JP4161247B2 - トロイダル無段変速機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車または各種産業機械などに用いられるトロイダル無段変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用変速機として、例えば、図2および図3に示すようなトロイダル無段変速機が知られている。
このトロイダル無段変速機は、入力軸1と中心軸を同じくして入力側ディスク2が設けられるとともに、入力軸1と中心軸を同じくして配置された出力軸3の端部に出力側ディスク4が固定されている。トロイダル無段変速機を収めたケーシングの内側には、枢軸5、5を中心として揺動する複数個(この例では2個)のトラニオン6、6が設けられている。すなわち、各枢軸5、5はそれぞれ、入力側、出力側両ディスク2、4の軸方向(図2および図3において左右方向)に関してこれら両ディスク2、4の中間部に、これら両ディスク2、4の軸方向に対し直交する方向でかつこれら両ディスク2、4の中心軸に対し捻れの位置に配置されて、各トラニオン6、6の両端部外側面に設けられている。
【0003】
また、各トラニオン6、6の中間部には、変位軸7、7の基端部が支持されており、各枢軸5、5を中心として各トラニオン6、6を揺動させることにより、各変位軸7、7の傾斜角度が変化するようになっている。各変位軸7、7には、それぞれパワーローラ8、8が回転自在に支持されている。これら各パワーローラ8、8は、入力側、出力側両ディスク2、4の間に挟持されている。すなわち、これらの入力側、出力側両ディスク2、4の互いに対向する内側面2a、4aはそれぞれ、枢軸5を中心とする円弧を、入力軸1および出力軸3を中心に回転させた場合に得られる凹面に形成され、これらの内側面2a、4aに、球状凸面に形成された各パワーローラ8、8の周面8a、8aが当接されている。
【0004】
入力軸1と入力側ディスク2との問には、ローディングカム式の押圧装置9が設けられ、この押圧装置9によって、入力側ディスク2が出力側ディスク4に向けて押圧されている。この押圧装置9は、入力軸1と共に回転するカム板10と、保持器11により保持された複数個(例えば4個)のローラ12とを備えている。カム板10の片側面(図2および図3において左側面)には、円周方向に亙る凹凸面であるカム面13が形成され、入力側ディスク2の外側面(図2および図3において右側面)にも、同様のカム面14が形成されており、これらの間に、複数個のローラ12が入力軸1の中心に対して放射方向の軸を中心とする回転自在に支持されている。
【0005】
このように構成されたトロイダル無段変速機においては、入力軸1の回転に伴ってカム板10が回転すると、カム面13が複数個のローラ12を入力側ディスク2の外側面のカム面14に押圧する。その結果、入力側ディスク2が、両パワーローラ8、8に押圧されるとともに、一対のカム面13、14と複数個の口一ラ12との押し付け合いに基づいて入力側ディスク2が回転する。そして、この入力側ディスク2の回転が、両パワー口ーラ8、8を介して出力側ディスク4に伝達され、この出力側ディスク4に固定された出力軸3が回転する。
【0006】
入力軸1と出力軸3との回転速度比(変速比)を変える場合であって、入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう場合には、枢軸5、5を中心として各トラニオン6、6を揺動させ、図2に示すように、各パワーローラ8、8の周面8a、8aが、入力側ディスク2の内側面2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの外周寄り部分とにそれぞれ当接するように、各変位軸7、7を傾斜させる。
一方、増速を行なう場合には、枢軸5、5を中心として各トラニオン6、6を揺動させ、図3に示すように、各パワーローラ8、8の周面8a、8aが、入力側ディスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの中心寄り部分とにそれぞれ当接するように、各変位軸7、7を傾斜させる。各変位軸7、7の傾斜角度を図2と図3との中間にすれば、入力軸1と出力軸3との間で、中間の変速比を得られる。
【0007】
図4および図5は、より具体化されたトロイダル無段変速機を示している。
