JP4140242B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の制御装置に係り、特に、吸気弁または排気弁の開閉特性を可変とする可変動弁機構を備える内燃機関の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関の分野では、従来、吸気弁または排気弁の開閉特性を可変とする可変動弁機構が知られている。可変動弁機構によれば、吸気弁や排気弁の開閉特性が固定化されている場合に比して、吸気および排気に関する制御につき、高い自由度を確保することができ、内燃機関の出力特性や燃費特性を改善することができる。
【0003】
本出願人は、例えば、特願2001−81435において、可変動弁機構の機能を、電磁駆動弁を利用することで実現した内燃機関を開示している。吸気弁および排気弁を電磁駆動弁で構成する場合は、機械式の可変動弁機構が用いられる場合に比して、吸気弁および排気弁の開閉特性を、更に高い自由度で変化させることが可能となる。そこで、本出願人は、上記の出願明細書において、電磁駆動弁の開閉タイミングを制御することにより、内燃機関に吸入される空気量を制御し、もって内燃機関の出力トルクを制御する手法を提案している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
可変動弁機構を備える内燃機関では、吸気弁または排気弁の開閉タイミングを変化させることにより、出力トルクを迅速に変化させることができる。このため、内燃機関のアイドル回転数の低下が認められた場合に、それらの開閉タイミングを適切に変化させれば、即座に出力トルクを増大させることができ、その結果、エンジンストールを防止することができる。この点、可変動弁機構は、アイドル時におけるエンジンストールを防止するうえで有用な機構である。
【0005】
しかしながら、吸気弁または排気弁の開閉タイミングに応じて、迅速に吸入空気量が変化するのは、吸気管圧力がさほど低くない場合に限られる。換言すると、吸気管内部に大きな吸気負圧が生じている場合は、吸気弁または排気弁の開閉タイミングを変化させても、内燃機関の出力を大きく変化させることはできない。このため、上記出願明細書に開示される内燃機関では、仮にアイドル回転数の低下時に、その低下を補うように電磁駆動弁の開閉タイミングが変更されても、吸気管圧力が十分に低い場合には、エンジンストールが防止できない事態も生じ得る。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、機関回転数が所望の回転数より低下した場合に、吸気管圧力の高低に関わらず、その回転数を適正に所望の回転数に復帰させることのできる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、上記の目的を達成するため、内燃機関の制御装置であって、
吸気弁または排気弁の少なくとも一方の開閉特性を可変とする可変動弁機構と、
吸気通路を流れる吸入空気量を制御する吸気制御機構と、
吸気管圧力が所定圧力以下であるか否かを判別する圧力判別手段と、
吸気管圧力が前記所定圧力より高い環境下で機関回転数が第1判定値より低下した場合に、内燃機関のトルクが上昇するように前記可変動弁機構を制御する可変動弁機構制御手段と、
吸気管圧力が前記所定圧力以下である環境下で機関回転数が第2判定値より低下した場合に、前記吸入空気量が増加するように前記吸気制御機構を制御する吸気制御機構制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の内燃機関の制御装置であって、前記第2判定値は、前記第1判定回値に比して高い値であることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の内燃機関の制御装置であって、
機関回転数を目標回転数に復帰させるために必要なトルク補正量を算出するトルク補正量算出手段を備え、
前記可変動弁機構制御手段は、内燃機関のトルクが前記トルク補正量だけ増加するように前記可変動弁機構の制御を実行し、
前記吸気制御機構制御手段は、内燃機関のトルクが前記トルク補正量だけ増加するように前記吸気制御機構の制御を実行し、
前記可変動弁機構制御手段、或いは前記吸気制御機構制御手段により内燃機関のトルク上昇が図られた後に、機関回転数の変化を検出する回転数変化検出手段と、
前記回転数変化検出手段により検出された変化が目標の変化に近づくように、前記トルク補正量を学習する学習手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3の何れか1項記載の内燃機関の制御装置であって、
前記可変動弁機構は、一部の気筒に設けられた吸気弁および排気弁を作動させつつ、残りの気筒に設けられた吸気弁および排気弁を休止させる減筒運転に対応可能であり、
吸気管圧力が所定圧力を超える環境下で機関回転数が所望の回転数より低下した場合に、吸気弁および排気弁が作動する有効気筒を増大させる有効気筒増大手段と、
吸気管圧力が所定圧力以下である環境下で機関回転数が所望の回転数より低下した場合に、吸気弁および排気弁が作動する有効気筒を減少させる有効気筒減少手段と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4の何れか1項記載の内燃機関の制御装置であって、
前記可変動弁機構は、個々の気筒に設けられた複数の弁の一部を作動させつつ、残りの弁を休止させる減弁運転に対応可能であり、
吸気管圧力が所定圧力を超える環境下で機関回転数が所望の回転数より低下した場合に、作動すべき弁を増大させる作動弁増大手段を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至4の何れか1項記載の内燃機関の制御装置であって、
前記可変動弁機構は、内燃機関に設けられた一部の弁を作動させつつ、残りの弁を休止させる減弁運転に対応可能であり、
内燃機関の動作に伴う消費電力を補うべく、当該消費電力に応じた負荷を伴って動作するオルタネータと、
