JP4033732B2 - 水性分散液および接着剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、不飽和カルボン酸含有量の低いポリオレフィン樹脂と粘着付与成分とを含有する水性分散液、これを含有する接着剤、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィン樹脂は、様々な材料に対する良好な熱接着性を有していることから、ヒートシール剤、ディレードタック剤、繊維処理剤、及び接着剤用バインダー等の幅広い用途に用いられている。中でも、不飽和カルボン酸が0.5質量%未満程度の比較的含有率の低いポリオレフィン樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)などの極性の低い樹脂材料に対する接着性やヒートシール性に優れている。
【0003】
上記のような不飽和カルボン酸含有量の低い樹脂は、作業性や環境の観点から水性分散体として利用されており、例えば、特開昭57−195759号公報、特開昭62−252478号公報、特開平5−163420号公報、特開平7−82423号公報、特開平9−296081号公報、特開平7−19699号公報、特開平9−296081号公報等に開示されている。しかし、上記の水性分散体は乳化剤(界面活性剤)や保護コロイド等を用いて水性化したものであったため、塗膜の接着性、ヒートシール性、耐水性等が十分ではなく、また、こうした成分が塗膜からブリードアウトする恐れがあるために環境的、衛生的にも好ましくなかった。さらに、ポリオレフィン樹脂の融点以下の低い温度で塗膜を形成しようとすると白化が起こり、透明で均一な膜が形成できず、接着性や耐水性が維持できないという問題も有していた。一方、こうした問題を解決する水性分散体として、WO02/055598には、乳化剤等を含有しない、樹脂分散粒子径が0.1μm以下の水性分散体が開示されている。しかし、この分散体においても、低極性材料に対する接着性は十分とは言えなかった。
【0004】
また、種々の樹脂材料に粘着性を付与するための添加剤として、ロジン類に代表される多くの樹脂が知られているが、前記した樹脂分散粒子径の小さいポリオレフィン樹脂の水性分散体と混合した際の物性は全く知られていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記のような問題に対して、低極性材料への接着性とヒートシール性が著しく改善され、かつ低温において造膜可能で、耐水性、耐アルカリ性に優れる水性分散体を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定組成のポリオレフィン樹脂、及び粘着付与成分を特定の割合で含有させ、樹脂の粒子径を特定範囲とした水性分散液は、低極性材料に対する接着性が付与されると同時に、低温における膜形成性をも兼ね備え、さら耐水性、耐アルカリ性にも優れることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
ポリオレフィン樹脂と粘着付与成分とを含有する水性分散液であって、ポリオレフィン樹脂と粘着付与成分とが質量比97/3〜55/45の範囲であり、かつ50%数平均粒子径が0.1μm以下であり、ポリオレフィン樹脂は、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体またはエチレン−メタクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体であり、無水マレイン酸の含有量が 0.01 質量%以上、 5 質量%未満であり、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの含有量が 1 〜 45 質量%であることを特徴とする水性分散液。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂は、不飽和カルボン酸成分を0.01質量%以上、5質量%未満含有している必要があり、より好ましくは0.1質量%以上、5質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%以上、5質量%未満、最も好ましくは1〜4質量%である。不飽和カルボン酸成分の含有量が0.01質量%未満の場合は、樹脂を水性化(液状化)することが困難になり、良好な水性分散体を得ることが難しい。一方、不飽和カルボン酸成分の含有量が5質量%を超えた場合は、水性化はし易くなるが、極性の低い材料との接着性やヒートシール性が低下してしまう恐れがある。不飽和カルボン酸成分としては、分子内(モノマー単位内)に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。また不飽和カルボン酸成分は、ポリオレフィン樹脂中に共重合されていれば良く、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
【0008】
