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JP4029505B2 - ディジタル無線装置の歪補正回路 - Google Patents

ディジタル無線装置の歪補正回路 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、送信デ−タにディジタル直交変調処理及びルートナイキスト処理をしてベースバンド変調信号を作成し、このベースバンド変調信号をD/A(ディジタル/アナログ)変換部(サンプリング周波数Ftxsp)でアナログ信号に変換し電力増幅器で増幅して送信信号を作成し、この送信信号の一部をフィードバックして復調し、復調信号から電力増幅器で生じた歪成分を検出し、この検出信号から歪成分を打ち消すための歪補正係数を算出し、この歪補正係数をベースバンド変調信号に乗算して送信信号の隣接チャネル漏洩電力を抑圧するディジタル無線装置の歪補正回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ディジタル移動無線通信分野では、隣接チャネルの周波数間隔を小さくしてチャネル容量を増加させるために、送信信号の狭帯域化が進められている。このような周波数利用効率の向上を実現するために、変調スペクトラム帯域幅の小さな変調方式が望まれ、PSK(Phase Shift Keying)方式、QAM(Quadr-ature Amplitude Modulation)方式等の線形変調方式が採用されるようになってきた。この線形変調方式を無線通信に適用する場合、送信部の電力増幅器の振幅特性及び位相特性の直線性が求められ、隣接チャネル漏洩電力を抑圧することが重要である。
一方、電力増幅器を使用する際に重要な点は、電力効率の点でできるだけ高い動作点(飽和点に近い領域)で動作させることであり、非線形歪みによる隣接チャネル漏洩電力の増加が考えられる。また、線形性に劣る電力増幅器を用いて電力効率の向上を図る場合(例えば、小型の無線装置で電力効率の向上を図る場合)には、非線形歪みによる隣接チャネル漏洩電力がますます増加してしまう。従って、電力増幅器の非線形特性によって発生する歪みを補正する技術が必須になってくる。すなわち、電力増幅器の入力電力振幅対出力電力振幅特性、入力電力振幅対位相回転量(又は群遅延量)特性の歪みにより発生する送信信号の歪みを補正する技術が必須になってくる。
この歪補正技術として、アナログ方式ではカルテシアン、フィードフォワード等、多数の歪補正方式が提案されているが、これらのアナログ方式は回路規模が大きくなって小型化、省電力化を図ることができないという問題点があり、帰還ゲインを非常に大きくしなければならないため回路の安定を図るための位相調整が難しいという問題点があった。
【0003】
最近では、ディジタル信号処理プロセッサ(以下、単にDSPという。)の進歩によりディジタル信号処理技術で歪み補正する方式が可能となり、ディジタル信号処理による様々な非線形歪み補正方式が提案されている。なかでも、送信信号の一部をフィードバックしてこれを復調してDSPに取り込み、この復調信号から電力増幅器の歪み量を検出し、ディジタル適応フィルタ技術であるLMS(Least Mean Square)アルゴリズムを用いた歪補正を行う研究、開発が盛んである。
このようなLMSアルゴリズムを用いた歪補正方式による従来の回路は、図10及び図11又は図12に示すように構成されていた。
【0004】
図10に示した従来回路はDSP10と送信側RF(Radio Frequency)部12を具備し、DSP10内にπ/4シフトQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)マッピング部(以下、単にπ/4-QPSKマッピング部という)14、ルートナイキストフィルタ16、電力計算部18、歪補正係数算出部20及び歪補正部22を設け、送信側RF部12内にD/A変換部24、26、アナログ直交変調部28、周波数変換部30、32、局部発振器34、電力増幅器(以下、PAという)36、方向性結合器38、アナログ直交復調部40、LPF(ローパスフィルタ)42、44及びA/D(アナログ/ディジタル)変換部46、48を設けている。
