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JP4159239B2 - 複合モータとその運転方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は複数のモータを同一回転軸線上に配置した複合モータに係り、特にターボ分子ポンプ等の内部に使用して好適な回転電機の構造及び運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は、従来のターボ分子ポンプの構造を模式的に示したものである。ターボ分子ポンプは超高速回転の回転電機により回転体に固定された回転翼と、静止側に配置された固定翼との相互作用により、分子流領域までの気体の排出を目的とした真空ポンプである。従って、超高真空領域まで排気するのに好適な真空ポンプである。
【0003】
ポンプケーシング11内には、回転翼12を備えた回転体13が軸受19により固定側に対して回転可能に支持されている。回転体13はその回転軸線上にモータ回転子15を備え、モータ固定子14が形成する回転磁界によりモータ回転子15が回転駆動され、回転体13が回転駆動される。回転翼12を備えた回転体13が超高速で回転駆動されることで、上述した超高真空領域までの排気が可能となる。この回転翼12を回転駆動しているモータの回転数は、ターボ分子ポンプの容積と目標ガス排出量及び翼形状によって決定されるが、一般に超高真空領域までガスを排出するためには、毎分数万回程度の高速回転が必要となっている。
【0004】
このため、ターボ分子ポンプの回転翼を駆動するモータは、ポンプ内のガス圧力領域が分子流から中間流領域程度の領域で運転可能なように通常設計されている。従って、粘性領域である大気圧までの領域については、上述した高回転数で運転すると過負荷状態になるため、実用上、運転が不可能である。
【0005】
従って、超高真空まで排気する真空排気システムでは、図4に示すようにターボ分子ポンプ1の排気側に配管2を接続して、あらかじめオイル真空ポンプやドライ真空ポンプ3などを直列に接続し、真空予引を行ったのちターボ分子ポンプ1を運転することで、ターボ分子ポンプを駆動するモータの過負荷状態を避け、定格回転数まで増速して、超高真空領域までの排気を行っている。このため、上述した超高真空領域まで排気する真空排気システムでは、粘性流領域である大気圧までの排気に、オイル真空ポンプやドライ真空ポンプなどの予引ポンプ3が必要となる。このためこれらの真空ポンプの制御装置5やターボ分子ポンプとの接続配管2なども含め、装置構成が複雑となり、かつ大きなスペースを必要とするものとなっている。
【0006】
係る問題点を回避するために、回転数が異なる複数のターボ分子ポンプを組み合わせて、大気圧から超高真空領域まで一貫して排気可能な複合ターボ分子ポンプも考案されている。しかしながら、係る複合ターボ分子ポンプにおいても、ポンプシステムを運転制御するための制御装置及び電源装置は各々のポンプ個別に必要であり、装置全体を大きくしてコストの高いシステムとならざるを得なかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した事情に鑑みて為されたもので、コンパクトな構造で、超高真空領域から粘性流領域である大気圧まで一貫して排気可能なターボ分子ポンプ、及び該ターボ分子ポンプの駆動に好適な複合モータ及びその運転方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、複数のモータの回転体の回転中心軸が共通の軸線上にあって、各々の回転体は互いに回転方向の自由度を確保された状態で前記軸線上に固定された複合モータであって、各々のモータの固定子巻線は、異なる極数を有することを特徴とする複合モータである。これにより、各々のモータ固定子巻線に共通の電源を供給することで、一定の回転数比で各々のモータを回転駆動することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記複数のモータは、極数が低い方から高い方へ順番に前記軸線上に配置され、前記各々のモータの固定子巻線が並列に共通の電源回路に接続されたことを特徴とする。これにより、各々のモータで駆動される回転体にターボ翼又は軸流翼を備えることで、高速回転による超高真空領域の排気、中速回転による中間領域の排気、低速回転による大気圧領域の排気を行うことができる。従って、これらのモータを組み合わせることで、超高真空領域から大気圧領域までの排気を同一ケーシング内で一貫して行うことが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記各々の回転体は軸受により回転可能に支持され、互いに回転方向の自由度が確保されたことを特徴とする。