JP4156121B2 - エアバッグ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエアバッグ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、エアバッグ装置は、リテーナと、このリテーナ内に収納されたインフレータ及びエアバッグと、リテーナの開口部を閉塞する蓋であるリッドよりなる。そして例えば助手席用エアバッグの場合には、前記リテーナを車室内前面部のインストルメントパネル等の内に埋設して設置し、また、運転席用エアバッグの場合には、前記リテーナをハンドル中央部内に埋設して設置する。そしてインフレータはエアバッグ内にガスを充填させてエアバッグを膨張させる為のガス発生器であり、円筒状に形成されて、その外周には、ガス噴出口が形成されている。エアバッグは、このインフレータからのガスの供給を受けて膨張する袋状のバッグ本体を有し、このバッグ本体には、インフレータに通じるガス導入口が連通している。
【0003】
このようなエアバッグ装置は、車両衝突時等に、乗員が乗員前面の室内部品に衝突することによって生じる衝撃を緩和する。すなわち、リテーナ内に折り畳まれた状態で収納されたバッグ本体が、インフレータの発するガスによりリッドを開けて後方に膨出展開して、ガスを充満したエアバッグを乗員と室内部品との間に形成し、これにより乗員の体を受け止めるように構成している。
【0004】
また助手席用のエアバッグ装置の場合には、エアバック装置を設置可能なインストルメントパネル等の部位と乗員との距離が運転席側に比べて離れているため、エアバッグの展開速度を速めて、乗員に向かって直線的にエアバッグを膨張展開させて乗員を保護することが行われていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したようなエアバッグ装置においては、エアバッグは、リッドを開けて車室内に展開し始めてから展開が完了するまでの間、その折り畳み形状やインフレータからのガスの流れ等に影響された挙動を示しながら展開するので、その展開挙動を制御することは必ずしも容易ではない。また、助手席の乗員は、運転者に比べて様々な姿勢で着座していることが多い。このため、車両衝突時等のエアバッグ作動時に、乗員が通常位置に着座していない場合に、乗員に向かって直線的に膨張展開したエアバッグが乗員の顔を直撃したり、或いは乗員の胸部を急激に圧迫することがある。また、予想に反する方向にエアバッグが膨張展開して、フロントガラスを直撃し破損させる可能性もある。
【0006】
本発明は、上述のような事情に対処するために提案されたものであって、乗員に向かって直線的に展開する方向の展開速度を低減させると共に、エアバッグの飛び出し方向の規制を行い、乗員への衝撃を緩和することを目的とする。
また併せて、エアバッグ装置の組み付け作業性を向上させ、且つバッグ本体の保護を行うことを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、車体側に取り付けられるリテーナと、該リテーナ内に収納されたガス発生器であるインフレータと、上記リテーナ内に収納され上記インフレータからのガスの供給を受けて膨張する袋状のバッグ本体と、上記リテーナ内に端辺を固定することにより長手方向ほぼ中央部にてU字状に折り返された状態で装着され、上記バッグ本体の外側を覆うシート部材と、を備えたエアバッグ装置において、
上記シート部材は、固定端辺と折り返し部との間に、互いに向き合わせて短手方向に向かって縫着する縫い合わせ部が少なくとも1つ設けられていると共に、上記折り返し部に近接する縫い合わせ部と上記折り返し部との間に、短手方向に向かった切れ目が形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記発明によると、エアバッグ作動時に、バッグ本体がリテーナから飛び出すと、まず、上記のシート部材の中間部に形成された縫い合わせ部によって、バッグ本体の乗員に向かう直線的な膨張展開が規制される。つまり、シート部材の縫い合わせ部を破断させることに要するエネルギー吸収によって、直線的なバッグ展開が減速して、側方への展開が促進する。さらに、バッグ展開が進行すると、上記のシート部材はアーム状に張られた状態となり、シート部材に形成した切れ目に沿ってシート部材が破られ、その切れ目の形成された箇所からバッグ本体が膨出する。
