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JP4173655B2 - 水系インク - Google Patents

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JP4173655B2
JP4173655B2 JP2001297684A JP2001297684A JP4173655B2 JP 4173655 B2 JP4173655 B2 JP 4173655B2 JP 2001297684 A JP2001297684 A JP 2001297684A JP 2001297684 A JP2001297684 A JP 2001297684A JP 4173655 B2 JP4173655 B2 JP 4173655B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリマー粒子の水分散体及びそれを含有する水系インクに関する。更に詳しくは、インクジェット記録用水系インクをはじめ、万年筆用インク、ボールペン用インク、サインペン用インク等の筆記具用水系インク等として使用しうる水系インク及びそれに用いられる着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体に関する。
【0002】
【従来の技術】
水系インクには、色調改善及び光沢紙等での印字濃度の向上が要求されている。しかしながら、印字濃度の向上と色調改善とを両立させることは、着色剤の種類によっては困難であることがある。例えば、フタロシアニン系色素に用いられるシアン色等においては、その両立が困難となることがある。フタロシアニン系色素の場合、印字濃度を向上させるために、その含量を多くすると色調が赤味がかり、色調の悪化を招く。
【0003】
着色剤を有するポリマー粒子の水分散体を含有する水系インクは、ポリマー粒子が着色剤とポリマーとからなるため、水系インク中のポリマー粒子の含有率を変えないで、着色剤量を減少させるとポリマー量を増加させる必要があり、ポリマー量が増加すると塩生成基量が増加するため、ポリマー粒子の水分散体の粘度が増加するので、水系インクの粘度が増加する。また、インクジェット記録用水系インクとして用いた場合には、吐出安定性が低下することがある。
【0004】
これに対して、ポリマー量が増加しても塩生成基が増加しないようにするために、塩生成基の比率の小さいポリマーを用いると、水分散体の長期保存安定性が低下することがあるので、塩生成基の比率を小さくすることができないことがある。
【0005】
また、ポリマー量が増加すると光沢紙上にポリマー皮膜が形成されやすくなってポリマー皮膜により光沢が発現されやすくなり、光沢紙での印字濃度が向上する。しかし、ポリマー量を増加させると塩生成基量が増加するため、ポリマー粒子の水分散体の粘度が増加する。また、インクジェット記録用水系インクとして用いた場合には、水系インクの粘度が増加し、吐出安定性が低下することがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、色調に優れ、光沢紙での印字濃度が向上し、水系インクの低粘度化が可能で、更に耐水性及び耐擦過性にも優れた水分散体、及びそれが用いられた水系インクを提供することを課題とする。更に詳しくは、吐出安定性が良好なインクジェット記録用水系インクとして好適に使用しうる水系インクを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、
(1)着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体であって、ポリマー粒子を構成しているポリマーが、塩生成基を有するポリマーA(以下、ポリマーAという)、並びに単位重量あたりの塩生成基量がポリマーAの単位重量あたりの塩生成基量よりも少ない、塩生成基を有するポリマーB(以下、ポリマーBという)及び/又は塩生成基を有しないポリマーC(以下、ポリマーCという)を含有するポリマー粒子の水分散体、並びに
(2)前記水分散体を含有してなる水系インク
に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明においては、着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体が用いられ、かつポリマー粒子を構成しているポリマーとして、ポリマーAと、ポリマーB及び/又はポリマーCとが用いられている点に、1つの大きな特徴がある。
【0009】
印字の色調及び光沢紙での印字濃度の向上を図るためには、ポリマー粒子中におけるポリマーの含有量を増大させればよい。
【0010】
ここで、本発明においては、ポリマー粒子を構成するポリマーとして、ポリマーAのみならず、ポリマーB及び/又はポリマーCが用いられているので、第1の効果としてポリマー粒子における塩生成基の含有量を一定とした場合でも、ポリマー粒子におけるポリマーの含有量を増大させることができる。したがって、ポリマー粒子におけるポリマーの含有量が多いにもかかわらず塩生成基量が増加しておらず、ポリマー粒子の水分散体の粘度及びそれが用いられた水系インクの粘度が増大しないため、例えば、インクジェットに使用した場合であっても良好な吐出性を維持することができる。
【0011】
また、ポリマーB及び/又はポリマーCが使用されているので、第2の効果として着色剤量及びポリマー量に関係なく、ポリマー粒子における塩生成基量を制御することができるため、色調、光沢紙での印字濃度の向上、並びに水分散体及び水分散体を含有するインクの低粘度化を図ることができる。
【0012】
ポリマーA、ポリマーB及びポリマーCは、水不溶性ポリマーであることが好ましい。