そして、送信デ−タがDSP10に取り込まれると、π/4-QPSKマッピング部14及びルートナイキストフィルタ16によってベースバンド変調信号I1、Q1が生成し、歪補正部22による複素積和演算処理で歪み補正されて送信側RF部12に出力する。
送信側RF部12では、歪補正部22で歪補正されたベースバンド変調信号I2、Q2が、D/A変換部24、26でアナログ信号に変換され、アナログ直交変調部28で直交変調され、周波数変換部30で無線周波数にアップコンバージョンされ、PA36で所定電力に増幅されて送信信号となり、方向性結合器38を経由した後にアンテナ50から出力する。PA36から出力した送信信号の一部は、方向性結合器38で取り出され、周波数変換部32、アナログ直交復調部40、LPF42、44及びA/D変換部46、48によって復調され、DSP10にフィードバックされる。
DSP10では、歪補正係数算出部20により、電力計算部18で求めた電力値Pに応じて、まずベースバンド変調信号I1、Q1をリファレンス信号として送信側RF部12からフィードバックされた復調信号I3、Q3に対する誤差成分(すなわち歪成分)が検出され、ついで、この誤差成分を打ち消すための補正係数が算出される。この補正係数は電力値Pに応じて歪補正部22でベースバンド変調信号I1、Q1に乗算され、送信信号の隣接チャネル漏洩電力が抑圧される。
【0005】
また、図12に示した従来回路は、送信側RF部12aに周波数変換部52、局部発振器53、A/D変換部54、ディジタル直交復調処理部56及びローパスフィルタ処理部58を設け、方向性結合器38で取り出された送信信号が、周波数変換部52でIF信号(中間周波数信号)にダウンコンバートされ、A/D変換部54でディジタル信号に変換され、ディジタル直交復調処理部56及びローパスフィルタ処理部58で復調され、DSP10にフィードバックされる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図10に示した従来回路は、フィードバック系を構成するアナログ直交復調部40、LPF42、44、A/D変換部46、48によって歪補正特性が著しく劣化するという問題点があった。
すなわち、アナログ直交復調部40は、図11に示すように90°移相器62、乗算器64、66等の線形性に乏しい部品で構成されているので、I/Q直交誤差やI/Qゲイン誤差が生じ、歪補正特性を劣化させる。例えば、基準信号発振器68から出力する基準信号の位相を90°移相する90°移相器62には通常±2°程度の誤差があり、I/Q直交誤差が生じ、復調I/Q信号に振幅誤差が生じていた。
また、復調I/Q信号のバラツキやLPF42、44の通過特性の相違などにより、LPF42、44から出力するI/Q信号に振幅誤差が生じていた。
また、直交復調後のI/Q信号をA/D変換部46、48の入力レンジに合わせるためにDCバイアス回路が必要になるが、ここで生じるバイアス電圧誤差によってDCオフセットが発生していた。
【0007】
一方、図12に示した従来回路は、ディジタル信号処理を行うディジタル直交復調処理部56と直交復調処理後のローパスフィルタ処理を行うローパスフィルタ処理部58を具備しているので、ディジタル直交復調処理部56のI/Q直交誤差やI/Qゲイン誤差が皆無となり、ローパスフィルタ処理部58でDCオフセットによるキャリアリーク成分を除去できるので、特性向上を図ることができるが、次ぎのような問題点があった。
すなわち、一般にIF信号をA/D変換する場合、ナイキスト定理からA/D変換部54のサンプリング周波数は少なくともIF信号の周波数Fif(例えば400KHz〜500KHz)の数倍の周波数(例えば数MHz)となるので、ディジタル直交復調処理部56及びローパスフィルタ処理部58をDSP10内で構成することが困難で、FPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device)等のゲートロジック回路で構成しなければならず、回路規模、消費電力及びコスト面において実用的でないという問題点があった。
