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JP4184088B2 - フルオロポリマーを製造するための改善された水系乳化重合法 - Google Patents

フルオロポリマーを製造するための改善された水系乳化重合法 Download PDF

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JP4184088B2 JP2002576504A JP2002576504A JP4184088B2 JP 4184088 B2 JP4184088 B2 JP 4184088B2 JP 2002576504 A JP2002576504 A JP 2002576504A JP 2002576504 A JP2002576504 A JP 2002576504A JP 4184088 B2 JP4184088 B2 JP 4184088B2
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Description

本発明は、フルオロポリマー、即ち、一部又は完全にフッ素化された骨格を有するポリマーを作製するためのフッ素化モノマーの水系乳化重合に関する。特に、本発明は、水と混和性のない有機液体との混合物として用いられる、フッ素化界面活性剤の少なくとも一部を添加することによる、水系乳化重合法の改善に関する。
通常知られている、又は商業的に用いられるフルオロポリマーには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー(FEPポリマー)、パーフルオロアルコキシコポリマー(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)コポリマー、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびフッ化ビニリデンのターポリマー(THV)、並びにポリフッ化ビニリデンポリマー(PVDF)などが挙げられる。商業的に用いられるフルオロポリマーには、フルオロエラストマー、および熱可塑性フルオロポリマーなども挙げられる。フルオロポリマーおよびその用途は、(非特許文献1)に更に記載されている。このようなフルオロポリマーの作製は、一般に、気体モノマー、即ち、環境条件の温度および圧力下で気体として存在するモノマーの重合を必要とする。フルオロポリマーを製造する幾つかの方法が知られている。このような方法には、US3,855,191(特許文献1)、US4,439,385(特許文献2)およびEP649863(特許文献3)に開示されている懸濁重合、US3,635,926(特許文献4)およびUS4,262,101(特許文献5)に開示されている水系乳化重合、US3,642,742(特許文献6)、US4,588,796(特許文献7)およびUS5,663,255(特許文献8)に開示されている溶液重合、JP46011031(特許文献9)およびEP964009(特許文献10)に開示されている超臨界CO2を使用する重合、およびUS4,861,845(特許文献11)に開示されている気相における重合などが挙げられる。
現在、最も一般的に用いられる重合方法には、懸濁重合(特に水系乳化重合)が挙げられる。水系乳化重合は、フッ素化界面活性剤の存在下における重合を必要とし、これは、一般に、形成されるポリマー粒子の安定化を確実にするために使用される。従って、乳化重合法は、一般に界面活性剤を使用せず、その結果、概して、水系乳化重合の場合より、実質的により大きいポリマー粒子を生じる懸濁重合とは異なる。
水系乳濁重合では、重合速度、ポリマーの収量、組み込まれるコモノマー、粒度、および数は、互いに依存するだけでなく、乳化剤含量にも依存する。ポリマー収量、重合時間および粒度を最適化するため、圧力、温度、並びにフッ素化界面活性剤の量を調節することができる。例えば、EP612770(特許文献12)には、重合速度を増大させるための、多量のフッ素化界面活性剤の使用が開示されている。しかし、フッ素化界面活性剤の量の増加は、コストを増大させるという欠点があり、更に環境的に望ましくない。
US4,864,006(特許文献13)には、パーフルオロポリエーテルの水性マイクロエマルジョンが重合反応に添加される、水系乳化重合法について記載されている。このUS特許に記載のマイクロエマルジョンは、「分散エネルギー」を付与しなくても、長期間安定な単一相溶液として特徴付けられる。従って、特別な乳化装置を使用して「分散エネルギー」を加える必要もなく、成分を混合するだけで、この特許に記載のマイクロエマルジョンが形成すると思われる。従って、これは、使用できる界面活性剤の種類を制限し、更に、重合法を複雑化する可能性がある。例えば、この特許に例示されるように、パーフルオロポリエーテルのマイクロエマルジョンは、界面活性剤としてカルボン酸基を有するパーフルオロポリエーテルを使用して形成される。このような界面活性剤は高価である。更に、US4,864,006(特許文献13)に例示されているように、マイクロエマルジョンは高温で形成するが、これは、このような加熱を必要とせず、界面活性剤を室温で重合容器に簡単に添加できるプロセスと比較して、プロセスを更に複雑化させる。
EP969027(特許文献14)には、PTFE分散体を作製するUS4,864,006(特許文献13)に類似するプロセスが開示されている。また、この特許出願には、パーフルオロポリエーテル界面活性剤を用いた乳化により得られるパーフルオロポリエーテルのマイクロエマルジョンを使用して、PTFE分散体が調製される。このプロセスでは小さいポリマー粒子が達成されるが、多量の界面活性剤が使用されると思われ、それは、プロセスをよりコスト高にし、プロセスに環境負荷を加えるという点で、不都合である。
