JP4168597B2 - トランスポンダ用アンテナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、RFID(無線周波数識別:Radio Frequency Identification)技術を用いたタグや、EAS(電子式物品監視:Electronic Article Surveillance)技術を用いたタグや、リーダライタ等のトランスポンダに用いられるアンテナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は、盗難監視用の物品に取付けられかつ送信アンテナから送信された特定周波数の電波に共振する共振回路を備えた盗難防止用タグを特許出願した(特開平11−339143号)。この盗難防止用タグでは、物品の取付面と共振回路との間に、軟磁性粉末とプラスチック又はゴムとの複合材により形成され電磁遮蔽板が介装される。
このように構成された盗難防止用タグでは、このタグを導電性材料や強磁性材料により形成された物品の表面に取付け、送信アンテナから送信された電波により物品の表面に渦電流が発生しても、共振回路が電磁遮蔽板により電磁遮蔽されて上記渦電流の影響を受けないため、共振回路の自己インダクタンスは表面が絶縁性材料や非磁性材料により形成された物品にタグを取付けた場合と殆ど変わらない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の特開平11−339143号公報に示された盗難防止用タグでは、電磁遮蔽板に含まれる軟磁性材料の含有率及び電磁遮蔽板の電気抵抗率が規定されていないため、タグを取付ける物品の表面が導電性材料や強磁性材料により形成されている場合、電磁遮蔽板が物品の表面に発生した渦電流から共振回路を効果的に電磁遮蔽できず、共振回路の共振特性が変化してしまうおそれがあった。
本発明の目的は、電波がどのような方向から入射しても、或いはトランスポンダを取付けるための物品がどのような材質で形成されていても、アンテナのコイルを含む共振回路の共振特性が殆ど変化せず、ノイズの影響を受け難い、トランスポンダ用アンテナを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1及び図2に示すように、軟磁性材料の粉末又はフレークをプラスチック又はゴムに分散することにより形成された電磁遮蔽板16と、電磁遮蔽板16の表面上に設けられかつ電磁遮蔽板16に直交する軸線を中心とする渦巻き状に形成されたコイル15とを有するトランスポンダ用アンテナの改良である。
その特徴ある構成は、電磁遮蔽板16に含まれるカーボニル鉄からなる軟磁性材料が75〜95重量%であって電磁遮蔽板16の電気抵抗率が1×109〜6×109Ω・cmであり、電磁遮蔽板16の比透磁率が4.5〜9.0であって、かつトランスポンダ12のQ値が70〜87であり、更にプラスチックがエポキシ樹脂であるところにある。
【0005】
この請求項1に記載されたトランスポンダ用アンテナ12では、表面が導電性材料や強磁性材料により形成された物品11に、上記アンテナ14を含むトランスポンダ12を取付けた状態で、トランスポンダ12に向って電波を発信すると、コイル15は電磁遮蔽板16により上記物品11から電磁遮蔽されるので、このコイル15を含む共振回路のQ値は低下せず、共振回路の自己インダクタンスは殆ど変化しない。
ここでQ値とは角周波数をωとし、共振回路の抵抗分をrとするとき、ωL/rで定義される数値であり、このQ値が高いほど渦電流等による損失が少なくなり、共振の幅が鋭くなることが知られている。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に物品と電磁遮蔽板との間に高導電率層が介装され、高導電率層が1×10-2Ω・cm以下の電気抵抗率を有する非磁性材料により形成されたことを特徴とする。