また、ポリオレフィン樹脂を構成するオレフィン成分としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のオレフィン化合物が挙げられ、好ましくは、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、特に好ましくはエチレンである。これらの含有量としては、ポリオレフィン樹脂の55質量%以上が好ましく、さらに好ましくは65質量%以上である。
【0009】
ポリオレフィン樹脂を構成するその他の成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類ならびにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、などが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。この中で、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルがより好ましく、(メタ)アクリル酸メチルあるいは(メタ)アクリル酸エチルが特に好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を指す。
【0010】
本発明に用いるポリオレフィン樹脂の具体例としては、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体またはエチレン−メタクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体が最も好ましい。(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、1〜45質量%が好ましく、接着性やヒートシール性の点から、2〜35質量%がより好ましく、3〜30質量%がさらに好ましく、5〜25質量%が特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステルのエステル部は、メチルまたはエチルが好ましい。なお、三元共重合体の共重合の形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
ここで、(メタ)アクリル酸エステル単位は、後述する樹脂の水性化の際に、エステル結合のごく一部が加水分解してアクリル酸単位に変化することがあるが、そのような場合には、それらの変化を加味した各構成成分の比率が規定の範囲にあればよい。
【0011】
なお、ポリオレフィン樹脂を構成する無水マレイン酸単位等の不飽和カルボン酸無水物単位は、樹脂の乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した酸無水物構造を形成しているが、特に塩基性化合物を含有する水性媒体中では、その一部、または全部が開環してカルボン酸、あるいはその塩の構造を取りやすくなる。
【0012】
また、ポリオレフィン樹脂には、その他のモノマーが、少量、共重合されていても良い。例えば、ジエン類、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二硫化硫黄等が挙げられる。
【0013】
本発明に用いるポリオレフィン樹脂は、分子量の目安となる190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.01〜500g/10分のものが好ましく、より好ましくは0.1〜300g/10分、さらに好ましくは0.1〜250g/10分である。ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが0.01g/10分未満では、樹脂の水性化は困難になり、良好な水性分散体を得ることが難しい。一方、ポリオレフィン樹脂のメルトフローレートが500g/10分を超えると、得られる塗膜は、硬くてもろくなり、接着性やヒートシール性が低下する。
【0014】
ポリオレフィン樹脂の合成法は特に限定されず、例えば、ポリオレフィン樹脂を構成するモノマーをラジカル発生剤の存在下、高圧ラジカル共重合して得られる。不飽和カルボン酸、あるいはその無水物はグラフト共重合(グラフト変性)されていても良い。
【0015】
次に、本発明で用いられる粘着付与成分としては、ロジン類、テルペン類、石油樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂から選ばれる少なくとも1種の成分を用いることができる。ロジン類としては、重合ロジン、不均化ロジン、水素添加ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン、及びこれらのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、エチレングリコールエステル、ジエチレングリコールエステル、トリエチレングリコールエステルなどが挙げられる。テルペン類としては、低重合テルペン系、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、テルペンフェノール系、芳香族変性テルペン系、水素添加テルペンなど挙げられる。石油樹脂としては、炭素数5個の石油留分を重合した石油樹脂、炭素数9個の石油留分を重合した石油樹脂、及びこれらを水素添加した石油樹脂、マレイン酸変性、フタル酸変性した石油樹脂などが挙げられる。この中でも、PPへの接着性の点からテルペン系樹脂が好ましく、中でも芳香族変性テルペン系樹脂が特に好ましい。