機関回転数が所望の回転数より低下した場合に、作動すべき弁を減少させる作動弁減少手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6の何れか1項記載の内燃機関の制御装置であって、
内燃機関の動作に伴う消費電力を補うべく、当該消費電力に応じた負荷を伴って動作するオルタネータと、
機関回転数が所望の回転数より低下した場合に、前記オルタネータの動作を停止させるオルタネータ停止手段と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項1乃至7の何れか1項記載の内燃機関の制御装置であって、
機関回転数が所望の回転数より低下した場合に、その低下を解消するための目標トルクを算出する目標トルク算出手段を備え、
前記可変動弁機構制御手段、および前記吸気制御機構制御手段は、前記目標トルクに基づいて、前記可変動弁機構または前記吸気制御機構を制御し、
更に、前記可変動弁機構制御手段により前記可変動弁機構が制御される場合、または前記吸気制御機構制御手段により前記吸気制御機構が制御される場合に、前記目標トルクに基づいて点火時期を設定する点火時期設定手段を備えることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1の構成を説明するための図である。本実施形態のシステムは、内燃機関10を備えている。内燃機関10には、吸気通路12および排気通路14が連通している。吸気通路12は、上流側の端部にエアフィルタ16を備えている。エアフィルタ16には、吸気温センサ18が組み付けられている。
【0017】
エアフィルタ16の下流には、エアフロメータ20が配置されている。エアフロメータ20は、吸気通路12を流れる吸入空気量Gaを検出するセンサである。エアフロメータ20の下流には、スロットルバルブ22が設けられている。スロットルバルブ22は、アクセル開度とは独立にスロットル開度を制御することのできる電子制御式スロットルバルブである。スロットルバルブ22の近傍には、スロットル開度TAを検出するスロットルセンサ24と、スロットルバルブ22が全閉となることでオンとなるアイドルスイッチ26とが配置されている。
【0018】
スロットルバルブ22の下流には、サージタンク28が設けられている。また、サージタンクの更に下流には、内燃機関10の吸気ポートに燃料を噴射するための燃料噴射弁30が配置されている。排気通路14には、触媒32が連通している。また、触媒32の上流には、排気O2センサ34が配置されている。
【0019】
内燃機関10は、吸気弁36を電磁力で駆動する吸気電磁駆動弁38、および排気弁40を電磁力で駆動する排気電磁駆動弁42を備えている。また、内燃機関10には、先端部を筒内に露出させた点火プラグ44、および機関回転数NEを検出するための回転数センサ46が組み付けられている。
【0020】
吸気電磁駆動弁38は、非通電時には吸気弁36を中立位置、すなわち、半開位置に維持し、外部から供給される駆動信号を受けて、吸気弁36を全開位置および全閉位置に移動させることができる。同様に、排気電磁駆動弁42は、非通電時には排気弁40を中立位置に維持し、外部から供給される駆動信号を受けて、排気弁40を全開位置および全閉位置に移動させることができる。
【0021】
本実施形態のシステムは、図1に示すように、ECU(Electronic Control Unit)50を備えている。ECU50には、上述した各種センサが接続されている。また、上述した燃料噴射弁30、吸気電磁駆動弁38、および排気電磁駆動弁42などは、ECU50により制御されている。更に、点火プラグ44は、ECU50により決定されたタイミングで点火の処理を行う。
【0022】
次に、図2乃至図5を参照して、本実施形態のシステムの動作を説明する。
本実施形態の内燃機関10は、既述したように吸気電磁駆動弁38および排気電磁駆動弁42を備えている。吸気電磁駆動弁38および排気電磁駆動弁42は、内燃機関10のクランク角とは無関係に、吸気弁36または排気弁40を開閉させることができる。従って、吸気電磁駆動弁38および排気電磁駆動弁42によれば、内燃機関10の運転状態に応じて吸気弁36および排気弁40の開閉タイミングを変化させる可変動弁機構としての機能を実現することができる。
【0023】
吸気電磁駆動弁38および排気電磁駆動弁42によれば、吸気弁36および排気弁40の開閉タイミングを変化させることにより、内燃機関10に吸入される空気量を実質的に変化させることができる。従って、例えば、内燃機関10のアイドル回転数が低下した場合に、吸気電磁駆動弁38および排気電磁駆動弁42を適当に制御すれば、吸入空気量GAを増やして、アイドル回転数を所望の回転数に復帰させることができる。以下、この機能を本実施形態のシステムが実現する「第1の機能」と称す。
【0024】
本実施形態の内燃機関10において、吸入空気量GAは、吸気弁36および排気弁40の開閉タイミングによって制御されると共に、スロットル開度TAによっても制御される。すなわち、吸入空気量GAは、スロットルバルブ22が大きく開いており、吸気管圧力PMが十分に高い(大気圧に近い)場合は、主として吸気弁36および排気弁40の開閉タイミングにより支配される。一方、スロットル開度TAが小さく、吸気管圧力PMが十分に低い場合には、吸気弁36および排気弁40の開閉タイミングを変化させても、吸入空気量GAに大きな変化は生じない。
【0025】
このため、アイドル回転数が低下した際に吸気管圧力PMが十分に低い場合は、吸入空気量GAを増やすことで機関回転数を上昇させるためには、吸気弁36および排気弁40の開閉タイミングを変化させるだけでは不十分であり、スロットル開度TAを大きくすることが必要である。換言すると、本実施形態のシステムでは、吸気管圧力PMが十分に低い環境下でアイドル回転数が低下した場合には、スロットル開度TAを大きくすることで吸入空気量GAを増やすことができ、その結果、アイドル回転数を所望の回転数に復帰させることができる。以下、この機能を本実施形態のシステムが実現する「第2の機能」と称す。
