JP4162306B2 - 中心静脈投与用輸液 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、還元糖、アミノ酸及びビタミン類を含有し、全てのビタミン類を安定に含有する中心静脈投与用輸液に関する。
【0002】
【従来の技術】
消化器手術の術後患者等は、経口摂取が不可能な場合が多いので、このような患者の栄養管理は、一般に中心静脈からの高カロリー輸液(IVH)により行われている。IVHは、上記患者の栄養状態を改善し且つ良好に保つことにより、患者の回復、治癒を促進し、その効果は絶大なものであるので、今や外科治療の分野で広く普及している。
【0003】
IVHでは、通常、栄養源である糖質及びアミノ酸と、電解質が投与される。そして、IVH用の輸液製剤としては、これらを全て含んだものが開発されており、一般に、メイラード反応を起こすブドウ糖とアミノ酸を2室容器に分別収容したタイプの製剤が市販されている。
【0004】
ところで、IVHを施行する際、その期間が比較的長期になると、輸液製剤に含まれていない微量元素やビタミンの欠乏症が問題となってくる。特に、ビタミンB1 は、糖代謝において消費されるために欠乏に陥り易く、それにより重篤なアシドーシスが惹起する。従って、IVHが短期間(1週間程度)で終わらない場合は、ビタミンを併用することが不可欠である。しかして、ビタミンは、安定性に欠けるため、専ら混合ビタミン剤や総合ビタミン剤の形態で単独に製剤化され、用事にIVH製剤に混注されている。しかし、混注操作は煩雑なうえに、操作時に細菌汚染の虞があるので、作業に効率性と慎重性の両方が要求され、担当者に多大な負担を強いているのが現状である。
【0005】
このため、上記のような混注作業を簡便にすべく、2室容器タイプのIVH製剤にビタミンを配合することが試みられている。例えば、2室の一方に脂肪と糖を、他方にアミノ酸と電解質を収容し、種々のビタミンをそれぞれどちらかに収容することが行われている(特開平6−209979号公報、特開平8−709号公報)。
しかして、ここで用いられる脂肪は重要な栄養源ではあるが、脂肪の投与は必ずしも全ての患者に許容されるものではなく、例えば高脂血症、肝障害、血栓症、糖尿病ケトーシス等の患者には、脂肪の投与は禁忌とされている。また、脂肪は患者によってその至適投与量が異なる場合があり、単独投与が望まれることもある。
しかしながら、前記のような製剤では脂肪を配合することによって特定のビタミンが安定化されているため、脂肪を除いた場合には、ある種のビタミン(例えばビタミンB2 )を安定に保持することは困難であった。
【0006】
また、水溶性ビタミンB類を安定に配合するために、輸液のpHを酸性にしたり亜硫酸イオンを配合しない試みがなされている(特開平8−143459号公報)。しかしながら、当該輸液においては、ビタミンB1 は安定に配合されているが、他のビタミン類については具体的に示されていない。
【0007】
IVHにおいて、ビタミンB1 の欠乏は上記の通り大きな問題であるが、他のビタミンの欠乏も決して無視できるものではない。例えば、病態によっては、ビタミンCの欠乏で粘膜など組織での出血が起こったり、ビタミンB2 の欠乏により口内炎、口角炎、舌炎等が発症する虞がある。更に、ビタミンB12欠乏や葉酸欠乏による貧血等の合併症も報告されている。
【0008】
更に、ビタミンDは、ポリエチレンやポリプロピレン製容器に収容された薬液に添加してそのまま長期保存した場合、その含量が著しく低下してしまう。従って、患者にビタミンD欠乏によるカルシウム吸収障害や骨脆化を来たす虞も出てくる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、ビタミン類を長期間安定に含有する中心静脈投与用輸液を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者らは鋭意研究を行った結果、ビタミンB1は特定のpHの還元糖液に安定配合可能なこと、葉酸は特定のpHのアミノ酸液中で長期安定であること、ビタミンC並びに脂溶性ビタミンであるビタミンA、ビタミンD及びビタミンEは、上記2液とは別にすれば一緒に配合して安定であることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、還元糖を含有する溶液(A)、アミノ酸を含有する溶液(B)及び脂溶性ビタミンを含有する溶液(C)の3液からなる輸液であって、溶液(A)がビタミンB1を含有し、溶液(B)が葉酸並びにニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ナトリウム及びニコチン酸メチルから選ばれるニコチン酸誘導体を含有し、溶液(C)がビタミンB2、ビタミンC及びビオチンを含有し、かつ溶液(A)がpH3.5〜4.5、溶液(B)及び溶液(C)がpH5.5〜7.5であり、連通可能な隔壁で隔てられた2室容器の各室にそれぞれ溶液(A)及び溶液(B)が収容され、そのいずれか一方の室に溶液(C)を収容した容器が、用時連通可能に接続されてなることを特徴とする中心静脈投与用輸液を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の中心静脈投与用輸液は、還元糖を含有する溶液(A)、アミノ酸を含有する溶液(B)及び脂溶性ビタミンを含有する溶液(C)の3液からなり、用時に混合して使用されるものである。
溶液(A)に配合される還元糖としては、ブドウ糖、フルクトース、マルトース等が挙げられ、血糖管理などの点で、特にブドウ糖が好ましい。また、これらの還元糖以外にキシリトール、ソルビトール、グリセリン等の非還元糖を配合することもできる。
還元糖は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、溶液(A)中に120〜450g/l、特に150〜300g/l配合するのが好ましい。
【0013】
溶液(A)には、更にビタミンB1が配合され、これらを安定にするために、溶液(A)はpH3.5〜4.5、好ましくはpH3.8〜4.2に調整される。pHの調整は、通常用いられる種々の有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基を適宜使用して行うことができる。
【0014】
ビタミンB1 の配合量は、溶液(A)が半日〜1日分の投与量である場合、溶液(A)中に1〜12mg、特に1.5〜8mg配合するのが好ましい。ビタミンB1 (チアミン)としては、塩酸チアミン、硝酸チアミン、プロスルチアミン、オクトオチアミン等を使用することができる。ビタミンB1 を配合した溶液(A)中には、ビタミンB1 が分解されるのを防ぐため、亜硫酸塩及び亜硫酸水素塩を実質的に配合しないのが好ましい。
【0015】
また、溶液(B)に配合されるアミノ酸としては、必須アミノ酸、非必須アミノ酸の各種アミノ酸で、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン等が挙げられる。これらのアミノ酸は、純粋結晶状アミノ酸であるのが好ましい。また、これらのアミノ酸は、通常遊離アミノ酸の形態で用いられるが、特に遊離形態でなくてもよく、薬理学的に許容される塩、エステル、N−アシル誘導体や、2種アミノ酸の塩、ペプチドの形態で用いることもできる。
【0016】
これらのアミノ酸の溶液(B)における好ましい配合量(遊離形態で換算)は以下のとおりである。
【0017】
【表1】
【0018】
溶液(B)には、更に葉酸が配合され、pH5.5〜7.5、好ましくは6.0〜7.0に調整される。pHの調整は、通常用いられる種々の有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基を適宜使用して行うことができる。また、葉酸は、溶液(B)の半日〜1日投与分の液中に、0.1〜1mg、特に0.1〜0.7mg配合するのが好ましい。
【0019】
また、溶液(C)に配合される脂溶性ビタミンとしては、ビタンミンA、ビタミンD、ビタミンEが挙げられ、必要に応じてビタミンKを配合することもできる。ビタミンA(レチノール)としては、パルミチン酸エステル、酢酸エステル等のエステル形態であってもよく;ビタミンDとしては、ビタミンD1、ビタミンD2、ビタミンD3(コレカルシフェロール)及びそれらの活性型(ヒドロキシ誘導体)のいずれでもよく;ビタミンE(トコフェロール)としては、酢酸エステル、コハク酸エステル等のエステル形態であってもよく;ビタミンK(フィトナジオン)としては、メナテトレノン、メナジオン等の誘導体であってもよい。
【0020】
これらの脂溶性ビタミンは、溶液(C)の半日〜1日投与分の液中に、ビタミンAは1250〜5000IU、特に1400〜4500IU;ビタミンDは10〜1000IU、特に50〜500IU;ビタミンEは2〜20mg、特に3〜15mg;ビタミンKは0.2〜10mg、特に0.5〜5mg配合するのが好ましい。
【0021】
また、これら脂溶性ビタミンは、界面活性剤により、溶液(C)中に可溶化させるのが好ましい。ここで用いられる界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ツイーン80、ツイーン20等の市販品)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(HCO60等の市販品)、エチレングリコール・プロピレングリコールブロックコポリマー(プルロニックF68等の市販品)などが挙げられ、これらは通常10〜1000mg/lの濃度で使用される。
