以下、添付図面に従って本発明に係るレンズ装置の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、本発明に係るレンズ装置が適用される電子スチルカメラの外観構成を示す斜視図である。
同図に示すように、この電子スチルカメラ1は、そのカメラ本体が矩形の箱型に形成されており、その正面部にはレンズ装置2、ファインダ窓3、ストロボ調光センサ4、セルフタイマーランプ5などが配設されている。また、その上面部にはポップアップ式のストロボ6や、レリーズスイッチ7などが配設され、その背面部には、図示しないファインダ接眼部や液晶表示パネル、操作キーなどが配設されている。この電子スチルカメラ1は沈胴式であり、レンズ装置2は使用時にのみ、そのレンズ鏡筒がカメラ本体から繰り出され、カメラ本体の正面部から突出する。
図2は、上記の電子スチルカメラ1に適用されるレンズ装置2の分解斜視図である。また、図3〜図5は、それぞれ上記の電子スチルカメラ1に適用されるレンズ装置2の側面断面図である。なお、図3は、レンズ装置2が沈胴位置の状態のときを示しており、図4と図5とは、それぞれレンズ装置2がテレ位置の状態のときとワイド位置の状態のときとを示している。
図2〜図5に示すように、このレンズ装置2は、第1レンズ11、第2レンズ12、第1レンズ筒13、第2レンズ筒14、移動筒15、固定筒16及び回転筒17で構成されている。
回転筒17は、その外周面にギヤ部18が形成されている。このギヤ部18にはズームモータ19の駆動が伝達される。回転筒17は、このギヤ部18にズームモータ19の駆動が伝達されることにより、固定筒16の外周に接しながら回動される。
ここで、レンズ装置2は、この回転筒17が『初期位置』から『中間位置』までの『収納回転域』で回転することで、その状態が図3に示す沈胴位置の状態から図4に示すテレ位置の状態に変更され、また、回転筒17が、『中間位置』から『終端位置』までの『変倍回転域』で回転することで、その状態が図4に示すテレ位置の状態から図5に示すワイド位置の状態に変更される。
また、この回転筒17の内周面には、第2レンズ筒14を光軸20に沿って移動させるための第2レンズ用カム溝21と、移動筒15を光軸20に沿ってガイドするための移動筒用直進溝22とが、それぞれ光軸20の回りの3分割位置に形成されている。
固定筒16には、第2レンズ筒14を光軸20に沿って直進的にガイドするための第2レンズ用直進孔23と、移動筒15を光軸20に沿って移動させるための移動筒用カム孔24とが、それぞれ光軸20の回りの3分割位置に形成されている。
移動筒15の外周面には、移動筒用カムピン25が光軸20の回りの3分割位置に設けられている。この移動筒用カムピン25は、固定筒16に形成された移動筒用カム孔24と、回転筒17に形成された移動筒用直進溝22とに係合されている。
また、この移動筒15の内周面には、第1レンズ筒13を光軸20に沿って移動させるための第1レンズ用カム溝26が、光軸20の回りの3分割位置に形成されている。
第1レンズ筒13は、その前端内周部に第1レンズ11を保持している。この第1レンズ筒13の内周面には、光軸20に沿って一対の直進ガイド溝27が所定の間隔をもって形成されている。この直進ガイド溝27には、第2レンズ筒14のアーム38に形成された直進ガイド突起30が係合されている。
また、この第1レンズ筒13の外周面には、第1レンズ用カムピン28が、光軸20の回りの3分割位置に設けられている。この第1レンズ用カムピン28は、移動筒15の内周面に形成された第1レンズ用カム溝26に係合されている。
第2レンズ筒14の外周面には、第2レンズ用カムピン29が光軸20の回りの3分割位置に設けられている。この第2レンズ用カムピン29は、回転筒17の内周面に形成された第2レンズ用カム溝21と、固定筒16に形成された第2レンズ用直進孔23とに係合されている。
また、この第2レンズ筒14の後端部には、固定筒16の後端部との間に一対のバネ37が掛けられている。このバネ37は、光軸20の回りの2分割位置に設けられており、第2レンズ筒14を結像面側に向けて付勢する。
また、この第2レンズ筒14の前端部には、一対のアーム38が所定の間隔をもって一体的に形成されている。このアーム38は、第2レンズ筒14の前端から細幅で被写体側に延びた形状となっており、その前端外周部には直進ガイド突起30が一体的に形成されている。この直進ガイド突起30は、第1レンズ筒13の内周面に形成された直進ガイド溝27に係合されており、その両壁面30a、30bは、直進ガイド溝27の両壁面27a、27bに当接されている。第1レンズ筒13は、この直進ガイド突起30と直進ガイド溝27によって、その回転が止められた状態で第2レンズ筒14に対して光軸方向に直進的にガイドされる。
ここで、この第2レンズ筒14は、プラスチック等の弾性変形可能な材料で成形されており、各アーム38は、その前端が径方向の外側に向けて広がった状態で形成されている。このため、直進ガイド突起30が直進ガイド溝27に係合すると、直進ガイド突起30の先端部30cが直進ガイド溝27の底部27cを押圧するようになる。これにより、第1レンズ筒13が第2レンズ筒14に対して互いに傾かないように支持される。