US5,895,799(特許文献15)には、水中でPTFEの非常に小さい粒子の分散体を生成する、TFEのマイクロエマルジョン重合が開示されている。このように、TFEの重合は、液体の過フッ素化(パーフルオロ化(perfluorinated))炭化水素のマイクロエマルジョン中で進行する(US5,895,799(特許文献15))。このマイクロエマルジョンは、室温で、且つマイクロエマルジョンを生じる割合で、過フッ素化炭化水素液体およびフッ素化界面活性剤を水に添加することにより形成される。周知のように、マイクロエマルジョンは、界面活性剤がその臨界ミセル濃度(CMC)を超えて使用される場合のみ形成する(非特許文献2)。その結果、このUS特許に記載のこのプロセスは、一般に、多量の界面活性剤、典型的には、界面活性剤を、その界面活性剤のCMC未満の量で使用するため、重合プロセス中にマイクロエマルジョンの使用を必要としない慣用的な水系乳化重合法で用いられる量よりも、ずっと多量の界面活性剤を必要とする。マイクロエマルジョン重合の使用には、既に前述した欠点があり、更にその結果、処理中に泡を形成する可能性がある。
フッ素化界面活性剤が掛ける可能性のある環境負荷のため、一般に、実質的にフッ素化界面活性剤を有していないポリマー分散体を製造することが望ましい。更に、ポリマー生成物中のこのようなフッ素化界面活性剤の存在は、フルオロポリマーの幾つかの用途において望ましくない可能性がある。更に、フッ素化界面活性剤は、一般に高価であり、そのため、重合に必要な量を最小限にする、および/又はフッ素化界面活性剤を回収し、再利用することが望ましい。水系乳化重合で使用されるフッ素化界面活性剤を回収し、再利用する幾つかの方法が知られている。このような方法は、例えば、EP524585、EP566974、EP632009、EP731081、WO99/62858、WO99/62830、DE19932771(特許文献16)〜(特許文献22)に開示されている。これらの回収プロセスは、重合に用いられるフッ素化界面活性剤の量が最小限になれば、より効率的でより低コストになることが当業者には分かるであろう。例えば、重合に使用されるフッ素化界面活性剤がより少なければ、これらの再利用および回収プロセスで生じる排水の量は、概して少なくなる。
現在、フルオロポリマーを製造してフッ素化モノマーの水系乳化重合を改善することにより、少量の、例えば、水系乳化重合の水相の重量を基準にして1重量%以下のフッ素化界面活性剤を用いることができることが望ましい。このプロセスは、生成されるフルオロポリマー分散体から容易に且つ効果的に回収および/又は除去され得る、通常用いられるフッ素化界面活性剤を用いて実施され得ることが更に望ましい。重合時間を短縮し、得られるポリマー固体の収量を改善し、および/又は粒度の小さいフルオロポリマー分散体を得ることが特に望ましい。
米国特許第3,855,191号明細書 米国特許第4,439,385号明細書 欧州特許第649863号明細書 米国特許第3,635,926号明細書 米国特許第4,262,101号明細書 米国特許第3,642,742号明細書 米国特許第4,588,796号明細書 米国特許第5,663,255号明細書 日本国特許第46011031号明細書 欧州特許第964009号明細書 米国特許第4,861,845号明細書 欧州特許第612770号明細書 米国特許第4,864,006号明細書 欧州特許第969027号明細書 米国特許第5,895,799号明細書 欧州特許第524585号明細書 欧州特許第566974号明細書 欧州特許第632009号明細書 欧州特許第731081号明細書 国際公開第99/62858号パンフレット 国際公開第99/62830号パンフレット 独国特許第19932771号明細書 ジョン・シャイアーズ(John Scheirs)編集「Modern Fluoropolymers(現代のフルオロポリマー)」、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons Ltd.)出版、1997年 P.ラヴェル(P.Lovell)著「Emulsion Polymerization and Emulsion Polymers(乳化重合および乳化重合体)」J.ウィリー(J.Wiley)出版、1997年、p.700−739
本発明に従い、フッ素化界面活性剤の存在下での水相における1種類以上のフッ素化モノマーの乳化重合により、フルオロポリマーを作製する方法が提供される。フッ素化界面活性剤の少なくとも一部を、水と混和性がなく、且つハロゲン化および非ハロゲン化有機液体から選択される少なくとも1種類の有機液体との水性混合物として水相に添加し、水性混合物は、平均液滴径が、1000nm以下、典型的には3nm〜1000nm、好ましくは10nm〜500nm、更に好ましくは20nm〜200nmの液滴を有し、混合物は、フッ素化界面活性剤の総量が、水相の重量を基準にして1重量%以下、典型的には0.01重量%〜1重量%、好ましくは0.05重量%〜0.4重量%であり、前記有機液体の総量が、前記水相の重量を基準にして1重量%以下となるような量で水相に添加される。
本発明のプロセスは、パーフルオロオクタン酸およびその塩、およびパーフルオロオクタンスルホン酸およびその塩などの通常用いられるフッ素化界面活性剤をフッ素化界面活性剤として使用できるという利点がある。更に、このプロセスは少量の界面活性剤で実施することができ、多量のポリマー固体および小さいポリマー粒度を得ることができ、凝塊が減少した高い分散安定性を示す。典型的には、達成され得るポリマー粒度(動的光散乱で測定される場合の平均サイズ)は、50nm〜250nm(例えば70nm〜100nm)である。更に、重合時間を短縮することができ、TFEと他のモノマーとの共重合は、コモノマーがより効果的に組み込まれ得るように改善される。最終的に、本発明のプロセスでは、使用できる有機液体、およびフッ素化界面活性剤の選択における融通性が改善され、重合プロセスを更に複雑化させない。
別の態様では、本発明は、次式を有するフッ素化界面活性剤の存在下での水相における1種類以上のフッ素化モノマーの乳化重合により、フルオロポリマーを作製する方法に関する:
Y−Rf−Z−M (I)
(式中、Yは、水素、Cl又はFを表し、Rfは、炭素数4〜10の直鎖又は分枝過フッ素化アルキレンを表し、Zは、COO-又はSO3 -を表し、Mは、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンなどの一価のカチオンを表す)。
