JP4034010B2 - 車両用蓄熱システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の暖房補助装置等に用いられる車両用蓄熱システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃エンジンを駆動源とする車両では、その車室内を暖房するために、エンジンの冷却水系統からの温水を空調ユニットのヒータコアに循環させることにより、熱交換して車室内空気を暖めるようにしている。
一方、環境保護の観点から、例えば交差点などでのアイドリング停止が課題に挙がっているが、アイドリング停止の間も十分な暖房性能を確保したいという要求がある。
【0003】
そのため、例えばエンジンの冷却水系統から空調ユニットのヒータコアにつながる管路の途中に蓄熱器を設け、走行中に高温の冷却水から蓄熱器に熱を蓄えておき、エンジンが停止して冷却水の温度が低下したときには蓄熱器から冷却水へ放熱するようにしたものが提案されている。これにより、アイドリング停止の例えば5分間程度は暖房性能を維持できるように意図したものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、車両の燃料消費性能の改善向上とともに、エンジンからの発熱が少なくなり、冷却水の温度が十分に上昇しないという状況になってきている。そのため、上述のように蓄熱器を設けただけでは十分でなく、とくに潜熱型の蓄熱器の場合には所定温度以上でないと有効に蓄熱されない。かわりに低温で必要な熱量を蓄熱するには蓄熱器の容量をとくに大きくしなければならず、車両に確保できる設置空間からみて非現実的なものとなる。
【0005】
このほか、冷却水温度を上昇させるものとして、エンジンの排気管途中に熱交換器形式の廃熱回収器を設置して、エンジンから空調機のヒータコアへ供給される冷却水をその廃熱回収器に通すようにしたものがある。
しかし、この装置ではエンジン駆動中は冷却水を加熱し水温を上昇させることができるが、エンジン停止中に暖房を行なうと、冷却水が廃熱回収器においても放熱して、急速に冷却水温度が低下してしまうという問題がある。
【0006】
したがって、本発明は、上記の問題点に鑑み、蓄熱器の容量を大きくすることなく、エンジン停止時の冷却水温度を有効に維持可能とした車両用蓄熱システムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1の本発明車両用蓄熱システムは、エンジンの冷却水系統に、廃熱回収手段と蓄熱器を備え、廃熱回収手段は、冷却水と排気ガス間で熱交換可能にエンジンの排気系統にそって設置され、廃熱回収手段で冷却水の温度を上昇させて蓄熱器で蓄熱するよう構成されており、エンジンの冷却水系統が制御バルブにより分岐された分岐流路を有し、上記廃熱回収手段と蓄熱器が分岐流路に備えられ、冷却水系統が空調ユニットのヒータコアへの空調循環路であり、分岐流路がヒータコア上流の冷却水供給路に対して並列となっており、制御バルブと蓄熱器の間に、廃熱回収手段と並列にバイパス路が設けられ、制御バルブは、暖房モード時に排気ガス温度が冷却水温度より高いときは冷却水の流れを前記分岐流路へ開き、排気ガス温度が冷却水温度以下のときには、冷却水の流れをバイパス路へ開くよう構成されているものとした。
これにより、冷却水温度が低い場合にも蓄熱器が蓄熱可能な温度までその温度が廃熱回収手段で上昇されるので、蓄熱器で効率よく蓄熱することができる。
また、制御バルブにより切り換えることにより、必要に応じて蓄熱可能となる。
さらに、空調のモードに応じて、例えば暖房時に冷却水を分岐流路に流して蓄熱し、蓄熱された熱量で、エンジン停止時にも相当時間暖房機能が維持できる。
また、排気ガス温度が冷却水温度以下のときには、冷却水の流れをバイパス路へ開き、廃熱回収手段へは流さないので、廃熱回収手段で熱を奪われることなく冷却水を蓄熱器へ通すことができる。
【0008】
請求項2の発明は、廃熱回収手段が排気管内に設置されたケーシングを備え、該ケーシングの冷却水の入口および出口が排気管外へ延びて、入口が制御バルブに接続され、出口が蓄熱器に接続されているものとした。
ケーシングが排気管内に設置されているので、ケーシングを流れる冷却水が効率よく排気ガスから熱を吸収することができる。
【0009】
請求項3の発明は、制御バルブが暖房モード時に冷却水の流れを分岐流路へ開き、冷却水温度が所定値より高くなると分岐流路を閉じるよう構成されているものとした。