また、直進ガイド突起30は、摺動時の抵抗を低減させるため、その先端面30cが半球状に形成されている。すなわち、その光軸20に沿った断面と、光軸20と直交する断面とが、それぞれ円弧状に形成されている。これにより、第1レンズ筒13と第2レンズ筒14との相対的な移動がスムーズになるとともに、回転筒17の回転負荷が低減される。
第2レンズ12は、図3〜図5に示すように、第2レンズ筒14内を光軸20に沿って移動自在に設けられた第2レンズ枠33に保持されている。この第2レンズ枠33は、送りネジ31とガイド棒32とによって第2レンズ筒14内を光軸20に沿って移動自在に設けられている。送りネジ31には、フォーカスモータ34が連結されており、このフォーカスモータ34を駆動することにより、第2レンズ12が送りネジ31のリードに従って光軸方向に移動する。
なお、この第2レンズ12の移動は、第2レンズ筒14に対して結像面10a側に最も寄った『原点位置』と、この原点位置から被写体側に離れた位置との間で行われる。また、変倍時、第2レンズ12は『原点位置』に位置する。
図7は、移動筒15に設けられた第1レンズ用カム溝26の構成を示す展開図である。
第1レンズ用カム溝26には、第1レンズ筒13に設けられた第1レンズ用カムピン28が係合される。この第1レンズ用カム溝26は、第1レンズ収納準備案内部42、第1レンズ移動阻止部43及び第1レンズ変倍案内部44から構成されている。
第1レンズ収納準備案内部42は、回転筒17が『初期位置』から『回転位置A』までの回転域で回転したときに、第1レンズ用カムピン28が摺動する範囲である。この第1レンズ収納準備案内部42は、移動筒15に対して第1レンズ筒13を結像面側に退避させた『退避位置』と、被写体側に僅かに突出した『収納準備位置』との間で移動させる。なお、レンズ装置2が沈胴位置の状態のときには、第1レンズ筒13は『退避位置』に位置する。
第1レンズ移動阻止部43は、回転筒17が『回転位置A』から『中間位置』までの回転域で回転したときに、第1レンズ用カムピン28が摺動する範囲である。この第1レンズ移動阻止部43は、移動筒15の回転を許容しつつ、第1レンズ筒13が『収納準備位置』から光軸方向に移動しないように、移動筒15の光軸回りの方向に沿って形成されている。これにより、レンズ装置2が沈胴位置からテレ位置の状態になるまでの間、第1レンズ筒13が『収納準備位置』に維持される。
第1レンズ変倍案内部44は、回転筒17が『中間位置』から『終端位置』までの『変倍回転域』で回転したときに、第1レンズ用カムピン28が摺動する範囲である。この第1レンズ変倍案内部44は、焦点距離を変更するために第1レンズ筒13を光軸20に沿って移動させる形状となっている。
なお、前述した第1レンズ収納準備案内部42は必ずしも必要はなく、これを省略して回転筒17の『収納回転域』に応じた移動筒15の回転域の全部を第1レンズ移動阻止部43としてもよい。
図8は、固定筒16に設けられた移動筒用カム孔24と第2レンズ用直進孔23との構成を示す展開図である。
まず、移動筒用カム孔24の構成について説明する。移動筒用カム孔24には、移動筒15に設けられた移動筒用カムピン25のカム孔係合部25Aが係合する。この移動筒用カム孔24は、移動筒収納案内部40と移動筒移動阻止部41とから構成されている。
移動筒収納案内部40は、回転筒17が『初期位置』から『中間位置』までの『収納回転域』で回転したときに、移動筒用カムピン25が摺動する範囲である。この移動筒収納案内部40は、移動筒15を固定筒16に対して結像面10a側に退避させた『退避位置』と、被写体側に繰り出させた『突出位置』との間で光軸20に沿って移動させる。なお、レンズ装置2が沈胴位置の状態のときには、移動筒15は『退避位置』に位置する。
移動筒移動阻止部41は、回転筒17が『中間位置』から『終端位置』までの『変倍回転域』で回転したときに、移動筒用カムピン25が摺動する範囲である。この移動筒移動阻止部41は、移動筒15の光軸回りの回転を許容しつつ、移動筒15の光軸方向の移動を阻止するように、光軸20の回りの方向に沿って形成されている。これにより、レンズ装置2がテレ位置とワイド位置との間で変倍される間、移動筒15が『突出位置』に維持されるようになる。
次に、第2レンズ用直進孔23の構成について説明する。第2レンズ用直進孔23には、第2レンズ筒14の外周面に設けられた第2レンズ用カムピン29の直進孔係合部54が係合する。この第2レンズ用直進孔23は、光軸20に沿って形成されており、その前端部は移動筒用カム孔24の移動筒移動阻止部41に連通されている。
ところで、この第2レンズ用直進孔23が形成されている固定筒16は、プラスチック等の弾性変形可能な材料で成形されている。このような弾性変形可能な材料で形成された固定筒16に対して、第2レンズ用直進孔23と移動筒用カム孔24とを互いに連通して形成すると、第2レンズ用直進孔23は幅方向に拡縮自在に形成される。
