JP4146005B2 - 磁気記録媒体及び磁気記録再生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ディスク装置等に使われる磁気記録媒体および磁気記録再生装置に係り、特に、ランプロード方式の磁気ディスク装置に使われる磁気記録媒体およびランプロード方式の磁気記録再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
パーソナルコンピュータ等の電子機器においては、大容量のメモリ装置として磁気ディスク装置が広く用いられている。また、近年、携帯可能な小型のパーソナルコンピュータが普及しつつあり、この種のパーソナルコンピュータに搭載される磁気ディスク装置は、携帯時における衝撃等に対する信頼性の向上が求められている。
【0003】
そこで、磁気ディスク装置の非作動時に磁気ヘッドを保持する機構として、ランプロード機構を備えたものが提供されている。例えば特開平5−120822号公報には、スピンドルモータにより回転される少なくとも一枚の磁気ディスク媒体と、この磁気ディスク媒体の表面に近接してデータの読み出し、書き込み(リード/ライト)を行う磁気ヘッドと、この磁気ヘッドを所望のシリンダ位置へ移動させるアクチュエータ機構と、このアクチュエータ機構を駆動する位置制御回路と、ランプロードを使用したロードアンロード機構とを備えた磁気ディスク装置が開示されている。
【0004】
ランプロードを使用したロードアンロード機構は、磁気ディスクの外側に設けられたランプを備え、磁気ディスク装置の非作動時、キャリッジアッセンブリは磁気ディスクの外周に回動され、サスペンションがランプに乗り上げる。それにより、磁気ヘッドは、磁気ディスク表面から離間した位置に保持され、非作動時に衝撃を受けても、磁気ディスクとの衝突が防止される。
【0005】
しかしながら、このような従来の磁気ディスク装置では、ロード速度の浮上方向速度成分の制御がされていなかったため、動作時、特にヘッド(スライダ)がランプを脱出する際に、磁気ディスク媒体面に接触し、磁気ディスクが傷つくことがあった。このため、ロード速度の浮上方向速度成分を制御する機構を設けることにより、磁気ディスク媒体を保護する試みがなされていたが、十分ではなかった。
【0006】
また、磁気ディスク装置に用いられる磁気記録媒体の保護層は、記録、再生を行う際、磁気スペーシングとなることから、磁気ディスク装置の高密度化、大容量化のためには、磁気記録媒体の保護層を薄くする傾向にあるが、保護層を薄くすると傷がつきやすくなるという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、従来は、ランプロード機構を有する磁気ディスク装置において、ランプを脱出する際に磁気ヘッドが磁気記録媒体に接触し、磁気記録媒体が傷つくという問題があった。また、このことは、磁気記録装置の高密度化、大容量化を図るべく磁気記録媒体の保護層を薄く設定する上で問題となっていた。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、ロード時にヘッドによる衝撃を受けても傷つき難く、エラーの少ない良好な磁気記録再生を行なうことが可能であり、かつ高密度化、大容量化し得る磁気記録媒体を得ることを目的とする。
【0009】
本発明はまた、その磁気記録媒体が、ロード時にヘッドによる衝撃を受けても傷つき難く、エラーの少ない良好な磁気記録再生を行なうことが可能であり、かつ高密度化、大容量化し得る磁気記録再生装置を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基板と、該基板の少なくとも一方の面に形成された磁気記録層と、該磁気記録層上に形成された保護層とを具備し、その周縁に、少なくともロード時にヘッドの浮上高が最も低くなる位置を含む第1のデータ領域、その内側に、第2のデータ領域を有する磁気記録媒体であって、
前記磁気記録層は、前記第1のデータ領域では第1の厚さ、前記第2のデータ領域では第2の厚さを有し、該第1の厚さは該第2の厚さよりも厚く、
前記保護層は、前記第1のデータ領域では第3の厚さ、前記第2のデータ領域では第4の厚さを有し、該第3の厚さは該第4の厚さよりも厚く、かつ
磁気ヘッドを用いて前記第1のデータ領域を記録再生したときの孤立波の半値幅が、前記第2のデータ領域を記録再生したときの孤立波の半値幅よりも大きいことを特徴とする磁気記録媒体を提供する。
【0011】
