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JP4033660B2 - ニッケル−水素蓄電池 - Google Patents

ニッケル−水素蓄電池 Download PDF

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JP4033660B2
JP4033660B2 JP2001327285A JP2001327285A JP4033660B2 JP 4033660 B2 JP4033660 B2 JP 4033660B2 JP 2001327285 A JP2001327285 A JP 2001327285A JP 2001327285 A JP2001327285 A JP 2001327285A JP 4033660 B2 JP4033660 B2 JP 4033660B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質を含有した正極と、水素吸蔵合金を主成分とする負極活物質を含有した負極と、アルカリ電解液とを備えたニッケル−水素蓄電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、小型携帯機器の増加に伴い、充放電が可能な二次電池(蓄電池)の需要が高まっており、特に、機器の小型化、薄型化、スペース効率化に伴い、大容量が得られるニッケル−水素蓄電池の需要が急速に高まった。この種のニッケル−水素蓄電池は、正極活物質に水酸化ニッケルを使用する正極と、負極活物質に水素吸蔵合金を使用する負極とをセパレータを介して渦巻状に巻回して渦巻状電極群とし、この渦巻状電極群をアルカリ電解液とともに金属製外装缶(電池ケース)内に収納し、金属製外装缶を密封することにより製造される。
【0003】
現在においては、この種のニッケル−水素蓄電池の需要がさらに高まり、小型の機器のみならず、電動工具などの大電流用途にも需要が拡大するようになった。これに伴い、より大きな電流値を取り出すことができるように、正極および負極の両面から改良が進められている。例えば、正極面からの改良としては、水酸化ニッケルを主成分とする活物質に、導電剤として少量のコバルト化合物を添加することが一般に行われている。
【0004】
しかしながら、導電剤としてコバルト化合物を添加するだけでは、高容量で高性能なニッケル−水素蓄電池が得られないため、水酸化ニッケルの表面にコバルト化合物を被覆した後、アルカリおよび酸素の共存下で加熱するアルカリ熱処理法が、特許第2589123号公報にて提案されるようになった。この特許第2589123号公報にて提案されたアルカリ熱処理法によれば、コバルト化合物をアルカリおよび酸素の共存下で加熱して、導電性が高い高次コバルト化合物を生成させるので、活物質の利用率が向上して、高容量化が達成できるようになる。
【0005】
ところが、特許第2589123号公報にて提案されるように、活物質(水酸化ニッケル)の表面に導電性が高い高次コバルト化合物を生成させると、反応に関与しないコバルト化合物が水酸化ニッケルの表面に均一に存在するようになる。このため、水酸化ニッケルと電解液との接触が阻害されるようになって、高率放電特性が低下するという問題を生じた。この問題に対処するために、水酸化ニッケルの表面の一部にアルカリカチオンを含む高次コバルト化合物を被覆する方法が提案されるようになった。この方法によれば、良好な導電ネットワークが形成されるとともに、電解液が直接水酸化ニッケルに接触するようになるため、活物質利用率と高率放電特性の向上を達成できるようになる。
【0006】
一方、負極面からの改良としては、水素吸蔵合金の粒子間の導電性を低下させる表面酸化物被膜を除去する方法が、特開平5−225975号公報にて提案されるようになった。この特開平5−225975号公報にて提案された方法においては、水素吸蔵合金粉末を塩酸に浸漬して、表面酸化物被膜を構成する希土類酸化物を除去することには有効であるが、ニッケルの水酸化物および酸化物の除去にはあまり有効でなく、ニッケルの水酸化物が新たに形成されるという問題が生じた。