【0026】
図2は、ECU50が、上述した第1の機能および第2の機能を実現するために実行する出力補正制御ルーチンのフローチャートである。
図2に示すルーチンでは、先ず、吸気管圧力PMが検出される(ステップ100)。
吸気管圧力PMは、エアフロメータ20により検出される吸入空気量GAに基づいて、公知の手法で推定することができる。また、吸気管圧力PMは、吸気通路12に吸気圧センサを設けて、そのセンサにより実測することとしてもよい。
【0027】
次に、吸気管圧力PMが所定の判定圧力α(大気圧より低い所定負圧に対応)より高圧であるか否かが判別される(ステップ102)。
判定圧力αは、内燃機関10に現実に吸入される空気の量が、吸気弁36や排気弁40の開閉タイミングにより支配される吸気管圧力PMの下限値である。従って、PM>αが成立すると判別された場合は、スロットル開度TAを増やすことなく、吸気弁36および排気弁40の開閉タイミングを変化させるだけで、実質的に吸入空気量が増加させ得ると判断できる。
【0028】
図2に示すルーチンでは、上記の判別がなされた場合、次に、機関回転数NEが第1判定値NE0を下回ったか否かが判別される(ステップ104)。
第1の判定値NE0は、内燃機関10がエンジンストールに至るか否かを判定するための値(目標アイドル回転数より僅かに低い値)である。つまり、NEがNE0より小さくないと判別された場合は、その直後に内燃機関10がストールすることはないと判断できる。この場合、内燃機関10の出力(トルク)上昇を図る必要がないため、以後、速やかに今回の処理サイクルが終了される。
【0029】
一方、上記ステップ104において、NE<NE0が成立すると判別された場合は、内燃機関10がストールに至る可能性があると判断できる。この場合、次に、機関回転数NEを目標アイドル回転数に復帰させるために必要なトルク補正量が算出される(ステップ106)。
ECU50は、目標アイドル回転数に対する機関回転数NEの低下量と、機関回転数NEを目標アイドル回転数に復帰させるために必要なトルク補正量(増量量)との関係を定めたマップを記憶している。本ステップ106では、そのマップを参照してトルク補正量が算出される。
【0030】
次に、上記ステップ106で算出されたトルク補正量を実現するための補正バルブタイミング(補正VT)が設定される(ステップ108)。
図3(A)および図3(B)は、補正前後のバルブタイミングを対比して表した例である。これらの図において、Inを付して示す範囲は吸気弁36の開弁期間であり、一方、Exを付して示す範囲は排気弁40の開弁期間である。また、TDCおよびBDCは、それぞれ、ピストンの上死点(Top Dead Center)および下死点(Bottom Dead Center)である。
ECU50には、実現すべきトルク補正量と、吸気負圧PMとの関係で、吸気弁36および排気弁40のバルブタイミングを定めたマップが記憶されている。本ステップ108では、そのマップを参照することにより、上記ステップ100で検出されたPMの下で、上記ステップ106で算出されたトルク補正量を実現するためのバルブタイミングが設定される。その結果、トルク増加が求められる場合は、例えば図3(A)に示すバルブタイミングが図3(B)に示すバルブタイミングに補正される。
【0031】
図2に示すルーチンでは、補正VTの設定に続いて、補正スロットル開度(補正TA)が設定される(ステップ110)。
ECU50は、吸気弁36および排気弁40のバルブタイミングや吸気負圧PM等との関係で定めたスロットル開度のマップを記憶している。本ステップ110では、上記ステップ108で設定された補正VTに適合するように、そのマップを参照して補正TAが設定される。
【0032】
次に、補正VTおよび補正TAに対応する点火時期が設定される(ステップ112)。
点火時期は、通常、内燃機関10の負荷率(吸入空気量GA)に対して決定される。しかし、吸気弁36および排気弁40のバルブタイミングが、上記ステップ108で設定された補正VTに切り替えられる場合は、瞬時に負荷率に大きな変化が生ずる。このため、このような環境下では、負荷率に基づいて点火時期をさだめたのでは、適正な点火時期が設定されず、予定したトルク増加が実現できない事態が生じ得る。そこで、本実施形態では、補正VTが用いられる場合は、その補正VTを用いて発生させるべき目標トルクに基づいて、点火時期を設定することとした。
ECU50は、内燃機関10に発生させるべき目標トルクと、MBT(Minimum Spark Advance for Best Torque)との関係を定めたマップを記憶している。本ステップでは、そのマップを参照することでMBTが算出される。そして、そのMBTとノック限界点とが比較され、MBTがノック限界点より遅角側である場合は、そのMBTが点火時期とされる。一方、MBTがノック限界点より進角側である場合は、そのノック限界点が点火時期とされる。
【0033】
図2に示すルーチンでは、次に、上記の如く設定された補正VT、補正TAおよび点火時期を用いた補正が実行される(ステップ114)。
その結果、内燃機関10のトルクが増加し、低下した機関回転NEは、目標アイドル回転数に向けて上昇する。
【0034】
本実施形態のシステムでは、補正VT等を用いた上記補正が開始されると、次に、機関回転数NEの変化傾向が監視される(ステップ116)。
そして、その監視の結果が理想の変化傾向と比較され、前者が後者に近づくように、トルク補正量を求めるためのマップ(上記ステップ106参照)の学習が行われる(ステップ118)。
【0035】
図4は、上記の学習の内容および効果を説明するためのタイミングチャートである。
図4(A)は、学習が不十分である状況下で、上記補正の前後に機関回転数NEに現れる変化(実線)と、理想の機関回転数変化(波線)とを対比して表している。また、図4(B)は、その補正の際に用いられたトルク補正量の波形である。この例では、図4(B)に示すトルク補正量が用いられることにより、機関回転数NEが、補正の実行後、理想の変化に対して大きく上昇し過ぎている。
