JP4178221B2 - パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動モータにより駆動されるポンプの発生油圧によって操舵補助力を発生させるパワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ステアリング機構に結合されたパワーシリンダにオイルポンプから作動油を供給することによって、ステアリングホイールの操作を補助するパワーステアリング装置が用いられている。オイルポンプは、電動モータによって駆動され、その電動モータの回転速度に応じた流量の作動油を送出する。また、ステアリング軸には、ステアリングホイールに加えられた操舵トルクの方向および大きさに応じてねじれを生じるトーションバーと、このトーションバーのねじれの方向および大きさに応じて開度が変化する油圧制御弁とが組み込まれている。油圧制御弁は、オイルポンプとパワーシリンダとの間の油圧系統に介装されていて、この油圧制御弁の開度およびオイルポンプからの作動油の流量に応じた操舵補助力がパワーシリンダから発生される(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
電動モータの駆動制御は、マイクロコンピュータを備えた電子制御ユニット(ECU)によって行われる。マイクロコンピュータは、たとえば、ステアリングホイールの舵角速度および車速に基づいて、電動モータの目標回転速度を設定する。そして、その設定した目標回転速度と電動モータの実際の回転速度(実回転速度)との偏差を求め、さらにPI(Proportional-Integral:比例積分)制御演算を行うことにより、目標回転速度と実回転速度との偏差に応じた電動モータの制御指令値(駆動電圧値)を設定する。この制御指令値に応じたPWM(Pulse Width Modulation)デューティのパルス駆動信号が電動モータの駆動回路に与えられることにより、電動モータがステアリング操作および車速に応じた目標回転速度で駆動される。
【0004】
【特許文献1】
特開平9ー175422号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
電動モータの動作応答性および動作安定性は、PI制御のゲインによって決まる。PI制御のゲインを上げると、目標回転速度の変動に対する電動モータの動作応答性は良くなるが、その反面、電動モータの動作安定性が悪くなり、過剰な操舵補助による車両のふらつきを生じるおそれがある。一方、PI制御のゲインを下げると、電動モータの動作安定性は良くなるが、その反面、電動モータの動作応答性が悪くなり、ステアリング操作に対する操舵補助の応答遅れを生じるおそれがある。そこで、従来のパワーステアリング装置では、PI制御のゲインが、ステアリング操作に対する電動モータの動作応答性および動作安定性が適当なバランスで満たされるように設定されている。
【0006】
ところが、このようにPI制御ゲインが設定されているため、ステアリングホイールの急操作が行われて、電動モータの目標回転速度が急変した場合には、電動モータの動作に応答遅れが生じ、その結果、ステアリング操作のひっかかり感(操舵違和感)を運転者に与えてしまうことがあった。
そこで、この発明の目的は、通常のステアリング操作に対しては、電動モータの動作応答性および動作安定性を適当なバランスで満たすことができ、非常に急なステアリング操作に対しては、高い応答性で電動モータを動作させることができるパワーステアリング装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、操作手段(11)の操作に応じて電動モータ(29)を制御し、この電動モータにより駆動されるポンプ(27)の発生油圧によって操舵補助力を発生させるパワーステアリング装置であって、上記操作手段の操作に応じた上記電動モータの基本目標回転速度(Ra)を設定する基本目標回転速度設定手段(32)と、上記電動モータの回転速度(R)を検出するモータ回転速度検出手段(33)と、上記基本目標回転速度設定手段によって設定された基本目標回転速度と上記モータ回転速度検出手段によって検出された回転速度との偏差(Ra−R)が予め定める速度差(D)よりも大きいことを条件に、その偏差に応じて、当該偏差の増加に対して零から単調に増加するように目標回転速度変更量(α)を設定する目標回転速度変更量設定手段(34)と、上記基本目標回転速度設定手段によって設定された基本目標回転速度に上記目標回転速度変更量設定手段によって設定された目標回転速度変更量を加算して得られる値を目標回転速度として、上記電動モータを駆動制御するモータ制御手段(36)とを含むことを特徴とするパワーステアリング装置である。