【0013】
水不溶性ポリマーの例としては、水に不溶のビニルポリマー、水に不溶のエステル系ポリマー、水に不溶のウレタン系ポリマー等が挙げられる。これら水に不溶のポリマーの中では、水に不溶のビニルポリマーが好ましい。
【0014】
ポリマーA及びポリマーBが有する塩生成基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、3級アミン基等が挙げられる。なお、塩生成基量は、ポリマーにおける単位重量あたりの塩生成基のモル数で示す。
【0015】
ポリマーA及びポリマーBに使用しうるビニルポリマーは、例えば、
(a) 塩生成基含有モノマー〔以下、(a) 成分という〕と、
(b) 塩生成基含有モノマーと共重合可能なモノマー〔以下、(b) 成分という〕
とを含むモノマー混合物を共重合させて得られた塩生成基を有するビニルポリマーが好ましい。
【0016】
また、モノマー混合物には、着色剤が十分にポリマー粒子に含有されるようにする観点から、マクロマー〔以下、(c) 成分という〕が含有されていることが好ましい。この場合、(c) 成分は、(a) 成分及び/又は(b) 成分と共重合可能なマクロマーである。
【0017】
ポリマーA及びポリマーBにおける塩生成基量は、(a) 成分の量を調整することによって制御することができる。
【0018】
(a) 成分としては、カチオン性モノマー、アニオン性モノマー等が挙げられる。その例として、特開平9−286939号公報5頁7欄24行〜8欄29行に記載されているモノマー等が挙げられる。
【0019】
カチオン性モノマーの代表例としては、不飽和3級アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられる。それらの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドンが好ましい。
【0020】
アニオン性モノマーの代表例としては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。それらの中では、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸モノマーが好ましい。
【0021】
(b) 成分としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系モノマー等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを示す。また、「(イソ)プロポキシ」は、n−プロポキシ又はイソプロポキシを示す。
【0023】
(b) 成分には、印字濃度及び耐マーカー性向上の観点から、スチレン系モノマーが含まれていることが好ましい。スチレン系モノマーとしては、スチレン及び2−メチルスチレンが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、併用してもよい。(b) 成分におけるスチレン系モノマーの含有量は、印字濃度及び耐マーカー性向上の観点から、10〜100 重量%、好ましくは40〜100 重量%であることが望ましい。
【0024】
(c) 成分としては、数平均分子量500 〜100000、好ましくは1000〜10000 の片末端に重合性官能基を有するモノマーであるマクロマーが挙げられる。
【0025】
(c) 成分の数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィーにより、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
【0026】
(c) 成分の代表例としては、シリコーンマクロマー、スチレンマクロマー及びメタクリル酸アルキルエステルマクロマーからなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。
【0027】
シリコーンマクロマーは、インクジェットプリンターのヘッドの焦げ付きを防止する観点から、好適に使用しうるものである。
【0028】
シリコーンマクロマーの中では、式(I):
1(Y1)q Si(R1 3-r (Z1)r (I)
(式中、X1 は重合可能な不飽和基、Y1 は2価の結合基、R1 はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、アリール基又はアルコキシ基、Z1 は500 以上の数平均分子量を有する1価のシロキサンポリマーの残基、qは0又は1、rは1〜3の整数を示す)
で表されるシリコーンマクロマーが、インクジェットプリンターのヘッドの焦げつきを防止する観点から好ましい。
【0029】
式(I)で表されるシリコーンマクロマーにおいて、X1 としては、CH2 =CH−基、CH2 =C(CH3 )−基等の炭素数2〜6の1価の不飽和炭化水素基が挙げられる。Y1 としては、−COO−基、−COOCa 2a−基(aは1〜5の整数を示す)、フェニレン基等の2価の結合基が挙げられ、−COOC3 6 −が好ましい。R1 としては、水素原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基;フェニル基等の炭素数6〜20のアリール基、メトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基等が挙げられる。それらの中では、メチル基が好ましい。Z1 は、好ましくは数平均分子量500 〜5000のジメチルシロキサンポリマーの1価の残基である。qは0又は1であるが、好ましくは1である。rは1〜3の整数であるが、好ましくは1である。
【0030】
シリコーンマクロマーの代表例としては、式(I−1):