そして、このように幅方向に拡縮自在に形成された第2レンズ用直進孔23に対して、その幅Aを第2レンズ用カムピン29の直進孔係合部54の幅B(図11参照)よりもやや小さく形成すると、第2レンズ用直進孔23は、その両縁部で係合された第2レンズ用カムピン29の直進孔係合部54を両側から挟み込むように作用する。これにより、係合された第2レンズ用カムピン29の直進孔係合部54と第2レンズ用直進孔23との間にアソビがなくなり、精度よく第2レンズ筒14を直進ガイドすることができるようになる。
一方、このように第2レンズ用直進孔23を移動筒用カム孔24に連通して形成すると、移動筒用カム孔24に係合された移動筒用カムピン25のカム孔係合部25Aが、移動筒移動阻止部41を摺動中に第2レンズ用直進孔23に入り込む、あるいは、その連通部に引っ掛かるおそれがある。
そこで、移動筒用カムピン25は、次のように構成されて、第2レンズ用直進孔23への入り込み又は引っ掛かりが防止されている。
図9、図10は、それぞれ移動筒用カムピン25の構成を示す平面図と側面図である。同図に示すように、移動筒用カムピン25は、カム孔係合部25A、ガイド溝係合部25B及び直進溝係合部25Cから構成されている。
カム孔係合部25Aは、円柱状に形成されており、固定筒16に設けられた移動筒用カム孔24に係合する。
ガイド溝係合部25Bは、カム孔係合部25Aの頂部に一体成形されており、台形の板状に形成されている。このガイド溝係合部25Bは、固定筒16の外周面上に形成されたガイド溝49に係合する。ガイド溝49は、移動筒用カム孔24の縁部に沿って形成されており、このガイド溝49にガイド溝係合部25Bが係合されることによって、移動筒用カムピン25が第2レンズ用直進孔23に入り込むのが又は引っ掛かるのが防止される。すなわち、このガイド溝係合部25Bは、その光軸回りの方向の幅Cが、第2レンズ用直進孔23の幅Aよりも大きく形成されているため、このガイド溝係合部25Bが障害となって、移動筒用カムピン25が第2レンズ用直進孔23に入り込むのが又は引っ掛かるのが防止される。
また、このガイド溝係合部25Bは、その光軸方向の幅Dが移動筒用カム孔24の幅Eよりも大きく形成されている。これにより、移動筒用カムピン25が移動筒用カム孔24から抜け出ることが阻止される。
直進溝係合部25Cは、ガイド溝係合部25Bの上面に一体形成されており、細長い円形の板状に形成されている。この直進溝係合部25Cは、回転筒17に形成された移動筒用直進溝22に係合する。なお、この直進溝係合部25Cが、細長い円形状に形成されていることの作用については、後に詳述する。
図11は、第2レンズ筒14に設けられた第2レンズ用カムピン29の構成を示す正面図である。同図に示すように、第2レンズ用カムピン29は、直進孔係合部54とカム溝係合部55とから構成されている。
直進孔係合部54は、円柱状に形成されており、固定筒16に形成された第2レンズ用直進孔23に係合する。
一方、カム溝係合部55は、回転筒17の内周面に形成された第2レンズ用カム溝21に係合し、収納係合部55aと変倍係合部55bとから構成されている。
収納係合部55aは、直進孔係合部54の頂部同軸上に一体成形されており、断面円錐台形状に形成されている。この収納係合部55aは、第2レンズ用カム溝21の第2レンズ収納案内部58に係合する。なお、この収納係合部55aの底面は、第2レンズ用直進孔23の外径よりも大径に形成されており、直進孔係合部54が第2レンズ用直進孔23に係合すると、固定筒16の外周面に当接する。これにより、第2レンズ用カムピン29が、第2レンズ用直進孔23から抜け出ることが阻止される。
一方、変倍係合部55bは、収納係合部55aの頂部同軸上に一体成形されており、収納係合部55aよりも小径の断面円錐台形状に形成されている。この変倍係合部55bは、第2レンズ用カム溝21の第2レンズ変倍案内部56と第2レンズ方向転換案内部57とに係合する。
図12は、回転筒17の内周面に形成された第2レンズ用カム溝21と移動筒用直進溝22の構成を示す展開図である。
まず、第2レンズ用カム溝21の構成について説明する。第2レンズ用カム溝21には、第2レンズ筒14の外周面に設けられた第2レンズ用カムピン29のカム溝係合部55が係合する。この第2レンズ用カム溝21は、焦点距離を変更するために第2レンズ12を光軸20に沿って移動させる第2レンズ変倍案内部56(変倍領域)と、第2レンズ12の移動方向を転換する第2レンズ方向転換案内部57と、第2レンズ12を『収納位置C』に移動させる第2レンズ収納案内部58(収納領域)とから構成されている。
第2レンズ変倍案内部56は、『中間位置』から『終端位置』までの『変倍回転域』で、回転筒17を『終端位置』に向けて回転させたときに、第2レンズ筒14が結像面10a側に向かって繰り込むように案内する曲線状のカム軌跡となっている。
第2レンズ方向転換案内部57は、『回転位置B』から『中間位置』までの回転域で、回転筒17を『中間位置』に向けて回転させたときに、第2レンズ筒14の移動方向が転換するように、すなわち、被写体側に向かって移動していた第2レンズ筒14が、方向転換して結像面10a側に向かって繰り込むように案内する湾曲状の軌跡となっている。