本発明はまた、基板、該基板の少なくとも一方の面に形成された磁気記録層、及び該磁気記録層上に形成された保護層とを具備し、その周縁に、少なくともロード時にヘッドの浮上高が最も低くなる位置を含む第1のデータ領域、その内側に、第2のデータ領域を有する磁気記録媒体と、
該磁気記録媒体を支持および回転駆動する駆動手段と、
該磁気記録媒体に対して情報の記録再生を行う磁気ヘッドと、
該磁気ヘッドに接続され、該第1のデータ領域と該第2のデータ領域の書き込み周波数を変更する手段と、
該磁気記録媒体に対して該磁気ヘッドを移動自在に支持したキャリッジアッセンブリと、
該キャリッジアッセンブリが非作動位置に移動した際、該キャリッジアッセンブリと係合して磁気ヘッドを該磁気記録媒体から離間した位置に支持するランプロード機構とを具備する磁気記録再生装置であって、
前記磁気記録層は、前記第1のデータ領域では第1の厚さ、前記第2のデータ領域では第2の厚さを有し、該第1の厚さは該第2の厚さよりも厚く、
前記保護層は、前記第1のデータ領域では第3の厚さ、前記第2のデータ領域では第4の厚さを有し、該第3の厚さは該第4の厚さよりも厚いことを特徴とする磁気記録再生装置を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の磁気記録媒体は、基板と、基板の少なくとも一方の面に形成された磁気記録層と、磁気記録層上に形成された保護層とを有し、この媒体は、保護層の厚さの厚い第1の領域と、保護層の厚さの薄い第2の領域とを有し、第1の領域には、ヘッドをロードする時にヘッドの浮上高が最も低くなる位置が含まれており、かつ第1の領域を記録再生したときの孤立波の半値幅は、第2の領域を記録再生したときの孤立波の半値幅よりも大きくなっている。
【0013】
また、本発明の磁気記録再生装置は、上記磁気記録媒体と、
磁気記録媒体を支持および回転駆動する駆動手段と、
磁気記録媒体に対して情報の記録再生を行う磁気ヘッドと、
この磁気ヘッドに接続されて、第1の領域と第2の領域の書き込み周波数を変更する手段と、
磁気記録媒体に対して磁気ヘッドを移動自在に支持したキャリッジアッセンブリと、
キャリッジアッセンブリが非作動位置に移動した際、該キャリッジアッセンブリと係合して磁気ヘッドを磁気記録媒体から離間した位置に支持するランプロード機構とを具備する。
【0014】
ランプロード磁気記録再生装置に使用される磁気記録媒体は、ロード時、ヘッドの浮上高が最も低くなるところで、ヘッドが磁気記録媒体に最も接触しやすく、傷がつきやすい。このため、本発明では、少なくともヘッドの浮上高が最も低くなる位置では、その保護層の厚さが厚く形成されている。これにより、磁気記録媒体が傷つくことを防止することができる。
【0015】
一方、ヘッドの浮上高が最も低くなる位置以外の領域は、その保護層をできるだけ薄く形成することが可能である。このように保護層を薄く形成することにより、磁気記録媒体の高密度、大容量化を実現することが可能となる。
【0016】
本発明によれば、このような保護層を用いることにより、エラーのない良好な磁気記録再生を行なうことができる。
なお、保護層が厚い領域の記録は、保護層が薄い領域の記録よりも再生時のエラーレートが高くなる傾向がある。
【0017】
本発明者らは、保護膜の厚さとエラーレートについて調べたところ、書込み時の記録密度が低いとエラーレートを低く抑えることができることがわかった。
本発明の磁気記録媒体では、保護層が厚い領域を記録再生したときの孤立波の半値幅が保護層が薄い領域よりも大きくなっているために、書込み時の記録密度が低くなり、エラーレートを低く抑えることが可能となる。
【0018】
また、本発明の磁気記録再生装置では、保護層が厚い第1の領域と保護層が薄い第2の領域とで、書き込み周波数を変更する手段が備えられている。保護層が厚い領域では周波数を低くし、書込み時の記録密度を低下させることにより、エラーレートを低く抑えることが可能となる。
【0019】
本発明の磁気記録媒体に使用される磁気記録層材料としては、
CoCr、CoCrPt、CoCrTa、CoCrPtTa,CoNi,CoNiCr、CoNiCrTa、CoNiCrTaPt、CoCrPtTaNb、CoCrPtTaB、CoPt、及びCoPt−1Sio2 等があげられる。
【0020】
保護層材料としては、カーボン、窒化カーボン、水素化カーボン、水素化窒化カーボン、及びSiO2 等を使用することができる。
また、例えば基板が0.584〜0.635mm、磁気記録層が5〜50nmの厚さを有する場合、保護層は、薄い領域の厚さは、2〜12nm、厚い領域の厚さは4〜20nmであることが好ましい。また、保護層の薄い領域の厚さと厚い領域の厚さの差は、2〜8nmであることが好ましい。
