JP4148747B2 - 積層板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリント回路板については小型化、高機能化の要求が強くなる反面、価格競争が激しく、特にプリント回路板に用いられる多層積層板やガラス布基材エポキシ樹脂積層板、あるいはガラス不織布を中間層基材としガラス織布を表面層基材とした積層板は、いずれも価格の低減が大きな課題となっている。
また、近年電気機器、電子機器、通信機器等においては、デジタル化が進みプリント回路基板での安定したインピーダンスが要求されるようになり、これに伴いプリント回路板の原料である銅張り積層板では板厚精度が要求されるようになってきた。
【0003】
従来、プリント回路板に用いられる多層積層板やガラス布基材エポキシ樹脂積層板、あるいはガラス不織布を中間層基材としガラス織布を表面層基材とした積層板を積層成形する場合には、熱盤間に銅箔、プリプレグ、内層用プリント回路板、鏡面板等を何枚も重ねて加熱加圧成形する多段型のバッチプレスが一般的である。(例えば、非特許文献1参照)
しかし、このような多段のバッチプレスでは、各積層板の熱盤内での位置により積層成形時に各積層板にかかる熱履歴が異なるため、成形性、反り、寸法変化率等の品質に於いて差が生じ、品質のバラツキの少ない製品を供給することは困難であった。さらに、20〜100kg/cm2 の高圧により積層板を成形するため樹脂フローにより板厚精度が出ない問題があった。
また、多段型バッチプレスでは、熱盤、あて板、クッション材等の積層板を成形するに必要な治具を加熱冷却するための膨大な熱量が必要であり、そのため近年の地球温暖化等の地球環境に対する省エネルギー化が困難な設備であった。
【0004】
また、前記品質バラツキの少ない積層板や省エネルギー化ができる設備として、横型の連続ベルトプレス等が開発された。(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)
しかし、横型の連続ベルトプレスによる方法でも、ベルトに挟んだ時の圧力むら、温度むらが発生しやすい問題や重力による密着や材料の進入角の違いにより成形性(特に、ボイドの発生)や銅箔接着力等で表裏のばらつきが生じたり、銅箔や基材のテンションの違いによる反りや寸法変化が大きくなったりする問題があった。
【0005】
【特許文献】
特告平3−44574号公報(p.2−3、第2図)
【非特許文献1】
本田進、青木正光編集「高密度プリント配線板実装技術」(株)リアライズ社出版、 1991年9月20日、p.66−72
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、成形性に優れ、かつ板厚精度、反り等のバラツキの少ない積層板を提供するための積層板の製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(5)記載の本発明により達成される。
(1)シート状繊維基材に樹脂組成物を付着させたプリプレグを移送して、積層板を連続的に製造する方法であって、前記プリプレグの1枚または複数枚を予備加熱する工程と、前記加熱後に粘着性樹脂層を有する金属箔またはキャリアフィルムを貼り合わせる工程と、前記プリプレグと前記金属箔またはキャリアフィルムとを表面が弾性材料で構成されたロールで接合する工程と、前記工程で得られた積層板を後加熱する工程と、前記加熱後に積層板を、100〜200℃に加熱したロールに通す工程と、前記ロ−ルを通す工程後に積層板を、テンションを掛けながら更に、内部に複数本のロ−ルを有する熱風循環式の硬化炉を用い連続的に加熱して硬化を促進させる工程を有することを特徴とする積層板の製造方法。
(2)前記硬化炉の前後で10kgf以上のテンションを掛けながら硬化炉内を連続的に加熱して硬化促進させるものである第(1)に記載の積層板の製造方法。
(3)前記プリプレグの移送方向は、鉛直方向である第(1)または(2)に記載の積層板の製造方法。
(4)前記プリプレグは、複数の熱硬化性樹脂層を有するものである第(1)ないし(3)のいずれかに記載の積層板の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の積層板の製造方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の積層板の製造方法を説明するための概略図である。図1に示すようにプリプレグ供給部1から供給されたプリプレグ2は、送りロールを用いて予熱加熱部7で予備加熱されながら鉛直方向に移送される。