この請求項2に記載されたトランスポンダ用アンテナでは、アンテナを含む共振回路が電磁遮蔽板により物品から電磁遮蔽され、かつ高導電率層により共振回路のQ値が高められるので、共振回路の自己インダクタンスは殆ど変化せず、共振の幅が鋭くなる。また薄い高導電率層を介装することにより、電磁遮蔽板の厚さを大幅に薄くすることができるので、トランスポンダ全体の厚さを薄くでき、しかも安価にトランスポンダを製造することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、物品11の表面にはトランスポンダであるRFID用タグ12が取付けられる。このタグ12は物品11毎に異なる固有の情報が記憶されたICチップ13と、ICチップ13に電気的に接続されたアンテナ14とを備える。物品11はこの実施の形態では倉庫に保管された修理用の部品であり、鋼板等の導電性を有する磁性材料により形成される。またアンテナ14は電磁遮蔽板16と、電磁遮蔽板16の表面上に第1絶縁シート21を介して設けられかつ電磁遮蔽板16に直交する軸線を中心とする渦巻き状に形成されたコイル15とを有する。なお、ICチップ13とコイル15によりタグ本体18が構成される。また図1の符号22はコイル15及びICチップ13の上面を覆うための第2絶縁シートである。
【0013】
上記電磁遮蔽板16は軟磁性材料の粉末又はフレークをプラスチックに分散することにより形成される。軟磁性材料としては電磁軟鉄のカーボニル鉄が用いられる。
【0016】
上記軟磁性材料の粉末としては、粒径が1〜100μmの粉末を用いることが好ましい。また軟磁性材料のフレークとしては、上記粉末をボールミル、ローラー等で機械的に扁平化して得られたフレークや、鉄系又はコバルト系合金の溶湯を水冷銅に衝突させて得られたアモルファスフレークなどを用いることが好ましい。
また軟磁性材料の粉末又はフレークを分散するプラスチックとしては、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0017】
電磁遮蔽板16に含まれる軟磁性材料は75〜95重量%であり、残部がプラスチックである。また電磁遮蔽板16の電気抵抗率は1×10 9 〜6×10 9 Ω・cmである。軟磁性材料を75〜95重量%に限定したのは、75重量%未満では、表面が導電性材料や強磁性材料により形成された物品11からアンテナ14を電磁遮蔽できないからである。
【0019】
一方、ICチップ13は図3に示すように、電源回路13aと、無線周波数(RF)回路13bと、変調回路13cと、復調回路13dと、CPU13eと、このCPU13eに接続され物品11に固有の情報が記憶されるメモリ13fとを有する。電源回路13aはコンデンサ(図示せず)を内蔵し、このコンデンサはアンテナ14とともに共振回路を形成する。このコンデンサにはアンテナ14が特定の周波数の電波(上記共振回路が共振する周波数)を受信したときにその相互誘導作用で生じる電力が充電される。電源回路13aはこの電力を整流し安定化してCPU13eに供給し、ICチップ13を活性化する。メモリ13fはROM(read only memory)、RAM(ramdom-access memory)及びEEPROM(electrically erasable programmable read only memory)を含み、CPU13eの制御の下で後述するリーダライタ17(図3)からの電波のデータ通信による読出しコマンドに応じて記憶されたデータの読出しを行うとともに、リーダライタ17からの書込みコマンドに応じてデータの書込みが行われる。
【0020】
上記ICチップ13のメモリ13fに記憶された物品11固有の情報は図3に示すように、送受信アンテナ18を有するリーダライタ17により取出される。リーダライタ17はICチップ13のメモリ13fに記憶された情報を読出しかつICチップ13のメモリ13fに情報を書込むように構成され、アンテナ14と相互誘導作用するアンテナ17aと、このアンテナ17aから電波を発信しかつアンテナ17aの受けた電波を処理する処理部17bと、ICチップ13のメモリ13fに記憶された情報を表示する表示部17cとを有する。アンテナ17aは物品11に取付けられたタグ12のアンテナ14に電波を発信しかつそのアンテナ14からの電波を受信可能に構成される。また処理部17bはアンテナ17aに接続され、バッテリを内蔵する電源回路17dと、無線周波数(RF)回路17eと、変調回路17fと、復調回路17gと、CPU17hと、このCPU17hに接続されICチップ13から読取った情報を記憶するメモリ17iとを有する。また処理部17bのCPU17hには入力部17jが接続され、この入力部17jにより入力された情報はICチップ13のメモリ13fに書込み可能に構成される。上記リーダライタ17は倉庫の管理者により持運び可能に構成される。またICチップ13のメモリ13fにはその物品11の名称、材質、重量、成形年月日等が記憶される。更に上記タグ12(電磁遮蔽板16を含む。)は図示しないが接着剤又は両面粘着テープを介して物品11の表面に取付けられる。