【0008】
詳述すると、現在使用されているDSP10では、数MHzで標本化されたデ−タを直交復調処理、ローパスフィルタ処理を行って復調信号を生成し、歪補正処理及び送信信号出力処理を1フレーム時間(数+ミリ秒)内で行うことは難しい。このため、ディジタル直交復調処理部56及びローパスフィルタ処理部58をFPGAやPLD等のゲートロジック回路で構成しなければならない。しかし、ゲートロジック回路でローパスフィルタ処理部58のようなディジタルフィルタを構成すると、数万ゲート級のFPGAでも数+個必要となり、回路規模及び消費電力が大きくなり過ぎ、コスト面で実用的でないという問題点があった。
【0009】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、直交復調処理の直交誤差やゲイン誤差を皆無として歪補正特性の向上を図ることができるとともに、小型化及び省電力化を図ることのできるディジタル無線装置の歪補正回路を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、送信デ−タに対してディジタル直交変調処理部によってディジタル直交変調処理をし、かつ、ルートナイキストフィルタによってルートナイキスト処理をしてベースバンド変調信号を作成し、このベースバンド変調信号をD/A変換部(サンプリング周波数Ftxsp)でアナログ信号に変換し電力増幅器で増幅して送信信号を作成し、この送信信号の一部をフィードバックして復調し、復調信号から前記電力増幅器で生じた歪成分を検出して歪成分を打ち消すための歪補正係数を歪補正係数算出部によって算出し、この歪補正係数を歪補正部によって前記ベースバンド変調信号に乗算して前記送信信号の隣接チャネル漏洩電力を抑圧するようにしたディジタル無線装置の歪補正回路において、前記フィードバックした送信信号を周波数FifのIF信号(中間周波数信号)に変換する周波数変換部と、前記IF信号を周波数Fsp(FspはFtxspの2倍以上でFif×4/mに等しい条件を満たす周波数を表す。mは3以上の奇数を表す。)で標本化してディジタル信号に変換するA/D変換部と、このA/D変換部の出力信号にディジタル直交復調処理をして互いに直交する復調信号を出力するディジタル直交復調処理部と、このディジタル直交復調処理部の出力する復調信号からエンベロープ成分を取り出して歪成分検出用の復調信号とするローパスフィルタとを具備してなり、前記ディジタル直交変調処理部、ルートナイキストフィルタ、歪補正係数算出部、歪補正部、ディジタル直交復調処理部、及び、ローパスフィルタをディジタル信号処理プロセッサ(DSP)によって構成したことを特徴とする。
【0011】
フィードバックした送信信号は、周波数変換部によって周波数FifのIF信号に変換され、A/D変換部でディジタル信号に変換される。このA/D変換部のサンプリング周波数Fspは、送信信号を作成するD/A変換部のサンプリング周波数Ftxspの2倍以上で、かつIF信号の周波数Fifの4/m(mは3以上の奇数を表す。)倍に設定されている。すなわち、Fsp=Fif×4/mの条件とFsp≧2Ftxspの条件とを満たすサンプリング周波数FspでIF信号を標本化(すなわちアンダーサンプリング)することによって、IF信号の情報デ−タ成分が保持されたまま、サンプリング周波数Fspの1/4の周波数にダウンコンバートされた信号をA/D変換部で生成して出力することができる。例えば、Fifを400KHz〜500KHzとすると、Fspはナイキスト周波数より低い周波数(最大でもm=3の約533KHz〜約666KHz)となり、A/D変換部で生成して出力する信号の周波数は100KHz〜125KHzとなる。このため、ディジタル直交復調処理部、ローパスフィルタの処理速度を低く抑えることができ、DSPのディジタル信号処理で扱うことができる。したがって、直交復調処理部の直交誤差やゲイン誤差を皆無として歪補正特性の向上を図ることができるとともに、使用デバイスの軽減等により小型化・省電力化を図ることができる。