このトロイダル無段変速機では、入力側ディスク2と出力側ディスク4とがそれぞれ、入力軸15の外周部にニードル軸受16、16を介して回転白在に支持されている。また、カム板10が入力軸15の端部(図4において左端部)の外周面にスプライン係合され、鍔部17により入力側ディスク2から離間する方向への移動を阻止されている。そして、このカム板10とローラ12、12とにより、入力軸15の回転に基づいて、入力側ディスク2を出力側ディスク4に向けて押圧しつつ回転させる、ローディングカム式の押圧装置9が構成している。
出力側ディスク4には、出力歯車18がキー19、19により結合され、これら出力側ディスク4と出力歯車18とが一体的に回転するようになっている。出力歯車18およびこの出力歯車18と噛合された図示しない歯車等が、出力側ディスク4の回転を取り出すための動力取り出し手段を構成している。
【0008】
一対のトラニオン6、6の両端部に設けた枢軸5、5は、一対の支持板20、20に、揺動自在および軸方向(図4において表裏方向、図5において左右方向)に変位自在に支持されている。一対の支持板20、20は、十分な剛性を有する板状に形成されており、各支持板20、20の中央部に形成された円孔21、21がそれぞれ、ケーシング22の内面およびケーシング22内に設けたシリンダケース23の側面に固設した支持ピン24a、24bに外嵌されることにより、ケーシング22の内側に、揺動白在および各枢軸5、5の軸方向に変位自在に支持されている。また、各支持板20、20の両端部にはそれぞれ、円形の支持孔25、25が形成されており、これらの各支持孔25、25にそれぞれ、トラニオン6、6の両端部に設けた各枢軸5、5が、外輪26、26を備えたラジアルニードル軸受27、27により支持されている。これらの構成により、各トラニオン6、6が、各枢軸5、5を中心として揺動白在およびこれら各枢軸5、5の軸方向に変位自在に、ケーシング22内に支持されている。
【0009】
各トラニオン6、6の中間部に形成された円孔40、40にはそれぞれ、変位軸7、7が支持されている。各変位軸7は、互いに平行でかつ偏心した支持軸部28と枢支軸部29とを備えている。各支持軸部28は、各円孔40の内側に、ラジアルニードル軸受30を介して揺動自在に支持されている。また、各枢支軸部29の外周部には、パワーローラ8がラジアルニードル軸受31を介して回転白在に支持されている。
【0010】
なお、上記一対の変位軸7、7は、入力軸15を中心として、点対象の位置(180度反対側の位置)になるように配置されている。また、これら各変位軸7、7の各枢支軸部29、29が各支持軸部28、28に対し偏心している方向は、入力側、出力側両ディスク2、4の回転方向に関し同方向(図5において左右逆方向)とされている。また、各枢支軸部29、29の軸方向は、入力軸15の軸方向(図4において左右方向、図5において表裏方向)に対しほぼ直交する方向とされている。したがって、各パワーローラ8、8は、入力軸15の軸方向に亙る若干の変位が許容されて支持されている。その結果、構成各部品の寸法精度のばらつき、あるいは動力伝達時の弾性変形等に起因して、各パワー口ーラ8、8が入力軸15の軸方向に多少変位しても、この変位を吸収でき、構成各部品に無理な力が加わることがない。
【0011】
また、各パワーローラ8、8の外側面と各トラニオン6、6の中間部内側面との間にはそれぞれ、パワーローラ8、8の外側面の側から順に、スラスト玉軸受等のスラスト転がり軸受32、32と、後述する外輪33、33に加わるスラスト荷重を支承するスラストニードル軸受等のスラスト軸受34、34とが設けられている。このうちのスラスト転がり軸受32、32は、各パワーローラ8、8に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、各パワーローラ8、8の回転を許容している。また、各スラスト軸受34、34は、各パワーローラ8、8から各スラスト転がり軸受32、32の外輪33、33に加わるスラスト荷重を支承しつつ、枢支軸部29、29および外輪33、33が支持軸部28、28を中心に揺動することを許容している。
【0012】
また、各トラニオン6、6の一端部(図5において左端部)にはそれぞれ、駆動ロッド35、35が結合され、各駆動ロッド35、35の中間部外周面には、駆動ピストン36が固設されている。各駆動ピストン36、36はそれぞれ、シリンダケース23内に設けた駆動シリンダ37、37内に油密に嵌装されている。さらに、ケーシング22内に設けた支持壁38と入力軸15との間には、一対の転がり軸受39、39が設けられて、入力軸15がケーシング22内に回転自在に支持されている。