【0008】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
上記の構成によれば、基本目標回転速度設定手段によって設定される基本目標回転速度とモータ回転速度検出手段によって検出される回転速度との偏差が予め定める速度差よりも大きくなるような操作手段の急操作が行われたときには、その偏差に応じた目標回転速度変更量が設定されて、基本目標回転速度に目標回転速度変更量を加えた値が電動モータの目標回転速度とされる。
【0009】
これにより、通常のステアリング操作に対して電動モータの動作応答性および動作安定性が適当なバランスで満たされるように制御ゲインを設定しておけば、操作手段の通常の操作に対しては、電動モータの動作応答性および動作安定性を適当なバランスで満たすことができ、操作手段の急操作に対しては、高い応答性で電動モータの動作(回転速度)を立ち上げることができる。よって、通常では行わないような操作手段の急操作を行っても、その操作開始直後からポンプから十分な油圧を発生させることができ、良好な応答性で操舵補助力を発生させることができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、操作手段(11)の操作に応じて電動モータ(29)を制御し、この電動モータにより駆動されるポンプ(27)の発生油圧によって操舵補助力を発生させるパワーステアリング装置であって、上記操作手段の操作に応じた上記電動モータの基本目標回転速度(Ra)を設定する基本目標回転速度設定手段(32)と、上記電動モータの回転速度(R)を検出するモータ回転速度検出手段(33)と、上記基本目標回転速度設定手段によって設定された基本目標回転速度と上記モータ回転速度検出手段によって検出された回転速度との偏差(Ra−R)が予め定める速度差(D)よりも大きいことを条件に、その偏差に応じたゲイン変更量(β)を設定するゲイン変更量設定手段(38)と、予め定める基本制御ゲイン(G)に上記ゲイン変更量設定手段によって設定されたゲイン変更量を加算して得られる値を制御ゲインとして、上記基本目標回転速度設定手段によって設定された基本目標回転速度と上記モータ回転速度検出手段によって検出された回転速度との偏差に基づいて、上記電動モータを駆動制御するモータ制御手段(36)とを含むことを特徴とするパワーステアリング装置である。
【0011】
この構成によれば、基本目標回転速度設定手段によって設定される基本目標回転速度とモータ回転速度検出手段によって検出される回転速度との偏差が予め定める速度差よりも大きくなるような操作手段の急操作が行われたときには、その偏差に応じたゲイン変更量が設定されて、予め定める基本制御ゲインにゲイン変更量を加えた値を制御ゲインとして電動モータの駆動制御が行われる。
これにより、通常のステアリング操作に対して電動モータの動作応答性および動作安定性が適当なバランスで満たされるように基本制御ゲインを設定しておけば、操作手段の通常の操作に対しては、電動モータの動作応答性および動作安定性を適当なバランスで満たすことができる。一方、操作手段の急操作に対しては、基本制御ゲインにゲイン変更量が加えられることによって制御ゲインが上げられるので、高い応答性で電動モータの動作(回転速度)を立ち上げることができる。よって、通常では行わないような操作手段の急操作を行っても、その操作開始直後からポンプから十分な油圧を発生させることができ、良好な応答性で操舵補助力を発生させることができる。
【0012】
なお、請求項1の発明と請求項2の発明とが組み合わされてもよい。すなわち、請求項3に記載のように、請求項2のパワーステアリング装置において、当該パワーステアリング装置が、上記目標回転速度設定手段によって設定された目標回転速度と上記モータ回転速度検出手段によって検出された回転速度との偏差に応じた目標回転速度変更量(α)を設定する目標回転速度変更量設定手段(34)をさらに含み、上記モータ制御手段は、上記基本目標回転速度設定手段によって設定された基本目標回転速度に上記目標回転速度変更量設定手段によって設定された目標回転速度変更量を加算して得られる値(Ra+α)を目標回転速度として、当該目標回転速度と上記モータ回転速度検出手段によって検出された回転速度との偏差を求め、当該偏差および上記制御ゲインに基づいて、上記電動モータを駆動制御するものであってもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るパワーステアリング装置の基本的な構成を示す概念図である。このパワーステアリング装置は、車両のステアリング機構1に関連して設けられ、このステアリング機構1に操舵補助力を与えるためのものである。
