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JP4156448B2 - 捕水剤及び有機el素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機EL素子に関するものであり、非発光部であるダークスポットの発生及び成長を抑制する捕水剤の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)は、蛍光性有機化合物を含む薄膜である有機EL層を陽極と陰極との間に挟んだ積層体の発光部構造を有し、前記蛍光性有機化合物を含む薄膜に正孔(ホール)及び電子を注入して再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、この励起子が失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用する自発光素子である。
【0003】
ところで、上記有機EL素子の最大の課題は発光部の寿命の改善である。寿命が短い原因として、ダークスポットと呼ばれる非発光ドットの発生がある。この非発光ドットは点灯経過時間とともに成長し、次第に非発光面積が大きくなり、発光部の発光輝度は低下していく。そして、前記非発光部の直径が数10μm以上に成長すると目視でも確認できるようになり、ここで製品としての寿命が尽きることとなる。このダークスポットが発生する主原因としては、有機EL素子を構成している有機EL層が密封容器内の水分や酸素と反応して部分的にダークスポットが発生・成長する現象が知られている。
【0004】
そこで、有機EL素子を配設する密封容器内に水分を極力少なくすることが必要であり、特に発光部に使用する有機材料に水分が無い状態に精製処理することが重要である。また、密封容器内に水分が残ることがないように、基板上に発光部を成膜する時に用いる真空チャンバーの内部や、発光部を形成した基板の上面に発光部を覆って封止キャップを取り付ける素子の封止作業等の製作工程において、容器内の水分を極力取り除く様に工夫し、ドライプロセスで有機EL素子の製造が行われている。しかしながら、それでも製造工程から水分を完全に取り去ることができずダークスポットの発生及び成長が皆無にならないのが現状である。
【0005】
このように、有機EL素子の最大の課題は、容器内の水分を完全に無くすことによりダークスポットを根絶するか、または小さなダークスポットを成長させないことにより、素子としての長寿命化を図ることである。その対策として、市販されている有機EL素子では、容器内に別途乾燥手段である無機系の乾燥剤を設けて封止することで前記問題点の改善を図っている。係る技術は、本発明に関連するものであり、下記の特許文献1示すように公知の技術分野である。
【0006】
さらに、従来の無機系の乾燥手段が粉末であるための問題点を改良して、水分と反応性の高い有機金属系化合物を膜状にして捕水層を形成し、化学反応を利用して効果的に水分を捕水し、酸素等を含有しないで、有機EL周辺部におけるダークスポットの発生及び成長を抑えることができる捕水手段を作業性よく形成する技術は、下記の特許文献2として開示してある。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−267138号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2002−33187号公報
【0009】
図2は有機EL素子の封止構造を示した部分断面図である。図2に示すように、ガラス等で生成されているガラス基板上52に、互いに対向する陽極電極55、陰極電極56と、陽極電極55と陰極電極56との間に有機EL素子51の有機発光層54が狭持された構造を有している。ここでは、封止キャップ53に凹部59を設け、ここに捕水剤57である酸化バリウム(BaO)の粉末を入れ、粉が管内に飛散しないように水分透過性のテープ60で固定する。ここで、封止管内は乾燥した窒素で満たされており、外部からの水分の侵入を防ぐためにエポキシ樹脂を用いた接着剤58基板と封止管を固定している。
【0010】
また図3に示すように、ガラス基板72上に設けた、互いに対向する陽極電極75、陰極電極76間に有機EL素子71の有機EL発光層74が狭持された発光部の構造を有している。前記有機発光層74には、ホール注入層74a、ホール輸送層74b、発光層兼電子輸送層74cの3層の積層構造となっている。また、前記有機発光層74がガラス基板72と封止キャップ73とシール部78からなる気密容器内に設けられるとともに, 気密容器内には捕水剤層77を設け、前記有機EL材料の有機EL発光層74を水分による汚染から防止している。前記捕水剤層77は有機金属化合物の薄膜で構成され、前記有機金属化合物は化学式(化2)(化3)(化4)で示される。
【0011】
【化2】
Figure 0004156448
【0012】
【化3】
Figure 0004156448
【0013】
【化4】
Figure 0004156448
【0014】