【0021】
保護層の薄い領域の厚さは、2nm未満であると、コロージョン特性が悪化し、すなわち高温高湿環境下でCoの表面への析出が表れる傾向があり、12nmを越えると、電磁変換特性を損なう傾向がある。
【0022】
また、保護層の厚い領域の厚さは、4nm未満であると、ヘッドロード時にメディアが傷つく可能性があり、20nmを越えると、付着力が弱くなる傾向がある。
【0023】
さらに、保護層の薄い領域の厚さと厚い領域の厚さの差は、2nm未満であると、ランプロード時のメディアの傷つき性改善と電磁変換特性確保の両立が困難であり、8nmを越えると、段差のために、シーク時に異常動作を示す傾向がある。
【0024】
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
図1に、本発明の磁気記録媒体の一例の構成を表す該略図を示す。
図示するように、この磁気記録媒体は、約65mm径、厚さ約0.635mmの円形基板101と、その両面に設けられ、周縁に厚さ25nmの領域、その内側に厚さ約20nmの領域を有する磁性膜202と、磁性膜202上に各々設けられ、その周縁に厚さ約12nmの領域、その周縁領域よりも内側にそれよりも薄い厚さ約8nmの領域を有する保護層203とから基本的になる。この磁気記録媒体は、図示するように、その機能に応じて、記録が行なわれるデータ領域104、ヘッドがロードされるロード領域105とに分けられており、厚さの厚い領域は、ロード領域105に、厚さの薄い領域は、ロード領域104に対応して設けられている。データ領域104は、半径14mm〜30mmであり、ロード領域は、半径30mm〜31.5mmである。
【0025】
この磁気記録媒体では、磁性膜202の内側領域よりも周縁領域の厚さを厚くすることにより、周縁領域を記録再生したときの孤立波の半値幅を、その内側領域を記録再生したときの孤立波の半値幅よりも大きく設定することができる。
【0026】
また、図2に、本発明の磁気記録媒体の他の一例の構成を表す該略図を示す。図示するように、この磁気記録媒体は、円形基板101の両面に設けられ、磁性膜202の代わりに、円形基板101の周辺領域上に形成された第1の材料からなる磁性膜212と、その内側領域上に形成され、記録再生したときの孤立波の半値幅が第1の材料よりも小さい第2の材料からなる磁性膜222とから構成される磁性膜232が設けられ、その上にその周縁に厚さ約12nmの領域、その周縁領域よりも内側にそれよりも薄い厚さ約8nmの領域を有する保護層103が形成されいる以外は、図1に示す情報記録媒体と同様の構成を有する。
【0027】
この磁気記録媒体では、磁性膜202の内側領域と周縁領域との材質を変更することにより、周縁領域を記録再生したときの孤立波の半値幅を、その内側領域を記録再生したときの孤立波の半値幅よりも大きく設定することができる。
【0028】
図3に、本発明にかかる磁気記録再生装置の一例を表す分解斜視図を示す。
また、図4は、図3に示すキャリッジアッセンブリの斜視図である。
図4は、磁気ヘッドが磁気記録再生装置の最外周に移動した状態を表す磁気記録再生装置平面図を示す。
【0029】
図3に示すように、HDDは、上面の開口した矩形箱状のケース12と、複数のねじ11によりケースにねじ止めされてケースの上端開口を閉塞するトップカバー14とを有している。
【0030】
ケース12内には、磁気記録媒体としての磁気ディスク16、この磁気ディスクを支持および回転させる駆動手段としてのスピンドルモータ18、磁気ディスクに対して情報の書き込み、読み出しを行なう複数の磁気ヘッド40、これらの磁気ヘッドを磁気ディスク16に対して移動自在に支持したキャリッジアッセンブリ22、キャリッジアッセンブリを回動および位置決めするボイスコイルモータ(以下VCMと称する)24、非作動時に磁気ヘッドが磁気ディスクの最外周に移動した際、磁気ヘッドを磁気ディスクから離間した位置に保持するランプロード機構25、および磁気ディスクの書き込み周波数を変更する手段を含むヘッドIC等を有する基板ユニット21が収納されている。
【0031】
また、ケース12の底壁外面には、基板ユニット21を介してスピンドルモータ18、VCM24、および磁気ヘッドの動作を制御する図示しないプリント回路基板がねじ止めされている。
【0032】