本発明のこの特定の態様による方法では、フッ素化界面活性剤の少なくとも一部を、水と混和性がなく、且つハロゲン化および非ハロゲン化有機液体から選択される少なくとも1種類の有機液体との水性混合物として水相に添加し、水性混合物は、平均液滴径が、1000nm以下、典型的には3nm〜1000nm、好ましくは10nm〜500nm、更に好ましくは20nm〜200nmの液滴を有し、混合物は、フッ素化界面活性剤の総量が、水相の重量を基準にして1重量%以下、典型的には0.01重量%〜1重量%、好ましくは0.05重量%〜0.4重量%であり、前記有機液体の総量が、水相の重量を基準にして1重量%以下となるような量で水相に添加される。
更に別の態様では、本発明は、フッ素化界面活性剤と、水と混和性のない有機液体とから成る水性混合物に関し、前記混合物は、平均直径が20nm〜200nmの液滴を含み、前記有機液体は、状況に応じて最大2つまでの酸素、硫黄、および/又は窒素原子を含有する、過フッ素化又は一部フッ素化された脂肪族又は芳香族の有機液体から選択され、前記フッ素化界面活性剤は次の一般式:
Y−Rf−Z−M
(式中、Yは、水素、Cl又はFを表し、Rfは、炭素数4〜10の直鎖又は分枝過フッ素化アルキレンを表し、Zは、COO-又はSO3 -を表し、Mは、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンなどの一価のカチオンを表す)
に対応する。
本発明に関して、「液体」又は「流体」の用語は、20℃の温度および1atmの気圧で液体の化合物、並びに重合条件下で液体である化合物を包含する。
「水と混和性がない」という表現は、有機液体が用いられる量で水と混合される場合、有機液体は、界面活性剤がなければ分離相を形成することを意味する。
本発明の方法の利点は、フッ素化界面活性剤の少なくとも一部を、水と混和性がない有機液体との水性混合物として水相に添加することにより好都合に達成されるが、その混合物の平均液滴径は1000nm以下である。一般に、有機液体は、状況に応じて最大2つまでの酸素、硫黄、および/又は窒素原子を含有する、ハロゲン化(例えば、フッ素化および/又は塩素化)および非ハロゲン化脂肪族および芳香族の有機液体からから選択される。有機液体は、典型的には、少なくとも50℃、好ましくは少なくとも100℃、更に好ましくは少なくとも150℃(例えば150℃〜230℃)の沸点を有する。本発明により達成される改善、例えば重合速度は、有機液体がより高い沸点を有する場合、最も著しいことが分かった。
特定の実施形態では、生成されるフルオロポリマー構造体に有機液体が組み込まれるように、有機液体はフリーラジカル重合反応に関与することができる。これは、生成される最終ポリマー分散体中に残存する有機液体は、存在するとしてもわずかであるという利点がある。重合に関与できる有機液体の例には、特に、ハロゲン化、又は非ハロゲン化オレフィン有機液体などの液体モノマー、特に液体フッ素化モノマーが挙げられる。使用できる液体フッ素化モノマーの例には、液体パーフルオロビニルエーテル、例えば、パーフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル、パーフルオロ−3−メトキシ−n−プロピルビニルエーテル、および
CF3−(CF22−O−CF(CF3)−CF2−O−CF(CF3)−CF2−O−CF=CF2(PPVE−3)
などが挙げられる。
好適な有機液体には、非ハロゲン化脂肪族および芳香族炭化水素、例えば、飽和および不飽和の環状、直鎖又は分枝脂肪族化合物、塩素化および/又はフッ素化飽和および不飽和の環状、直鎖又は分枝脂肪族化合物を含むハロゲン化飽和および不飽和の環状、直鎖、又は分枝脂肪族化合物、並びに塩素化又はフッ素化芳香族化合物などのハロゲン化芳香族化合物などが挙げられる。特に好ましい有機液体は、状況に応じて最大2つまでの酸素、硫黄、および/又は窒素原子を含有するフッ素化脂肪族又は芳香族化合物である。有機液体は、過フッ素化されていても、又は一部フッ素化されていてもよく、例えば、フッ素化又は過フッ素化炭化水素であってもよい。「過フッ素化された」は、脂肪族又は芳香族化合物中の炭素に結合している全ての水素原子がフッ素原子で置換されていることを意味する。
好適な過フッ素化炭化水素には、過フッ素化アルカンなどの過フッ素化飽和脂肪族化合物(過フッ素化ベンゼン又は過フッ素化テトラデカヒドロフェナントレンなどの過フッ素化芳香族化合物など)が挙げられる。これは、過フッ素化トリアルキルアミンなどの過フッ素化アルキルアミンとすることもできる。更に、これはデカリンなどの過フッ素化環状脂肪族、好ましくは環中に酸素又は硫黄を含有する複素環脂肪族化合物、例えば、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフランとすることができる。
過フッ素化炭化水素の具体例には、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロデカリン、パーフルオロメチルデカリン、パーフルオロメチルデカリン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ(1,3−ジメチルシクロヘキサン)、パーフルオロジメチルデカヒドロナフタレン、パーフルオロフルオレン、パーフルオロ(テトラデカヒドロフェナントレン)、パーフルオロテトラコサン、パーフルオロケロセン、オクタフルオロナフタレン、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)のオリゴマー、パーフルオロ(トリプロピルアミン)、パーフルオロ(トリブチルアミン)、又はパーフルオロ(トリペンチルアミン)などのパーフルオロ(トリアルキルアミン)、およびオクタフルオロトルエン、ヘキサフルオロベンゼン、およびフルオリナート(Fluorinert)FC−75、FC−72、FC−84、FC−77、FC−40、FC−43、FC−70又はFC5312など(全て3Mにより製造されている)の市販のフッ素化溶媒が挙げられる。フッ素化アルカンは、炭素数3〜20の直鎖又は分枝状とすることができる。酸素、窒素、又は硫黄原子が分子中に存在することができるが、1分子当りのこのような原子の数は、2以下とすべきである。
