JP4147736B2 - 光学異方体および液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は樹脂フィルム上に液晶化合物を塗設することにより形成した光学異方層を備えた、従来にない視野角特性の改善できる光学異方体、およびそれらを備えた液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピューターのマルチメディア化が進み、ラップトップ型パーソナルコンピューターに於いても、カラー表示が一般的になってきた。ラップトップ型コンピューターでは、STN液晶ディスプレイやTFT液晶ディスプレイが主に使用されている。近年、液晶ディスプレイは大型化が進み、視野角特性の高度な改善が求められている。それゆえ、従来より高度な補償性能を有する光学異方体が要望されている。
【0003】
STN液晶ディスプレイは、複屈折モードを利用した表示素子であるため、液晶で生じる位相差により着色し、白黒表示やカラー表示が不可能であるという大きな問題があった。このような問題を解決するために、D−STN方式(補償用液晶セルを用いる方式)が試みられたが、この方式では、液晶ディスプレイの特徴である「薄くて、軽い」という点で、時代の要求と逆行しており、補償用液晶セルの製造にも、高い精度が要求され、歩留りが悪いという問題があった。
【0004】
これらの問題を解決する方法として、各種の提案がなされ、例えば、特開昭63−149624号公報には、延伸樹脂フィルムを用いるF−STN方式が提案され、又、特開平3−87720号公報、特開平4−333019号公報には、D−STN方式の補償性能を維持して、その質量と肉厚を軽減する目的で、液晶性高分子をねじれ配向させたフィルムを使って色補償を行う方法が提案されている。この液晶ディスプレイの位相差補償板は、透光性基板とこの基板の上に形成された配向膜、及び、この配向膜の上にねじれ配向状態に固定した液晶高分子層とから構成されている。
【0005】
さらに、最近では、TFT−TN液晶ディスプレイの視野角補償として、特開平7−191217号公報に開示されているように、ディスコチック液晶のフィルムを液晶セルの上面と下面に配置して、液晶セルの視野角特性を改善する試みがなされている。該TN型液晶ディスプレイ用補償フィルムは、上述の特開平3−87720号公報、特開平4−333019号公報に記載されている液晶ディスプレイの位相差補償板と同様に、光学的にほぼ等方性の樹脂フィルム上に液晶化合物が配向した光学異方層で構成されている。
【0006】
しかしながら、未だ視野角特性の改善は十分ではなく、新しい光学異方体の開発が求められている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は上述のような問題点を解決するものであって、新規な樹脂フィルムを延伸することにより作製した光学フィルムからなる透明支持体上に、液晶化合物を塗設することにより形成した光学異方層を備えた光学フィルムにより、該光学フィルム及び該光学異方層の光学特性が調和した光学異方体を用いることで、従来にない視野角特性の改善ができる光学異方体の提供、およびそれらを備えた液晶表示装置の提供にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下(1)〜(11)の手段により達成される。なお、1〜26は参考手段である。
(1) 透明支持体の上に光配向層、および光配向層に隣接しかつ液晶化合物の配向が固定化された光学異方層を有する光学異方体において、該支持体の光学特性が41nm≦Ro≦95nm、0.8≦(Rt/Ro)≦1.4、かつnx>ny>nzを満たすことを特徴とする光学異方体。
ここで、RoおよびRtは透明支持体のリターデーション値を示す。
Ro=(nx−ny)×d
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
(nxは透明支持体の面内での最大屈折率方向であるx方向の屈折率、nyはx方向に垂直な該支持体面内の方向であるy方向の屈折率、nzは厚み方向での該支持体の屈折率であり、dは該支持体の厚み(nm)である。)
(2) 透明支持体がセルロースエステル樹脂であることを特徴とする(1)記載の光学異方体。
(3) 前記光学異方層が、前記透明支持体面に対する光学異方層の平均傾斜角度が15°以上50°以下であることを特徴とする(1)又は(2)記載の光学異方体。
(4) 光学異方層を構成する液晶化合物の傾斜角度が厚さ方向に対して変化し、該傾斜角度が配向層側から増加または減少することを特徴とする(3)記載の光学異方体。
(5) 前記光学異方層の最大屈折率方向を透明支持体面に投影した方向が、前記透明支持体のny方向と実質的に等しいことを特徴とする(1)〜(4)の何れか1項記載の光学異方体。
(6) 透明支持体と前記配向層との間に溶出ブロック層を少なくとも1層有することを特徴とする(1)〜(5)の何れか1項記載の光学異方体。
(7) 前記溶出ブロック層が活性線硬化樹脂で構成され、該硬化樹脂を該活性線の照射により硬化させた溶出ブロック層であることを特徴とする(6)記載の光学異方体。
(8) 前記光配向層に偏光紫外線を照射することを特徴とする(1)〜(7)の何れか1項記載の光学異方体。
(9) 前記光配向層を構成する材料が偏光紫外線照射により光二量化反応することを特徴とする(8)記載の光学異方体。
(10) (1)〜(9)の何れか1項記載の光学異方体を備えたことを特徴とする液晶表示装置。
(11) (10)記載の液晶表示装置が電極を備えた一対の透明基板とネマティック液晶で構成される駆動用液晶セルで構成され、該基板の上下に配置された上側偏光子と下側偏光子を備えたツイステッドネマティック型液晶表示装置であって、該基板と上側もしくは下側偏光子のどちらか一方の間、または該基板と上側および下側偏光子のそれぞれの間に(1)〜(9)の何れか1項記載の光学異方体を少なくとも1枚備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【0009】
1.透明支持体の上に光配向層、および光配向層に隣接しかつ液晶化合物の配向が固定化された光学異方層を有する光学異方体において、該支持体の光学特性が41nm≦Ro≦95nm、0.8≦(Rt/Ro)≦1.4、かつnx>ny>nzを満たすことを特徴とする光学異方体。
ここで、RoおよびRtは透明支持体のリターデーション値を示す。
【0010】
Ro=(nx−ny)×d
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
nxは透明支持体の面内での最大屈折率方向であるx方向の屈折率、nyはx方向に垂直な該支持体面内の方向であるy方向の屈折率、nzは厚み方向での該支持体の屈折率であり、dは該支持体の厚み(nm)である。
【0011】
2.透明支持体が溶媒を含む樹脂溶液をベルトまたはドラム上で流延製膜し、溶媒が残存した状態でベルトまたはドラムから剥離され、その後乾燥しながらフィルムを延伸する製造方法によって作製され、かつ該透明支持体の流延方向の屈折率がnxに実質的に等しい屈折率であり、流延方向に垂直な該支持体面内の方向の屈折率が実質的にnyに等しい屈折率であることを特徴とする前記1記載の光学異方体。
【0012】
3.透明支持体がセルロースエステル樹脂である前記1又は2記載の光学異方体。
【0013】
4.前記セルロースエステル樹脂のアセチル基の置換度が2.50以上2.86以下であることを特徴とする前記3記載の光学異方体。
【0014】
5.前記セルロースエステル樹脂のアセチル基の置換度が2.40以上3.00以下のセルロースエステルを少なくとも2種以上混合し、混合後の平均アセチル基置換度が2.50以上2.86以下であることを特徴とする前記3記載の光学異方体。
【0015】
6.前記セルロースエステル樹脂のアセチル基の置換度が2.60以上3.00以下のセルロースエステルを少なくとも1種とアセチル基の置換度が2.40以上2.60未満のセルロースエステルを少なくとも1種とを混合し、混合後の平均アセチル基置換度が2.50以上2.86以下であることを特徴とする前記3記載の光学異方体。
【0016】
7.前記セルロースエステル樹脂のアセチル基置換度をA、プロピオニル基置換度をBとしたとき下記の条件式を満たすことを特徴とする前記3記載の光学異方体。
【0017】
(I) 2.0≦(A+B)≦3.0
(II) A<2.4
8.前記セルロースエステル樹脂のアセチル基置換度をA、プロピオニル基置換度をBとしたとき下記の条件式を満たすことを特徴とする前記3記載の光学異方体。
【0018】
(III) 2.4≦(A+B)≦2.8
(IV) 1.4≦A≦2.0
9.前記透明支持体を構成する樹脂に対して可塑剤が2以上15質量%以下および紫外線吸収剤が0.01以上3質量%以下であることを特徴とする前記1〜8の何れか1項記載の光学異方体。
【0019】
10.前記紫外線吸収剤がベンゾトリアゾール誘導体またはベンゾフェノン誘導体であることを特徴とする前記9記載の光学異方体。
【0020】
11.前記液晶化合物が正の複屈折性を示す高分子液晶化合物であり、かつ該液晶化合物のガラス転移温度以上の温度で処理し配向させた後、ガラス転移温度以下に降温して液晶化合物由来の配向を固定化したことを特徴とする前記1〜10の何れか1項記載の光学異方体。
【0021】
12.前記液晶化合物が正の複屈折性を示す重合性低分子液晶化合物であり、かつ液晶転移温度以上の温度で処理することにより配向処理を行った後、活性線の照射による硬化反応により液晶化合物由来の配向を固定化したことを特徴とする前記1〜10の何れか1項記載の光学異方体。
【0022】
13.前記活性線が紫外線であり、かつ紫外線開始剤を併用して硬化反応を行うことを特徴とする前記12記載の光学異方体。
【0023】
14.前記液晶化合物を有機溶媒に溶解した溶液を調製し、これを塗布乾燥することで層を設置することを特徴とする前記1〜13のいずれか1項記載の光学異方体。
【0024】
15.前記光学異方層が、前記透明支持体面に対する光学異方層の平均傾斜角度が15°以上50°以下であることを特徴とする前記1〜14の何れか1項記載の光学異方体。
【0025】
16.光学異方層を構成する液晶化合物の傾斜角度が厚さ方向に対して変化し、該傾斜角度が配向層側から増加または減少することを特徴とする前記15記載の光学異方体。
【0026】
17.前記光学異方層の最大屈折率方向を透明支持体面に投影した方向が、前記透明支持体のny方向と実質的に等しいことを特徴とする前記1〜16の何れか1項記載の光学異方体。
【0027】
18.透明支持体と前記配向層との間に溶出ブロック層を少なくとも1層有することを特徴とする前記1〜17の何れか1項記載の光学異方体。
【0028】
19.透明支持体の溶出ブロック層塗設面がプラズマ処理されるかあるいは有機酸基含有ポリマーが塗設され、その上に30質量%以上の水と少なくとも1種の有機溶媒で構成される混合溶媒に溶解するノニオン性ポリマーで構成される前記溶出ブロック層が塗設されたことを特徴とする前記18記載の光学異方体。
【0029】
20.前記溶出ブロック層が活性線硬化樹脂で構成され、該硬化樹脂を該活性線の照射により硬化させた溶出ブロック層であることを特徴とする前記18記載の光学異方体。
【0030】
21.前記光配向層に偏光紫外線を照射することを特徴とする前記1〜20の何れか1項記載の光学異方体。
【0031】
22.前記光配向層を構成する材料が偏光紫外線照射により光二量化反応することを特徴とする前記21記載の光学異方体。
【0032】
23.長尺状であって、該光学異方体の透明支持体が溶液流延され乾燥しながら延伸される工程において巻き取られながら製造されること、該透明支持体に塗設される層が搬送されながら塗布液を塗布、乾燥し製造されることおよび光配向層が塗布乾燥後に搬送されながら紫外線照射して製造されることを特徴とする前記1〜22の何れか1項記載の光学異方体。
【0033】
24.前記1〜23の何れか1項記載の光学異方体を備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【0034】
25.前記24記載の液晶表示装置が電極を備えた一対の透明基板とネマティック液晶で構成される駆動用液晶セルで構成され、該基板の上下に配置された上側偏光子と下側偏光子を備えたツイステッドネマティック型液晶表示装置であって、該基板と上側もしくは下側偏光子のどちらか一方の間、または該基板と上側および下側偏光子のそれぞれの間に前記1〜23の何れか1項記載の光学異方体を少なくとも1枚備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【0035】
26.前記液晶セルに最も近い基板に前記光学異方体の透明支持体面が接触する方向に液晶セルの上側および下側に各々1枚ずつ光学異方体を配置し、かつ光学異方体の透明支持体の最大屈折率方向が前記液晶セルに最も近い基板のラビング方向と実質的に直交した方向に配置することを特徴とする前記25記載の液晶表示装置。
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいう光学異方層とは、液晶化合物を含む層であり、該液晶化合物が光配向層に隣接することで配向された状態で温度差または化学反応で固定化されたものである。
【0037】
前記光学異方層と透明支持体を含み、あるいは前記光学異方層と透明支持体の間に光配向層および少なくとも1つの溶出ブロック層を含むことによって形成されたものを本発明の光学異方体とする。
【0038】
液晶化合物を塗設して光学異方性を得る場合、光配向膜を透明支持体上に設置して偏光紫外線照射により配向方向を決定しておき、その上に液晶化合物を塗布して配向させることができる。
【0039】
本発明の光配向層の作製に用いられる光配向材料としては、一般に公知の光配向材料を用いることができる。例えば、光分解型、光二量化型、光異性化型等が挙げられ、長谷川、液晶 Vol.3(1),3−16(1999)の総説を参考にすることができる。本発明では特に偏光紫外線照射によって配向性が付与される光二量化型配向材料を用いることが生産性の観点から好ましい。
【0040】