磁気ディスク16は、例えば直径65mm(2.5インチ)に形成され、例えば図3に示す構成を有し、上面および下面に磁気記録層、及び各磁気記録層上に少なくともロード時にヘッドの浮上高が最も低くなる位置を含む領域が厚く、それ以外の領域が薄く形成された保護膜を有している。磁気ディスク16は、スピンドルモータ18の図示しないハブに同軸的に嵌合されているとともにクランプばね17により保持されている。そして、スピンドルモータ18を駆動することにより、磁気ディスク16は所定の速度で回転駆動される。
【0033】
図3ないし図5に示すように、キャリッジアッセンブリ22は、ケース12の底壁上に固定された軸受組立体26を備えている。軸受組立体26は、ケース12の底壁に対して垂直に立設された枢軸27と、枢軸に一対の軸受を介して回転自在に支持された図示しない円筒形状のハブとを有している。また、キャリッジアッセンブリ22は、軸受組立体のハブに取り付けられた2本のアーム32a、32bと、各アームに支持された2つの磁気ヘッド組立体36とを備えている。
【0034】
各磁気ヘッド組立体36は、弾性変形可能な細長い板状のサスペンション38と、サスペンションの先端に固定された磁気ヘッド40とを備えている。サスペンション38は、板ばねにより構成され、その基端がスポット溶接あるいは接着によりアーム32a、32bの先端に固定され、アームから延出している。
【0035】
各磁気ヘッド40は、ほぼ矩形状のスライダとこのスライダに形成された記録再生用のMR(磁気抵抗)ヘッド、もしくはGMR(巨大磁気抵抗効果形)ヘッドを有し、磁気ディスク16に対して情報の書き込み、読み出しを行う。
【0036】
磁気ヘッド組立体36が固定されたアーム32aおよび32bは、軸受組立体26に取り付けられ、互いに平行に延出している。また、積層された状態でハブの外周に嵌合されている。アーム32a、32bに取り付けられた磁気ヘッド組立体36の磁気ヘッド40は互いに向かい合って位置し、アームと一体的に回動可能となっている。
【0037】
各サスペンション38は、その先端部から延出したタブ50を一体に備えている。タブ50は、後述するランプロード機構25の一部を構成するもので、サスペンション38の長手軸Aとほぼ直交する方向に延出しているとともに、磁気ディスク16に対して外周方向に向かって延出している。
【0038】
また、キャリッジアッセンブリ22は、軸受組立体26から、アーム32a、32bと反対方向へ延出した二股状の支持フレーム43を有し、これらの支持フレームにはVCM16の一部を構成するボイスコイル44が固定されている。支持フレーム43の一方の延出端には、後述するラッチ機構と係合可能な係合凹所45が形成されている。
【0039】
図3からよくわかるように、上記のように構成されたキャリッジアッセンブリ22をケース12に組み込んだ状態において、磁気ディスク16はアーム32a、32b間に位置している。そして、アーム32a、32bから延びるサスペンション38に取り付けられた磁気ヘッド40は、磁気ディスク16の上面および下面にそれぞれ対向し、磁気ディスク16を両面側から挟持している。各磁気ヘッド40は、サスペンション38のばね力により所定のヘッド荷重が印加され、磁気ディスク表面側に付勢されている。
【0040】
一方、図3および図5に示すように、キャリッジアッセンブリ22をケース12に組み込んだ状態において、支持フレーム43に固定されたボイスコイル44は、ケース12上に固定された一対のヨーク48間に位置し、これらのヨークおよび一方のヨークに固定された図示しない磁石とともにVCM24を構成している。そして、ボイスコイル44に通電することにより、キャリッジアッセンブリ22が回動し、磁気ヘッド40は磁気ディスク16の所望のトラック上に移動および位置決めされる。
【0041】
基板ユニット21は、ケース12の底壁上に固定された矩形状の基板本体51を有し、この基板本体上には、書き込み周波数を変更する手段を含む複数の電子部品およびコネクタ等が実装されている。また、基板ユニット21は、基板本体51から延出した帯状のメインフレキシブルプリント回路基板(以下メインFPCと称する)54を一体に有している。メインFPC54の延出端部54aは、キャリッジアッセンブリ22に固定されている。このメインFPC54は、磁気ヘッド40と基板ユニット21とを接続するための信号線や、VCM24のボイスコイル44を駆動するためのケーブル等の配線パターンから構成されている。
【0042】
図3ないし図5に示すように、ランプロード機構25は、ケース12の底壁に設けられているとともに磁気ディスク16の外側に位置した一対のランプ52a、52bを備えている。これらのランプ52a、52bは、ケース12の底壁に立設された支軸55に固定され、それぞれ磁気ディスク16表面とほぼ平行に延びている。
【0043】