また、金属箔供給部3から送りロールを用いて粘着性樹脂層を有する金属箔4が供給される。
プリプレグ2と、粘着性樹脂層を有する金属箔4とは、表面が弾性材料で構成されたロール5間を通過させることにより接合される。接合された積層板は、後加熱部8により後加熱され、ベ−キングロ−ル9により更に硬化を進め、最終的に硬化炉10内を硬化炉前後に設けたピンチロ−ル11によりテンションを掛けながら通過させた後、送りロールで巻き取り部6に移送される。そして、巻き取り部6で巻き取ることにより、積層板を連続的に製造する。
【0009】
本発明で用いるプリプレグは、シート状基材に樹脂組成物を付着したものである。
前記シート状基材としては、例えばガラス織布、ガラス不繊布、ガラスペーパー等のガラス繊維基材の他、紙、合成繊維等からなる織布や不織布、金属繊維、カーボン繊維、鉱物繊維等からなる織布、不織布、マット類等が挙げられ、これらの基材の原料は単独又は混合して使用してもよい。これらの中でもガラス繊維基材が好ましい。これにより、積層板の剛性、寸法安定性が向上する。
【0010】
前記樹脂組成物を構成する樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂等の熱硬化性樹脂あるいはこれらの変性樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂、天然樹脂等の樹脂が挙げられる。これらの中でもエポキシ樹脂が好ましく、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、電気絶縁性および接着性を向上することができる。
また、更に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とノボラック型エポキシ樹脂とを重量比で95:5〜60:40で併用することが好ましく、特に80:20〜70:30で併用するのが好ましい。これにより、上記効果に加えて、耐熱性も向上することができる。
【0011】
前記樹脂組成物には、必要に応じて硬化剤、硬化促進剤、充填剤等を配合しても構わない。
前記硬化剤としては、例えばジシアンジアミド、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン等のアミン系化合物、ノボラック樹脂や無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の酸無水物や三弗化ホウ素・モノエチルアミン等のアミン錯化合物や2−フェニル−イミダゾ−ル等のイミダゾ−ル類を使用することができる。
また、前記硬化促進剤としては、例えば2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−メチル−4−エチル−イミダゾ−ル等のイミダゾ−ル類を使用することができる。
【0012】
前記充填剤としては、例えば無機充填剤、有機充填剤を挙げることができるが、無機充填剤が好ましい。これにより、積層板の耐トラッキング性、耐熱性、熱膨張率の低下等の特性を付与することができる。
前記無機充填剤としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム、タルク、ウォラストナイト、アルミナ、シリカ、未焼成クレー、焼成クレー、硫酸バリウム等がある。これらの中でも水酸化アルミニウムが特に好ましい。これにより、更に耐トラッキング性を付与できる。前記熱硬化性樹脂100重量部に対して、無機充填剤は50〜300重量部含有することが好ましく、60〜280重量部が好ましい。含有量が前記下限値未満であると耐トラッキング性の改善効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると半田付け性が低下する場合がある。
【0013】
本発明で用いるプリプレグは、特に限定されないが、複数の熱硬化性樹脂層を有することが好ましい。これにより、各層にそれぞれ異なる機能を発揮させるように設計できる。
例えば、図2に示すように3層の熱硬化性樹脂層を有するプリプレグ2から構成することができる。すなわちプリプレグ2は、シート状基材20に熱硬化性樹脂を含浸させた第1層21と、該第1層の両面にそれぞれ熱硬化性樹脂を塗布して形成された第2層22a、22bとを有するものである。これにより、第1層と第2層で異なる機能を付与できる。なお、前記第1層と前記第2層の界面は、両者が混合して連続的な構造を有していても構わない。
【0014】
前記第1層と前記第2層に用いられる熱硬化性樹脂は同じものであっても良いが、条件の異なるものが好ましい。