【0022】
溶液(C)には、更にビタミンCが配合され、pH5.5〜7.5、好ましくは6.0〜7.0に調整される。pHの調整は、通常用いられる種々の有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基を適宜使用して行うことができる。
ビタミンC(アスコルビン酸)としては、ナトリウム塩等を使用することができ、溶液(C)中の半日〜1日投与分の液中に、20〜250mg、特に30〜150mg配合するのが好ましい。
【0023】
また、ビタミンB2は溶液(B)又は溶液(C)に配合される。
ビタミンB2(リボフラビン)としては、リン酸エステル、そのナトリウム塩、フラビンモノヌクレオチド等を使用することができ、溶液(B)又は溶液(C)中の半日〜1日投与分の液中に、1〜10mg、特に2〜7mg配合するのが好ましい。ビタミンB2は、特に溶液(C)に配合するのが好ましい。
【0024】
本発明の輸液には、溶液(A)〜(C)のいずれにも、更に他のビタミン類を配合することができる。
例えば、溶液(A)には、更にパントテン酸誘導体を配合することができる。このビタミンは、溶液(A)〜(C)のいずれにも配合可能であるが、安定性向上の点より溶液(A)に配合するのが好ましい。パントテン酸誘導体としては、遊離体に加え、カルシウム塩や還元体であるパンテノールの形態で用いることもでき、その配合量は、溶液(A)の半日〜1日投与分の液中に1〜30mg、好ましくは5〜20mgとするのが好適である。
【0025】
溶液(B)には、更にビタミンB12を配合することができる。このビタミンも、溶液(A)〜(C)のいずれにも配合可能であるが、安定性向上の点より溶液(B)に配合するのが好ましい。特に、ビタミンB12は、ビタミンCとは別にするのが好ましい。
ビタミンB12は、例えば溶液(B)の半日〜1日投与分の液中に、1〜30μg、好ましくは2〜10μg配合するのがよい。
【0026】
また、溶液(A)に更にビタミンB6 を、溶液(B)に更にニコチン酸誘導体を、溶液(C)に更にビオチンを配合することもできる。これらのビタミンも、溶液(A)〜(C)のいずれにも配合可能であるが、製造の簡便性等の点より、それぞれ上記溶液に配合するのが好ましい。
ビタミンB6 の配合量は、例えば溶液(A)の半日〜1日投与分の液中に、1〜10mg、好ましくは1.5〜7mgとするのがよい。ビタミンB6 (ピリドキシン)としては、塩酸ピリドキシン等の塩の形態であってもよい。
【0027】
また、ニコチン酸誘導体の配合量は、例えば溶液(B)の半日〜1日投与分の液中に、5〜50mg、好ましくは10〜45mgとするのがよい。ニコチン酸誘導体としては、遊離体のほか、アミド、ナトリウム塩、メチルエステル等の誘導体を用いることができる。
ビオチンは、例えば溶液(C)の半日〜1日投与分の液中に、0.01〜0.3mg、好ましくは0.01〜0.1mg配合するのがよい。
【0028】
一方、本発明輸液の別の好ましい例として、ビタミンB6 、ビタミンB12、ニコチン酸誘導体、パントテン酸誘導体及びビオチンを全て溶液(A)に配合することができる。この例では、安定性を大幅に犠牲にすることなく、製造を簡便にすることができる。この場合にも、各成分の配合量等は前記と同様である。
【0029】
本発明輸液には、更に電解質を配合することができ、当該電解質は溶液(A)、溶液(B)及び溶液(C)のいずれにも配合することができる。かかる電解質としては、通常の電解質輸液などに用いられるものであれば特に制限されず、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、亜鉛等が挙げられ、例えば以下の化合物を、水和物、無水物を問わず使用することができる。
【0030】
ナトリウム源としては、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等が挙げられ、溶液(A)〜(C)の3液の混合後に25〜70mEq/lとなるように配合するのが好ましい。
カリウム源としては、塩化カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウム等が挙げられ、混合後に15〜50mEq/lとなるように配合するのが好ましい。