また、導電性をさらに向上させる手段として、ニッケルの酸化物あるいは水酸化物をニッケル金属に還元させる方法、即ち、水素を吸蔵しない温度、圧力の水素雰囲気中で合金表面を還元する方法が特開平9−237628号公報にて提案されるようになった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のように正極および負極を改良しても、活性化後のニッケル−水素蓄電池を長期間放置すると、大電流で放電させた場合の高率放電特性が低下するという問題を生じた。このように、長期間放置により高率放電特性が低下する理由としては、以下のようなことが考えられる。即ち、負極に用いる水素吸蔵合金を、上述した特開平5−225975号公報あるいは特開平9−237628号公報に記載されるような方法で表面酸化物を除去しても、長期間の保存により電解液により再度、表面酸化されて表面の活性度が低下する。このため、負極の放電特性は低下し、結果として高率放電特性が低下したと考えられる。
【0008】
また、正極においては、電解液中に溶解した水素吸蔵合金中のマンガン(Mn)あるいはアルミニウム(Al)等の金属イオンが、水酸化ニッケル表面に形成されたコバルト化合物層の偏析部分から侵入して、良好な導電ネットワークを破壊するようになる。このため、正極の放電特性は低下し、結果として高率放電特性が低下したと考えられる。
そこで、本発明はこのような長期間放置すると高率放電特性が低下するという問題点を解消するためになされたものであり、長期間放置しても高率放電特性が低下しないニッケル−水素蓄電池を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明のニッケル−水素蓄電池は、正極においては、コバルト化合物を被覆した水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質に、ニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物から選択される少なくとも1種の化合物が添加されており、負極においては、組成式がMmNiaCobMncd(ただし、MはCa,Mg,Alから選択される少なくとも1種の元素である)で表されるCaCu5型の水素吸蔵合金を含有し、かつ、MnとMの和の組成(c+d)とMnの組成(c)との組成比率c/(c+d)が0.58≦c/(c+d)≦0.67の関係を有していることを特徴とする。
【0010】
このように正極に、ニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物から選択される少なくとも1種の化合物が添加されていると、活物質となる水酸化ニッケルの表面を被覆するコバルト化合物が、電解液中に溶解して析出する速度を遅らせることができる。これにより、コバルト化合物層をより緻密な構造に変化させる。さらに、コバルト化合物がより緻密な構造に変化することから、長期間の放置により電解液中に溶出した水素吸蔵合金中のMn,Al,Ca,Mg等の金属が、コバルト化合物の被覆層に侵入することを防止でき、良好な導電ネットワークを維持できるようになる。
【0011】
そして、組成式がMmNiaCobMncd(MはCa,Mg,Alから選択される少なくとも1種の元素である)で表される水素吸蔵合金のMnとMの和の組成(c+d)と、M(Ca,Mg,Al)の組成(c)が、0.58≦c/(c+d)≦0.67の関係を満たすと、正極中に添加したニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物の添加効果を最大限に引き出すことが可能になる。
また、前記コバルト化合物中にアルカリカチオンを含有しているとコバルト化合物層の導電性が高められるとともに、ニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物から選択される少なくとも1種の化合物を添加する効果が一層高められる。
【0012】
この場合、正極に添加するニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物の添加量が少なくなると、被覆したコバルト化合物が電解液中に溶解して析出する速度を遅くする効果、および水酸化ニッケル表面における偏析防止効果が十分に得られない。また、添加量が多すぎると、ニッケル正極中の活物質となる水酸化ニッケル量が少なくなって、放電容量が減少する。このため、ニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物の添加量は、ニッケル正極中の全活物質の質量に対して、0.2質量%以上で、1.0質量%以下であることが望ましい。