第2レンズ収納案内部58は、『初期位置』から『回転位置B』までの回転域で、回転筒17を『回転位置B』に向けて回転させたときに、第2レンズ筒14が、被写体側に向かって繰り出すように案内する直線状の軌跡となっている。
ここで、上述したように、第2レンズ変倍案内部56と第2レンズ方向転換案内部57とには、カム溝係合部55の変倍係合部55bが係合し、第2レンズ収納案内部58には、収納係合部55aが係合する。
このため、第2レンズ変倍案内部56は、図13に示すように、その両側面に第1テーパ面56aと第2テーパ面56bの2つのテーパ面が形成されており、変倍係合部55bのみが第2テーパ面56bに当接するように形成されている(収納係合部55aの両側面は第1テーパ面56aには当接しない。)。
より具体的には、第2レンズ変倍案内部56の第2テーパ面56bは、その傾斜角度がカム溝係合部55の変倍係合部55bの両側面と同じ傾斜角度で形成されるとともに、その下端部の幅Fが変倍係合部55bの底部の幅Gと同じ幅をもって形成されている。一方、第2レンズ変倍案内部56の第1テーパ面56aは、その傾斜角度がカム溝係合部55の収納係合部55aの両側面と同じ傾斜角度で形成されるが、その下端部の幅Hが収納係合部55aの底部の幅Iよりも大きな幅をもって形成されている。したがって、この第2レンズ変倍案内部56では、カム溝係合部55は、先端の変倍係合部55bのみが第2テーパ面56bに当接する(収納係合部55aと第1テーパ面56aとの間には、所定の隙間が形成されて、互いに当接しない。)。
第2レンズ方向転換案内部57も第2レンズ変倍案内部56と同じ構成である。すなわち、その両側面に第1テーパ面と第2テーパ面とが形成されており、カム溝係合部55は、先端の変倍係合部55bのみが第2レンズ方向転換案内部57の両側面に当接する(収納係合部55aと第2レンズ方向転換案内部57の両側面との間には、所定の隙間が形成されて互いに当接しない。)。
一方、第2レンズ収納案内部58は、図14に示すように、その両側面58aにテーパが形成されており、カム溝係合部55は収納係合部55aの両側面のみが、その両側面58aに当接するように形成されている(変倍係合部55bの両側面58aには当接しない。)。より具体的には、第2レンズ収納案内部58の両側面58aは、その傾斜角度がカム溝係合部55の収納係合部55aの両側面と同じ傾斜角度で形成されるとともに、その開口部の幅Jが収納係合部55aの底部の幅Iと同じ幅で形成されている。したがって、この第2レンズ収納案内部58では、カム溝係合部55は、基端部の収納係合部55aのみが第2レンズ収納案内部58の両側面58aに当接する(変倍係合部55bと第2レンズ収納案内部58の両側面58aとの間には、所定の隙間が形成されて互いに当接しない。)。
前記のごとく構成された第2レンズ用カム溝21によれば、回転筒17を『初期位置』から『回転位置B』に向けて回転させると、第2レンズ用カムピン29のカム溝係合部55は第2レンズ収納案内部58を摺動して、第2レンズ筒14を被写体側に向けて繰り出す。この際、カム溝係合部55は、その収納係合部55aが第2レンズ収納案内部58の両側面58aに当接して摺動する(変倍係合部55bは当接せず。)。
また、回転筒17を『回転位置B』から『中間位置』に向けて回転させると、第2レンズ用カムピン29のカム溝係合部55は、第2レンズ方向転換案内部57を摺動して、第2レンズ筒14の移動方向を転換する。すなわち、第2レンズ筒14を被写体側から結像面10a側に向けて移動させる。この際、カム溝係合部55は、その変倍係合部55bが第2レンズ方向転換案内部57に当接して摺動する(収納係合部55aは当接せず。)。
さらに、回転筒17を『中間位置』から『終端位置』に向けて回転させると、第2レンズ用カムピン29のカム溝係合部55は、第2レンズ変倍案内部56を摺動して、第2レンズ筒14を結像面10a側に向けて繰り込む方向に移動させる。この際、カム溝係合部55は、その変倍係合部55bが第2レンズ変倍案内部56の第2テーパ面56bに当接して摺動する(収納係合部55aは当接せず。)。
このように、第2レンズ用カムピン29のカム溝係合部55を2段構造とするとともに、第2レンズ用カム溝21を2段構造とすることにより、第2レンズ変倍案内部56と第2レンズ収納案内部58とにおいて当接部分を変えることができるようになり、この結果、カムピンの磨耗を効果的に抑制することができる。
また、第2レンズ変倍案内部56は、撮影時に第2レンズ筒14を正確に動作させる必要があることから、その製作に際して精度が要求されるのに対して、第2レンズ収納案内部58は、撮影には影響がないため、第2レンズ変倍案内部56ほどの精度は要求されない。したがって、上記のようにカム溝係合部55と第2レンズ用カム溝21とを2段構造とすることにより、第2レンズ変倍案内部56のみを高精度に製作すればよくなり(第2レンズ収納案内部58はラフな製作でよい)、生産性が向上するとともに、製作コストの低減を図れる。
