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JP4161293B2 - モノマー回収方法および回収装置 - Google Patents

モノマー回収方法および回収装置 Download PDF

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JP4161293B2 JP2002070381A JP2002070381A JP4161293B2 JP 4161293 B2 JP4161293 B2 JP 4161293B2 JP 2002070381 A JP2002070381 A JP 2002070381A JP 2002070381 A JP2002070381 A JP 2002070381A JP 4161293 B2 JP4161293 B2 JP 4161293B2
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  • Separation, Recovery Or Treatment Of Waste Materials Containing Plastics (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は廃プラスチックなどのプラスチック類を酸素不存在下に加熱して連続的に熱分解し、その分解生成物を蒸留してモノマーを回収する方法および回収装置に関し、特に高いモノマー回収率を達成できる前記方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
工場や家庭から排出されるプラスチック類にはポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのオレフィン系樹脂、ポリスチレン(PS)やアクリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)などのスチレン系樹脂など種々のものがある。これらの廃プラスチックから有用成分を資源として回収するために酸素の不存在下で熱分解し、分解生成物を燃料油などとして回収する方法が一般に採用されている。
【0003】
また熱分解により得られた分解生成物をさらに蒸留し、高純度のモノマーとして回収する方法も採用されている。このような高純度のモノマーは品質の高いプラスチック原料やその他化学原料としてリサイクルできるので有用である。特にスチレン系樹脂は廃プラスチックとして大量に排出されるので、それを熱分解しスチレンモノマーとして回収する技術は商業的な面からも重要なものである。
【0004】
一般にプラスチックを熱分解するためには熱分解装置が使用され、代表的なものとして槽型の熱分解装置と管型の熱分解装置がある。
槽型の熱分解装置は底部が円錐形に形成された槽本体を有し、上方にプラスチックの投入部とガス状の分解生成物を排出するガス排出部、底部に熱分解により発生する残渣を排出する残渣排出部をそれぞれ設け、その周囲に断熱壁により構成される加熱部を配置する。槽型の熱分解装置は槽本体でのプラスチックの滞留時間を長く取れるので、ある程度滞留時間を必要とするバッチ方式の運転に適しているが、連続式の運転も可能である。
【0005】
管型の熱分解装置は細長い熱分解反応管により構成され、その周囲に断熱壁で構成した加熱部を配置する。そして加熱部で熱分解温度に加熱された熱分解反応器の一方の端部(導入部)からプラスチックを導入すると、プラスチックは内部を通過する間に酸素の不存在下に徐々に熱分解され、他方の端部(排出部)からガス状の分解生成物が排出される。
【0006】
管型の熱分解装置は容積当たりの伝熱面積が大きく、装置が小型化し熱分解速度も速いという利点があり、特に連続運転に適している。管型の熱分解装置には内部に残渣排出用のスクリューを有するものと有しないものが存在し、前者のタイプでは残渣類の排出は容易であるが容積効率はスクリュー分だけ小さくなり、後者ではその逆の特徴を有する。