前記第1層の熱硬化性樹脂の反応率は、前記第2層の熱硬化性樹脂の反応率よりも高いことが好ましい。これにより、第1層は、積層板の板厚精度が向上する。また、第2層は、金属箔との接着性が向上する。
【0015】
前記第1層における熱硬化性樹脂の反応率は、特に限定されないが、85%以上であることが好ましい。これにより、積層板の板厚精度がさらに向上する。また、前記第2層における熱硬化性樹脂の反応率は、特に限定されないが、65%以下であることが好ましい。これにより、金属箔との接着性がさらに向上する。更に前記第1層における熱硬化性樹脂の反応率が85%以上、かつ前記第2層における熱硬化性樹脂の反応率が65%以下であることが好ましい。これにより、上記の2つの効果に加え、プリプレグの折り曲げ等によっても樹脂粉末が容易に発生しなくなる。
【0016】
前記反応率の好ましいものとしては、第1層における熱硬化性樹脂の反応率が90〜95%である。第2層における熱硬化性樹脂の反応率が20%以下、特に0.1〜20%が好ましい。最も好ましくは、第1層における熱硬化性樹脂の反応率が90〜95%であり、かつ第2層における熱硬化性樹脂の反応率が20%以下である。これにより、接着性の向上、積層板の板厚精度の向上、樹脂粉末の発生防止に加え、樹脂のフローアウトを防止でき成形性が向上する。
【0017】
前記反応率は、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。すなわち、未反応の樹脂と、各層の樹脂の双方についてDSCの反応による発熱ピークの面積を比較することにより、次式(I)により求めることができる。なお、測定は昇温速度10℃/分、窒素雰囲気下で行えばよい。
反応率(%)=(1−樹脂の反応ピークの面積/未反応の樹脂の反応ピークの面積)×100(I)
なお、プリプレグの反応率の制御は、加熱温度、加熱時間及び光や電子線等の照射など種々の方法により制御できるが、加熱温度や加熱時間で制御することが、簡便で精度よく行える点で好ましい。
【0018】
前記シート状基材に樹脂組成物を付着する方法としては、例えばシート状基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターによる塗布方法、スプレーによる吹き付け法、樹脂組成物の粉末を散布する方法等が挙げられる。これらの中でもシート状基材に樹脂ワニスを浸漬する方法が好ましい。これにより、シート状基材に樹脂組成物を均一に付着させることができる。
前記樹脂組成物の付着量は、シート状繊維基材の繊維材質、性状、重量(単位面積当たり)により異なるため、特に限定されない。
また、プリプレグが複数の熱硬化性樹脂層を有する場合、第2層/第1層の樹脂重量比は、特に限定されないが、0.05〜2.5が好ましく、特に0.1〜2.0が好ましい。これにより、板厚精度と凹凸への埋め込み性が向上する。重量比が前記上限値を超えると成形後における板厚精度の改善効果が低下する場合がある。前記下限値未満であると成形後の残存ボイドや吸湿半田試験でのミズリングやフクレの発生を防止する効果が低下する場合がある。
【0019】
本発明の製造方法では、プリプレグを予備加熱する工程を有する。これにより、長時間安定して連続的に積層板を製造できる。
前記予備加熱温度は、特に限定されないが、150〜250℃が好ましく、特に170〜240℃が好ましい。これにより、プリプレグと金属箔とのラミネート時の密着性を向上することができる。また、プリプレグのボイドをさらに低減することができる。前記加熱温度が前記下限値未満であると密着性が低下する場合があり、前記上限値を超えるとプリプレグの樹脂成分が熱分解する場合がある。プリプレグの移送速度は、特に限定されないが、0.5〜20m/分が好ましく、特に1〜10m/分が好ましい。これにより、生産性を低下することなく、均一に積層板を生産できる。
【0020】
前記予備加熱工程で用いる加熱機の伝熱面積は、特に限定されないが、1m2以上が好ましく、特に1.2〜1.5m2が好ましい。伝熱面積が前記下限値未満であると、積層板の連続安定成形性を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると余分なエネルギ−放出による周囲温度の上昇がありプリプレグに対する硬化度の管理が難しくなる場合がある。
前記加熱機の形状は、特に限定されないが、フラットパネル状であることが好ましい。これにより、鉛直方向に移動するプリプレグに有効な熱量を与えることができる。また、前記加熱機は、特に限定されないが、250℃まで加熱可能な遠赤外線等のパネル状加熱機であることが好ましい。これにより、プリプレグに付着した樹脂の溶融粘度を低下させることで、加熱ロールによる成形時の熱量不足を補い、成形不良(特に、ボイド)を防止することができる。