【0016】
上記の粘着付与成分は、JIS K5903に記載の方法で測定した環球法軟化点が80〜180℃であることが造膜性や接着性の点から好ましく、80〜160℃であることがより好ましい。また、粘着付与成分は、取扱い上、水性分散体で用いることが好ましい。その数平均粒子径は、通常、0.05〜3μmである。
【0017】
本発明の水性分散液においては、水性媒液中に前記ポリオレフィン樹脂と粘着付与成分とを含有し、ポリオレフィン樹脂と粘着付与成分とが質量比97/3〜55/45の範囲とする必要がある。ここで、水性媒体とは、水を主成分とする媒体であり、後述する水溶性の有機溶剤や塩基性化合物を含有していてもよい。粘着付与成分の量が3質量%未満では各基材との接着性やヒートシール性の向上の程度が小さい。また45質量%を超えると、低温での造膜性、耐水性などが悪化したり、各基材に対するとの接着性やヒートシール性が低下する。この比率は、低温での造膜性、耐水性、各基材との接着性やヒートシール性などの性能の点から95/5〜60/40が好ましく、95/5〜65/35がより好ましく、93/7〜70/30がさらに好ましく、93/7〜75/25が特に好ましい。
【0018】
また、水性分散液中のポリオレフィン樹脂と粘着付与成分の50%数平均粒子径は、0.1μm 以下とする必要がある。50%数平均粒子径が0.1μmを超えると、低温(ここではポリオレフィン樹脂の融点以下、60℃程度の温度を指す。)で膜形成をおこなう際に塗膜が白化して、透明な塗膜を形成できない。この場合、性能面で塗膜の耐水性や接着性が著しく悪化し、塗膜中で各樹脂粒子が一体化していないことを示唆している。上記した低温での造膜性の点から、50%数平均粒子径は0.09μm以下が好ましく、0.08μm以下がより好ましく、0.07μm以下がさらに好ましい。また、50%体積平均粒子径は、0.4μm以下が好ましく、0.3μm以下がより好ましく、0.2μm以下がさらに好ましい。
【0019】
このように、水性分散液の50%数平均粒子径を特定の0.1μm以下とした場合には、驚くべきことに、粘着付与成分という全く造膜性を有さない異質な成分を混合しているにもかかわらず、分散粒子径の小さいポリオレフィン樹脂水性分散体が単体として有している優れた低温造膜性(前記した低温で透明な塗膜が形成される特性)が全く損なわれずに保持され、透明性の高い塗膜を形成することができる。このため、耐水性や耐アルカリ性の低下も起こらない。詳細な理由は不明であるが、これは比較的分散粒径の小さいポリオレフィン樹脂と、粒径の大きい粘着付与成分とが混合されることにより、粒径の異なる粒子同士が密に充填しながら膜を形成するためであると推測される。さらに、この粒子径の範囲では、PPやPETなどの低極性材料との接着性も顕著に向上する。このように、ポリオレフィン樹脂と粘着付与成分が特定の比率で混合され、特定の粒子径範囲とした場合にのみ、ポリオレフィン樹脂水性分散体と粘着付与成分のそれぞれの特長が活かされた、優れた性能を有する水性分散液が得られる。
【0020】
本発明の水性分散液には、接着性やヒートシール性をさらに向上させる目的で、ポリオレフィンワックス、塩素化ポリプロピレン、ポリウレタンから選ばれる少なくとも1種の化合物を、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、1〜50質量部添加することができる。添加量と効果の点から、3〜40質量部添加することがより好ましく、5〜30質量部添加することが特に好ましい。こうした成分は、水性分散体としておき、ポリオレフィン樹脂と粘着付与剤からなる水性分散体に添加、混合すればよい。その場合、通常、0.05〜3μmのものを使用することができる。
【0021】
ポリオレフィンワックスは特に限定されないが、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリプロピレンワックスやそれらのカルボキシル変性ワックス、グリコール変性酸化ポリエチレンワックス、グリコール変性酸化ポリプロピレンワックスなどが例示できる。塩素化ポリプロピレン、ポリウレタンも特に限定されない。
【0022】
また、接着性や塗膜の耐水性、耐溶剤性などの性能をさらに向上させるために、架橋剤を水性分散体中の樹脂100質量部に対して0.01〜30質量部程度添加してもよい。架橋剤としては、自己架橋性を有する架橋剤、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属等を用いることができ、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。これらの架橋剤は組み合わせて使用してもよい。
【0023】
さらに、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、紫外線吸収剤等の各種薬剤を添加して使用することができる。また、水性分散液の安定性を損なわない範囲で上記以外の有機または無機の化合物を水性分散液に添加してもよい。
【0024】
次に、本発明の水性分散液の製造方法について説明する。