【0007】
一般にプラスチックを熱分解して有用なモノマー成分を回収する場合、熱分解により目的とするモノマー成分以外に種々の副生物が副生する。例えばポリスチレンを熱分解する場合には、スチレンモノマーのほかにスチレンダイマー、スチレントリマー、トルエン、エチルベンゼン、αメチルスチレンなどの副生物が生成する。また、温度条件や圧力条件によっては副生物に加えて未分解物も多く残留する。
【0008】
これまでの実験によれば、プラスチックを熱分解する場合、高い温度で熱分解するとモノマー成分の収率が高くなることが分かっている。例えばポリスチレンからスチレンモノマーを高収率で生成する熱分解温度は700℃程度が好ましい。一方低い圧力、特に減圧領域で熱分解すると副生物の生成が抑制され、モノマー成分の収率が高くなる。そしてこれらの傾向は各種のプラスチックを熱分解する際に同じような傾向を示す。
【0009】
上記分解生成物は蒸留操作により、スチレンモノマー、スチレンモノマーより低沸点成分であるトルエン等、スチレンモノマーより高沸点成分である重質油とに分離する。この蒸留操作により熱分解装置に供給したポリスチレンの70%程度のスチレンモノマーを回収することができ、それ以外の成分は熱分解装置や蒸留装置への熱源を供給する燃焼炉等で燃焼される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来法ではモノマー回収率が70%程度であり、従来からその回収率の向上が強く要望されていた。
そこで本発明は従来法より高い回収率を達成できるモノマーの回収方法、およびその方法を実施する回収装置を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を達成する本発明に係る第1の発明は、プラスチックを熱分解装置で酸素不存在下に加熱して連続的に熱分解し、熱分解装置から流出する分解生成物を蒸留してモノマーを回収する方法において、蒸留により分離された重質油を熱分解装置から流出する分解生成物と熱交換し、その重質油をさらに熱分解装置で熱分解し、その分解生成物を蒸留することを特徴とするモノマー回収方法である
【0013】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、プラスチックスチレン系樹脂であることを特徴とするモノマー回収方法である
【0014】
請求項3に記載の本発明は、プラスチックを酸素不存在下に加熱して連続的に熱分解し、その生成物を蒸留してモノマーを回収する装置において、第1の熱分解装置と、第1の熱分解装置から流出する分解生成物を蒸留する蒸留装置と、蒸留装置で分離されたモノマーを回収するモノマー回収タンクと、蒸留装置で分離された重質油を熱分解装置から流出する分解生成物と熱交換し、その重質油を前記第1の熱分解装置に導入する第1の重質油導入手段を備えていることを特徴とするモノマー回収装置である
【0015】
請求項4に記載の本発明は、プラスチックを酸素不存在下に加熱して連続的に熱分解し、その生成物を蒸留してモノマーを回収する装置において、第1の熱分解装置と、第1の熱分解装置から流出する分解生成物を蒸留する蒸留装置と、蒸留装置で分離されたモノマーを回収するモノマー回収タンクと、蒸留装置で分離された重質油を熱分解する第2の熱分解装置と、前記重質油を第2の熱分解装置に導入する第2の重質油導入手段を備え、第2の熱分解装置から流出する分解生成物を前記蒸留装置で蒸留するように構成し、第1の重質油導入手段または第2の重質油導入手段に熱交換器を設け、その熱交換器で重質油を第1の熱分解装置から流出する分解生成物と熱交換するように構成したことを特徴とするモノマー回収装置である