カルシウム源としては、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム等が挙げられ、混合後に3〜15mEq/lとなるように配合するのが好ましい。
【0031】
マグネシウム源としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム等が挙げられ、混合後に3〜10mEq/lとなるように配合するのが好ましい。
リン源としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウム等が挙げられ、混合後に5〜20mmol/lとなるように配合するのが好ましい。
塩素源としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が挙げられ、混合後に25〜70mEq/lとなるように配合するのが好ましい。
亜鉛源としては、塩化亜鉛、硫酸亜鉛等が挙げられ、混合後に0〜30μmol/lとなるように配合するのが好ましい。
【0032】
これらの電解質のうち、カルシウム塩及びマグネシウム塩はリン化合物と分離して、異なる溶液に配合しておくのが好ましい。その他の電解質は特に制限されず、溶液(A)〜(C)のいずれに配合してもよい。
【0033】
なお、溶液(B)には、安定化剤として亜硫酸塩及び/又は亜硫酸水素塩を添加することもでき、その場合、溶液(B)中に50mg/l以下配合するのが好ましい。
【0034】
本発明の輸液は、溶液(A)、溶液(B)及び溶液(C)の3液からなり、これらを収容するための容器は特に制限されないが、例えば溶液(A)及び溶液(B)を連通可能な隔壁で隔てられた2室容器の各室に収容し、更にそのいずれか一方の室に溶液(C)を収容した容器を用時連通可能に接続したものが挙げられる。
溶液(A)及び溶液(B)を収容するための容器としては、連通可能な隔壁で隔てられた2室容器であれば特に制限されず、例えば、隔壁が易剥離性溶着により形成されたもの(特開平2−4671号公報、実開平5−5138号公報等参照)、室間をクリップで挟むことにより隔壁が形成されたもの(特開昭63−309263号公報等参照)、隔壁に開封可能な種々の連通手段を設けたもの(特公昭63−20550号公報等参照)などが挙げられる。これらのうち、特に隔壁が易剥離性溶着により形成されたものが、大量生産に適しておりまた連通作業も容易であるので好ましい。
【0035】
また、上記容器の材質は、従来より医療用容器等に慣用されている各種のガス透過性プラスチックのいずれでも良く、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、架橋エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、これらのポリマーのブレンド、これらのポリマーの積層体などのいずれであってもよい。
【0036】
なお、各室への各成分の充填、収容は、常法に従って行うことができ、例えば、各液を各室に不活性ガス雰囲気下で充填した後、施栓し、加熱滅菌する方法が挙げられる。ここで、加熱滅菌の方法としては、高圧蒸気滅菌、熱水シャワー滅菌等の公知の方法を採用し得る。また、加熱滅菌は、必要に応じて二酸化炭素や窒素等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
【0037】
一方、溶液(C)を収容する容器としては、ビタミンDが吸着されてしまわないように、少なくとも内壁がビタミンDを実質的に吸着しない材質であるのが好ましい。そのような材質としては、例えばガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリロニトリル、環状ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン等)、ポリカーボネート、ポリ弗化エチレン(テフロン等)などが挙げられる。
溶液(C)は、上記材質の単層容器又は上記材質を内壁に有する多層容器(通常5ml程度の容積)に収容され、ゴム栓等で密封される(図1参照)。この場合、ゴム栓等の密封材も、ビタミンDが吸着されない物質(ポリ弗化エチレン等)でコーティングされているのが好ましい。
【0038】
そして、溶液(C)を収容する容器は、上記溶液(A)及び溶液(B)を収容する2室容器の一方の室に、用時連通可能に接続される。その手段としては、例えば図2に示すように、両頭針を介して2室容器の一方の口部に保持させる方法が挙げられる。このものは、図3に示すように、溶液(C)の容器を押すことにより、連通混合を行うことができる。
【0039】