前記化学式(化2)(化3)(化4)で示される有機金属化合物は有機溶剤に可溶で実装時には液状であり、それをガラス表面をサンドブラスタ等の加工機器を用いてザグリ加工した平面ガラス板からなる封止キャップ73の内側全面に塗布し、厚さ10μmの捕水剤層77としていた。これは、粉末の捕水剤を利用する場合と比較して、テープ60不要で封止キャップ73に凹部を形成する必要がなく、有機EL素子全体の厚みを薄くすることができる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の捕水剤である酸化バリウム(BaO)は劇物であるため、作業環境や市場に出てからの取り扱い等の問題が生じる。また、酸化バリウムは、粉末であるため封入する際に飛散したりして利便性が悪い。さらに捕水材が粉末状であったため、捕水材を封入する封入スペースを別途設けなければならないため素子全体が厚くなるという問題があった。上記の問題を解決した薄膜の捕水剤は、例えば(化2)のような構造であり、酸化バリウムに比べて利便性は改善された。
【0016】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、捕水速度を向上させて効果的に水分を吸着し、有機EL素子のダークスポットの発生及び成長を抑制する捕水剤と、この捕水剤を乾燥手段として設けた有機EL素子を提供することを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る捕水剤は、密閉構造を有する電子デバイス内側に設けられ、当該デバイス内の水分を化学的吸着する下記化学式(化7)、(化8)、(化10)、(化11)、(化13)で示される化合物のうち任意に選択された少なくとも一の化合物からなることを特徴とする。
【0021】
請求項に記載された有機EL素子は、少なくとも一方が透明である一対の電極間に有機化合物からなる正孔注入層、正孔輸送層、発光層が積層された有機EL発光部と、前記有機EL発光部を封止する気密容器と、前記気密容器内に設けられた捕水剤を有する有機EL素子において、前記捕水剤が請求項1記載の捕水剤のうちの少なくとも一の捕水剤で構成されていることを特徴とする。
【0022】
図1に示すように、有機EL素子1は、絶縁性及び透光性を有する矩形状の板ガラスをガラス基板2としている。このガラス基板2の内側表面上には、透明性を有する導電材料により陽極5がパターン形成されている。前記透明性を有する導電材料として、例えばITO膜は、例えば真空蒸着法、スパッタ法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法によりガラス基板2の全面に成膜される。その後、フォトリソグラフィ法の手段により所望の形状にパターニングされ、陽極5を形成する。前記陽極5の一部は、引き出し電極としてのガラス基板2の端部まで引き出されて不図示の駆動回路に接続される。
【0023】
陽極5の上面には、例えば、分子線蒸着法、抵抗加熱法等のPVD法により、有機化合物材料の薄膜による有機EL層4が積層されている。図1の例における有機EL層4は、陽極5の上に数10nmの膜厚で形成された銅フタロシアニン(CuPc)からなるホール注入層4aと、該ホール注入層4aの上面に数10nmの膜厚で成膜されたBis((N−(1−naphtyl−n−phenyl))benzidine(αーNPD)からなるホール輸送層4bと、該ホール輸送層4bの上面に数10nmの膜厚で成膜されたトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3 )からなる発光層兼電子輸送層4cの3層構造からなる。そして前記陽極5、有機EL層4及び後述する陰極6との5層構造からなる積層体により、発光部が形成されている。
【0024】
前記陰極6は図1に示すように、有機EL層4(詳しくはAlq3 からなる発光層兼電子輸送層4c)の上面に金属薄膜により形成されている。前記金属薄膜の材料は例えばAl、Li、Mg、In等の仕事関数の小さい金属材料単体やAl−Li、Mg−Ag等の仕事関数の小さい合金である。前記陰極6の膜厚は、例えば数10nm〜数100nm(好ましくは50nm〜200nm)の薄膜で形成される。陰極の一部は、ガラス基板2の端部まで引き出されて引き出し電極として不図示の駆動回路に接続される。
【0025】
一方、前記ガラス基板2に対面して矩形状の板ガラスからなる封止キャップ3を用意する。この封止キャップ3の外周部には、例えば紫外線硬化型接着剤等によるシール部が後述の封止工程で形成される。該シール部を残してその内側の封止キャップ3の内面には捕水剤層7が配設される。
【0026】
本願発明に係る(化1)に示すような構造の金属錯体は次のようにして案出された。
従来例の(化3)に示す有機金属錯体の水分との反応は下記の化学式 (化5)に示すような反応式で行なわれる。
【0027】
【化5】
Figure 0004156448
【0028】
このように、金属錯体の環状の部分が開環して水分子と反応する。この反応は付加反応あるいは置換反応であり、水分子を化学吸着する。この反応機構を考察すると、金属錯体のAl−O結合の電荷はAld+−Od-のように分極している。水分子は上記アルミニウムと酸素の結合を攻撃し、この結合を分解するように反応する。ここで、中心金属のアルミニウムと水との反応をし易くするためには、電荷の偏り、すなわち分極を大きくすること、また配位子の立体障害を小さくすることが考えられる。
【0029】