【0017】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面により説明する。図1は本発明に係るモノマー回収方法を実施する装置のプロセスフロー図である。図中、1は第1の熱分解装置、2は管型の熱分解反応器、3は加熱部、4は導入部、5排出部、6は供給装置、7はホッパ、8はモータ、9は溶融押出部、10は燃焼炉、11はバーナ、12はブロワ、13は凝縮器、14は第1の蒸留塔、15はリボイラ、16は第2の蒸留塔、17はリボイラ、22はモノマー回収タンク、23は燃料タンク、24は油ポンプ、25は流量計、26は第1の重質油導入手段、40は蒸留装置、V1、V2は調整弁、D1、D2はダクト、a〜kは配管である。
【0018】
熱分解装置1は管型の熱分解反応器2と、その熱分解反応器2の周囲を覆うように配置された加熱部3により構成される。細長い直筒状に形成された熱分解反応器2は、耐熱性および熱伝導性に優れたステンレス等の金属材料で作られ、その一方の端部にプラスチックを導入する導入部4が設けられ、他方の端部にガス状の分解生成物を排出する排出部5が設けられる。そして導入部4より連続的に導入されたプラスチックは熱分解反応器2の内部を移動する間に熱分解され、得られた分解生成物が排出部5より連続的に排出する。
【0019】
熱分解反応器2の直径は数十mmから数百mm程度、長さは1〜数十m程度とされるが、それに制限されるものではなく、処理量を大きくする場合には直径と長さを適宜大きくする。なお熱分解反応器2の排出部5付近には、熱分解の際に発生する炭化物残渣を溜めるための拡大した直径を有するトラップなどを設けることが望ましい。
【0020】
加熱部3は断熱壁で囲まれた筒型の加熱室を有し、その加熱室内に燃焼炉10で生成した800℃程度の加熱ガス(燃焼ガス)をダクトD1により供給し、熱交換後の排ガスは排気ファン(図示せず)を設けたダクトD2から第1の蒸留塔14を加熱するリボイラ15,および第2の蒸留塔16を加熱するリボイラ17の加熱源として利用した後、排ガス処理装置(図示せず)に排出する。
【0021】
燃焼炉10には燃料タンク23から供給される重質油または他の液体燃料を燃焼するバーナ11、および燃焼用空気を供給するブロワ12が設けられ、さらに後述する蒸留装置40から流出した低沸点成分のガスを燃焼するための補助バーナ(図示せず)が設けられる。燃焼により発生した高温の燃焼ガスは加熱ガスとしてダクトD1から前記加熱部3に供給される。
【0022】
熱分解反応器2に溶融状態のプラスチックを供給するために供給装置6が設けられる。供給装置6は一般にプラスチックの射出成型用の押出機を使用することができ、通常、ホッパ7,モータ8および溶融押出部9を備えている。粉砕装置(図示せず)で細かく粉砕したプラスチック片がフィーダ等から配管aを経てホッパ7に受け入れられ、そこから溶融押出部9に供給される。
【0023】
溶融押出部9には電気ヒータが内蔵され、供給されたプラスチック片を例えば150℃〜250℃で加熱して溶融する。そして溶融プラスチックは所定速度で回転するスクリューを内蔵した溶融押出部9から配管bに押出されて、熱分解反応器2の導入部4に供給される。
【0024】
熱分解反応器2の排出部5から流出するガス状の分解生成物は、配管cを経て凝縮器(コンデンサ)13に導入される。分解生成物は凝縮器13の熱交換部において冷却水等の冷却媒体と熱交換し、凝縮した高沸点成分は配管dにより蒸留装置40に供給される。蒸留装置40は第1の蒸留塔14と第2の蒸留塔16により構成され、凝縮器13からの配管dは第1の蒸留塔14の中段部に接続される。一方、凝縮器13で凝縮しない低沸点成分は、真空ポンプ等の減圧装置を設けた配管eに吸引される。なお減圧装置から排出した低沸点成分は一般に悪臭を有するので、燃焼炉10の図示しない補助バーナに供給、または他の焼却炉に供給して焼却される。
【0025】
第1の蒸留塔14の底部にリボイラ15が設置され、塔頂から延長する配管eには減圧装置が接続される。第1の蒸留塔14から減圧装置に向かう配管eに凝縮器13を設け、その凝縮器13で凝縮した液成分の一部を第1の蒸留塔14の上部に還流し、残りの軽質油を燃料として利用するために燃料タンク23に排出し、非凝縮成分を減圧装置に排出するようにしている。
【0026】