【0013】
なお、ニオブ化合物としては、Nb25、Nb23,NbO,NbO2,NaNbO3,LiNbO3,KNbO3,Nb25・xH2O等から選択して用いるのが好ましい。また、チタン化合物としては、TiO2,Ti23,TiO等から選択して用いるのが好ましい。さらに、タングステン化合物としては、WO2,WO3,Na2WO4等から選択して用いるのが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものでなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
1.ニッケル正極
(1)正極活物質の調製
質量比で金属ニッケル100に対して亜鉛3質量%、コバルト1質量%となるような硫酸ニッケル、硫酸亜鉛、硫酸コバルトの混合水溶液を攪拌しながら、水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加し、反応溶液中のpHが13〜14になるように維持させて粒状の水酸化ニッケルを析出させた。この粒状の水酸化ニッケルが析出した溶液に対して、硫酸コバルト水溶液を添加し、この反応溶液中のpHが9〜10になるように維持させて、主成分が水酸化ニッケルである球状水酸化物粒子を結晶核として、この核の周囲に水酸化コバルトを析出させた。
【0015】
このようにして表面に水酸化コバルト被覆層を有する粒状の水酸化ニッケル(正極活物質粒子)を得た。この後、この正極活物質粒子を熱気流中でアルカリ溶液を噴霧するアルカリ熱処理を行った。なお、このアルカリ熱処理において、正極活物質粒子の温度が60℃になるように温度調節し、コバルト量に対して5倍量の35質量%のアルカリ溶液(水酸化ナトリウム水溶液)を噴霧した。この後、正極活物質粒子の温度が90℃に達するまで昇温した。ついで、これを水洗した後、60℃で乾燥させて、正極活物質とした。これにより、水酸化ニッケル粒子の表面にナトリウム含有コバルト化合物の高導電性被膜が形成された水酸化ニッケル粉末を得た。
【0016】
(2)活物質スラリーの作製
ついで、上述のように調製した正極活物質にニオブ化合物(例えば、Nb25)を添加して混合物とした後、この混合物500gに対して0.25質量%のHPC(ヒドロキシルプロピルセルロース)ディスパージョン液を200g混合して活物質スラリーを作製した。なお、ニオブ化合物(Nb25)を添加する際に、正極活物質の質量に対して0.1質量%となるように添加した活物質スラリーをa1とした。同様に、0.3質量%となるように添加した活物質スラリーをb1とし、0.5質量%となるように添加した活物質スラリーをc1とした。
【0017】
また、同様に、0.7質量%となるように添加した活物質スラリーをd1とし、1.0質量%となるように添加した活物質スラリーをe1とし、1.5質量%となるように添加した活物質スラリーをf1とした。さらに、ニオブ化合物(Nb25)が無添加の活物質スラリーをg1とした。なお、正極活物質に添加するニオブ化合物としては、Nb25以外に、Nb23,NbO,NbO2,NaNbO3,LiNbO3,KNbO3,Nb25・xH2O等を用いてもよい。
【0018】
(3)ニッケル正極の作製
ついで、上述のように作製した活物質スラリーa1,b1,c1,d1,e1,f1,g1を用いて、これらの活物質スラリーa1,b1,c1,d1,e1,f1,g1を、厚みが1.7mmの発泡ニッケルからなる電極基板に、所定の充填密度となるようにそれぞれ充填した。この後、乾燥させて、厚みが0.75mmになるまで圧延し、所定の寸法に切断して非焼結式ニッケル正極a,b,c,d,e,f,gをそれぞれ作製した。
【0019】
なお、活物質スラリーa1を用いた非焼結式ニッケル正極を正極aとした。同様に、活物質スラリーb1を用いたものを正極bとし、活物質スラリーc1を用いたものを正極cとした。また、活物質スラリーd1を用いたものを正極dとし、活物質スラリーe1を用いたものを正極eとし、活物質スラリーf1を用いたものを正極fとし、活物質スラリーg1を用いたものを正極gとした。
【0020】
2.水素吸蔵合金負極
(1)水素吸蔵合金の調製