上記記載の光二量化型配向材料としては、例えば、特開平8−304828号、同7−138308号、同6−095066号、同5−232473号、同8−015681号、同9−222605号、同6−287453号、同6−289374号、特表平10−506420号、特開平10−324690号、同10−310613号等に記載されている。
【0041】
これらの手法で光配向層に偏光紫外線を照射することにより、液晶に配向性を付与することができる。光照射装置としての光源は超高圧水銀灯、キセノン灯、蛍光灯、レーザなどを用いることができる。これに偏光子を組み合わせて直線偏光を照射することができる。照射装置としては、例えば、特開平10−90684号に開示されている装置を用いることができる。
【0042】
また、本発明に係る光配向層は、光配向性材料を含有する塗布溶液を用いて透明支持体上に塗布、乾燥し塗膜を形成しても良く、特に生産性の観点から、光配向層を搬送しながら塗設する長尺状フィルム、および搬送しながら配向方向を決めるために前記偏光紫外線を照射した長尺状フィルムであることが好ましい。一般に行われているラビング処理した配向膜は、ラビングによって生産時に粉塵発生の除去やラビング布の劣化によるラビング状態の安定管理が必要となり安定生産に十分な注意を払うことになる。しかしながら光配向技術ではこのような問題は発生しない。また、長尺の光学異方体を生産する場合、本発明の光学異方体を構成する透明支持体の面内における最大屈折率(nx)方向が長尺状フィルムの搬送方向と一致する場合、本発明の光学異方体では光学異方層の液晶化合物の配向方向を、該透明支持体の最大屈折率(nx)方向とフィルム面内で実質的に直交させる(すなわちnyの方向と一致させる)ことが有効である。実質的に直交させるとは90°±2°の範囲であり好ましくは90°である(nyの方向と一致させるとは±2°の範囲でnyの方向と光学異方層の液晶化合物の配向方向のズレがおさまることであり、やはり好ましくは一致することである。)。このとき一般的な配向層を設置して、長尺状フィルムの搬送方向に対して直交した方向でラビング処理することは実質的に困難である。しかしながら、光配向技術は、該搬送方向に直交した方向に液晶化合物を配向させる場合においても、照射する偏光方向を調節するのみでよく生産上適した方法である。
【0043】
光配向技術の中で光二量化型は、光分解型と比較して紫外線エネルギーが比較的低くても液晶に配向性を付与することができる。特に紫外線の直線偏光を照射して光二量化反応を実施した場合、偏光方向に選択して光二量化反応が進行し、これが液晶の配向に寄与する。
【0044】
光二量化型のポリビニルシンナメート誘導体は、該光配向層上に設置する液晶化合物が偏光紫外線の偏光方向と直角に配向するため、液晶化合物にプレチルトを与える場合、1回目の照射した偏光方向と異なった偏光方向および異なった角度の露光が2回以上必要である。一方、高分子中にクマリン分子単位或いはカルコン単位を有する化合物に代表されるように、光配向層に照射する偏光紫外線の偏光方向と平行に該光配向層上に設置した液晶化合物が配向する系は、液晶化合物にプレチルトを与える場合、偏光紫外線は1回の決められた方向の露光のみでよく、生産効率の観点から好ましい。
【0045】
特開平10−90684号に開示されているような偏光分離機能として、石英板のブリュースター角を利用した装置を使用した場合、消光比を著しく高くした場合、例えば消光比50:1以上とした場合には、石英板の枚数が多くなりすぎ装置が大きくなってしまうことがあり必要以上の消光比は特に必要とされない。偏光紫外線の消光比は2:1以上あれば、液晶化合物の配向方向が決定できるが、好ましくは消光比は5:1以上、より好ましくは9:1以上かつ21:1以下である。ここで消光比とは、(必要な偏光):(不要な方向の光)のエネルギー比である。
【0046】
次に本発明に用いる液晶化合物について説明する。
本発明における液晶化合物は、配向層上で液晶化合物が配向できるものであれば特に限定されるものではなく、該配向によって可視光領域で光散乱することなく光学的に異方性を付与することが求められる。
【0047】
本発明における液晶化合物が高分子液晶である場合、例えば日本特許登録2592694号、同2687035号、同2711585号、同2660601、特開平10−186356号、同10−206637号、同10−333134号記載の構造の化合物を用いることができ、特に光学的に正の複屈折性を有するものが好ましい。
【0048】
本発明における高分子液晶以外の液晶化合物としては、一般に棒状の液晶化合物が挙げられ、光学的に正の複屈折性を示す液晶化合物が好ましい。より好ましくは不飽和エチレン性基を有する正の複屈折性の液晶化合物が配向の固定化の観点から好ましく、例えば特開平9−281480号、同9−281481号記載の構造の化合物を用いることができるが特に限定されるものではない。
【0049】
本発明における液晶化合物の構造は特に限定されるものではないが、光学異方性を発現させるために液晶分子を配向させた状態で化学反応させるまたは温度差によって配向を固定化する等、液晶化合物の配向が固定化された状態で用いることが求められる。前述のような配向膜を透明樹脂基板上に設置しその上に液晶化合物を塗設して配向させることができる。液晶化合物の配向処理は、液晶転移温度以上に加熱することが求められ、該温度は透明樹脂基板を変質させない温度以下で処理することが好ましい。
【0050】
また、液晶化合物を溶媒で希釈して塗設する場合には、液晶転移温度以上に加熱しなくても該温度以下で液晶化合物の配向処理をすることもできる。
【0051】
本発明に用いる液晶化合物が液晶性高分子である場合、その化合構造としては主鎖型の液晶性高分子、例えばポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルイミド等が挙げられる。又、側鎖型の液晶性高分子、例えばポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリマロネート等を用いてもよい。
【0052】
液晶化合物、配向材料、有機酸基含有ポリマー、溶出ブロック層を構成する材料を塗布する方法としては、有機溶媒により液晶化合物または配向膜材料等を溶解した溶液を、カーテンコーティング、押し出しコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、印刷コーティング、スプレーコーティング、ワイヤーバーコーティング及びスライドコーティングなどで実施することができるがこれらに限定される訳ではない。
【0053】
液晶化合物を含む溶液を塗布した場合、塗布後、溶媒を乾燥して除去し、膜厚が均一な液晶層を得ることができる。液晶層は、熱または光エネルギーの作用、または熱と光エネルギーの併用で化学反応によって、液晶の配向を固定化することができる。特に高分子液晶化合物ではないモノメリックな液晶化合物は一般に粘度が低く、熱的な外因によって液晶の配向が変化しやすいため、光重合性開始剤を用いて、重合性液晶化合物を光ラジカル反応等で硬化反応を実施して固定化することができる。
【0054】
本発明において、液晶化合物の配向を固定化するため、重合性基としてエチレン性不飽和基を用いた場合、光重合開始剤を使用することにより反応の活性を上げることができ製造時の硬化時間を短縮できることで優れている。ラジカルの発生のためには、電子線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)を必要に応じて用いることができるが、一般的には、紫外線が好ましい。紫外線の光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)及びショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)を挙げることができる。例えば、高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどの近紫外線を発生するものが好ましく、光重合開始剤としても近紫外線を強く吸収できるものが好ましく、360nm〜450nmの光に対するモル吸光係数の最大値が100以上、更には500以上のものが好ましい。
【0055】
一方、エチレン性不飽和基の重合反応のためのラジカル重合開始剤は、例えばアゾビス化合物、パーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、レドックス触媒など、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、tert−ブチルパーオクトエート、ベンゾイルパーオキサイド、イソプロピルパーカーボネート、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーキサイド、ジクミルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド或いはベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンゾイン類、チオキサントン類等を挙げることができる。これらの詳細については「紫外線硬化システム」総合技術センター、63頁〜147頁、1989年等に記載されている。
【0056】
又、エポキシ基を有する化合物の重合には、紫外線活性化カチオン触媒として、アリルジアゾニウム塩(ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボラート)、ジアリルヨードニウム塩、VIa族アリロニウム塩(PF6、AsF6、SbF6のようなアニオンをもつアリルスルホニウム塩)が一般的に用いられる。
【0057】
また、ラジカル反応を用いて硬化反応を行う場合、空気中の酸素の存在による重合反応の遅れをさけるために窒素雰囲気下で上記活性線を照射することが、反応時間の短縮化と少ない光量で硬化できる点で好ましい。
【0058】
これらの反応を利用して、液晶化合物を硬化させるためには、液晶化合物においても反応性基を導入した高分子液晶化合物ではないモノメリックな液晶化合物を選択するすることが重要である。この硬化反応により液晶の配向が固定化できるものである。
【0059】
一方、液晶化合物が高分子液晶である場合、上記化学反応による硬化反応を実施して液晶の配向を固定しなくてもよい。これは、透明樹脂基板が熱によって変質しない温度範囲、例えば90℃以上に、高分子液晶化合物のガラス転移温度があって、かつ液晶転移温度がある場合、配向膜上に高分子液晶を塗布して設置した後、液晶転移温度範囲内に加熱し配向させた後、ガラス転移温度よりも低い、例えば室温で放冷することによって液晶の配向が維持される。
【0060】
また、高分子液晶のガラス転移温度が支持体の耐熱温度よりも高い場合は、耐熱性支持体上に前記配向膜を設置し高分子液晶を塗設後、高分子液晶のガラス転移温度以上に加熱し配向させることができる。これを室温に放冷し高分子液晶の配向を固定化したのち本発明の支持体に接着剤を用いて転写して光学異方体を作製することができる。
【0061】
本発明の光学異方体の光学異方層は、液晶ディスプレイの視角特性を改良するため、光学異方層の厚さはそれを構成する液晶化合物の複屈折の大きさ、および液晶化合物の配向状態によって異なるが膜厚は0.2μm以上5μm以下、好ましくは0.4μm以上3μm以下である。これよりも光学異方層の厚さが薄いと目的とする光学異方性が得られにくくなり、一方前述の範囲よりも光学異方層が厚いと必要以上の光学異方性がかえって視野角特性を劣化させやすくしたり、別の課題としては光学異方体がカールしやすくなることが多い。
【0062】
本発明における光学異方層は、透明支持体に対して少なくとも1層設けることができる。液晶ディスプレイのモードが多種、製品化されておりこれを光学的に補償できる光学異方体として、ディスプレイに適した光学特性を設計することができる。1つの透明支持体に対して光学異方層を複数層設置することもでき、光学異方層の含まれる液晶化合物が配向した状態もしくは液晶化合物の配向が固定化された状態で構成されるとき配向方向は適宜ディスプレイに適合した光学特性に設計できる。光学異方層が2層以上透明支持体上に設置される場合、透明支持体より遠い方向の順に配向層、光学異方層を複数層繰り返して設置できる。これは前記配向方向が配向膜によって決定されるために、配向膜と液晶層は隣接していることが必要となるためである。これらが複数層設置されるとき、配向膜上に塗設された液晶層の上に配向膜を直接塗設または他の公知の樹脂層で構成される中間層を設置してその上に配向膜を塗設し、複数層目の配向層上に液晶層を設置することができる。
【0063】
本発明においては透明支持体に光学異方性があるため、該支持体上に塗設する液晶層は1層であることができ低コスト化、生産性の観点から好ましい。
【0064】
液晶表示装置に本発明の光学異方体を設置する場合、駆動用液晶セルの両側に位置する一対の基板の上下には、通常上側偏光子と下側偏光子が配置された構成とされるが、このとき該基板と上側もしくは下側偏光子のどちらか一方の間、または該基板と上側および下側偏光子のそれぞれの間に本発明の光学異方体が少なくとも1枚設置されるが、低コスト化の観点と本発明の目的を効果的に発現させるためには、該上側、該下側のそれぞれの間に本発明の光学異方体を1枚ずつ設置することが好ましい。
【0065】
液晶表示装置が特にツイステッドネマティック型(TN型)液晶表示装置である場合、TN型液晶セルに最も近い基板に前記光学異方体の透明支持体面が接触する方向に光学異方体を配置し、かつ光学異方体の透明支持体面内の最大屈折率方向が前記液晶セルに最も近い基板のネマティック液晶の配向方向と実質的に直交した方向に配置することが本発明の目的を効果的に発現できる。実質的に直交とは、90°±5°の範囲であるが、90°にすることが好ましい。
【0066】
本発明における光学異方層は、平均傾斜角度は、光学異方層の断面方向から観察した場合、斜めであることがよく、傾斜角度は光学異方層の厚さ方向に対して一定であってもよく、厚さ方向に対して配向角度が変化してもよい。平均傾斜角度はディスプレイの視野角を補償するため、ディスプレイの設計により異なるが15°以上50°以下であることが特にTN型液晶表示装置において好ましい。
【0067】