【0014】
ステアリング機構1は、運転者によって操作されるステアリングホイール11(操作手段)と、このステアリングホイール11に連結されたステアリング軸12と、ステアリング軸12の先端部に設けられたピニオンギヤ13と、車両の左右方向に延びたラック軸14とを備えている。ラック軸14には、ラックギヤ部14aが形成されていて、このラックギヤ部14aにピニオンギヤ13が噛合している。ラック軸14の両端には、タイロッド15がそれぞれ結合されており、このタイロッド15は、それぞれ、舵取り車輪としての前左輪FLおよび前右輪FRを支持するナックルアーム16に結合されている。ナックルアーム16は、キングピン17まわりに回動自在に設けられている。
【0015】
この構成により、ステアリングホイール11が操作されてステアリング軸12が回転されると、この回転がピニオンギヤ13およびラック軸14によって車両の左右方向に沿う直線運動に変換される。この直線運動は、ナックルアーム16のキングピン17まわりの回動に変換されて、前左輪FLおよび前右輪FRの転舵が達成される。
ステアリング軸12には、ステアリングホイール11に加えられた操舵トルクの方向および大きさに応じてねじれを生じるトーションバー21と、このトーションバー21のねじれの方向および大きさに応じて開度が変化する油圧制御弁22とが組み込まれている。油圧制御弁22は、ステアリング機構1に操舵補助力を与えるパワーシリンダ23に接続されている。パワーシリンダ23は、ラック軸14に一体的に設けられたピストン231と、ピストン231によって区画された一対のシリンダ室232,233とを有しており、シリンダ室232,233は、それぞれ、オイル供給/帰還路24,25を介して、油圧制御弁22に接続されている。
【0016】
また、油圧制御弁22は、リザーバタンク26およびオイルポンプ27を通るオイル循環路28の途中部に介装されている。オイルポンプ27は、電動モータ29によって駆動され、リザーバタンク26に貯留されている作動油を汲み出して油圧制御弁22に供給する。
ステアリングホイール11が左方向へ回転操作されると、トーションバー21にねじれが生じ、オイル供給/帰還路25を介して、油圧制御弁22からパワーシリンダ23のシリンダ室233に作動油が供給される。すると、シリンダ室232,233間に油圧差が生じ、この油圧差によって、パワーシリンダ23のピストン231が左方向へ移動する。これにより、ラック軸14に左方向の操舵補助力が作用することになる。逆に、ステアリングホイール11が右方向へ回転操作されたときには、オイル供給/帰還路24を介して、油圧制御弁22からパワーシリンダ23のシリンダ室232に作動油が供給される。そして、シリンダ室232,233間に生じる油圧差によって、パワーシリンダ23のピストン231が右方向へ移動し、ラック軸14に右方向の操舵補助力が作用する。オイルポンプ27から油圧制御弁22に供給された作動油のうち、余剰分の作動油は、油圧制御弁22からオイル循環路28を介してリザーバタンク26に帰還される。また、トーションバー21にねじれがほとんど加わっていない状態では、油圧制御弁22は、いわば平衡状態となり、作動油は、パワーシリンダ23に供給されることなく、オイル循環路28を循環する。
【0017】
電動モータ29は、たとえば、3相ブラシレスモータで構成されており、この電動モータ29の駆動制御は、マイクロコンピュータを含む構成の電子制御ユニット3が駆動回路4をPWM(Pulse Width Modulation)制御することにより達成されるようになっている。駆動回路4は、2個のスイッチング素子(たとえば、パワーMOSFET)の直列回路が3つ並列に接続され、この並列回路が電源としての車載バッテリ5とアースとの間に直列に接続された3相ブリッジインバータ回路の構成を有している。各直列回路は、電動モータ29のU相、V相またはW相に一対一に対応づけられて、2つのスイッチング素子の接続点でそれぞれ対応する相端子に接続されている。
【0018】
電子制御ユニット3には、舵角センサ6、車速センサ7およびモータ角センサ8の出力信号が与えられるようになっている。舵角センサ6は、たとえば、ステアリング軸12に関連して設けられていて、そのステアリング軸12(ステアリングホイール11)が一定角度回転する度にパルス信号を出力する。また、車速センサ7は、一定周期で車速を検出し、その検出した車速に応じた信号を出力する。モータ角センサ8は、たとえば、電動モータ29のロータが一定角度回転する度にパルス信号を出力するものであってもよいし、ロータの回転位置に応じた信号を出力するものであってもよい。
【0019】