一対のランプ52a、52bは、磁気ディスク16の半径方向に沿って、磁気ディスクの外周縁近傍まで延びているとともに、サスペンション38に設けられたタブ50の移動経路上に配置されている。また、ランプ52aは、磁気ディスク16の上面とほぼ面一に設けられ、ランプ52bは、磁気ディスク16の下面とほぼ面一に設けられている。更に、各ランプの延出端には、磁気ディスクから離間する方向に傾斜したスロープ53が形成されている。
【0044】
図6には、磁気記録再生装置の動作状態と非動作状態における磁気ヘッド及びサスペンションとランプとの配置関係を概略的に表す側面図を示す。
図3および図6(a)に示すように、HDDの通常の動作状態において、VCM24によりキャリッジアッセンブリ22を回動すると、磁気ヘッド40は磁気ディスク16の所望のトラック上に移動され、磁気ディスクに対して情報の記録あるいは再生を行う。
【0045】
また、HDDの非動作時、図5および図6(b)に示すように、VCM24によってキャリッジアッセンブリ22は非作動位置まで回動され、磁気ヘッド40は磁気ディスク16の最外周の停止位置まで移動される。すると、サスペンション38から延出したタブ50が磁気ディスク16の外周縁から外方へ突出し、それぞれスロープ53を介して対応するランプ52a、52b上に乗り上げる。これにより、各サスペンション38はその長手軸Aに沿って弾性変形し、一対の磁気ヘッド40は、それぞれ磁気ディスク16の上面および下面から所定距離離間した状態に保持される。
【0046】
HDDを再び作動した場合、磁気ディスク16が回転した状態でキャリッジアッセンブリ22が磁気ディスクの内周側に回動される。すると、各サスペンション38のタブ50はスロープ53上を通って対応するランプ52a、52bから離間する。これにより、磁気ヘッド40は磁気ディスク16の表面に対して、情報の記録、再生が可能な位置まで接近し、この状態で、キャリッジアッセンブリ22により所望のトラック上に移動される。
【0047】
次に、上述の磁気記録再生装置に適用される磁気記録媒体について説明する。
実施例1〜4
本発明の磁気記録再生装置に適用される磁気記録媒体は、以下のようにして形成した。
【0048】
基板材料としてとして2.5インチガラス基板、磁性薄膜材料として、CoCrTaPtターゲット、保護層材料として炭素ターゲットをそれぞれ用意した。
これらの材料を用いて、DCマグネトロン・スパッタ装置によって、種々の厚さの保護層を有するハードディスクタイプの磁気記録媒体を作製した。
【0049】
ただし、保護層は、通常の成膜方法と異なり、保護層スパッタを2度行うことで形成した。はじめに、通常の方法で磁気記録層全面をスパッタした。その後、厚さを薄くすべき領域を覆うシャッタでマスクして同様にスパッタを行なった。このことにより厚さを薄くすべき領域以外の領域の保護層の厚さを厚くさせた。また、保護層の厚さの制御は、スパッタ時間を変化させることで行なった。
【0050】
磁性膜の下地(図示せず)には、Cr合金膜を用いた。
得られた磁気記録媒体について、その磁気特性を、振動試料型磁力計VSMを用いて測定した。磁性膜の保磁力は、2500Oeであった。
【0051】
同様に、各領域の保護層の厚さを種々変化させ、サンプルA〜Iを得た。
図7に、図3に示す磁気記録再生装置に適用し得る磁気記録媒体の第1の構成例を表す概略断面図を示す。図示するように、この磁気記録媒体は、例えば、約65mm径、厚さ約0.635mmの円形基板101と、その両面に設けられた厚さ約20nmの磁性膜102と、磁性膜102上に各々設けられ、ヘッドがロードされるその周縁領域(第1の領域)105に、例えばサンプルAの場合は厚さ約12nm、その周縁領域よりも内側領域(第2の領域)104にそれよりも薄い厚さ約8nmの領域を有する保護層103とから基本的になる。第2の領域104は、例えば半径14mm〜30mmであり、第1の領域は、例えば半径30mm〜31.5mmである。
【0052】
得られた磁気記録媒体サンプルについて、電磁変換特性を調べるため、厚さの厚い領域及び厚さの薄い領域の両方を面記録密度5Gbpsiで記録再生した場合と、厚さの厚い領域を面記録密度3Gbpsiで、厚さの薄い領域を面記録密度5Gbpsiで記録再生した場合とで、各々記録トラック幅1.2μm、再生トラック幅0.8μmのトラック幅をもつGMRヘッドを用いて、4200rpm、浮上量25nmでエラーレートを測定し、比較を行った。
【0053】
なお、記録密度を保護層の厚さに応じて変化するためには以下の方法を用いた。
図8に、保護層の厚さに応じて記録密度を変化する様子を説明するためのブロック図を示す。