本発明の水性分散液の製造方法としては、下記のようにして得られる特定分散粒子径のポリオレフィン樹脂水性分散体と粘着付与成分の水性分散体とを所定割合で混合する方法が挙げられる。水性分散液の液安定性などの点からこの方法が最も好ましい。
【0025】
ポリオレフィン樹脂の水性分散体を得るための方法としては、前述の特定組成のポリオレフィン樹脂、塩基性化合物、有機溶剤、及び水を好ましくは密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法を採用することができ、この方法が最も好ましい。なお、攪拌方法や攪拌速度は限定されるものではないが、上記方法を用いれば低速攪拌(例えば1000rpm以下)でも粒子径を微細にすることができる。この方法によれば、乳化剤や保護コロイド作用を有する化合物など一般に粒子の安定化剤として用いられる不揮発性水性化助剤を添加しなくとも特定組成のポリオレフィン樹脂を数平均粒子径0.1μm以下に安定に水性媒体中に分散することができる。
【0026】
水性化の際に用いる塩基性化合物は、塗膜形成時に揮発するアンモニアまたは有機アミン化合物が好ましく、中でも沸点が30〜250℃、より好ましくは50〜200℃の有機アミン化合物が好ましい。沸点が30℃未満の場合は、後述する樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化が完全に進行しない場合がある。沸点が250℃を超えると樹脂塗膜から乾燥によって有機アミン化合物を飛散させることが困難になり、接着性や塗膜の耐水性が悪化する場合がある。塩基性化合物は、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基を中和し、中和によって生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって微粒子間の凝集が防がれ、水性分散体に安定性が付与される。
【0027】
有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。塩基性化合物の添加量はポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基に対して0.5〜3.0倍当量であることが好ましく、0.8〜2.5倍当量がより好ましく、1.01〜2.0倍当量が特に好ましい。0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、3.0倍当量を超えると塗膜形成時の乾燥時間が長くなったり、水分散液が着色する場合がある。
【0028】
水性化に使用する有機溶剤は、水性媒体中の1〜40質量%であることが好ましく、3〜30質量%がより好ましい。有機溶剤量が40質量%を超える場合には、実質的に水性媒体とはみなせなくなり、本発明の目的のひとつ(環境保護)を逸脱する。また、使用する有機溶剤によっては水性分散体の安定性が低下してしまう場合がある。有機溶剤は、ポリオレフィン樹脂の水性化を促進し、分散粒子径を小さくする。なお、有機溶剤は、その一部をストリッピングと呼ばれる操作で系外へ留去させることができる。本発明の水性分散体においても、この操作によって、水性分散体中の有機溶剤量を上記の範囲内で適度に減量してもよい。
【0029】
本発明において使用される有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル等のエステル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、さらには、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等が挙げられる。
【0030】
上記の方法を用いれば、特定組成のポリオレフィン樹脂を水性媒体中に数平均粒子径0.1μm以下に安定に分散することができる。数平均粒子径は、低温造膜性の点から、0.09μm以下が好ましく、0.08μm以下がより好ましく、また、体積平均粒子径は0.2μm以下が好ましく、0.15μm以下がより好ましく、0.1μm以下がさらに好ましい。
【0031】
このようにして得た数平均粒子径が0.1μm以下の特定組成のポリオレフィン樹脂水性分散体と、粘着付与成分の水性分散体とを、樹脂成分の質量比が97/3〜55/45の範囲で混合することにより、水性分散液の50%数平均粒子径を0.1μm以下とすることができる。
【0032】
なお、必要に応じて、得られた水性分散液にジェット粉砕処理を行ってもよい。ここでいうジェット粉砕処理とは、本発明の水性分散液のような流体を、高圧下でノズルやスリットのような細孔より噴出させ、樹脂粒子同士や樹脂粒子と衝突板等とを衝突させて、機械的なエネルギーによって樹脂粒子をさらに細粒化することであり、そのための装置の具体例としてA.P.V.GAULIN社製ホモジナイザー、みずほ工業社製マイクロフルイタイザーM-110E/H等が挙げられる。
【0033】
本発明の水性分散液における、樹脂含有率は、成膜条件、目的とする樹脂塗膜の厚さや性能等により適宜選択でき、特に限定されるものではないが、粘性を適度に保ち、かつ良好な塗膜形成能を発現させる点で、1〜60質量%が好ましく、3〜55質量%がより好ましく、5〜50質量%がさらに好ましく、10〜45質量%が特に好ましい。