第1の蒸留塔14の底部はポンプ(図示せず)を設けた配管fで第2の蒸留塔16の中段部に接続され、第1の蒸留塔14で分離された高沸点成分が第2の蒸留塔16に供給される。第2の蒸留塔16はその底部にリボイラ17が設置され、塔頂に配管gが接続される。そして配管gに回収タンク等のモノマー回収タンク22が接続される。なお、第2の蒸留塔16からモノマー回収タンク22に向かう配管gにも凝縮器13を設け、その凝縮器13で凝縮した液成分の一部を第2の蒸留塔16の上部に還流し、残りをスチレンとして排出し、非凝縮成分を減圧装置に導くようにしている。
【0027】
第2の蒸留塔16の塔底部に配管hが接続され、その配管hの先端は燃料タンク23に接続される。第2の蒸留塔16の塔底部からは重質油が排出し、油ポンプ24と調整弁V2を設けた配管hにより燃料タンク23に回収される。さらに配管hにおける調整弁V2の出口側から調整弁V1を設けた配管kが分岐し、その配管kの先端は配管bに接続される。そして後述するように、配管kの重質油は熱分解反応器2に導入し、そこで熱分解する。なお配管kにより第1の重質油導入手段26が構成される。
【0028】
前記分解生成物の凝縮器13と減圧装置の間、第1の蒸留塔14からの配管eに設ける凝縮器13と減圧装置の間、第2の蒸留塔16からの配管gに設ける凝縮器13と減圧装置の間にはそれぞれ調整弁(図示せず)が設けられ、それぞれの調整弁によりそれら凝縮器の減圧レベルを設定することができる。
【0029】
前記のように、分解生成物の凝縮器13の減圧レベルを調整することにより熱分解装置1(具体的にはその熱分解反応器2)の減圧レベルを設定することができ、第1の蒸留塔14からの配管eに設ける凝縮器13の減圧レベルを調整することにより第1の蒸留塔14の減圧レベルを設定することができ、第2の蒸留塔16からの配管gに設ける凝縮器13の減圧レベルを調整することにより第2の蒸留塔16の減圧レベルを設定することができる。
【0030】
次に、上記モノマー回収装置を使用してプラスチックからモノマーを回収する方法について説明する。なお以下の説明はプラスチックとして廃ポリスチレンを例に説明しているが、他のプラスチックについても同様に適用できる。なお、ポリオレフィンの場合はガソリンの収率を上げられる。
熱分解に先立って、減圧装置(図示せず)を運転しながら熱分解反応器2から第2の蒸留塔16までの熱分解系および蒸留系を窒素ガス等の不活性ガスで置換し、これらの系内を酸素不存在状態にする。
【0031】
系内の不活性ガスへの置換操作を完了したら、熱分解反応器2、第1の蒸留塔14および第2の蒸留塔16の内部圧力を前記調整弁により所定の減圧値に設定する。なお熱分解反応器2、第1の蒸留塔14および第2の蒸留塔16にそれぞれ圧力測定器を設置し、その圧力測定値が予め設定された値になるように制御器でそれぞれの調整弁を自動制御することもできる。
【0032】
上記各操作と共に、熱分解反応器2、第1の蒸留塔14および第2の蒸留塔16の温度を熱分解および蒸留に適した範囲に上昇させる。具体的には加熱部3への加熱ガス供給量を調整することにより熱分解反応器2の温度調整を行い、リボイラ15、17への加熱ガス供給量の調整により第1の蒸留塔14および第2の蒸留塔16の温度調整をそれぞれ行う。
【0033】
さらに前記各操作と共に、供給装置6を運転して熱分解反応器2への溶融ポリスチレン供給の準備を行う。廃ポリスチレン(以下、単にポリスチレンという)は粉砕機で10mm程度以下に粉砕し、フィーダ(図示せず)で供給装置6のホッパ7に供給する。なおポリスチレンが発泡体である場合はスチレン系などの溶剤を使用して減容処理を行い、さらに顆粒状にしてからホッパ7に供給する。
【0034】
ホッパ7からモータ8で溶融押出部9に供給したポリスチレンは、そこで150℃〜250℃に加熱されて溶融する。得られた溶融ポリスチレンは所定のスクリュー回転数で運転する溶融押出部9から押出され、配管bを経て熱分解反応器2の導入部4に流入する。熱分解反応器2に流入した溶融ポリスチレンは管内を通過する間に温度500℃〜700℃、圧力50Torr程度で且つ酸素不存在下に徐々に熱分解されて蒸発し、ガス状の分解生成物が他端の排出部5から流出する。