【0012】
直交復調処理で現われる「0」信号成分による歪補正特性劣化を防止するために、ローパスフィルタをディジタル直交復調処理部の出力する復調信号のうちの周波数Fsp/2の周波数成分を除去してエンベロープ成分を取り出すように構成する。
【0013】
直交復調処理で現われる「0」信号成分による歪補正特性劣化を防止するとともに、A/D変換部のDCオフセットの影響を皆無に等しい程度に軽減するために、ローパスフィルタを、ディジタル直交復調処理部の出力する復調信号のうちの周波数Fsp/2及び周波数Fsp/4の周波数成分を除去してエンベロープ成分を取り出すように構成する。
【0014】
電源投入の初期時においても、隣接チャネル漏洩電力を充分に抑圧できるようにするために、予め複数段階の電力毎に設定された歪補正係数を記憶した外部メモリと、電源投入時に外部メモリに記憶された歪補正係数を読み出して内部メモリへ書き込み歪補正の初期値とするメモリ制御機能とを具備する。
【0015】
送信電力を制御する機能を具備しているものにおいて、送信電力制御の制御時と非制御時の切り替え時においても、隣接チャネル漏洩電力を充分に抑圧できるようにするために、外部メモリは送信電力の制御時と非制御時に対応した2種類の歪補正係数を予め記憶してなり、メモリ制御機能は、電源投入時に外部メモリから内部メモリに書き込んだ2種類の歪補正係数のうちの初期状態に対応した一方の歪補正係数を読み出して歪補正の初期値とするとともに、電力制御の切り替え時に内部メモリから対応した歪補正係数を読み出して切り替え直後の歪補正の初期値とする。
【0016】
送信周波数チャネルの切り替えを制御するチャネル切替制御機能を具備しているものにおいて、送信周波数チャネルの切り替え時においても、隣接チャネル漏洩電力を充分に抑圧できるようにするために、外部メモリは各送信周波数チャネルに対応した複数種類の歪補正係数を予め記憶してなり、メモリ制御機能は、電源投入時に前記外部メモリから内部メモリへ書き込んだ複数種類の歪補正係数のうちの初期状態に対応した1種類の歪補正係数を読み出して歪補正の初期値とするとともに、送信周波数チャネルの切り替え時に前記内部メモリから対応した歪補正係数を読み出して切り替え直後の歪補正の初期値とする。
【0017】
送信電力を制御する機能とチャネル切替制御機能を具備しているものにおいて、送信電力の制御と非制御の切り替え時においても、送信周波数チャネルの切り替え時においても、隣接チャネル漏洩電力を充分に抑圧できるようにするために、外部メモリは、送信電力の制御時と非制御時のそれぞれについて各送信周波数チャネルに対応した複数種類の歪補正係数を予め記憶してなり、メモリ制御機能は、電源投入時に前記外部メモリから内部メモリに書き込んだ複数種類の歪補正係数のうちの初期状態に対応した1種類の歪補正係数を読み出して歪補正の初期値とするとともに、電力制御の切り替え時と送信周波数チャネルの切り替え時に前記内部メモリから対応した歪補正係数を読み出して切り替え直後の歪補正の初期値とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態例を図面により説明する。
図1は本発明によるディジタル無線装置の歪補正回路の一実施形態例を示すもので、図10、図12と同一部分は同一符号とし説明を省略又は簡略する。
図1において、10aはDSP、12bは送信側RF部である。
前記DSP10aには、図10のDSP10と同様にπ/4-QPSKマッピング部14、ルートナイキストフィルタ16、電力計算部18、歪補正係数算出部20及び歪補正部22が設けられているとともに、ディジタル直交復調処理部70及びLPF(ローパスフィルタ)72、74が設けられている。
前記送信側RF部12bには、図12の送信側RF部12aと同様にD/A変換部24、26、アナログ直交変調部28、周波数変換部30、52、局部発振器34、60、PA36及び方向性結合器38が設けられるとともに、A/D変換部76が設けられている。
【0019】