【0034】
本発明の水性分散液から得られる樹脂組成物は、接着剤として使用することができ、低極性の高分子材料の他にも、様々な材料を基材とすることができる。例えば、金属、ガラス、他のプラスチックの成形体、フィルム、シート、紙、合成紙、木材等である。
【0035】
本発明の水性分散液は、塗膜形成能に優れているので、公知の成膜方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により各種基材表面にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥又は乾燥と焼き付けのための加熱処理に供することにより、樹脂塗膜を各種基材表面に密着させて形成することができる。このときの加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、被コーティング物である基材の特性や後述する硬化剤の種類、配合量等により適宜選択されるものである。なお、架橋剤を添加した場合は、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基と架橋剤との反応を十分進行させるために、加熱温度および時間は架橋剤の種類によって適宜選定することが望ましい。
【0036】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、各種の特性については以下の方法によって測定又は評価した。
(1)ポリオレフィン樹脂の構成
オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にて1H-NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い求めた。
(2)水性化後のエステル基の残存量
水性化後のポリオレフィン水性分散を150℃で乾燥させた後、オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にて1H-NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い、水性化前のアクリル酸エステルのエステル基量を100としてエステル基の残存率(%)を求めた。
(3)ポリオレフィン樹脂水性分散体の固形分濃度
ポリオレフィン分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、ポリオレフィン樹脂固形分濃度を求めた。
(4)ポリオレフィン樹脂水性分散体の粘度
トキメック社製、DVL-BII型デジタル粘度計(B型粘度計)を用い、温度20℃における水性分散体の回転粘度を測定した。
【0037】
(5)各種平均粒径
日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340)を用い、数平均粒子径(mn)、体積平均粒子径(mv)、50%数平均粒子径、50%体積平均粒子径を求めた。粒子の屈折率は1.50とした。
なお、50%数平均粒子径(メディアン径とも呼ばれる)とは、水性分散液単位容積あたりに存在する粒子を小さい方から個数でカウントしていった場合、その累積が50%目にあたる粒子の粒子径のことである。また、50%体積平均粒子径とは、同様に単位容積あたりの粒子を小さい方から体積でカウントしていった場合、その累積が50%目にあたる粒子の粒子径のことである。
(6)水性化後のメルトフローレート(MFR)
ポリオレフィン水性分散体をガラスシャーレに取り、100℃で6時間乾燥させた。得られたポリオレフィン樹脂のMFRはJIS 6730記載の方法(190℃、2160g荷重)に準じて測定した。
(7)ポリオレフィン樹脂水性分散体中の有機溶剤の含有率
島津製作所社製ガスクロマトグラフGC-8A〔FID検出器使用、キャリアーガス:窒素、カラム充填物質(ジーエルサイエンス社製):PEG-HT(5%)-Uniport HP(60/80メッシュ)、カラムサイズ:直径3mm×3m、試料投入温度(インジェクション温度):150℃、カラム温度:60℃、内部標準物質:n-ブタノール〕を用い、水性分散体または水性分散体を水で希釈したものを直接装置内に投入して、有機溶剤の含有率を求めた。検出限界は0.01質量%であった。
(8)保存安定性
水性分散液を室温で30日放置したときの外観を、次の3段階で評価した。
○:外観に変化なし。
△:増粘がみられる。
×:固化、凝集や沈殿物の発生が見られる。
【0038】
(9)塗膜の耐水性
水性分散液を2軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12,厚み12μm)のコロナ処理面に乾燥後の塗膜厚みが2μmになるようにメイヤーバーでコートし、60℃で1分間、乾燥させた。得られたコートフィルムを水道水に1日、浸漬した後、塗膜の溶解、あるいは剥離の有無を目視で評価した。
○:外観に変化なし。
×:塗膜が溶解、あるいは剥離する。
(10)塗膜の耐アルカリ性
