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JP4149054B2 - 半導体装置 - Google Patents

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JP4149054B2
JP4149054B2 JP33744898A JP33744898A JP4149054B2 JP 4149054 B2 JP4149054 B2 JP 4149054B2 JP 33744898 A JP33744898 A JP 33744898A JP 33744898 A JP33744898 A JP 33744898A JP 4149054 B2 JP4149054 B2 JP 4149054B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、III−V族窒化物系化合物半導体を用いた半導体装置に関する。ここに、III−V族窒化物系化合物半導体とは、V族元素として少なくとも窒素を含むIII−V族化合物からなる半導体をいう。つまり、III族元素のAl、Ga、In等と、V族元素のN、P、As等を含み、且つ、必ずNを含むIII−V族化合物半導体である。例えば、組成式で書くと、次のようになる。
AlaGabIncd1-d
(0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、a+b+c=1、0<d≦1、X:P、As等のV族原子)
また、各構成原子の一部が不純物原子等に置き換えられた半導体も含むものとする。
【0002】
【従来の技術】
III−V族窒化物系化合物半導体は、紫外から緑色の波長の領域での発光素子や、電力用パワーデバイス等の半導体装置への利用に注目されている。特に、近年、III−V族窒化物系化合物半導体において、高品質な単結晶薄膜作製技術が開発され、単結晶低抵抗p型層の作製が可能になって以来、本半導体材料に関する開発が急速に進展し、青色から緑色の波長で発光する発光ダイオードの実用化が実現され、更なる展開が期待されている。
【0003】
今後、実用化された発光ダイオードの性能向上や、実用化が期待されている半導体レーザ等の実現に向けて、様々な方面からの取り組みが行われており、その一つに、p型コンタクト層の開発がある。
【0004】
例えば、発光ダイオードや半導体レーザ等のような、オーミック性に優れ、接触抵抗が低く、低抵抗なコンタクト層が必要な半導体装置においては、その特性が、半導体装置の性能、例えば、低電圧動作、高輝度化、高信頼性、長寿命化に大きな影響を与える。
【0005】
従来の技術としては、例えば、特開平8−97471号公報に示されている技術が知られている。この技術は、Mg不純物濃度の異なる層を二層形成し、正電極に近い側からMg不純物濃度の高い層および低い層を配置する構成になっている。
【0006】
実施例においては、例えば、正電極に近いMg不純物濃度の高い層で、その濃度が2×1020[/cm3]、層厚が50nmとなっており、一方、Mg不純物濃度が低い層で、その濃度が1×1020[/cm3]、層厚が0.2μmとなっている構造が示されている。なお、Mg不純物濃度の低い層は主に活性層にホールを効率よく注入するための層であり、Mg不純物濃度の高い層は主に正電極とオーミック接触を取るための層としての役割を持っていると考えられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、先に示した従来の技術においては、各種半導体装置に求められる特性、つまり、オーミック性、接触抵抗、直列抵抗に対して、まだ、不十分である。そのため、半導体装置の性能、例えば、低電圧動作、高輝度化、高信頼性、長寿命化に課題を残している。
【0008】
p型コンタクト層自体の抵抗の大きさ、および、正電極の接触抵抗のため、動作電圧が高くなると共に、その部分で発生する熱のため、さらに、p型コンタクト層の結晶性が悪いため、素子が劣化しやすい。例えば、従来の技術を用いて作製した発光ダイオードでは、信頼性試験を行ったところ、過半数の素子が、発光強度が初期値の半値以下に低下するか、或いは動作不能になった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、正電極に対してオーミック性に優れ、接触抵抗が低く、低抵抗なp型コンタクト層を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上記目的を解決する方法として、接触抵抗を下げるために、正電極と接触する部分のp型コンタクト層のアクセプタ不純物濃度を3×1019〜5×1021[/cm3]とし、p型コンタクト層中において、正電極に接する側からその反対側に向けてアクセプタ不純物濃度を連続的に減少させており、p型コンタクト層の正電極とは反対側の層と接する部分のアクセプタ不純物濃度を1×10 18 〜3×10 19 [/cm 3 ]としている。