【0021】
このように構成されたRFID用タグ12の動作を図1〜図3に基づいて説明する。
倉庫の管理者はリーダライタ17を用いて物品11をチェックする。具体的にはリーダライタ17のアンテナ17aをタグ12に近付け、アンテナ17aからタグ12のアンテナ14に向けて2値化されたデジタル信号の質問信号を特定周波数の電波により送信する。リーダライタ17から発せられるデジタル信号は、図示しない信号発生器から発せられ変調回路17fで変調を受け、RF回路17eでこの変調した信号を増幅してアンテナ17aから送信される。この変調には例えばASK(振幅変調)、FSK(周波数変調)又はPSK(位相変調)が挙げられる。送信された質問信号の電波はタグ12のアンテナ14に受信される。このときコイル15とICチップ13の電源回路13aのコンデンサ(図示せず)により構成される共振回路は電磁遮蔽板16により上記鋼板製の物品11から電磁遮蔽される。即ち、上記質問信号の電波の発信により物品11に渦電流が発生しても、共振回路は電磁遮蔽板16により電磁遮蔽されて上記渦電流の影響を受けないので、共振回路のQ値が低下することはなく、共振回路の自己インダクタンスは殆ど変化せず、共振の幅は鋭さを保つ。なお、外来ノイズが発生しても、上記共振回路は電磁遮蔽板16により電磁遮蔽されて上記外来ノイズの影響を受けない。
【0022】
このため、上記コンデンサには十分な量の電力が充電される、即ちアンテナ17aとアンテナ14の相互誘導作用により十分な量の電力が電源回路13aのコンデンサに充電される。電源回路13aはこの電力を整流し安定化してCPU13eに供給し、ICチップ13を活性化し、更にRF回路13bを介して復調回路13dで元のデジタル信号の質問信号を再現させる。CPU13eはこの質問信号に基づいてメモリ13fに書込まれていたその物品11に関する情報を送信する。この情報の送信は2値化されたデータ信号をICチップ13の変調回路13cで変調し、RF回路13bで増幅してアンテナ14から送出することにより行われる。送信されたデータはリーダライタ17のアンテナ17aが受信し、処理部17bはタグ12からの物品11固有の情報を表示部17cに表示する。倉庫の管理者は表示部17cに表示された情報を見てその物品11の保管場所を変更したり或いは工場に搬送したりして在庫管理する。
【0023】
また管理者はリーダライタ17の入力部17jから在庫管理した日付をICチップ13のメモリ13fに書込む。具体的にはリーダライタ17のアンテナ17aからタグ12のアンテナ14に向けて上記在庫管理した日付を特定周波数の電波により送信する。この情報は2値化されたデジタル信号としてリーダライタ17から発せられる。このデジタル信号は、図示しない信号発生器から発せられ変調回路17fで変調を受け、RF回路17eでこの変調した信号を増幅してアンテナ17aから送信される。送信された電波はタグ12のアンテナ14に受信され、この受信により、電源回路13aのコンデンサにはアンテナ17aとアンテナ14の相互誘導作用で生じる電力が充電される。この結果、電源回路13aは電力を整流し安定化してCPU13eに供給し、ICチップ13を活性化する。次にICチップ13のRF回路13bでは復調に必要な信号のみを取込み、復調回路13dで上記情報のデジタル信号を再現させて、CPU13eによりこのデジタル信号をメモリ13fに書込む。
【0029】
なお、上記第1の実施の形態では、トランスポンダとしてRFID用タグを挙げたが、EAS用タグ、リーダライタ又はその他のトランスポンダでもよい。
また、物品と電磁遮蔽板との間に高導電率層を介装し、この高導電率層を1×10-2Ω・cm以下の電気抵抗率を有する非磁性材料により形成してもよい。この場合、アンテナを含む共振回路が電磁遮蔽板により物品から電磁遮蔽され、かつ高導電率層により共振回路のQ値が高められるので、共振回路の自己インダクタンスは殆ど変化せず、共振の幅が鋭くなる。また薄い高導電率層を介装するだけで、電磁遮蔽板の厚さを大幅に薄くすることができるので、トランスポンダ全体の厚さを薄くでき、しかも安価にトランスポンダを製造することができる。ここで、高導電率層を介装することによりQ値が高くなるのは、電波が高導電率層により遮断され、高導電率層直下の物品に届かないため、高導電率層直下の物品の材質による共振回路の自己インダクタンスの変化が殆ど発生しないためである。