乳化重合の水相中の有機液体の量は、水相を基準にして1重量%以下とすべきである。一般に、有機液体の量は、0.5重量%以下、好ましくは0.2重量%以下、更に好ましくは0.1重量%未満である。0.01重量%以下の量でも水系乳化重合において価値のある効果を生み出すことが分かった。
水系乳化重合法で使用されるフッ素化界面活性剤は、フッ素化モノマーの水系乳化重合に使用する既知の任意のフッ素化界面活性剤とすることができる。特に好ましいフッ素化界面活性剤には、次式のものが含まれる:
Y−Rf−Z−M (I)
(式中、Yは、水素、Cl又はFを表し、Rfは、炭素数4〜10の直鎖又は分枝過フッ素化アルキレンを表し、Zは、COO-又はSO3 -を表し、Mは、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンなどの一価のカチオンを表す)。本発明に使用する最も好ましいフッ素化界面活性剤は、パーフルオロオクタン酸およびパーフルオロオクタンスルホン酸のアンモニウム塩である。フッ素化界面活性剤の混合物を使用することができる。
本発明の方法によれば、水系重合法に使用されるフッ素化界面活性剤の少なくとも一部は、有機液体との水性混合物の形態で、水相に添加される。混合物は、フッ素化界面活性剤の水溶液と有機液体とを混合することにより調製されてもよい。典型的には、フッ素化界面活性剤を0.01重量%〜90重量%、好ましくは0.1重量%〜40重量%含有する水溶液が、フッ素化界面活性剤の固体重量を基準にして、0.1重量%〜300重量%、好ましくは1重量%〜100重量%の有機液体又は有機液体の混合物と混合される。有機液体は、フッ素化界面活性剤の水溶液と混合され、その中で乳化され、平均液滴径が1000nm以下、好ましくは10〜500nm、更に好ましくは20〜200nmである液滴が得られる。このようなエマルジョンは、例えば、マイクロフルーイディクス(Microfluidics)社製のものなどの任意の好適な乳化装置によって得ることができる。
酸、塩、又はエステルの形態の固体の、液体の、又は成型されたフッ素化界面活性剤の有機液体による所定の汚染によって、例えば、界面活性剤の再結晶で、フッ素化界面活性剤と有機液体との混合物が更に得られてもよい。また更に、フッ素化界面活性剤と有機液体との混合物は、フッ素化界面活性剤の調製時に調製されてもよい。例えば、式(I)のフッ素化界面活性剤の対応する酸は、有機液体、特に、状況に応じて最大2つまでの酸素、硫黄、および/又は窒素原子を含有する過フッ素化又は一部フッ素化された脂肪族又は芳香族有機液体の存在下で蒸留され、続いて、例えば、アンモニウム塩が望ましい場合は、アンモニアを添加することにより、その酸をその塩の形態に転換してもよい。例えば、有機液体は、フッ素化界面活性剤の対応する酸に添加されてもよく、次いで、酸と有機液体との混合物を含有する蒸留物が得られるように、混合物を蒸留してもよい。
次いで、汚染されたフッ素化界面活性剤を水中で乳化し、それにより1000nm以下の、好ましくは10nm〜500nm、最も好ましくは20nm〜200nmの所望の数平均液滴径を達成することにより、フッ素化界面活性剤と有機液体との水性混合物を得ることができる。
フッ素化界面活性剤と有機液体との水性混合物は、一般に、20〜40重量%(混合物の総重量を基準にして)、および有機液体を0.1重量%〜70重量%含有する。好ましくは、フッ素化界面活性剤と有機液体との重量比は、1:2〜50:1である。
このようにして調製されたフッ素化界面活性剤と有機液体との濃縮混合物を、水系乳化重合の水相に添加し、それによって、フッ素化界面活性剤の濃度は低下し、水相の重量を基準にして、1重量%以下、典型的には0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.4重量%の水相中のフッ素化界面活性剤濃度を達成する。水系乳化重合に使用されるフッ素化界面活性剤の一部又は全てを有機液体との混合物として添加してもよい。一般に、使用されるフッ素化界面活性剤の総量の少なくとも5重量%、好ましくは10重量%が有機液体との混合物の形態で添加される。フッ素化界面活性剤の一部だけが有機液体との混合物の形態で添加される場合、フッ素化界面活性剤の残部は、水相に別々に、例えば、フッ素化界面活性剤と有機液体との混合物の添加前に添加されてもよい。しかし、水系乳化重合の間、水相中のフッ素化界面活性剤の総量は、水相の重量を基準にして1重量%を超えないようにすべきである。
前述のように液滴サイズは1000nm以下とすべきであるということ以外、有機液体とフッ素化界面活性剤との混合物の種類又は性質は、特に重要でない。従って、本発明のプロセスは、より融通性があり、使用がより簡便である。例えば、US4,864,006(特許文献13)に開示されているように本発明の方法は、有機液体としてパーフルオロポリエーテルを使用することができ、「分散エネルギー」を付与しなくても形成する単一相溶液の形態で添加されることを必要としない。従って、本発明の方法は、パーフルオロポリエーテル有機液体と共に使用される、任意の種類のフッ素化界面活性剤の使用を可能にし、更に、その必要とする量は、従来技術で一般に必要とされる量よりずっと少ない。従って、US4,864,006(特許文献13)に記述されているようにパーフルオロポリエーテルを、例えば、前記の式(I)のものなどの任意の慣用的な乳化剤を含む任意のフッ素化乳化剤と共に、0.01重量%又はそれ未満の量でも使用することができると共に、まだ本発明のプロセスの利点を生むことが分かった。
フッ素化界面活性剤と有機液体との混合物を、重合プロセスの初期段階の様々な時点で添加することができる。当業者は、フッ素化界面活性剤と有機液体との混合物の添加に適切な時点を容易に決定することができる。例えば、フッ素化界面活性剤と有機液体との混合物を、反応容器から空気を排出する前に、又は反応容器から空気を排出した後に添加することができる。混合物は、気体のフッ素化モノマーで反応容器内の気圧を増大させた後、添加されてもよい。界面活性剤と有機液体との混合物は、例えば、重合の開始前に、即ち、一般に開始剤が重合に添加される前に、添加されてもよい。或いはまた、反応容器に開始剤を添加するのと同時に、又はその直後に(例えば、約2分まで)、混合物を添加することができる。好ましくは、フッ素化界面活性剤と有機液体との混合物は、短時間で、例えば5〜10分で反応容器に添加される。水系乳化重合の改善、特に重合時間は、混合物が反応容器に添加される時間を短く維持する場合、最も著しいことが分かった。