【0012】
本発明においては、p型コンタクト層におけるアクセプタ不純物濃度の減少は、指数関数的または一次関数的であることが望ましい
【0014】
らに、本発明においては、p型コンタクト層のアクセプタ不純物はMgであることが望ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
本実施形態においては、本発明を用いてIII−V族窒化物系化合物半導体の発光ダイオードを作製した。MOCVD装置を使用し、原料ガスとしては、III族元素を含む有機金属化合物としてトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウム、V族元素を含む水素化物としてアンモニア、不純物の原料ガスとしてはアクセプタ不純物としてビスシクロペンタジエニルマグネシウム、ドナー不純物としてシランを用いて、半導体層を成長した。
【0016】
図1に本実施形態で作製したDH構造を持つpn接合型発光ダイオードの断面図を示す。構造は以下に示す通りである。例えば、サファイア等の基板11上に、順に、GaN低温バッファ層12、SiドープGaN層13、n型クラッド層としてSiドープAlGaN層14、InGaN活性層15、p型クラッド層としてMgドープAlGaN層16、MgドープGaN層17が積層され、その上に正電極に接するp型コンタクト層としてのMgドープGaN層18が積層されている。
【0017】
更に、MgドープGaN層18からSiドープGaN層13までの一部をSiドープGaN層13が表面に露出するまでエッチングを施し、MgドープGaN層18上に正電極層20、SiドープGaN層13上に負電極層21が形成されている。
【0018】
以下にその作製方法を示す。なお、図2は、本実施形態での半導体装置の作製工程を示す半導体装置の断面図である。
【0019】
まず、図2(a)の窒化ガリウム系III−V族化合物半導体積層構造を形成する。
最初に、MOCVD装置内に洗浄済みの基板11を導入し、H2キャリアガスの雰囲気で、基板温度を1100℃にしてクリーニングを行う。 引き続き、基板温度を600℃に設定して、トリメチルガリウム、アンモニアを原料ガスとし、H2をキャリアガスとして、リアクタ内に導入し、基板11上にGaN低温バッファ層12を30nm成長した。そして、基板温度を1050℃に設定し、トリメチルガリウム、アンモニア、シランを原料ガスとし、H2をキャリアガスとして、リアクタ内に導入し、GaN低温バッファ層12上にSiドープGaN層13を4μm成長した。なお、このGaN層のSi不純物濃度は5×1018[/cm3]であった。
【0020】
ついで、基板温度を1050℃に設定し、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、アンモニア、シランを原料ガスとし、H2をキャリアガスとして、リアクタ内に導入し、SiドープGaN層13上に、nクラッド層としてAl組成が0.1のSiドープAlGaN層14を0.1μm成長した。なお、このAlGaN層のSi不純物濃度は5×1017[/cm3]であった。その後、基板温度を750℃に設定し、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、アンモニアを原料ガスとして、N2をキャリアガスとして、リアクタ内に導入し、n型のSiドープAlGaN層14上にIn組成が0.3のInGaN活性層15を2nm成長した。
【0021】
そして、基板温度を1050℃に設定し、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、アンモニア、ビスシクロペンタジエニルマグネシウムを原料ガスとして、H2をキャリアガスとして、リアクタ内に導入し、InGaN活性層15上に、pクラッド層としてAl組成が0.1のMgドープAlGaN層16を0.1μm成長した。なお、このAlGaN層のMg不純物濃度は1×1019[/cm3]であった。更に、基板温度を1050℃に設定し、トリメチルガリウム、アンモニア、ビスシクロペンタジエニルマグネシウムを原料ガスとして、H2をキャリアガスとして、リアクタ内に導入し、MgドープAlGaN層16上に、MgドープGaN層17を0.3μm成長した。なお、このGaN層のMg不純物濃度が1×1019[/cm3]であった。Mg不純物濃度を制御するには、その原料であるビスシクロペンタジエニルマグネシウムの流量を制御すればよい。この場合、たとえばビスシクロペンタジエニルマグネシウムの流量は、0.02μmol/分であった。