アルミニウム金属と酸素の分極を大きくするには、金属錯体に二つ以上の異なる配位子を用いて、分極を大きくすることが出来る。例えば、窒素分子を持つアミン系配位子は、電子を金属錯体に与えて窒素分子はプラスになる。また、カルボン酸をもつ配位子は、電子を吸引するので、金属をマイナスに分極する。よってこの金属錯体は大きな分極が生じ、ダイポールモーメントが形成される。以上の考察に基づき、水分子を化学吸着しやすい有機化合物として、前記化学式(化1)に示す分子構造の有機化合物を考案するに至ったものである。
【0030】
捕水剤を使用する場合は、有機溶媒に溶解して塗布する。使用することができる有機溶媒は、キシレン、トルエン、へプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット等の炭化水素系、メタノール、エタノール、プロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール系、メチルケトン、メチルイソプチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、プロピルエーテル、メチルセロソルブ、セロソルブ、プチルセロソルブ、メチルカルビトール、プチルカルビトール等のエーテル系等があげられ、これらから選ばれた1種もしくは2種以上の有機溶媒が使用できる。
【0031】
このように本発明に係る前記(化1)に示す有機金属化合物の捕水剤によれば、塗布にあたって使用可能な溶媒は炭化水素系の有機溶媒に限られない。従って、スクリーン印刷法で被着する場合は、有機溶剤としてブチルカルビトール、テルピネオール等に溶解させることができる。バインダーとしてはエチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系のポリマーが使用できる。又、ポリメタクリレート、ポリアクリルレートなどもポリマーとして使用できる。
【0032】
スクリーン印刷法以外の塗膜形成方法としては、スピンナ一法、スプレー法、ディスペンサー法、インクジェット法、ドクターブレード法、オフセット印刷法等がある。また、乾燥手段としては、オーブン、真空オーブン、ホットプレート、遠赤外線ベルト炉などがある。通常これらの乾燥手段は、乾燥窒素雰囲気中で行われる。
【0033】
封止工程は、水分を極力取り除いた不活性ガス(例えばドライ窒素)やドライエアによるドライ雰囲気において、矩形状の封止キャップ3の外周に例えば紫外線硬化樹脂による接着剤が封止部材8として塗布され、ガラス基板2と封止キャップ3が封止部材8により密封固着される。この封止キャップ3により、陽極5、有機EL層4及び陰極6が保護される。
【0034】
次に、(化1)に示す有機金属化合物の置換基Rの一例を示すが、(化1)の有機金属化合物の置換基Rはこれらのみに限られるものではない。
式中、R1,R2,R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1個以上のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシド基、複素環基を示す。あるいはそれぞれの基の水素の少なくとも一部をハロゲン元素で置換した物でもよい。またR1,R2,R3のそれぞれが連結されていても良い。また、ポリマーでも良い。
【0035】
Rは、炭素数1個以上のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、複素環基、アシル基を示す。アルキル基は置換もしくは未置換のものであるが、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル等とあるが好ましくは炭素数が8以上のものが良い。置換若しくは未置換基の具体例として以下に示すものが好適である。またこれらのオリゴマー、ポリマーでも良い。アルケニル基はビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキシセニル基等であるが、好ましくは炭素数が8以上置換若しくは未置換基の具体例として以下に示すものが好適である。またこれらのオリゴマー、ポリマーでも良い。
【0036】
アリール基は置換もしくは未置換のもので、具体例としては、フェニル基、トリル基、4−シアノフェニル基、ビフェニル基、o,m,p−テルフェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、9−フェニルアントラニル基、9,10ージフェニルアントラニル基、ピレニル基等がありが好ましくは炭素数が8以上のものが良い。またこれらのオリゴマー、ポリマーでも良い。
【0037】
置換もしくは未置換のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、n−ブトキシ基、tertーブトキシ基、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基等でありが好ましくは炭素数が8以上のものが良い。またこれらのオリゴマー、ポリマーでも良い。
【0038】
置換もしくは未置換のシクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボナン基、アダマンタン基、4ーメチルシクロヘキシル基、4−シアノシクロヘキシル基等であり好ましくは炭素数が8以上のものが良い。またこれらのオリゴマー、ポリマーでも良い。
【0039】