【0021】
本発明の製造方法では、前記予備加熱後に粘着性樹脂層を有する金属箔またはキャリアフィルムを貼り合わせる工程を有する。金属箔が粘着性樹脂層を有することにより、金属箔とプリプレグとの密着性を向上することができる。さらに、粘着性樹脂を有する金属箔は、プリプレグと金属箔とのラミネート時におけるバンクの形成を抑制することができ、それによって積層板に発生するボイド及びしわを防止できる。前記金属箔を構成する金属は、例えば例えば銅または銅系合金、アルミまたはアルミ系合金等を挙げることができる。金属箔の厚さは、特に限定されないが、9〜70μmが好ましく、特に12〜35μmが好ましい。
前記キャリアフィルムとしては、例えばPETフィルム、PBTフィルム、延伸ナイロンフィルム、ポリカ−ボネ−トフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム等を挙げることができる。キャリアフィルムの厚さは、特に限定されないが、9〜50μmが好ましく、特に12〜35μmが好ましい。
【0022】
前記粘着性樹脂層を構成する樹脂としては、特に限定されないが、例えばエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等を挙げることができる。
前記粘着性樹脂層を構成する樹脂は、重量平均分子量10,000以上のフェノキシ樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましい。重量平均分子量が10,000未満であるとプリプレグと金属箔との接合時に樹脂のバンク形成により連続成形性が低下する場合がある。
【0023】
更に前記粘着性樹脂層を構成する樹脂は、2種以上のエポキシ樹脂を含むことが好ましく、特に分子量の異なるエポキシ樹脂を含むことが好ましい。さらに、重量平均分子量10,000以上のビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ当量500以下のビスフェノール型エポキシ樹脂および硬化剤を含む樹脂が最も好ましい。これにより、加熱ロールでラミネートされているときの流動性を低く抑えて、層間厚さを保つと共に組成物に高粘着性を付与できる。重量平均分子量10,000以上のビスフェノール型エポキシ樹脂単独では、硬化後の架橋密度が低いために可とう性が大きくなりすぎる場合があり、また所定濃度のワニスとして使用する時に粘度が高くコート時の作業性が低下する場合がある。エポキシ当量500以下のビスフェノール型エポキシ樹脂単独では、金属箔とプリプレグとの接合時に樹脂の滞留(樹脂バンク)が発生して連続成形性が低下する場合がある。硬化剤としては、例えばジシアンジアミド等のアミン系化合物が挙げられる。
【0024】
また、前記粘着性樹脂層を構成する樹脂は、重量平均分子量10,000以上のビスフェノール型エポキシ樹脂とエポキシ当量500以下のビスフェノール型エポキシ樹脂を50〜70重量%:50〜30重量%で配合することが好ましい。重量平均分子量10,000以上のビスフェノール型エポキシ樹脂が前記下限値未満であるとプリプレグと金属箔との接合時に樹脂バンクの発生により連続成形性が低下する場合があり、前記上限値を超えるとプリプレグと金属箔との密着性が低下する場合がある。
なお、重量平均分子量は、例えばGPCで測定できる。エポキシ当量は、例えば過塩素酸滴定によって測定できる。
なお、金属箔への粘着性樹脂層の厚さは、特に限定されないが、5〜50μmが好ましく、特に10〜30μmが好ましい。
【0025】
本発明の製造方法では、前記プリプレグと、前記金属箔等とを表面が弾性材料で構成されたロールで接合する工程を有する。これにより、プリプレグと金属箔等との接合をさらに均一にすることができる。
表面が弾性材料で構成されたロール5は、例えば図3に示すように表面層53が弾性材料で構成されている。すなわちロール基材51表面周面に弾性材料で構成される表面層53を有しているものである。前記弾性材料は、特に限定されないが、シリコンゴム、イソプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム等の各種ゴムやポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらの中でも、シリコンゴムが好ましい。
前記ロールでプリプレグと金属箔等とを接合する場合、ロール間の面圧は、特に限定されないが、5〜30kg/cm2が好ましく、特に10〜15kg/cm2が好ましい。