【0054】
図示するように、磁気記録媒体16に記録された情報は、再生アンプ60を通じて、再生信号処理部でデータとエリア情報に分別される。データはデータ変換部を通じて再生データとして送られる。エリア情報は、エリア情報判定部に送られる。エリア情報判定部では、厚さの薄い領域か、厚さの厚い領域かの判定が行われる。厚さの薄い領域の場合、記録周波数制御部でf1の周波数が記録周波数として選択される。例えばf1の記録周波数は5Gbsiの面記録密度に相当する周波数である。また、例えばf2の記録周波数は3Gbsiの面記録密度に相当する周波数である。このようにして選択された記録周波数(f1またはf2)を示す記録周波数指定信号が記録アンプ70に送られる。記録アンプ70に入力された記録データは、この記録周波数指定信号で指定された記録周波数に従って電流に変換され、磁気ヘッド40に供給される。これにより、厚さの薄い領域には5Gbsiの面記録密度の情報が記録され、厚さの厚い領域には、3Gbsi面記録密度の情報が記録される。
【0055】
また、エリア情報は、上述の方法のみならず、あらかじめホストシステムに登録された情報を用いることも可能である。この場合、エリア情報がホストシステムからエリア情報判定部に送られ、エリア情報判定部では、厚さの薄い領域か、厚さの厚い領域かの判定が行われる以外は、上述の方法と同様にして記録が行われる。
【0056】
上述のようにして得られたサンプルA〜Iのエラーレートの測定結果を、下記表1に示す。ここで、サンプルA〜Eは、第1の領域と第2の領域の保護膜の厚さが同等な比較例、サンプルIは第1の領域の保護膜の厚さが第2の領域の保護膜の厚さよりも薄い比較例、サンプルF〜Hのうち、第1の領域と第2の領域を同じ面記録密度で記録再生したものは比較例、サンプルF〜Hの第1の領域の保護膜の厚さが第2の領域の保護膜の厚さよりも厚く、かつ第1の領域を3Gbpsiで、第2の領域を5Gbpsiで記録再生したものが実施例1〜3である。
【0057】
エラーレートの表示でたとえば9は10の9乗を意味し、8は10の8乗を意味する。なお、装置のエラーレートは最低でも7乗が必要である。
また、ロード領域で、磁気ヘッドのロードアンロード試験を5万回行った。試験後の、磁気ディスクの状態を表面を顕微鏡で観察し、その傷つき性を調べた。このとき、まったく傷がみられない場合を○、肉眼ではみられないが、100倍の倍率の顕微鏡でかすかに傷がみられる場合を△、肉眼で傷が見られる場合を×として評価した。その結果を下記表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
エラーレートは、磁気ディスク装置を成立させるためには、10-7以下であることが必要である。ここでは、エラーレート5乗以下を×、6乗を△、7乗以上を○とした。
【0060】
表1の結果より、サンプルF,G,H,及びJのように、第2の領域の保護膜厚さに比べて、第1の領域の保護膜の厚さが厚い場合、第2の領域のエラーレートと傷つき性のどちらも良好となる。また、サンプルF,G,H,及びJにおいて、第1の領域に書き込む記録密度を、第2の領域の記録密度と同等の5Gbpsiにした場合には、傷つき性、第1の領域のエラーレート、第2の領域のエラーレートの全てを満足することは難しかったのに対し、保護膜の厚い第1の領域に書き込む記録密度を、第2の領域に書き込む記録密度よりも低くして3Gbpsiとした場合(実施例1〜3)には、第1の領域及び第2の領域のエラーレートと傷付き性のすべてが良好となった。
【0061】
実施例4,5
図3に示す磁気記録再生装置に適用される磁気記録媒体の他の例を以下のようにして形成した。
【0062】
基板材料として、2.5インチガラス基板、磁性薄膜材料として、CoCrTaPtターゲット、保護層材料としてとして炭素ターゲットをそれぞれ用意した。
【0063】
これらの材料を用いて、保護層の形成工程以外は実施例1ないし3と同様にして厚さの異なる保護層を有する磁気記録媒体としてサンプルK,Jを作製した。
保護層の形成は、通常の成膜方法と同等の方法により行った。ただし、この場合、スパッタの膜厚分布を利用した。例えばスパッタ装置におけるカーボン保護層ターゲット裏面の磁石を位置を制御することにより、基板上の膜厚分布を変化させ、データ領域に対してロード領域のカーボン保護層の厚さを厚くすることができる。このようにして、この例では、データ領域の内外周の膜厚分布を10%以内に制御した。また、保護層の厚さは、スパッタ時間を変化させることで行った。
【0064】
得られた磁気記録媒体の構成を図9に示す。