【0013】
このように構成されたトロイダル無段変速機においては、入力軸15の回転が押圧装置9を介して入力側ディスク2に伝えられる。そして、この入力側ディスク2の回転が、一対のパワーローラ8、8を介して出力側ディスク4に伝達され、さらにこの出力側ディスク4の回転が、出力歯車18より取り出される。入力軸15と出力歯車18との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン36、36を互いに逆方向に変位させる。そうすると、これら各駆動ピストン36、36の変位に伴って一対のトラニオン6、6がそれぞれ、逆方向に変位する。例えば、図5において下側のパワーローラ8が同図の右側に、同図の上側のパワーローラ8が同図の左側に、それぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ8、8の周面8a、8aと入力側ディスク2および出力側ディスク4の内側面2a、4aとの当接部に作用する、接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って各トラニオン6、6が、支持板20、20に枢支された枢軸5、5を中心として、図4において互いに逆方向に揺動する。その結果、上述の図2および図3に示したように、各パワーローラ8、8の周面8a、8aと各内側面2a、4aとの当接位置が変化し、入力軸15と出力歯車18との問の回転速度比が変化する。
【0014】
なお、動力伝達時に構成各部品が弾性変形する結果、各パワーローラ8、8が入力軸15の軸方向に変位すると、これら各パワーローラ8、8を枢支している各変位軸7、7が、各支持軸部28、28を中心として僅かに揺動する。この揺動の結果、各スラスト転がり軸受32、32の外輪33、33の外側面と各トラニオン6、6の内側面とが相対変位する。これら外側面と内側面との間には、各スラスト軸受34、34が存在するため、この相対変位に要する力は小さい。したがって、上述のように各変位軸7、7の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
【0015】
上述のように構成され作用するトロイダル無段変速機の場合には、パワーローラ8、8を支持するためのラジアルニードル軸受31およびスラスト転がり軸受32等、各トラニオン6、6と各変位軸7、7と各パワーローラ8、8との組み合わせ部分に存在する各軸受部分に潤滑油を送り込む必要がある。なぜならば、トロイダル無段変速機の運転時にパワーローラ8、8は、大きな荷重を受けつつ高速回転する。したがって、ラジアルニードル軸受31およびスラスト転がり軸受32等の軸受の耐久性を確保するためには、これら軸受31、32を含む各軸受部分に十分な量の潤滑油を送り込む必要があるからである。
【0016】
このために、図4、5に示した構造の場合には、各トラニオン6、6の内部に、連続する給油孔38a、38bを形成している。そして、各駆動シリンダ37、37の低圧室側から、これら各駆動シリンダ37、37内に存在する作動油を、給油孔38a、38b内に潤滑油として送り込むようにしている。この送り込まれた潤滑油は、給油孔38bの下流端から吐出して、トラニオン6の内側面とスラスト転がり軸受32の外輪33の外側面との間に送り込まれる。これにより、ラジアルニードル軸受31およびスラスト転がり軸受32等の軸受部分を潤滑している。なお、この部分の構造および作用については、実公平4−48351号公報に、より詳しく記載されている。
【0017】
また、ラジアルニードル軸受31やスラスト転がり軸受32などの軸受部分に潤滑油を送り込むための構造として、従来、図6に示すような構造が知られている。
このトロイダル無段変速機では、トラニオン6の内部に設けた給油通路43が、給油孔41と給油孔42と給油孔72とを、直列に接続して成る。このうちの給油孔41は、トラニオン6の両端部に設けた一対の枢軸5、5の中心軸に対し平行に孔を設け、この孔をトラニオン6の中間部内部で終わらせている。このような給油孔41は、ボール盤等により、トラニオン6の軸方向片端面から円孔40に向けてドリル刃を挿入するなどにより形成し、形成後は、その開口部をプラグにより塞いでおく。
【0018】