フッ素化界面活性剤の少なくとも一部を有機液体との混合物として水相に添加することを除いて、水系乳化重合法は、一般に通常既知の方法で実施される。好ましい重合温度は、10〜100℃、好ましくは30〜80℃、圧力は4〜30バール、特に8〜20バールである。
水系乳化重合法を使用して、既知の任意のフルオロポリマー、即ち、一部又は完全にフッ素化された骨格を有するポリマーを製造することができる。特に、水系乳化重合法を使用して、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンおよびクロロトリフルオロエチレンなどの気体のフッ素化モノマーのホモポリマーおよびコポリマーを製造することができる。好適なコモノマーには、ヘキサフルオロプロペン、パーフルオロメチルビニルエーテルおよびパーフルオロ−n−プロピルビニルエーテルなどのパーフルオロアルキルビニルエーテル、並びに、一般式:
CF2=CFO(RfO)n (R’fO)mR”f
(式中、RfおよびR’fは、炭素数2〜6の異なる直鎖又は分枝パーフルオロアルキレン基であり、mおよびnは、独立に0〜10であり、nとmの合計は少なくとも1であり、R″fは、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基である)に対応するものなどのパーフルオロアルコキシビニルエーテルを含むパーフルオロビニルエーテルなどのフッ素化モノマーが挙げられる。コモノマーとして使用できる非フッ素化モノマーには、例えば、エチレンおよびプロピレンなどが挙げられる。本発明のプロセスを使用して、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロエラストマー、並びにフルオロサーモプラスト(flouorothermoplast)を製造することができる。
重合は、一般に、フリーラジカル発生開始剤の使用により開始される。開始剤として、TFEの重合に通常用いられる既知の開始剤のうち任意のものを使用することができる。例えば、過酸化物をフリーラジカル開始剤として使用することができる。過酸化物開始剤の具体例には、過酸化水素、過酸化ナトリウム又はバリウム、ジアセチルペルオキシド、ジプロピオニルペルオキシド、ジブチリルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルアセチルペルオキシド、ジグルタル酸ペルオキシド、およびジラウリルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド、並びに、更に、水溶性過酸およびその水溶性塩(例えばアンモニウム、ナトリウム、又はカリウム塩など)が挙げられる。過酸の例には、過酢酸が挙げられる。過酸のエステルも同様に使用することができ、その例には、t−ブチルパーオキシアセテートおよびt−ブチルパーオキシピバレート(tert.−butylperoxypivalate)などが挙げられる。使用できる他の種類の開始剤は、水溶性アゾ化合物である。開始剤として使用するのに好適なレドックス系には、例えば、ペルオキソ二硫酸塩と亜硫酸水素塩又は二亜硫酸水素塩との組合せ、チオ硫酸塩とペルオキソ二硫酸塩との組合せ、ペルオキソ二硫酸塩とヒドラジン又はアゾジカルボキシアミド(その塩、好ましくはアルカリ又はアンモニウム塩を含む)との組合せなどが挙げられる。更に、使用できる開始剤は、過マンガン酸若しくはマンガン酸のアンモニウム、アルカリ又はアルカリ土類塩、又はマンガン酸である。用いられる開始剤の量は、重合混合物の総重量を基準にして、典型的には0.03〜2重量%、好ましくは0.05〜1重量%である。開始剤の全量を重合の開始時に添加してもよく、又は開始剤は、70〜80%の転換が達成されるまで、重合中に、連続的な方法で重合に添加されてもよい。開始剤の一部を開始時に、その残部を重合中に1回で、又は追加して複数回に分けて、添加することができる。例えば、鉄、銅、および銀の水溶性の塩などの促進剤が、添加されることが好ましい可能性があり、特にレドックス系が開始剤として使用される場合に、添加されることが好ましい可能性がある。
水系乳化重合系は、緩衝剤、および必要に応じて錯形成剤又は鎖移動剤などの他の物質を更に含んでもよい。
大きな凝塊が全くない、ポリマー分散体の達成可能な固体含量は、典型的には、5〜40%である。得られる分散体は非常に安定であり、一般に、数平均粒径は250nm以下であり、典型的には50〜250nmの平均粒度が達成され得る。
以下の実施例は、本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。別途明記されない限り、部分およびパーセンテージは全て、重量部および重量パーセンテージである。
略語:
HFP:ヘキサフルオロプロピレン
TFE:テトラフルオロエチレン
ETFE:エチレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー
VDF:フッ化ビニリデン
FEP:TFEとHFPとのコポリマー
THV:TFE、HFPおよびVDFのコポリマー
PFA:TFEとパーフルオロビニルエーテルとのコポリマー
PPVE−1:パーフルオロ−n−プロピルビニルエーテル
PPVE−2:パーフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル
MFI:メルトフローインデックス
試験方法
MFIは、荷重を負荷されたピストンの作用により供給シリンダからダイを通して押出される溶融物の量を、10分間当りのグラム数で記載する。ダイの寸法、ピストン、供給シリンダ、および重量は、標準化される(DIN53735、ASTM D1238)。ここに記載されるMFIは全て、長さ8mmの2.1mmのダイを使用して決定され、加えられる荷重は5kgであり、温度は372℃であった。
得られるポリマー分散体中の固体は、熱天秤(thermal balance)(サートリアス(Sartorius)MA40)を使用して、乾燥残留物分析により決定され、ポリマー分散体を基準にした重量パーセントで記載される。