【0036】
この場合、上記ステップ118では、機関回転数NEの上昇傾向を緩めるべく、今回の処理サイクルで用いられたトルク補正量が小さくなるようにトルク補正量のマップが修正される。
図4(C)は、上記修正の施されたマップに従って、再び補正が実行された前後で機関回転数NEに現れる変化を示す。また、図4(D)は、その際に採用されたトルク補正量(実線)を、学習が不十分である状況下で用いられたトルク補正量(波線)と対比して表している。これらの図に示すように、本実施形態のシステムでは、補正の後に機関回転数NEが過剰な変化を示す場合は、その変化が理想の変化に近づくようにトルク補正量が修正され、その結果、補正後の機関回転数NEの変化傾向が理想の変化傾向に近づけられる。このため、本実施形態のシステムによれば、補正VTや補正TAを用いた補正を行うことで、制御上のハンチングを引き起こすことなく、迅速に機関回転数NEを目標アイドル回転数に復帰させることができる。
【0037】
本実施形態のシステムは、吸気管圧力PMが安定圧力αより高くない場合は、機関回転数NEの低下時に、スロットル開度TAの増加を伴う補正を実行する。
すなわち、図2に示すルーチンでは、上記ステップ102においてPM>αが成立しないと判別された場合は、次に機関回転数NEが第2判定値NE1より低いか否かが判別される(ステップ120)。
第2の判定値NE1は、上述した第1判定値NE0に比して大きく、吸気管圧力PMがα以下である場合に、内燃機関10がストールに至る可能性があるか否かを判定するための値である。従って、NEがNE1より小さくないと判別された場合は、内燃機関10がストールする可能性がなく、内燃機関10のトルク上昇を図る必要がないと判断できる。この場合、以後、速やかに今回の処理サイクルが終了される。
【0038】
一方、上記ステップ120において、NE<NE1が成立すると判別された場合は、機関回転数NEの変化量ΔNE(今回の処理サイクル時のNEから、前回の処理サイクル時のNEを減じた値:NE低下時には負の値となる)が、所定の判定値ΔNE0(負の値)より小さいか否かが判別される(ステップ122)。
判定値ΔNE0は、機関回転数NEの低下傾向が、エンジンストールを引き起こす程度に急激であるか否かを判断するための値である。従って、ΔNEがΔNE0より小さくないと判別された場合は、内燃機関10がストールする可能性がなく、内燃機関10のトルク上昇を図る必要がないと判断できる。この場合、以後、速やかに今回の処理サイクルが終了される。
【0039】
一方、上記ステップ122において、ΔNE<ΔNE0が成立すると判別された場合は、内燃機関10がストールに至る可能性があると判断できる。この場合、次に、上記ステップ106の場合と同様の手法で、機関回転数NEを目標アイドル回転数に復帰させるために必要なトルク補正量が算出される(ステップ124)。
【0040】
次に、上記ステップ124で算出されたトルク補正量を実現するための補正TAが設定される(ステップ126)。
ECU50には、実現すべきトルク補正量との関係で、スロットル開度TAを定めたマップが記憶されている。本ステップ126では、そのマップを参照することにより、上記ステップ124で算出されたトルク補正量を実現するための補正TAが設定される。
【0041】
図2に示すルーチンでは、補正TAの設定に続いて、補正スロットル開度(補正TA)が設定される(ステップ128)。
ECU50は、スロットル開度TAや吸気負圧PM等との関係で定めた吸気弁36および排気弁40のバルブタイミングのマップを記憶している。本ステップ128では、上記ステップ126で設定された補正TAに適合するように、そのマップを参照して補正VTが設定される。
【0042】
以後、上記ステップ126および128で設定された補正TAおよび補正VTを用いて、上述したステップ112以降の処理が実行される。その結果、スロットル開度TAの大幅な増加を伴う補正が実行される。吸気管圧力PMが判定圧力αより低い場合は、吸気弁36および排気弁40のバルブタイミングを変えるだけでは吸入空気量GAに大きな変化を発生させることができない。これに対して、本実施形態のシステムによれば、このような場合に、スロットル開度TAの大幅な増加が図られるため、吸入空気量GAを迅速に増加させることができる。このため、本実施形態のシステムによれば、吸気管圧力PMの高低に関わらず、機関回転数NEが低下した場合に、瞬時に吸入空気量を増量させることにより、そのNEを適正に目標アイドル回転数に復帰させることができる。
【0043】
ところで、本実施形態のシステムでは、既述した通り、吸気管圧力PMが高い場合(PM>αの場合)は、機関回転数NEが第1判定値NE0より低くなった時点でバルブタイミング等の補正が行われる(ステップ102,104等参照)。これに対して、吸気管圧力PMが低い場合(PM>α不成立の場合)は、ΔNEがΔNE0を下回ることを条件に、機関回転数NEが第2判定値NE1より小さくなった時点でスロットル開度等の補正が開始される(ステップ102,120,122等参照)。
【0044】
つまり、本実施形態では、吸気管圧力PMが低い場合の補正開始条件が、その値PMが高い場合の補正開始条件に比して緩やかである。このため、吸気管圧力PMが低い場合には、その圧力PMが高い場合に比して、内燃機関10のトルク上昇を図るための補正が早期に開始される。
【0045】
図5は、上記の機能により達成される効果を説明するためのタイミングチャートである。
より具体的には、図5(A)乃至図5(C)は、本実施形態において、吸気管圧力PMが判定圧力αを超える環境下で上記補正が実行された場合に、機関回転数NE、目標トルク、および吸入空気量GAに生ずる変化を説明するためのタイミングチャートである。PMがαを超える環境下では、吸気弁36および排気弁40のバルブタイミングを変化させることにより、即座に吸入空気量GAを変化させることができる。このため、このような環境下では、NEがNE0を下回った時点で目標トルクを増大させ(図5(B)参照)、かつ、バルブタイミングを補正すれば、その後速やかに吸入空気量GAが増大し始め(図5(C)参照)、その結果、速やかに機関回転数NEが目標アイドル回転数に収束する(図5(A)参照)。