一方、給油孔42は、一対の枢軸5、5のうちの一方(図6の左側)の枢軸5の中心部に形成した通孔45の内周面にその一端を開口させると共に、その一部を給油孔41に通じさせている。給油孔72は、トラニオン6の中間部の内側面にその一端を開口させると共に、その他端部を給油孔41に通じさせている。また、給油孔42および給油孔72の各他端をトラニオン6の中間部内部で終わらせている。このような給油孔42は、通孔45の開口側から、また給油孔72は、トラニオン6中間部の内側面から、ボール盤等によってドリル刃を挿入する等により形成する。
【0019】
トロイダル無段変速機を組み立てた状態では、トラニオン6を各枢軸5、5の軸方向に変位させるためのアクチュエータである油圧シリンダを備えている。油圧シリンダを構成する駆動ロッド35は、その周面の一部(図6の下部)に駆動ロッド35の中心軸に対して平行に給油溝63を形成し、この給油溝63の一端(図6の左端部)を駆動ロッド35の中間部で終わらせて、その端部を潤滑油の供給口62に通じさせている。そして、給油溝63の他端は、通孔45内の駆動ロッド35の先端部の途中で終わらせている。この駆動ロッド35の先端部途中で終わらせた給油溝63の端部が、給油孔42の開口部と対向して配置され、これにより給油溝63を給油孔42に通じさせている。給油溝63は、両端部を除いて、枢軸5の通孔の内周面および駆動ロッド35の外周面に固定された駆動ピストン61の基部の円筒部により覆われている。
【0020】
さらに、変位軸7の枢支軸部29の内部には、給油孔73を形成している。この給油孔73の上流側端部は、枢支軸部29の内側端面で支持軸部28の外周面に対し偏心した部分に開口しており、給油孔72の下流側端部開口と対向している。そして、給油孔73から分岐した分岐ノズル孔73a、73bの下流端を、枢支軸部29の外周面で、スラスト転がり軸受32およびラジアルニードル軸受31の内径側に対向する部分にそれぞれ開口させている。
【0021】
トロイダル無段変速機の運転時には、図示しない給油ポンプ等の給油手段により、供給口62から給油溝63に潤滑油を送り込む。そして、この潤滑油を、給油孔42、41、72を通じて、給油孔73およびトラニオン6内側面と外輪33の外側面との間に送り込む。この送り込まれた潤滑油は、ラジアルニードル軸受31、スラスト転がり軸受32、ラジアルニードル軸受30およびスラスト軸受34を含む各軸受部分に送り込まれて、これらの部分を潤滑する。
【0022】
ところで、図4〜7に示した従来の構造では、給油孔38a(図5)または給油孔42(図6)が、トラニオン6の端部に設けた枢軸5の中心軸に対し傾斜している。すなわち、いずれの構造の場合も、給油孔38aまたは給油孔42の上流側開口の延長上には、枢軸5の中心部に形成した通孔45の開口が存在する。この理由は、従来構造のいずれもが、給油孔38aまた給油孔42を、通孔45の開口側からドリル刃を挿入して形成する事を意図しているためである。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のトロイダル無段変速機においては、トラニオン6内部に給油孔38a、38bまたは給油孔42、41、72を形成する加工を行なうと、次のような問題が生じる。
(1)給油孔38a、38bまたは給油孔42、41、72をドリル加工で形成するために、加工コストが高くなり、変速機全体の価格が高くなる。特に、両給油孔38a、42の場合には、加工開始時に、ドリル刃を通孔45の内周面に小さな傾斜角度で強く突き当てなければならないため、このドリル刃によるトラニオン6の切削作業をゆっくり行わなければならないだけでなく、ドリル刃の耐久性も短くなるので、加工コストがより高くなる。
(2)給油孔38a、38bまたは給油孔42、41、72のドリル加工のときに、各孔の穴にバリが残り易い。このバリは熱処理によって硬くなり、運転中に油の流れによって脱落し、各軸受部やトラクション動力伝達部などに噛み込んで圧痕をつけ、変速機の耐久性を低下させる。特にドリル穴が交差する部分で、このバリが生じ易い。
(3)トラニ才ン6には、パワーローラ8にかかる約6トン近いスラスト力が加わり、これを両端で支えるために大きな曲げ応力が生じる。このような状態にあるトラニオン6に、ドリル穴のような部分があると、この部分に応力が集中してトラニオン6の強度が低下し、甚だしい場合にはトラニオン6が破損するおそれもある。