前記A/D変換部76は、前記周波数変換部52で周波数がダウンコンバートされたIF信号を、サンプリング周波数Fspでサンプリングして得た第2IF信号を出力する。このFspは次ぎの(1)式を満たすとともに、前記D/A変換部24、26のサンプリング周波数Ftxspの2倍以上の整数倍に設定されている。
Fsp=Fif×4/m…(1)
(1)式においてmは3以上の奇数(3、5、7、…)を表し、IF信号をナイキスト周波数(2Fif以上の周波数)以下のサンプリング周波数でサンプリング(以下、単にアンダーサンプリングという。)していることを表している。
また、FspをFtxspの2倍以上に設定したのは、送信側RF部12bから出力する送信信号(歪成分を含む)を忠実に検出するためには、フィードバック側のA/D変換部76のサンプリング周波数Fspを、送信側のサンプリング周波数Ftxspの2倍以上に設定しておく必要があるからである。
【0020】
前記ディジタル直交復調処理部70は、前記A/D変換部76から出力する第2IF信号に、90°の位相差をもったI側とQ側のディジタルローカル信号(以下、単にLo信号という。)を順次乗算して互いに直交する復調信号I4、Q4を出力する。
前記LPF72、74は、前記ディジタル直交復調処理部70の直交復調処理で得られた復調信号I4、Q4からFsp/2及びFsp/4の周波数成分を除去してエンベロープ成分を取り出すとともに、DCオフセットの影響を軽減する。すなわち、「0」振幅成分が2/Fspの周期で交互に混入している復調信号I4、Q4からFsp/2の周波数成分を除去することによってエンベロープ成分(情報デ−タ信号成分)のみを取り出し、DCオフセット成分の直交復調処理で発生するFsp/4の周波数成分を除去することによってDCオフセットの影響を軽減する。
【0021】
前記歪補正係数算出部20は、図2に示すように、前記PA36で生じた歪み量を検出する誤差検出部77と、歪補正を行う際に用いる電力毎の補正係数HPの初期値及び更新値を記憶する係数テーブル78と、歪補正を行う際に用いる電力毎の補正係数HPを演算して出力するとともに、前記係数テーブル78の補正係数HPを更新する係数演算部80とで構成されている。
【0022】
前記誤差検出部77は、前記ルートナイキストフィルタ16から出力したベースバンド変調信号I1、Q1をリファレンス信号として、前記LPF72、74で取り出したエンベロープ成分を2倍(2倍するための回路表示を省略し、なぜ2倍するかは後述の作用の項で説明する。)したベースバンド復調信号I5、Q5と比較し、I、Qそれぞれの差分を誤差成分(歪成分)εとして出力する。
前記係数テーブル78には、ベースバンド変調信号I1、Q1の電力変動範囲を小さい方から大きい方に向かってn(nは2以上の整数を表す。)段階に区分したΔP1、ΔP2、ΔP3、…、ΔPnの電力毎に、歪補正係数HP1、HP2、HP3、…、HPnが更新可能に記憶されている。例えば、ベースバンド変調信号I1、Q1の電力変動範囲は、π/4-QPSKマッピング部14のπ/4-QPSK変調でロールオフ率が0.5の場合、変調波形の平均電力に対して−11dB〜+3dBの電力変動があることがわかっている。また、歪補正係数HPは実部(実数部)と虚部(虚数部)からなり、初期値としては例えばHP(実部)=1、HP(虚部)=0に設定され、更新されていく。
前記係数演算部80は、前記誤差検出部77で検出された誤差成分εと、前記電力計算部18で求めた電力値P(ベースバンド変調信号I1、Q1の電力値)に応じて前記係数テーブル78から読み出された歪補正係数HP(旧)とを次式(2)に代入して新たな歪補正係数HP(新)を求める演算を行い、この歪補正係数HP(新)を前記歪補正部22へ出力するとともに、更新値として前記係数テーブル78へ出力する。
HP(新)=HP(旧){1+μ×ε×Z(j)}…(2)
(2)式においてμは補正量の大きさを制御するパラメータであるステップサイズ、Z(j)はフィードバックサンプルの複素共役を表す。ここで、フィードバックサンプルとは直交復調されたデ−タを表し、π/4-QPSK変調が2ビットデ−タ(Iデ−タ、Qデ−タ)であるため、復調されるデ−タはIデ−タ、Qデ−タとなり、複素数表現ではI(デ−タ)+jQ(デ−タ)となる。このため、フィードバックサンプルの複素共役を表すZ(j)はI(デ−タ)−jQ(デ−タ)となる。