水性分散液を2軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12、厚み12μm)のコロナ処理面に乾燥後の塗膜厚が2μmになるようにマイヤーバーでコートした後、60℃で1分間、乾燥させた。得られたコートフィルムは室温で1日放置後、評価した。NaOHでpHを12.0(20℃)に調整した水溶液を45℃に保温しておき、攪拌下、アルカリ液にコートフィルムを3分間、浸漬した後、水洗いし塗膜の状態を目視で評価した。
○:変化なし
△:塗膜がくもる
×:塗膜が溶解、または剥離
(11)低温造膜性
ヘーズが2.8%のPETフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12,厚み12μm)に乾燥後のコート膜厚が2μmになるように本発明の水性分散液をマイヤーバーでコートした後、60℃の雰囲気中で1分間、乾燥させてコートフィルムを作製した。このようにして作製したコートフィルム全体のヘーズ(%)をJIS K7105に準じて、日本電色工業社製のNDH2000「濁度、曇り度計」を用いて測定した。この値が低いほど膜の透明性が高く、造膜性に優れていることを示す。
(12)PPとの接着性
PP板に本発明の水性分散液をはけで150g/m2(wet)塗布し、棉(日本規格協会製、JIS L 0803準拠、かなきん3号)を貼り合わせた後、90℃で60分間、乾燥した。このサンプルを25mm幅で切り出し、1日後、引張り試験機(インテスコ株式会社製のインテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い、引張り速度200mm/分、引張り角度180度で剥離強度を測定した。
(13)PETとの接着性
基材として120μm厚みの未延伸PETフィルムを用いた以外は前記(12)と同様の評価を行った。
(14)ヒートシール性
水性分散液を2軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製エンブレットPET12,厚み12μm)のコロナ処理面に乾燥後の塗膜厚みが2μmになるようにメイヤーバーでコートし、60℃で1分間、乾燥させた。得られたコートフィルムのコート面が接するようにして、ヒートプレス機(シール圧3kg/cm2で2秒間)にて100℃でプレスした。このサンプルを15mm幅で切り出し、1日後、引張り試験機(インテスコ株式会社製のインテスコ精密万能材料試験機2020型)を用い、引張り速度200mm/分、引張り角度180度で塗膜の剥離強度を測定することでヒートシール強度を評価した。
【0039】
以下の例において使用した樹脂の組成を表1に示す。なお、樹脂の融点はDSC(パーキン・エルマー社製DSC−7)で測定した値であり、メルトフローレートはJIS 6730記載の方法(190℃、2160g荷重)に準じて測定した値である。
【0040】
【表1】
【0041】
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、75.0gのポリオレフィン樹脂〔ボンダインHX-8210(ア),住友化学工業社製〕、60.0gのイソプロパノール(以下、IPA)、5.6g(樹脂中の無水マレイン酸のカルボキシル基に対して1.2倍当量)のトリエチルアミン(以下、TEA)および159.4gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂水性分散体E-1を得た。なお、エステル基残存率は100%であり、室温で90日間放置後でも変化せず100%であった。
【0042】
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−2の製造)
ポリオレフィン樹脂としてボンダインHX-8290(イ)(住友化学工業社製)を用い、樹脂中のカルボキシル基に対するアミンの量を表2のように変更した以外はコート剤組成物E−1の製造と同様の操作でポリオレフィン樹脂水性分散体E-2を得た。水性分散体の各種特性を表2に示した。なお、水性化後の樹脂のエステル基残存率は99%であり、アクリル酸エチル単位の1%が加水分解されてアクリル酸に変化していた。このエステル基残存率は室温で90日間放置後でも変化せず99%であった。
【0043】
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−3の製造)
ポリオレフィン樹脂としてボンダインTX-8030(ウ)(住友化学工業社製)を用い、有機溶剤(IPA)量、及び固形分濃度を表2のように変更した以外はコート剤組成物E−1の製造と同様の操作でポリオレフィン樹脂水性分散体E-3を得た。
【0044】
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−4の製造)
E−1 250g、蒸留水40gを0.5リットルの2口丸底フラスコに仕込み、メカニカルスターラーとリービッヒ型冷却器を設置し、フラスコをオイルバスで加熱していき、水性媒体を留去した。約95gの水性媒体を留去したところで、加熱を終了し、室温まで冷却した。冷却後、フラスコ内の液状成分を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、濾液の固形分濃度を測定したところ、25.8質量%であった。この濾液を攪拌しながら蒸留水を添加し、固形分濃度が25.0質量%になるように調製した。この水性分散体中の水溶性有機溶剤の含有率は0.5質量%であった。