電子制御ユニット3にはさらに、駆動回路4内のスイッチング素子の温度(素子温度)を検出する素子温度センサ9の出力信号が与えられるようになっている。素子温度センサ9は、たとえば、サーミスタなどの感熱素子を有しており、所定のスイッチング素子の近傍に配置されていて、そのスイッチング素子の温度に応じた信号を出力する。
図2は、電子制御ユニット3の機能を説明するためのブロック図である。電子制御ユニット3は、マイクロコンピュータが実行するプログラム処理により、舵角センサ6から与えられる信号に基づいて、ステアリングホイール11の舵角速度(単位時間あたりの舵角変化量)を演算する舵角速度演算部31、この舵角速度演算部31が演算する舵角速度、車速センサ7が検出する車速および素子温度センサ9が検出する素子温度に基づいて、電動モータ29の基本目標回転速度Raを設定する基本目標回転速度設定部32、モータ角センサ8から与えられる信号に基づいて、電動モータ29の実回転速度であるモータ回転速度(単位時間当たりの回転角変化量)Rを演算するモータ回転速度演算部33、基本目標回転速度設定部32が設定した基本目標回転速度Raとモータ回転速度演算部33が演算したモータ回転速度Rとの偏差(Ra−R)を求め、その偏差(Ra−R)に応じた目標回転速度変更量αを設定する目標回転速度変更量設定部34、基本目標回転速度設定部32が設定した基本目標回転速度Raと目標回転速度変更量設定部34が設定した目標回転速度変更量αとを加算する加算部35、この加算部35が演算した加算値(Ra+α)とモータ回転速度演算部33が演算したモータ回転速度Rとの偏差(Ra+α−R)を求めて、PI(Proportional-Integral:比例積分)制御演算を行うことにより、その偏差(Ra+α−R)に応じた電動モータ29の制御指令値(駆動電圧値)を設定する制御演算部36(モータ制御手段)、ならびに、この制御演算部36が設定した制御指令値に基づいて、駆動回路4に与えるべき駆動信号を生成する駆動信号生成部37の各機能を実現する。
【0020】
マイクロコンピュータに含まれるROMには、舵角速度−基本目標回転速度の基本特性を定めたマップが記憶されている。舵角速度−基本目標回転速度の基本特性は、図3に示すように、舵角速度が0から所定値δまでの範囲で、基本目標回転速度Raが下限値Rminと上限値Rmaxとの間で単調に増加(この実施形態ではリニアに増加)するように定められている。基本目標回転速度設定部32は、その舵角速度−基本目標回転速度の基本特性を定めたマップをROMから読み出して、車速が大きいほど、舵角速度に対する基本目標回転速度Raの増加の割合が小さくなるように、所定値δを大きな値に変更する。また、素子温度が高いほど、舵角速度−基本目標回転速度特性を表すマップが基本目標回転速度Raの正の方向にシフト(平行移動)されるように、下限値Rminおよび上限値Rmaxを大きな値に変更する。そして、基本目標回転速度設定部32は、その変更後の舵角速度−基本目標回転速度特性に従って、舵角速度に応じた基本目標回転速度Raを設定する。
【0021】
これにより、素速いステアリング操作に対しては、基本目標回転速度Raが大きな値に設定され、パワーシリンダ23のシリンダ室232またはシリンダ室233に作動油が十分な流量で供給されるので、良好な応答性でパワーシリンダ23から操舵補助力を発生させることができる。また、車速が小さいほど、基本目標回転速度Raが大きな値に設定されるので、パワーシリンダ23から大きな操舵補助力を発生させることができる。さらに、素子温度が高いほど、基本目標回転速度Raが大きな値に設定されるので、作動油の油温上昇に伴う粘性低下に起因して操舵補助力が低下するのを防止することができる。
【0022】
制御演算部36によるPI制御のゲインは、通常のステアリング操作(たとえば、車庫入れ時、交差点右左折時、レーンチェンジ時、山岳路走行時に行われるステアリング操作)に対して、基本目標回転速度設定部32によって設定される基本目標回転速度Raを電動モータ29の目標回転速度としたときに、電動モータ29の動作応答性および動作安定性が適当なバランスで満たされるように設定されている。そのため、危険回避のためのステアリングホイール11の急操作など、通常では行われないようなステアリングホイール11の急操作が行われたときには、電動モータの動作に応答遅れが生じ、その結果、運転者がステアリングホイール11の動きにひっかかり感(操舵違和感)を感じるおそれがある。
【0023】