【0022】
更に、基板温度を1050℃に設定し、トリメチルガリウム、アンモニア、ビスシクロペンタジエニルマグネシウムを原料ガスとして、H2をキャリアガスとして、リアクタ内に導入し、MgドープGaN層17上に、正電極に接するp型コンタクト層として、MgドープGaN層18を30nm成長した。なお、このGaN層のMg不純物濃度は5×1020[/cm3]であった。このとき、Mgの原料ガスであるビスシクロペンタジエニルマグネシウムの流量は、1.00μmol/分であり、MgドープGaN層17を成長するときに比べ、流量を上げている。引き続き、得られた半導体積層構造を、例えば、N2雰囲気、800℃で熱アニールすることにより、MgドープAlGaN層16、MgドープGaN層17、MgドープGaN層18を低抵抗化させた。
【0023】
ついで、半導体積層構造の図2(b)に示すように、半導体表面にフォトレジスト膜22を付け、フォトリソグラフィー技術によりその一部を除去する。そして、残ったフォトレジスト膜をマスクとして、RIE(リアクティブイオンエッチング)によりエッチングを行い、MgドープGaN層18からSiドープGaN層13を、SiドープGaN層13の一部が表面に露出するまでエッチングをする。
【0024】
その後、フォトレジスト膜を剥がし、図2(c)に示すように、SiドープGaN層13上にTi/Alの負電極層21、MgドープGaN層18上にNi/Auの正電極層20の金属膜を蒸着し、電極を作製する。
【0025】
このようにして得られた半導体積層構造をダイシング等により分割して発光ダイオードのチップを得ることができる。
以上の工程で得られた発光ダイオードのチップの特性を測定したところ、電流20mA駆動時に印加電圧3.4V、発光波長450nm、発光出力1.5mWを得ることができた。
【0026】
また、信頼性試験を行ったところ、室温において動作電流50mA連続駆動の状態で1000時間後の発光強度が初期の発光強度と比較して90%以上の特性を満たす素子が全体の約80%であった。
【0027】
(比較例)
次に、比較例として、正電極に接するp型コンタクト層としてのMgドープGaN層18の層厚を50nmと厚く積層した場合を示す。
MgドープGaN層17を成長するまでは、先の実施例と同じであるが、MgドープGaN層18の層厚を30nmではなく、50nmに設定して成長した。その後は、先に述べた実施例と同じ手法により半導体装置を作製した。
【0028】
この工程で得られた、発光ダイオードのチップの特性を測定したところ、電流20mA駆動時に印加電圧3.5V、発光波長450nm、発光出力1.3mWを得た。また、この、従来の技術を用いて作製した素子を、先と同様に信頼性試験を行ったところ、試験後の特性が初期特性の90%以上の特性を示した素子は、全体の20%程度であった。
【0029】
以上のことは、次のように説明できる。
GaN膜にMgをドープすると、その濃度によりホール濃度が変化する。MgドープGaN膜を4um成長して、その試料を低抵抗化のための熱アニールを施し、Mg不純物濃度に対するホール濃度の変化を調べると、概ね図4のようになる。Mg不純物濃度が3×1019[/cm3]より少ない場合、Mg不純物濃度を増加させると、それにともない低抵抗化アニール後のホール濃度が増加する。しかし、Mg不純物濃度を3×1019[/cm3]以上になると、Mg不純物濃度を増加させても、ホール濃度は上昇せず、かえってホール濃度が減少する傾向になる。これは、Mg不純物濃度が3×1019[/cm3]以上になると高濃度にドーピングされているため、結晶欠陥が多く入り、ホール濃度が増加しないことを示している。
【0030】
Mg不純物濃度を3×1019[/cm3]以上の場合、低抵抗化アニール後のホール濃度が、Mg不純物濃度の増加に対して減少しており、結晶の劣化を示しているが、一方、Mg不純物濃度が3×1019[/cm3]より少ない場合に比べて、正電極に対してオーミックコンタクトが取りやすくなることが分かった。このことから、Mg不純物濃度を3×1019[/cm3]以上のMgドープGaN膜は、コンタクト層としては、抵抗が高いが、電極とのオーミック接触は取りやすいということが分かった。なお、Mg不純物濃度が5×1021[/cm3]より大きくなると、GaNの単結晶としての結晶性が損なわれ、十分な結晶性をもつGaNを得ることができず、実用的ではない。
【0031】