【0035】
分解生成物中にはスチレンモノマーのほかにスチレンダイマー、スチレントリマー、トルエン等が副生物として含まれる。排出部5から流出した分解生成物は配管cから凝縮器13に導入し、そこで冷却されて凝縮した高沸点成分がポンプ(図示せず)を設けた配管dから第1の蒸留塔14の中段に供給され、凝縮しない低沸点成分は配管eに流出する。
【0036】
第1の蒸留塔14はラッシリングやポールリング、その他の高性能な規則充填物を充填した充填式、またはトレイ式のいずれでもよいが、比較的低温で蒸留可能な20〜100Torr程度での減圧蒸留を行うには充填式が望ましい。第1の蒸留塔14でリボイラ15の加熱により減圧蒸留が行われると、塔頂からスチレンモノマーより沸点が低いトルエンなどの低沸点成分が留出して図示しない凝縮器13に排出される。なお、低沸点成分の留出割合は供給したポリスチレンの3〜5%程度である。
【0037】
凝縮器13で凝縮しない低沸点成分は、減圧装置に流出する。凝縮した液成分の一部は、第1の蒸留塔14の上段に還流し、残りは燃料タンク23に流出する。なお第1の蒸留塔14の還流比は50程度が望ましい。一方、第1の蒸留塔14の底部からは高沸点成分が流出し、配管fにより第2の蒸留塔16の中段に供給される。
【0038】
第2の蒸留塔16も第1の蒸留塔14と同様なものを使用し、圧力20〜100Torrの範囲でスチレンモノマーを含む高沸点成分を減圧蒸留する。第2の蒸留塔16でリボイラ17の加熱により減圧蒸留が行われると、塔頂からスチレンモノマーが留出し凝縮器13に排出する。
【0039】
上記の第2の蒸留塔16に併設される凝縮器13で、実質的にスチレンモノマーからなる成分が凝縮されて一部は第2の蒸留塔16の上段に還流し、残りは冷却器(図示せず)で冷却されてからモノマー回収タンク22に回収される。なお、第2の蒸留塔16の還流比=還流量/回収量は3程度とすることが望ましい。
【0040】
第2の蒸留塔16の底部からは高沸点な成分が重質油として流出し、油ポンプ24を設けた配管hを経由して調整弁V1を設けた配管kより熱分解反応器2の導入部4側に供給される。なお第2の蒸留塔16の底部から流出する重質油を配管kに全量ではなく部分的に供給する場合は、その残り部分が調整弁V2および図示しない冷却器を経て燃料タンク23に回収される。
【0041】
熱分解反応器2から流出する分解生成物に含まれるスチレンモノマーはこれらの蒸留操作で高純度に精製される。例えば高さが10m程度の第1の蒸留塔14および第2の蒸留塔16を使用し前記条件で減圧蒸留した場合、純度99.7%程度のスチレンモノマーがポリスチレン供給量の70%程度回収される。またその蒸留操作により分離される重質油はポリスチレン供給量の20〜30%程度である。
【0042】
前記のように、第2の蒸留塔16で分離される重質油はポリスチレン供給量の20〜30%で大きなウエイトを占める。そこで本実施の形態ではその重質油を第1の熱分解装置1における熱分解反応器2の導入部4側に戻して再び熱分解を行い、低沸点のスチレンモノマー等に変換することにより、スチレンモノマーの回収率を大幅に向上させている。なお流量計25を監視しながら二つの調整弁V1とV2を調整することにより、第1の熱分解装置1で熱分解する量と燃料タンク23に回収する量の割合を変えることができる。
【0043】
図2は本発明に係るモノマー回収方法を実施する装置の他のプロセスフロー図である。本実施の形態が図1の実施の形態と異なる部分は、第2の蒸留塔16から分離されて配管kに流入した重質油を第1の熱分解装置1ではなく、別に設けた第2の熱分解装置30に供給し、そこで熱分解して得られた分解生成物を凝縮器13への配管cに供給するように構成した点であり、その他の部分は同様に構成される。従って同じ部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0044】