【0024】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、トラニオンの強度を向上させることができるとともに、耐久性の低下を防止でき、さらに加工コストを低減することができるトロイダル無段変速機を提供することを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のトロイダル無段変速機は、回転自在に支持された入力軸と、この入力軸と共に回転自在な入力側ディスクと、この入力側ディスクと中心軸を同じくして配置され、かつこの入力側ディスクに対して回転自在に支持された出力側ディスクと、これら入力側、出力側両ディスクの軸方向に関してこれら両ディスクの中間部に、これら両ディスクの軸方向に対し直交する方向でかつこれら両ディスクの中心軸に対し捻れの位置に配置されて当該位置で揺動する複数のトラニオンと、これら各トラニオンに支持された変位軸に回転白在に支持され、入力側および出力側両ディスクの間に挟持された複数個のパワーローラと、これら各パワーローラの外側面と前記各トラニオンの内側面との間に設けたスラスト転がり軸受と、前記各トラニオンに設けられた給油通路とを備え、入力側、出力側両ディスクの互いに対向する内側面を、それぞれ断面が円弧形の凹面とし、前記各パワーローラの周面を球面状の凸面として、この周面と前記内側面とを当接させているトロイダル無段変速機において、前記各トラニオンに設けられた給油通路は、前記トラニオンの内側面に形成された溝と、この溝を覆う蓋部材により構成されていることを特徴とする。
【0026】
請求項1に記載の発明においては、トラニオンに設けられた給油通路を通して、パワーローラを支持するためのラジアル軸受やスラスト転がり軸受等の軸受部分に潤滑油が供給される。そして、給油通路が溝と蓋部材とにより構成されているので、従来のようにトラニオンの内部にドリル加工により孔を形成する必要がない。したがって、応力集中を緩和することができるので、従来よりも曲げ応力に対するトラニオンの強度を向上させることができ、同じ強度のトラニオンであれば、トラニオン全体の小型化、軽量化を実現することができる。また、ドリル加工に伴うバリの発生が無くなるので、このバリによる耐久性の低下を防止することができる。また、コストの高いドリル加工を無くすることができるので、加工コストを低減することができる。
【0027】
請求項2に記載のトロイダル無段変速機は、請求項1に記載の発明において、前記蓋部材は、前記スラスト転がり軸受の外輪と前記トラニオンの内側面との間に設けられたスラスト軸受の軌道輪を兼ねていることを特徴とする。
【0028】
請求項2に記載の発明においては、蓋部材がスラスト軸受の軌道輪を兼ねているので、部品点数を削減できるため、製造コストを低減することができる。
【0029】
請求項3に記載のトロイダル無段変速機は、請求項1または請求項2記載の発明において、前記給油通路を構成する溝は、塑性加工によって形成されていることを特徴とする。
【0030】
請求項3記載の発明においては、給油通路を構成する溝が塑性加工により形成されるので、加工コストをさらに低減することができるとともに、この溝部周辺が加工硬化し、強度を高めることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、図1において、図6と同一構成要素には同一符号を付してその説明を簡略化する。
本実施の形態に係るトロイダル無段変速機では、図1に示すように、トラニオン6に設けられている給油通路64は、トラニオン6の内側面に形成された溝65と、これを覆う板状の蓋部材66とにより構成されている。溝65の一端は一方の枢軸5の通孔45に達して、給油口63の一端に連結している。また、溝65の他端は、変位軸7の近くまで達して、変位軸7の給油孔73に潤滑油を供給できるようになっている。蓋部材66は、給油溝63と対向している部分と変位軸側の端部を除いて溝65を覆っているとともに、トラニオン6とスラスト転がり軸受32の外輪33との間に配設されているスラスト軸受34の軌道輪を兼ねている。
【0032】
このトロイダル無段変速機においては、供給口62から給油溝63に送り込まれた潤滑油は、給油溝63および給油通路64を通じて、給油孔73およびトラニオン6内側面と外輪33の外側面との間に送り込まれる。この送り込まれた潤滑油は、ラジアルニードル軸受31、スラスト転がり軸受32、ラジアルニードル軸受30およびスラスト軸受34を含む各軸受部分に送り込まれて、これらの部分を潤滑する。
【0033】
このように構成されたトロイダル無段変速機にあっては、トラニオン6の給油通路64が溝65とこれを覆う蓋部材66とにより構成されているので、従来のようにトラニオン6の内部にドリル加工により孔を形成する必要がない。そのため、応力集中を緩和することができるので、従来よりも曲げ応力に対するトラニオン6の強度を向上させることができる。したがって、同じ強度のトラニオンであれば、トラニオン全体の小型化、軽量化を図ることができる。また、ドリル加工に伴うバリの発生が無くなるので、このバリによる耐久性の低下を防ぐことができる。また、コストの高いドリル加工を無くすることができるので、加工コストを低減することができる。