そこで、この実施形態では、図4に示すように、基本目標回転速度設定部32が設定した基本目標回転速度Raとモータ回転速度演算部33が演算したモータ回転速度Rとの偏差(Ra−R)が予め定める速度差D(たとえば、D=200rpm)よりも大きくなるようなステアリングホイール11の急操作が行われたときには、目標回転速度変更量設定部34によって、その偏差(Ra−R)に応じた目標回転速度変更量αが設定されて、基本目標回転速度Raに目標回転速度変更量αを加えた値(Ra+α)が電動モータ29の目標回転速度とされる。目標回転速度変更量αは、図4に示すように、基本目標回転速度Raとモータ回転速度Rとの偏差(Ra−R)が速度差Dよりも大きな値をとる範囲で、偏差(Ra−R)の増加に対して零から単調に増加(この実施形態ではリニアに増加)するように設定される。
【0024】
これにより、通常のステアリング操作に対しては、電動モータ29の動作応答性および動作安定性を適当なバランスで満たすことができ、ステアリングホイール11の急操作に対しては、高い応答性で電動モータ29の動作(回転速度)を立ち上げることができる。よって、通常では行わないようなステアリングホイール11の急操作を行っても、そのステアリング操作の開始直後からパワーシリンダ23に作動油を十分な流量で供給することができ、良好な応答性でパワーシリンダ23から操舵補助力を発生させることができる。
【0025】
図5は、この発明の他の実施形態について説明するためのブロック図である。この図5において、図2に示す各部に相当する部分には、図2の場合と同一の参照符号が付されている。
上記の実施形態では、基本目標回転速度Raとモータ回転速度Rとの偏差(Ra−R)が予め定める速度差Dよりも大きくなるようなステアリングホイール11の急操作が行われたときには、その偏差(Ra−R)に応じた目標回転速度変更量αが設定されて、基本目標回転速度Raに目標回転速度変更量αを加えた値(Ra+α)が電動モータ29の目標回転速度とされるとした。これに対し、この実施形態に係るパワーステアリング装置では、基本目標回転速度Raとモータ回転速度Rとの偏差(Ra−R)が予め定める速度差Dよりも大きくなるようなステアリングホイール11の急操作が行われたときには、その偏差(Ra−R)に応じたゲイン変更量βが設定されて、予め定める基本制御ゲインGにゲイン変更量βを加えた値(G+β)が制御演算部36によるPI制御のゲインに設定される。
【0026】
すなわち、この実施形態に係る電子制御ユニット3は、マイクロコンピュータが実行するプログラム処理により、舵角速度演算部31、基本目標回転速度設定部32、モータ回転速度演算部33、基本目標回転速度設定部32が設定した基本目標回転速度Raとモータ回転速度演算部33が演算したモータ回転速度Rとの偏差(Ra−R)を求め、その偏差(Ra−R)に応じたゲイン変更量βを設定するゲイン変更量設定部38、ゲイン変更量設定部38が設定したゲイン変更量βを予め定める基本制御ゲインGに加算して、制御演算部36によるPI制御のゲインを演算するゲイン演算部39、基本目標回転速度Raとモータ回転速度Rとの偏差(Ra−R)を求めて、ゲイン演算部39が演算したゲインに基づいてPI(Proportional-Integral:比例積分)制御演算を行うことにより、その偏差(Ra−R)に応じた電動モータ29の制御指令値を設定する制御演算部36、および、駆動信号生成部37の各機能を実現する。
【0027】
基本目標回転速度Raとモータ回転速度Rとの偏差(Ra−R)とゲイン変更量βとの関係は、図6に示すように、基本目標回転速度Raとモータ回転速度Rとの偏差(Ra−R)が速度差Dよりも大きな値をとる範囲で、ゲイン変更量βが偏差(Ra−R)の増加に対して零から単調に増加(この実施形態ではリニアに増加)するように設定されて、マップの形式でマイクロコンピュータに備えられたROMに記憶されている。ゲイン変更量設定部38は、その図6に示す関係に従って、偏差(Ra−R)に応じたゲイン変更量βを設定する。これにより、偏差(Ra−R)が大きいほど、制御演算部36によるPI制御のゲインが大きく設定されるので、電動モータ29(図1参照)の回転速度が高い応答性で立ち上げられる。
【0028】
この構成によっても、通常のステアリング操作に対しては、電動モータ29の動作応答性および動作安定性を適当なバランスで満たすことができ、ステアリングホイール11の急操作に対しては、高い応答性で電動モータ29の動作を立ち上げることができる。よって、通常では行わないようなステアリングホイール11の急操作を行っても、そのステアリング操作の開始直後からパワーシリンダ23に作動油を十分な流量で供給することができ、良好な応答性でパワーシリンダ23から操舵補助力を発生させることができる。
【0029】
