部を一定の圧力(以下、基準圧力という)に保持する。この基準圧力は、第1塗工液が上液溜め室を満たした状態で、かつ液溜め壁30とバッキングロール12との間隙からオーバーフローしないように設定しておく。
【0053】
そして、ウエブFは、第1塗工液が満たされた上液溜め室32を通過してドクターエッジ18まで走行し、ドクターエッジ18の刃先による線圧によって塗工液が塗工される。この場合に、塗工液が狭い流出路28を通過することにより塗工液の圧力が均一化され、また、上液溜め室32は流出路28の出口28aより前方に脹らまして流出路28の容積より大きく形成しているため、上液溜め室32内部を大気の圧力より高い基準圧力に保持し易く、そのため、ウエブFが液溜め壁30とバッキングロール12との間隙から上液溜め室32に搬送される際に上液溜め室32に空気が侵入することがなく、塗工層に気泡が生じることがない。
【0054】
しかも、第1ノズルヘッド14のドクターエッジ18はコンマ型であるため、この刃先に接近するほど上液溜め室32の容積が次第に小さくなっており、それにともなってウエブFにかかる圧力は次第に高くなり、また、圧力の調整により第1塗工液を上液溜め室32外にオーバーフローさせない構造としている。このため、ウエブFの移動に伴う塗工液の同伴流と流出路28の出口28aからの塗工液の噴射流は、同じ方向の旋回流となって不安定な流れとなることがない。よって、ドクターエッジ18に達する前のウエブF表面にある塗工液の量が幅方向で変化することがなく、ウエブFへの塗工量が幅方向でムラを発生することがない。
【0055】
第1ノズルヘッド14が、幅方向に撓んだ等により幅方向の塗工厚が設定厚からずれた場合には、保持部材40の駆動手段によって第1ノズルヘッド14の中央部、左右側部を上下方向に変位させて、塗工厚を補正する。マイコン48は、各種の測定値も入力するので、第1厚み測定装置90で測定した第1塗工層厚が設定値から外れた場合、マイコン48はこの主な要因が第1ポンプ46の回転数に基づくものかギャップの変化に基づくものなのか、一定時間前のそれぞれの測定値と比較し、それらが変化したものであればその変化したものを調節できる。
【0056】
続いて、ウエブFは、バッキングロール12に走行されて、第1ノズルヘッド14から間隔を置いて配された第2ノズルヘッド15で、第1の塗工液層の上に第2の塗工液が積層される。第2ノズルヘッド15の噴出ヘッド部54は、噴出口84を挟んで、前方に前方リップ面88aを形成し、後方に後方リップ面88bを形成している。供給口64に圧送された第2塗工液はマニホールド66で幅方向に均一に分散され、流路68から噴出部54の流路86を通って液溜82で圧力を均一にされて噴出口84から、前方リップ面88a、後方リップ面88bに供給され、ウエブFの第1塗工液層の上に塗工される。このとき、ウエブFに対向する面は、単に前方リップ面88a、後方リップ面88bが形成されているだけなので、低剪断力で第2塗工液を塗工できる。従って、塗膜の厚みのムラは小さくできる。
【0057】
第1塗工液の上液溜め室32での内圧が第1ポンプ46の回転ムラや塗工液の粘度の変化、液温度の変化等の外部の要因等で基準圧力より上昇すると、圧力計からの圧力信号ASによって内圧が上昇したことをマイコン48に伝達する。マイコン48は、動作信号DSによって第1ポンプ46の塗工液を圧送する圧力を下げる。圧送の圧力が下がると、上液溜め室32の内圧が下がって元の圧力になる。逆に、上液溜め室32の内圧が基準圧力より下がると、マイコン48は第1ポンプ46の塗工液を圧送する圧力を上げて上液溜め室32の内圧を上昇させる。
【0058】
そして、ドクターエッジ18の刃先は、調整ボルト38によって、上下にそれぞれ2〜3μm変化させて刃先のうねりを微調整することにより、直線に近付ける。このうねりの大きさや調整の変化量は、塗工したウエブFの塗工厚さを厚み測定装置90で測定して、塗工液が幅方向に均一に塗工されたかどうかを確認する。幅方向の厚みにムラある場合には、第1ドクターエッジ14のドクターエッジ18の刃先の直線を調節する。第2ドクターエッジでの厚みムラの調節は、リップ面88bとウエブFとの間隙を均一にすればよい。
【0059】
第1ヘッド本体16より蓋体22を取外すと、第1ヘッド本体16はフラットな面に形成されているため、前面18aに付着した塗工液やゴミ等の掃除がし易い。また、第1ヘッド本体16に取付ける蓋体22の幅を変化させると、流出路28の出口の出口28aの幅が変化してウエブFの塗工幅を変化させることができる。さらに隔壁34を幅方向に摺動させることにより出口28aの幅を変えてウエブF塗工幅を変化させることができる。
【0060】
第2ノズルヘッド15とバッキングロール12との間隙が幅方向で偏位し、塗工厚みにムラが生じた場合には、取付ボルト76の締め付けを調整してそのボルト近辺の間隙を調整する。第2塗工液層の厚みの調節は、先ず、支持部材56を駆動手段により進退させて第2ノズルヘッド15の位置を変えることにより、バッキングロール12と噴出ヘッドのリップ面との間隙を調節する。又は、ギャップモータを設け、このギャップモータを駆動して噴出ヘッドのリップ面との間隙を調節する。