【0046】
図5(D)乃至図5(F)は、PM>α不成立の環境下で、その条件が成立する時と同じタイミングでスロットル開度TAが補正された場合に、機関回転数NE、目標トルク、および吸入空気量GAに生ずる変化を説明するためのタイミングチャートである。以下、この例を「比較例」と称す。PM>αが成立しない場合、吸入空気量GAを増やすためには、スロットル開度TAを増やすことが必要である。また、スロットル開度TAを増やした後、現実に吸入空気量GAが増えるまでには、ある程度の遅延時間が存在する。このため、PMが低い場合は、比較例のようにNEがNE0を下回った時点で目標トルクを増大させたのでは(図5(B)参照)、現実に吸入空気量GAが増大し始める時点では(図5(C)参照)、機関回転数NEがNE0よりかなり小さな値となっていることがある(図5(A)参照)。この場合、内燃機関10がストールしたり、また、機関回転数NEが目標アイドル回転数に収束するまでに長い時間を要したりといった不都合が生じ易い。
【0047】
図5(G)乃至図5(I)は、本実施形態のシステムが、PM>α不成立の環境下で補正を行った場合に、機関回転数NE、目標トルク、および吸入空気量GAに生ずる変化を説明するためのタイミングチャートである。本実施形態では、既述の通り、PM>αが成立しない場合、機関回転数NEが第2判定値NE1を下回った時点で目標トルクの補正が開始される(図5(H)参照)。つまり、本実施形態のシステムでは、吸気管圧力PMがα以下である場合には、機関回転数NEがNE0に低下するに先立って目標トルクを補正して、スロットル開度TAを増やし始めることができる。その結果、機関回転数NEが目標アイドル回転数より僅かに低下した時点で、その復帰を図るべく吸入空気量GAを増大させることができる(図5(I))。このため、本実施形態のシステムによれば、PM>αが成立しない場合にも、目標アイドル回転数から低下した機関回転数NEを、迅速に目標アイドル回転数に復帰させ、また、収束させることができる。
【0048】
以上説明した通り、本実施形態のシステムによれば、機関回転数NEが目標アイドル回転数より低下した場合に、吸気管圧力PMの高低に関わらず、その回転数NEを迅速かつ適正に目標アイドル回転数に復帰させることができる。
【0049】
ところで、本実施形態のシステムでは、個々の気筒に配置されている複数の弁のうち、一部を作動させつつ、他を休止させておくことができる。より具体的には、例えば、個々の気筒に配置される2つの吸気弁36のうち、一方を作動状態とし、他方を休止状態に維持することができる。上記ステップ108の説明では、補正VTを設定する際に、作動弁数を考慮することには言及していないが、本実施形態では、補正VTを設定する際に、個々の気筒における作動弁数を考慮することとしてもよい。
【0050】
図6は、作動弁数を考慮して吸気弁36の補正VTを設定する手法の1例を説明するための図である。より具体的には、図6(A)は、補正が施される前の吸気弁36の開弁期間を表す図である。また、図6(B)は、補正後に作動させるべき吸気弁36が1弁である場合の補正VTを示し、一方、図6(C)は、補正後に作動させるべき吸気弁36が2弁である場合の補正VTを示す。これらの図では、作動弁が1弁である場合は、開弁期間(作用角)が130°CA(Crank Angle)とされるのに対して、作動弁が2弁である場合は、開弁期間が110°CAとされている。
【0051】
このように、作動弁が1弁である場合に、作動弁が2弁である場合に比して、吸気弁36の開弁期間を長くすると、作動弁の数に応じて吸入空気量GAの増量分に差が生ずるのを防ぐことができる。このため、このような補正VT設定方法によれば、制御上のハンチングを生じさせることなく、機関回転数Neを安定に制御することができる。
【0052】
また、上述した実施の形態1では、吸気通路12に流れ込む空気量を制御する機構として、つまり、吸気管圧力PMを制御する機構としてスロットルバルブ22を備えているが、その機構はスロットルバルブ22に限定されるものではない。すなわち、吸気通路に流れ込む空気量を制御する機構は、アイドルスピードコントロールバルブ(ISCV)であってもよい。
【0053】
また、上述した実施の形態1では、吸気管負圧PMが高い場合には主としてバルブタイミングにより内燃機関10の出力を補正し、一方、吸気管負圧PMが低い場合には主としてスロットル開度TAでその出力を補正する機能を、吸気電磁駆動弁38および排気電磁駆動弁42との組み合わせで実現することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、上記の機能は、機械式の可変動弁機構との組み合わせで実現することとしてもよい。
【0054】
尚、上述した実施の形態1においては、吸気電磁駆動弁38および排気電磁駆動弁42が前記請求項1記載の「可変動弁機構」に、スロットルバルブ22が前記請求項1記載の「吸気制御機構」に、それぞれ相当していると共に、ECU50が、上記ステップ108および128の処理を実行することにより前記請求項1記載の「可変動弁機構制御手段」が、上記ステップ126の処理を実行することにより前記請求項1記載の「吸気制御機構制御手段」が、それぞれ実現されている。また、 ECU 50が上記ステップ102の処理を実行することにより前記請求項1記載の「圧力判別手段」が実現されている。
【0055】
また、上述した実施の形態1においては、ECU50が、上記ステップ116の処理を実行することにより前記請求項3記載の「回転数変化検出手段」が、上記ステップ118の処理を実行することにより前記請求項3記載の「学習手段」が、それぞれ実現されている。また、 ECU 50が上記ステップ106及び124の処理を実行することにより前記請求項3記載の「トルク補正量算出手段」が実現されている。
【0056】
実施の形態2.