さらに、第2レンズ方向転換案内部57におけるカム溝係合部55の移動軌跡は、被写体側に凸の湾曲状となるが、この際、図13に示すように、変倍係合部55bは、収納係合部55aよりも小径に形成されている分だけ、その移動軌跡のうち最も結像面側を通る移動軌跡の曲率半径Rb が、収納係合部55aの移動軌跡のうち最も結像面側を通る移動軌跡の曲率半径Ra よりも大きくなる。このように、第2レンズ筒14の移動方向を変更する第2レンズ方向転換案内部57では、曲率半径の大きい変倍係合部55bが係合するから、第2レンズ筒14をスムーズに移動させることができる。
次に、移動筒用直進溝22の構成について説明する。移動筒用直進溝22には、移動筒用カムピン25の直進溝係合部25Cが係合する。この移動筒用直進溝22は、図12に示すように、光軸20に沿って形成されており、第2レンズ用カム溝21の第2レンズ変倍案内部56で交差している。
ここで、図15に示すように、移動筒用直進溝22は、その深さKが第2レンズ用カム溝21の深さLよりも浅く形成されている。これにより、第2レンズ用カム溝21の第2レンズ変倍案内部56を摺動する第2レンズ用カムピン29のカム溝係合部55が、移動筒用直進溝22に入り込むのが防止される。
一方、前述したように、移動筒用直進溝22に係合する移動筒用カムピン25の直進溝係合部25Cは、細長い円形の板状に形成されている。この直進溝係合部25Cの長さMは、移動筒用直進溝22と第2レンズ用カム溝21との交差部の長さNよりも長く形成されている。これにより、移動筒用直進溝22を摺動する移動筒用カムピン25の直進溝係合部25Cが第2レンズ用カム溝21内に入り込む、あるいは、交差部に引っ掛かるのが防止される。
前記のごとく構成された本実施の形態のレンズ装置2の作用は次のとおりである。
まず、回転筒17を回転させた場合における、移動筒15、第1レンズ筒13及び第2レンズ筒14の基本動作について説明する。
レンズ装置2が沈胴位置の状態のとき、図3に示すように、移動筒15と第1レンズ筒13とは、それぞれ固定筒16の内部に収納されている。
ズームモータ19を駆動して、回転筒17を『初期位置』から『終端位置』に向けて回転させると、その回転筒17の回転が移動筒用直進溝22を介して移動筒用カムピン25に伝達される。これにより、移動筒15が回転筒17に連動して回転する。
ここで、移動筒15は、その外周部に設けられた移動筒用カムピン25が、回転筒17に形成された移動筒用直進溝22と、固定筒16に形成された移動筒用カム孔24とに係合されているため、回転すると、固定筒16に対して回転しながら光軸方向に移動する。
一方、第1レンズ筒13は、その外周部に設けられた第1レンズ用カムピン28が、移動筒15に形成された第1レンズ用カム溝26に係合されるとともに、その内周面に形成された直進ガイド溝27が、第2レンズ筒14に形成された直進ガイド突起30に係合されているため、移動筒15が回転すると、その移動筒16に対して光軸20に沿って直進的に移動する。
また、第2レンズ筒14は、その外周部に設けられた第2レンズ用カムピン29が、回転筒17の内周面に形成された第2レンズ用カム溝21と、固定筒16に形成された第2レンズ用直進孔23とに係合しているため、回転筒17が回転すると、これに連動して光軸20に沿って直進的に移動する。
次に、回転筒17を回転させた場合における、第1レンズ筒13、第2レンズ筒14及び移動筒15等の移動軌跡について説明する。
図16は、第1レンズ筒13、第2レンズ筒14及び移動筒15等の移動軌跡を示した説明図である。
なお、同図において、太線(E)は、第1レンズ筒13の移動軌跡を表しており、太線(F)は、第2レンズ筒14の移動軌跡を表している。また、細線(G)は、移動筒15に対する第1レンズ筒13の移動軌跡を表しており、細線(J)は、移動筒15の移動軌跡を表している。
同図に示すように、レンズ装置2が沈胴位置の状態のとき、移動筒15は、『退避位置K』に位置する。また、第2レンズ筒14は、結像面側に最も寄った『収納位置C』に位置し、第1レンズ筒13は、第2レンズ筒14に接近した『収納位置D』に位置している(なお、第1レンズ筒13は、移動筒15に対して『退避位置H』に位置している)。
まず、回転筒17が『初期位置』から『中間位置』まで回転した場合における、第1レンズ筒13と移動筒15の移動軌跡について説明する。
回転筒17が『初期位置』から『回転位置A』まで回転する間、第1レンズ筒13は、その外周部に設けられた第1レンズ用カムピン28が、第1レンズ用カム溝26の第1レンズ収納準備案内部42を摺動する。これにより、第1レンズ筒13は、移動筒15に対して細線(G)で表す移動軌跡のうちの『退避位置H』から『収納準備位置I』に繰り出される。
また、回転筒17が『回転位置A』から『中間位置』まで回転する間、第1レンズ筒13は、その外周部に設けられた第1レンズ用カムピン28が、第1レンズ用カム溝26の第1レンズ移動阻止部43を摺動する。これにより、第1レンズ筒13は、移動筒15に対する光軸方向の移動が阻止される。したがって、第1レンズ筒13は、この間、移動筒15に対して光軸方向の移動がないので、移動筒15に対して細線(G)で表す移動軌跡のうちの『収納準備位置I』に維持される。