CH2 =CR2-COOC3H6-[Si(R3)2-O]b -Si(R3)3 (I−1)
(式中、R2 は水素原子又はメチル基、R3 はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、bは5〜60の数を示す)
で表されるシリコーンマクロマー、
【0031】
式(I−2):
CH2 =CR2-COO-[Si(R3)2-O] b -Si(R3)3 (I−2)
(式中、R2 、R3 及びbは前記と同じ)
で表されるシリコーンマクロマー、
【0032】
式(I−3):
CH2 =CR2-Ph-[Si(R2)2-O] b-Si(R3)3 (I−3)
(式中、Phはフェニレン基、R4 、R5 及びbは前記と同じ)
で表されるシリコーンマクロマー、
【0033】
式(I−4):
CH2 =CR2-COOC3H6-Si(OE)3 (I−4)
〔式中、R2 は前記と同じ。Eは式: -[Si(R2)2O] c-Si(R2)3基(R2 は前記と同じ。cは5〜65の数を示す)を示す〕
で表されるシリコーンマクロマー等が挙げられる。
【0034】
それらの中では、式(I−1)で表されるシリコーンマクロマーが好ましく、特に、式(I−1a):
CH2 =C(CH3)-COOC3H6-[Si(CH3)2-O]d -CH3 (I−1a)
(式中、dは8〜40の数を示す)
で表されるシリコーンマクロマーが好ましい。その代表例として、FM−0711〔チッソ(株)製、商品名〕等が挙げられる。
【0035】
スチレン系マクロマーは、ビニルポリマーに着色剤を十分に含有させる観点から、好適に使用しうるものである。その中でも、片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーは、着色剤がポリマー粒子に十分に含有されるようにする観点から好ましい。
【0036】
スチレン系マクロマーとしては、片末端に重合性官能基を有するスチレン単独重合体又はスチレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。前記共重合体におけるスチレン含量は、着色剤が十分にポリマー粒子に含有されるようにする観点から、60重量%以上、好ましくは70重量%以上であることが望ましい。前記他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が挙げられる。アクリロニトリルとしては、片末端に重合性官能基としてアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有するものが好ましい。
【0037】
メタクリル酸アルキルエステルマクロマーは、ビニルポリマーに着色剤を十分に含有させるという観点及びポリマー粒子の水分散体の安定性を向上させるという観点から、好適に使用しうるものである。
【0038】
メタクリル酸アルキルエステルマクロマーとしては、メタクリル酸メチルマクロマー、メタクリル酸イソブチルマクロマー及びメタクリル酸ドデシルマクロマーからなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。
【0039】
また、モノマー混合物には、(d) 水酸基含有モノマー〔以下、(d) 成分という〕及び(e) 式(II):
CH2 =C(R4 )COO(R5 O)p 6 (II)
(式中、R4 は水素原子又は低級アルキル基、R5 はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基、R6 は水素原子、又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基、pは1〜60の数を示す)
で表されるモノマー〔以下、(e) 成分という〕からなる群より選ばれた1種以上が含まれていてもよい。
【0040】
(d) 成分としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート等が挙げられる。それらの中では、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0041】
(e) 成分は、水系インクの吐出安定性を高め、連続印字してもヨレの発生を抑制するという優れた効果を発現するものである。
【0042】
式(II)において、R4 は水素原子又は低級アルキル基である。低級アルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0043】
5 は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基である。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子及び硫黄原子が挙げられる。
5 の代表例としては、置換基を有していてもよい炭素数6〜43の芳香族環、置換基を有していてもよい炭素数3〜30のヘテロ環及び置換基を有していてもよい炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が挙げられ、これらの環又は基は2種以上を組合せたものであってもよい。置換基としては、炭素数6〜29の芳香族環、炭素数3〜29のヘテロ環、ハロゲン原子、アミノ基等が挙げられる。
【0044】
5 の好適な例としては、炭素数1〜24の置換基を有していてもよいフェニレン基、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20の脂肪族アルキレン基、芳香族環を有する炭素数7〜30のアルキレン基及びヘテロ環を有する炭素数4〜30のアルキレン基が挙げられる。
【0045】