前記ロールの温度は、特に限定されないが、100〜200℃が好ましく、特に120〜180℃が好ましい。
【0026】
前記表面層のゴムショアー硬度は、特に限定されないが、50度以上が好ましく、特に70〜90度が好ましい。ゴムショアー硬度が前記下限値未満であると弾性材料の耐久性が低下する場合がある。
前記表面層の厚さは、0.5mm以上が好ましく、特に0.5〜3.5mmが好ましい。表面層の厚さが、前記下限値未満であるとプリプレグと金属箔との均一な接合が困難になる場合あり、その結果として積層板表面の外観が低下する場合がある。
【0027】
本発明の製造方法では、前記工程で得られた積層板を更に後加熱する工程を有する。これにより、銅箔面のシワの発生による外観不良、ボイド発生による成形性不良などの特性劣化を防止することができる。
前記後加熱温度は、特に限定されないが、120〜250℃が好ましく、特に140〜230℃が好ましい。これにより、積層板を構成する樹脂の硬化を促進することができる。また、積層板を巻き取る前の放熱による銅箔およびプリプレグの熱収縮を抑制することができ、それによって成形時の外観(特に金属箔部のしわ)を向上することができる。前記加熱温度が前記下限値未満であると硬化度不足により密着性が低下する場合があり、前記上限値を超えるとプリプレグの樹脂成分が熱分解することによりピ−ル強度が低下する場合がある。
【0028】
前記後加熱工程で用いる加熱機の伝熱面積は、特に限定されないが、1m2以上が好ましく、特に1.2〜1.5m2が好ましい。伝熱面積が前記下限値未満であると、積層板の連続安定成形性を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると余分なエネルギ−放出によるエネルギ−コストの増加及び設備コストの増大となる。
前記後加熱機の形状は、特に限定されないが、フラットパネル状であることが好ましい。これにより、前記工程により得られた積層板に有効な熱量を与えることができる。
また、前記後加熱機は、特に限定されないが、250℃まで加熱可能な遠赤外線等のパネル状加熱機であることが好ましい。
【0029】
本発明の製造方法では、前記工程で後加熱された積層板をロールに通す工程を有する。これにより、後加熱機から出てきた積層板の急激な放冷による銅箔面のシワの発生による外観不良、ボイド発生による成形性不良などの特性劣化を更に防止することができ、また加熱されたロ−ル表面へ接触することにより積層板の樹脂層の硬化を更に促進することが出来るためピ−ル強度や耐熱性不良などの特性劣化も防止出来る。後述する加熱温度等の観点より、ベーキングロールを用いることが好ましい。
【0030】
前記ロ−ルの加熱温度は、特に限定されないが、100〜200℃が好ましく、特に120〜180℃が好ましい。これにより、積層板を構成する樹脂の硬化を促進することができる。また、積層板を巻き取る前の放熱による銅箔およびプリプレグの熱収縮を抑制することができ、それによって成形時の外観(特に金属箔部のしわ)を向上することができる。前記加熱温度が前記下限値未満であると後加熱機から出て来た積層板との温度差が大きくなるため外観不良が大となり且つ硬化度不足により密着性が低下する場合があり、前記上限値を超えるとプリプレグの樹脂成分が熱分解することによりピ−ル強度が低下する場合がある
【0031】
前記ロ−ルの接触面伝熱面積は、特に限定されないが、0.1m2以上が好ましく、特に0.3〜0.6m2が好ましい。接触面伝熱面積が前記下限値未満であると、積層板の硬化を促進する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えるとロ−ル径が大きくなるために余分なエネルギ−放出によるエネルギ−コストの増加及び設備コストの増大となる。
【0032】
本発明の製造方法では、前記工程のロ−ルにより硬化が促進された積層板を、テンションを掛けながら更に連続的に加熱して硬化を促進させる工程を有する。これにより、積層板を引っ張りながら硬化を促進させることができるため、積層板の表面外観を特に向上することができる。
具体的には、例えば内部に複数本のロ−ルを有する熱風循環式の硬化炉に通す工程を有する。その際、硬化炉前後に設けたピンチロ−ルによりテンションを掛けながら硬化させる。これにより、ベ−キングロ−ルを通ってきた積層板の樹脂層の硬化を更に促進することが出来るためピ−ル強度アップや耐熱性向上を図る事ができる。また、テンションを掛けて硬化することにより積層板の外観(金属箔部のしわ)が向上する。更に、硬化炉内部に複数本のロ−ルを設けることにより、積層板が熱を受けながら交互に延伸されるため反りを低減する効果が向上することができる。