次に、図7を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
本実施形態のシステムは、実施の形態1の装置において、ECU50に、上記図2に示すルーチンに変えて図7に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。
【0057】
図7は、本実施形態において、ECU50が、機関回転数NEの低下時に内燃機関10の出力上昇を図るべく実行する出力補正ルーチンのフローチャートである。図7に示すルーチンは、ステップ104と106の間にステップ130および132が挿入されている点、およびステップ122と124の間にステップ134および136が挿入されている点を除き、図2に示すルーチンと同様である。以下、図7において、図2に示すステップと同様のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0058】
すなわち、図7に示すルーチンでは、ステップ104において機関回転数NEの低下が判別された場合に、より具体的には、吸気管圧力PMがαを超える環境下でNEがNE0まで低下した場合に、減筒運転中であるか否かが判別される(ステップ130)。
本実施形態において、内燃機関10は、一部の気筒だけに仕事を実行させ、他の気筒には何ら仕事を実行させないモードでの運転、すなわち、減筒運転を行うことができる。本ステップ130では、その減筒運転が行われているか否かが判別される。
【0059】
上記ステップ130において、減筒運転が実行されていると判別された場合は、仕事を実行する気筒、すなわち有効気筒を増加させる処理が実行される(ステップ132)。
一方、減筒運転が実行されていないと判別された場合は、有効気筒を増やすことができないため、上記ステップ132の処理はジャンプされる。
以後、実施の形態1の場合と同様に、ステップ106以降の処理が実行される。
【0060】
吸気管圧力PMが判定圧力αを超えている場合は、有効気筒を増やしても、個々の有効気筒が吸入することのできる空気量に大きな減少は生じない。このため、このような場合には、有効気筒を増やすことにより、個々の気筒が発する出力を減らすことなく、出力を発する気筒数を増やすことができ、結果的に内燃機関10の総出力を増やすことができる。このため、本実施形態のシステムによれば、減筒運転中に機関回転数NEが減少した場合に、その機関回転数NEを、速やかに上昇させることができる。
【0061】
また、図7に示すルーチンでは、ステップ120および122の処理により機関回転数NEの低下が判別された場合に、より具体的には、吸気管圧力PMがα以下である環境下で、NEがNE1まで急激に低下した場合に、有効気筒の削減、すなわち、減筒が可能であるか否かが判別される(ステップ134)。
【0062】
その結果、減筒が可能であると判別された場合は、有効気筒を減少させる処理が実行される(ステップ136)。
一方、減筒が可能ではないと判別された場合は、有効気筒を減らすことができないため、上記ステップ136の処理はジャンプされる。
以後、実施の形態1の場合と同様に、ステップ124以降の処理が実行される。
【0063】
吸気管圧力PMが判定圧力α以下である場合、すなわち、吸気管圧力PMが十分に低圧である場合は、有効気筒を減らすことにより、個々の有効気筒が吸入することのできる空気量を増やすことができる。一方、このような状況下で有効気筒を増やすと、個々の有効気筒の吸入空気量が更に減少して、エンジンストールに至ることがある。このため、このような場合には、有効気筒を減らして機関回転数NEを瞬間的に上昇させることが、NEを目標アイドル回転数に復帰させるうえで有効である。
【0064】
本実施形態のシステムでは、既述の通り、吸気管圧力PMが低い場合は、機関回転数NEの低下に合わせて有効気筒の減筒が図られる。このため、本実施形態のシステムによれば、このような場合にも、低下した機関回転数NEを速やかに上昇させることができる。
【0065】
尚、上述した実施の形態2においては、ECU50が、上記ステップ132の処理を実行することにより前記請求項4記載の「有効気筒増大手段」が、上記ステップ136の処理を実行することにより前記請求項4記載の「有効気筒減少手段」が、それぞれ実現されている。
【0066】
実施の形態3.
次に、図8を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。
本実施形態のシステムは、実施の形態1の装置において、ECU50に、上記図2に示すルーチンに変えて図8に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。但し、本実施形態のシステムは、図1に示す構成要素に加えて、内燃機関10の動作に伴う電力消費量に応じた負荷を伴って動作するオルタネータを備えているものとする。
【0067】
図8は、本実施形態において、ECU50が、機関回転数NEの低下時に内燃機関10の出力上昇を図るべく実行する出力補正ルーチンのフローチャートである。図8に示すルーチンは、ステップ104と106の間にステップ140および142が挿入されている点を除き、図2に示すルーチンと同様である。以下、図8において、図2に示すステップと同様のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0068】
すなわち、図8に示すルーチンでは、ステップ104において機関回転数NEの低下が判別された場合に、より具体的には、吸気管圧力PMがαを超える環境下でNEがNE0まで低下した場合に、片弁運転中であるか否かが判別される(ステップ140)。
本実施形態において、内燃機関10は、個々の気筒に配置されている複数の吸気弁36(または排気弁40)の一部だけを作動させ、他の弁を休止状態とするモードでの運転、より具体的には、2つの吸気弁36(または排気弁40)の一方を作動させ、他方を休止状態とする片弁運転を実行することができる。本ステップ140では、その片弁運転が行われているか否かが判別される。
【0069】
上記ステップ140において、片弁運転が実行されていると判別された場合は、開閉する弁の数を増やすため、片弁運転を全弁運転に移行させる処理が実行される(ステップ142)。
一方、片弁運転が実行されていないと判別された場合は、現時点で全弁運転が実行されていると判断できる。この場合、上記ステップ142の処理はジャンプされる。
以後、実施の形態1の場合と同様に、ステップ106以降の処理が実行される。
【0070】
吸気管圧力PMが判定圧力αを超えている場合は、片弁運転から全弁運転に移行することで、個々の気筒が吸入することのできる空気量を増大させることができる。このため、このような場合には、全弁運転への移行を図ることにより、個々の気筒が発する出力を高めることができる。このため、本実施形態のシステムによれば、減筒運転中に機関回転数NEが減少した場合に、その機関回転数NEを、速やかに上昇させることができる。
【0071】
本実施形態のシステムにおいて、PM>αが成立しない場合は、片弁運転を全弁運転に切り替えても、個々の気筒に吸入される空気量に大きな変化は生じない。また、そのような切り替えが行われると、電磁駆動弁38,42の駆動に要する電力が増加し、その結果オルタネータの発電負荷が増加し、内燃機関10がよりストールし易い状態になる。このため、図8に示すルーチンでは、PM>αが成立しないと判別された場合には、NEの低下が認められても、全弁運転への移行は行わないこととしている。
【0072】
但し、本実施形態では、PM>αが不成立の場合、実施の形態1の場合と同様に、機関回転数NEが低下すると、スロットル開度TAの増加が図られる(ステップ126参照)。そして、スロットル開度TAが十分に増加された後は、片弁運転を全弁運転に移行することで、内燃機関10の総出力を増加させることができる。このため、機関回転数NEが低下した時点でPMがα以下であったとしても、その後、PMがαを超えた後は、片弁運転を全弁運転に移行させることとしてもよい。
【0073】
尚、上述した実施の形態3においては、片弁運転が前記請求項5記載の「減弁運転」に相当していると共に、ECU50が、上記ステップ142の処理を実行することにより、前記請求項5記載の「作動弁増大手段」が実現されている。
【0074】
実施の形態4.