光学異方層を構成する液晶化合物の傾斜角度は、より好ましくは厚さ方向に対して変化し、該傾斜角度が配向膜側から増加または減少して変化することが本発明においてはより効果的である。
【0068】
本発明に係る溶出ブロック層について説明する。
本発明の透明支持体と光学異方層の配向のための配向層との接着性を向上させるために、溶出ブロック層が設けられることが好ましい。
【0069】
溶出ブロック層とは、配向材料や液晶化合物を塗設し、配向層および光学異方層を形成する際、有機溶媒溶液として塗布すると、有機溶媒の存在により透明支持体から配向層あるいは液晶化合物が存在する光学異方層へ、透明支持体を構成する化合物の何れかが溶出するのを抑制することを意味する。薄膜として配向層や液晶化合物の層を設置する場合、これらの化合物の有機溶媒溶液を調製して塗布することは好ましい手法である。しかしながら、特にセルロースエステルフィルム支持体等の透明支持体は、樹脂で構成され、可塑剤を含むことが多く、配向層としての樹脂や液晶化合物を溶解した塗布液を支持体に塗設する際に該塗布液中の有機溶媒によって樹脂あるいは可塑剤が拡散し、成分の層間の混溶がおこることが容易に推察できる。
【0070】
この間に前述の有機溶媒に不溶もしくは溶けにくい溶媒に溶解する樹脂を設置することにより、前述の塗設時の層間拡散、層間混溶を抑制することが可能となる。また、樹脂あるいは可塑剤を溶解する有機溶媒に溶解する化合物であっても、活性線硬化性の樹脂をモノマーの状態で透明基板上に塗設し硬化反応を行うことは、単に樹脂を塗設することと異なり架橋構造が多い層が設置でき、配向層としての樹脂や液晶化合物を溶解するとき、塗設によって層間の拡散、コンタミネーションを抑制することができる。これにより光学異方層を構成する液晶化合物の配向がより安定に作製できる。
【0071】
この溶出ブロック層は、透明支持体からの可塑剤、紫外線吸収剤などの添加剤の溶出を防止する目的の他に、当該支持体と光学異方層または配向層との密着性を向上させて剥離するのを防止する機能も求められる。当該目的のためには、透明樹脂基板において、水溶性ポリマー、例えば有機酸基含有ポリマーを含有する層を設けることは、透明支持体と溶出ブロック層との接着性向上の観点から、製造上メリットが大きく効果的である。
【0072】
有機酸基含有ポリマーは、ポリマー側鎖に有機酸基を有する構造が挙げられるが特に限定されない。有機酸基としては、例えば−COOH基が挙げられる。このような化合物例としては特に限定されることはないが、例えば特開平7−333436号記載の一般式[1]または一般式[2]で示される構造が挙げられる。−COOH基の水素は、アンモニウムカチオン、アルカリ金属カチオン(ナトリウムカチオン、リチウムカチオン等)で置換されていてもよい。有機酸基をもつポリマーを構成するモノマー単位としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。また、無水マレイン酸を共重合モノマーとして高分子量化したのち、酸無水物を形成している環を開環させて有機酸基を得てもよい。有機酸基含有ポリマーは透明支持体とその上に設置する層の接着性を付与することに有効である。
【0073】
本発明における溶出ブロック層の一形態として活性線硬化樹脂層の設置がある。
【0074】
活性線硬化性樹脂は、重合可能なビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソプロペニル基、エポキシ基等の重合性基を二つ以上有するもので、活性エネルギー線に照射により架橋構造または網目構造を形成するものが好ましい。これら活性基のうちアクリロイル基、メタクリロイル基またはエポキシ基が重合速度、反応性の面から好ましく多官能モノマーまたはオリゴマーが好ましい。例として紫外線硬化型のアクリウルレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂が好ましく用いられる。
【0075】
活性線は紫外線が光源や材料の入手のしやすさから好ましく、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、又は紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることが出来る。
【0076】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば特開昭59−151110号)。
【0077】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることが出来る(例えば、特開昭59−151112号)。
【0078】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させたものを挙げることが出来る(例えば、特開平1−105738号)。この光反応開始剤としては、ベンゾイン誘導体、オキシムケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等のうちから、1種もしくは2種以上を選択して使用することが出来る。
【0079】
また、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることが出来る。これらの樹脂は通常公知の光増感剤と共に使用される。また上記光反応開始剤も光増感剤としても使用出来る。具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることが出来る。また、エポキシアクリレート系樹脂の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることが出来る。塗布乾燥後に揮発する溶媒成分を除いた紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる光反応開始剤または光増感剤は該組成物の0.5〜5質量%であることが特に好ましい。
【0080】
紫外線硬化性樹脂組成物塗布液の塗布方法としては、グラビアコーター、スピナーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、リバースコーター、押出コーター、エアードクターコーター等公知の方法を用いることが出来る。紫外線を含む活性線硬化樹脂層の硬化後の膜厚は0.05μm以上30μm以下が適当で、好ましくは、0.1〜15μmである。この乾燥膜厚が薄すぎると溶出ブロック性が低下し、また乾燥膜厚が厚すぎると光学異方体がフィルム上であるときカールしてしまうことがある。
【0081】
溶出ブロック層の塗布溶媒について説明する。透明支持体を構成する樹脂あるいは可塑剤を溶解する有機溶媒よりも、むしろ、それらが溶解しにくいか、または、不溶な溶媒を溶出ブロック層の塗布溶媒として選択することが本発明の目的にとって好ましい。
【0082】
この場合の塗布溶媒は水を30質量%以上含む少なくとも1種以上の有機溶媒との混合溶媒であることがよく、好ましくは水を33質量%以上含む少なくとも1種以上の有機溶媒との混合溶媒であることがより効果的に本発明の目的が実現できる。本発明の溶出ブロック層を塗設するための溶媒は上記水とともに用いる有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、その他の溶媒を混合して使用することができる。
【0083】
好ましくは水に溶解できる有機溶媒を選択することが好ましいが、少量であれば水に溶けない有機溶媒を用いて、もう1種以上の水に溶解する有機溶媒と併用して混合溶媒が3成分以上で溶解した混合溶媒を用いてもよい。ここでアルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール等が挙げられ、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられ、エステル類としては、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、乳酸エチル、乳酸メチル等が挙げられ、グリコールエーテル(C1〜C4)類としては、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、又はプロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステル類としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、その他の溶媒としてメチレンクロライド、N−メチルピロリドンなどがあげられる。特にこれらに限定されるものではない。
【0084】
溶出ブロック層の樹脂としては、ノニオン性のポリマーが上記混合溶媒の溶解性と本発明の目的に対して好ましい。
【0085】
このような混合溶媒に対して溶ける樹脂を溶出ブロック層の樹脂として選択することができる。溶出ブロック層の樹脂の構造は特に限定されないが、例えば、天然ポリマーあるいは半合成的な水溶性ポリマーなどを用いることができる。
【0086】
また、合成ポリマーを用いることは天然物とは異なり分子設計上ノニオン性とすることが容易に可能である。このような化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾール等の単一あるいは、共重合体の如き多種の合成高分子を用いることができる。
【0087】
また、溶出ブロック層として用いる合成ポリマーとしては下記のモノマー単位を単独もしくは共重合体として上記混合溶媒に溶解する特性を有するものを用いてもよい。ポリマーを構成するモノマーの具体例としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、クロトン酸エステル、ビニルエステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、イタコン酸エステル、オレフィン類、スチレン類等が挙げられる。これらのモノマーについて更に具体的に示すと、アクリル酸エステル誘導体、これらのエステル置換化合物の置換基として以下のものが挙げられる。メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、アミル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、tert−オクチル基、ドデシル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、4−クロロブチル基、シアノエチル基、2−アセトキシエチル基、ジメチルアミノエチル基、ベンジル基、メトキシベンジル基、2−クロロシクロヘキシル基、シクロヘキシル基、フルフリル基、テトラヒドロフルフリル基、フェニル基、5−ヒドロキシペンチル基、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、グリシジル基、アセトアセトキシエチル基、3−メトキシブチル基、2−エトキシエチル基、2−iso−プロポキシ基、2−ブトキシエチル基、2−(2−メトキシエトキシ)エチル基、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル基、ω−メトキシオリゴオキシエチレン基(オキシエチレン繰り返し単位数:n=7、9、11等)、ω−ヒドロキシオリゴオキシエチレン基(オキシエチレン繰り返し単位数:n=7、9、11等)、1−ブロモ−2−メトキシエチル基、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチル基などがあり、これらの置換基によって構成されるアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0088】
また、アクリルアミド誘導体やメタクリルアミド誘導体としては、無置換のアクリルアミドおよびメタクリルアミドがあり、これらの置換アミドの置換基としては以下のものが挙げられる。メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、ドデシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、ヒドロキシメチル基、メトキシエチル基、ジメチルアミノプロピル基、フェニル基、アセトアセトキシプロピル基、シアノエチル基等のN−モノ置換誘導体が挙げられる。N,N−ジ置換誘導体としては、N,N−ジメチル基あるいはN,N−ジエチル基を有するアクリルアミド誘導体あるいはメタクリルアミド誘導体が挙げられる。
【0089】
ビニルエステル類の例としては、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプレート、ビニルクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルなどが挙げられる。
【0090】
またオレフィン類の例としては、ジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等が挙げられる。
【0091】
スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなどが挙げられる。
【0092】
クロトン酸エステルとしては、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシルなどが挙げられる。
【0093】
また、イタコン酸エステル類としては、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸モノブチルエステル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
【0094】
マレイン酸エステルとしては、例えばフマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチルなどが挙げられる。
【0095】
その他のモノマーの例としては、次のものが挙げられる。
ビニルケトン類、例えばメチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトンなどが挙げられる。