【0033】
前記硬化炉の形状は、特に限定されないが、内部に複数本のロ−ルを有する熱風循環式の乾燥機が好ましい。特に内部に複数本のロ−ルを持つ縦型の畳乾燥機が好ましい。これにより、熱エネルギ−の効率利用が図れるばかりでなく、内部に複数本のロ−ルを設けることにより加熱状態でロ−ルにより延伸されるため反り改善が図れる。また、乾燥機内部に複数本のロ−ルを設けることによって多段での乾燥が可能となるため限られたスペ−スで乾燥長を長くすることができ、設備の小型化による設備コストの低減および省エネルギ−化を達成できる。
【0034】
前記硬化炉の前後に設けたピンチロ−ル間のテンションは、特に限定されないが、10kgf以上のテンションを掛けながら硬化炉内を通過させることが好ましく、特に20〜30kgfが好ましい。これにより、積層板を加熱しながら延伸することができるため積層板の外観を向上することができる。テンションが前記下限値未満であると硬化炉から出て来た積層板の外観(特に金属箔のしわ)を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えるとテンション過剰により縦方向のしわが入り易くなる場合がある。
【0035】
前記硬化炉の加熱温度は、特に限定されないが、100〜250℃が好ましく、特に140〜220℃が好ましい。これにより、積層板を構成する樹脂の硬化を更に促進することができる。また、積層板を巻き取る前の放熱による銅箔およびプリプレグの熱収縮を抑制することができ、それによって成形時の外観(特に金属箔部のしわ)を向上することができる。前記加熱温度が前記下限値未満であると硬化炉から出て来た積層板の硬化度不足によりピ−ル強度およびガラス転移温度(Tg)が低下する場合があり、前記上限値を超えると樹脂成分が熱分解することによりピ−ル強度が低下する場合がある
【0036】
前記硬化炉の乾燥長は、特に限定されないが、20m以上が好ましく、特に25〜35mが好ましい。乾燥長が前期下限値未満であると、積層の硬化を促進する効果が更に低下する場合があり、前記上限値を超えると硬化過剰によるピ−ル強度等の低下を起こすばかりでなく、硬化炉が大きくなるために余分なエネルギ−放出によるエネルギ−コストの増加及び設備コストの増大となる場合がある。
【0037】
前記プリプレグの移送方向は、特に限定されないが、鉛直方向が好ましい。これにより、プリプレグの撓みによるラミネ−ト時のシワの防止およびラミネ−ト後の積層板の撓みによる外観異常を防止することができる。
【0038】
前記ロ−ルによる硬化促進後に積層板を、巻き取り機で連続的に巻き取る。また、裁断機で所定の長さに裁断することができる。
なお、本発明の製造方法では、プリプレグを鉛直方向に移送して、連続的に積層板を製造することが好ましい。これにより、反り、寸法変化等の品質のバラツキを低減することができる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
<プリプレグの作成>
▲1▼ワニスの調製
エポキシ当量約450のビスフェノールA型エポキシ樹脂70重量部とエポキシ当量約190のフェノールノボラック型エポキシ樹脂30重量をメチルエチルケトン100重量部に溶解した。この溶液に、ジシアンジアミド3重量部と2−フェニル−4−メチルイミダゾール0.15重量部をジメチルホルムアミド20重量部に溶解した溶液を加え、攪拌混合した。この様にしてガラスクロス塗布用のエポキシ樹脂ワニスを調製した。
【0041】
▲2▼シート状繊維基材への熱硬化性樹脂の含浸、塗布
上記のように調製したワニスをシート状基材である厚さ0.08mmのガラスクロス(日東紡社製 WEA 116E、幅:1060mm)に樹脂固形分がガラスクロス100重量部に対して35重量部になるように含浸し、170℃の乾燥炉中で3分間乾燥し、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロスからなる第1層を作成した。
次に、第1層の両面それぞれに、前述の熱硬化性エポキシ樹脂ワニスを樹脂固形分がガラスクロス100重量部に対して45重量部になるよう塗布を行い、170℃の乾燥炉中で1.5分間乾燥し、第2層を作成した。このようにして第1層とその両面に形成された第2層からなるプリプレグを得た。
【0042】
▲3▼反応率の確認
第1層は、上記のようにガラスクロスにエポキシ樹脂ワニスを含浸し、170℃の乾燥炉中で3分間乾燥したものをサンプルとした。