【0023】
前記歪補正部22は、次式(3)、(4)に示すように、前記ルートナイキストフィルタ16から出力したベースバンド変調信号I1、Q1に、前記電力計算部18で求めた電力値P(例えばΔP3の段階に属する)に応じて前記係数演算部80から出力する歪補正係数HP(例えばHP3)を乗算して、歪補正されたベースバンド変調信号I2、Q2を出力する。
2(t)=I1(t)×HP(実部)−Q1(t)×HP(虚部)…(3)
2(t)=Q1(t)×HP(実部)−I1(t)×HP(虚部)…(4)
【0024】
つぎに図1及び図2の作用を図3〜図8を併用して説明する。
(1)送信デ−タがDSP10aに取り込まれると、π/4-QPSKマッピング部14及びルートナイキストフィルタ16によってベースバンド変調信号I1、Q1が生成し、歪補正部22による複素積和演算処理で歪み補正されたベースバンド変調信号I2、Q2が送信側RF部12bに出力する。
送信側RF部12bでは、歪補正部22で歪補正されたベースバンド変調信号I2、Q2が、D/A変換部24、26でアナログ信号に変換され、アナログ直交変調部28で直交変調され、周波数変換部30で無線周波数にアップコンバージョンされ、PA36で所定電力に増幅されて送信信号となり、方向性結合器38を経由した後にアンテナ50から基地局等へ出力する。
【0025】
(2)PA36から出力した送信信号の一部は、方向性結合器38で取り出され、周波数変換部52で周波数FifのIF信号にダウンコンバージョンされ、A/D変換部76に入力する。
A/D変換部76は、IF信号をサンプリング周波数Fspでアンダーサンプリングしてディジタル信号である第2IF信号を生成し、DSP10a内のディジタル直交復調処理部70へ出力する。
説明の便宜上IF信号をsin波とし、前記式(1)でm=5とすると、アンダーサンプリングのサンプリング周波数FspはIF信号の周波数Fifの4/5倍となるので、図3に示すように、アンダーサンプリングの標本化周期1/FspはIF信号の周期1/Fifの5/4倍となる。すなわち、IF信号に対して90°位相が遅れた点(図3中に●印で示した点)をサンプリングすることになり、●印で示した点の軌跡はIF信号同様sin波であり、その周期はサンプリング周期1/Fspの4倍となる。m=5以外のとき(例えば3、7、9、…)も同様である。つまり、式(1)が成立するサンプリング周波数FspでIF信号をアンダーサンプリングすることにより、A/D変換部76の出力側にはFsp/4の周波数に周波数変換された第2IF信号が生成される。図3において、↑印は4倍オーバーサンプリングのサンプル点を表す。
また、送信信号(歪成分を含む)を忠実に検出するためには、FspはFtxspの2倍以上に設定されていなければならない(詳しくは後述する。)。
【0026】
(3)ディジタル直交復調処理部70は、A/D変換部76から出力する第2IF信号に、図4(a)(b)に示すような90°の位相差をもったI側Lo信号とQ側Lo信号を順次乗算して互いに直交する復調信号I4、Q4を出力する。
I側Lo信号は、図4(a)に示すように、期間1/Fsp(位相差90°に相当)毎に「+1」、「0」、「−1」、「0」の状態の信号となり、4状態で1周期(4/Fsp)を構成する。Q側Lo信号は、図4(b)に示すようにI側Lo信号に対して90°位相が遅れた(又は進んだ)「0」、「+1」、「0」、「−1」の4状態で1周期を構成する。このため、ディジタル直交復調処理部70では、第2IF信号の1サンプル毎に、I側Lo信号(Q側Lo信号)を順次繰り返して乗算することにより直交復調処理され、第2IF信号と同様の周波数Fsp/4のLo信号(Q側Lo信号はI側Lo信号に対して90°位相が遅れた(又は進んだ)信号)との乗算結果としてベースバンド復調信号I4、Q4が生成される。このベースバンド復調信号I4、Q4は、図5に示すように、I側Lo信号、Q側Lo信号とも期間2/Fsp毎に「0」信号が存在する。
