JP4175970B2 - グロープラグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、グロープラグに関し、詳しくはディーゼルエンジンなどの始動促進用に、エンジンの燃焼室などに取り付けられるグロープラグに関する。
【0002】
【従来の技術】
図7は、このようなグロープラグ100の1例を示したものである。このものは、通電することによって発熱する発熱部91をセラミックなどの絶縁部材93内に備えてなるヒーター101が、筒状(管状)をなす金属製本体(以下、単に本体ともいう)103の先端寄り部位103aに固定されている。同図のものにおけるその固定は、金属筒105にヒーター(以下、セラミックヒーターともいう)101を内挿してロウ材によって固定した後、この金属筒105を本体103にロウ付けするなどによって行われている。このものでは、ヒーター101の一方(図示左)の電極95が金属製本体103に金属筒105を介して電気的に接続されている。そして、他方(図示右)の電極97が、金属製本体103内において、ヒーター101の後端より後方に配置され、金属製本体103と絶縁されたリード用軸部材107を介して外部接続端子109に電気的に接続(以下、単に接続ともいう)されている。同図においてヒーター101の他方の電極97とリード用軸部材107とは中継線(例えばコイル状の配線)99を介して接続されている。
【0003】
このようなリード用軸部材107は、本体103の後端寄り部位において、外周面にガラス111をリング状に充填して、本体103との絶縁を保持するとともに、ブッシュ113や固定リング115などで固定されている。なお、本明細書において、グロープラグ又はその構成部材に関して先端というときは、同図における下方の端をいい、逆に後端とは同図における上方の端をいう。
【0004】
このようなグロープラグ100は、そのリード用軸部材107が剛性のある鉄系金属からなり、太さが直径で数mmと太いことから、曲りにくく、しかも、電気的特性にすぐれている。したがって、本体103と共にこのリード用軸部材107を長くすることで、ヒーター101と外部接続端子109間の寸法を大きくとることができる。このため、グロープラグ100の長寸化が容易であり、燃料直噴型エンジンへの取り付け用のものに好適である。ところが、このようなリード用軸部材107は細いリード線と異なり重量がある。一方でその固定は、本体103の後端(発熱側の端と反対側の端)寄り部位に充填されたガラス111に依存している。ここで、本体103の後端寄り部位での固定となるのは、次の理由による。このグロープラグ100の組立は、ヒーター101とこれに接続されたリード用軸部材107を本体103内に組込んだ後で、リング状のガラス(肉厚円筒状の粉体プレス体)111をリード用軸部材107に外嵌、装填するという作業手順となる。このため、ガラスのセット位置は後端寄り部位にならざるをえない。これがその主な理由である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記した従来のグロープラグ100におけるリード用軸部材107の固定構造では基本的にその固定力が小さいといった問題があった。しかも、その固定は後端寄り部位のいわば片持ち状態での固定となるため、エンジンの燃焼過程における熱衝撃等によって同軸部材が共振し易く、これによって破断等してショートや断線を招く恐れがあるといった問題があった。すなわち、グロープラグはエンジンの振動や爆風或いは熱衝撃に晒されているため、このようなリード用軸部材107の固定構造では、それが本体103内で弛緩し、或いは折損や破断を起して短絡を招くなどの故障の原因となることがある。そして、こうした問題は、リード用軸部材が長くなるほど発生しやすくなり、したがって、グロープラグの長寸化を妨げる理由ともなっていた。
【0006】
加えて、リード用軸部材107をこのようにガラスによって固定する場合には、グロープラグの組立ての最終工程で、ガラスを同軸部材107に外嵌めし、本体103の後端部内に嵌め込んだ後で、それを加熱溶融する工程を要する。このような熱処理は工程の複雑化を招き、高コスト化の原因でもある。しかも、グロープラグの各構成部材(部品)、及び部位には、その熱処理に対する耐熱性を考慮した設計をしなければならず、したがって、その分、設計の自由度が奪われていた。
【0007】
本発明は、こうした従来のグロープラグにおける問題点に鑑みてなされたもので、ガラスの加熱、溶融のための熱処理を要することなく、リード用軸部材を本体内に絶縁を保持して、強固に固定できる構造のグロープラグを提供することをその目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために請求項1に記載の発明は、通電することによって発熱する発熱部を絶縁部材内に備えてなるヒーターが、筒状をなす金属製本体の先端寄り部位に固定され、一方の電極が該金属製本体に電気的に接続され、他方の電極が、該金属製本体内において前記ヒーターの後端より後方に該金属製本体と絶縁されて配置されたリード用軸部材に電気的に接続されてなるグロープラグにおいて、