図9は、本発明の磁気記録媒体の第2の構成例を表す概略断面図である。図示するように、この磁気記録媒体は、その保護膜113の膜厚が磁気記録媒体のデータ領域からロード領域にかけて、図7と比較してなだらかに増加している以外は、図7と同様の構造を有する。
【0065】
なお、磁性膜の下地(図示せず)には、Cr合金膜を用いた。また、磁性膜は20nmの厚さとし、保磁力は、2500Oeであった。
得られた磁気記録媒体について、実施例1〜3と同様にして電磁変換特性の測定を行なった。また、磁気ヘッドのロードアンロード試験を同様にして行ない、傷つき性を測定、評価した。得られた結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
なお、サンプルK,Jのうち第1の領域と第2の領域を同じ面記録密度で記録再生したものは比較例、サンプルF〜Hの第1の領域の保護膜の厚さが第2の領域の保護膜の厚さよりも厚く、かつ第1の領域を3Gbpsiで、第2の領域を5Gbpsiで記録再生したものが、各々実施例4,5である。
【0068】
この表の結果より、サンプルK,Jにおいて、第2の領域の保護層厚さに比べて、第1の領域の保護層の厚さが厚い場合、第2の領域のエラーレートと傷つき性のどちらも良好となることがわかる。また、サンプルK,Jにおいて、保護膜の厚い第1の領域に書き込む記録密度を、第2の領域に書き込む記録密度よりも低くして3Gbpsiとした場合(実施例5,6)第1の領域及び第2の領域のエラーレートと傷付き性のすべてが良好となった。
【0069】
以上図7及び図9を用いて、ディスクの周縁に保護膜の厚い領域その内側に保護膜の薄い領域を有する磁気記録媒体について説明したが、本発明は、これに限るものではない。
【0070】
以下、上述の磁気記録媒体の変形例について説明する。
その他の変形例
図10は、本発明の磁気記録媒体の第3の構成例を表す概略断面図である。
【0071】
この磁気記録媒体は、ロードされる領域が媒体の中心部付近にあり、その周辺にそれ以外の領域があり、これに相応して、媒体の中心部付近の膜厚が厚く、その周辺の膜厚がそれより薄い保護膜123が設けられる以外は、実施例1と同様にして得られる。
【0072】
図11は、本発明の磁気記録媒体の第4の構成例を表す概略断面図である。
この磁気記録媒体は、媒体の中心部付近の膜厚が厚く、図10に比べてその周辺の膜厚がそれよりなだらかに薄くなった保護膜133が設けられる以外は、実施例4と同様にして得られる。
【0073】
図12は、本発明の記録媒体の第5の構成例を表す該略断面図を示す。
この磁気記録媒体は、媒体の中心部と周縁部とのほぼ中間付近の同心円上の膜厚が厚く、その周辺の膜厚がそれより薄くなった保護膜143が設けられる以外は、実施例1と同様にして得られる。
【0074】
図13は、本発明の記録媒体の第6の構成例を表す該略断面図を示す。
この磁気記録媒体は、媒体の中心部と周縁部とのほぼ中間付近の同心円上の膜厚が厚く、その周辺の膜厚がそれより薄く形成されている以外は、実施例4と同様にして得られる。この媒体は、膜厚が厚い領域と薄い領域との差が、図12に比べてなだらかである。
【0075】
図14は、本発明の記録媒体の第7の構成例を表す概略断面図である。
この磁気記録媒体は、媒体の中心部と周縁部とのほぼ中間付近のごく一部分の膜厚が他の領域の膜厚よりも厚く形成され、同心円方向に均一の高さを持たない保護膜163を設ける以外は、実施例4と同様にして得られる。
【0076】
この磁気記録媒体の場合は、ロード領域が同心円方向全体ではなく、そのごく一部に形成されているため、そのため、ヘッドロードする場合、以下のように制御することが必要である。
【0077】
すなわち、ヘッドロード時にヘッドがロードされる領域を、保護層の厚い領域にすることが必要である。このため、回転一周に対し、保護層の厚い領域に対応してパルス1回を発生させる(インデックスパルス)。そして、このインデックスパルスに同期した形で、保護層の厚い領域にヘッドがロードされるようヘッドロードの制御を行なう。
【0078】
また、保護膜が薄い領域は、データを記録再生することが可能である。この場合、1周の間で保護層が厚い領域と薄い領域とが存在するため、特に膜厚の制御をきびしくする必要がある。
図14に示す構成を有する磁気記録媒体を用いると、その保護膜を最大限に薄く設計することができる。
【0079】
【発明の効果】
本発明の磁気記録媒体を用いると、ロード時にヘッドによる衝撃を受けても傷つき難く、エラーの少ない良好な磁気記録再生を行なうことができる。本発明の磁気記録媒体はまた、ヘッドによる衝撃を受けない領域の保護膜を薄く形成することが可能であり、ロード時にヘッドによる衝撃を受ける領域にもエラーの少ない良好な磁気記録再生を行なうことができるので、その高密度化、大容量化が可能となる。