次に、図9を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。
本実施形態のシステムは、実施の形態1の装置において、ECU50に、上記図2に示すルーチンに加えて、図9に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。但し、本実施形態のシステムは、図1に示す構成要素に加えて、内燃機関10の動作に伴う電力消費量に応じた負荷を伴って動作するオルタネータを備えているものとする。
【0075】
図9は、本実施形態において、ECU50が、機関回転数NEの低下時に内燃機関10の負荷低減を図るべく実行する負荷低減制御ルーチンのフローチャートである。
図9に示すルーチンでは、先ず、機関回転数NEの低下が認められるか否かが判別される(ステップ150)。
本実施形態では、例えば、機関回転数NEが第1判定値NE0より低くなった場合に、NEの低下が認識される。
【0076】
上記ステップ150において、NEの低下が認識されないと判別された場合は、以後、何ら処理が進められることなく今回のルーチンが終了される。一方、NEの低下が認識された場合は、次に、作動中の弁の減弁が可能であるか否かが判別される(ステップ152)。
本実施形態のシステムは、実施の形態3の場合と同様に、一部の気筒のみを有効気筒とする減筒運転と、全ての気筒を有効気筒とする全気筒運転とを実現することができる。また、実施の形態4の場合と同様に、個々の気筒に配された一部の弁のみを作動状態とする減弁運転(片弁運転)と、全ての弁を作動させる全弁運転とを実現することができる。本ステップ152では、減筒運転或いは減弁運転を行うことで、作動中の弁を更に減少させることが可能であるか否かが判別される。
【0077】
上記の判別の結果、減弁が可能であると判別された場合は、休止弁の数が増加される(ステップ154)。
一方、減弁が不可能であると判別された場合は、作動弁を減らすことができないため、上記ステップ154の処理がジャンプされる。
【0078】
以上説明した通り、図9に示すルーチンによれば、機関回転数NEの低下時に、可能な範囲で作動弁の数を減らすことができる。作動弁の数が減ると、内燃機関10の動作に伴う電力消費量が減少し、オルタネータの負荷が減少する。つまり、本実施形態のシステムでは、減弁が可能である場合には、機関回転数NEの低下が認められると同時に、内燃機関10の負荷を減らすことができる。このため、本実施形態のシステムによれば、機関回転数NEが目標アイドル回転数より低下した場合に、即座にその回転数NEを目標アイドル回転数に向けて上昇させることができる。
【0079】
ところで、上述した実施の形態4の装置は、機関回転数NEの低下時に作動弁の数を減らしてオルタネータの負荷を軽減させるという機能を実施の形態1の装置に組み合わせることとしているが、上記の機能は、実施の形態3の装置と組み合わせることとしてもよい。
【0080】
すなわち、実施の形態3の装置は、既述した通り、吸気管圧力PMが高い環境下で機関回転数NEの低下が認められた場合に、作動弁の数を増やして機関回転数NEの復帰を図ろうとするものである(図8参照)。本実施形態において実現される上記の機能(NE低下時に作動弁数を減らす機能)は、実施の形態3の装置によって作動弁数が増やされた後、NEが上昇してこないような場合に、その上昇を図るべくオルタネータ負荷を減らす機能として用いても良い。このような用い方によれば、現実の状態に応じて作動弁数を増減させることが可能となり、より効果的に機関回転数NEの復帰を図ることができる。
【0081】
尚、上述した実施の形態4においては、ECU50が、上記ステップ154の処理を実行することにより前記請求項6記載の「作動弁減少手段」が実現されている。
【0082】
実施の形態5.
次に、図10を参照して、本発明の実施の形態5について説明する。
本実施形態のシステムは、実施の形態1の装置において、ECU50に、上記図2に示すルーチンに加えて、図10に示すルーチンを実行させることにより実現することができる。但し、本実施形態のシステムは、図1に示す構成要素に加えて、内燃機関10の動作に伴う電力消費量に応じた負荷を伴って動作するオルタネータを備えているものとする。また、このオルタネータは、ECU50の指令に応じて無負荷状態(非発電状態)を任意に実現できるものとする。
【0083】
図10は、本実施形態において、ECU50が、機関回転数NEの低下時に内燃機関10の負荷低減を図るべく実行する負荷低減制御ルーチンのフローチャートである。
図10に示すルーチンでは、先ず、機関回転数NEの低下が認められるか否かが判別される(ステップ160)。
本実施形態では、例えば、機関回転数NEが第1判定値NE0より低くなった場合に、NEの低下が認識される。
【0084】
上記の判別の結果、NEの低下が認識されないと判別された場合は、以後、何ら処理が進められることなく今回のルーチンが終了される。一方、NEの低下が認識された場合は、次に、オルタネータが停止状態とされる(ステップ162)。
オルタネータが停止されると、内燃機関10の負荷が減少して機関回転数NEは増加する。このため、本実施形態のシステムによれば、機関回転数NEが目標アイドル回転数より低下した場合に、即座にその回転数NEを目標アイドル回転数に向けて上昇させることができる。
【0085】
尚、上述した実施の形態5においては、ECU50が上記ステップ162の処理を実行することにより前記請求項7記載の「オルタネータ停止手段」が実現されている。
【0086】
【発明の効果】
この発明は以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
請求項1記載の発明によれば、機関回転数が低下した場合に、内燃機関のトルクが上昇するように可変動弁機構が制御されると共に、吸気管圧力が低い環境下で機関回転数が低下した場合には、吸気制御機構を制御して吸入空気量を増大させること、すなわち、吸気管圧力を上昇させることができる。このため、本発明によれば、吸気管圧力の高低に関わらず、機関回転数が低下した際に、その回転数を適切に所望の回転数に復帰させることができる。
【0087】
請求項2記載の発明によれば、吸気制御機構によりトルク上昇を図る際の実行条件は、可変動弁機構によりトルク上昇を図る際の実行条件に比して緩やかに設定されている。このため、前者の応答性が、後者の応答性に比して劣っているにも関わらず、吸気制御機構によるトルク上昇を利用する場合にも、迅速に機関回転数を所望回転数に復帰させることができる。
【0088】
請求項3記載の発明によれば、可変動弁機構、或いは吸気制御機構によりトルク上昇が図られた場合に、その後の機関回転数の変化を目標の変化に近づけるための学習を行うことができる。このため、本発明によれば、機関回転数の安定性を高めることができる。
【0089】
請求項4記載の発明によれば、機関回転数が低下した際に、吸気管圧力が高い場合には、有効気筒数を増やして出力を高めることにより、機関回転数の復帰を図ることができる。また、機関回転数が低下した際に吸気管圧力が低い場合には、有効気筒数を減らして個々の有効気筒に割り当てられる吸入空気量を増やすことにより、機関回転数の復帰を図ることができる。