第2の熱分解装置30には前記のように配管kを経て重質油が供給される。そして熱分解された分解生成物は配管lにより第1の熱分解装置1における排出部5側の配管cに供給される。なお前記配管kにより第2の重質油導入手段27が構成される。
【0045】
第2の熱分解装置30は第1の熱分解装置1と同様に構成される。すなわち管型の熱分解反応器2と、その周囲を覆うように配置された加熱部3を備え、熱分解反応器2の一方の端部に重質油の導入部4が設けられ、他方の端部にガス状の分解生成物の排出部5が設けられる。そして加熱ガスがダクトD1から加熱部3供給され、熱交換後にダクトD2から排出する。なお第2の熱分解装置30の処理容量は、所望する重質油の熱分解量により適宜設定される。
【0046】
このように第1の熱分解装置1でポリスチレンの熱分解を行い、第2の熱分解装置30で重質油の熱分解を行うように構成すると、ポリスチレンの熱分解条件と重質油の熱分解条件を互いに独立して設定できるという利点がある。例えばポリスチレンは減圧状態で熱分解するほうが副生物の生成割合が減少する。しかし重質油は常圧で熱分解するほうが熱分解の滞留時間を長くできるので完全に分解し易い。
【0047】
図3は本発明に係るモノマー回収方法を実施する装置のさらに他のプロセスフロー図である。本実施の形態が図1の実施の形態と異なる部分は、第2の蒸留塔16で分離された重質油を第1の熱分解装置1に供給する前に熱交換器31で加熱するように構成した点で、その他の部分は同様に構成される。従って同じ部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0048】
重質油は配管k(第1の重質油導入手段26)により熱交換器31に供給され、そこで第1の熱分解装置1における熱分解反応器2から流出する分解生成物と熱交換する。第2の蒸留塔16から流出する重質油の温度は通常100℃程度であるから、それを直接第1の熱交換装置1に供給すると、その熱交換反応器2の加熱に要する熱エネルギー量はそれに応じて増加する。
【0049】
一方、熱分解反応器2から流出する熱分解生成物の温度は400℃以上あるので、重質油をかかる高温の分解生成物と熱交換することにより、前記熱エネルギー消費量が大幅に抑制される。しかも高温の分解生成物は凝縮器13で冷却水により60℃程度まで冷却して凝縮させるので、その冷却に要するエネルギーも抑制できるという利点もある。
【0050】
図4は本発明に係るモノマー回収方法を実施する装置のさらに他のプロセスフロー図である。本実施の形態が図2の実施の形態と異なる部分は、第2の蒸留塔16で分離された重質油を第2の熱分解装置30に供給する前に熱交換器31で加熱するように構成した点で、その他の部分は同様に構成される。従って同じ部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0051】
図4の実施の形態によれば、図2と図3の各実施の形態の利点を兼ね備えたモノマー回収方法を達成できる。すなわち第2の蒸留装置16で分離された重質油を熱交換器31で第1の熱分解装置1からの分解生成物と熱交換することにより、第2の熱分解装置30の熱エネルギー消費量が抑制されると共に、前記分解生成物を凝縮する凝縮器13のエネルギー消費も抑制できる。また重質油を熱分解する第2の熱分解装置30を設けることにより、第1の熱分解装置1におけるプラスチックの熱分解条件と重質油の熱分解条件をそれぞれ独立して設定することができる。
【0052】
【実施例1】
次に本発明の実施例を示す。
図1の回収装置により廃ポリスチレンからスチレンモノマーを回収した。第1の熱分解装置1を構成する熱分解反応器2として、直径100mm、長さ10mのステンレス製直管を使用し、その周囲を囲む加熱部3に燃焼炉10から800℃の燃焼ガスを供給した。熱分解反応器2を酸素不存在下、熱分解温度700℃、圧力50Torrに維持し、その導入部4に供給装置6から溶融ポリスチレンを100Kg/hの流量で連続的に供給した。