ミッシュメタル(Mm)、ニッケル(Ni:純度99.9%)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、およびマンガン(Mn)を所定のモル比になるようにそれぞれ混合し、この混合物をアルゴンガス雰囲気の高周波誘導炉で誘導加熱して合金溶湯とした。この合金溶湯を公知の方法で鋳型に流し込み、冷却して、組成式がMmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のインゴットを作製した。この水素吸蔵合金インゴットを機械的粉砕法により、平均粒子径が約60μmになるまで粉砕した。
【0021】
なお、Mm:Ni:Co:Mn:Al=1.0:3.48:0.80:0.42:0.30となるMmNi3.48Co0.80Mn0.42Al0.30(c/c+d=0.58)を水素吸蔵合金h1とした。また、Mm:Ni:Co:Mn:Al=1.0:3.50:0.80:0.42:0.28となるMmNi3.50Co0.80Mn0.42Al0.28(c/c+d=0.60)を水素吸蔵合金i1とした。また、Mm:Ni:Co:Mn:Al=1.0:3.60:0.80:0.40:0.20となるMmNi3.60Co0.80Mn0.40Al0.20(c/c+d=0.67)を水素吸蔵合金j1とした。
さらに、Mm:Ni:Co:Mn:Al=1.0:3.61:0.80:0.32:0.27となるMmNi3.61Co0.80Mn0.32Al0.27(c/c+d=0.54)を水素吸蔵合金k1とし、Mm:Ni:Co:Mn:Al=1.0:3.40:0.80:0.60:0.20となるMmNi3.40Co0.80Mn0.60Al0.20(c/c+d=0.75)を水素吸蔵合金l1とした。
【0022】
(2)水素吸蔵合金負極の作製
ついで、これらの各水素吸蔵合金粉末100質量部に対して、結着剤としての5質量%のポリエチレンオキサイド(PEO)の水溶液を20質量部とを混合して水素吸蔵合金ペーストを作製した。この水素吸蔵合金ペーストをパンチングメタルからなる芯体の両面に塗布し、室温で乾燥させた後、所定の厚みに圧延し、所定の寸法に切断して水素吸蔵合金負極h,i,j,k,lをそれぞれ作製した。
なお、水素吸蔵合金h1を用いた水素吸蔵合金負極を負極hとし、水素吸蔵合金i1を用いた水素吸蔵合金負極を負極iとし、水素吸蔵合金j1を用いた水素吸蔵合金負極を負極jとし、水素吸蔵合金k1を用いた水素吸蔵合金負極を負極kとし、水素吸蔵合金l1を用いた水素吸蔵合金負極を負極lとした。
【0023】
3.ニッケル−水素蓄電池
(1)ニッケル−水素蓄電池の作製
上述のように作製した非焼結式ニッケル正極a,b,c,d,e,f,gと水素吸蔵合金負極h,i,j,k,lをそれぞれ用い、これらの間にポリプロピレン製不織布からなるセパレータを介在させ、これらをスパイラル状に巻回して電極群をそれぞれ作製した。ついで、各電極群を外装缶に挿入した後、各電極群の負極から延出する負極リードを外装缶に接続するとともに、正極から延出する正極リードを封口体に設けられた正極蓋に接続した。この後、外装缶内に電解液(例えば、30質量%の水酸化カリウム水溶液)を注入し、更に外装缶の開口部を封口体により封止して、公称容量1250mAhのAAサイズのニッケル−水素蓄電池をそれぞれ作製した。
【0024】
ここで、正極aと負極hを用いたものを電池Aとし、正極bと負極hを用いたものを電池Bとし、正極cと負極hを用いたものを電池Cとし、正極dと負極hを用いたものを電池Dとし、正極eと負極hを用いたものを電池Eとし、正極fと負極hを用いたものを電池Fとした。また、正極aと負極iを用いたものを電池Gとし、正極bと負極iを用いたものを電池Hとし、正極cと負極iを用いたものを電池Iとし、正極dと負極iを用いたものを電池Jとし、正極eと負極iを用いたものを電池Kとし、正極fと負極iを用いたものを電池Lとした。
【0025】
また、正極aと負極jを用いたものを電池Mとし、正極bと負極jを用いたものを電池Nとし、正極cと負極jを用いたものを電池Oとし、正極dと負極jを用いたものを電池Pとし、正極eと負極jを用いたものを電池Qとし、正極fと負極jを用いたものを電池Rとした。さらに、正極gと負極hを用いたものを電池Sとし、正極cと負極kを用いたものを電池Tとし、正極gと負極kを用いたものを電池Uとし、正極cと負極lを用いたものを電池Vとし、正極gと負極lを用いたものを電池Wとし、正極gと負極jを用いたものを電池Xとした。
【0026】
(2)放電容量の測定