置換もしくは未置換の複素環基の具体例としては、ピロール基、ピロリン基、ピラゾール基、ピラゾリン基、イミダゾール基、トリアゾール基、ピリジン基、ピリダジン基、ピリミジン基、ピラジン基、トリアジン基、インドール基、ベンズイミダゾール基、プリン基、キノリン基、イソキノリン基、シノリン基、キノキサリン基、ベンゾキノリン基、フルオレノン基、ジシアノフルオレノン基、カルバゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、チアゾール基、チアジアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾトリアゾール基、ビスベンゾオキサゾール基、ビスベンゾチアゾール基、ビスベンゾイミダゾール基等がある。またこれらのオリゴマー、ポリマーでも良い。
【0040】
置換もしくは未置換のアシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピメロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、オレオイル基、エライドイル基、マレオイル基、フマロイル基、シトラコノイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、グリコロイル基、ラクトイル基、グリセロイル基、タルトロノイル基、マロイル基、タルタロイル基、トロポイル基、ベンジロイル基、サリチロイル基、アニソイル基、バニロイル基、ベラトロイル基、ピペロニロイル基、プロトカテクオイル基、ガロイル基、グリオキシロイル基、ピルボイル基、アセトアセチル基、メソオキサリル基、メソオキサロ基、オキサルアセチル基、オキサルアセト基、レブリノイル基これらのアシル基にフッソ、塩素、臭素、ヨウ素などが置換しても良い。好ましくはアシル基の炭素は8 以上良い。またこれらのオリゴマー、ポリマーでも良い。
【0041】
前記アシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオル基、イソプチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、ダルタリル基、ポイル基、ピメロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、イソクロトノイル基、オレオイル基、エライドイル基、マレオイル基、フマアロイル基、シトラコノイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、グリコロイル基、ラクトイル基、グリセロイル基、タルトロノイル基、マロイル基、タルタロイル基、トロポイル基、ゼンジロイル基、サルチロイル基、アニソイル基、バニロイル基、ベラトロイル基、ピペロニロイル基、プロトカクテオイル基、ガロイル基、グリオキシロイル基、ピルボイル基、アセトアセチル基、メソオキサリル基、メソオキサロ基、オキサルアセチル基、オキサルアセト基、レブリノイル基、又はこれらのアシル基にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが置換しても良い。
【0042】
【実施例】
次に本発明の実施例と比較例を挙げさらに具体的に説明する。
1.実施例1
実施例1乃至3に係る化合物Aを化学式(化6)に示す。
【0043】
【化6】
Figure 0004156448
【0044】
化学式(化6)で示す化合物は以下のように合成を行う。
36gの水と260gのイソプロパノールの沸混合物の蒸気を、612gのアルミニウムイソプロパノールに導入した。最初は、80℃に加熱し、最終的には120℃まで加熱した。50gのミネラルスピリッツを加えた後、16gの水と115gのイソプロパノールの沸騰した混合物の蒸気をフラスコの中に通す。これに50gのミネラルスピリッツを加え、170℃まで温度を上げた。その後、イソプロパノールはミネラルスピリッツの一部とともに真空蒸留により留去した。350gの白い固形物であるcyclic isopropoxy aluminum oxide trimer powderを得た(化)。これは、ミネラルスピリッツを14%含んでいる。この得られた化合物Aをもとに、(化7)、(化8)、(化9)の合成を進める。合成は以下の通りに行う。
【0045】
化学式(化7)で示す化合物の合成は以下の通りに行う。
【0046】
【化7】
Figure 0004156448
【0047】
得られたcyclic isopropoxy aluminum oxide trimer powder(化6)をイソプロパノールに再溶解して65%溶液にした。それから80℃に加熱した後、酢酸をゆっくりと加える。この際、この3量体1molに対して酢酸1molを加えた。1molのイソプロパノールが脱離してからイソプロパノールは留去した。留去後、cyclic trimeric aluminum oxide acetate diisopropoxideが得られた(化7)。
【0048】
化学式(化8)で示す化合物の合成は以下の通りに行う。
【0049】
【化8】
Figure 0004156448
【0050】