前記リード用軸部材は、大径軸部と小径軸部を有しており、前記金属製本体の内周面と、前記リード用軸部材の外周面との間であって、前記大径軸部の外周面に絶縁層を介在させ、該絶縁層の介在された部位において該大径軸部の外周面に変形(変形痕)を有するように該大径軸部が径方向に該金属製本体の内周面で締付けられて前記リード用軸部材が該金属製本体内に絶縁を保持して固定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明では、金属製本体の内周面で締付けられる(径方向に押圧される)ことによってリード用軸部材が固定されている構造のため、その固定に熱処理を要しない。また、リード用軸部材(以下、単に軸部材ともいう)の外周面に、変形を有するように金属製本体の内周面で締付けられて固定されているため、強固な固定が得られる。しかも、その固定部位は、ガラスによる固定の場合のように、リード用軸部材の後端寄り部位に制限されることもない。ここに、その締付けは、グロープラグとして組立てられている状態において、本体の内周面で軸部材が締付けられていればよい(締り嵌め状態にあればよい)。したがって、その締付けの方法(手段)は限定されるものではない。例示的には、金属製本体を径方向に挟み付けるように、圧縮(加圧)するなどによる、かしめ(カシメ)によるのが製造上からして効率的であり好ましい。
【0010】
請求項2に記載の発明は、通電することによって発熱する発熱部を絶縁部材内に備えてなるヒーターが、筒状をなす金属製本体の先端寄り部位に固定され、一方の電極が該金属製本体に電気的に接続され、他方の電極が、該金属製本体内において前記ヒーターの後端より後方に該金属製本体と絶縁されて配置されたリード用軸部材に電気的に接続されてなるグロープラグにおいて、
前記リード用軸部材は、大径軸部と小径軸部を有しており、前記金属製本体の内周面と、前記リード用軸部材の外周面との間であって、前記大径軸部の外周面に絶縁層を介在させ、該絶縁層の介在された部位において該大径軸部の外周面に変形(変形痕)を有するように該金属製本体が径方向にかしめられて前記リード用軸部材が該金属製本体内に絶縁を保持して固定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、通電することによって発熱する発熱部を絶縁部材内に備えてなるヒーターが、筒状をなす金属製本体の先端寄り部位に固定され、一方の電極が該金属製本体に電気的に接続され、他方の電極が、該金属製本体内において前記ヒーターの後端より後方に該金属製本体と絶縁されて配置されたリード用軸部材に電気的に接続されてなるグロープラグにおいて、
前記金属製本体の内周面と、前記リード用軸部材の外周面との間であって、該リード用軸部材の軸方向における少なくとも一部に、絶縁層を介在させ、該絶縁層の介在された部位において該リード用軸部材の外周面に凹状をなす変形を有し、かつその変形に前記金属製本体の内周面が前記絶縁層を介して入り込む形態の変形を有するように該金属製本体の内周面で締付けられて前記リード用軸部材が該金属製本体内に絶縁を保持して固定されていることを特徴とする。
【0012】
このものでは、該絶縁層の介在された部位において該リード用軸部材の外周面に凹状をなす変形を有し、かつその変形に前記金属製本体の内周面が前記絶縁層を介して入り込む(嵌り込む)形態の変形を有するように該金属製本体の内周面で締付けられている。したがって、軸部材の極めて高い固定が得られる。また、この発明においても、その締付けは、本体を径方向に圧縮(加圧)することによる、カシメによるのが製造上、効率的である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、通電することによって発熱する発熱部を絶縁部材内に備えてなるヒーターが、筒状をなす金属製本体の先端寄り部位に固定され、一方の電極が該金属製本体に電気的に接続され、他方の電極が、該金属製本体内において前記ヒーターの後端より後方に該金属製本体と絶縁されて配置されたリード用軸部材に電気的に接続されてなるグロープラグにおいて、