メジアン液滴径および粒径(dz)は、マルバーン(Malvern)社製の装置(オートサイザー(Autosizer)2C)を使用し、ISO13321に従い光子補正分光測定法により決定される。この測定装置は、633nmの波長のHe−Neレーザーを用いて3〜3000nmの範囲で作動する。測定温度は、20±0.2℃である。
過フッ素化コモノマー(US−A4 029 868、US−A4 552 925)の含量は、ニコレット・マグナ(Nicolet Magna)560 FTIRを使用してIR分光測定法により決定される。
融点は、パーキン・エルマー(Perkin Elmer)社製の装置(パイリス(Pyris)1)を使用し、ISO3146に従い毎分10℃の加熱速度で決定される。データは、常に、二番目の加熱手順を参照する。
乳化剤と有機液体との混合物は、2つの段階で調製される。3M社製の使用されるパーフルオロトリアルキルアミンFC43、およびPPVE−2などの有機液体は、水性乳化剤溶液(FC1015)中で、1分間、トゥラックス(Turrax)撹拌機(IKAレーバーテクニック(Labortechnik)社製、モデルT25、24000rpm)を使用して所望の濃度で予め分散される。ここで達成されるメジアン液滴サイズは、900〜1300nmである。次いで、得られる混合物は、15回、マイクロフルーイディクス(Microfluidics)社製の装置(M−110Y)に通され、混合物は幅75μmのカニューレを通して1000バールで圧縮される。得られる混合物は、メジアン液滴径が65〜120nmであり、重合に使用される。圧力を上げることにより、および通過の数により、メジアン液滴径を更に小さくすることができる。
比較例1
29lの脱塩水をインペラー撹拌機を備える全容量47lの重合反応器に入れる。反応器を密封した後、排気および窒素通気を交互に行って大気中の酸素を除去し、容器を70℃に加熱する。排気段階後、30%の濃度の溶液の形態のパーフルオロオクタン酸アンモニウム(3M製のFC1015)を240g、5分以内に容器に計量して入れる。次いで、TFEおよびHFPを7:10の比で、全圧が17.0バールに達するまで、撹拌しながら導入する。圧力下におけるこの相の導入には、1.5時間掛かる。重合は、脱塩水100ml中に溶解させたペルオキソ二硫酸アンモニウム(以下、APS)24gをポンプで入れることにより開始される。圧力が低下し始めるとすぐ、TFEとHFPは更に、HFP/TFEの供給比0.11で気体相を介して添加され、そのため17.0バールの全圧が維持される。放出される熱は、容器の壁を冷却することにより放散され、このように、温度は70℃で一定に保持される。289分後、モノマーの導入が停止され、反応器中の圧力は低下し、反応器をN2で数回通気する。得られるポリマー分散体は、固体を合計15.9%有し、粒度は173nmである。得られるコポリマーは、HFP含量が11.3%、融点が263℃、MFIが6.9である。
比較例2
重合は比較例1のように実施されるが、ここでは、使用されるFC1015は、FC43(3M社製)を3重量%使用して改質され、トゥラックス(Turrax)中に導入され、乳化される。この混合物中のメジアン液滴サイズは、1200nmである。FEP重合における改善はなかった。運転時間は300分であり、固体が15.6%生成され、メジアン粒度は172nmであった。組成物および得られる融点は、実施例1のものに匹敵し、HFPが11.2%、融点は260℃である。
実施例1
重合は比較例1のように実施されるが、使用されるFC1015は、FC43(3M社製)を3重量%用いて改質され、トゥラックス(Turrax)および微小流動化装置(microfluidizer)中に導入され、乳化される。この混合物中のメジアン粒度は、110nmである。FEP重合における著しい改善がある。317分の運転時間で、固体が23.2%生成され、メジアン粒度は141nmである。HFP含量は、僅かな上昇を示して11.4%となり、得られる融点は僅かな低下を示して258℃になる。
実施例2
重合は比較例1のように実施されるが、使用されるFC1015は、FC43(3M社製)を30重量%用いて改質され、トゥラックス(Turrax)および微小流動化装置(microfluidizer)中に導入され、乳化される。この混合物中のメジアン粒度は、120nmである。FEP重合における劇的な改善がある。169分の運転時間で、固体が23.2%生成され、メジアン粒度は70nmである。運転時間は、実際に、半分になる。HFP含量は、実質的な上昇を示して12.5%となり、得られる融点は著しい低下を示して250℃になる。
実施例3
重合は比較例1のように実施されるが、使用されるFC1015は、FC43(3M社製)を30重量%使用して改質され、トゥラックス(Turrax)および微小流動化装置(microfluidizer)中に導入され、乳化され、この混合物の供給時間は、圧力下でモノマーを導入する前に40分まで増大する。この混合物中のメジアン粒度は、120nmである。273分の運転時間で、固体が23.1%生成され、メジアン粒度は135nmである。可能な限り最良の改質をするように、計量時間はできるだけ短くなるように選択されなければならないため、ここでは計量時間の影響が顕著になる。HFP含量は、11.8%であり、得られる融点は256℃である。
比較例3
重合は比較例1のように実施されるが、ここでは、4倍の量のFC1015が使用される。245分の運転時間で、固体が23.8%生成され、メジアン粒度は103nmである。HFP含量は、12.7%であり、得られる融点は247℃である。4倍の量のFC1015を用いても、FEP重合は、まだ、実施例2の改質されたFC1015の場合よりも1時間以上遅い。
実施例4
重合は比較例1のように実施されるが、ここでは、使用されるFC1015の10%だけが、FC43(3M社製)を3重量%(使用される乳化剤の全量を基準にして)用いて改質され、トゥラックス(Turrax)および微小流動化装置(microfluidizer)中に導入され、乳化される。この混合物中のメジアン液滴サイズは、91nmである。モノマーが加圧下で導入された後、5分間以内にこの混合物を重合容器に計量して入れる。改質されていない残りの90%の乳化剤は、重合容器の初期投入量の一部となる。FEP重合において更に著しい改善がある。305分の運転時間で、固体が27.6%生成され、メジアン粒度は108nmである。HFP含量は、12.5%であり、得られる融点は250℃である。