第2層のサンプルは、上記の方法で作成した第1層と第2層からなるプリプレグの表面を削ることにより得た。
各層のサンプルについてDSC装置(TAインストルメント社製)により発熱ピークを測定した。160℃付近の硬化反応による発熱ピークの面積について、反応前の樹脂と各層の樹脂を比較して、前述の式(I)に従って反応率を算出した。その結果、第1層の反応率は92%、第2層の反応率は40%であった。
【0043】
<粘着性樹脂を有する金属箔の作成>
臭素化フェノキシ樹脂(臭素化率25%、平均分子量30000)100重量部と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(大日本インキ化学(株)製 エピクロン830)40重量部に2―フェニル−4−メチル5−メトキシイミダゾール3重量部をキシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンの混合溶剤に攪拌、溶解して粘着性樹脂のワニスを得た。得られたワニスを厚さ18μmの銅箔(日本電解社製 FGP、幅:580mm)に塗工して粘着性樹脂を有する金属箔を得た。なお、粘着性樹脂層の厚さは15μmとした。
【0044】
<積層板の成形>
上述のプリプレグをプリプレグ供給部に装着し、プリプレグを図1に示すように上方から下方にほぼ垂直に1.0m/minの速度で移送し、前記プリプレグの両側から遠赤外線ヒーターを用いて170℃でパネル状の予備加熱機(伝熱面積 1.2m2)で予備加熱した。また、上述の銅箔をプリプレグの移送方向に対して、水平方向から供給した。そして、プリプレグと銅箔とを140℃に加熱された一対のロール間(ロール面圧:10kg/cm2)を通過させた。次に、パネル状の後加熱機(伝熱面積 1.5m2)を用いて150℃で後加熱した。その後、縦方向に配置した3本のベ−キングロ−ル(接触面伝熱面積 0.4m2)に交互に接触させ、130℃で加熱しながら通過させた後、25kgfのテンションを掛けながら190℃に加熱された硬化炉(乾燥長30m)により硬化を促進し、最終的に厚さ0.15mmの両面銅張積層板を得た。
なお、ロールは、厚さ2mm、ゴムショアー硬度80度のシリコンゴム(明和ゴム工業(株)製: シリクッスーパーH80)で表面層を構成した。
【0045】
(実施例2)
プリプレグの第1層の反応率を85%にした以外は、実施例1と同様にした。
【0046】
(実施例3)
プリプレグの第1層の反応率を70%にした以外は、実施例1と同様にした。
【0047】
(実施例4)
プリプレグの第2層の反応率を70%にした以外は、実施例1と同様にした。
【0048】
(実施例5)
伝熱面積0.8m2の後加熱機を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0049】
(実施例6)
接触面伝熱面積0.08m2のベ−キングロ−ルを3本用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0050】
(実施例7)
ベ−キングロ−ルの加熱温度を200℃とした以外は、実施例1と同様にした。
【0051】
(実施例8)
硬化炉の加熱温度を250℃とした以外は、実施例1と同様にした。
【0052】
(実施例9)
実施例1で得られたワニスをシート状基材である厚さ0.08mmのガラスクロス(日東紡社製 WEA 116E、幅:1060mm)に樹脂固形分がガラスクロス100重量部に対して45重量部になるように含浸し、170℃の乾燥炉中で5分間乾燥し、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロスを作成した。
積層板の成形工程に該プリプレグを使用する以外は実施例1と同様にした。
【0053】
(実施例10)
硬化炉でのテンションを10kgfで実施した以外は実施例1と同様にした。
【0054】
(実施例11)
金属箔の代わりにキャリアフィルムとして、25μmのPETフィルム(ダイアホイルヘキスト社製、ダイアホイル S100)を用いた以外は実施例1と同様にした。
【0055】
(比較例1)
硬化炉を使用しなかった以外は、実施例1と同様にした。
【0056】
(比較例2)
実施例1で得られたプリプレグを紙組し、プリプレグ1枚の上下に厚さ18μmの銅箔を重ねて1セットとし、それを200セット作成した。それらを圧力40kgf/cm2、温度170℃で60分間加熱加圧成形を行った。加熱成形後、各段の積層品をそれぞれ分離することにより、絶縁層厚さ0.1mmの両面銅張積層板を得た。
【0057】