前記金属製本体の内周面と、前記リード用軸部材の外周面との間であって、該リード用軸部材の軸方向における少なくとも一部に、絶縁層を介在させ、該絶縁層の介在された部位において該リード用軸部材の外周面に凹状をなす変形を有し、かつその変形に前記金属製本体の内周面が前記絶縁層を介して入り込む形態の変形を有するように該金属製本体がかしめられて前記リード用軸部材が該金属製本体内に絶縁を保持して固定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5は、前記絶縁層が、前記リード用軸部材に外嵌してなる樹脂チューブによって形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のグロープラグである。請求項6の本発明は、前記樹脂チューブが、フッ素樹脂製であることを特徴とする請求項5に記載のグロープラグである。請求項7の本発明は、前記絶縁層が、前記リード用軸部材の外周面に塗布してなる樹脂コーティング層であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のグロープラグである。
【0015】
前記絶縁層は、絶縁が保持されるものである限り、その材質は限定されるものではない。したがって、例えば、前記リード用軸部材を、鉄系金属製のものとし、絶縁層は、その外周面に形成された酸化被膜層としてもよい。しかし、請求項5〜7に記載のようにすれば、絶縁層を介在させるのが容易である。また、前記絶縁層は、グロープラグにおいて、その本体の内周面と、前記リード用軸部材の外周面との間に存在していればよいことから、グロープラグの組立て(完成品)前には本体の内周面に形成されていてもよいし、軸部材の外周面に形成されていてもよい。
【0016】
なお、絶縁層を樹脂で形成する場合、その材質は、耐熱性、強度などを考慮して選定する。エンジンに取付けられるグロープラグの温度は150℃以上になることがあるため、200℃以上の耐熱性があるものとするのが好ましい。ただし、本発明では、本体の内周面で絶縁層も、かしめ等によって締付けられるから、その締付け(以下、「かしめ」ともいう)において、破損、ないし破壊されにくい、変形の容易な軟質のものとするのが適切である。これらを考慮すると、例示的には、スーパーエンプラ材料と呼ばれるPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリイミド系樹脂をはじめとして、汎用エンプラ材料であるポリアミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)が挙げられる。また、チューブ材としては、シリコンも使用可能であるが、フッ素系樹脂材料を用いると、金具本体のかしめられる時の破損を最小限に留めることができるので、より好ましい。
【0017】
請求項8に記載の発明は、前記絶縁層の厚さを、0.01mm〜0.5mmの範囲としたことを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のグロープラグである。前記絶縁層を樹脂とする場合において、その厚さは、リード用軸部材の固定後において、本体とリード用軸部材との絶縁が保持される厚さで、なるべく薄いものとするのが好ましい。これが厚いと、本体による軸部材の締付けにおける変形が絶縁層の層内で発生し易いが、軸部材に変形を与えにくい。絶縁層を樹脂とする場合において、その厚さは、0.01mm〜0.5mmの範囲が適切である。
【0019】
リード用軸部材には、通常、ストレートの、同径の円断面のものが使用される。しかし、請求項1又は2に記載の発明のもののように、大径軸部と小径軸部を有しているものを使用し、前記絶縁層が該大径軸部の外周面に介在させられ、前記リード用軸部材の変形が該大径軸部の外周面に存在するようにすると、本体に、ストレートの同径の円断面の内周面をもつものを使用する場合には、締付けられる部位以外では、本体の内周面と軸部材の外周面との間の間隙を大きくとれる。したがって、絶縁層の厚さを薄く設定できるし、短絡防止にも有効である。
【0020】
請求項9に記載の発明は、前記金属製本体は、エンジンへねじ込み方式で取付けるための雄ネジを備えており、該雄ネジよりも後端寄り部位において、前記リード用軸部材が該金属製本体内に絶縁を保持して固定されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のグロープラグである。
【0021】
該金属製本体のうち、その雄ネジよりも先端寄り部位においてリード用軸部材を金属製本体内に、かしめ等による締付けによって固定する場合には、その締付けによる金属製本体の変形により、締付けている部位の軸が雄ネジの軸線に対して偏心(心ずれ、或いは振れ)を生じる可能性がある。一方、このようなグロープラグが挿入されてねじ込み方式で取付けられるのは、エンジン(ブロツク)に設けられた取付け穴であり、この取付け穴は小径で深い(長い)。そして、雌ネジは取付け穴の外部開口寄り部位に設けられる。しかも、この取付け穴はグロープラグ対し径方向に微小なすきま嵌め状態が得られる設計とされる。このため、上記のような偏心が大きくなると、そのねじ込みにおいて、グロープラグの外周面が取付け穴の内周面に干渉ないし接触する危険性がある。これに対して、該雄ネジよりも後端寄り部位において固定する場合には、その後端寄り部位は、エンジンブロツクの外部に露出することになるため、このような問題を生じない。したがって、本体をかしめるとしても、十分に大きな力を付与できるため、強固な固定が得られる。これにより、エンジンへの取付け後において、そのリード用軸部材に直接又は間接的に接続されるリード(配線コード)の脱着を行なう場合においても、緩みを招くことのない十分な強度を保持できる。