これにより、コンパクトな構造の複合モータが得られる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、複数のモータの回転体の回転中心軸が共通の軸線上に配置され、各々の回転体は互いに回転方向の自由度を確保された状態で回転可能に支持され、各々の回転体には排気のための翼を備え、各々のモータの固定子巻線は異なる極数を有すると共に共通の電源回路に接続され、各々のモータは吸気側から排気側に順次極数が高くなるように配列されたことを特徴とする真空ポンプである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、極数が異なる複数のモータを同一軸線上に配置すると共に、該モータの固定子巻線を並列に接続し、該モータ固定子巻線に励磁電力を供給する単一のモータ電源回路を接続し、所定の周波数の励磁電力を前記複数のモータに同時に供給することで、前記複数のモータを、各々異なる回転数で回転数比一定のまま運転することを特徴とする複合モータの運転方法である。
【0013】
総じて本発明によれば、それぞれのモータの固定子巻線は、異なる極数を有することから、共通の周波数の電源を与えることで、それぞれ異なる回転速度で回転する。従って、モータの回転体に回転翼を備えることで異なる真空領域の排気が可能となる。それ故、一台のポンプで超高真空領域から大気圧まで排気が可能なターボ分子ポンプを実現できる。そして、このターボ分子ポンプは一台の電源装置で共通のモータを駆動することができるので、一定の回転数比を保ちつつ回転速度が0から定格回転速度まで上昇させることが可能である。従って、超高真空領域から大気圧領域まで一貫して排気可能なシステムを、上記本発明の複合モータを採用したターボ分子ポンプにより、コンパクトな構造でかつ経済的に実現することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図1及び図2を参照しながら説明する。
【0015】
図1は本発明の複合モータをターボ分子ポンプに適用した例を示す。このターボ分子ポンプは、同一ケーシング11内に配置された第1のモータ20と、第2のモータ30と、第3のモータ40とからなる複合モータを備える。第1のモータ20は、翼21を備えた回転体22に接続したモータ回転子23と、該回転子を回転駆動するモータ固定子24とからなる。第2のモータ30は、翼31を備えた回転体32に接続したモータ回転子33と、該回転子を回転駆動するモータ固定子34とからなる。第3のモータ40は、翼41を備えた回転体42に接続するモータ回転子43と該回転子を回転駆動するモータ固定子44とからなる。
【0016】
第1のモータ20と、第2のモータ30と、第3のモータ40とは、それぞれの回転体22、32、42の回転中心軸が図示するように共通の軸線上に存在する。従って、モータ回転子23、33、43の回転中心軸も同一軸線上に存在する。そして、3台のモータはそれぞれ軸受26、36、46により、それぞれの回転体が互いに回転方向に自由度を確保された状態で、上記軸線上に固定されている。即ち、モータ20は、インナロータ型のモータであり、モータ回転子23がモータ固定子24の内周側に配置されていて、回転体22は軸受26により回転自在に支持されている。モータ30は、アウタロータ型のモータであり、モータ回転子33がモータ固定子34の外周側に配置されていて、回転体32は、軸受36により回転自在に支持されている。同様にモータ40もアウタロータ型のモータであり、モータ回転子43がモータ固定子44の外周側に配置されていて、回転体42は、軸受46により回転自在に支持されている。このようにして、3台のモータ20、30、40はそれぞれの回転軸が同一軸線上に配置され且つ回転方向のみに自由度が存在して、全体としてコンパクトな構造となっている。
【0017】
ここで、それぞれのモータの固定子巻線は、異なる極数を有する。例えば、吸気口17に近い第1のモータ20は2極の固定子巻線を備え、第2のモータ30は6極の固定子巻線を備え、排気口18に近い第3のモータ40は12極の固定子巻線を備えている。従って、各モータの固定子巻線に共通の周波数、例えば500Hzの交流電力を入力すると、各モータ回転子の回転数は第1のモータ(2極)では毎分30000回転となり、第2のモータ(6極)では毎分10000回転となり、第3のモータ(12極)では毎分5000回転となる。
【0018】
図示のターボ分子ポンプにおいて、図中の排気口18から吸気口17に向かってそれぞれのモータの回転速度が高くなるように配置されている。そして、第1のモータ20に固定された翼21は、超高真空領域の分子流レベルの気体の排気に適した形状を備え、第3のモータに固定された翼41の形状は、排気口18に吐出側が連接しているので、粘性流領域である大気圧までの排気に適した形状を備えている。第2のモータ30に固定された翼31は、超高真空領域と大気圧領域の中間領域の排気に適した形状を備えている。各回転体には、ターボ翼もしくは同等の軸流翼等が設置されている。