これにより、冷却水温度が一定の範囲に収まるので、安定した空調が得られる。
【0010】
請求項4の発明は、排気管が分岐管に分岐され、当該分岐部には排気ガスの流れをいずれかの分岐管に切り換える切換弁が設けられ、廃熱回収手段は一方の分岐管に設置されて、切換弁は、廃熱回収手段の温度が所定値より高くなると当該廃熱回収手段が設置された分岐管を閉じるよう構成されているものとした。
廃熱回収手段の温度が所定値より高くなるとその分岐管を閉じるので、廃熱回収手段が排気ガスに曝されなくなり、廃熱回収手段の過熱が防止される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例により詳細に説明する。
図1は第1の実施例の構成を示す図である。エンジン1にはその冷却水の放熱のためラジエータ2が付設され、冷却水ポンプ3によりラジエータ2へ冷却水を循環させるようになっている。放熱循環路4にはサーモバルブ5が設けられ、エンジン始動後冷却水温度が所定値になるまではラジエータ2への流通を遮断して、速やかに暖機が行なわれるようになっている。
【0012】
サーモバルブ5からは車室内に設置された空調ユニットのヒータコア6へ冷却水を供給する第1冷却水供給路7が分岐し、第1冷却水供給路7は制御バルブ25と第2冷却水供給路8を経てヒータコアに接続している。ヒータコア6からは冷却水をエンジン1側へ戻す冷却水戻し路9が冷却水ポンプ3の入口側に接続している。
サーモバルブ5は常時冷却水を冷却水供給路7へ流すようになっており、第1、第2冷却水供給路7、8と冷却水戻し路9とでヒータコア6のための空調循環路10を形成している。
【0013】
つぎに、エンジン1の排気マニホルド11には、コンバータ12を介して排気管13が接続され、排気管13にはコンバータ12の直後に第1および第2の分岐管14、15が形成されている。
各分岐管14、15の入口には、アクチュエータ16に連結され、連動して作動する第1および第2開閉弁17、18が設けられている。第1開閉弁17が開のとき第2開閉弁18は閉じられ、第1開閉弁17が閉のとき第2開閉弁18は開となる。
【0014】
第1の分岐管14にはその内部に廃熱回収器20が設けられている。廃熱回収器20は上流側および下流側の両端に入口および出口を備えたケーシング21からなり、ケーシング21の外周面には排気ガスの流れにそう方向に延びた多数のフィン24が設けられている。
第1の分岐管14は廃熱回収器20の下流側において第2の分岐管15と合流している。
【0015】
サーモバルブ5からヒータコア6に至る第1冷却水供給路7および第2冷却水供給路の間に設けられた制御バルブ25は三方弁からなっている。制御バルブ25には管路26により廃熱回収器20が接続されている。
制御バルブ25は第1冷却水供給路7を管路26(廃熱回収器20側)と第2冷却水供給路とに切換接続するようになっており、ここでは管路26への連通状態を開、遮断状態を閉と呼ぶ。
この制御バルブ25は全開から複数段で段階的に閉じることができ、閉じるに従って第1冷却水供給路7との連通が徐々に拡大する。
【0016】
また、廃熱回収器20の出口23には管路27により潜熱型の蓄熱器30が接続され、蓄熱器30の出口32は管路28により冷却水供給路7の制御バルブ25とヒータコア6の間に接続されている。これにより、制御バルブ25から廃熱回収器20および蓄熱器30を経てヒータコア6に至る冷却水の分岐流路が形成される。
【0017】
アクチュエータ16および制御バルブ25を制御するため制御装置35が設けられており、制御装置35は、イグニッションスイッチ40のオンにより作動し、エンジン1から流出した冷却水温度(エンジン水温)Twを検出する水温センサ36、コンバータ12直後の排気ガス温度Tcを検出する排気ガス温度センサ37、廃熱回収器20の温度を検出する廃熱回収器温度センサ38、ならびに蓄熱器30の温度を検出する蓄熱器温度センサ39からの信号が入力される。
【0018】
なお、廃熱回収器温度センサ38は廃熱回収器20の出口23における水温をもって廃熱回収器温度Trとする。また、蓄熱器温度センサ39は蓄熱器30の出口32における水温をもって蓄熱器温度Tbとする。制御装置35はまた空調装置の図示しない制御部にも接続され、暖房モードであるかどうかの情報を得られるようになっている。
【0019】