ついで、上述のように作製した電池A〜Xを用いて、これらの各電池A〜Xを25℃の温度条件で、100mAの充電電流で16時間充電した後、1000mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させた。この後、100mAの充電電流で16時間充電した後、4000mAの放電電流で、電池電圧が0.5Vになるまで放電させて、放電時間から各電池A〜Xの初期高率放電容量(mAh)を求めた。
【0027】
ついで、放電後の各電池A〜Xを25℃で30日間放置した後、100mAの充電電流で再度16時間充電した後、4000mAの放電電流で、電池電圧が0.5Vになるまで放電させて、放電時間から各電池A〜Xの放置後高率放電容量(mAh)を求めた。ついで、求めた初期高率放電容量(mAh)に対する放置後高率放電容量(mAh)の比率(%)を算出して、放置後高率放電容量維持率として求めると、下記の表1に示すような結果になった。
【0028】
【表1】
Figure 0004033660
【0029】
上記表1の結果から明らかなように、ニオブ化合物(Nb25)を添加したニッケル正極、および組成式がMmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のc/(c+d)が0.58〜0.67の水素吸蔵合金負極を用いた電池A〜Rは、放電状態で30日間放置した後の高率放電容量維持率が92.0%〜99.2%と高い値を示していることが分かる。特に、ニオブ化合物(Nb25)の添加量が0.2質量%〜1.0質量%のニッケル正極を用いた電池B〜E、H〜K、N〜Qにおいては、98.2%〜99.2%と非常に高い値を示していることが分かる。したがって、ニッケル正極に添加するニオブ化合物(Nb25)の添加量は、正極活物質の質量に対して0.2質量%〜1.0質量%とするのが望ましいということができる。
【0030】
また、ニオブ化合物(Nb25)を0.5質量%添加したニッケル正極と、組成式がMmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のc/(c+d)が0.54と0.75の水素吸蔵合金負極を用いた電池T,Vにおいては、放電状態で30日間放置した後の高率放電容量維持率がともに72.7%と低い値を示していることが分かる。一方、ニオブ化合物(Nb25)が無添加のニッケル正極を用い、かつ水素吸蔵合金のc/(c+d)が0.54と0.75の水素吸蔵合金負極を用いた電池U,Wにおいては、高率放電容量維持率が71.2%および70.7%と低い値を示していることが分かる。このことからすると、水素吸蔵合金のc/(c+d)が0.54あるいは0.75の水素吸蔵合金負極を用いた場合には、ニオブ化合物(Nb25)の添加効果を発揮することができないということができる。
【0031】
また、水素吸蔵合金のc/(c+d)が0.58と0.67の水素吸蔵合金負極を用い、かつニオブ化合物(Nb25)が無添加の正極を用いた電池S、Xにおいては、高率放電容量維持率が70.7%および70.8%と低い値を示していることが分かる。
これらのことから、組成式がMmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のc/(c+d)が0.58〜0.67の水素吸蔵合金負極と、かつニオブ化合物(Nb25)の添加量が0.2質量%〜1.0質量%のニッケル正極を組み合わせて用いることにより、放電状態で放置した後の高率放電容量維持率を高めることができるという格別の効果を発揮することができるようになる。
【0032】
4.添加化合物の検討
上述した例においては、ニオブ化合物を正極活物質に添加する例について説明したが、チタン化合物、タングステン化合物を正極活物質に添加した場合についても検討した。
(1)チタン化合物について
正極活物質の質量に対してチタン化合物(TiO2)の添加量が0.5質量%となるように添加した活物質スラリーを調製した後、上述と同様に発泡ニッケルからなる電極基板に充填し、乾燥させ、圧延した後、所定の寸法に切断して非焼結式ニッケル正極mを作製した。
【0033】