また、R5 O基の好適な例としては、エチレンオキサイド基、(イソ)プロピレンオキサイド基、テトラメチレンオキサイド基、ヘプタメチレンオキサイド基、ヘキサメチレンオキサイド基及びこれらアルキレンオキサイドの1種以上の組合せからなる炭素数2〜7のアルキレンオキサイド基やフェニレンオキサイド基が挙げられる。
【0046】
6 は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基である。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が挙げられる。
6 の代表例としては、置換基を有していてもよい炭素数6〜43の芳香族環、置換基を有していてもよい炭素数3〜30のヘテロ環及び置換基を有していてもよい炭素数1〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が挙げられ、これらの環又は基は2種以上を組合せたものであってもよい。置換基としては、炭素数6〜29の芳香族環、炭素数3〜29のヘテロ環、ハロゲン原子、アミノ基等が挙げられる。
【0047】
6 の好適な例としては、フェニル基、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20の脂肪族アルキル基、芳香族環を有する炭素数7〜30のアルキル基及びヘテロ環を有する炭素数4〜30のアルキル基が挙げられる。
【0048】
6 のより好適な例としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、(イソ)ブチル基、(イソ)ペンチル基、(イソ)ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。
pは1〜60の数であるが、中でも1〜30の数が好ましい。
【0049】
(e) 成分の具体例としては、メトキシポリエチレングリコール(1〜30:式(II)中のpの値を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、(イソ)プロポキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(1〜30、その中のエチレングリコール:1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。それらの中では、メトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレートが好ましい。
【0050】
ビニルポリマーにおける(a) 成分の含量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、1〜40重量%、好ましくは2〜40重量%が望ましい。
【0051】
ビニルポリマーにおける(b) 成分の含量は、印字濃度及び耐マーカー性の向上の観点から、5〜93重量%、好ましくは10〜80重量%が望ましい。なお、スチレン系モノマーを含む(b) 成分を用いる場合、ビニルポリマーにおける(b) 成分の含量は、10〜70重量%が好ましい。
【0052】
ビニルポリマーにおける(c) 成分の含量は、インクジェットプリンターのヒーター面の焦げ付きを抑制する観点及びビニルポリマーに着色剤を十分に含有させる観点から、1〜25重量%、好ましくは5〜20重量%が望ましい。
【0053】
ビニルポリマーにおける(d) 成分の含量は、吐出安定性及び印字濃度の観点から、5〜40重量%、好ましくは7〜20重量%が望ましい。
【0054】
また、(a) 成分と(d) 成分との合計含量は、水中での分散安定性及び耐水性の観点から、6〜60重量%、好ましくは10〜50重量%が望ましい。
【0055】
ビニルポリマーにおける(e) 成分の含量は、吐出安定性及び分散安定性の観点から、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%であることが望ましい。
【0056】
また、ビニルポリマーにおける(a) 成分と(e) 成分との合計含量は、水中での分散安定性及び吐出安定性の観点から、6〜60重量%が好ましい。
【0057】
また、ビニルポリマーにおける(a) 成分と(d) 成分と(e) 成分との合計含量は、水中での分散安定性及び吐出安定性の観点から、6〜60重量%、好ましくは7〜50重量%が望ましい。
【0058】
ビニルポリマーにおいては、ポリマーA及びポリマーBにおける塩生成基の量は、単位重量あたりの(a) 成分のモル数に等しい。
【0059】
ポリマーAの単位重量あたりの塩生成基量(以下、SAAという)は、ポリマー粒子の水分散体を形成するに足りる量が必要であり、分散体の分散安定性の観点から、好ましくは1.2 ×10-7〜5.6 ×10-6モル/mg、より好ましくは2.3 ×10-7〜5.6 ×10-6モル/mgである。
【0060】
ポリマーBの単位重量あたりの塩生成基量は、0を超えかつSAA未満であることが好ましく、0を超えかつ0.8 ×SAA以下がより好ましく、0を超えかつ0.4 ×SAA以下が更に好ましい。
【0061】
ポリマーCは、塩生成基を有しないポリマーである。ポリマーCとしては、(b) 成分及び/又は(c) 成分を含むモノマー混合物を重合させることによって得られたビニルポリマーが好ましい。したがって、ビニルポリマーは、(b) 成分からなるホモポリマー、(c) 成分からなるホモポリマー、及び(b) 成分と(c) 成分とからなるコポリマーのいずれであってもよい。
【0062】
なお、前記モノマー混合物は、(d) 成分及び/又は(e) 成分を含んでもよい。この場合、ビニルポリマーにおける(d) 成分の含量は、ポリマーA及びポリマーBとの親和性、水分散体の粘度の観点から、好ましくは0〜40重量%、より好ましくは0〜20重量%である。また、ビニルポリマーにおける(e) 成分の含量は、ポリマーA及びポリマーBとの親和性、並びに水分散体の粘度の観点から、好ましくは0〜40重量%、より好ましくは0〜20重量%である。