【0096】
ヘテロ環含有ビニルモノマーとしては、N−ビニルピリジンおよび2−および4−ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルトリアゾール、N−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0097】
不飽和ニトリル類としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0098】
上述のポリマーにおいて接着性の改良のために高分子側鎖に不飽和エチレン性基やエポキシ基等の化学反応性基を含んでもよい。
【0099】
上述のポリマーは水を30質量%以上、好ましくは45質量%以上を含む少なくとも1種以上の有機溶媒との混合溶媒に溶解できることが本発明において求められる。このような溶解性を示すポリマーで構成される溶出ブロック層の樹脂としては、高分子側鎖にヘテロ原子を含む環構造を含むコポリマーが好ましく、より好ましくはN−ビニル−2−ピロリドンを60質量%以上含むコポリマー、特に好ましくはN−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマーである。また、ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。
【0100】
溶出ブロック層の樹脂の分子量は高い方が配向層や液晶層への拡散がし難い観点から好ましく、数平均分子量が80万以上であることが好ましい。これらの樹脂の平均分子量測定はGPC法等公知の方法により測定できる。
【0101】
また、上記ポリマーを溶出ブロック層として用いた場合、溶出ブロック層は透明樹脂基板上に乾燥膜厚で0.1μm以上15μm以下であることが好ましい。この乾燥膜厚が薄すぎると溶出ブロック性が低下することがあり、また乾燥膜厚が厚すぎると光学異方体がフィルム状であるときにカールしてしまうことがある。
【0102】
透明樹脂基板上に有機酸基含有ポリマー層、溶出ブロック層(活性線硬化モノマーの硬化した層、水を含む上記混合溶媒に溶解する樹脂層)、配向層、光学異方層(液晶層)等を塗設するために塗布する方法は、ドクターコート、エクストルージョンコート、スライドコート、ロールコート、グラビアコート、ワイヤバーコート、リバースコート、カーテンコート、押し出しコートあるいは米国特許第2,681,294号に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート方法等により0.1〜10μmの乾燥膜厚となるように塗布することができる。目的に応じて乾燥膜厚を調整することができる。
【0103】
この溶出ブロック層は、透明支持体からの可塑剤、紫外線吸収剤などの添加剤の溶出を防止する目的の他に、当該支持体と光学異方層または配向層との密着性を向上させて剥離するのを防止する機能も求められる。当該目的のためには、透明樹脂基板において、前記の有機酸基含有ポリマー層を塗設するほか、プラズマ処理を行うことが効果的である。透明樹脂基板を搬送しながらプラズマ処理を行うことは、連続的に処理が可能であり好ましい。特に真空にすることなく大気圧下で、反応性のガス雰囲気下で該処理を行うことは更に好ましい。
【0104】
反応性のガスとしては特に限定されるものではないが、酸素、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、過酸化水素、オゾン等が挙げられる。本発明においてプラズマ処理とは、プラズマ放電を利用することであり、放電によりプラズマ状態を発生させることである。好ましくは、少なくとも2つの対向する電極に電圧を印加することによって行なう。
【0105】
本発明において処理系とは、前記反応性ガス存在下プラズマ放電を行なう処理空間のことであり、具体的には壁等で仕切りを設けて隔離した処理室のことである。前記処理室の気圧を真空に近い0.007hPa〜27hPaで行なう真空プラズマ放電処理の場合には、反応性ガスの導入を調整する必要がある。処理速度を増加させるためには、電極に印加する電圧を高くする必要があるが、電界強度を上げすぎると被処理体にダメージを与える場合があり、注意が必要である。
【0106】
また、別の様態として、前記処理室の気圧を大気圧もしくは大気圧近傍で行なう大気圧プラズマ処理の場合には、処理室に導入する気体として、前記反応性ガス以外に不活性ガスを導入することが、安定な放電を発生させる上で好ましい。大気圧もしくは大気圧近傍とは、133〜1064hPaの圧力下のことであり、好ましくは931〜1037hPaの範囲である。
【0107】
不活性ガスはプラズマ放電により反応を起こさせない気体のことであり、アルゴンガス、ヘリウムガス、キセノンガス、クリプトンガスがある。この中で好ましいガスはアルゴンガスとヘリウムガスである。大気圧プラズマ処理時に処理室に導入する不活性ガスは60圧力%以上と反応性ガスよりも割合を多くする放電を安定に発生させることができて好ましい。印加する電圧を高くすると処理速度を上げることができるが、電界強度を上げすぎると被処理体にダメージを与えることになるので注意が必要である。
【0108】
しかし、前記大気圧プラズマ処理であっても、パルス化された電界でプラズマを発生させる場合には、不活性ガスは必ずしも必要でなく、処理系における反応性ガスの濃度を上げることが可能となり、生産効率を上げることができる。
【0109】
この時のパルス波形は特に限定されず、特開平10−130851号公報の図1(a)〜(d)のパルス波形であってもよい。
【0110】
パルス電界の周波数は、1kHz〜100kHzの範囲が好ましい。1つのパルス電界が印加される時間は1μs〜1000μsであることが好ましい。
【0111】
電極に印加する電圧の大きさは、電界強度が1〜100kV/cmとなる範囲が好ましく、大きい処理速度は増加するが上げ過ぎると被処理体にダメージを与えるのは同様である。
【0112】
また、大気圧プラズマ処理に用いる少なくとも2つの対向する電極は、固体誘電体をその対向面側に設けることが好ましい。固体誘電体としては、焼結セラミックスを用いることが好ましく、その体積固有抵抗値は108Ω・cm以上が好ましい。
【0113】
本発明で用いる光学異方体の透明支持体とは、可視域の透過率が80%以上の特性を有するものであり、セルロースエステル誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォンなどが挙げられる。上記記載の中でも、目的の光学特性を得るための生産性の観点から好ましくは、セルロースエステル誘導体である。
【0114】
本発明における透明支持体の光学特性は、該支持体の光学特性が41nm≦Ro≦95nm、0.8≦(Rt/Ro)≦1.4、かつnx>ny>nzを満たすことが求められる。ここで、RoおよびRtは透明支持体のリターデーション値を示す。
【0115】
Ro=(nx−ny)×d
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
ここで、nx、nyは透明支持体の面内での最大屈折率方向であるx方向、およびこれと直交する方向であるy方向の屈折率である。nzは厚み方向でのフィルムの屈折率、dはフィルムの厚み(nm)である。
【0116】
ny=nzの場合、従来の一軸延伸位相差板となりこれに光学異方層を設置しても十分な視野角拡大効果は得られない。本発明の光学異方体の透明支持体は、nzがnx,nyよりも低い値であるので、この透明支持体と光学異方層を組み合わせることで、液晶表示装置の駆動用液晶セル特有の複屈折性を光学的に補償することができる。
【0117】
透明支持体の生産性の観点から好ましい製造方法は、透明支持体の溶媒を含む樹脂溶液をベルトまたはドラム上で流延製膜し、溶媒が残存した状態でベルトまたはドラムから剥離され、その後乾燥しながらフィルムを延伸する製造方法である。それゆえ、透明支持体の流延方向の屈折率がnxに実質的に等しい屈折率であり、流延方向に垂直な方向(幅方向)の屈折率がnyに実質的に等しい屈折率である場合、より効率的に透明支持体が生産できる。ここで実質的に等しいとは、±4°の範囲に、好ましくは±2°の範囲に支持体の流延方向とnxすなわち最大屈折率を示す方向との角度がおさまることであり、それぞれの方向が一致することが最も好ましい。
【0118】
支持体の全体の屈折率の測定は、通常の屈折率計を用いることができる。全体の屈折率を測定した後、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおいて、3次元屈折率測定を行い、屈折率nx、ny、nzを算出し、かつフィルムの厚さを測定してリターデーションRo、Rtを求めることができる。
【0119】
このような特性を満たす樹脂として、セルロースエステル誘導体が好ましく用いられる。特に0.5≦(Rt/Ro)≦2.0を効果的に満たすためには、セルロースエステルのアセチル基置換度が2.5以上2.86以下が好ましい。
【0120】
本発明の別の形態としては、セルロースエステルのアセチル基置換度が、2.40以上3.00以下のセルロースエステルを少なくとも2種以上用いる。この場合のアセチル基の置換度としては、混合後の平均アセチル基置換度が2.50以上2.86以下のセルロースエステルであることが本発明の目的に好ましい。
【0121】
本発明のさらに別の形態としては、光学異方体に用いるセルロースエステルのアセチル基置換度が、2.60以上、3.00以下のセルロースエステルを少なくとも1種とアセチル基置換度が2.40以上2.60未満のセルロースエステルを少なくとも1種を混合し、混合後の平均アセチル基置換度が2.5以上2.86以下のセルロースエステルを用いることが本発明の目的に好ましい。
【0122】
アセチル基置換度または平均アセチル基置換度が2.5以上2.86以下のセルロースエステルをフィルムとした支持体は、フィルム面の屈折率の平均に対する厚さ方向の屈折率との差が高い光学特性を与える。置換度をやや低く抑えたセルロースエステルフィルムを用いることで、これらのセルロースエステルフィルムを用いた時に、高いアセチル基置換度のセルローストリアセテートフィルムを用いたときよりも、同じ光学特性を得る場合に、薄膜化することができる。視野角特性に優れた光学異方体は、ディスプレイの種類により求められる光学補償能は異なるが適宜液晶層と支持体の光学特性を調整して設計することができる。本発明の支持体のアセチル基置換度または平均アセチル基置換度の好ましい範囲は、2.55〜2.70である。アセチル基の置換度が小さすぎると耐湿熱性に劣る場合がある。これらのセルロースエステルは、例えば、特開平10−45804号公報に記載の方法で合成することが出来る。アセチル基の置換度の測定方法もASTM−D817−96により測定することが出来る。
【0123】
前記アセチル基の置換度が2.50以上2.86以下のセルロースエステル、アセチル基の置換度が2.60以上3.00以下のセルロースエステル、アセチル基の置換度が2.40以上2.60未満のセルロースエステルとは、アセチル基でセルロースの水酸基を常法により所定の置換度に置換したものである。本発明のこれらのセルロースエステルの数平均分子量は、好ましい機械的強度を得るためには、70000〜300000が好ましく、更に80000〜200000が好ましい。
【0124】
セルロースエステル樹脂としては、上記アセチル基置換度を制御したセルロースエステル樹脂を用いることが好ましいが、一方アセチル基およびプロピオニル基を有するセルロースエステル樹脂を用いることが極めて効果的である。
【0125】
本発明に係るセルロースエステルフィルム作製に用いられるセルロースエステルの一例として、アセチル基とプロピオニル基を置換基として有しており、下記式(I)及び(II)を同時に満足するものが好ましい。
【0126】
(I) 2.0≦A+B≦3.0
(II) A<2.4
ここで、Aはアセチル基の置換度、Bはプロピオニル基の置換度を表す。
【0127】
更に、本発明においては、下記式(III)及び(IV)を同時に満たすセルロースエステルフィルムがより好ましく用いられる。
【0128】
(III) 2.4≦A+B≦2.8
(IV) 1.4≦A≦2.0
これらのアシル基は、グルコース単位の2位、3位、6位に平均的に置換していても良いし、例えば6位に高い比率で置換するなどの分布をもった置換がなされていても良い。
【0129】
ここで、置換度とはセルロース分子中の全ての水酸基の数(3nヶ)が幾つ置換されたか、それをグルコピラノーズ単位で表すものであり、理論的には0〜3.0の値となる。ASTM−D817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従い算出される数値である。アシル基の置換度の測定法はASTM−D817−96に従って測定できる。
【0130】
特に、Aのアセチル基の平均置換度が2.0未満であると延伸時の位相差のばらつきが少ないため特に好ましい。
【0131】
また、機械的強度に優れた透明支持体を得る観点から、本発明に用いられるアセチル基とプロピオニル基の両者を含むセルロースエステル樹脂の数平均分子量は70000〜300000、好ましくは80000〜200000である。
【0132】
本発明に用いられる、セルロースの混合脂肪酸エステルは、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。アシル化剤が酸無水物である場合は、反応溶媒として有機酸(例、酢酸)や塩化メチレンが使用される。触媒としては、硫酸のような酸性触媒が用いられる。アシル化剤が酸塩化物である場合は、触媒として塩基性化合物が用いられる。工業的に最も一般的な合成方法では、セルロースをアセチル基およびプロピオニル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸)およびそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。アセチル化剤とプロピオニル化剤の使用量は、合成するエステルが前述した置換度の範囲となるように調整する。反応溶媒の使用量は、セルロース100質量部に対して、100〜1000質量部であることが好ましく、200〜600質量部であることがさらに好ましい。酸性触媒の試料量は、セルロース100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、更に好ましくは、0.4〜10質量部である。