【0034】
また、蓋部材66がスラスト軸受34の軌道輪を兼ねているので、部品点数を削減できるので、製造コストをさらに低減することができる。
加えて、トラニオン6の溝65を、鍛造等の塑性加工によって形成することができ、この場合には加工コストをさらに低減することができる。また、塑性加工により、溝65周辺が加工硬化するので、トラニオン6の強度を高めることができる。
【0035】
なお、溝65と蓋部材66との間に多少の隙間があっても、漏れた潤滑油はパワーローラ8の周面8aと入力ディスク2または出力ディスク4とのトラクション面導入されて使用されるので、無駄になることはない。
一方、溝65と蓋部材66との間にシール部材を介在させて、滑油の漏出を抑制すれば、上記軸受部分に確実に十分な給油を行なうことができる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載のトロイダル変速機によれば、給油通路を溝と蓋部材とにより構成したので、ドリル加工による孔の形成を無くすることができるため、トラニオンの強度を向上させることができるとともに、耐久性の低下を防止でき、さらに加工コストを低減することができる。
【0037】
また、請求項2に記載のトロイダル変速機によれば、蓋部材が、スラスト転がり軸受の外輪とトラニオンに内側面との間に設けられたスラスト軸受の軌道輪を兼ねているので、部品点数を削減できるため、製造コストをさらに低減することができる。
【0038】
また、請求項3に記載のトロイダル変速機によれば、給油通路を構成する溝が塑性加工により形成されるので、加工コストをさらに一層低減することができるとともに、加工硬化により強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るトロイダル無段変速機のトラニオンの部分を示す断面図である。
【図2】トロイダル無段変速機の基本構成を最小減速時の状態で示す側面図である。
【図3】同じく最大減速時の状態で示す側面図である。
【図4】トロイダル無段変速機の具体的構造の一例を示す要部断面図である。
【図5】図4のX−X線断面図である。
【図6】従来のトロイダル無段変速機のトラニオンの部分を示す断面図である。
【符号の説明】
6 トラニオン
32 スラスト転がり軸受
33 外輪
34 スラスト軸受
64 給油通路
65 溝
66 蓋部材
Claims (3)
- 回転自在に支持された入力軸と、この入力軸と共に回転自在な入力側ディスクと、この入力側ディスクと中心軸を同じくして配置され、かつこの入力側ディスクに対して回転自在に支持された出力側ディスクと、これら入力側、出力側両ディスクの軸方向に関してこれら両ディスクの中間部に、これら両ディスクの軸方向に対し直交する方向でかつこれら両ディスクの中心軸に対し捻れの位置に配置されて当該位置で揺動する複数のトラニオンと、これら各トラニオンに支持された変位軸に回転白在に支持され、入力側および出力側両ディスクの間に挟持された複数個のパワーローラと、これら各パワーローラの外側面と前記各トラニオンの内側面との間に設けたスラスト転がり軸受と、前記各トラニオンに設けられた給油通路とを備え、入力側、出力側両ディスクの互いに対向する内側面を、それぞれ断面が円弧形の凹面とし、前記各パワーローラの周面を球面状の凸面として、この周面と前記内側面とを当接させているトロイダル無段変速機において、
前記各トラニオンに設けられた給油通路は、前記トラニオンの内側面に形成された溝と、この溝を覆う蓋部材により構成されていることを特徴とするトロイダル無段変速機。 - 前記蓋部材は、前記スラスト転がり軸受の外輪と前記トラニオンの内側面との間に設けられたスラスト軸受の軌道輪を兼ねていることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル無段変速機。
- 前記給油通路を構成する溝は、塑性加工によって形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2にトロイダル無段変速機。
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