【0063】
ポリマーA、ポリマーB及びポリマーCに使用されるビニルポリマーの重量平均分子量は、いずれも、好ましくは3000〜200,000 、より好ましくは10,000〜150,000 であることが、印刷後の耐久性及び分散安定性の観点から好ましい。
【0064】
ポリマーA、ポリマーB及びポリマーCのうちの1種以上には、シリコーンマクロマー、スチレンマクロマー及びメタクリル酸アルキルエステルマクロマーからなる群より選ばれた1種以上が含まれていることが着色剤が十分にポリマー粒子に含有されるようにする観点から好ましい。
【0065】
また、ポリマーB及び/又はポリマーCが自己乳化性を有しない場合、ポリマーAからなる連続相中にポリマーB及び/又はポリマーCからなる分散相が含有されたポリマー粒子(以下、「ポリマー粒子D」という)が得られる。ポリマー含有量が一定の場合、ポリマー粒子Dの水分散体の粘度は、ポリマーAのみのポリマー粒子の水分散体と対比して低くなる。したがって、本発明においては、低粘度化の観点から、ポリマーB又はポリマーCは、自己乳化性を有しないポリマーであることが好ましい。
【0066】
なお、本明細書にいう「自己乳化性を有しないポリマー」とは、水中に添加し、攪拌下で混合することによっては乳化状態とはならないポリマーをいう。
【0067】
乳化状態となるか否かは、ポリマー60質量部をトルエン60質量部に溶解し、ポリマーが有する塩生成基と等モルの中和剤(アニオン性の塩生成基であれば、水酸化ナトリウム水溶液、カチオン性の塩生成基であれば、グルコン酸水溶液を使用)を添加して混合した溶液を、イオン交換水300 質量部に添加し、攪拌下で混合し、エバポレーター等を用いて有機溶媒を留去することにより、乳化状態となっているか否かを目視で観察することによって判断される。
【0068】
ポリマーでのポリマーA、ポリマーB及びポリマーCの合計に対する割合は、ポリマーAが30〜95重量%が好ましく、50〜70重量%がより好ましい。ポリマーBは水分散体の粘度及び分散安定性の観点から0〜70重量%が好ましく、15〜40重量%がより好ましい。ポリマーCは水分散体の粘度及び分散安定性の観点から0〜70重量%が好ましく、15〜40重量%がより好ましい。
【0069】
乳化状態におけるエマルジョンの平均粒子径は、好ましくは15μm 以下である。
【0070】
ビニルポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー混合物を重合させることによって得られる。それらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
【0071】
溶液重合法で用いる有機溶媒としては、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒として、水混和性極性有機溶媒を用いる場合には、水混和性極性有機溶媒と水とを混合して用いることもできる。
【0072】
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。それらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、これらの混合液又はこれらと水との混合液が好ましい。
【0073】
なお、重合の際には、ラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、2, 2'-アゾビスイソブチロニトリル、2, 2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2'-アゾビスブチレート、2,2'- アゾビス(2- メチルブチロニトリル)、1,1'- アゾビス(1- シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物が好適である。また、重合開始剤として、t-ブチルペルオキシオクトエート、ジ-t- ブチルペルオキシド、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物を使用することもできる。
【0074】
重合開始剤の量は、モノマー混合物に対して、好ましくは0.001 〜5モル%、より好ましくは0.01〜2モル%である。
【0075】
なお、重合の際には、更に重合連鎖移動剤をモノマー混合物に添加してもよい。重合連鎖移動剤の具体例としては、オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素類;ペンタフェニルエタン等の炭化水素類;及びアクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2-エチルヘキシルチオグリコレート、タービノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、α−メチルスチレンダイマー、更に9,10- ジヒドロアントラセン、1,4-ジヒドロナフタレン、インデン、1,4-シクロヘキサジエン等の不飽和環状炭化水素化合物;2,5-ジヒドロフラン等の不飽和ヘテロ環状化合物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0076】
モノマー混合物の重合条件は、使用するラジカル重合開始剤、モノマー、有機溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができない。通常、重合温度は、好ましくは30〜100 ℃、より好ましくは50〜80℃であり、重合時間は、好ましくは1〜20時間である。また、重合雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