【0133】
反応温度は、10〜120℃であることが好ましく、20〜80℃であることがさらに好ましい。また、アシル化反応が終了してから、必要に応じて加水分解(ケン化)して、置換度を調整してもよい。反応終了後、反応混合物を沈澱のような慣用の手段を用いて分離し、洗浄、乾燥することによりセルロースの混合脂肪酸エステル(セルロースアセテートプロピオネート)が得られる。
【0134】
本発明に用いられるセルロースエステルは綿花リンターから合成されたセルローストリアセテートと木材パルプから合成されたセルローストリアセテートのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。ベルトやドラムからの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルロースエステルを多く使用した方が生産効率が高く好ましい。綿花リンターから合成されたセルロースエステルの比率が60質量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため60質量%以上が好ましく、より好ましくは85質量%以上、更には単独で使用することが最も好ましい。
【0135】
本発明においてセルロースエステルは綿花リンターから合成されたセルロースエステルと木材パルプから合成されたセルロースエステルのどちらかを単独あるいは混合して用いることができる。ベルトやドラムからの剥離性が良い綿花リンターから合成されたセルロースエステルを多く使用した方が生産性効率が高く好ましい。綿花リンターから合成されたセルロースエステルの比率が60質量%以上で、剥離性の効果が顕著になるため60質量%以上が好ましく、より好ましくは85質量%以上、更には、単独で使用することが最も好ましい。
【0136】
本発明の光学異方体に用いる透明支持体の厚さは、液晶ディスプレイの視角特性を改良するための光学特性を保有すれば良く、延伸倍率と透明の支持体の厚さにより制御することができる。該透明支持体の厚さは、好ましくは35μm以上250μm以下であるが、より好ましくは60μm以上140μm以下である。この範囲よりも該透明支持体が薄いと目的の光学特性が得難くくなり、一方該範囲よりも厚いと必要以上の光学特性となり、かえって液晶ディスプレイ視角特性を劣化する場合が多くなる。
【0137】
本発明において、前記光学異方体を偏光板用保護フィルムとして用いる場合、または光学異方体を保護フィルム付偏光子に張り付けて用いる場合、光学異方体は液晶セルと偏光子との間に設置することができる。
【0138】
偏光子は、従来から公知のものを用いることが出来る。例えば、ポリビニルアルコールの如きの親水性ポリマーからなるフィルムを、沃素の如き二色性染料で処理して延伸したもの等を用いることが出来る。
【0139】
次に本発明の透明支持体がセルロースエステルの場合、そのフィルムの製造方法について述べる。
【0140】
先ず、セルロースエステルを有機溶媒に溶解してドープを形成する。ドープ中のセルロースエステルの濃度は10〜35質量%程度である。
【0141】
有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等の非塩素系の有機溶媒が使用できる。また、塩化メチレンも使用できる。メタノール、エタノール、ブタノールなどの低級アルコールを併用するとセルロースエステルの有機溶媒への溶解性が向上したりドープ粘度を低減できるので好ましい。特に沸点が低く、毒性の少ないエタノールが好ましい。
【0142】
ドープ中には、前記可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤などの添加剤を加えてもよい。そして、得られたドープを回転するベルトやドラムの支持体上に流廷し、剥離可能になるまで乾燥し、そしてフィルムを剥離する。剥離したフィルムは生乾きの状態で延伸され、更に乾燥しフィルム中の有機溶媒をほぼ完全に蒸発させることができるが、乾燥後延伸してもよい。フィルム中の有機溶媒の含有量としては、良好なフィルムの寸法安定性を得るために2質量%以下、更に0.4質量%以下が好ましい。
【0143】
また、本発明の支持体の製造、特に塗設においてすべり性を改善するために、これら透明樹脂フィルムを製造する際のドープ中に、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さくできるので好ましい。微粒子は、2次粒子の平均粒径が0.01〜1.0μm、含有量が、セルロースエステルに対して0.005〜0.3質量%が好ましい。
【0144】
二酸化ケイ素のような微粒子は有機物によって表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどがあげられる。微粒子の平均粒径は、後述のアンチカール処理に用いる微粒子と同じものが用いられる。
【0145】
本発明の光学異方体は、支持体に光学異方層等の塗設物を有することからカールしてしまうことが多い。従ってカールを防止することにより、カールによる不都合を解消し、光学異方体としての機能を損なわないようにするため、光学異方層を塗設した反対側の面にアンチカール層を設けることが出来る。すなわち、アンチカール層を設けた面を内側にして丸まろうとする性質をもたせることにより、カールの度合いをバランスさせるものである。なお、アンチカール層は好ましくはブロッキング層を兼ねて塗設され、その場合、塗布組成物にはブロッキング防止機能を持たせるための無機微粒子及び/又は有機微粒子を含有させることができる。例えば、無機微粒子としては酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム等を挙げることができ、また有機微粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、あるいはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等を挙げることができ、アンチカール層塗布組成物に加えることが出来る。二酸化ケイ素のような微粒子は有機物によって表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどがあげられる。
【0146】
二酸化ケイ素の微粒子としては日本アエロジル(株)製のAEROSIL200、200V、300、R972、R974、R202、R812、OX50、TT600などが挙げられ、好ましくはAEROSIL R972、R972V、R974、R974V、R202、R812などが挙げられる。
【0147】
これらの粒子は、体積平均粒径0.005〜0.1μmの粒子を樹脂組成物100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましく添加される。これの微粒子の配合はフィルムのヘイズが0.6%以下、光学異方体の表裏面の間の動摩擦係数が0.5以下となるように配合することが好ましい。
【0148】
前記微粒子はとジアセチルセルロースのような樹脂を含む層を設置することができる。このような層はイソシアネート誘導体のような架橋剤を用いて強度を向上させることもできる。
【0149】
アンチカール機能の付与は、樹脂フィルム基材を溶解させる溶媒又は膨潤させる溶媒を含む組成物を塗布することによって行われる。用いる溶媒としては、溶解させる溶媒又は膨潤させる溶媒の混合物の他、さらに溶解させない溶媒を含む場合もあり、これらを樹脂フィルムのカール度合や樹脂の種類によって適宜の割合で混合した組成物及び塗布量を用いて行う。カール防止機能を強めたい場合は、用いる溶媒組成を溶解させる溶媒又は膨潤させる溶媒の混合比率を大きくし、溶解させない溶媒の比率を小さくするのが効果的である。この混合比率は好ましくは(溶解させる溶媒又は膨潤させる溶媒):(溶解させない溶媒)=10:0〜1:9で用いられる。このような混合組成物に含まれる、樹脂フィルム基材を溶解又は膨潤させる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、トリクロロエチレン、メチレンクロライド、エチレンクロライド、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルムなどがある。溶解させない溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブタノールなどがある。
【0150】
これらの塗布組成物をグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、押し出しコーター等を用いて樹脂フィルムの表面にウェット膜厚1〜100μm塗布するのが好ましいが、特に5〜30μmであると良い。ここで用いられる樹脂としては、例えば塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体あるいは共重合体、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート樹脂等のセルロースエステル系樹脂、マレイン酸および/またはアクリル酸の共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン共重合体、メチルメタクリレート/ブタジエン/スチレン共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、スチレン/ブタジエン樹脂、ブタジエン/アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。特に好ましくはジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂層である。
【0151】
アンチカール層を塗設する順番は樹脂フィルム基材の反対側に光学異方層を塗設する前でも後でも構わないが、アンチカール層がブロッキング防止層を兼ねる場合は先に塗設することが望ましい。
【0152】
本発明の光学異方体の支持体において物性を改良する目的として可塑剤を用いることができる。具体的な可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが好ましく用いられる。リン酸エステルとしては、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)、ビフェニル−ジフェニルホスフェート、ジメチル−エチルホスフェートが含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的なものである。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、エチルフタリルエチルグリコレート等が用いられる。クエン酸エステルとしては、クエン酸アセチルトリエチル(OACTE)およびクエン酸アセチルトリブチル(OACTB)が用いられる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。リン酸エステル系可塑剤(TPP、TCP、ビフェニル−ジフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート)、フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DEHP)が好ましく用いられる。
【0153】
又、この中でもトリフェニルフォスフェート(TPP)およびエチルフタリルエチルグリコールが特に好ましく用いられる。
【0154】
可塑剤は透明樹脂への耐水性付与、あるいはその透湿性改善のため、重要な素材であるが、添加量が多すぎると塗布層への悪影響が拡大する問題がある。
【0155】
可塑剤の添加量は透明樹脂中に通常2〜15質量%で添加することが好ましい。
【0156】
透明樹脂に紫外線吸収剤を含有させることによって、耐光性に優れた光学異方体を得ることが出来る。本発明に有用な紫外線吸収剤としては、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、安息香酸誘導体又は有機金属錯塩等がある。具体例として特に限定されることはないが、例えば、サリチル酸誘導体としてはサリチル酸フェニル、4−t−ブチルフェニルサリチル酸等を、ベンゾフェノン誘導体としては、2−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等を、ベンゾトリアゾール誘導体としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−5′−ジ−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等を、安息香酸誘導体としては、レゾルシノール−モノベンゾエート、2′,4′−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等を、有機錯塩誘導体としては、ニッケルビス−オクチルフェニルサルファミド、エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸のニッケル塩等を挙げることができる。本発明においてはこれら紫外線吸収剤の1種以上を用いていることが好ましく、異なる2種以上の紫外線吸収剤を含有してもよい。また高分子紫外線吸収剤、例えば特開平6−148430号に記載されたようなものを用いてもよい。本発明において好ましい紫外線吸収剤は、紫外線の吸収形状や保存性の観点から、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。特に、波長370nmでの透過率が、10%以下である必要があり、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。このような観点からベンゾトリアゾール誘導体またはベンゾフェノン誘導体が好ましく用いられる。
【0157】