図2、図3は、上記構成における制御の流れを示すフローチャートである。車両のイグニッションスイッチ40がオンされると制御が開始される。まず、ステップ101においてエンジン1が始動されると、初期設定としてステップ102で、第1開閉弁17を閉じ、第2開閉弁18を開く。これにより、排気ガスは廃熱回収器20をバイパスし、第2の分岐管15を流れることになる。
ステップ102ではまた、制御バルブ25を閉じて、冷却水が廃熱回収器20へ流れない状態とする。これにより、冷却水は廃熱回収器20と蓄熱器30をバイパスすることになる。
【0020】
ステップ103では、空調装置が暖房モードになっているかどうかを適宜の間隔でチェックする。
暖房モードになっている場合には、ステップ104に進んで、水温センサ36、排気ガス温度センサ37、廃熱回収器温度センサ38および蓄熱器温度センサ39からの信号を入力して、冷却水、排気ガス、廃熱回収器および蓄熱器の各温度データTw、Tc、Tr、Tbを求める。
【0021】
そして、ステップ105では、冷却水温度Twが蓄熱器温度Tb以上であるかどうかをチェックする。
冷却水温度Twが蓄熱器温度Tb以上であれば、ステップ106に進み、冷却水温度Twが第1の所定値T1(例えば40℃)より高いかどうかをチェックする。
冷却水温度TwがT1以下の場合には、ステップ103に戻る。
【0022】
冷却水温度TwがT1より高い場合には、ステップ107で、排気ガス温度Tcが冷却水温度Twより高いかどうかをチェックする。
排気ガス温度TcがTw以下であれば、そのままステップ103に戻る。
冷却水は廃熱回収器20を流れないので、低温の排気ガスに熱を奪われない。
【0023】
排気ガス温度TcがTwよりも大きくなると、ステップ108で、排気管13の第1開閉弁17を開いて、排気ガスを第1の分岐管14に通して廃熱回収器20に導く。
続いてステップ109では、制御バルブ25を開いてエンジン1からの冷却水を通廃熱回収器20へ通すようにする。
これにより、冷却水は廃熱回収器20において第1の分岐管14を流れる排気ガスから熱を吸収して、蓄熱器30に蓄熱される。
【0024】
一方、ステップ105のチェックにおいて冷却水温度Twが蓄熱器温度Tbより低いときには、ステップ110に進み、冷却水温度Twが第1の所定値T1より高いかどうかをチェックする。
冷却水温度TwがT1より高い場合は、ステップ111で、排気ガス温度Tcが冷却水温度Twより高いかどうかをチェックする。
【0025】
排気ガス温度TcがTw以下であれば、ステップ109へ進んで制御バルブ25を開く。
これにより、冷却水は蓄熱器30で加熱される。
排気ガス温度TcがTwよりも大きくなると、ステップ108へ進んで排気管の第1開閉弁17を開き、続いてステップ109で制御バルブ25を開く。
【0026】
一方、ステップ110のチェックにおいて冷却水温度TwがT1以下の場合には、ステップ109へ進む。
【0027】
ステップ109の次に、ステップ112では、冷却水温度Twが第2の所定値T2(例えば80℃)よりも低いかどうかをチェックする。
冷却水温度TwがT2よりも低いときは、ステップ113において、廃熱回収器温度Trが第3の所定値T3(例えば80℃)より低いかどうかをチェックする。
【0028】
廃熱回収器温度TrがT3より低いときは、ステップ114に進んで、交差点でのアイドリング停止など、エンジン1が停止されたかどうかをチェックする。
エンジン1が回転中であれば、ステップ103へ戻り、暖房モードが継続されていれば上記のフローを繰り返す。
【0029】
この間、冷却水温度が上昇して、ステップ112のチェックにおいて冷却水温度TwがT2以上となったときには、ステップ115で、制御バルブ25を1段階だけ閉じてステップ103へ戻る。
こうして、制御バルブ25は冷却水温度TwがT2より低くなるまで段階的に閉じられる。
【0030】
一方、制御バルブ25が開いている間に、廃熱回収器20の過熱により、ステップ113のチェックにおいて廃熱回収器温度TrがT3以上となったときには、ステップ116に進み、排気管の第1開閉弁17を閉じて、ステップ103へ戻る。
【0031】
つぎに、ステップ114のチェックにおいてエンジン1が停止された場合には、ステップ117に進み、排気管の第1開閉弁17を閉じる。
そして、ステップ118でイグニッション40がオフされれば、制御が終了する。
一方、イグニッション40がオン状態であれば、ステップ119でエンジン1が再始動されたかどうかをチェックし、始動された場合にはステップ103へ戻る。
【0032】