【0077】
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、有機溶媒の留去等の公知の方法によって共重合体を単離することができる。また、得られた共重合体は、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することにより、精製することができる。
【0078】
着色剤としては、染料及び顔料が挙げられる。着色剤の中では、耐水性、耐光性、耐オゾン性等の点から、顔料が好ましい。
【0079】
着色剤を含有するポリマー粒子の代表例としては、水に不溶のポリマーに染料又は顔料を含有させたポリマー粒子が挙げられる。このポリマー粒子は、印字物に耐水性及び耐擦過性を付与するという優れた性質を有するものである。
【0080】
ポリマー粒子中に含有させることができる染料の種類には、特に限定がないが、疎水性染料が好ましい。
【0081】
疎水性染料の例としては、油性染料、分散染料等が挙げられる。それらの中では、油性染料及び分散染料がポリマー粒子中に良好に含有させることができることから好ましい。
【0082】
油性染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、C.I.ソルベント・ブラック3、7、27、29、34;C.I.ソルベント・イエロー14、16、29、56、82;C.I.ソルベント・レッド1、3、8、18、24、27、43、51、72、73;C.I.ソルベント・バイオレット 3;C.I.ソルベント・ブルー2、11、70;C.I.ソルベント・グリーン3、7;C.I.ソルベント・オレンジ2等が挙げられる。
【0083】
分散染料としては、特に限定されるものではないが、好ましい例としては、C.I.ディスパーズ・イエロー5、42、54、64、79、82、83、93、99、100 、119 、122 、124 、126 、160 、184:1 、186 、198 、199 、204 、224 、237 ;C.I.ディスパーズ・オレンジ13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118 、119 、163 ;C.I.ディスパーズ・レッド54、60、72、73、86、88、91、93、111 、126 、127 、134 、135 、143 、145 、152 、153 、154 、159 、164 、167:1 、177 、181 、204 、206 、207 、221 、239 、240 、258 、277 、278 、283 、311 、323 、343 、348 、356 、362 ;C.I.ディスパーズ・バイオレット33;C.I.ディスパーズ・ブルー56、60、73、87、113 、128 、143 、148 、154 、158 、165 、165:1 、165:2 、176 、183 、185 、197 、198 、201 、214 、224 、225 、257 、266 、267 、287 、354 、358 、365 、368 ;C.I.ディスパーズ・グリーン6:1 、9等が挙げられる。
【0084】
疎水性染料は、ポリマー粒子中に効率よく含有させる観点から、20℃において、一般に乳化の際に使用される有機溶媒に対する溶解度が2g/L 以上、好ましくは20〜500g/Lであることが望ましい。
【0085】
染料を含有させたポリマー粒子の水分散体は、公知の乳化法によって製造することができる。例えば、ポリマー及び疎水性染料を有機溶媒に溶解させ、必要に応じて中和剤を加えてポリマー中の塩生成基をイオン化し、これに水を添加した後、必要に応じて超音波乳化機を用いて乳化を行ない、その有機溶媒を留去して水系に転相することにより、染料を含有させたポリマー粒子の水分散体を得ることができる。
【0086】
また、ポリマー粒子中に含有させることができる顔料の種類にも特に制限がなく、公知の無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
【0087】
無機顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。黒色においては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
【0088】
有機顔料としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられ、特にピグメント・イエロー17, 74, 83, 93, 97, 110, 124, 128, 138, 139, 151, 154, 180等、ピグメント・レッド57:1, 122, 146, 184, 202, 224, 238, 245 等、ピグメント・バイオレット19等、ピグメント・ブルー15, 15:1, 15:2, 15:3, 15:4, 16, 60, 76等、ピグメント・グリーン7, 36 等、及びこれらを含む固溶体が好ましい。
【0089】
なお、必要により、無機顔料及び有機顔料は、体質顔料と併用することもできる。体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
【0090】
顔料を含有させたポリマー粒子の水分散体を得る方法としては、ポリマーを有機溶媒に溶解させ、顔料、水、中和剤及び必要に応じ界面活性剤を加えて混練しペーストとした後、必要に応じて該ペーストを水で希釈し、有機溶媒を留去して水系にする方法が好ましい。ポリマーを溶解させる有機溶媒としては、先に述べた溶液重合法で用いる有機溶媒と同様のものが用いられる。
【0091】