【0022】
請求項10に記載の発明は、前記リード用軸部材が、その軸方向における複数箇所で該金属製本体内に絶縁を保持して固定されていることを特徴とする、請求項1〜9いずれか1項に記載のグロープラグである。
【0023】
小型軽量化の要請により、グロープラグについても、その外径(太さ)を小さくする要請が高まっている。この要請に応えるためには、リード用軸部材の径が一定であれば、金属製本体の筒部の肉厚を薄くせざるを得ない。しかし、そのようにすると、基本的に同本体の強度の低下を招き、結果としてグロープラグの強度(剛性)不足を招いてしまう。しかし、請求項10に記載の発明のように、軸方向における複数箇所で金属製本体内にリード用軸部材を固定することで、リード用軸部材が、いわば心金となって、本体とともにグロープラグ全体の強度或いは剛性のアップを図ることができる。すなわち、このような構成とすることで、本体の肉厚が薄くなっても、グロープラグ全体としての強度アップが図られるから、本体の肉厚を薄くでき、グロープラグの小型軽量化が図られる、という特有の効果が得られる。
【0024】
なお、いずれの発明においても、前記絶縁層の介在された部位において該リード用軸部材の外周面に変形を有するように金属製本体の内周面にて軸部材を締付け、或いは、該金属製本体をかしめる位置は、所望とする固定力が得られるように設定すればよい。なお、軸方向における、締付け領域、或いは、かしめ領域の範囲は、その位置、数、リード用軸部材の長さ、或いは必要な固定力に応じて適宜に設定すればよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態を図1〜図3に基いて詳細に説明する。図中1は、ディーゼルエンジン用のグロープラグであり、全体が筒状(管状)に形成された、例えば炭素鋼からなる本体103と、セラミックヒーター101、リード用軸部材107などから構成されている。本体103は、内周面104が軸方向(長手方向)の略全域においてストレート(同径)の細長い段付き円筒状をなしている。そして、先端(図示下端)寄り部位は、外周面もストレートの円筒部103aとされ、この円筒部103aより後端(図示上端)寄り部位には、エンジンにねじ込み方式で固定するための雄ネジ103bが形成され、そのさらに後方には後方円筒部103cを介し、詳しくは図示しないが、エンジンへのねじ込みにおいて工具を掛けるための工具係合部103dが径大の六角状に形成されている。なお、本体103の後端寄り部位の内側には気密材を装填するための装填部103eが拡径状に形成されている。ただし、このような本体103は、グロープラグ1の完成状態では、先端寄り部位における円筒部103aと、その後方における雄ネジ103bとの間(軸方向における略中間部)が、径方向にかしめられており、かしめ部103fをなしている。これにより、かしめ部103fは、例えば、多角形状(六角形又は八角形など)のかしめ用のダイスの押圧面にて押圧(加圧)されているため、その押圧面に倣うように若干凹状に凹む形に変形している。詳しくは後述する。なお、本体103は、S45C、SUM24L、SWCH6又はSUS430などから形成されており、リード用軸部材107は本体103より軟質の鋼材から形成されている。
【0026】
このような本体103の内側(内周面)の先端寄り部位には、円柱状のセラミックヒーター101がその先端寄り部位を突出させて配置されている。本形態において、セラミックヒーター101は、絶縁性セラミック93内に、先端側においてU字状に折り返し曲げられた形の発熱部91が埋設され、その各端部には電極をなす配線(高融点金属リード)が接続されており、セラミックヒーター101の後端寄り部位の両側面に各電極95、97が露出状に設けられている。なお、セラミックヒーター101の軸線方向における中間部位には金属筒105が外嵌めされ、ロウ材により固定されて一体化されており、後述するようにして、その金属筒105を介して本体103の先端寄り部位の円筒部103aの内周面104にロウ付けにより固定されている。こうして、ヒーター101は、本体103内に固定された状態において、その図示左側の電極95が金属筒105を介して本体103と電気的に接続されている。
【0027】