なお、ステップ115、116の実行後はいずれもエンジン再始動時と同様にステップ103へ戻るので、制御の途中で非暖房モードになったときにはステップ103からステップ102へ移って、第1開閉弁および制御バルブが閉じられる。
【0033】
本実施例は以上のように構成され、長時間駐車の後に車両運行を開始する場合には、エンジン1が始動されると、まず、ステップ102で排気管の第1開閉弁17を閉じて排気ガスは廃熱回収器20をバイパスさせるとともに、制御バルブ25を閉じて冷却水は廃熱回収器20、蓄熱器30をバイパスさせて第1冷却水供給路7から第1冷却水供給路8のみを流れるように初期設定される。
これにより、冷却水は廃熱回収器20で低温の排気ガスに曝されることなく、暖機が始まる。
【0034】
まず、長時間駐車駐車で蓄熱器30が放熱しきった状態では、ステップ105から106へ進み、冷却水温度が低い間は冷却水自体が廃熱回収器20や蓄熱器30で放熱しないよう、初期設定のまま暖機が続けられる。
【0035】
そして暖房モードにおいて、冷却水温度が上昇してT1に達し、しかも排気ガス温度が冷却水温度より高くなると、ステップ108、109で第1開閉弁17を開くとともに制御バルブ25を開いて、冷却水を廃熱回収器20で加熱して蓄熱器30に蓄熱しながら、空調ユニットのヒータコア6に循環させる。
なお、排気ガス温度が冷却水温度以下であれば、冷却水が廃熱回収器20で放熱することになるので、第1開閉弁17は閉じたままステップ107からステップ109へ進み制御バルブ25を開いて、蓄熱器30に蓄熱する。
【0036】
一方、蓄熱器30に残存熱量があり蓄熱器温度が冷却水温度より高い状態でスタートした場合には、ステップ105から110へ進み、冷却水温度が低い間は直接ステップ109で制御バルブ25を開くことにより、蓄熱器30で加熱され、暖機が促進される。
さらに、排気ガス温度が冷却水温度以下のときも、ステップ109で制御バルブ25のみを開いて、蓄熱器30により温度を高く保持される。
【0037】
冷却水温度が上昇してT1に達し、しかも排気ガス温度が冷却水温度より高くなると、ステップ108、109で第1開閉弁17を開くとともに制御バルブ25を開いて、今度は、冷却水を廃熱回収器20で加熱して蓄熱器30に蓄熱しながら、空調ユニットのヒータコア6に循環させる。
【0038】
その後、冷却水温度が上昇してT2以上となると、ステップ115で制御バルブ25を段階的に閉じて、冷却水温度が高温になり過ぎないように温度調節を行う。
【0039】
一方、冷却水を廃熱回収器20で加熱している間、廃熱回収器20の温度が所定値T3以上となった場合には、廃熱回収器20に対する過負荷となるから、ステップ116で第1開閉弁17を閉じて、廃熱回収器20側への排気ガスの供給を停止する。
【0040】
また、例えば交差点でアイドリング停止した場合には、まずステップ117で第1開閉弁17を閉じて、エンジン1の再始動を待つ。
この間は、制御バルブ25は閉じておらず、アイドリング停止中も蓄熱器30からの高温冷却水により相当時間にわたって暖房性能が維持される。
そして、第1開閉弁17が閉じられているので、再始動したときに低温の排気ガスが第1の分岐管14に流入するのが阻止され、冷却水が廃熱回収器20において熱を奪われることがない。
なお、エンジン停止に引き続いてイグニッション40がオフされたときには、制御も終了する。
【0041】
本実施例によれば、蓄熱器30と排気ガスの廃熱回収器20とを組み合わせたことにより、冷却水温度が低くても効率よく、比較的小容量の蓄熱器で高い熱量を蓄熱でき、エンジン停止時でも冷却水温度を有効に維持して十分な暖房性能を確保することができるとともに、再始動の際にもその蓄熱による暖かい冷却水によってエンジンが速やかに暖められ、良好な立ち上がり特性を得ることができるという効果を有する。
【0042】
図4は走行とアイドリング停止を交互に繰り返した際の冷却水の変化を模式的に示す図である。
走行を開始すると冷却水温度が上昇するが、廃熱回収器を備えない場合には冷却水の温度は破線で示す高さまでしか上昇せず、潜熱型の蓄熱器に対して蓄熱可能の高さに足りない。これに対して、本実施例では廃熱回収器において冷却水を加熱して温度を実線位置まで上昇させているので、効率よく蓄熱される。
【0043】
また、アイドリング停止時の冷却水温度も、蓄熱器があっても破線の高さからは短時間に低下してしまうので、アイドリング停止期間の途中で暖房機能が失われてしまうが、実施例では蓄熱器が十分機能して実線の高さから緩やかに低下し、アイドリング停止の期間にわたって暖房機能を維持するに必要な温度を保持することができる。