ポリマー粒子中の着色剤の量は、ポリマー粒子への着色剤の含有のさせやすさの観点及び印字濃度の観点から、ポリマーの固形分100 質量部に対して20〜2000質量部、好ましくは40〜900 質量部、より好ましくは40〜600 質量部である。
【0092】
着色剤を含有したポリマー粒子の粒径は、分散安定性の観点から、10〜500nm であることが好ましい。
【0093】
ポリマー粒子を含有する水系インクにおける着色剤の含有量は、十分な印字濃度が得られるのであればよく、特に限定がない。通常、該含有量は、十分な吐出性及び印字濃度を付与する観点から、1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは4〜15重量%である。
【0094】
水分散体の粘度はインク配合時の吐出性の観点から1.2 〜6mPa ・sであることが好ましく、2〜5mPa ・sであることがより好ましい。粘度は以下の実施例に示す方法によって測定される。インク粘度も同様の方法によって測定される。
【0095】
本発明の水系インクは、前記水分散体に、公知の各種添加剤、例えば、多価アルコール類のような湿潤剤、分散剤、消泡剤、防黴剤及び/又はキレート剤、pH調整剤等を添加することによって得ることができる。
【0096】
かくして得られる水系インクは、特にインクジェット記録用水系インクとして好適に使用しうるものである。
【0097】
【実施例】
製造例1〜5(ポリマーA及びポリマーBの製造)
反応容器内に、メチルエチルケトン20質量部、モノマー及び重合連鎖移動剤を表1の初期仕込みモノマーの欄に示すように仕込み、窒素ガス置換を十分に行なった。
【0098】
一方、滴下ロートに、表1の滴下モノマーの欄に示すようにモノマー、重合連鎖移動剤、メチルエチルケトン60質量部及び2,2'- アゾビス(2,4- ジメチルバレロニトリル)1.2 質量部を入れ、十分に窒素置換を行なった。
【0099】
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら70℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から2時間経過後、2, 2' - アゾビス(2, 4- ジメチルバレロニトリル)0.3 質量部をメチルエチルケトン5質量部に溶解した溶液を加え、更に70℃で2時間、75℃で2時間熟成させ、ポリマーA及びポリマーBの各溶液を得た。
【0100】
ポリマーAは、得られたポリマーA溶液の一部を、減圧下、105 ℃で2時間乾燥させ、溶剤を除去することによって得た。
【0101】
【表1】
Figure 0004173655
【0102】
なお、表1〜2に記載の各名称は、以下のことを意味する。
スチレンマクロマー:東亜合成(株)製、商品名:AS-6S(スチレン単独重合マクロマー、数平均分子量:6000、重合性官能基:メタクリロイルオキシ基)
メタクリル酸イソブチルマクロマー:東亜合成(株)製、商品名:AW-6S(メタクリル酸イソブチル単独重合マクロマー、数平均分子量:6000、重合性官能基:メタクリロイルオキシ基)
シリコーンマクロマー:チッソ(株)製、商品名:FM-0711(数平均分子量:1000、式 (I) で表される化合物)
M-40G :メトキシ末端ポリエチレングリコール(4モル) メタクリル酸エステル〔新中村化学(株)製、商品名:NKエステルM-40G)
M-90G :メトキシ末端ポリエチレングリコール(9モル) メタクリル酸エステル〔新中村化学(株)製、商品名:NKエステルM-90G)
M-230G:メトキシ末端ポリエチレングリコール(23 モル) メタクリル酸エステル〔新中村化学(株)製、商品名:NKエステルM-230G〕
ポリスチレン:三洋化成工業(株)製、商品名:ハイマーST-95 (数平均分子量:4000)
Pigment Blue 15:3 :大日本インキ化学工業(株)製、商品名:Fastogen Blue TGR
【0103】
製造例6〜10(顔料含有ポリマー粒子の水分散体の製造)
標準物質としてポリスチレン、溶剤として50mmol/Lの酢酸含有テトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、ポリマーAの重量平均分子量を測定した。その結果を表1に示す。
【0104】
得られたポリマーAを表2に示すように仕込み、表2に示すポリマーA用有機溶媒250 質量部に溶かし、その中に表2に示すように中和剤の水溶液(5mmol/L) を加えてポリマーAの塩生成基の一部を中和し、更に着色剤を表2に示すように仕込み、製造例6〜8では更に表2に示すポリマーB及びポリマーCを同量のメチルエチルケトンで溶解したものを仕込み、ビーズミルで混練した。混練前の混合物を混合物Eという。混合物Eの組成を表2に示す。
【0105】
混合物Eの混練物に、イオン交換水300 質量部を加え、十分に攪拌した後、エバポレーターを用いて該有機溶媒及び水を留去し、固形分濃度が20重量%の着色剤含有ポリマー粒子の水分散体を得た。
【0106】
【表2】
Figure 0004173655
【0107】
実施例1〜3及び比較例1〜2(但し、実施例2は参考例である)
製造例6〜10で得られた水分散体のポリマー粒子の平均粒径及び水分散体の粘度を下記方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0108】
【表3】
Figure 0004173655
【0109】
表3に示された結果から、実施例1〜3と比較例2とは、ポリマー含有量が同じ60質量部である。しかし、ポリマーAの含有量が同じ40質量部である実施例1〜3で得られた水分散体の粘度は、ポリマーAの含有量が60質量部である比較例2で得られた水分散体よりも低く、ポリマー含有量及びポリマーAの含有量が40質量部である比較例1で得られた水分散体とほぼ同じであることがわかる。