また、溶液(C)を収容する容器の他の例としては、図4に示すような、2室容器の一方の口部内に小室を形成し、用時に針で刺通するようにしたものや、図5に示すような、2室容器の一方の室内に固着した剥離開封可能な小袋などを例示することができる。
【0040】
更に、上記のような容器に収容された本発明の輸液は、変質、酸化等を確実に防止するために、該容器を脱酸素剤と共にガス非透過性外装容器で包装するのがよく、とりわけ容器として、隔壁が易剥離性溶着により形成されたものを採用した場合は、外圧により隔壁が連通しないように該隔壁部にて折り畳まれた状態で包装するのが好ましい。また、必要に応じて不活性ガス充填包装等を行うこともできる。
【0041】
なお、包装に適したガス非透過性外装容器の材質としては、一般に汎用されている各種材質のフィルム乃至シートを使用することができ、例えばエチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステル等及びこれらの少なくとも1種を含むフィルム乃至シートなどが挙げられる。また、外装容器に遮光性をもたせるとより好適であり、例えば上記フィルム乃至シートにアルミラミネートを施すことにより実施できる。
【0042】
また、脱酸素剤としては、公知の各種のもの、例えば水酸化鉄、酸化鉄、炭化鉄等の鉄化合物を有効成分とするものを利用でき、例えば「エージレス」(三菱瓦斯化学社製)、「モジュラン」(日本化薬社製)、「セキュール」(日本曹達社製)等の市販品を使用することができる。
【0043】
なお、本発明の輸液の投与時には、必要に応じて他の配合薬、例えば微量元素(鉄、マンガン、銅、ヨウ素など)、抗生物質等を、配合変化等が起こらない範囲で任意に添加配合することもできる。
【0044】
【発明の効果】
本発明の中心静脈投与用輸液は、ビタミン類を長期間安定に含有するものである。
【0045】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例1及び2は参考例であって、特許請求の範囲に包含されるものではない。
【0046】
実施例1
注射用蒸留水にブドウ糖及び電解質を溶解し、酢酸でpH4として、糖電解質液を調製した。更に、ビタミンB1(塩酸チアミン)、ビタミンB6(塩酸ピリドキシン)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、ニコチン酸アミド、パンテノール及びビオチンを注射用蒸留水に溶解し、これを上記糖電解質液と混合し、無菌濾過して、表2に示した組成の溶液(A)を調製した。
また、各結晶アミノ酸及び電解質を注射用蒸留水に溶解し、酢酸でpH6とした後、葉酸を加えて無菌濾過し、表2に示した組成の溶液(B)を調製した。なお、溶液(B)には、安定化剤として亜硫酸水素ナトリウムを濃度50mg/lとなるように添加した。
溶液(A)の600ml及び溶液(B)の300mlを、それぞれ窒素置換下、ポリエチレン製2室容器の各室に充填し、密封した後、常法に従い高圧蒸気滅菌を行った。
【0047】
これとは別に、ビタミンA(パルミチン酸レチノール)、ビタミンD3(コレカルシフェロール)、ビタミンE(酢酸トコフェロール)及びビタミンK(フィトナジオン)をポリソルベート80(溶液(C)中の濃度=33mg/l)により可溶化した後、注射用蒸留水に溶解し、更にビタミンB2(リン酸リボフラビンナトリウム)及びビタミンC(アスコルビン酸)を加え、水酸化ナトリウムでpH6とした後、無菌濾過して、表2に示した組成の溶液(C)を調製した。
溶液(C)の4mlをガラス容器に充填し、テフロンコーティングゴム栓で密封した後、常法に従い高圧蒸気滅菌を行った。これを、上記2室容器の溶液(B)側の口部に、無菌室中にて両頭針を介して取付け(図2参照)、本発明の中心静脈投与用輸液を得た。
【0048】
実施例2
実施例1と同様にして、表2に示した組成の溶液(A)、溶液(B)及び溶液(C)を調製した。
溶液(A)の600ml及び溶液(B)の300mlを、それぞれ窒素置換下、ポリエチレン製の2室容器の各室に充填し、溶液(A)側に、ポリエチレンテレフタレート製小室を備えたポリエチレン製口部材を熔着して、密封した。
次に、上記口部材の小室中に溶液(C)の4mlを充填し、テフロンコーティングゴム栓で密封した後、常法に従い高圧蒸気滅菌を行い、本発明の中心静脈投与用輸液を得た。
【0049】
【表2】
【0050】
比較例1〜2
実施例1と同様にして、表2に示した実施例1と同一組成の溶液(A)、溶液(B)及び溶液(C)を調製した。
溶液(A)の600mlと、溶液(B)の300mlに溶液(C)の4mlを添加した液と、それぞれ窒素置換下、ポリエチレン製2室容器の各室に充填し、密封した後、常法に従い高圧蒸気滅菌を行い、比較例1とした。