【0090】
請求項5記載の発明によれば、吸気管圧力が高い環境下で機関回転数が低下した場合に、作動弁の数を増やすことで総吸入空気量を増やし、もって機関回転数を所望回転数に復帰させることができる。
【0091】
請求項6記載の発明によれば、機関回転数が低下した際には、作動弁数を減らしてオルタネータの負荷を低減することにより、機関回転数を所望の回転数に復帰させることができる。
【0092】
請求項7記載の発明によれば、機関回転数が低下した際には、オルタネータを停止させることにより内燃機関の負荷を低減し、その結果として機関回転数を所望の回転数に復帰させることができる。
【0093】
請求項8記載の発明によれば、可変動弁機構または吸気制御機構によりトルクの向上が図られる場合に、その状況に応じた適切な点火時期を設定することができる。このため、本発明によれば、不適切な点火時期が用いられることにより、所望のトルク増加が生じないといった不都合が生ずるのを有効に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1の構成を説明するための図である。
【図2】 本発明の実施の形態1において実行される出力補正制御ルーチンのフローチャートである。
【図3】 本発明の実施の形態1において実行されるバルブタイミングの補正例を説明するための図である。
【図4】 本発明の実施の形態1において実行される学習の内容および効果を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】 本発明の実施の形態1のシステムが実現する効果を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】 本発明の実施の形態1において実行されるバルブタイミングの補正の変形例を説明するための図である。
【図7】 本発明の実施の形態2において実行される出力補正制御ルーチンのフローチャートである。
【図8】 本発明の実施の形態3において実行される出力補正制御ルーチンのフローチャートである。
【図9】 本発明の実施の形態4において実行される負荷低減制御ルーチンのフローチャートである。
【図10】 本発明の実施の形態5において実行される負荷低減制御ルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
10 内燃機関
12 吸気通路
14 排気通路
22 スロットルバルブ
30 燃料噴射弁
36 吸気弁
38 吸気電磁駆動弁
40 排気弁
42 排気電磁駆動弁
44 点火プラグ
46 回転数センサ
50 ECU (Electronic Control Unit)
Claims (8)
- 吸気弁または排気弁の少なくとも一方の開閉特性を可変とする可変動弁機構と、
吸気通路を流れる吸入空気量を制御する吸気制御機構と、
吸気管圧力が所定圧力以下であるか否かを判別する圧力判別手段と、
吸気管圧力が前記所定圧力より高い環境下で機関回転数が第1判定値より低下した場合に、内燃機関のトルクが上昇するように前記可変動弁機構を制御する可変動弁機構制御手段と、
吸気管圧力が前記所定圧力以下である環境下で機関回転数が第2判定値より低下した場合に、前記吸入空気量が増加するように前記吸気制御機構を制御する吸気制御機構制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 前記第2判定値は、前記第1判定回値に比して高い値であることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
- 機関回転数を目標回転数に復帰させるために必要なトルク補正量を算出するトルク補正量算出手段を備え、
前記可変動弁機構制御手段は、内燃機関のトルクが前記トルク補正量だけ増加するように前記可変動弁機構の制御を実行し、
前記吸気制御機構制御手段は、内燃機関のトルクが前記トルク補正量だけ増加するように前記吸気制御機構の制御を実行し、
前記可変動弁機構制御手段、或いは前記吸気制御機構制御手段により内燃機関のトルク上昇が図られた後に、機関回転数の変化を検出する回転数変化検出手段と、
前記回転数変化検出手段により検出された変化が目標の変化に近づくように、前記トルク補正量を学習する学習手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の制御装置。 - 前記可変動弁機構は、一部の気筒に設けられた吸気弁および排気弁を作動させつつ、残りの気筒に設けられた吸気弁および排気弁を休止させる減筒運転に対応可能であり、
吸気管圧力が所定圧力を超える環境下で機関回転数が所望の回転数より低下した場合に、吸気弁および排気弁が作動する有効気筒を増大させる有効気筒増大手段と、
吸気管圧力が所定圧力以下である環境下で機関回転数が所望の回転数より低下した場合に、吸気弁および排気弁が作動する有効気筒を減少させる有効気筒減少手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。 - 前記可変動弁機構は、個々の気筒に設けられた複数の弁の一部を作動させつつ、残りの弁を休止させる減弁運転に対応可能であり、
吸気管圧力が所定圧力を超える環境下で機関回転数が所望の回転数より低下した場合に、作動すべき弁を増大させる作動弁増大手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。 - 前記可変動弁機構は、内燃機関に設けられた一部の弁を作動させつつ、残りの弁を休止させる減弁運転に対応可能であり、
内燃機関の動作に伴う消費電力を補うべく、当該消費電力に応じた負荷を伴って動作するオルタネータと、
機関回転数が所望の回転数より低下した場合に、作動すべき弁を減少させる作動弁減少手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。 - 内燃機関の動作に伴う消費電力を補うべく、当該消費電力に応じた負荷を伴って動作するオルタネータと、
機関回転数が所望の回転数より低下した場合に、前記オルタネータの動作を停止させるオルタネータ停止手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。 - 機関回転数が所望の回転数より低下した場合に、その低下を解消するための目標トルクを算出する目標トルク算出手段を備え、
前記可変動弁機構制御手段、および前記吸気制御機構制御手段は、前記目標トルクに基づいて、前記可変動弁機構または前記吸気制御機構を制御し、
更に、前記可変動弁機構制御手段により前記可変動弁機構が制御される場合、または前記吸気制御機構制御手段により前記吸気制御機構が制御される場合に、前記目標トルクに基づいて点火時期を設定する点火時期設定手段を備えることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。
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