ついで、この非焼結式ニッケル正極mと、上述のように作製した水素吸蔵合金負極h,j,k,lをそれぞれ用い、これらの間にポリプロピレン製不織布からなるセパレータを介在させ、これらをスパイラル状に巻回して電極群をそれぞれ作製した。ついで、各電極群を外装缶に挿入した後、各電極群の負極から延出する負極リードを外装缶に接続するとともに、正極から延出する正極リードを封口体に設けられた正極蓋に接続した。この後、外装缶内に電解液(例えば、30質量%の水酸化カリウム水溶液)を注入し、更に外装缶の開口部を封口体により封止して、公称容量1250mAhのAAサイズのニッケル−水素蓄電池をそれぞれ作製した。
【0034】
ここで、正極mと負極kを用いたものを電池Z1とし、正極mと負極hを用いたものを電池Z2とし、正極mと負極jを用いたものを電池Z3とし、正極mと負極lを用いたものを電池Z4とした。
【0035】
ついで、上述のように作製した電池Z1〜Z4を用いて、これらの各電池を25℃の温度条件で、100mAの充電電流で16時間充電した後、1000mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させた。この後、100mAの充電電流で16時間充電した後、4000mAの放電電流で、電池電圧が0.5Vになるまで放電させて、放電時間から各電池Z1〜Z4の初期高率放電容量(mAh)を求めた。
【0036】
また、放電後の各電池Z1〜Z4を25℃で30日間放置した後、100mAの充電電流で再度16時間充電した後、4000mAの放電電流で、電池電圧が0.5Vになるまで放電させて、放電時間から各電池Z1〜Z4の放置後高率放電容量(mAh)を求めた。ついで、求めた初期高率放電容量(mAh)に対する放置後高率放電容量(mAh)の比率(%)を算出して、放置後高率放電容量維持率として求めると、下記の表2に示すような結果になった。なお、下記の表2においては、比較のために上述した電池U,S,W,Xの結果も併せて示している。
【0037】
【表2】
Figure 0004033660
【0038】
上記表2の結果から明らかなように、チタン化合物(TiO2)を0.5質量%添加したニッケル正極、および組成式がMmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のc/(c+d)が0.58と0.67の水素吸蔵合金負極を用いた電池Z2,Z3は、放電状態で30日間放置した後の高率放電容量維持率が98.6%,98.7%と高い値を示していることが分かる。また、チタン化合物(TiO2)を0.5質量%添加したニッケル正極と、組成式がMmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のc/(c+d)が0.54と0.75の水素吸蔵合金負極を用いた電池Z1,Z4においては、放電状態で30日間放置した後の高率放電容量維持率が72.7%,73.3%と低い値を示していることが分かる。
【0039】
一方、チタン化合物(TiO2)が無添加のニッケル正極を用い、かつ水素吸蔵合金のc/(c+d)が0.54と0.75の水素吸蔵合金負極を用いた電池U,Wにおいては、高率放電容量維持率が71.2%および70.7%と低い値を示していることが分かる。このことからすると、水素吸蔵合金のc/(c+d)が0.54あるいは0.75の水素吸蔵合金負極を用いた場合には、チタン化合物(TiO2)の添加効果を発揮することができないということができる。また、水素吸蔵合金のc/(c+d)が0.58および0.67の水素吸蔵合金負極を用い、かつチタン化合物(TiO2)が無添加の正極を用いた電池S,Xにおいては、高率放電容量維持率が70.7%,70.8%と低い値を示していることが分かる。
【0040】
これらのことから、組成式がMmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のc/(c+d)が0.58〜0.67の水素吸蔵合金負極と、かつチタン化合物(TiO2)の添加量が0.5質量%のニッケル正極を組み合わせて用いることにより、放電状態で放置した後の高率放電容量維持率を高めることができるという格別の効果を発揮することができるようになる。なお、チタン化合物(TiO2)の添加量については、上述したニオブ化合物(Nb25)の場合と同様に、チタン化合物(TiO2)の添加量が0.2質量%〜1.0質量%となるように添加するのが望ましい。この場合、チタン化合物としては、TiO2以外に、Ti23,TiO等を用いてもよい。
【0048】
(2)タングステン化合物について