一方、リード用軸部材107は、本体103内のセラミックヒーター101の後端101bよりも後方に配置されている。この軸部材107は、例えばS45C材からなり、略全長にわたってストレートで一定の円断面をなす丸棒から形成されている。そして、周囲には本体103の内周面104と絶縁用の空隙が保持され、同軸部材107は本体103内に同心状に配置されている。また、リード用軸部材107は、その中間より先端寄り部位の一部に絶縁層(絶縁膜)106がその外周面(表面)108を覆うように円筒状に形成されている。本形態において絶縁層106は軟質の樹脂とされ、組立前において、リード用軸部材107のその外周面108に、例えば樹脂製チューブが外嵌されて、熱収縮により一体化されている。なお、絶縁層をなす樹脂は、フッ素系樹脂であることが望ましく、例えばポリフッ化ビニリデン樹脂である、商品名スミチューブK(住友電工ファインポリマー(株)製)とされ、0.15mmの厚さとなるように形成されている。
【0028】
ただし、グロープラグ(完成品)1は、前記もしたように、かしめにより、その絶縁層106の部位において、本体103の外周面が若干凹状に凹む形をなし、それに対応して内周面104が軸線側に若干凸となすように膨らむ形をなしており、軸部材107の外周面を絶縁層106を介して締付けている。そして、そのかしめにより軸部材107の外周面も本体103の横断面に倣うように凹状をなす形の変形107aを有している。なお、かしめ部(変形部)103fに対応する本体103の内周面104が、その変形107aに絶縁層106を介して入り込んでいる。また、同軸部材107の先端寄り部位は小径部107bとされ、この小径部107bと、セラミックヒーター101の後端101bに露出する他方の電極97とがコイル状の中継線99を介して接続されている。なお、中継線99は銀ロウ付けされている。また、リード用軸部材107の後端部107cは本体103の後端から突出しており、本形態では突出しているその後端部107cが外部接続端子をなしている。なお、かしめは、本体が、縮径されるように多角形状になる程度の強い力による、いわゆる強かしめを行ない、そのかしめにより軸部材107も、本体103の内周面の凸となす変形に倣う多角形状にその断面が縮径されるようにしてもよい。
【0029】
一方、このような軸部材107の後端寄り部位の外周には、絶縁材からなるリング状の絶縁ブッシュ113が嵌着され、軸部材107と本体103との絶縁が確保されている。ただし、この絶縁ブッシュ113は、本体103の後端寄り部位の内周面の拡径された装填部103eに装填されている。そして軸部材107の突出する後端部107cに固定用筒部材109がその筒部109aを介して外嵌状に取付けられている。そして、この筒部109aにて絶縁ブッシュ113を先端側に押し込む状態としつつ、筒部109aを半径方向にかしめることで固定用筒部材109を軸部材107に、後端部(以下、外部接続端子ともいう)107cを突出させて固定している。このようなグロープラグ1は、ヒーター101の先端が燃焼室内に位置するように、その雄ネジを介してエンジンにねじ込み方式で固定される。そして、外部接続端子107cから、リード用軸部材107、中継線99、発熱部91、そして本体103へと電流を流すことで、ヒーター101の先端を発熱し、燃料の着火を促進するようにされている。
【0030】
さて、このようなグロープラグ1は、上記したように、リード用軸部材107をその外周面108に形成された絶縁層106の部分で、本体103を半径方向に圧縮してかしめた構造をしている。そして、リード用軸部材107の外周面108には凹状の変形107aが発生している。すなわち、本体103の内周面で軸部材107を径方向に締付けている。また、かしめによって本体103のみが変形しているのではなく、リード用軸部材107が絶縁層106の部分で変形(凹部)107aを有しており、この変形107aに金属製本体103の内周面104のかしめ部103fに対応する部分が絶縁層106を介して入り込んでいる。したがって、例えば、本体103を固定し、軸部材107に軸方向に大きな外力が作用しても、軸部材107の変形箇所において軸部材107と本体103とが係合していることから、そのような外力にも十分抗することができる。また、本形態では、横断面において(軸線方向から見て)、例えば六角形をなすようにかしめられているため、軸部材107に周方向に外力が作用しても、その外力にも抗することができる。
【0031】
さらに、かしめによる締付けにより、本体103の内周面104と、軸部材107の外周面108との間における軸方向の空隙が、絶縁層106を介して遮断されるため、その間の気密保持も図られる。なお、絶縁層106が厚いと、かしめによる変形がその絶縁層には及ぶが、軸部材107に与えられない危険性があり、その場合には、固定力が低下する。したがって、本発明における絶縁層106は、絶縁保持に支障のない範囲でなるべく薄めに設定するとよい。
【0032】
このように、本形態のグロープラグ1によれば、従来のように、リード用軸部材の外周面と本体後端寄り部位における内周面との間におけるガラスによる同軸部材の固定構造ではない。したがって、熱処理も不要であり、しかも上記したかしめによる固定構造のため、軸部材に強度のある固定が得られる。