実施例5
29lの脱塩水をインペラー撹拌機を備える全容量47lの重合反応器に入れる。反応器を密封した後、排気および窒素通気を交互に行って大気中の酸素を除去し、容器を70℃に加熱する。排気段階後、30%の濃度の溶液の形態のパーフルオロオクタン酸アンモニウム(3M製のFC1015)240gを同量のFC43(即ち、72g)で改質し、5分以内に容器に計量して入れる。次いで、TFEおよびHFPを分圧を基準にして5:12の比で、全圧が17.0バールに達するまで、撹拌しながら導入する。重合は、脱塩水100ml中に溶解させたペルオキソ二硫酸アンモニウム(以下、APS)24gをポンプで入れることにより開始される。圧力が低下し始めるとすぐ、TFEとHFPは更に、HFP/TFEの供給比0.18で気体相を介して添加され、そのため17.0バールの全圧が維持される。放出される熱は、容器の壁を冷却することにより放散され、このようにして、温度は70℃で一定に保持される。289分後、モノマーの導入は停止され、反応器内の圧力は低下し、反応器をN2で数回通気する。得られるポリマー分散体は、固体を合計で17.0%有し、粒度は73nmである。得られるコポリマーは、HFP含量が17.6%、融点が223℃である。
実施例6
重合は比較例1におけるように実施されるが、ここでは、使用されるFC1015の10%が、PPVE−2を10重量%(使用される乳化剤の全量を基準にして)用いて改質され、トゥラックス(Turrax)および微小流動化装置(microfluidizer)中に導入され、乳化される。この混合物中のメジアン液滴サイズは、68nmである。モノマーが加圧下で導入された後、迅速に、この混合物を重合容器に計量して入れる。改質されていない残りの90%の乳化剤は、重合容器中で初期投入量の一部となる。FEP重合において更に著しい改善がある。300分の運転時間で、固体が20.5%生成され、メジアン粒度は145nmである。HFP含量は、11.9%であり、得られる融点は256℃である。
実施例7
重合は実施例4のように実施されるが、ここでは、沸点が174℃のFC43の替わりに、沸点が102℃のパーフルオロ−2−ブチルフランFC75が使用される。この混合物中のメジアン液滴サイズは、89nmである。モノマーが加圧下で導入された後、5分間以内にこの混合物を重合容器に計量して入れる。302分の運転時間で、固体が16.2%生成され、メジアン粒度は162nmである。HFP含量は、11.3%であり、得られる融点は261℃である。
比較例4
29lの脱塩水をインペラー撹拌機を備える全容量47lの重合反応器に入れる。反応器を密封した後、排気および窒素通気を交互に行って大気中の酸素を除去し、容器を63℃に加熱する。排気段階後、30%の濃度の溶液の形態のパーフルオロオクタン酸アンモニウム150gを容器に添加する。次いで、PPVE−1の200gをポンプで入れる。撹拌速度を230rpmに設定する。次いで、TFEを全圧が13.0バールに達するまで導入する。次いで、塩化メチレン19gを容器に添加する。重合は、脱塩水100ml中に溶解させたペルオキソ二硫酸アンモニウム2gをポンプで入れることにより開始される。圧力が低下し始めるとすぐ、TFEとPPVE−1は更に、PPVE−1/TFEの供給比0.038で気体相を介して添加され、13.0バールの全圧が維持される。放出される熱は、容器の壁を冷却することにより放散され、このように、温度は63℃で一定に保持される。315分の運転時間で、固体が25.3%生成され、メジアン粒度は189nmである。PPVE1含量は3.9%であり、得られる融点は308℃である。
実施例8
重合は比較例4のように実施されるが、ここでは、使用されるパーフルオロオクタン酸アンモニウムの10%は、FC43(3M社製)を10重量%(使用される乳化剤の全量を基準にして)用いて改質され、トゥラックス(Turrax)および微小流動化装置(microfluidizer)中に導入され、乳化される。この混合物中のメジアン液滴サイズは、68nmである。モノマーが加圧下で導入された後、5分間以内に、この混合物を重合容器に計量して入れる。改質されていない残りの90%の乳化剤は、重合容器の初期投入量の一部となる。PFA重合において著しい改善がある。235分の運転時間で、固体が29.5%生成され、メジアン粒度は125nmである。PPVE−1含量は4.2%であり、得られる融点は306℃である。
比較例5
29lの脱塩水をインペラー撹拌機を備える全容量47lの重合反応器に入れる。反応器を密封した後、排気および窒素通気を交互に行って大気中の酸素を除去し、容器を27℃に加熱する。排気段階後、30%の濃度の溶液の形態のパーフルオロオクタン酸アンモニウム240gを容器に添加する。次いで、マロン酸ジエチル38g、シュウ酸16g、およびシュウ酸アンモニウム56gをポンプで入れる。撹拌速度を230rpmに設定する。次いで、TFE/HFP/エチレンを7:1:3の分圧比で、全圧が17.0バールに達するまで導入する。重合は、3%の濃度の過マンガン酸カリウム溶液200mlをポンプで入れることにより開始される。圧力が低下し始めるとすぐ、TFE、HFPおよびエチレンは更に、供給比HFP/TFE0.086、およびエチレン/TFE比0.272で気体相を介して添加され、そのため17.0バールの全圧が維持される。放出される熱は、容器の壁を冷却することにより放散され、このようにして、温度は27℃で一定に保持される。410分の運転時間で、固体が22.4%生成され、メジアン粒度は205nmである。得られる生成物の融点は、265℃である。
実施例9