【0053】
溶融ポリスチレンは熱分解反応器2を通過する間に熱分解され、排出部5からガス状の熱分解生成物が流出した。この流出物を凝縮器13で凝縮し、その液成分を第1の蒸留装置14の中段に供給して50Torrの圧力で減圧蒸留し、その塔底流出物を第2の蒸留塔16の中段に供給して50Torrの圧力で減圧蒸留した。第1の蒸留塔14の塔頂流出物からトルエンを主成分とする低沸点成分が3Kg/hの割合で得られ、第2の蒸留塔16の塔頂流出物からスチレンモノマーが65Kg/hの割合で得られた。残りの低沸点成分は、減圧装置を経て燃焼炉10に供給して燃焼した。
【0054】
一方、第2の蒸留塔16の塔底部から重質油が30Kg/hの流量で得られ、熱分解の初期にはその重質油の全量を第1の重質導入手段26を構成する配管kから第1の熱分解装置1に戻し、そこで供給装置6からのプラスチックと共に熱分解した。重質油のリターン開始により熱分解反応器2から流出する分解生成物の量は次第に増加し、それによって最終的には第2の蒸留塔16からのスチレンモノマーが80Kg/hまで増加し、重質油が45Kg/hまで増加して安定運転に入った。なお安定運転期では第2の蒸留塔16から流出する重質油45Kg/hのうち、第1の熱分解装置1に戻る量を30Kg/h、燃料タンク23に回収する量を15Kg/hになるように運転した。
【0055】
上記安定運転に入った時点のスチレンの回収率は、供給ポリスチレンに対して80%程度に達した。また本回収装置によりポリスチレンを熱分解した場合、第1の熱分解装置1には溶融ポリスチレンと重質油が渾然一体として流れるので、熱分解反応管2内の蒸気流速が増加し、それによって熱分解反応管2内部に付着する不純物による汚れも付き難くなることが分かった。
【0056】
【実施例2】
図2の回収装置により廃ポリスチレンからスチレンモノマーを回収した。第1の熱分解装置1、第1の蒸留装置14、第2の蒸留装置16を実施例1と同様なものを使用し、それらの運転状態も実施例1と同様とした。また第2の熱分解装置30も第1の熱分解装置1と同様なものを使用し、常圧下に温度700℃で運転した。その結果安定運転に入った状態で、スチレンの回収率は供給ポリスチレンに対して85%程度に達した。
【0057】
【発明の効果】
以上のように請求項1の発明に係るモノマー回収方法は、プラスチックを熱分解装置で酸素不存在下に加熱して連続的に熱分解し、熱分解装置から流出する分解生成物を蒸留してモノマーを回収する方法において、蒸留により分離された重質油を熱分解装置から流出する分解生成物と熱交換し、その重質油をさらに熱分解装置で熱分解し、その分解生成物を蒸留することを特徴とするモノマー回収方法である
【0058】
上記回収方法によれば、蒸留装置で得られた重質油を熱分解装置で熱分解するので、目的とするモノマーの収率を大幅に向上できる。しかも従来は燃料として使用していた重質油を利用価値の高いプラスチック原料等にリサイクルできる。
【0059】
さらに、熱分解する前の重質油を熱分解装置から流出する分解生成物と熱交換することができるので、熱分解装置における熱エネルギー消費を大幅に抑制できると共に、熱分解装置から流出する分解生成物を凝縮する凝縮器に要する冷却エネルギーも抑制できる。
【0060】
また請求項3の発明に係るモノマー回収装置は、第1の熱分解装置1と、第1の熱分解装置1から流出する分解生成物を蒸留する蒸留装置40と、蒸留装置40で分離されたモノマーを回収するモノマー回収タンク22と、蒸留装置40で分離された重質油を熱分解装置から流出する分解生成物と熱交換し、その重質油を前記第1の熱分解装置1に導入する第1の重質油導入手段26を備えていることを特徴とする。
本装置によれば前記モノマー回収方法を効率よく実施することができる。さらに熱分解する前の重質油を熱分解装置から流出する分解生成物と熱交換するので、熱分解装置における熱エネルギー消費を大幅に抑制できる。
【0061】