一方、移動筒15は、回転筒17が『初期位置』から『中間位置』まで回転する間、その外周部に設けられた移動筒用カムピン25が、移動筒用カム孔24の移動筒収納案内部40を摺動する。これにより、移動筒15は、細線(J)で表す移動軌跡のうちの『退避位置K』から『突出位置L』に繰り出される。
ここで、前記第1レンズ筒13は、移動筒15に支持されている。したがって、回転筒17が『初期位置』から『中間位置』まで回転する間、第1レンズ筒13は、移動筒15の繰り出し分と、その移動筒15に対する第1レンズ筒13の繰り出し分とを加えた分だけ光軸20に沿って移動する。すなわち、第1レンズ筒13は、回転筒17が『初期位置』から『回転位置A』まで回転すると、太線(E)で表す移動軌跡のうちの『収納位置D』から『位置M』に繰り出され、回転筒17が『回転位置A』から『中間位置』まで回転すると、太線(E)で表す移動軌跡のうちの『位置M』から『位置O』に繰り出される。
次に、回転筒17が『初期位置』から『中間位置』まで回転した場合における、第2レンズ筒14の移動軌跡について説明する。
回転筒17が『初期位置』から『回転位置B』まで回転する間、第2レンズ筒14は、その外周部に設けられた第2レンズ用カムピン29が、第2レンズ用カム溝21の第2レンズ収納用案内部58を摺動する。この際、第2レンズ用カムピン29は、そのカム溝係合部55の収納係合部55aが第2レンズ収納用案内部58に係合して摺動する。これにより、第2レンズ筒14は、太線(F)で表す移動軌跡のうちの『退避位置C』から『位置P』に繰り出される。
また、回転筒17が『回転位置B』から『中間位置』まで回転する間、第2レンズ筒14は、その外周部に設けられた第2レンズ用カムピン29が、第2レンズ用カム溝21の第2レンズ方向転換案内部57を摺動する。この際、第2レンズ用カムピン29は、そのカム溝係合部55の収納係合部55aの係合が解除され、変倍係合部55bが第2レンズ方向転換案内部57に係合して摺動する。これにより、第2レンズ筒14は、太線(F)で表す移動軌跡のうちの『位置P』から『位置N』に繰り出される。
ここで、この第2レンズ方向転換案内部57に係合する変倍係合部55bは、第2レンズ収納用案内部58に係合する収納係合部55aよりも小径に形成されていることから、その移動軌跡の曲率半径(移動軌跡のうち最も結像面側を通る移動軌跡の曲率半径)が、収納係合部55aの移動軌跡の曲率半径(移動軌跡のうち最も結像面側を通る移動軌跡の曲率半径)よりも大きくなる。このように、第2レンズ用カムピン29は、第2レンズ筒14の移動方向を変更する第2レンズ方向転換案内部57において、曲率半径の大きい変倍係合部55bが係合して摺動することから、第2レンズ筒14をスムーズに移動させることができる。また、これにより回転筒17の回転負荷も減少させることができる。
以上のように、回転筒17が『中間位置』に回転すると、図4に示すように、レンズ装置2はテレ位置の状態となる。この状態において、移動筒15は『突出位置L』に位置する。そして、第1レンズ筒13は『位置O』に位置し、第2レンズ筒14は『位置N』に位置する。
レンズ装置2がテレ位置の状態となった後は、回転筒17は『変倍回転域』で回転される。
移動筒15は、回転筒17が『変倍回転域』で回転する間、その外周部に設けられた移動筒用カムピン25が、移動筒用カム孔24の移動筒移動阻止部41を摺動する。このため、移動筒15は、固定筒16に対する光軸方向の移動が阻止される。したがって、移動筒15は、この間、光軸方向の移動がないから、細線(J)で表す移動軌跡のうちの『突出位置L』に維持される。
また、第1レンズ筒13は、回転筒17が『変倍回転域』で回転する間、その外周部に設けられた第1レンズ筒用カムピン28が第1レンズ用カム溝26の第1レンズ変倍案内部44を摺動する。このため、第1レンズ筒13は、第1レンズ変倍案内部44の光軸方向での変位に応じた分だけ移動筒15に対して光軸20に沿って移動する。
また、第2レンズ筒14は、回転筒17が『変倍回転域』で回転する間、その外周部に設けられた第2レンズ用カムピン29が、第2レンズ用カム溝21の第2レンズ変倍案内部56を摺動する。このため、第2レンズ筒14は、その第2レンズ変倍案内部56の光軸方向での変位に応じて移動される。この際、第2レンズ用カムピン29は、そのカム溝係合部55の変倍係合部55bが第2レンズ変倍案内部56に係合して摺動する。
なお、変倍時、第1レンズ筒13と第2レンズ筒14とは、これらの間隔が異なるように互いに光軸20に沿って移動される。この間、第2レンズ筒14は、バネ37の光軸方向への付勢によって、第2レンズ用カムピン29と第2レンズ用カム溝21とのガタが吸収され、かつ、固定筒16に対する傾きも補正される。一方、第1レンズ筒13は、直進ガイド突起30によって直進ガイド溝27内が径方向に押圧されることから、変倍中に第1レンズ11の光軸が第2レンズ12の光軸に対して傾くことが極力抑制される。
この際、直進ガイド突起30による径方向への付勢は、第2レンズ筒14の移動位置に関わらず一方である。このため、常に第1レンズ筒13と第2レンズ筒14とをスムーズに移動させることができる。