しかし、Mg不純物濃度を3×1019[/cm3]以上にするとホール濃度が増加せず抵抗が高くなってしまう現象は、格子欠陥によるものであり、その度合いは層厚に大きく依存することを見いだした。図4に層厚が30nmの場合における、Mg不純物濃度とホール濃度の相関を合わせて示す。
【0032】
さらに、この構造でコンタクト層としてのMgドープGaN層18の層厚を変化させて素子を作製した場合の、素子特性の変化を図3に示す。この図から、わかるように40nmを越えると、印加電圧は上昇し、発光出力は下がることがわかる。正電極に接するp型コンタクト層の層厚は40nm以下にすることが望ましいことが分かる。
【0033】
図3のような結果は、次の理由からおこると考えられる。本実施例で示したような不純物濃度の場合、結晶性を評価すると、ある層厚を越えると急激に結晶性が劣化するいわゆる臨界膜厚のようなものが存在することが分かった。これは不純物としてのMgはGaの格子位置に入るが、MgとGaでは原子半径が異なるので、ドーピングにより膜自体にストレスがたまるからだと考えられる。本発明者による評価では、層厚が40nmを越えると急にGaN膜の結晶性が悪化していることを確認した。このことから、本実施形態で示したように、コンタクト層の層厚の変化により素子特性が大きく変化したものと考えられる。
また、コンタクト層自体の直列抵抗の成分を考慮すると、層厚が薄い方が直列抵抗は小さい。
【0034】
更に、コンタクト層の層厚によって、活性層で発光した光が外部に取り出される効率が変化していることもある。層厚が厚くなることにより、外部に取り出される光の割合が減少し、発光出力の低下を招いている。
【0035】
以上のことを総合的に考えると、p型コンタクト層としては、Mg不純物濃度が3×1019〜5×1021[/cm3]で層厚が40nm以下のIII−V族窒化物系化合物半導体膜を用いればいいことが分かった。
【0036】
また、別な実施形態として、MgドープGaN層17を層厚が0.3μm、Mg不純物濃度が5×1018[/cm3]になるようにし、且つ、p型コンタクト層であるMgドープGaN層18を層厚40nm、Mg不純物濃度が5×1019[/cm3]になるようにして、同様に発光ダイオードを作製した場合も、上記と同様の理由により、従来の技術を用いて作製した素子に比べ、良好な素子特性を持つ素子を得られることが確認できた。
【0037】
なお、本実施例においてはアクセプタ不純物としてMgを用いているが、他にZn、Cd、Be、C等の不純物を用いても同様の結果を得ることができた。
【0038】
(実施形態2)
本実施形態では、正電極に接するp型コンタクト層として、連続的にMg不純物濃度が変化しているコンタクト層構造を作製した。本実施形態で作製した発光ダイオードの断面図を図5に示す。この積層構造を次に示すように作製した。
【0039】
まず、pクラッド層としてのMgドープAlGaN層16までは、先の実施形態と同じ手法で作製した。次に、引き続いて、次の手法により、コンタクト層としてMgドープGaN層30を作製した。基板温度を1050℃に設定し、トリメチルガリウム、アンモニア、ビスシクロペンタジエニルマグネシウムを原料ガスとして、H2をキャリアガスとして、リアクタ内に導入し、MgドープAlGaN層16上にMg不純物濃度が連続的に変化するMgドープGaN層30を0.3μm成長した。MgドープGaN層30のMg不純物濃度(y)は、MgドープAlGaN層16とMgドープGaN層30の界面に対して垂直方向をZ軸とし、その界面をz=0、MgドープGaN層30方向を+としたとき、Z=0μmのときy=1×1018[/cm3]、z=0.3μmのときにy=1×1020[/cm3]となるように、指数関数的に、つまり、y=a×10[b*z]の形で増加させてドープした。このような不純物濃度変化させるためには、Mg不純物の原料ガスであるビスシクロペンタジエニルマグネシウムのガス流量を連続的に変化させることで形成できる。
【0040】
以上のように半導体積層構造を作製し、その後、先実施形態と同様のプロセスを通して、発光ダイオードを作製した。このようにして得られた発光ダイオードのチップの特性を測定したところ、電流20mA駆動時に印加電圧3.4V、発光波長450nm、発光出力1.5mWを得ることができた。また、本実施形態において作製した素子は、実施形態1と同様に信頼性試験を行ったところ、試験後の特性が初期特性の90%以上の特性を示した素子は、全体の80%以上であった。
【0041】
また、Mg不純物濃度の変化させ方として、擬似的に連続的に変化するように、微小にステップ状に変化させて同様に発光ダイオードも作製した。具体的には、pコンタクト層の正電極とに接する側の反対側の下地層に接する部分のMg不純物濃度を2×1018[/cm3]に、正電極に接する部分のMg不純物濃度を5×1019[/cm3]になるように、p型コンタクト層内のMg不純物濃度を層厚8nmの1ステップごとに2×1018[/cm3]づつ増加するように変化させた。この場合も、同様に、先に示した従来の技術を用いて作製した素子に比べて、良好な素子特性を持つ素子を得ることができた。