【0045】
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−5の製造)
ポリオレフィン樹脂としてエチレン−アクリル酸共重合体樹脂〔プリマコール5980I(エ)、アクリル酸20質量%共重合体、ダウケミカル製〕を用いた。ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのエチレン−アクリル酸共重合体樹脂〔プリマコール5980I(エ)、ダウケミカル社製〕、16.8g(樹脂中のアクリル酸のカルボキシル基に対して1.0倍当量)のTEA、および223.2gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁のポリオレフィン樹脂水性分散体E-5を得た。この際、フィルター上に樹脂は殆ど残っていなかった。
【0046】
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−6の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、75.0gのポリオレフィン樹脂〔ボンダインHX-8210(ア)、住友化学工業社製〕、乳化剤として9.0gのポリオキシエチレン牛脂脂肪酸アミド(エチレンオキサイド15モル付加物)、および216.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を400rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を150℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、回転速度400rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色のポリオレフィン樹脂水性分散体E-6を得た。
【0047】
(ポリオレフィン樹脂水性分散体E−7の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、 72.0gのポリオレフィン樹脂〔ボンダインHX-8210(ア),住友化学工業社製〕、粘着付与剤として18.0gのロジンペンタエリスリトールエステル(荒川化学工業社製、スーパーエステルA-125、軟化点125℃)(以下、A-125)、乳化剤として9.0gのエチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体(旭電化工業社製、ブルロニックF108、重量平均分子量15500)、および201.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を400rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を180℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、回転速度400rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の水性分散液を得た。こうして得られた水性分散液中の過剰な乳化剤を遠心分離機を用いて取り除き、乳化剤の含有量をポリオレフィン樹脂と粘着付与剤との合計量に対し1.0質量%に調整して水性分散液E-7を得た。
【0048】
ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1〜E−7の物性を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
実施例1
ポリオレフィン樹脂水性分散体E-1と芳香族変性テルペン系樹脂の粘着付与剤(ヤスハラケミカル社製、ナノレットR-1050、樹脂濃度50質量%、平均粒子径0.3μm、軟化点105℃)(以下、R-1050)とを樹脂質量比が80/20になるように室温で混合、攪拌して水性分散液M-1を得た。
【0051】
実施例2〜4
ポリオレフィン樹脂水性分散体E-1とR-1050との樹脂質量比を95/5(実施例2、水性分散液M-2とする)、70/30(実施例3、水性分散液M-3とする)、60/40(実施例、水性分散液M-4とする)とした以外は実施例1と同様の操作を行った。
【0052】
実施例5
粘着付与剤としてロジン類(荒川化学工業社製、スーパーエステルE-720、樹脂濃度50質量%、平均粒子径0.4〜0.7μm、軟化点100℃)(以下、E-720)を用いた以外は実施例1と同様の操作で水性分散液E-5を得た。
【0053】
実施例6〜8
ポリオレフィン樹脂水性分散体としてE-2、E-3、E-4を用いた以外は実施例1と同様の操作でそれぞれ水性分散液M-6〜M-8を得た。
【0054】
実施例9
実施例1で得られたM-1に、ポリエチレンワックス水性分散体(三井化学社製、三井ハイワックス2203A)(以下、2203A)を、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して樹脂成分10質量部となるように室温で混合、攪拌して水性分散液M-9を得た。