【0061】
(変更例)
なお、本発明は、上述した実施態様に限定されるものでなく、本発明の主旨を変更しない範囲内で変形実施できるものを含む。
【0062】
因みに、上述においては、第1ノズルヘッド及び第2ノズルヘッドはそれぞれ1層を塗工する例で示したが、一方又は両方を複数の塗工液を塗工する構造としてもよい。このように、複数のノズルヘッドを用いると、それだけ層の調整が容易になり、層厚の均一化ができる。また、図では第1ノズルヘッドと第2ノズルヘッドの配置をバッキングロールの下方から中心線を通る線で略90°離して配置した態様で示したが、この位置に限らないことは勿論である。
【0063】
また、第1塗工層の厚みの制御をバッキングロール12とドクターエッジ18の間隙をギャップセンサで測定すると共に、幅方向の塗工厚みを計算して設定値になるようにギャップモータを制御して行なう例で示したが、第1ノズルヘッド14の位置を、保持部材40の駆動手段の駆動により調節してもよい。この場合、第1ノズルヘッド14の位置を位置計測用スケールで測定して、設定塗工厚を維持するように位置を調節する。
【0064】
【発明の効果】
本発明の請求項1の多層塗工装置は、第1ノズルヘッドと第2ノズルヘッドとを間隔を置いて配置したので、各ノズルヘッド毎の調節ができて層の厚み調整が容易でムラを防いで精度を良くでき、高速で塗工できる。また、ウエブの第1ノズルヘッドでの塗工量は、塗工液が満たされた上液溜め室を通過してドクターエッジの刃先による線圧によって決まる。この場合に、上液溜め室は流出路の出口より前方に脹らまして流出路の容積より大きく形成しているため、その内部を大気の圧力より高い基準圧力に保持し易く、上液溜め室内部に空気が侵入することがなくなり、気泡が生じることを防げる。第2ノズルヘッドでの塗工量は、リップ面とウエブとの間隙によって決まるので、リップ面とウエブとの間隙、即ち剪断圧力を調節して塗工厚みを調節できる。
【0065】
また、第1ノズルヘッドで精度良く塗工し、その上に第2ノズルヘッドで塗工するから、第2ノズルヘッドで低剪断力で塗布しても、ムラを防いで精度を良く塗膜を形成でき、装置を安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多層塗工装置を示す側面図である。
【図2】第1,2ノズルヘッドの圧力制御を行なうブロック図である。
【図3】第2ノズルヘッドの正面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】噴出ヘッドの拡大図である。
【符号の説明】
10・・・多層塗工装置
12・・・バッキングロール
14・・・第1ノズルヘッド
15・・・第2ノズルヘッド
16・・・第1ヘッド本体
18・・・ドクターエッジ
Claims (1)
- バッキングロールの下方に、第1ノズルヘッドを配し、前記第1ノズルヘッドの出口から第1の塗工液を圧力をかけて噴出してバッキングロールに支持されて走行されるウエブに塗工し、前記第1ノズルヘッドから間隔を置いてバッキングロールに対向して、第2ノズルヘッドを配し、前記第2ノズルヘッドの噴出口から第2の塗工液を圧力をかけて噴出して前記ウエブの前記第1の塗工液の上に塗工する多層塗工装置であって、
前記第1ノズルヘッドは、
ヘッド本体とドクターエッジと蓋体とから構成し、内部の幅方向に下液溜め室を設け、
前記下液溜め室からドクターエッジの前方の前記出口に続く流出路を設け、
前記流出路の出口の周囲の前記ドクターエッジからその前方にかけて、前記バッキングロールに対向する面に間隙を残して、液溜め壁を立設し、
前記バッキングロールの下周面、前記液溜め壁及び前記ドクターエッジ前面とにより形成された部分を上液溜め室として前記流出路の出口より前方に脹らまして前記流出路の容積より大きく形成し、
前記第2ノズルヘッドは、
第2ヘッド本体部と噴出ヘッド部とから構成し、
前記第2ヘッド本体部に塗工液入口を設け、前記噴出ヘッド部に第2塗工液をウエブ面に供給する噴出口を設け、
前記噴出ヘッド部はバッキングロールに近設すると共に対向する面にリップ面を形成し、
前記噴出ヘッド部のリップ面は前方の上流側リップ面を、後方の下流側リップ面より前記バッキングロールに対して段付に後退させると共に、前記上流側リップ面を傾斜させて、前記上流側リップ面と前記バッキングロールの接線とのなす角度を、前記下流側リップ面と前記バッキングロールの接線がなす角度より大きくし、
前記第2ノズルヘッドにおける下流側リップ面とウエブの間隙によって決まる剪断圧力を、前記第1ノズルヘッドにおける前記ドクターエッジの刃先による線圧よりも低くして第2塗工液を塗工する、
ことを特徴とする多層塗工装置。
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