【0110】
実施例4〜6及び比較例3〜4(但し、実施例5は参考例である)
製造例6〜10で得られた顔料含有ポリマー粒子の水分散体40質量部、グリセリン10質量部、アセチレングリコール・ポリエチレンオキサイド付加物〔川研ファインケミカル(株)製、商品名:アセチレノールEH〕1質量部及びイオン交換水49質量部を混合し、得られた混合液を5μm のフィルター〔アセチルセルロース膜、外径:2.5cm 、富士写真フイルム(株)製〕を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ〔テルモ(株)製〕で濾過により、粗大粒子を除去することによって、それぞれ製造例6〜10に対応する実施例4〜6及び比較例3〜4の水系インクを得た。
【0111】
実施例4〜6及び比較例3〜4で得られた水系インクについて、下記方法により物性を評価した。その結果を表4に示す。
【0112】
【表4】
Figure 0004173655
【0113】
〔評価方法〕
(1)平均粒径
コールターカウンターN4(コールター社製、商品名)を用いて製造直後に平均粒径を測定した。
【0114】
(2)粘度
20℃での粘度をE型粘度計(トキメック社製)を用いて測定した。
【0115】
(3)印字濃度
ジェットプリンター〔セイコーエプソン(株)製、型番:PM-760C 〕に、各実施例又は比較例で得られた水系インクを用い、光沢紙〔MC光沢紙、セイコーエプソン(株)製、商品名:KA420MK 〕にベタ印字し、25℃で1時間乾燥させた試料の特定の印字箇所の印字濃度をマクベス濃度計〔マクベス社製、品番:RD914 〕で測定した。
【0116】
(4)色調
ジェットプリンター〔セイコーエプソン(株)製、型番:PM-760C 〕に、各実施例又は比較例で得られた水系インクを用い、光沢紙〔MC光沢紙、セイコーエプソン(株)製、商品名:KA420MK 〕にベタ印字し、25℃で1時間乾燥させた試料の特定の印字箇所の色調を分光式色差計〔日本電色工業(株)製、商品名:SE-2000 〕で測定した。
【0117】
(5)吐出性
バブルジェットプリンター〔(株)キャノン製、型番:BJC-430J〕の純正インク、又は各実施例若しくは各比較例で得られた水系インクを1ヵ月間、60℃の雰囲気中で保持する試験を行った。
【0118】
次に、このプリンターを用い、該水系インクで普通紙〔ゼロックス(Xerox) 社製、商品名:4024 DP 20 lb.Paper 〕にベタ印字した時の吐出率を式:
〔吐出率〕
=〔試験後の実施例又は比較例における水系インクの吐出重量〕
÷〔純正インクの吐出重量〕
×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて吐出性を評価した。
【0119】
〔評価基準〕
○:吐出率が80%以上
△:吐出率が60%以上80%未満
×:吐出率が60%未満
【0120】
また、表4に示された結果から、各実施例で得られた水系インクは、いずれも、光沢紙での印字濃度及び色調に優れていることがわかる。
【0121】
また、実施例4〜6と比較例4とは、ポリマー含有量が同じ60質量部である。しかし、ポリマーAの含有量が同じ40質量部である実施例4〜6で得られた水系インクの粘度は、ポリマーAの含有量が同じ60質量部である比較例4で得られた水系インクよりも低く、ポリマー含有量及びポリマーAの含有量が40質量部である比較例3で得られた水系インクとほぼ同じである。また、実施例4〜6で得られた水系インクは、吐出性も良好であることがわかる。
【0122】
また、実施例4〜6で得られた水系インクの印字濃度は顔料の含有量が各実施例よりも多い60質量部である比較例3で得られた水系インクよりも高いが、これは粘度を増加させずにポリマー含有量を増加させることできたからである。実施例4〜6で得られた水系インクの色調は、比較例3よりも優れているが、これは粘度を増加させずにポリマー含有量を増加させることができたからである。
【0123】
【発明の効果】
本発明の水分散体は、光沢紙での印字濃度、色調に優れ、分散体の粘度の低下が図られたものである。したがって、前記水分散体が用いられた水系インクは、インクジェット記録用水系インクとして有用である。

Claims (7)

  1. 着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体であって、ポリマー粒子を構成しているポリマーが、(1)塩生成基を有するポリマーA、単位重量あたりの塩生成基量がポリマーAの単位重量あたりの塩生成基量よりも少ない、塩生成基を有するポリマーB及び塩生成基を有しないポリマーC、又は (2) 塩生成基を有するポリマーA及び塩生成基を有しないポリマーC、を含有するポリマー粒子の水分散体。
  2. ポリマーA、ポリマーB及びポリマーCが、水不溶性である請求項1記載の水分散体。
  3. ポリマーA、ポリマーB及びポリマーCのうちの1種以上がシリコーンマクロマー、スチレンマクロマー及びメタクリル酸アルキルエステルマクロマーからなる群より選ばれた1種以上を含有する請求項1又は2記載の水分散体。
  4. ポリマーB及び/又はポリマーCが自己乳化性を有しないポリマーである請求項1〜3いずれか記載の水分散体。
  5. 着色剤が顔料である請求項1〜いずれか記載の水分散体。
  6. 前記ポリマーを有機溶媒に溶解させ、顔料、水、及び中和剤を加えて混練した後、有機溶媒を留去することによって得られる請求項5記載の水分散体。
  7. 請求項1〜いずれか記載の水分散体を含有してなる水系インク。
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