【0042】
以上のことから、次のことが分かる。本実施形態のように、正電極に接するコンタクト層において、活性層側の不純物濃度を低く、正電極側の不純物濃度が高くなるようにして、連続的に不純物濃度を増加させることによっても、実施形態1で示したのと同様の効果が得られる。特に、この場合、ステップ状に急峻に不純物濃度を変化させる場合に比べ、不純物濃度の高い層での結晶欠陥の増大を比較的抑えることができることが分かった。このため、コンタクト層を比較的厚く成長することができるようになる。このように、不純物濃度の高い領域の層厚が厚くても結晶性の劣化を抑えることができれば、比較的厚いコンタクト層を形成でき、より電流を横方向に広げられることから、素子特性も良好になる。
【0043】
なお、実施形態1のデータより、本コンタクト層におけるMg不純物濃度は、正電極に接する側の最も濃度の高い部分では、正電極との接触を考慮して3×1019〜5×1021[/cm3]とし、正電極に接する側とは反対側の最も濃度の低い部分では活性層へホールを効率よく注入するを考慮して1×1018〜3×1019[/cm3]にすることが望ましい。更に、Mg不純物濃度が3×1019〜5×1021[/cm3]の範囲にある総層厚は、100nm以下であることが望ましい。
【0044】
また、本実施形態においては、Mg不純物濃度を指数関数的に増加させたが、別の関数、例えば、一次関数的に変化させてもよい。
また、本実施形態で示したように、擬似的な状態として連続的にMg不純物濃度が変化する場合、つまり、微小な変化量づつステップ状にMg不純物濃度が変化していても、連続的に変化させたときとほぼ同様の効果が得られる。この場合、互いに接する層間のMg不純物濃度の比が10以下であることが望ましく、個々の層の層厚は40nm以下、Mg不純物濃度が3×1019〜5×1021[/cm3]の範囲にある総層厚は、100nm以下であることが望ましい。
【0045】
(実施形態3)
本実施形態では、正電極に接するp型コンタクト層として、Mg不純物濃度を周期的に変化させた層であるMgドープGaN層40を導入した。その作製した発光ダイオードの断面図を図6に示す。MgドープGaN層40は、Mg不純物濃度が1×1019[/cm3]、層厚が3nmのMg不純物低濃度層41と、Mg不純物濃度が3×1020[/cm3]、層厚が2nmのMg不純物高濃度層42の二層を一周期として、それを20周期繰り返した構造である。その他の層は、実施形態1と同じように作製した。
【0046】
以上の工程で得られた発光ダイオードのチップの特性を測定したところ、電流20mA駆動時に印加電圧3.4V、発光波長450nm、発光出力1.5mWを得ることができた。また、本実施形態において作製した素子は、実施形態1と同様に信頼性試験を行ったところ、試験後の特性が初期特性の90%以上の特性を示した素子は全体の約80%であった。
【0047】
また、別な実施形態として、p型コンタクト層の構造として、Mg不純物濃度が1×1019[/cm3]、層厚が40nmのMg不純物低濃度層41と、Mg不純物濃度が5×1020[/cm3]、層厚が4nmのMg不純物高濃度層42の二層を一周期として、それを10周期繰り返した構造も作製した。
【0048】
この場合も、先の実施形態と同様に、従来の技術を用いて作製した素子に比べて、良好な素子特性を持つ素子を得ることができた。
【0049】
更に、別な実施形態として、p型コンタクト層の構造として、Mg不純物濃度が2×1018[/cm3]、層厚が30nmのMg不純物低濃度層41と、Mg不純物濃度が5×1019[/cm3]、層厚が10nmのMg不純物高濃度層42の二層を一周期として、それを5周期繰り返した構造も作製した。この場合も、先の実施形態と同様に、従来の技術を用いて作製した素子に比べて、良好な素子特性を持つ素子を得ることができた。
【0050】
さらに別の実施形態として、p型コンタクト層の構造として、Mg不純物濃度が2×1019[/cm3]、層厚が100nmのMg不純物低濃度層41と、Mg不純物濃度が1×1020[/cm3]、層厚が20nmのMg不純物高濃度層42の二層による、いわゆる一周期に相当する構造も作製した。この場合も、先の実施形態と同様、良好な素子特性を有する素子を得ることができた。
【0051】