正極活物質の質量に対してタングステン化合物(WO2)の添加量が0.5質量%となるように添加した活物質スラリーを用い、上述と同様に発泡ニッケルからなる電極基板に充填し、乾燥させ、圧延した後、所定の寸法に切断して非焼結式ニッケル正極oを作製した。この非焼結式ニッケル正極oと水素吸蔵合金負極h,j,k,lをそれぞれ用い、上述と同様に公称容量1250mAhのAAサイズのニッケル−水素蓄電池をそれぞれ作製した。ここで、正極oと負極kを用いたものを電池Z9とし、正極oと負極hを用いたものを電池Z10とし、正極oと負極jを用いたものを電池Z11とし、正極oと負極lを用いたものを電池Z12とした。
【0049】
ついで、上述のように作製した電池Z9〜Z12を用いて、これらの各電池Z9〜Z12を25℃の温度条件で、100mAの充電電流で16時間充電した後、1000mAの放電電流で、電池電圧が1.0Vになるまで放電させた。この後、100mAの充電電流で16時間充電した後、4000mAの放電電流で、電池電圧が0.5Vになるまで放電させて、放電時間から各電池Z9〜Z12の初期高率放電容量(mAh)を求めた。
【0050】
ついで、放電後の各電池Z9〜Z12を25℃で30日間放置した後、100mAの充電電流で再度16時間充電した後、4000mAの放電電流で、電池電圧が0.5Vになるまで放電させて、放電時間から各電池Z9〜Z12の放置後高率放電容量(mAh)を求めた。ついで、求めた初期高率放電容量(mAh)に対する放置後高率放電容量(mAh)の比率(%)を算出して、放置後高率放電容量維持率として求めると、下記の表4に示すような結果になった。なお、下記の表4においては、比較のために上述した電池U,S,W,Xの結果も併せて示している。
【0051】
【表4】
Figure 0004033660
【0052】
上記表4の結果から明らかなように、タングステン化合物(WO2)を0.5質量%添加したニッケル正極、および組成式がMmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のc/(c+d)が0.58〜0.67の水素吸蔵合金負極を用いた電池Z10,Z11は、放電状態で30日間放置した後の高率放電容量維持率が98.2%,98.7%と高い値を示していることが分かる。また、タングステン化合物(WO2)を0.5質量%添加したニッケル正極と、組成式がMmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のc/(c+d)が0.54と0.75の水素吸蔵合金負極を用いた電池Z9,Z12においては、放電状態で30日間放置した後の高率放電容量維持率が72.3%,72.7%と低い値を示していることが分かる。
【0053】
一方、タングステン化合物(WO2)が無添加のニッケル正極を用い、かつ水素吸蔵合金のc/(c+d)が0.54と0.75の水素吸蔵合金負極を用いた電池U,Wにおいては、高率放電容量維持率が71.2%および70.7%と低い値を示していることが分かる。このことからすると、水素吸蔵合金のc/(c+d)が0.54あるいは0.75の水素吸蔵合金負極を用いた場合には、タングステン化合物(WO2)の添加効果を発揮することができないということができる。また、タングステン化合物(WO2)が無添加の正極を用い、かつ水素吸蔵合金のc/(c+d)が0.58,0.67の水素吸蔵合金負極を用いた電池S,Xにおいては、高率放電容量維持率が70.7%,70.8%と低い値を示していることが分かる。
【0054】
これらのことから、組成式がMmNiaCobMncAldで表される水素吸蔵合金のc/(c+d)が0.58〜0.67の水素吸蔵合金負極と、かつタングステン化合物(WO2)の添加量が0.5質量%のニッケル正極を組み合わせて用いることにより、放電状態で放置した後の高率放電容量維持率を高めることができるという格別の効果を発揮することができるようになる。なお、タングステン化合物(WO2)の添加量については、上述したニオブ化合物(Nb25)の場合と同様に、タングステン化合物(WO2)の添加量が0.2質量%〜1.0質量%となるように添加するのが望ましい。この場合、タングステン化合物としては、WO2以外に、WO3,Na2WO4等を用いてもよい。
【0055】
【発明の効果】