【0011】
これによると、上記の縫い合わせ部の強度調整によって、バッグ展開の初期速度を調整することが可能になり、また、切れ目の形成位置によって、バッグ本体の飛び出し方向を規制できる。したがって、バッグ展開の初期段階で、乗員に向かう直線的な展開を防ぎ、左右両側への展開が促進され、乗員へ与える衝撃を軽減すると共に、乗員を保護するための速やかなバッグ展開を可能にする。更には、バッグ本体の展開方向を規制することができるので、バッグの直撃によるフロントガラスの破損も回避できる。
【0012】
そして、バッグ展開によって破断したシート部材は、バッグが膨出することによって形成されたインストルメントパネル等の開口端部をカバーするので、この開口端部の破断面への引っかかり等によって展開したバッグ本体が破損するのを防止する。
【0013】
また、バッグ本体がリテーナ内に収納されている状態では、シート部材がバッグ本体の周囲を覆ってバッグの収納状態を保持するので、エアバッグ装置を車内の所定箇所に組み付ける際の作業性が向上すると共に、その際にもバッグ本体を保護することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
図1は本発明のエアバッグ装置を車室内に設置する場所を示したもので、該エアバッグ装置1を例えば助手席側に設ける場合には、車室内前面部のインストルメントパネル内に設置し、また運転席側に設ける場合には、ハンドル内に設置し、さらに助手席,運転席の両方に設けても良い。
【0015】
また図2は、本発明の一実施例に係るエアバッグ装置の外観を示す斜視図であり、図3は、そのA−A断面図である。
図2,図3において、エアバッグ装置1の構成要素として、11はリッド、12はバッグ本体、13はインフレータ、14はリテーナ、15はシート部材を示している。リッド11は、リテーナ14の開口を閉塞する蓋を形成しており、その中央部には薄肉質に形成されているリップライン11aが形成されている。リテーナ14は、折り畳まれたバッグ本体12と円筒状のインフレータ13を収納して、インストルメントパネル等の内に埋設するためのエアバッグ装置のハウジングを形成している。インフレータ13は、アルゴンを主成分とした圧縮ガスと火薬を併用したガス発生器であって、その圧縮ガス噴出口がバッグ本体12のガス流入口に連通している。
【0016】
そして、リテーナの内部14aにおいて、縫い合わせ部又は切れ目の形成された長方形状のシート部材15が、その一辺をバッグ本体12の上方に、対向辺をバッグ本体12の下方に装着して、バッグ本体12を覆うように配設されている。ここで、シート部材15の材質は布或いは柔軟性のある合成樹脂シートを用いることができる。
図4に、このシート部材15の一実施例を示す。シート部材15は、長方形状であって、その両端辺に取り付け穴15aが形成され、この一方の辺がバッグ本体12の上方に、他方の端辺がバッグ本体12の下方にそれぞれ装着される。そして、このシート部材15の端辺と平行に、中間部にシート部材15の一部が重ねられるように縫い合わせ部15bが形成され、更に、その縫い合わせ部15bより中央側の所望の設定位置に、端辺と平行に切れ目15cが形成されている。
【0017】
上述した実施例の作用を、図5の(a)〜(d)にて説明する。同図(a)は、エアバッグの展開始めの状態を示す。エアバッグ装置1の基本的な作動については従来のものと変わりが無い。すなわち、車両の衝突時に、車両の急減速をセンサが検出して、インフレータ13のガス噴出口から圧縮ガスを噴出させる。そして、バッグ本体12内に流入したガスによってバッグ本体12の膨張展開が開始され、その圧力によって、リッド11が薄肉のリップライン11aから割れて開口する。
【0018】
図5(b)はバッグ本体12の展開がやや進んだ状態を示す。バッグ本体12の展開当初は、まず、シート部材15の縫い合わせ部15bによって展開が規制され、一時的に展開が左右方向に促進する。そして、縫い合わせ部15bを破断することによって吸収される展開エネルギーによって、乗員に直接向かう直線的な方向の展開速度が減少する。縫い合わせ部15bが破断すると、バッグ本体12は更に展開して、シート部材15を緊張状態とする。この際、リッド11は破断して完全に上下に開口している。
【0019】
そして、図5(c)に示すように、バッグ本体12の展開圧力によって、シート部材15が切れ目15cから破れ、その切れ目15cの破断箇所からバッグ本体12の展開が更に進む。したがって、シート部材15に形成する切れ目15cを所望の位置に形成することによって、バッグの飛び出し方向を規制することができる。