紫外線吸収剤の添加方法はアルコールやメチレンクロライド、ジオキソランなどの有機溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にデゾルバやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
【0158】
本発明の光学異方体の液晶層の上には、傷などの光学的変質をさけるために保護層を設けてもよい。液晶層が複数層の場合は中間層を設けてもよい。保護層または中間層の材料としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/無水マレイミド共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリカーボネート、またはアクリレート、メタクリレート等のポリマー及びこれらの誘導体を挙げる事ができる。これらの材料を上記塗布方法より、溶液を調製して塗布、乾燥によって設置することができる。
【0159】
光学異方体の透明支持体上に層を設置する場合、構成する材料を溶媒を用いて溶解した溶液を調製し塗布することができる。このことは塗設した層の均一性の観点から好ましい製造方法である。用いる溶媒は単独で使用してもよく、また塗設する際の乾燥性を制御するために2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。塗設するための前記溶液の溶媒は有機溶媒が好ましい。例えばアルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール等が挙げられ、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられ、エステル類としては、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、乳酸エチル、乳酸メチル等が挙げられ、グリコールエーテル(C1〜C4)類としては、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、又はプロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステル類としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、その他の溶媒としてメチレンクロライド、N−メチルピロリドンなどがあげられる。特にこれらに限定されるものではない。
【0160】
本発明に用いられるセルロースエステルフィルム支持体の製造方法についてさらに詳しく説明する。
【0161】
セルロースエステルフィルム支持体の製造方法としては、ドープ液を支持体上に流延、製膜し、得られたフィルムを支持体から剥ぎ取り、その後、張力をかけて乾燥ゾーン中を搬送させながら乾燥する、溶液流延製膜法が好ましい。下記に溶液流延製膜法について述べる。
【0162】
(1)溶解工程:セルロースエステルのフレークに対する良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該フレークを攪拌しながら溶解し、セルロースエステル溶液(ドープ)を形成する工程である。溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、J.M.G.Cowie等によるMakromol.chem.143巻、105頁(1971)に記載されたような、又特開平9−95544号及び同9−95557号公報に記載された様な低温で溶解する冷却溶解法、高圧で行う方法等種々の溶解方法がある。溶解後ドープを濾材で濾過し、脱泡してポンプで次工程に送る。
【0163】
(2)流延工程:ドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、無限に移送する無端の金属ベルトあるいは回転する金属ドラムの流延用支持体(以降、単に支持体ということもある)上に加圧ダイからドープを流延する工程である。流延用支持体の表面は鏡面となっている。その他の流延方法としては流延されたドープ膜をブレードによって膜厚を調節するドクターブレード法、あるいは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、口金部分のスリット形状を調製出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために加圧ダイを流延用支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。
【0164】
(3)溶媒蒸発工程:ウェブ(流延用支持体上にドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)を流延用支持体上で加熱し溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が乾燥効率がよく好ましい。またそれらを組み合わせる方法も好ましい。
【0165】
(4)剥離工程:支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。剥離する時点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
【0166】
製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることができる)として、残留溶媒が多くとも剥離出来るゲル流延法(ゲルキャスティング)がある(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることが出来る)。それは、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。支持体上でゲル化させ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることが出来る。残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで剥離残留溶媒量を決められる。
【0167】
(5)乾燥工程:ウェブを千鳥状に配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置及び/またはクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター装置を用いてウェブを乾燥する工程である。乾燥の手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通して、通常乾燥温度は40〜250℃で、70〜180℃が好ましい。使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて乾燥条件を適宜選べばよい。
【0168】
流延用支持体面から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブは巾方向に収縮しようとする。高温度で急激に乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この観点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を巾方向にクリップでウェブの巾両端を巾保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式)が好ましい。
【0169】
(6)巻き取り工程:ウェブを残留溶媒量が質量で2%以下となってからフィルムとして巻き取る工程である。残留溶媒量を0.4%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることが出来る。巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0170】
脂肪酸セルロースエステルフィルムの膜厚の調節には所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度をコントロールするのがよい。又、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが好ましい。
【0171】
溶液流延製膜法を通しての流延直後からの乾燥までの工程において、乾燥装置内の雰囲気を、空気とするのもよいが、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気で行ってもよい。ただ、乾燥雰囲気中の蒸発溶媒の爆発限界の危険性は常に考慮されなければならないことは勿論のことである。
【0172】
本発明に係るセルロースエステルフィルム支持体は延伸操作を行う方法ことが好ましい。以下、その延伸方法について説明する。
【0173】
本発明のセルロースエステルフィルム支持体の製造において、セルロースエステル溶解ドープ液を流延用支持体に流延後、次いで、流延用支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が10〜100質量%の範囲にある間に、少なくとも1方向に0.5〜4.0倍延伸することが好ましい。
【0174】
なお、残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0175】
ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。ウェブ中の残留溶媒量の更に好ましい範囲は10質量%〜50質量%、特に20質量%〜40質量%が最も好ましい。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。延伸倍率の更に好ましい範囲は1.0倍〜2.5倍の範囲である。
【0176】
本発明に係るセルロースエステルを用いて溶液流延製膜したものは、特定の範囲の残留溶媒量であれば高温に加熱しなくても延伸可能であるが、乾燥と延伸を兼ねると、工程が短くてすむので好ましい。しかし、ウェブの温度が高すぎると、可塑剤が揮散するので、15℃〜160℃以下の範囲が好ましい。
【0177】
また、互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの屈折率nx、ny、nzを本発明の範囲に入れるために有効な方法である。例えば流延方向に延伸した場合、巾方向の収縮が大きすぎると、nzの値が大きくなりすぎてしまう。この場合、フィルムの巾収縮を抑制あるいは、巾方向にも延伸することで改善できる。巾方向に延伸する場合、巾手で屈折率に分布が生じる場合がある。これは、テンター法を用いた場合にみられることがあるが、巾方向に延伸したことで、フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、いわゆるボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、流延方向に延伸することで、ボーイング現象を抑制でき、巾手の位相差の分布を少なく改善できるのである。
【0178】
更に、互いに直行する2軸方向に延伸することにより、得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。セルロースエステルフィルム支持体の膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなり、液晶ディスプレイに用いたとき着色等の問題が生じることがある。セルロースエステルフィルム支持体の膜厚変動は、±3%、更に±1%の範囲とすることが好ましい。以上の様な目的において、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ流延方向に0.8〜4.0倍、巾方向に0.4〜1.2倍の範囲とすることが好ましい。
【0179】
ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。また、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
【0180】
以上のようにして得られたフィルムは、最終仕上がりフィルムの残留溶媒量で2質量%以下、さらに0.4質量%以下であることが、寸度安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。
【0181】
本発明の光学異方体の透明支持体として求められる光学特性を得るためには、フィルムを乾燥した後、フィルム樹脂のガラス転移温度以上に加熱し延伸し該温度以下に放冷する方法、また該ガラス転移以上の温度に加熱しなくてもフィルムを膨潤させるような溶媒、例えば水/アセトン=1/1(質量比)を用いてフィルムを溶媒で膨潤させた状態で延伸することもできる。しかしながらこれらの延伸方法はガラス転移温度以上にするとフィルム中に存在する可塑剤がフィルム表面に溶出すること、一方膨潤させた状態で延伸する方法は、膨潤させる溶液の種類によって可塑剤がフィルムから溶出することが懸念されるため注意が必要である。それゆえ、溶液流延法でフィルム製膜時に溶媒が残存する状態で乾燥させながら延伸することが最も好ましい。
【0182】
また延伸を与える場合フィルム製膜時の搬送方向にフィルム面内の最大屈折率、すなわちnxの方向が実質的に一致することが製造上好ましく、光学特性を考慮するとフィルムの搬送方向とnxの方向が1°の範囲以内とすることがより好ましい。
【0183】
本発明の光学異方体の好ましい配置形態について、図1を用いて説明する。
本発明の光学補償フィルムの配置形態としては、駆動用液晶セルのガラス基板又はプラスチック基板と偏光子の間であればTN型TFT液晶装置に様々な形態で配置して使用することが可能である。
【0184】
本発明の光学異方体は当該液晶パネルの両面の各々の偏光子とセルのガラスまたはプラステック基板の間に配置され、透過型パネルの場合における入射光側または出射光側のいずれの側にも配置することができる。または片面に同様に光学異方体を1枚または2枚以上に配置しても差し支えはない。
【0185】