【0044】
図5は第2の実施例を示す図である。これは、前実施例における三方弁の制御バルブ25のかわりに、四方弁の制御バルブ45を用い、蓄熱器30と制御バルブ45の間に廃熱回収器20をスキップするバイパス路47を設けたものである。
【0045】
制御バルブ45は、第1冷却水供給路7を管路26(廃熱回収器20側)とバイパス路47と第2冷却水供給路とに切換接続するようになっており、ここでは管路26への連通状態を「制御バルブの開」、閉遮断状態を「制御バルブの閉」と呼び、バイパス路47との連通を「バイパス路の開」と呼ぶ。
この制御バルブ45は全開から複数段で段階的に閉じることができ、閉じるに従ってバイパス路47との連通が徐々に拡大する。
【0046】
図6は第2の実施例における制御の流れの要部を示す。
図示外の他のステップは図3のフローチャートと同じである。
ステップ107において、排気ガス温度Tcが冷却水温度Twより高いかどうかをチェックする。排気ガス温度TcがTwよりも大きい場合は、ステップ108、109で、排気管13の第1開閉弁17を開き、制御バルブ45を開いて、冷却水が廃熱回収器20において第1の分岐管14を流れる排気ガスから熱を吸収して、蓄熱器30に蓄熱されるようにする。
【0047】
一方、排気ガス温度TcがTw以下であれば、ステップ201に進んで、制御バルブ45を操作してバイパス路47を開く。
これにより、冷却水は廃熱回収器20を流れないので、外気温度がとくに低いときにも廃熱回収器部分で熱を奪われることなく、有効に蓄熱器30に蓄熱を行うことができる。
このあと、ステップ112へ進む。
【0048】
また、ステップ111のチェックにおいて、排気ガス温度TcがTw以下であるときも、ステップ202に進んで、バイパス路47を開くよう制御バルブ45を制御する。
これにより、冷却水は廃熱回収器部分で熱を奪われることなく蓄熱器30へ流れ、蓄熱器で加熱される。このあと、ステップ112へ進む。
その他の構成は、第1の実施例と同じである。
【0049】
本実施例によれば、第1の実施例の効果が得られるとともに、排気ガス温度Tcが冷却水温度Tw以下のときは冷却水をバイパス路47を経て蓄熱器30へ流し、廃熱回収器20を通過しないようにしたので、廃熱回収器部分で冷却水が熱を奪われず、蓄熱器30へ蓄熱する場合、および蓄熱器30から放熱(冷却水加熱)する場合のいずれにおいても、冷却水および蓄熱器の保有する熱がきわめて有効に生かされるという効果を有している。
【0050】
なお、各実施例では廃熱回収手段としてフィンを備えたケーシングを排気管内に設置した廃熱回収器を用いたが、これに限定されず、任意の形式で排気ガスの熱を吸収できるものであればよい。
また、排気管の分岐管を切り換える切換弁として、第1および第2開閉弁を用いているが、これも分岐部分において1つの弁で切り換えることもできる。
さらに、制御の基準値としての温度T1、T2、T3の値も、例示値に限定されず、エンジンやラジエータの性能、蓄熱器、廃熱回収器の仕様その他システムの特性に対応させて設定される。
【0051】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明は、エンジンの冷却水系統に、蓄熱器と排気ガスから熱を吸収する廃熱回収手段とを備え、廃熱回収手段で冷却水の温度を上昇させて蓄熱器で蓄熱するよう構成したので、冷却水温度が低い場合にも蓄熱器が蓄熱可能な温度まで上昇させることができ、蓄熱器の容量を大きくすることなく効率よく蓄熱することができるという効果を有する。したがってまた、エンジン停止の間も冷却水温度を長く維持することができる。
【0052】
なお、上記エンジンの冷却水系統は制御バルブにより分岐された分岐流路を有するものとし、廃熱回収手段と蓄熱器を分岐流路に備えることにより、必要に応じて制御バルブで蓄熱状態を切り換えることができる。
【0053】
また、冷却水系統が空調ユニットのヒータコアへの空調循環路で、分岐流路をヒータコア上流の冷却水供給路に対して並列とすることにより、空調のモードに応じて、例えばエンジン停止時にも相当時間暖房機能を維持することができる。
【0054】
さらに、暖房モード時に制御バルブが冷却水の流れを分岐流路へ開き、冷却水温度が所定値より高くなると分岐流路を閉じるよう制御することにより、冷却水温度が一定の範囲に収まり、安定した空調が得られる。