また、直進ガイド突起30は、その先端面30cが球状に形成されているため、直進ガイド溝27の底部と点で接触する。これにより、摺動時の抵抗を極力低減させることができる。
本実施の形態のレンズ装置2の作用は以上のとおりである。ところで、本実施の形態のレンズ装置2では、回転筒17の内周面に形成された第2レンズ用カム溝21と移動筒用直進溝22とが交差して形成されている。このように、第2レンズ用カム溝21と移動筒用直進溝22とを交差して形成することにより、第2レンズ用カム溝21の傾斜を緩やかに設定することができ、これにより、第2レンズ筒14を安定的に動作させることができる。
すなわち、従来は、第2レンズ用カム溝21と移動筒用直進溝22とが互いに交差しないように形成したため、第2レンズ用カム溝21の傾斜を急に設定せざるを得なかったが、本実施の形態のように、第2レンズ用カム溝21と移動筒用直進溝22とを交差して形成することにより、移動筒用直進溝22の有無に係わらず、第2レンズ用カム溝21の傾斜を自由に設定することができるようになる。これにより、第2レンズ筒14を安定的に動作させることができる。また、回転筒17の回転負荷も減少させることができる。
また、このように第2レンズ用カム溝21の傾斜を自由に設定することができることから、第2レンズ筒14の安定的な動作を確保しつつ、可能な限り回転筒17の小型化を図ることもできる。
一方、本実施の形態のように、第2レンズ用カム溝21と移動筒用直進溝22とを交差して形成すると、第2レンズ用カム溝21に係合する第2レンズ用カムピン29が移動筒用直進溝22に入り込む、あるいは、移動筒用直進溝22に係合する移動筒用カムピン25が、第2レンズ用カム溝21に入り込むおそれがあるが、第2レンズ用カム溝21の深さLを移動筒用直進溝22の深さKよりも深く形成することにより、第2レンズ用カムピン29が移動筒用直進溝22に入り込むのを防止できる。また、移動筒用カムピン25が第2レンズ用カム溝21内に入り込むのを防止するのは、移動筒用直進溝22に係合する移動筒用カムピン25の直進溝係合部25Cを細長い円形状(交差部の長さNよりも長い円形状)とすることにより防止できる。
なお、本実施の形態では、第2レンズ用カム溝21と移動筒用直進溝22とが、それぞれ光軸20の回りの3分割位置に形成されているが、このように、第2レンズ用カム溝21と移動筒用直進溝22と光軸20の回りの3分割位置に形成すると、3本ある第2レンズ用カムピン29と移動筒用カムピン25とが、それぞれ同時に第2レンズ用カム溝21と移動筒用直進溝22との交差部を通過するようになる。この場合、第2レンズ用カム溝21と移動筒用直進溝22と交差部において、各カムピンに引っ掛かりが生じて作動不良を起こすおそれがある。
そこで、第2レンズ用カム溝21と移動筒用直進溝22のいずれか一方又は双方を光軸回りに不等間隔で形成し、各第2レンズ用カムピン29及び各移動筒用カムピン25が、交差部を通過するタイミングをずらす。これにより、3本のカムピンが同時に交差部を通過して、交差部に引っ掛かりが生じるのを効果的に防止できる。
たとえば、図17に示すように、第2レンズ用カム溝21を120°−120°−120°の等間隔で形成し、移動筒用直進溝22を117°−117°−126°の不等間隔で形成する。このように形成することにより、図18に示すように、各交差部の位置が光軸方向にγズレ、各第2レンズ用カムピン29が及び各移動筒用カムピン25が交差部を通過するタイミングをずらすことができる。これにより、作動不良を生じることなく、スムーズに第2レンズ筒14及び移動筒15を移動させることができる。
なお、上記の例では、移動筒用直進溝22を117°−117°−126°の不等間隔で形成しているが、移動筒用直進溝22を120°−120°−120°の等間隔で形成し、第2レンズ用カム溝21を117°−117°−126°の不等間隔で形成しても同様の効果を得ることができる。また、双方を不等間隔で形成してよい。
また、不等間隔で形成する場合も、上記の例のように、117°−117°−126°で形成するのではなく、たとえば、115°−115°−130°で形成してもよい。すなわち、各カムピンが交差部を同時に通過しない間隔であればよく、溝を形成する筒体の径や溝の幅等に応じて適宜最適な値を選択して形成する。
さらに、このようにカム溝を不等間隔で形成することは、カム溝同士を交差させる場合にも適用することができ、同様の効果を得ることができる。すなわち、各カム溝に係合するカムピンが交差部を通過するタイミングをずらすことができ、作動不良を有効に防止できる。
また、上記の例では、各第2レンズ用カム溝21又は各移動筒用直進溝22を光軸回りの方向にずらして形成することにより、各第2レンズ用カムピン29及び各移動筒用カムピン25が交差部を通過するタイミングをずらすようにしているが、各第2レンズ用カム溝21を光軸方向にずらして形成することにより、各第2レンズ用カムピン29及び各移動筒用カムピン25が交差部を通過するタイミングをずらすこともできる。