このことから次のことが分かる。本実施形態のように、不純物濃度が低い層と高い層を交互に積層することによっても、実施形態1で示したのと同様の効果が得られる。この場合、不純物濃度の高い層では結晶欠陥が比較的多いが、層厚が薄い層であればまだ十分な結晶性を有している。その上に不純物濃度の低い層を成長すると、この層は比較的、結晶欠陥が少なく結晶性が改善される。そのため、更にその上に再び不純物濃度の高い層を成長しても、この層の結晶性は、連続的に不純物濃度の高い層を積んだときに比べ結晶性の悪化を抑えることができる。よって、結晶性の高いコンタクト層を形成することができ、素子特性の悪化が見られない。このことから、電極に対してオーミック接触の取りやすいコンタクト層を、層厚も厚く形成することが可能であることが分かった。
【0052】
なお、この場合、Mg不純物濃度の低い層で結晶性を回復させることができるため、濃度の低い層と高い層の濃度比は、実施形態2のアクセプタ不純物の濃度を疑似的に連続的に変化させる場合に比べ大きくすることができる。実施形態1のデータより、本コンタクト層におけるMg不純物濃度は、濃度の低い部分で1×1018〜3×1019[/cm3]、濃度の高い部分で3×1019〜5×1021[/cm3]とすることが望ましい。また、高濃度層の層厚は、実施形態1で示したように、層厚がある程度厚くなることにより素子特性の悪化を示すようになる。このことから、一層の層厚は40nm以下にすることが望ましい。
また、周期数は、本実施形態で示した数値に限定されるものではない。
また、p型コンタクト層の総層厚は1μmを越えると素子としての直列抵抗が高くなってしまい、かえって問題を生じる。よって、p型コンタクト層の総層厚は1μm以下であることが望ましい。更に望ましくは0.5μm以下である。
【0053】
今までの実施形態においては、発光ダイオードの例であった。しかし、本発明は、発光ダイオード、半導体レーザといった発光素子以外の半導体装置、例えば、III−V族窒化物系化合物半導体を用いた受光素子のp型コンタクト層として、或いは、III−V族窒化物系化合物半導体を用いたnpnバイポーラトランジスタのベース電極として、といったように、p型コンタクト層が必要な様々な半導体装置への利用も可能である。
【0054】
【発明の効果】
本発明を用いることにより、III−V族窒化物系化合物半導体装置の低電圧動作、高輝度化、高信頼性、長寿命化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1で示した、本発明を用いて作製したIII−V族窒化物系化合物半導体装置の構造断面図である。
【図2】実施形態1で示した、本発明を用いて作製したIII−V族窒化物系化合物半導体装置の作製工程を示す図である。
【図3】正電極に接するp型コンタクト層の層厚に対する、発光ダイオードの特性の変化を示す図である。
【図4】MgドープGaN膜におけるMg不純物濃度とホール濃度の関係を示す図である。
【図5】実施形態2で示した、本発明を用いて作製したIII−V族窒化物系化合物半導体装置の構造断面図である。
【図6】実施形態3で示した、本発明を用いて作製したIII−V族窒化物系化合物半導体装置の構造断面図である。
【符号の説明】
11 基板
12 GaN低温バッファ層
13 SiドープGaN層
14 SiドープAlGaN層
15 InGaN活性層
16 MgドープAlGaN層
17 MgドープGaN層
18 MgドープGaN層
20 正電極層
21 負電極層
22 フォトレジスト膜
30 MgドープGaN層
40 MgドープGaN層
41 Mg不純物低濃度層
42 Mg不純物高濃度層

Claims (3)

  1. III−V族窒化物系化合物半導体を用いて作製された、p型層とn型層とそれらの間に配置された活性層とを有する半導体装置において、正電極に接するp型コンタクト層を有し、前記p型コンタクト層の正電極に接する最表面部分のアクセプタ不純物濃度が3×1019〜5×1021[/cm3]であって、前記p型コンタクト層は、前記正電極に接する側からその反対側に向けてアクセプタ不純物濃度が連続的に減少しており、前記p型コンタクト層の正電極とは反対側の層と接する部分のアクセプタ不純物濃度が1×10 18 〜3×10 19 [/cm 3 ]であることを特徴とする半導体装置。
  2. 前記p型コンタクト層におけるアクセプタ不純物濃度の減少は、指数関数的または一次関数的であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
  3. 前記p型コンタクト層のアクセプタ不純物はMgであることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
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