【0033】
なお、前記形態のグロープラグ1は、次のようにして組立てられる(図2参照)。まず、軸部材107の所定部位に所定の厚さ、内径、及び長さを有する前記樹脂製チューブを嵌めて加熱して熱収縮させ、その表面108に密着させて絶縁層106を設ける。そして、ヒーター101の他方の電極97と軸部材107とを中継線99を介して接続しておく。次いで、金属筒105にヒーター101を内挿してロウ付けして一体化する。このようにして、図2−Aに示したヒーター101と軸部材107の組立て体を作る。そして、このような組立体を図2−Bに示したように、本体103内に内挿して位置決めした後、金属筒105を介して本体103にロウ付けする。そして、かしめ装置の例えば軸方向から見て六角を二分割してなるダイスDによって、かしめ部103fの位置を半径方向に圧縮してかしめる。その後、絶縁ブッシュ113をセットし、固定用筒部材109を軸部材107の後端部107cに嵌合し、固定用筒部材109の筒部109aをかしめることで、図1に示したグロープラグ1となる。
【0034】
さて次ぎに本発明の第2の実施の形態について、図3及び図4に基づいて説明する。ただし、このグロープラグ21は、前形態のものと、リード用軸部材107及びこれに設けられている絶縁層106が相違するだけであり、本質的な相違はないので、同一部位には同一の符号を付し、その相違点を中心として説明する。
【0035】
すなわち、本形態では、図4に示したように、かしめ前において、軸部材107が、かしめ部103fに対応する部分を含む軸線方向の所定範囲にわたって、他より太い大径軸部127とされている。そして、グロープラグ21の完成品では、図3に示したように、その大径軸部127の外周面と、本体103の内周面104との間に絶縁層106が介在され、その絶縁層106のある部位において、大径軸部127の外周面に変形107aが存在するように本体103がかしめられている。こうして、軸部材107は、金属製本体103の内周面104で締付けられて金属製本体内に絶縁を保持して固定されている。このような、本形態のグロープラグ21は、かしめる前における本体103は、前記形態と同様、その内周面104が同一寸法の円断面でストレートのものである。しかし、リード用軸部材107のかしめ前における形状は、図4に示したように、前記形態におけるかしめ部103fに対応する、軸線方向における所定範囲が大径の大径軸部127とされ、それ以外は、それと同心で小径の小径軸部128とされている。そして、絶縁層106は、この大径軸部127の外周面及びそれに連なる上下の小径軸部の一部に設けられたものである。
【0036】
しかして、このような絶縁層106の設けられたリード用軸部材107を用いて、前記形態と同様にして組立体をつくり、これを図4に示したようにして本体103内に内挿して位置決めした後、金属筒105を介して本体103にロウ付けする。そして、その絶縁層106のある大径軸部127の外周面が変形するように本体103を前記形態と同様にかしめたものである。このような本形態では、前記形態の効果に加えて、次の特有の効果もある。
【0037】
すなわち、このようなグロープラグ21においては、本体103をかしめて軸部材を固定する構造のため、かしめ部103fに対応する本体103の内周面104と、軸部材107の外周面108との間の間隔は、絶縁層106による絶縁確保や組立上に支障のない範囲で小さめにしたい要請がある。しかし、前記形態のように、本体103の内周面104と、軸部材107の外周面108ともに、一定の直径でストレートとしたものでは、その間隔を小さくするほど、絶縁層106のない部位での短絡の危険性が増大する。これに対して、本形態では、そのような短絡の危険性もなく、しかも、かしめ部103に対応する本体103の内周面104と、軸部材107の外周面108との間の間隔を小さく設定できる、という効果がある。
【0038】
さて次ぎに、本発明の第3の実施の形態について、図5に基づいて説明する。ただし、本形態のグロープラグ31は、本体103をかしめてリード用軸部材107を固定する箇所を、軸方向における2箇所で実施した点のみが、上記した図1の実施形態のものと相違するだけである。したがって、相違点についてのみ説明し、同一部位には、同一の符号を付すに止める。
【0039】
すなわち、このものでは、リード用軸部材107の軸方向における、2つの領域部分に絶縁層106を設け、その各絶縁層106のある部位において、リード用軸部材107の外周面に変形107aを有するように本体103をかしめて、軸部材107を本体103内に絶縁を保持して固定したものである。本形態では本体103におけるかしめ部103fを2箇所とした分、その固定強度の格段の向上が図られる。リード用軸部材107が長い場合に好適である。なお、必要に応じて3箇所以上で固定してもよい。また、本形態でも、リード用軸部材107に、大径軸部と小径軸部を有するものを用い、絶縁層をその大径軸部の外周面に形成し、軸部材の変形をこの大径軸部の外周面において複数箇所で存在するように本体をかしめてもよい。