【0020】
図5(d)は、バッグ本体12が完全に展開した状態を示す。この際、破断したシート部材15が、上下に開口したリッド11の開口端を覆うことになり、リッド11の開口端にバッグ本体12が引っかかって破損する事態を防止する作用をなす。
【0021】
図6には、シート部材15の他の実施形態を示す(上記の実施例と同様の箇所は同じ符号を付して説明を省略する)。図6の例は、図4の例における縫い合わせ部15bを複数箇所(2箇所)形成したもので、これによって、バッグ本体12の直線的な展開方向の展開速度を更に減少させることができる。
【0022】
上述の実施例によると、エアバッグ作動時に、バッグ本体12がリテーナ14から飛び出すと、まず、上記のシート部材15の中間部に形成された縫い合わせ部15bによって、バッグ本体12の乗員に向かう直線的な膨張展開が規制され、直線的なバッグ展開が減速して、側方への展開が促進する。さらに、バッグ展開が進行すると、シート部材15に形成した切れ目15cに沿ってシート部材15が破られ、そこからバッグ本体12が膨出する。
【0023】
これによると、上記の縫い合わせ部15bの強度調整によって、バッグ展開の初期速度を調整することが可能になり、また、切れ目15cの形成位置によって、バッグ本体12の飛び出し方向を規制できる。したがって、バッグ展開の初期段階で、乗員に向かう直線的な展開を防ぎ、左右両側への展開が促進され、乗員へ与える衝撃を軽減すると共に、乗員を保護するための速やかなバッグ展開を可能にする。更には、バッグ本体12の展開方向を規制することができるので、バッグの直撃によるフロントガラスの破損も回避できる。
【0024】
そして、バッグ展開によって破断したシート部材15は、バッグが膨出することによって形成された開口端部をカバーするので、この開口端部の破断面への引っかかり等によって展開したバッグ本体12が破損するのを防止する。
【0025】
また、バッグ本体12がリテーナ14内に収納されている状態では、シート部材15がバッグ本体12の周囲を覆ってバッグの収納状態を保持するので、エアバッグ装置1を車内の所定箇所に組み付ける際の作業性が向上すると共に、その際にもバッグ本体12を保護することができる。
【0026】
【発明の効果】
本発明は上記のように構成されるので、乗員に向かって直線的に展開する方向の展開速度を低減させると共に、エアバッグの飛び出し方向の規制を行い、乗員への衝撃を緩和させることができる。また併せて、エアバッグ装置の組み付け作業性を向上させ、且つバッグ本体の保護を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエアバッグ装置の設置場所を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施例に係るエアバッグ装置の外観を示す斜視図。
【図3】本発明の一実施例に係るエアバッグ装置の断面図。
【図4】本発明の一実施例におけるシート部材の一例を示す説明図。
【図5】実施例の作用を示す説明図。
【図6】本発明の一実施例におけるシート部材の一例を示す説明図。
【符号の説明】
1 エアバッグ装置
11 リッド
12 バッグ本体
13 インフレータ
14 リテーナ
15 シート部材
15a 取り付け穴
15b,15d 縫い合わせ部
15c 切れ目
Claims (1)
- 車体側に取り付けられるリテーナと、該リテーナ内に収納されたガス発生器であるインフレータと、上記リテーナ内に収納され上記インフレータからのガスの供給を受けて膨張する袋状のバッグ本体と、上記リテーナ内に端辺を固定することにより長手方向ほぼ中央部にてU字状に折り返された状態で装着され、上記バッグ本体の外側を覆うシート部材と、を備えたエアバッグ装置において、
上記シート部材は、固定端辺と折り返し部との間に、互いに向き合わせて短手方向に向かって縫着する縫い合わせ部が少なくとも1つ設けられていると共に、上記折り返し部に近接する縫い合わせ部と上記折り返し部との間に、短手方向に向かった切れ目が形成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
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