【0030】
【実施例】
次に本発明の実施例を参考例及び比較例とともに詳しく説明する。
<参考例1>
図1及び図2に示すように、縦×横×厚さが50mm×50mm×0.1mmの薄いポリエチレンからなる第1絶縁シート21の両面にアルミニウム箔を接着剤で貼り合わせたものを用意した。この第1絶縁シート21の上面のアルミニウム箔に、中心から矩形の渦巻き状に巻回されたコイル15とこのコイル15の内端に電気的に接続された第1端子部31を耐エッチング塗料のシルクスクリーン法により印刷し、第1絶縁シート21の下面のアルミニウム箔に一端がコイル15の外端に接続され他端が第1端子部31近傍まで延びる第2端子部32を耐エッチング塗料のシルクスクリーン法により印刷した。上記耐エッチング塗料を乾燥してエッチング処理を行った後に、第1絶縁シート21を圧縮して破壊することによりコイル15の外端と第2端子部32の一端とを電気的に接続した。次にICチップ13を第1絶縁シート21上にコイル15の中心に位置するように接着し、ICチップ13と第1端子部31とを電気的に接続するとともに、第1絶縁シート21の所定部分を破壊してICチップ13と第2端子部32の他端とを電気的に接続した。更にコイル15及びICチップ13の上面に第1絶縁シート21と同一材質及び同一形状の第2絶縁シート32を接着した。これによりICチップ13及びコイル15からなるタグ本体18を形成した。
【0031】
一方、Ni−Zn系フェライト焼結体を乳鉢ですりつぶし、ボールミル粉砕による粉砕後粒径10μmのふるいを通した粉末を用意した。この粉末を75重量部と、エポキシ樹脂(プラスチック)を25重量部とを少量のアセトン中で十分に混合して型に入れ、縦×横×厚さが50mm×50mm×2mmのNi−Zn系フェライト粉末を分散したエポキシ樹脂板からなる電磁遮蔽板16を作製した。この電磁遮蔽板16をタグ本体18の下面に貼付けてRFID用タグ12を得た。このRFID用タグ12を参考例1とした。
【0032】
<参考例2>
Ni−Zn系フェライト粉末を90重量部と、エポキシ樹脂を10重量部とを少量のアセトン中で十分に混合したことを除いて、参考例1と同様にして電磁遮蔽板を作製した。この電磁遮蔽板を参考例1と同一のタグ本体の下面に貼付けてRFID用タグを得た。このRFID用タグを参考例2とした。
<参考例3>
Ni−Zn系フェライト粉末を95重量部と、エポキシ樹脂を5重量部とを少量のアセトン中で十分に混合したことを除いて、参考例1と同様にして電磁遮蔽板を作製した。この電磁遮蔽板を参考例1と同一のタグ本体の下面に貼付けてRFID用タグを得た。このRFID用タグを参考例3とした。
<参考例4>
Mn−Zn系フェライト粉末を75重量部と、エポキシ樹脂を25重量部とを少量のアセトン中で十分に混合したことを除いて、参考例1と同様にして電磁遮蔽板を作製した。この電磁遮蔽板を参考例1と同一のタグ本体の下面に貼付けてRFID用タグを得た。このRFID用タグを参考例4とした。
【0033】
<参考例5>
Mn−Zn系フェライト粉末を90重量部と、エポキシ樹脂を10重量部とを少量のアセトン中で十分に混合したことを除いて、参考例1と同様にして電磁遮蔽板を作製した。この電磁遮蔽板を参考例1と同一のタグ本体の下面に貼付けてRFID用タグを得た。このRFID用タグを参考例5とした。
<参考例6>
Mg−Zn系フェライト粉末を75重量部と、エポキシ樹脂を25重量部とを少量のアセトン中で十分に混合したことを除いて、参考例1と同様にして電磁遮蔽板を作製した。この電磁遮蔽板を参考例1と同一のタグ本体の下面に貼付けてRFID用タグを得た。このRFID用タグを参考例6とした。
<参考例7>
Mg−Zn系フェライト粉末を90重量部と、エポキシ樹脂を10重量部とを少量のアセトン中で十分に混合したことを除いて、参考例1と同様にして電磁遮蔽板を作製した。この電磁遮蔽板を参考例1と同一のタグ本体の下面に貼付けてRFID用タグを得た。このRFID用タグを参考例7とした。
【0034】
<実施例1>
電磁軟鉄粉末であるカーボニル鉄粉末を75重量部と、エポキシ樹脂を25重量部とを少量のアセトン中で十分に混合したことを除いて、参考例1と同様にして電磁遮蔽板を作製した。この電磁遮蔽板を参考例1と同一のタグ本体の下面に貼付けてRFID用タグを得た。このRFID用タグを実施例1とした。