【0055】
そしてまた、排気管を分岐して廃熱回収手段を一方の分岐管に設置し、排気ガスの流れをいずれかの分岐管に切り換える切換弁を設けて、廃熱回収手段の温度が所定値より高くなると当該廃熱回収手段が設置された分岐管を閉じるよう制御することにより、廃熱回収手段の過熱が防止される。
【0056】
さらに、制御バルブと蓄熱器の間に、廃熱回収手段と並列にバイパス路を設け、制御バルブを、暖房モード時に排気ガス温度が冷却水温度より高いときは冷却水の流れを前記分岐流路へ開き、排気ガス温度が冷却水温度以下のときには、冷却水の流れをバイパス路へ開くよう制御することにより、排気ガス温度が冷却水温度以下のときには、廃熱回収手段で熱を奪われることなく冷却水を蓄熱器へ通すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の構成を示す図である。
【図2】実施例における制御の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施例における制御の流れを示すフローチャートである。
【図4】走行とアイドリング停止を交互に繰り返した際の冷却水の変化を示す図である。
【図5】第2の実施例の構成を示す図である。
【図6】第2の実施例における制御の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
2 ラジエータ
3 冷却水ポンプ
4 放熱循環路
5 サーモバルブ
6 ヒータコア
7 第1冷却水供給路
8 第2冷却水供給路
9 冷却水戻し路
10 空調循環路
11 排気マニホルド
12 コンバータ
13 排気管
14 第1の分岐管
15 第2の分岐管
16 アクチュエータ
17 第1開閉弁
18 第2開閉弁
20 廃熱回収器
21 ケーシング
24 フィン
25、45 制御バルブ
26、27、28 管路
30 蓄熱器
35 制御装置
36 水温センサ
37 排気ガス温度センサ
38 廃熱回収器温度センサ
39 蓄熱器温度センサ
40 イグニッションスイッチ
47 バイパス路
Claims (4)
- エンジンの冷却水系統(10)に、廃熱回収手段(20)と蓄熱器(30)を備え、前記廃熱回収手段は、冷却水と排気ガス間で熱交換可能にエンジンの排気系統(13)にそって設置され、前記廃熱回収手段で冷却水の温度を上昇させて前記蓄熱器で蓄熱するよう構成されており、
前記エンジンの冷却水系統(10)が制御バルブ(25、45)により分岐された分岐流路(26、27)を有し、前記廃熱回収手段(20)と蓄熱器(30)は前記分岐流路に備えられており、
前記冷却水系統は空調ユニットのヒータコア(6)への空調循環路(10)であり、前記分岐流路(26、27)は、ヒータコア上流の冷却水供給路(8)に対して並列となっており、
前記制御バルブ(45)と蓄熱器(30)の間に、前記廃熱回収手段(20)と並列にバイパス路(47)が設けられ、前記制御バルブは、暖房モード時に排気ガス温度が冷却水温度より高いときは冷却水の流れを前記分岐流路(26、27)へ開き、排気ガス温度が冷却水温度以下のときには、冷却水の流れを前記バイパス路へ開くよう構成されていることを特徴とする車両用蓄熱システム。 - 前記廃熱回収手段(20)は、排気管(13)内に設置されたケーシング(21)を備え、該ケーシングの冷却水の入口および出口が排気管外へ延びて、入口が前記制御バルブ(25、45)に接続され、出口が前記蓄熱器(30)に接続されているものであることを特徴とする請求項1記載の車両用蓄熱システム。
- 前記制御バルブ(25、45)は、暖房モード時に冷却水の流れを前記分岐流路(26、27)へ開き、冷却水温度が所定値より高くなると分岐流路を閉じるよう構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の車両用蓄熱システム。
- 前記排気管(13)は分岐管(14、15)に分岐され、当該分岐部には排気ガスの流れをいずれかの分岐管に切り換える切換弁(17、18)が設けられ、前記廃熱回収手段(20)は一方の分岐管(14)に設置されて、前記切換弁は、廃熱回収手段の温度が所定値より高くなると当該廃熱回収手段が設置された分岐管を閉じるよう構成されていることを特徴とする請求項2または3記載の車両用蓄熱システム。
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