上述したように、本発明においては、ニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物から選択される少なくとも1種の化合物が正極に添加されている。このため、水酸化ニッケルの表面を被覆するコバルト化合物が、電解液中に溶解して析出する速度を遅めることができる。これにより、コバルト化合物層をより緻密な構造に変化させて、導電ネットワークを向上させることが可能になる。さらに、コバルト化合物がより緻密な構造に変化することから、長期間の放置により電解液中に溶出した水素吸蔵合金中のMn,Al,Ca,Mg等の金属が、コバルト化合物の被覆層に侵入することを防止でき、良好な導電ネットワークを維持できるようになる。
【0056】
そして、組成式がMmNiaCobMncd(MはCa,Mg,Alから選択される少なくとも1種の元素である)で表される水素吸蔵合金を負極に用いる。このため、水素吸蔵合金中のMn,Al,Ca,Mg等の金属が電解液中に溶出することが防止でき、かつこれらが水素吸蔵合金表面に再析出することも防止できるようになる。また、Mnの組成比率(c)と、M(Ca,Mg,Al)の組成比率(d)が、0.58≦c/(c+d)≦0.67の関係を満たしているので、正極に添加したニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物の添加効果を最大限に引き出すことが可能になる。
【0057】
なお、水酸化ニッケルからなる活物質中に、亜鉛、コバルト、カルシウム、アルミニウム、マンガン、イットリウムおよびイッテルビウムよりなる群から選択される1種の元素を固溶させ、かつ水酸化ニッケルとこれらの元素の総量に対して、これらの元素の割合を10原子%以下に規定するのが好ましい。このようにすると、固溶させたこれらの元素の作用により、アルカリ電解液中のカリウムイオンなどが活物質となる水酸化ニッケルの結晶中にインターカレーションされるのが抑制され、アルカリ電解液のドライアウトによる放電容量の低下が抑制されるようになる。
【0058】
また、ニッケル正極中に上述したニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物の他に、イットリウム、イッテルビウム、エルビウム、亜鉛から選択される1種の元素またはその化合物の粉末を添加すると、正極内により良好な導電ネットワークが形成されて、さらに活物質利用率が向上して、高容量の蓄電池が得られるようになる。また、高次水酸化ニッケルを長期に保存しても、安定するため、放電状態で放置した後の高率放電容量維持率を一層高める効果が得られるようになる。この場合、イットリウム化合物としてY23を用いるのが特に好ましい。

Claims (3)

  1. 水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質を含有した正極と、水素吸蔵合金を主成分とする負極活物質を含有した負極と、アルカリ電解液とを備えたニッケル−水素蓄電池であって、
    前記正極はコバルト化合物を被覆した水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質に、ニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物から選択される少なくとも1種の化合物が添加されており、
    前記負極は組成式がMmNiaCobMncd(ただし、MはCa,Mg,Alから選択される少なくとも1種の元素である)で表されるCaCu5型の水素吸蔵合金を含有し、かつ、MnとMの和の組成(c+d)とMnの組成(c)との組成比率c/(c+d)が0.58≦c/(c+d)≦0.67の関係を有していることを特徴とするニッケル−水素蓄電池。
  2. 前記コバルト化合物はアルカリカチオンを含有するコバルト化合物であることを特徴とする請求項1に記載のニッケル−水素蓄電池。
  3. 前記ニオブ化合物、チタン化合物、タングステン化合物から選択される少なくとも1種の化合物の添加量は前記コバルト化合物を被覆した水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質の質量に対して0.2質量%以上で1.0質量%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のニッケル−水素蓄電池。
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