上述の各実施例及び比較例により得られた積層板について、次の評価を行い、得られた結果を表1に示す。各評価は、以下の方法で行った。なお、板厚精度及び成形性は、サイズ500mm×500mmの両面銅張積層板をエッチングにより銅箔を除去し、絶縁層のみとしたものをサンプルとして測定した。
<積層板の評価>
1 板厚精度
板厚精度は碁盤目状に測定点を36点設定し、厚みを測定した。この平均値と範囲を求め、板厚精度とした。
【0058】
2 成形性
成形性は、ボイドの有無、その他異常が見られないかを目視および光学顕微鏡により確認を行った。各符号は、以下の通りである。
◎:ボイド無し
○:10μm未満のボイド有るが、実用可能
△:ボイド10μmを超えるボイドが有り、実用不可
×:ボイド多数有り
【0059】
3 外観
サイズ500mm×500mmの基板について、目視によりシワ、打痕及びピット等の有無を確認した。
◎:しわ等無し
○:100μm未満のしわ等が有るが、実用可能
△:100μmを超えるしわ等が有り、実用不可
×:しわ等が多数有り
【0060】
4 銅箔ピール強度
18μm銅箔ピール強度は、JIS C 6481に準じて行った。
【0061】
5 半田耐熱性
半田耐熱性は、片面のみをエッチングし、50mm×50mmのサイズに切断後、121℃、2.0気圧のプレッシャークッカー条件で1時間および煮沸2時間の吸湿処理を行った。続いて、260℃半田槽に30秒浸漬した後、フクレ、ミズリングの評価を目視および光学顕微鏡により確認を行った。
【0062】
6 生産性
比較例1(バッチプレスで得られた積層板)の1時間あたりの生産量1.0として、実施例1〜10の方法で得られた積層板の生産量を比較した。
【0063】
【表1】
【0064】
本発明における積層板特性評価結果、表1から明らかなように、実施例1〜実施例10は、板厚精度、成形性、生産性において優れていた。
また、特に実施例1〜4、6および10は、外観にも優れていた。
【0065】
【発明の効果】
本発明の方法では、高品質で生産性の高い積層板の製造方法を提供できる。
また、ロールの表面層を弾性材料で構成しているため、プリプレグと金属箔等との接合をより強固に均一に行うことができる。
更に、テンションを掛けながら連続的に硬化させることにより、金属箔外観に優れた積層板を得ることができる。
また、粘着性樹脂を有する金属箔を用いる場合、樹脂バンクの発生を防止することができ、積層板を安定的に製造できる。
また、プリプレグの第1層と第2層を構成する熱硬化性樹脂の反応率を所定の値にした場合、特に板厚精度及び成形性に優れた積層板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における積層板の製造工程を示す概略図である。
【図2】本発明におけるプリプレグの一例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明において用いられるロールの一例を示す側面図である。
【符号の説明】
1 プリプレグ供給部
2 プリプレグ
3 金属箔供給部
4 金属箔
5 ロール
6 巻き取り部
7 予備加熱部
8 後加熱部
9 ベ−キングロ−ル
10 硬化炉
11 ピンチロ−ル
20 シート状基材
21 第1層
22a 第2層
22b 第2層
51 ロール基材
52 ロール軸
53 表面層
Claims (4)
- シート状繊維基材に樹脂組成物を付着させたプリプレグを移送して、積層板を連続的に製造する方法であって、
前記プリプレグの1枚または複数枚を予備加熱する工程と、
前記加熱後に粘着性樹脂層を有する金属箔またはキャリアフィルムを貼り合わせる工程と、
前記プリプレグと前記金属箔またはキャリアフィルムとを表面が弾性材料で構成されたロールで接合する工程と、
前記工程で得られた積層板を後加熱する工程と、
前記加熱後に積層板を、100〜200℃に加熱したロールに通す工程と、
前記ロ−ルを通す工程後に積層板を、テンションを掛けながら更に、内部に複数本のロ−ルを有する熱風循環式の硬化炉を用い連続的に加熱して硬化を促進させる工程を有することを特徴とする積層板の製造方法。 - 前記硬化炉の前後で10kgf以上のテンションを掛けながら硬化炉内を連続的に加熱して硬化促進させるものである請求項1に記載の積層板の製造方法。
- 前記プリプレグの移送方向は、鉛直方向である請求項1または2に記載の積層板の製造方法。
- 前記プリプレグは、複数の熱硬化性樹脂層を有するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の積層板の製造方法。
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