【0019】
同じ周波数の交流電圧が印加されると、各モータ回転子がそれぞれのステータ極数に対応した回転数でそれぞれの翼を回転させ、吸気口17において超高真空領域の排気を確保し、排気口18において吐出側を大気圧とした排気を行うことが可能となる。そして、このポンプの起動にあたってはインバータ等の周波数制御装置を用い、初期速度を0から定格回転速度まで上昇させることにより、負荷側が大気圧状態からの起動が可能となる。即ち、回転速度が0からそれぞれのモータの回転数比に従って回転速度を上昇させることで、排気対象の容器が大気圧状態からターボ分子ポンプを用いて排気することが可能となり、そのまま回転速度を上昇させることで排気対象の容器を超高真空状態まで排気することができる。
【0020】
図2は、上記ターボ分子ポンプを用いた真空排気システムの構成例を示す。ターボ分子ポンプ7は配線8を介してターボ分子ポンプ用制御装置9に接続されている。ターボ分子ポンプ用制御装置9は、インバータ装置等の周波数・電圧可変電源装置を備え、ターボ分子ポンプ7の各モータ20、30、40の固定子巻線に共通の周波数及び電圧の交流電力を供給する。これにより、各モータにおいてはそれぞれの回転数比に対応した回転速度で運転され、吸気側を超高真空領域とし、排気側を大気圧領域とした真空排気を行うことができる。この運転にあたり、モータ回転速度を0から増速することで、排気対象の容器が大気圧状態であっても、ターボ分子ポンプを用いて排気が可能なことは上述した通りである。従って、図4に示すような予引ポンプ3及びこれに付属する予引ポンプ用制御装置5等は不要となる。さらにターボ分子ポンプ1と予引ポンプ3を接続する配管2等も不要となる。
【0021】
尚、上記実施形態においては、本発明の複合モータをターボ分子ポンプに適用した例を示した。しかしながら、このように回転数比が高い方から低い方へ或いは低い方から高い方へ、同一軸線上に複数のモータを回転自在に配置した複合モータは、その他の形式の真空ポンプ等の流体機械にも同様に適用することが可能である。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、上記複合モータをターボ分子ポンプに適用することにより、超高真空領域から大気圧領域に至る一貫した真空排気が可能となり、予引ポンプ等の真空排気の設備が不要となる。これにより真空排気システムの小型化及び経済化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の複合モータを用いたターボ分子ポンプの構成例を示した図である。
【図2】図1に示すターボ分子ポンプを用いた真空排気システムの構成例を示した図である。
【図3】従来のターボ分子ポンプの構成例を示した図である。
【図4】従来のターボ分子ポンプを用いた真空排気システムの構成例を示した図である。
【符号の説明】
7 ターボ分子ポンプ
9 ターボ分子ポンプ用制御装置
20、30、40 モータ
21、31、41 翼
22、32、42 回転体(ロータ)
23、33、43 モータ回転子
24、34、44 モータ固定子
26、36、46 軸受

Claims (5)

  1. 複数のモータの回転体の回転中心軸が共通の軸線上にあって、各々の回転体は互いに回転方向の自由度を確保された状態で前記軸線上に固定された複合モータであって、各々のモータの固定子巻線は、異なる極数を有することを特徴とする複合モータ。
  2. 前記複数のモータは、極数が低い方から高い方へ順番に前記軸線上に配置され、前記各々のモータの固定子巻線が並列に共通の電源回路に接続されたことを特徴とする請求項1記載の複合モータ。
  3. 前記各々の回転体は軸受により回転可能に支持され、互いに回転方向の自由度が確保されたことを特徴とする請求項1記載の複合モータ。
  4. 複数のモータの回転体の回転中心軸が共通の軸線上に配置され、各々の回転体は互いに回転方向の自由度を確保された状態で回転可能に支持され、各々の回転体には排気のための翼を備え、各々のモータの固定子巻線は異なる極数を有すると共に共通の電源回路に接続され、各々のモータは吸気側から排気側に順次極数が高くなるように配列されたことを特徴とする真空ポンプ。
  5. 極数が異なる複数のモータの回転軸を同一軸線上に配置すると共に、該モータの固定子巻線を並列に接続し、該モータ固定子巻線に励磁電力を供給する単一のモータ電源回路を接続し、所定の周波数の励磁電力を前記複数のモータに同時に供給することで、前記複数のモータを、各々異なる回転数で回転数比一定のまま運転することを特徴とする複合モータの運転方法。
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