【0080】
本発明の磁気記録再生装置を用いると、ロード時にヘッドによる衝撃を受けても傷つき難く、エラーの少ない良好な磁気記録再生を行なうことができる。また、本発明の磁気記録再生装置は、ヘッドによる衝撃を受けない領域の保護膜を薄く形成することが可能であり、ロード時にヘッドによる衝撃を受ける領域にもエラーの少ない良好な磁気記録再生を行なうことができるので、高密度で大容量の記録が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の磁気記録媒体の一例の構成を表す該略図
【図2】 本発明の磁気記録媒体の他の一例の構成を表す該略図
【図3】 本発明の磁気記録再生装置の一例を表す分解斜視図
【図4】 図3に示すキャリッジアッセンブリの斜視図
【図5】 磁気ヘッドが磁気記録再生装置の再外周に移動した状態を表す磁気記録再生装置平面図
【図6】 磁気記録再生装置の動作状態と非動作状態における磁気ヘッド及びサスペンションとランプとの配置関係を概略的に表す側面図
【図7】 本発明の磁気記録再生装置に適用可能な磁気記録媒体の第1の構成例を表す概略断面図
【図8】 保護層の厚さに応じて記録密度を変化する様子を説明するためのブロック図
【図9】 本発明の磁気記録再生装置に適用可能な磁気記録媒体の第2の構成例を表す概略断面図
【図10】 本発明の磁気記録再生装置に適用可能な磁気記録媒体の第3の構成例を表す概略断面図
【図11】 本発明の磁気記録再生装置に適用可能な磁気記録媒体の第4の構成例を表す概略断面図
【図12】 本発明の磁気記録再生装置に適用可能な磁気記録媒体の第5の構成例を表す概略断面図
【図13】 本発明の磁気記録再生装置に適用可能な磁気記録媒体の第6の構成例を表す概略断面図
【図14】 本発明の磁気記録再生装置に適用可能な磁気記録媒体の第7の構成例を表す概略断面図
【符号の説明】
12…ケース
16…磁気ディスク
21…基板ユニット
22…キャリッジアッセンブリ
24…ボイスコイルモータ
25…ランプロード機構
26…軸受組立体
38…サスペンション
40…磁気ヘッド
101…基板
102,202,232…磁気記録層
103,113,123,133,143,153,163,203…保護層
104…第2の領域
105…第1の領域
Claims (2)
- 基板と、該基板の少なくとも一方の面に形成された磁気記録層と、該磁気記録層上に形成された保護層とを具備し、その周縁に、少なくともロード時にヘッドの浮上高が最も低くなる位置を含む第1のデータ領域、その内側に、第2のデータ領域を有する磁気記録媒体であって、
前記磁気記録層は、前記第1のデータ領域では第1の厚さ、前記第2のデータ領域では第2の厚さを有し、該第1の厚さは該第2の厚さよりも厚く、
前記保護層は、前記第1のデータ領域では第3の厚さ、前記第2のデータ領域では第4の厚さを有し、該第3の厚さは該第4の厚さよりも厚く、かつ
磁気ヘッドを用いて前記第1のデータ領域を記録再生したときの孤立波の半値幅が、前記第2のデータ領域を記録再生したときの孤立波の半値幅よりも大きいことを特徴とする磁気記録媒体。 - 基板、該基板の少なくとも一方の面に形成された磁気記録層、及び該磁気記録層上に形成された保護層とを具備し、その周縁に、少なくともロード時にヘッドの浮上高が最も低くなる位置を含む第1のデータ領域、その内側に、第2のデータ領域を有する磁気記録媒体と、
該磁気記録媒体を支持および回転駆動する駆動手段と、
該磁気記録媒体に対して情報の記録再生を行う磁気ヘッドと、
該磁気ヘッドに接続され、該第1のデータ領域と該第2のデータ領域の書き込み周波数を変更する手段と、
該磁気記録媒体に対して該磁気ヘッドを移動自在に支持したキャリッジアッセンブリと、
該キャリッジアッセンブリが非作動位置に移動した際、該キャリッジアッセンブリと係合して磁気ヘッドを該磁気記録媒体から離間した位置に支持するランプロード機構とを具備する磁気記録再生装置であって、
前記磁気記録層は、前記第1のデータ領域では第1の厚さ、前記第2のデータ領域では第2の厚さを有し、該第1の厚さは該第2の厚さよりも厚く、
前記保護層は、前記第1のデータ領域では第3の厚さ、前記第2のデータ領域では第4の厚さを有し、該第3の厚さは該第4の厚さよりも厚いことを特徴とする磁気記録再生装置。
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