<実施例2>
電磁軟鉄粉末であるカーボニル鉄粉末を90重量部と、エポキシ樹脂を10重量部とを少量のアセトン中で十分に混合したことを除いて、参考例1と同様にして電磁遮蔽板を作製した。この電磁遮蔽板を参考例1と同一のタグ本体の下面に貼付けてRFID用タグを得た。このRFID用タグを実施例2とした。
<実施例3>
電磁軟鉄粉末であるカーボニル鉄粉末を95重量部と、エポキシ樹脂を5重量部とを少量のアセトン中で十分に混合したことを除いて、参考例1と同様にして電磁遮蔽板を作製した。この電磁遮蔽板を参考例1と同一のタグ本体の下面に貼付けてRFID用タグを得た。このRFID用タグを実施例3とした。
【0035】
<比較例1>
Ni−Zn系フェライト粉末を70重量部と、エポキシ樹脂を30重量部とを少量のアセトン中で十分に混合したことを除いて、参考例1と同様にして電磁遮蔽板を作製した。この電磁遮蔽板を参考例1と同一のタグ本体の下面に貼付けてRFID用タグを得た。このRFID用タグを比較例1とした。
<比較例2>
Mn−Zn系フェライト粉末を70重量部と、エポキシ樹脂を30重量部とを少量のアセトン中で十分に混合したことを除いて、参考例1と同様にして電磁遮蔽板を作製した。この電磁遮蔽板を参考例1と同一のタグ本体の下面に貼付けてRFID用タグを得た。このRFID用タグを比較例2とした。
<比較例3>
Mn−Zn系フェライト粉末を95重量部と、エポキシ樹脂を5重量部とを少量のアセトン中で十分に混合したことを除いて、参考例1と同様にして電磁遮蔽板を作製した。この電磁遮蔽板を参考例1と同一のタグ本体の下面に貼付けてRFID用タグを得た。このRFID用タグを比較例3とした。
【0036】
<比較例4>
Mg−Zn系フェライト粉末を70重量部と、エポキシ樹脂を30重量部とを少量のアセトン中で十分に混合したことを除いて、参考例1と同様にして電磁遮蔽板を作製した。この電磁遮蔽板を参考例1と同一のタグ本体の下面に貼付けてRFID用タグを得た。このRFID用タグを比較例4とした。
<比較例5>
Mg−Zn系フェライト粉末を95重量部と、エポキシ樹脂を5重量部とを少量のアセトン中で十分に混合したことを除いて、参考例1と同様にして電磁遮蔽板を作製した。この電磁遮蔽板を参考例1と同一のタグ本体の下面に貼付けてRFID用タグを得た。このRFID用タグを比較例5とした。
<比較例6>
電磁軟鉄粉末であるカーボニル鉄粉末を70重量部と、エポキシ樹脂を30重量部とを少量のアセトン中で十分に混合したことを除いて、参考例1と同様にして電磁遮蔽板を作製した。この電磁遮蔽板を参考例1と同一のタグ本体の下面に貼付けてRFID用タグを得た。このRFID用タグを比較例6とした。
【0037】
<比較試験1及び評価>
参考例1〜7、実施例1〜3及び比較例1〜6のRFID用タグを縦×横×厚さが60mm×60mm×0.3mmのアルミニウム製の板に密着させ、リーダライタの送受信アンテナを各タグから300mm離した状態で、リーダライタから質問信号を送信したときに各タグが作動するか否か、即ち各タグから応答信号が戻ってくるか否かを調べた。
また各タグの電磁遮蔽板の比透磁率と各タグのQ値を次のようにして測定した。電磁遮蔽板の比透磁率は電磁遮蔽板から切出した外径×内径×厚さがそれぞれ10mm×6mm×2mmのリング状サンプルに線径が0.1mmの被覆銅線を10〜80回巻回してトロイダルコイルを作製し、このトロイダルコイルの13.56MHzにおける自己インダクタンスをインピダスアナライザを用いて測定した後に、この自己インダクタンスから算出して求めた。
【0038】
また各タグのQ値は各タグのアンテナに向って、電波の周波数を12MHz〜15MHzの範囲で変化させたときのアンテナを含む共振回路の共振特性をネットワークアナライザを用いて測定した後に、その共振特性から算出して求めた。その結果を電磁遮蔽板の構成材料及び電気抵抗率とともに表1に示す。
なお、電磁遮蔽板の電気抵抗率は次のようにして求めた。先ず参考例1〜7、実施例1〜3及び比較例1〜6のタグに用いられた電磁遮蔽板から断面積が4mm2であって長さが5mmである直方体状のブロックをそれぞれ作製した。次にこれらのブロックの両端面に電極を形成し、絶縁抵抗計を用いて抵抗値を測定した。更に抵抗値に上記ブロックの断面積を掛けて得られた値を上記ブロックの長さで割ることにより各電磁遮蔽板の電気抵抗率を求めた。