また請求項4の発明に係るモノマー回収装置は、第1の熱分解装置1と、第1の熱分解装置1から流出する分解生成物を蒸留する蒸留装置40と、蒸留装置40で分離されたモノマーを回収するモノマー回収タンク22と、蒸留装置40で分離された重質油を熱分解する第2の熱分解装置30と、前記重質油を第2の熱分解装置30に導入する第2の重質油導入手段27を備え、第2の熱分解装置30から流出する分解生成物を前記蒸留装置40で蒸留するように構成し、第1の重質油導入手段26または第2の重質油導入手段27に熱交換器31を設け、その熱交換器31で重質油を第1の熱分解装置1から流出する分解生成物と熱交換するように構成したことを特徴とする。
【0062】
本装置によれば前記モノマー回収方法を効率よく実施することができる。さらにプラスチックの熱分解条件と重質油の熱分解条件を互いに独立して設定できるので、目的とするモノマーの収率をより一層高めることができる。
【0063】
さらに、熱分解装置における熱エネルギー消費を大幅に抑制できると共に、熱分解装置から流出する分解生成物を凝縮する凝縮器に要する冷却エネルギーも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るモノマー回収方法を実施する装置のプロセスフロー図。
【図2】本発明に係るモノマー回収方法を実施する装置の他のプロセスフロー図。
【図3】本発明に係るモノマー回収方法を実施する装置のさらに他のプロセスフロー図。
【図4】本発明に係るモノマー回収方法を実施する装置のさらに他のプロセスフロー図。
【符号の説明】
1 第1の熱分解装置
2 熱分解反応器
3 加熱部
4 導入部
5 排出部
6 供給装置
7 ホッパ
8 モータ
9 溶融押出部
10 燃焼炉
11 バーナ
12 ブロワ
13 凝縮器
14 第1の蒸留塔
15 リボイラ
16 第2の蒸留塔
17 リボイラ
22 モノマー回収タンク
23 燃料タンク
24 油ポンプ
25 流量計
26 第1の重質油導入手段
27 第2の重質油導入手段
30 第2の熱分解装置
31 熱交換器
40 蒸留装置
V1,V2 調整弁
D1,D2 ダクト
a〜l 配管

Claims (4)

  1. プラスチックを熱分解装置で酸素不存在下に加熱して連続的に熱分解し、熱分解装置から流出する分解生成物を蒸留してモノマーを回収する方法において、蒸留により分離された重質油を熱分解装置から流出する分解生成物と熱交換し、その重質油をさらに熱分解装置で熱分解し、その分解生成物を蒸留することを特徴とするモノマー回収方法。
  2. 請求項1において、プラスチックがスチレン系樹脂であることを特徴とするモノマー回収方法。
  3. プラスチックを酸素不存在下に加熱して連続的に熱分解し、その生成物を蒸留してモノマーを回収する装置において、第1の熱分解装置1と、第1の熱分解装置1から流出する分解生成物を蒸留する蒸留装置40と、蒸留装置40で分離されたモノマーを回収するモノマー回収タンク22と、蒸留装置40で分離された重質油を熱分解装置から流出する分解生成物と熱交換し、その重質油を前記第1の熱分解装置1に導入する第1の重質油導入手段26を備えていることを特徴とするモノマー回収装置。
  4. プラスチックを酸素不存在下に加熱して連続的に熱分解し、その生成物を蒸留してモノマーを回収する装置において、第1の熱分解装置1と、第1の熱分解装置1から流出する分解生成物を蒸留する蒸留装置40と、蒸留装置40で分離されたモノマーを回収するモノマー回収タンク22と、蒸留装置40で分離された重質油を熱分解する第2の熱分解装置30と、前記重質油を第2の熱分解装置30に導入する第2の重質油導入手段27を備え、第2の熱分解装置30から流出する分解生成物を前記蒸留装置40で蒸留するように構成し、第1の重質油導入手段26または第2の重質油導入手段27に熱交換器31を設け、その熱交換器31で重質油を第1の熱分解装置1から流出する分解生成物と熱交換するように構成したことを特徴とするモノマー回収装置。
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