たとえば、図18に示すように、各第2レンズ用カム溝21を光軸方向δにずらして形成する。これにより、各交差部の位置が光軸方向にズレ、各第2レンズ用カムピン29が及び各移動筒用カムピン25が交差部を通過するタイミングをずらすことができる。
なお、このようにカム溝を光軸方向にずらして形成することにより、カムピンが交差部を通過するタイミングをずらすことは、カム溝同士を交差させる場合にも適用することができ、同様の効果を得ることができる。
なお、各第2レンズ用カム溝21を光軸方向にずらして形成する場合、回転筒17の長さが長くなるが、各第2レンズ用カム溝21又は各移動筒用直進溝22を光軸回りの方向にずらして形成する場合には、このような不具合もなく、レンズ装置2のコンパクト化も図ることができる。
また、本実施の形態では、移動筒用直進溝22を第2レンズ用カム溝21の第2レンズ変倍案内部56(変倍領域)で交差させるようにしているが、第2レンズ収納案内部58(収納領域)で交差させるようにしてもよい。このように、第2レンズ収納案内部58で移動筒用直進溝22を交差させることにより、たとえカムピンが交差部に引っ掛かったような場合であっても、撮影に影響を与えることがない。また、これにより変倍操作時には、第2レンズ筒14をスムーズに動作させることができる。
なお、このように、移動筒用直進溝22と第2レンズ用カム溝21とは、自由に交差位置を選択することができ、カム溝同士を回転筒17の内周面に交差させて形成する場合に比べ、設計の自由度が向上する。
すなわち、カム溝同士を交差させる場合は、各カム溝を通過するカムピンが交差部において他方のカム溝に誘導されるのを防止するため、ある程度の角度をもってカム溝同士が交差するように位置を考えなければならず、この結果として、設計の自由度が低下する。そして、このようにして選択したカム溝の交差位置と、本来鏡筒の径を最小にするのに最適なカム溝の交差位置とは必ずしも一致しないため、安定した動作を確保しつつ、カム溝同士を交差させて鏡筒を小型化するのには限界がある。
一方、直進溝は光軸と平行に形成されているため、カム溝とどの位置で交差させても筒体の径には何ら影響を及ぼすことがなく、自由に設計できる。そして、このように自由に交差位置を選択できる結果、最も交差角度が大きくなる位置でカム溝と直進溝とを交差させることができ、この結果、筒体を安定動作を確保しつつ、可能な限り筒体の径の小型化が図れる。
また、本実施の形態では、移動筒用直進溝22に係合する移動筒用カムピン25の直進溝係合部25Cを細長の円形状に形成しているが、直進溝係合部25Cの形状は、この形状に限定されるものではなく、第2レンズ用カム溝21の交差部における幅よりも長い形状を有していればよい。
なお、このように一方の溝に係合するカムピンの長さを、他方の溝の交差部における幅よりも長く形成することにより、一方の溝に係合するカムピンが、他方の溝に入り込むのを防止することは、カム溝同士を交差させる場合にも適用することができる。すなわち、カム溝同士を交差させた場合に、一方のカム溝に係合するカムピンの長さを、他方のカム溝の交差部における幅よりも長く形成する。これにより、一方のカム溝に係合するカムピンが、他方のカム溝に入り込むのを防止することができる。そして、これにより、交差角度が小さい場合であっても、一方のカム溝に係合するカムピンが、他方のカム溝に入り込むのを防止することができるので、鏡筒の小型化が図れる。
また、本実施の形態では、第2レンズ用カム溝21と移動筒用直進溝22とが、それぞれ光軸回りに3本ずつ形成されているレンズ装置に本発明を適用した例で説明したが、カム溝と直進溝とが、それぞれ光軸回りに2本以上形成されているレンズ装置であれば、同様に適用することができる。
また、本実施の形態では、2群構成のズームレンズとしているが、本発明ではこれに限らず3群以上の構成でもよい。
また、ズームレンズカメラに限らず、例えばテレ位置、ワイド位置、及び沈胴位置とに切り換わる2焦点カメラにも本発明を適用することができ、また、電子スチルカメラに限らず、銀塩カメラにも本発明を適用することができる。
1…電子スチルカメラ、2…レンズ装置、10a…結像面、11…第1レンズ、12…第2レンズ、13…第1レンズ筒、14…第2レンズ筒、15…移動筒、16…固定筒、17…回転筒、20…光軸、21…第2レンズ用カム溝、22…移動筒用直進溝、23…第2レンズ用直進孔、24…移動筒用カム孔、25…移動筒用カムピン、25A…カム孔係合部、25B…ガイド溝係合部、25C…直進溝係合部、26…第1レンズ用カム溝、27…直進ガイド溝、28…第1レンズ用カムピン、29…第2レンズ用カムピン、30…直進ガイド突起、33…第2レンズ枠、34…フォーカスモータ、37…バネ、38…アーム、40…移動筒収納案内部、41…移動筒移動阻止部、42…第1レンズ収納準備案内部、43…第1レンズ移動阻止部、44…第1レンズ変倍案内部、49…ガイド溝、54…直進孔係合部、55…カム溝係合部、55a…収納係合部、55b…変倍係合部、56…第2レンズ変倍案内部、56a…第1テーパ面、56b…第2テーパ面、58…第2レンズ収納案内部、58a…第2レンズ収納案内部の両側面