【0040】
次に本発明の第4の実施の形態について、図6に基づいて説明する。ただし、本形態のグロープラグ41は、本体103をかしめてリード用軸部材107を固定する箇所を、雄ネジ103bと工具係合部103dとの間に形成された後方円筒部103cとした点のみが、前記した実施の形態と相違するだけである。すなわち、前記形態における、2箇所のかしめ部位を図5における上の1箇所のみとした点が構造において相違するだけである。したがって、このものと同一の部位には同一の符号を付し、その相違点のみについて説明する。
【0041】
すなわち、このものでは、リード用軸部材107の軸方向における、後方円筒部103c領域部分に絶縁層106を設け、その絶縁層106のある部位において、リード用軸部材107の外周面に変形107を有するように本体103をかしめて、軸部材107を本体103内に絶縁を保持して固定したものである。本形態では、このように、かしめの部位を雄ネジ103bよりも後方としたため、リード用軸部材107の強い固定が得られる強かしめを問題なく実施できる。すなわち、このような、位置のかしめ部位は、グロープラグ41をエンジンの取付け穴にねじ込み方式で取付けた際には外部に露出する。このため、かしめ部位が雄ネジ103bの軸線に対して偏心していても大きな問題はなく、したがって、問題なく強かしめを行なうことができる。これにより、前記もした様に、リード用軸部材107の後端に接続される配線コード(図示せず)の脱着に起因する、同軸部材の本体からの弛緩防止に有効である。
【0042】
なお、上記した各実施の形態においては、本体をかしめることによってリード用軸部材を固定した場合で説明したが、本発明においては、固定手段はこのようなかしめに限定されるものではない。すなわち、本発明においては、絶縁層の介在された部位においてリード用軸部材の外周面に変形(変形痕)を有するように金属製本体の内周面で締付けられてリード用軸部材が金属製本体内に絶縁を保持して固定されていればよい。そして、ここに、その締付けは、上記もしたように、グロープラグとして組立てられている状態において、本体の内周面で軸部材が締付けられていればよい。その締付けの方法はかしめに限定されるものではない。かしめとはいえないような、金属製本体を径方向に圧縮状に変形させたものであってもよい。
【0043】
なお、本発明は、上記した各実施例のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々設計変更できる。例えば、絶縁層は、グロープラグにおいて、金属製本体の内周面と、リード用軸部材の外周面との間に介在させられていればよく、したがって、組立前において、前記形態のように軸部材の表面に形成することに限定されるものではない。本体の内周面に予め形成しておいてもよいし、本体の内周面及び軸部材の外周面の双方に形成しておいてもよい。また、このような絶縁層は、いずれの方法で形成してもよい。フイルムの貼り付けとしてもよいし、液状の樹脂を塗布することで形成してもよい。また、粉体樹脂を静電塗で形成してもよいし、スプレー法で形成してもよい。そして、前記もしたが、金属製本体又はリード用軸部材を鉄系金属とする場合には酸化被膜層であってもよい。さらに、絶縁層は、かしめる領域を超えて、例えばリード用軸部材の軸方向における全体に設けてあってもよい。
【0044】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のグロープラグによれば、本体をかしめることによってリード用軸部材を固定した構造のため、熱処理を要しない。また、リード用軸部材の外周面に変形を有するように絶縁層を介して金属製本体がかしめられて同軸部材が本体に固定されている。したがって、軸部材を本体内に絶縁を保持して強固に固定できるグロープラグとなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るグロープラグの第1の実施の形態の正面縦断面図及び要部拡大図。
【図2】図1のグロープラグの製造工程を説明する図。
【図3】本発明に係るグロープラグの第2の実施の形態の正面縦断面図及び要部拡大図。
【図4】図3のグロープラグの製造工程を説明する図。
【図5】本発明に係るグロープラグの第3の実施の形態の正面縦断面図。
【図6】本発明に係るグロープラグの第4の実施の形態の正面縦断面図。
【図7】従来のグロープラグの正面縦断面図及び要部拡大図。
【符号の説明】
1、21、31、41 グロープラグ
91 発熱部
93 絶縁部材
95、97 ヒーターの電極
101 ヒーター
101b ヒーターの後端
103 金属製本体
104 金属製本体の内周面
106 絶縁層
107 リード用軸部材
107a リード用軸部材の外周面の凹状をなす変形