重合は比較例5のように実施されるが、ここでは、使用されるパーフルオロオクタン酸アンモニウムの10%は、FC43(3M社製)を10重量%(使用される乳化剤の全量を基準にして)用いて改質され、トゥラックス(Turrax)および微小流動化装置(microfluidizer)中に導入されて乳化される。この混合物中のメジアン液滴サイズは、68nmである。モノマーが加圧下で導入された後、この混合物を重合容器に計量して入れる。改質されていない残りの90%の乳化剤は、重合容器中で初期投入量の一部となる。ET重合において著しい改善がある。330分の運転時間で、固体が22.8%生成され、メジアン粒度は165nmである。
比較例6
29lの脱塩水を、インペラー撹拌機を備える全容量47lの重合反応器に入れる。反応器を密封した後、排気および窒素通気を交互に行って大気中の酸素を除去し、容器を43℃に加熱する。排気段階後、30%の濃度の溶液の形態のパーフルオロオクタン酸アンモニウム240gを容器に添加する。次いで、マロン酸ジエチル76g、シュウ酸13g、およびシュウ酸アンモニウム92gをポンプで入れる。撹拌速度を230rpmに設定する。次いで、TFE/HFP/VDFを2.2:1:2の分圧比で、全圧が15.0バールに達するまで導入する。重合は、0.1%の濃度の過マンガン酸カリウム溶液200ml/hをポンプで入れることにより開始される。圧力が低下し始めるとすぐ、TFE、HFPおよびVDFは更に、HFP/TFEの供給比0.47、およびVDF/TFEの比0.86で気体相を介して添加され、そのため15.0バールの全圧が維持される。放出される熱は、容器の壁を冷却することにより放散され、このようにして、温度は43℃で一定に保持される。321分の運転時間で、固体が33.2%生成され、メジアン粒度は129nmである。得られる生成物の融点は、265℃である。
実施例10
重合は比較例6のように実施されるが、ここでは、使用されるパーフルオロオクタン酸アンモニウムの10%は、FC43(3M社製)を10重量%(使用される乳化剤の全量を基準にして)用いて改質され、トゥラックス(Turrax)および微小流動化装置(microfluidizer)中に導入され、乳化される。この混合物中のメジアン液滴サイズは、68nmである。モノマーが加圧下で導入された後、5分以内にこの混合物を重合容器に計量して入れる。改質されていない乳化剤の残りの90%は、重合容器中で初期投入量の一部となる。THV重合において著しい改善がある。265分の運転時間で、固体が34.1%生成され、メジアン粒径は81nmである。
実施例11
重合は比較例1のように実施されるが、改質されていない95%の乳化剤は、重合容器の初期投入量となり、使用されるFC1015の5%だけが、パーフルオロポリエーテル(ホスティナート(Hostinert)216)を1重量%(使用される乳化剤の全量を基準にし、重合媒体を基準にして0.005%に対応する)用いて改質され、トゥラックス(Turrax)および微小流動化装置(microfluidizer)中に導入され、乳化される。この混合物中のメジアン液滴サイズは、68nmである。APSの添加後すぐに、1分以内に、この混合物を重合容器に計量して入れる。FEP重合において更に著しい改善がある。300分の運転時間で、固体が25.5%生成され、メジアン粒度は108nmである。
実施例2、4および比較例1の重合の進行に対する曲線が図1に示される。図1の曲線Aは比較例1を表し、曲線Bは実施例4を表し、曲線Cは実施例2を表す。
実施例の重合の結果を下記の表1に記載する。
Figure 0004184088
上の表および対応する実施例から理解できるように、本発明のプロセスは、同じ重合時間で、重合プロセスの固体収量を改善するだけでなく、ポリマー粒子の寸法を小さくする。例えば、比較例1と実施例4との比較により示されるように、FEP重合の収量は、約30%増大するだけでなく、粒度が約20%小さくなる。更に、比較例2から分かるように、添加される界面活性剤/有機液体混合物の液滴サイズが1000nmを超える場合、この効果は達成されない。
実施例2と比較例1との比較は、本発明のプロセスが、重合時間を50%短縮できると共に、固体収量を30%増大させ、粒度を60%小さくすることを更に示す。このような改善は、界面活性剤の量を4倍増大しても達成できなかった(比較例3)。
実施例2、4および比較例1の重合の進行を示す。

Claims (2)

  1. フッ素化界面活性剤の存在下での水相における1種類以上のフッ素化モノマーの乳化重合により、フルオロポリマーを作製する方法であって、前記フッ素化界面活性剤の少なくとも一部を、水と混和性がなく、且つハロゲン化された有機液体から選択される少なくとも1種類の有機液体との水性混合物として水相に添加することを含み、前記水性混合物は、平均液滴径が1000nm以下の液滴を有し、前記水性混合物は、前記フッ素化界面活性剤の総量が、水相の重量を基準にして1重量%以下となり、且つ前記有機液体の総量が、前記水相の重量を基準にして1重量%以下となるような量で水相に添加され、前記有機液体がパーフルオロポリエーテルである場合、その量は水相の重量を基準にして0.01重量%以下であり、前記有機液体は、分子1個あたり最大2つまでの酸素、硫黄、および/又は窒素原子を含有する、過フッ素化、又は一部フッ素化された脂肪族又は芳香族有機液体である、方法。
  2. 次式:
    Y−Rf−Z−M
    (式中、Yは、水素、Cl又はFを表し、Rfは、炭素数4〜10の直鎖又は分枝過フッ素化アルキレンを表し、Zは、COO-又はSO3 -を表し、Mは、一価のカチオンを表す)
    を有するフッ素化界面活性剤の存在下での水相における1種類以上のフッ素化モノマーの乳化重合により、フルオロポリマーを作製する方法であって、前記フッ素化界面活性剤の少なくとも一部を、水と混和性がなく、且つハロゲン化された有機液体から選択される少なくとも1種類の有機液体との水性混合物として水相に添加し、前記水性混合物は、平均液滴径が1000nm以下の液滴を有し、前記混合物は、前記フッ素化界面活性剤の総量が、前記水相の重量を基準にして1重量%以下となり、且つ前記有機液体の総量が、前記水相の重量を基準にして1重量%以下となるような量で水相に添加され、前記有機液体は、分子1個あたり最大2つまでの酸素、硫黄、および/又は窒素原子を含有する、過フッ素化、又は一部フッ素化された脂肪族又は芳香族有機液体であることを特徴とする方法。
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