また、溶液(A)の600mlに溶液(C)の4mlを添加した液と、溶液(B)の300mlとを、それぞれ窒素置換下、ポリエチレン製2室容器の各室に充填し、密封した後、定法に従い高圧蒸気滅菌を行い、比較例2とした。
【0051】
試験例1
実施例1及び2、並びに比較例1及び2で得られた輸液について、滅菌後及び更に40℃で4カ月放置した後の各ビタミンの含量を、日本薬局方に準じるバイオアッセイ(ビタミンB12及びビオチン)又はHPLC(その他のビタミン)により測定した。含量低下をきたしたビタミンについて、結果を表3に示す。なお、表3には、配合量に対する割合を百分率で示す。
【0052】
【表3】
【0053】
表3の結果より、本発明の輸液では、13種類のビタミンの含量は、いずれも4カ月放置後も許容範囲内であった。
これに対し、比較例1では、ビタミンB2 及びビタミンCが溶液(A)中に配合されているので、その含量低下が著しい。また、比較例2では、ビタミンK及びビタミンCが溶液(B)中に配合されているので、その含量が許容範囲以上に低下している。更に、比較例1と2では、ビタミンDが容器への吸着により激減している。
【0054】
実施例3〜4及び比較例3
実施例1と同様にして、表4に示す組成の溶液(A)、溶液(B)及び溶液(C)を調製した。
溶液(A)の600ml及び溶液(B)の300mlを、それぞれ窒素置換下、ポリエチレン製の2室容器の各室に充填し、溶液(A)側に、ポリエチレンテレフタレート製小室を備えたポリエチレン製口部材を熔着して、密封した。
次に、上記口部材の小室中に溶液(C)の4mlを充填し、テフロンコーティングゴム栓で密封した。常法に従い高圧蒸気滅菌を行い、本発明の中心静脈投与用輸液を得た。
【0055】
【表4】
【0056】
試験例2
実施例3〜4及び比較例3で得られた輸液について、試験例1と同様にして、安定性試験を行った。結果を表5に、配合量に対する割合を百分率で示す。
【0057】
【表5】
【0058】
表5の結果より、本発明の輸液では、13種類のビタミンの含量は、いずれも4カ月放置後も許容範囲内であった。
これに対し、比較例3では、ビタミンB1 が溶液(B)中に配合され、葉酸が溶液(A)中に配合されているので、それらの含量低下が著しい。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶液(C)を収容するための容器の一例を示す図である。
【図2】溶液(C)を収容した容器を、溶液(A)及び溶液(B)を収容した2室容器の一方の口部に、両頭針を介して保持させる方法を示す図である。
【図3】図2に示す容器において、溶液(C)の容器を押すことにより、溶液を連通混合させる方法を示す図である。
【図4】本発明の3液からなる輸液を収容するための容器の一例を示す図である。
【図5】本発明の3液からなる輸液を収容するための容器の一例を示す図である。
Claims (5)
- 還元糖を含有する溶液(A)、アミノ酸を含有する溶液(B)及び脂溶性ビタミンを含有する溶液(C)の3液からなる輸液であって、溶液(A)がビタミンB1を含有し、溶液(B)が葉酸並びにニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ナトリウム及びニコチン酸メチルから選ばれるニコチン酸誘導体を含有し、溶液(C)がビタミンB2、ビタミンC及びビオチンを含有し、かつ溶液(A)がpH3.5〜4.5、溶液(B)及び溶液(C)がpH5.5〜7.5であり、連通可能な隔壁で隔てられた2室容器の各室にそれぞれ溶液(A)及び溶液(B)が収容され、そのいずれか一方の室に溶液(C)を収容した容器が、用時連通可能に接続されてなることを特徴とする中心静脈投与用輸液。
- 溶液(C)中の脂溶性ビタミンが、界面活性剤により可溶化されている請求項1記載の中心静脈投与用輸液。
- 溶液(C)が、少なくとも内壁がビタミンDを吸着しない材質からなる容器に封入されている請求項1又は2記載の中心静脈投与用輸液。
- 溶液(C)が、少なくとも内壁がガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリロニトリル、環状ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート及びポリ弗化エチレンから選ばれる材質からなる容器に封入されている請求項3記載の中心静脈投与用輸液。
- 更に、電解質を溶液(A)及び/又は溶液(B)及び/又は溶液(C)に配合した請求項1〜4のいずれか1項記載の中心静脈投与用輸液。
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