【0039】
【表1】
【0040】
表1から明らかなように、軟磁性材料としてNi−Zn系フェライト複合材を用いた場合には、軟磁性材料の含有率が75〜95重量%であって、かつ電磁遮蔽板の電気抵抗率が1×109〜8×109Ω・cmであると、タグが作動した。軟磁性材料としてMn−Zn系フェライト複合材を用いた場合には、軟磁性材料の含有率が75〜90重量%であって、かつ電磁遮蔽板の電気抵抗率が1×106〜1×109Ω・cmであると、タグが作動した。また軟磁性材料としてMg−Zn系フェライト複合材を用いた場合には、軟磁性材料の含有率が75〜90重量%であって、かつ電磁遮蔽板の電気抵抗率が5×106〜6×109Ω・cmであると、タグが作動した。軟磁性材料としてカーボニル鉄複合材を用いた場合には、軟磁性材料の含有率が75〜95重量%であって、かつ電磁遮蔽板の電気抵抗率が1×109〜6×109Ω・cmであると、タグが作動した。
更にタグが作動するためには、電磁遮蔽板の比透磁率が4以上であって、かつタグのQ値が50以上であることが必要であることが判った。
【0041】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、軟磁性材料の粉末又はフレークをプラスチックに分散することにより電磁遮蔽板を形成し、この電磁遮蔽板の表面上に設けられたコイルを電磁遮蔽板に直交する軸線を中心とする渦巻き状に形成し、電磁遮蔽板に含まれるカーボニル鉄からなる軟磁性材料を75〜95重量%とし電磁遮蔽板の電気抵抗率を1×109〜6×109Ω・cmとし、電磁遮蔽板の比透磁率を4.5〜9.0とし、かつトランスポンダのQ値を70〜87とし、更にプラスチックをエポキシ樹脂としたので、表面が導電性材料や強磁性材料により形成された物品に、アンテナを含むトランスポンダを取付けた状態で、トランスポンダに向って電波を発信すると、コイルは電磁遮蔽板により上記物品から電磁遮蔽される。この結果、コイルを含む共振回路のQ値は低下せず、共振回路の自己インダクタンスは殆ど変化しないので、共振回路の共振の幅は鋭さを保ち、トランスポンダは確実に作動する。
【0043】
また物品と電磁遮蔽板との間に高導電率層を介装し、この高導電率層を1×10-2Ω・cm以下の電気抵抗率を有する非磁性材料により形成すれば、アンテナを含む共振回路が電磁遮蔽板により物品から電磁遮蔽され、かつ高導電率層により共振回路のQ値が高められるので、共振回路の自己インダクタンスは殆ど変化せず、共振の幅が鋭くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明第1実施形態のRFID用タグを物品に取付けた状態を示す図2のA−A線断面図。
【図2】 図1のB−B線断面図。
【図3】 そのRFID用タグのアンテナにリーダライタのアンテナを対向させた状態を示すRFID用タグ及びリーダライタの回路構成図。
【符号の説明】
11 物品
12 RFID用タグ(トランスポンダ)
13 ICチップ
14 アンテナ
15 コイル
16 電磁遮蔽板
Claims (2)
- 軟磁性材料の粉末又はフレークをプラスチックに分散することにより形成された電磁遮蔽板(16)と、前記電磁遮蔽板(16)の表面上に設けられかつ前記電磁遮蔽板(16)に直交する軸線を中心とする渦巻き状に形成されたコイル(15)とを有するトランスポンダ用アンテナにおいて、
前記電磁遮蔽板(16)に含まれるカーボニル鉄からなる軟磁性材料が75〜95重量%であって前記電磁遮蔽板(16)の電気抵抗率が1×109〜6×109Ω・cmであり、前記電磁遮蔽板(16)の比透磁率が4.5〜9.0であって、かつ前記トランスポンダ(12)のQ値が70〜87であり、更に前記プラスチックがエポキシ樹脂であることを特徴とするトランスポンダ用アンテナ。 - 物品と電磁遮蔽板との間に高導電率層が介装され、前記高導電率層が1×10-2Ω・cm以下の電気抵抗率を有する非磁性材料により形成された請求項1記載のトランスポンダ用アンテナ。
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JP2001069599A JP4168597B2 (ja) | 2001-03-13 | 2001-03-13 | トランスポンダ用アンテナ |
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