得られたcyclic isopropoxy aluminum oxide trimer powder(化6)をイソプロパノールに再溶解して65%溶液にした。それから80℃に加熱した後、酢酸をゆっくりと加える。この際、この3量体1molに対して酢酸2molを加えた。1molのイソプロパノールが脱離してからイソプロパノールは留去した。留去後、cyclic trimeric aluminum oxide diacetate isopropoxideが得られた(化8)。
【0051】
化学式(化9)で示す化合物の合成は以下の通りに行う。
【0052】
【化9】
Figure 0004156448
【0053】
上記の方法の他に、1回のアルミニウムートリイソプロポシド(AIP)から目的のものを合成することができる。例えば、アルミニウムートリイソプロポシド(AIP)と酢酸及び水をモル比で3:2:3の割合で加えて反応させることで、alkoxy aluminum oxide diacylateが得られた。
【0054】
次に上記化合物を有機EL素子に使用する際の作製手順の例を記載する。(化7)又は(化8)にて生成した化合物を、図1に示す有機EL素子に用いる。この有機EL素子1は、矩形の板ガラスによるガラス基板2と、このガラス基板2に対面して設けたガラスの封止キャップ3がシール部の接着剤8により封止され密封容器を形成している。この密封容器の一部分であるガラス基板2の上には、透明性を有する導電材料として、ITO膜による陽極5を200nm、スパッタ法により全面に成膜した。更にフォトリソグラフィ法により所望の形状にパターニングして陽極5を形成した。電極としての前記陽極5の一部は、ガラス基板2の端部まで引き出されて引き出し電極として不図示の駆動回路に接続している。
【0055】
前記ITO膜付きガラス基板を洗浄、乾燥後、真空蒸着装置にセットして10-6torrの真空度に排気した後、ホール注入層4aとして20nmの膜厚で銅フタロシアニン(CuPc)を前記陽極5の上面に蒸着形成する。さらに、前記ホール注入層4aの上面にホール輸送層4bとして30nmの膜厚でBis(N−(1−naphtyl−n−phenyl)benzidine(α−NPD)を成膜して積層する。次に、発光層兼電子輸送層4cとして50nmの膜厚でトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3 )を成膜積層する。さらに、上部電極(陰極)としてAl−Li合金を共蒸着法により200nmの膜厚で積層して形成する。前記陰極の一部は、ガラス基板2の端部まで引き出されて不図示の駆動回路に接続される。
【0056】
次に、真空を解除し乾燥窒素中で封止を行う。乾燥窒素雰囲気下でザグリ加工ガラス基板に、上記化合物(化7)又は(化8)を有機溶媒に溶解させたものを塗布する。そして、塗布した封止基板をホットプレートを用いて150℃まで加熱し、溶媒成分を揮発させて固化させた。
【0057】
封止基板の温度が室温まで冷めた後、前記板ガラスの封止キャップにシール部となる紫外線硬化エポキシ樹脂8を塗布して乾燥させる。水分を極力取り除いたドライエアによるドライ雰囲気中において、前記有機EL発光層を形成したガラス基板と前記封止キャップを対向させて張り合わせ、紫外線を照射して硬化させた。
【0058】
次に、密封後水分との反応を進めるために100℃で1時間エージングのために加熱した。
【0059】
この有機EL素子の発光部について、85℃、湿度85%の環境での加速寿命試験を行い、ダークスポットの成長について顕微鏡観察を行った。100時間経過後、捕水剤を用いない比較例に比べてダークスポット径の成長は極めて遅く、ほとんど成長していなかった。したがって、本発明の材料が有機EL用の捕水剤として十分機能を発揮していることが確認できた。
【0060】
尚、加速寿命試験の100時間は、加速をしない一般の寿命試験の数1000時間に相当すると思われる。
【0061】
図1に示すように、有機EL素子1の封止キャップ3は板ガラスの平板状であるが、これに限定するものではなく、外周のシール部が凸出して捕水手段を形成する部分が凹部になっている容器状の封止キャップの構造でもよい。また、これらの化合物を用いた捕水剤の使用例としては、ガラス基板に塗布するだけでなく、封止キャップを固着する前に有機EL素子に無害な溶媒で液状にした捕水剤を充填させた後、密封するようにしてもよい。
【0062】
2.実施例2
本実施例では、実施例1で使用した化合物Aをもとに、有機酸として酢酸の代わりにオクチル酸を使用して合成した。この場合の実施例を(化10)、(化11)、(化12)としてそれぞれ挙げる。
【0063】
化学式(化10)で示す化合物の合成は以下の通りに行う。
【0064】
【化10】
Figure 0004156448
【0065】
化合物Aとして得られたcyclic isopropoxy aluminum oxide trimer powder(化6)をイソプロパノールに再溶解して65%溶液にした。それを80℃に加熱した後オクチル酸をゆっくりと加える。この際、この3量体1molに対してオクチル酸を1mol加えた。1molのイソプロパノールが脱離してからイソプロパノールを留去した。留去後、cyclic trimeric aluminum oxide octoate diisopropoxide(化10)が得られた。
【0066】
化学式(化11)で示す化合物の合成は以下の通りに行う。
【0067】
【化11】
Figure 0004156448
【0068】