また、本発明の目的をより効果的に発現させる光学異方体の配置方法は、前記駆動用液晶セルに最も近い基板のラビング方向に前記光学異方体の透明支持体面が接触する方向に光学異方体を配置し、かつ光学異方体の透明支持体の最大屈折率方向が前記液晶セルに最も近い基板に接しているラビング方向に実質的に直交した方向が好ましい。実質的に直交とは、当該各々の基準方向とのなす角が80°から100°の範囲であり、好ましくは87°以上93°以下、さらに好ましくは89°以上91°以下であるが、本質的に90°であることが好ましい。
【0186】
図1は本発明の光学異方体の配置された液晶表示装置の一例を示す概念図である。
【0187】
図1において、液晶セル7の上下に光学異方体9、9′が配置され、偏光子1、1′が搭載される。8、8′は液晶セルのラビング方向およびチルト方向を示す。4、4′は、光学異方層の液晶化合物の配向方向を示す。4a、4bは光学異方層の液晶化合物のチルト方向の概念図である。特に光学異方体の透明支持体側のチルト角が光学異方層作製時の空気界面のチルト角よりも高く、4a、4bの液晶化合物の概念図に示すような厚さ方向に対してチルト角が連続的に変化することがより効果的である。光学異方体の配置は、透明支持体側を液晶セル基板側とすることがさらに効果的であり図1の如くである。
【0188】
4、4′の光学異方層の液晶化合物の配向方向は、液晶化合物を支持体面に投影した方向であり、これらの方向と、近接する透明支持体の面内における最大屈折率方向6、6′も各々実質的に直交することが求められる。実質的に直交とは前述同様である。光学異方体には溶出ブロック層、光配向層、透明支持体のプラズマ処理、有機酸基含有ポリマー層等が適宜設置されるが図1では省略してある。光学異方体の層構成は実施例に詳細に示す。本発明の目的は、図1の構成が最も効果的に発現できる形態である。
【0189】
本発明の光学異方体は、図1のごとく偏光子と駆動用セルの間に設置される。偏光子にかえて、偏光子に偏光板保護フィルムとしてTACフィルムが両面に添付された偏光板を用い上述の位置に設置されてもよく、または偏光板保護フィルムの駆動用セル側に、偏光板保護フィルムに代えて本発明の光学異方体を用いてもよい。
【0190】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。
【0191】
実施例1
以下の製造方法1,2および3により、又セルロース樹脂を下記に示すセルロース樹脂1〜6(詳細な内容は下記に記載)にかえ表1に示すような透明樹脂フィルム支持体1〜11を作製した。
【0192】
製造方法1
セルロース樹脂(詳細な内容は下記に記載)を100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら60分かけて45℃まで徐々に昇温し溶解した。容器内は1.2気圧となった。このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。また、これとは別に、上記セルロース樹脂5質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)6質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)及びAEROSIL R972V(日本アエロジル(株)製)をそれぞれ1質量部を塩化メチレン94質量部とエタノール8質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液1を調製した。上記ドープ100質量部に対して前記紫外線吸収剤溶液1を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度30℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から25℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は100質量%であった。次いで同時二軸延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔を巾方向と流延方向(長さ方向)に同時に変化させることで、120℃で巾方向に1.05倍、流延方向(長さ方向)に1.15倍延伸した。延伸終了後、一旦、フィルム温度を80℃まで冷却した後、周速の異なるローラーを用いて130℃で長さ方向に1.05倍延伸した。更にローラー搬送しながら130℃で10分間乾燥させて、膜厚100μmのセルロースエステルフィルムを得た。
【0193】
このセルロースエステルフィルムは、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度250℃のエンボスリングを押し当て、厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0194】
製造方法2
セルロース樹脂(詳細な内容は下記に記載)を100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート5質量部、トリフェニルフォスフェイト3質量部、塩化メチレン290質量部、エタノール60質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら60分かけて45℃まで徐々に昇温し溶解した。容器内は1.2気圧となった。
【0195】
このドープを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置しドープ中の泡を除いた。また、これとは別に、上記セルロース樹脂3質量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)3質量部、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)4質量部、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)5質量部を塩化メチレン90質量部とエタノール10質量部を混合し撹拌溶解し、紫外線吸収剤溶液2を調製した。
【0196】
上記ドープ100質量部に対して上記紫外線吸収剤溶液2を2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイからステンレスベルト上にドープ温度35℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から35℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70質量%であった。
【0197】
次いで、120℃のオーブン内でロール搬送しながら、オーブン入り口直後のロール周速に対してオーブン出口直前のロール周速を1.15倍になるようにして、流延方向(フィルムの長尺方向)に1.15倍延伸した。延伸後、直ちに60℃まで冷却した。更にテンターを用いてウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔を固定のまま、140℃で5分乾燥させ、膜厚80μmのセルロースエステルフィルムを得た。
【0198】
このセルロースエステルフィルムは、コア径200mmのガラス繊維強化樹脂製のコアに巾1m、長さ1000mのフィルムロール状にテーパーテンション法で巻き取った。この際、フィルム端部に温度270℃のエンボスリングを押し当て、10μmの厚みだし加工を施して、フィルム同士の密着を防止した。
【0199】
製造方法3
製造方法1と同様に行った。但し、延伸条件は以下のように変更した。同時二軸延伸テンターを用いて剥離したウェブの両端をクリップで掴み、クリップ間隔を巾方向と流延方向(長さ方向)に同時に変化させることで、120℃で巾方向に1.05倍、流延方向(長さ方向)に1.4倍延伸した。延伸終了後、一旦、フィルム温度を80℃まで冷却した後、周速の異なるローラーを用いて130℃で長さ方向に1.1倍延伸した。
【0200】
《セルロース樹脂》
セルロース樹脂1:アセチル基置換度2.65のセルロースアセテート(数平均分子量170000)
セルロース樹脂2:アセチル基置換度2.92のセルロースアセテート(数平均分子量200000)とアセチル基置換度2.45のセルロースアセテート(数平均分子量100000)を混合し、混合後の平均アセチル基置換度が2.65となるように調整した。
【0201】
セルロース樹脂3:アセチル基置換度2.51のセルロースアセテート(数平均分子量150000)とアセチル基置換度2.86のセルロースアセテート(数平均分子量180000)を混合し、混合後の平均アセチル基置換度が2.65となるように調整した。
【0202】
セルロース樹脂4:アセチル基置換度2.10、プロピオニル基置換度0.80(数平均分子量120000)
セルロース樹脂5:アセチル基置換度1.80、プロピオニル基置換度0.90(数平均分子量120000)
セルロース樹脂6:アセチル基置換度2.92のセルロースアセテート(数平均分子量200000)
セルロースエステルの数平均分子量は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定した。測定条件は以下の通りである。
【0203】
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した。)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/lmin
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard
ポリスチレン(東ソー(株)製)の数種の分子量を用意し校正曲線を作成してセルロースエステルの数平均分子量に換算した。
【0204】
《支持体のリターデーション(Ro(nm)、Rt(nm)、Rt/Ro)測定》
自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下での、波長が590nmにおけるリターデーションの角度特性測定より値を得た。
【0205】
【表1】
【0206】
表2に示す構成とし光学異方体を作製するため、表1の透明樹脂フィルム支持体試料に必要に応じ以下の様にプラズマ処理を行った。又別の試料には必要に応じ、プラズマ処理に代わり下記に示す様に有機酸含有ポリマー層を塗設した。
【0207】
〈プラズマ処理〉
装置:連続大気圧プラズマ放電処理装置(図2に示すもの)
電源:ハイデン研究社製PHF−4K
電源周波数:10kHz
電源出力:400W/m2
処理ガス:アルゴン:酸素:水素=10:1:0.38(圧力比)の割合となるようにマスフローコントローラで流量を制御し、ミキサーで混合したものを処理室へ導入した。処理時間は60秒とした。
【0208】
〈有機酸基含有ポリマー層の塗設〉
酢酸ビニル:無水マレイン酸:マレイン酸=2:1:1(モル比)の共重合体50gを無水アセトン500gと酢酸エチル500g中に溶解し、透明支持体に乾燥膜厚が100nmとなるようにワイヤーバーで搬送しながら塗布し、100℃2分間乾燥ゾーンで処理して乾燥した。そして搬送されたフィルムを巻き取った。
【0209】
さらに以下に示す溶出ブロック層1或いは2を表2に従い塗設した。
〈溶出ブロック層1の作製〉
長尺ロール上の透明支持体上に下記活性線硬化層用塗布組成物を搬送しながら、ワイヤーバー塗布を行い、乾燥し、窒素雰囲気下200mJ/cm2(365nmの光量)の紫外線を照射して硬化して、搬送されたフィルムを巻き取った。硬化後の溶出ブロック層の膜厚は3μmであった。
【0210】
〈溶出ブロック層2の作製〉
透明支持体上に下記ポリマー塗布液を調製し、乾燥膜厚が0.2μmとなるようにワイヤーバー塗布して乾燥した。
【0211】
さらに溶出ブロック層の上に下記の配向層を塗設した。
【0212】
〈配向層の塗設および偏光紫外線の照射〉
2質量%のPA−1のメチルエチルケトン溶液を調製し、透明支持体上に塗設された溶出ブロック層上に乾燥膜厚が50nmとなるように搬送しながら押し出しコーティング機で塗布し、乾燥後110℃で90秒間搬送しながら熱処理した。これに250mWの高圧水銀灯で石英凸レンズを用いて出射光を平行として、ポラロイド社製紫外線用偏光フィルム(HNP’B)を透過して偏光とした。透明支持体上に対する300nm〜330nmの波長域の偏光照射光量として光学異方層にLC−1を用いるときは25mJ/cm2、光学異方層にLC−2を用いるときは12mJ/cm2となるように行い、露光後搬送されてフィルムを巻き取った。このとき、透明支持体の面内の最大屈折率方向が搬送方向と一致しており、光配向層に照射する紫外線の偏光方向は搬送方向と直交し、かつ照射面法線から該直交方向を含む方向に20°傾斜した角度で照射した。
【0213】
【化1】
【0214】
次いで以下の様に液晶化合物を塗布し配向させ光学異方層(液晶層1或いは2)を形成した。
【0215】
〈光学異方層(液晶層1)の塗設〉
透明支持体上に塗設された偏光照射処理済みの長尺フィルムの配向膜上に、LC−1(5g)を45gのクロロホルムに溶解させ10質量%の溶液を印刷法により塗布した。110℃の乾燥ゾーン内に搬送しながら乾燥し、配向のために110℃で累積時間が3分間となるように処理した後、20℃のゾーンで累積時間が90秒間となるようにフィルムを放冷して、LC−1を配向固定化した。これを室温下で搬送してフィルムを巻き取った。LC−1のガラス転移温度は90℃である。液晶層の膜厚は1.5μmであった。
【0216】
【化2】
【0217】
〈光学異方層(液晶層2)の塗設〉
透明支持体上に塗設された偏光照射処理済みの長尺フィルムの配向膜上に、LC−2を1.6g、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(M101;東亜合成(株)製)0.4g、及び光重合開始剤(イルガキュア907;チバ・ガイギー社製)0.01gを、3.65gのメチルエチルケトンに溶解して得られた塗布液を押し出しコーティング機で塗布した。
【0218】
乾燥と配向のために120℃の乾燥ゾーンに累積時間が3分間となるように加熱し、液晶化合物を配向させた。次に20℃かつ窒素雰囲気のゾーンに搬送し、高圧水銀灯を用いて照度500mJ/cm2の紫外線を照射し、架橋反応により配向を固定化した。搬送されたフィルムを室温下で巻き取った。液晶層の膜厚は1.2μmであった。
【0219】