108 リード用軸部材の外周面
Claims (10)
- 通電することによって発熱する発熱部を絶縁部材内に備えてなるヒーターが、筒状をなす金属製本体の先端寄り部位に固定され、一方の電極が該金属製本体に電気的に接続され、他方の電極が、該金属製本体内において前記ヒーターの後端より後方に該金属製本体と絶縁されて配置されたリード用軸部材に電気的に接続されてなるグロープラグにおいて、
前記リード用軸部材は、大径軸部と小径軸部を有しており、前記金属製本体の内周面と、前記リード用軸部材の外周面との間であって、前記大径軸部の外周面に絶縁層を介在させ、該絶縁層の介在された部位において該大径軸部の外周面に変形(変形痕)を有するように該大径軸部が径方向に該金属製本体の内周面で締付けられて前記リード用軸部材が該金属製本体内に絶縁を保持して固定されていることを特徴とするグロープラグ。 - 通電することによって発熱する発熱部を絶縁部材内に備えてなるヒーターが、筒状をなす金属製本体の先端寄り部位に固定され、一方の電極が該金属製本体に電気的に接続され、他方の電極が、該金属製本体内において前記ヒーターの後端より後方に該金属製本体と絶縁されて配置されたリード用軸部材に電気的に接続されてなるグロープラグにおいて、
前記リード用軸部材は、大径軸部と小径軸部を有しており、前記金属製本体の内周面と、前記リード用軸部材の外周面との間であって、前記大径軸部の外周面に絶縁層を介在させ、該絶縁層の介在された部位において該大径軸部の外周面に変形(変形痕)を有するように該金属製本体が径方向にかしめられて前記リード用軸部材が該金属製本体内に絶縁を保持して固定されていることを特徴とするグロープラグ。 - 通電することによって発熱する発熱部を絶縁部材内に備えてなるヒーターが、筒状をなす金属製本体の先端寄り部位に固定され、一方の電極が該金属製本体に電気的に接続され、他方の電極が、該金属製本体内において前記ヒーターの後端より後方に該金属製本体と絶縁されて配置されたリード用軸部材に電気的に接続されてなるグロープラグにおいて、
前記金属製本体の内周面と、前記リード用軸部材の外周面との間であって、該リード用軸部材の軸方向における少なくとも一部に、絶縁層を介在させ、該絶縁層の介在された部位において該リード用軸部材の外周面に凹状をなす変形を有し、かつその変形に前記金属製本体の内周面が前記絶縁層を介して入り込む形態の変形を有するように該金属製本体の内周面で締付けられて前記リード用軸部材が該金属製本体内に絶縁を保持して固定されていることを特徴とするグロープラグ。 - 通電することによって発熱する発熱部を絶縁部材内に備えてなるヒーターが、筒状をなす金属製本体の先端寄り部位に固定され、一方の電極が該金属製本体に電気的に接続され、他方の電極が、該金属製本体内において前記ヒーターの後端より後方に該金属製本体と絶縁されて配置されたリード用軸部材に電気的に接続されてなるグロープラグにおいて、
前記金属製本体の内周面と、前記リード用軸部材の外周面との間であって、該リード用軸部材の軸方向における少なくとも一部に、絶縁層を介在させ、該絶縁層の介在された部位において該リード用軸部材の外周面に凹状をなす変形を有し、かつその変形に前記金属製本体の内周面が前記絶縁層を介して入り込む形態の変形を有するように該金属製本体がかしめられて前記リード用軸部材が該金属製本体内に絶縁を保持して固定されていることを特徴とするグロープラグ。 - 前記絶縁層が、前記リード用軸部材に外嵌してなる樹脂チューブによって形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のグロープラグ。
- 前記樹脂チューブが、フッ素樹脂製であることを特徴とする請求項5に記載のグロープラグ。
- 前記絶縁層が、前記リード用軸部材の外周面に塗布してなる樹脂コーティング層であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のグロープラグ。
- 前記絶縁層の厚さを、0.01mm〜0.5mmの範囲としたことを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のグロープラグ。
- 前記金属製本体は、エンジンへねじ込み方式で取付けるための雄ネジを備えており、該雄ネジよりも後端寄り部位において、前記リード用軸部材が該金属製本体内に絶縁を保持して固定されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のグロープラグ。
- 前記リード用軸部材が、その軸方向における複数箇所で該金属製本体内に絶縁を保持して固定されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のグロープラグ。
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