以上、この発明の2つの実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することも可能である。たとえば、第1の実施形態と第2の実施形態とが組み合わされて、基本目標回転速度Raとモータ回転速度Rとの偏差(Ra−R)が予め定める速度差Dよりも大きくなるようなステアリングホイール11の急操作が行われたときには、その偏差(Ra−R)に応じた目標回転速度変更量αが設定されて、基本目標回転速度Raに目標回転速度変更量αを加えた値(Ra+α)が電動モータ29の目標回転速度とされるとともに、偏差(Ra−R)に応じたゲイン変更量βが設定されて、予め定める基本制御ゲインGにゲイン変更量βを加えた値(G+β)が制御演算部36によるPI制御のゲインに設定されるようにしてもよい。
【0030】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係るパワーステアリング装置の基本的な構成を示す概念図である。
【図2】電子制御ユニットの機能を説明するためのブロック図である。
【図3】舵角速度に対する基本目標回転速度の基本特性を示す図である。
【図4】基本目標回転速度とモータ回転速度との偏差に対する目標回転速度変更量の特性を示す図である。
【図5】この発明の他の実施形態について説明するためのブロック図である。
【図6】基本目標回転速度とモータ回転速度との偏差に対するゲイン変更量の特性を示す図である。
【符号の説明】
1 ステアリング機構
3 電子制御ユニット
11 ステアリングホイール(操作手段)
27 オイルポンプ
29 電動モータ
32 基本目標回転速度設定部(基本目標回転速度設定手段、目標回転速度設定手段)
33 モータ回転速度演算部(モータ回転速度検出手段)
34 目標回転速度変更量設定部(目標回転速度変更量設定手段)
35 加算部
36 制御演算部(モータ制御手段)
38 ゲイン変更量設定部(ゲイン変更量設定手段)
39 ゲイン演算部
Claims (3)
- 操作手段の操作に応じて電動モータを制御し、この電動モータにより駆動されるポンプの発生油圧によって操舵補助力を発生させるパワーステアリング装置であって、
上記操作手段の操作に応じた上記電動モータの基本目標回転速度を設定する基本目標回転速度設定手段と、
上記電動モータの回転速度を検出するモータ回転速度検出手段と、
上記基本目標回転速度設定手段によって設定された基本目標回転速度と上記モータ回転速度検出手段によって検出された回転速度との偏差が予め定める速度差よりも大きいことを条件に、その偏差に応じて、当該偏差の増加に対して零から単調に増加するように目標回転速度変更量を設定する目標回転速度変更量設定手段と、
上記基本目標回転速度設定手段によって設定された基本目標回転速度に上記目標回転速度変更量設定手段によって設定された目標回転速度変更量を加算して得られる値を目標回転速度として、上記電動モータを駆動制御するモータ制御手段と
を含むことを特徴とするパワーステアリング装置。 - 操作手段の操作に応じて電動モータを制御し、この電動モータにより駆動されるポンプの発生油圧によって操舵補助力を発生させるパワーステアリング装置であって、
上記操作手段の操作に応じた上記電動モータの基本目標回転速度を設定する基本目標回転速度設定手段と、
上記電動モータの回転速度を検出するモータ回転速度検出手段と、
上記基本目標回転速度設定手段によって設定された基本目標回転速度と上記モータ回転速度検出手段によって検出された回転速度との偏差が予め定める速度差よりも大きいことを条件に、その偏差に応じたゲイン変更量を設定するゲイン変更量設定手段と、
予め定める基本制御ゲインに上記ゲイン変更量設定手段によって設定されたゲイン変更量を加算して得られる値を制御ゲインとして、上記基本目標回転速度設定手段によって設定された基本目標回転速度と上記モータ回転速度検出手段によって検出された回転速度との偏差に基づいて、上記電動モータを駆動制御するモータ制御手段と
を含むことを特徴とするパワーステアリング装置。 - 上記パワーステアリング装置は、上記基本目標回転速度設定手段によって設定された基本目標回転速度と上記モータ回転速度検出手段によって検出された回転速度との偏差に応じた目標回転速度変更量を設定する目標回転速度変更量設定手段をさらに含み、
上記モータ制御手段は、上記基本目標回転速度設定手段によって設定された基本目標回転速度に上記目標回転速度変更量設定手段によって設定された目標回転速度変更量を加算して得られる値を目標回転速度として、当該目標回転速度と上記モータ回転速度検出手段によって検出された回転速度との偏差を求め、当該偏差および上記制御ゲインに基づいて、上記電動モータを駆動制御するものであることを特徴とする請求項2記載のパワーステアリング装置。
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