化合物Aとして得られたcyclic isopropoxy aluminum oxide trimer powder(化6)をイソプロパノールに再溶解して65%溶液にした。それを80℃に加熱した後オクチル酸をゆっくりと加える。この際、この3量体1molに対してオクチル酸を2mol加えた。2molのイソプロパノールが脱離してからイソプロパノールを留去した。留去後、cyclic trimeric aluminum oxide dioctoate isopropoxide(化11)が得られた。
【0069】
化学式(化12)で示す化合物の合成は以下の通りに行う。
【0070】
【化12】
Figure 0004156448
【0071】
上記の方法の他に、一回の合成でアルミニウムートリイソプロポシド(AIP)から目的のものを合成することができる。例えば、アルミニウムートリイソプロポシド(AIP)とオクチル酢及び水をモル比で3:2:3の割合で加えて反応させることで、alkoxy aluminum oxide diacylateが得られた。
【0072】
前記化合物Bを厚膜印刷法の一例であるスクリーン印刷法で有機EL素子に形成した。構造は実施例1と同様であるので図1を使って本実施例を説明するが、ガラス基板2及びガラス基板上の有機発光部については実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0073】
ITO膜付きガラス基板を洗浄、乾燥後、真空蒸着装置にセットして10-6torrの真空度に排気した後、ホール注入層4aとして20nmの膜厚で銅フタロシアニン(CuPc)を前記陽極5の上面に蒸着形成する。さらに、前記ホール注入層4aの上面にホール輸送層4bとして30nmの膜厚でBis(N−(1−naphtyl−n−phenyl)benzidine(α−NPD)を成膜して積層する。次に、発光層兼電子輸送層4cとして50nmの膜厚でトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3 )を成膜積層する。さらに、上部電極(陰極)としてAl−Li合金を共蒸着法により200nmの膜厚で積層して形成する。前記陰極の一部は、ガラス基板2の端部まで引き出されて不図示の駆動回路に接続される。
【0074】
次に、真空を解除し乾燥窒素中で封止を行う。乾燥窒素雰囲気下でザグリ加工ガラス基板に上記化合物(化10)または、(化11)を有機溶媒に溶解させたものを塗布する。そして、塗布した封止基板をホットプレートを用いて150℃まで加熱し、溶媒成分を揮発させて固化させた。
【0075】
封止基板の温度が室温まで冷めた後、前記板ガラスの封止キャップにシール部となる紫外線硬化エポキシ樹脂8を塗布して乾燥させる。水分を極力取り除いたドライエアによるドライ雰囲気中において、前記有機EL発光層を形成したガラス基板と前記封止キャップを対向させて張り合わせ、紫外線を照射して硬化させた。
【0076】
次に、密封後水分との反応を進めるために100℃で1時間エージングのために加熱した。
【0077】
この有機EL素子の発光部について、85℃、湿度85%の環境での加速寿命試験を行い、ダークスポットの成長について顕微鏡観察を行った。100時間経過後、捕水剤を用いない比較例に比べてダークスポット径の成長は極めて遅く、ほとんど成長していなかった。したがって、本発明の材料が有機EL用の捕水剤として十分機能を発揮していることが確認できた。
【0078】
図1に示すように、有機EL素子1の封止キャップ3は板ガラスの平板状であるが、これに限定するものではなく、外周のシール部が凸出して捕水手段を形成する部分が凹部になっている容器状の封止キャップの構造でもよい。また、これらの化合物を用いた捕水剤の使用例としては、ガラス基板に塗布するだけでなく、封止キャップを固着する前に有機EL素子に無害な溶媒で液状にした捕水剤を充填させた後、密封するようにしてもよい。
【0079】
3.実施例3
本実施例では、実施例1、2で使用した化合物Aをもとに、有機酸として酢酸、オクチル酸の代わりにステアリン酸を使用して合成した。この場合の実施例を(化13)、(化14)、(化15)としてそれぞれ挙げる。
【0080】
化学式(化13)で示す化合物の合成は以下の通りに行う。
【0081】
【化13】
Figure 0004156448
【0082】
化合物Aとして得られたcyclic isopropoxy aluminum oxide trimer powder(化6)をイソプロパノールに再溶解して65%溶液にした。それを80℃に加熱した後、ステアリン酸をゆっくりと加える。この際、この3量体1molに対してステアリン酸を1mol加えた。1molのイソプロパノールが脱離してからイソプロパノールを留去した。留去後、cyclic trimeric aluminum oxide stearate diisopropoxide(化13)が得られた。
【0086】
化学式(化15)で示す化合物の合成は以下の通りに行う。
【0087】
【化15】
Figure 0004156448
【0088】
上記の方法の他に、一回の合成でアルミニウムートリイソプロポシド(AIP)から目的のものを合成することができる。例えば、アルミニウムートリイソプロポシド(AIP)とステアリン酢及び水をモル比で3:2:3の割合で加えて反応させることで、alkoxy aluminum oxide diacylateが得られた。