【0055】
実施例10
実施例1で得られたM-1にポリウレタン樹脂水性分散体(旭電化工業社製、アデカボンタイターHUX380、樹脂濃度40質量%、以下HUX380)をポリポレフィン樹脂100質量部に対して20質量部になるように室温で混合、攪拌して水性分散液M-10を得た。
【0056】
実施例1〜10の評価結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
比較例1〜3
ポリオレフィン樹脂水性分散体E-1〜E-3に粘着付与剤を添加せずにそれぞれ単体として用いた。
【0059】
比較例4
ポリオレフィン樹脂水性分散体E-1とR-1050とを樹脂質量比が50/50になるように室温で混合、攪拌して水性分散液H-4を得た。
【0060】
比較例5
ポリオレフィン樹脂水性分散体E-5を用いた以外は実施例1と同様の操作で水性分散液H-5を得た。
【0061】
比較例6
ポリオレフィン樹脂水性分散体E-6とR-1050とを樹脂質量比が80/20になるように室温で混合、攪拌して水性分散液H-6を得た。
【0062】
比較例7
ポリオレフィン樹脂水性分散体E-7を単独で用い、各種評価に供した。
【0063】
比較例8
粘着付与成分R-1050を単独で用い、各種評価に供した。
【0064】
比較例1〜8の結果を表4に示す。
【0065】
【表4】
【0066】
比較例1〜3は、いずれも粘着付与成分を含まない水性分散液であるが、PP、PETへの接着性やヒートシール性は不十分であった。
比較例4は、ポリオレフィン樹脂と粘着付与成分との質量比が本発明の範囲を外れたので、低温での造膜性は悪く(ヘイズは10を超えた)、耐水性、耐アルカリ性も悪化した。さらに、PPやPETとの接着性も著しく低下した。
比較例5は、不飽和カルボン酸量が多いポリオレフィン樹脂を用いたので、液の安定性、塗膜の耐水性、耐アルカリ性は悪く、PPやPETとの接着性も低かった。なお、50%数および体積平均粒子径が大きく観測されたのは、ポリオレフィン樹脂が粘着付与成分の粒子表面に吸着したことによると推測される。
比較例6、7は、50%数平均粒子径が大きかったため、造膜性に劣っており、塗膜の性能も不十分であった。
比較例8は、粘着付与成分のみの評価結果であるが、塗膜は白化し、接着性能はほとんど発現しなかった。
【0067】
【発明の効果】
特定のポリオレフィン樹脂を水性媒体中に分散した水性分散体と粘着付与剤とを特定の割合で混合した水性分散液は、低極性樹脂材料に対する良好な接着性やヒートシール性を発現するだけでなく、さらに、低温造膜性にも優れ、耐水性や耐アルカリ性をも兼ね備えており、ヒートシール剤、ディレードタック剤、繊維処理剤、及び接着剤用バインダー等の幅広い用途に用いることができる。
Claims (6)
- ポリオレフィン樹脂と粘着付与成分とを含有する水性分散液であって、ポリオレフィン樹脂と粘着付与成分とが質量比97/3〜55/45の範囲であり、かつ50%数平均粒子径が0.1μm以下であり、ポリオレフィン樹脂は、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体またはエチレン−メタクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体であり、無水マレイン酸成分の含有量が 0.01 質量%以上、 5 質量%未満であり、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの含有量が 1 〜 45 質量%であることを特徴とする水性分散液。
- ポリオレフィン樹脂の190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.01〜500g/10分であることを特徴とする請求項1記載の水性分散液。
- 粘着付与成分がロジン類、テルペン系樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1記載の水性分散液。
- さらにポリオレフィンワックス、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種の化合物をポリオレフィン樹脂100質量部に対して、1〜50質量部含有することを特徴とする請求項1記載の水性分散液。
- 請求項1〜4いずれかに記載の水性分散液からなる接着剤。
- 無水マレイン酸成分の含有量が 0.01 質量%以上、 5 質量%未満であり、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの含有量が 1 〜 45 質量%であるエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体またはエチレン−メタクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体が数平均粒子径0.1μm以下で分散された水性分散体と粘着付与成分の水性分散体とを樹脂質量比が97/3〜55/45となる範囲で混合することを特徴とする水性分散液の製造方法。
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