【化3】
【0220】
以上のように、表2に示す光学異方体A〜Oを得た。
【0221】
【表2】
【0222】
得られた光学異方体試料A〜Oを用いて、以下の測定を行った。
《光学異方層の平均チルト角測定》
自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、光学異方体および光学異方体に用いた透明支持体のみのリターデーションの角度依存性(−40°〜+40°の範囲、測定は10°毎)を測定した。光学異方体は、光学異方層の最大屈折率を含む方向の測定を実施した。光学異方体全体のリターデーションの角度依存性に対して、対応する透明支持体の各角度成分のリターデーションの差を求めた。測定角度に依存するリターデーションの最大値を与える観測角度を光学異方層を構成する液晶化合物の平均チルト角とし表3に示した。
【0223】
本実施例では、試料の面に対する法線方向(0°)から最大値を与える観測角度がずれており、光学異方層の液晶分子が傾いていることを確認した。また、リターデーション値の最小値は、0でないため、液晶分子は厚さ方向に関して角度が変化していることを確認した。
【0224】
《光学異方層の配向膜側のチルト角測定》
実施例の透明支持体の代わりに1.5cm×2.5cmの透明ガラス基板を用いて、PA−1のメチルエチルケトン溶液を用いて乾燥膜厚が50nmとなるように塗布し前記と同様に偏光紫外線照射してそれぞれLC−1用、LC−2用に配向膜を塗設したガラス基板をそれぞれ2枚ずつ用意し、1枚の上にLC−1またはLC−2の液晶化合物と5μmの球形スペーサーを液晶化合物の等方性温度雰囲気下で配向膜上に塗設した。互いに配向方向が逆向きかつ平行となるようにもう一枚の配向済みガラス基板を液晶と接するように圧着し厚さが均一となるように調節して、周囲をシリコン樹脂で封止し硬化させた。これにより液晶化合物を含むガラスセルを作製した。前記光学異方体の作製と同様に作製したガラスセルを熱処理した。LC−1を含むガラスセルはそのまま室温に放冷した。一方、LC−2を含むガラスセルは紫外線硬化後、室温に放冷した。
【0225】
前記同様にリターデーションの角度依存性を測定したところ、平均チルト角は光学異方体より求めた表3に示す平均チルト角よりも対応する試料は全て高い値であり、50°以上であることを確認した。これより、光学異方体を構成する液晶化合物の厚さ方向のチルト角変化は、配向膜側に接するチルト角は高く、配向膜とは逆(空気界面)側ではチルト角が小さいかもしくは0°であることを確認した。この結果を基に図1に示すように4a、4bの液晶化合物のチルト角方向の概念を推察した。
【0226】
《視野角の評価》
NEC製LA−1529HM型のTFT−TN液晶パネルの偏光板を剥がしたのち、図1の構成に準じ(偏光子そのものの代わりに偏光板を用いた構成となる)、作製した光学異方体をそれぞれ駆動用液晶セルに角度を合わせて配置し、剥がした偏光板を同じ角度で再配置した。各々の試料についてパソコンでモニターを駆動し、白色/黒色表示時のコントラスト比をELDIM社のEz−Contrastを用いて測定し、上下左右について、コントラストが10以上を示す液晶パネルの法線方向からの角度をそれぞれ測定し視野角とした。
【0227】
【表3】
【0228】
本発明の光学異方体は、本発明内の透明支持体と光学異方層を含むことにより、液晶ディスプレイの視野角特性を従来にない程著しく改良できることは明白である。
【0229】
実施例2
実施例1の光学異方体Aにおいてプラズマ処理を行わないで、それ以外は同様にA′を作製した。光学特性は全く同じであった。
【0230】
実施例1のKにおいて有機酸基含有ポリマー層を設置しないで、それ以外は同様にK′を作製した。光学特性は全く同じであった。
【0231】
これらの試料A、A′K、K′について、以下の密着性試験を行った。
JIS K 5400に準拠した碁盤目試験を行い密着性について試験を行った。具体的には塗布面上に1mm間隔で縦、横に11本の切れ目をいれ、1mm角の碁盤目を100個つくった。この上にセロハンテープを貼り付け、90度の角度で素早く剥がし、剥がれずに残った碁盤目の数をmとした。
【0232】
○ 0≦m≦30 密着性が高く優れている。
△ 31≦m≦50 若干剥離するが実用上問題がないレベル。
【0233】
× 51≦m≦100 剥離が目立ち実用上問題がある。
試料No. A A′ K K′
密着性 ○ △ ○ △
以上の結果より、透明支持体上にプラズマ処理を施すこと、あるいは有機酸基含有ポリマー層を設置することにより本発明の光学異方体の密着性が向上することは明らかである。
【0234】
実施例1の他の試料においてもプラズマ処理あるいは有機酸基含有ポリマー層の設置の効果を同様に比較を行ったところ、密着性の向上が認められた。
【0235】
実施例3
支持体4の製造において、エチルフタリルエチルグリコレート5質量部およびトリフェニルフォスフェイト3質量部を添加せずにそれ以外は支持体4と同様に製造方法1に従い支持体4′を作製した。これに、表2のHと同様な層構成を有する光学異方体H′を作製した。光学異方体HとH′を1m×50cmのサイズに裁断し80℃90%RH雰囲気下で50時間劣化試験を行った。光学異方体における透明支持体の面内の最大屈折率を与える方向の寸法変化を上記劣化処理前後で比較を行った。
【0236】
以上の結果より、透明支持体への可塑剤添加は寸法変化が軽減できる点でより好ましい。特に光学特性が重要な液晶表示装置に光学異方体を用いる場合は、寸法変化による光学特性の変化が小さいことが望ましいことは明らかである。
【0237】
実施例1の他の試料でも同様に試料を作製し評価したところ全ての試料において寸法変化が軽減できた。
【0238】
実施例4
以下の方法により偏光板保護フィルムを作製した。
【0239】
上記組成物を密閉容器に投入し、加圧下で80℃に保温し撹伴しながら完全に溶解してドープ組成物を得た。次にこのドープ組成物を濾過し、冷却して35℃に保ちステンレスバンド上に均一に流延し、剥離が可能になるまで溶媒を蒸発させたところで、ステンレスバンド上から剥離した。剥離後の残留溶媒量50質量%〜5質量%の間の乾燥ゾーン内でテンターによって幅保持しながら乾燥を進行させ、さらに、多数のロールで搬送させながら残留溶媒量1質量%以下となるまで乾燥させ、膜厚80μmのフィルムを得た。
【0240】
《偏光板の作製》
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光子を作製した。この偏光子の両面に60℃で2モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液中に2分間浸漬し水洗した後100℃で10分間乾燥した80μmの上記偏光板保護フィルムを完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液の粘着剤を用いて貼り合わせ偏光板を作製した。
【0241】
実施例1で作製した各々の光学異方体と上記偏光板を、偏光板の透過軸に対して光学異方体の透明支持体の面内最大屈折率を与える方向が平行になり、かつ光学異方層が偏光板保護フィルム側になるようにアクリル系接着剤を用いて貼合した。
【0242】
一方、実施例1で作製した透明支持体の紫外線吸収剤であるチヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、チヌビン109(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、チヌビン171(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)にかえて2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノンを2質量部添加して同様に光学異方体を作製し上記偏光板と同様に貼合した。
【0243】
また、紫外線吸収剤を添加しない以外同様にして光学異方体を作製し上記偏光板と同様に貼合した。
【0244】
これらの光学異方体を貼合した偏光板を、光学異方体を配置した側からフィルム面の法線方向よりキセノンロングライフウェザーメーターで照度7万ルクス、40℃で500時間強制劣化を行った。これらの光学異方体を貼合した偏光板を実施例1と同様の構成になる様に液晶ディスプレイに設置した。劣化試験前は全ての試料で液晶ディスプレイの白表示、および黒表示であった。
【0245】
光学異方体の透明支持体にチヌビン326、チヌビン109、チヌビン171を含む試料、および2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノンを含む試料は、劣化試験後でも白黒表示に変化は認められなかった。また実施例1と同様な視野角特性を示した。しかしながら、光学異方体の透明支持体に紫外線吸収剤を含まない試料は、劣化試験により白黒表示がやや劣化し、特に黒表示時に光が若干漏れるためにコントラストの低下が認められた。
【0246】
このことより、光学異方体の透明支持体に紫外線吸収剤を含むことは耐久性を向上する点でより好ましいことが判明した。
【0247】
実施例5
実施例4で作製した偏光子に偏光板保護フィルムを貼合した偏光板について、液晶セル側となる偏光板保護フィルムを本発明実施例1で作製した光学異方体D、L、Mにかえて偏光板を作製した。すなわち光学異方体D、L、Mをそれぞれ2モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液に60℃で2分間浸漬し水洗を行った後、100℃で10分間乾燥し、次いで、光学異方体の異方層を有する側が偏光子側になるようにアクリル系接着剤を用いて、偏光子の透過軸が光学異方体の支持体の最大屈折率を与える方向と一致するようにして、貼合し、それぞれ偏光板とした。
【0248】
これらの光学異方体D、L、Mを用い作製した偏光板を用い実施例1と同様にして、NEC製LA−1529HMのTFT−TN液晶パネルの偏光板を剥がした後、これに代えて上記光学異方体D、L、Mを用い作製した偏光板を光学異方体と液晶セルのラビング方向をあわせて組み込んだ。実施例1および実施例4と同様に液晶ディスプレイの白色/黒色表示時のコントラスト比、上下左右の視野角について評価したところ本発明の効果が確認された。
【0249】
【発明の効果】
液晶ディスプレイに用いられる視野角特性の高度な補償性能を備えた光学異方体およびそれらを備えた液晶表示装置が提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学異方体を配置した液晶表示装置の一例を示す概念図。
【図2】連続大気圧プラズマ放電処理装置。
【符号の説明】
1、1′ 偏光子
2、2′ 偏光子の透過軸
3、3′ 光学異方層
4、4′ 液晶化合物の配向方向
4a、4b 液晶化合物のチルト方向の概念図
5、5′ 透明支持体
6、6′ 透明支持体の面内における最大屈折率方向
7 液晶セル
8 液晶セルの上部基板のラビング(チルト)方向
8′ 液晶セルの下部基板のラビング(チルト)方向
9、9′ 光学異方体
10 透明樹脂基板
11 前室
12 反応室
13、14 電極
15 電源
16 アース
17 ニップロール
18 処理ガスの導入口
19 処理ガスの排出口
20、21、22 搬送ロール
L 電極間隔
Claims (11)
- 透明支持体の上に光配向層、および光配向層に隣接しかつ液晶化合物の配向が固定化された光学異方層を有する光学異方体において、該支持体の光学特性が41nm≦Ro≦95nm、0.8≦(Rt/Ro)≦1.4、かつnx>ny>nzを満たすことを特徴とする光学異方体。
ここで、RoおよびRtは透明支持体のリターデーション値を示す。
Ro=(nx−ny)×d
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
(nxは透明支持体の面内での最大屈折率方向であるx方向の屈折率、nyはx方向に垂直な該支持体面内の方向であるy方向の屈折率、nzは厚み方向での該支持体の屈折率であり、dは該支持体の厚み(nm)である。) - 透明支持体がセルロースエステル樹脂であることを特徴とする請求項1記載の光学異方体。
- 前記光学異方層が、前記透明支持体面に対する光学異方層の平均傾斜角度が15°以上50°以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の光学異方体。
- 光学異方層を構成する液晶化合物の傾斜角度が厚さ方向に対して変化し、該傾斜角度が配向層側から増加または減少することを特徴とする請求項3記載の光学異方体。
- 前記光学異方層の最大屈折率方向を透明支持体面に投影した方向が、前記透明支持体のny方向と実質的に等しいことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の光学異方体。
- 透明支持体と前記配向層との間に溶出ブロック層を少なくとも1層有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の光学異方体。
- 前記溶出ブロック層が活性線硬化樹脂で構成され、該硬化樹脂を該活性線の照射により硬化させた溶出ブロック層であることを特徴とする請求項6記載の光学異方体。
- 前記光配向層に偏光紫外線を照射することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項記載の光学異方体。
- 前記光配向層を構成する材料が偏光紫外線照射により光二量化反応することを特徴とする請求項8記載の光学異方体。
- 請求項1〜9の何れか1項記載の光学異方体を備えたことを特徴とする液晶表示装置。
- 請求項10記載の液晶表示装置が電極を備えた一対の透明基板とネマティック液晶で構成される駆動用液晶セルで構成され、該基板の上下に配置された上側偏光子と下側偏光子を備えたツイステッドネマティック型液晶表示装置であって、該基板と上側もしくは下側偏光子のどちらか一方の間、または該基板と上側および下側偏光子のそれぞれの間に請求項1〜9の何れか1項記載の光学異方体を少なくとも1枚備えたことを特徴とする液晶表示装置。
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