【0089】
前記化合物Bを厚膜印刷法の一例であるスクリーン印刷法で有機EL素子に形成した。構造は実施例1と同様であるので図1を使って本実施例を説明するが、ガラス基板2及びガラス基板上の有機発光部については実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0090】
ITO膜付きガラス基板を洗浄、乾燥後、真空蒸着装置にセットして10-6torrの真空度に排気した後、ホール注入層4aとして20nmの膜厚で銅フタロシアニン(CuPc)を前記陽極5の上面に蒸着形成する。さらに、前記ホール注入層4aの上面にホール輸送層4bとして30nmの膜厚でBis(N−(1−naphtyl−n−phenyl)benzidine(α−NPD)を成膜して積層する。次に、発光層兼電子輸送層4cとして50nmの膜厚でトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3 )を成膜積層する。さらに、上部電極(陰極)としてAl−Li合金を共蒸着法により200nmの膜厚で積層して形成する。前記陰極の一部は、ガラス基板2の端部まで引き出されて不図示の駆動回路に接続される。
【0091】
次に、真空を解除し乾燥窒素中で封止を行う。乾燥窒素雰囲気下でザグリ加工ガラス基板に上記化合物(化13)または、(化14)を有機溶媒に溶解させたものを塗布する。そして、塗布した封止基板をホットプレートを用いて150℃まで加熱し、溶媒成分を揮発させて固化させた。
【0092】
封止基板の温度が室温まで冷めた後、前記板ガラスの封止キャップにシール部となる紫外線硬化エポキシ樹脂8を塗布して乾燥させる。水分を極力取り除いたドライエアによるドライ雰囲気中において、前記有機EL発光層を形成したガラス基板と前記封止キャップを対向させて張り合わせ、紫外線を照射して硬化させた。
【0093】
次に、密封後水分との反応を進めるために100℃で1時間エージングのために加熱した。
【0094】
この有機EL素子の発光部について、85℃、湿度85%の環境での加速寿命試験を行い、ダークスポットの成長について顕微鏡観察を行った。100時間経過後、捕水剤を用いない比較例に比べてダークスポット径の成長は極めて遅く、ほとんど成長していなかった。したがって、本発明の材料が有機EL用の捕水剤として十分機能を発揮していることが確認できた。
【0095】
図1に示すように、有機EL素子1の封止キャップ3は板ガラスの平板状であるが、これに限定するものではなく、外周のシール部が凸出して捕水手段を形成する部分が凹部になっている容器状の封止キャップの構造でもよい。また、これらの化合物を用いた捕水剤の使用例としては、ガラス基板に塗布するだけでなく、封止キャップを固着する前に有機EL素子に無害な溶媒で液状にした捕水剤を充填させた後、密封するようにしてもよい。
【0096】
上述した実施例1乃至3の有機金属化合物は、製造する過程の最終段階にて溶媒を減圧条件下のもと、化合物の温度を通常は180℃前後で乾燥させる。しかし、乾燥温度を200℃以上にして乾燥させる場合もある。この乾燥工程時に、上述した実施例の化合物が脱水反応を起こすことがある。このとき、実施例の置換基同士がエーテル結合することにより、置換基同士が結合することがある。このような場合でも、上述した化合物と比較しても捕水能力が落ちることは無く同等以上の捕水効果が期待できる。また、上述した実施例1乃至3記載の化合物同士やそれ以外の化合物を混合して使用する場合、互いの相乗効果により実施例の化合物単体で使用して効果と同様かそれ以上の捕水能力が得られることもある。
【0097】
また、環状構造の周りに配位子が多く結合している置換基を結合することにより、化合物自体が捕水するとともに置換基による化合物の疎水効果を上げることができる。これにより、水分を素子自体に接近した場合に疎水効果により水分を近づきにくくする効果が得られる。
【0098】
上述した実施例1乃至3は、化合物中の金属をアルミニウムを使用しているが、上記以外のものでも同様な効果を奏する化合物を合成することが可能である。例えば、コバルト(Co)、クロム(Cr)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、トリウム(Th)、セリウム(Ce)、インジウム(In)などがある。また、有機酸に関しても同様に上述した有機酸に限らない。
【0099】
実施例1乃至3の有機金属化合物は人体に対して無害であるため、有機EL素子を作製する上で利便性が向上することになる。また、有機EL素子に限らずとも、例えばプラズマディスプレイ、太陽電池や電子ペーパ−等の密閉構造を有し水分を嫌う様々な電子デバイスにも使用することができる。
【0100】
次に、実施例2に示した化学反応を例にして、捕水剤と水との反応のメカニズムについて具体的に説明する。
【0101】
【化16】
Figure 0004156448
【0102】
ここに示した反応では、水分子とイソプロポキシドとの置換反応である。イソプロポキシドとオクチレート(2−エチルヘキサン酸)との分子の嵩高さを考えると、オクチレートの方がイソプロポキシドよりも嵩高い。この事から水分子は、立体障害を受けるので、Al原子に近づくことができない。イソプロポキシドと反応を形成しているAl原子の方が立体障害が少ないため攻撃しやすい。また、オクチレートとAl原子との結合は強く加水分解を受けないが、イソプロポキシドとAl原子の結合は容易に加水分解を生じる。
【0103】
【化17】
Figure 0004156448
【0104】
次に、(化16)に示した反応についての詳細を(化17)にて説明する。水分子は、求核的に立体障害の少ないイソプロポキシド基のついたAl原子を攻撃する。それと同時にイソプロポキシドは脱離する。つまり、求核置換反応(SN2反応)を行なう。2つのオクチレート基は、水に対する立体障害と共鳴安定化により水と反応しない。
【0105】
【化18】
Figure 0004156448
【0106】
【化19】
Figure 0004156448
【0107】
【化20】
Figure 0004156448
【0108】
(化18)で示す反応は、水によりAl−Oの六員環が開環する。そして水は、開環した箇所のAl原子と付加反応をして結合する。(化19)の反応は、水との反応順序は断定はできないが、理論上存在する水分子と付加反応を起こすことによりAl(OH3 )が生成する。そして、水が付加反応した(化20)に示した化合物にさらに水分子が結合すると、Al−Oの結合が離れる。
【0109】
【化21】
Figure 0004156448
【0110】
以上の反応のまとめが(化21)である。この反応からわかるように、まずアルコキシドと水との反応が起こる。このため、置換基による立体障害が減り、次の水との反応が起こり易くなる。また、この化合物の六員環のAl原子と酸素原子との分極の仕方に偏りがあるので、従来の置換基が総てオクチレートのものよりも開環し易くなる。
【0111】
4.比較例
4−1.比較例1
捕水手段を設けない点において相違するが、その他の点は実施例1乃至3と同様な構造である有機EL素子を形成した。
この有機EL素子の発光状態を顕微鏡を用いて観察した後、8 5℃・8 5%の高温高湿度雰囲気に入れ、加速寿命試験で捕水効果の確認を行った。100時間経過後、素子を取り出し同様に発光状態を顕微鏡を用いて観察した。その結果、、非発光部(ダークスポット)は大きくすでに50μm以上に成長しており顕微鏡を使わない目視でも観察できるほどであった。
【0112】
4−2.比較例2
次に、比較例として置喚基Rが1種類である化合物(化6)及び(化22)を捕水剤として用いて、有機EL素子を作製した。
【0113】
【化22】
Figure 0004156448
【0114】
捕水剤が相違するが、その他の点は実施例1乃至3と同様な構造である有機EL素子を形成した。
この有機EL素子の発光状態を顕微鏡を用いて観察した後、8 5℃・8 5%の高温高湿度雰囲気に入れ、加速寿命試験で捕水効果の確認を行った。300時間経過後、素子を取り出し同様に発光状態を顕微鏡を用いて観察した。その結果、非発光部は成長しており、この材料が捕水剤として働いているものの、実施例1乃至3にて合成した化合物の方が捕水能力は高く、効果が大きいことがわかった。
【0115】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、単一の置換基をもつものより、置換基の種類を少なくとも2種類以上もつものの方が立体障害により状態が不安定になる。これにより捕水能力が従来のものに比べて向上し、ダークスポットの成長の抑制する効果を奏する。よって、有機EL素子の保存寿命と駆動寿命を大きく改善することができる。
【0116】
また、捕水材が粉末状でないため捕水材の封入方法が多様化した。これにより、封入スペースを設ける必要が無くなり有機EL素子自体を薄くすることができ、且つ、有機EL素子を作製する際の作業効率が大きく改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による実施の形態を示す有機EL素子の側断面図。
【図2】従来例を示す有機EL素子の側断面図。
【図3】従来例を示す有機EL素子の側断面図。
【符号の説明】
1,51,71…有機EL素子
2,52,72…ガラス基板
3,53,73…封止キャップ
4,54,74…有機EL層
5,55,75…陽極
6,56,76…陰極
7,57,77…捕水手段
8,58,78…接着剤
59…凹部
60…テープ

Claims (2)

  1. 密閉構造を有する電子デバイス内側に設けられ、当該デバイス内の水分を化学的吸着する下記化学式(化7)、(化8)、(化10)、(化11)、(化13)で示される化合物のうち任意に選択された少なくとも一の化合物からなる捕水剤。
    Figure 0004156448
    Figure 0004156448
    Figure 0004156448
    Figure 0004156448
    Figure 0004156448
  2. 少なくとも一方が透明である一対の電極間に有機化合物からなる正孔注入層、正孔輸送層、発光層が積層された有機EL発光部と、
    前記有機EL発光部を封止する気密容器と、
    前記気密容器内に設けられた捕水剤を有する有機EL素子において、
    前記捕水剤が請求項1記載の捕水剤のうちの少なくとも一の捕水剤で構成されていることを特徴とする有機EL素子。
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