【0027】
(4)前記(3)に記述したようにディジタル直交復調処理部70で直交復調処理されたベースバンド復調信号I4、Q4には、期間2/Fsp毎に「0」信号が存在するので、送信側RF部12bから出力する送信信号(歪成分を含む)を忠実に検出するためには、前記(2)におけるA/D変換部76のアンダーサンプリング周波数Fspは送信側のサンプリング周波数Ftxspの2倍以上に設定されていなければならない。
説明の便宜上、π/4-QPSKマッピング部14において、送信シンボルレート16kボー(32kbps)の送信デ−タに対して8倍オーバーサンプリングで変調信号を出力する場合について考えると、送信側のD/A変換部24、26のサンプリング周波数は128kHz(=16k×8)となる。この場合、送信デ−タの周波数帯域は16kHzであるが、D/A変換部24、26のサンプリング周波数が128kHzであることから、サンプリング定理により64kHz(=128kHz/2)の帯域までの送信信号成分を出力していることになる。すなわち、D/A変換部24、26から出力する信号は、図6(a)に示すように、周波数帯域16kHzの送信デ−タ及び64kHz帯域内までの逆歪成分となる。図6(a)において、FW1はD/A変換部24、26より出力される信号の周波数帯域を表す。
次に64kHz帯域の送信信号をフィードバック側A/D変換部76で送信側D/A変換部24、26のサンプリング周波数と同様の周波数128kHzでサンプリングした場合を考えると、直交復調処理されたベースバンド復調信号I4、Q4に「0」信号が存在するため、実際の復調デ−タは64kHz(=Fsp/2)間隔となる。これはベースバンド信号I、Qに対しては64kHzでサンプリングしたことと同様となるので、図6(b)に示すように、サンプリング後の信号成分(周波数帯域)は32kHz(=64kHz/2)となり、直交復調処理されたベースバンド復調信号I4、Q4からは32kHz〜64kHzに含まれる歪成分(図中点線で示す)の検出が不可能になってします。図6(b)において、FW2は、Fspを128kHzとした場合にディジタル直交復調処理部70で復調可能な信号帯域(0〜32kHz)を表す。
従って、送信側RF部12bから出力する送信信号(歪成分を含む)を忠実に検出するためには、A/D変換部76のアンダーサンプリングのサンプリング周波数Fspは送信側のサンプリング周波数Ftxspの2倍(例えば256kHz)以上に設定されていなければならない。
【0028】
(5)LPF72、74は、ディジタル直交復調処理部70の直交復調処理で得られた復調信号I4、Q4からFsp/2及びFsp/4の周波数成分を除去してエンベロープ成分を取り出すとともに、DCオフセットの影響を軽減する。
すなわち、直交復調処理で得られた復調信号I4、Q4は、図5及び図7(a)に示すように期間2/Fsp毎に「0」信号となるので、例えばディジタルFIRフィルタで形成されたLPF72、74によって、Fsp/2の周波数成分を除去(情報デ−タ信号帯域は通過)し、図7(b)に示すようなエンベロープ成分が抽出される。ディジタルフィルタ処理は畳み込み演算となるため、図5及び図7(a)に示すように交互に「0」信号が存在する波形をフィルタリングすると、信号振幅が1/2となるため、LPF72、74でフィルタ処理された信号を図示を省略した増幅器などを用いて振幅を2倍して歪補正係数算出部20へ出力しなければならない。
【0029】
(6)上記の通り、LPF72、74でFsp/2の周波数成分を除去することにより、情報デ−タ成分を復調できるが、さらにFsp/4の周波数成分を除去することによりフィードバック側のDCオフセット成分(A/D変換部76の入力信号のバイアス電圧誤差)による特性劣化を防止することができる。以下、図8を用いて説明する。
周波数変換部52から出力するIF信号をA/D変換部76の入力レンジに合わせるために、DCバイアス回路(図示省略)から図1に示すa点にバイアス電圧Vbを加える必要があるが、このときに生じるバイアス電圧誤差(DCオフセット成分)も歪補正特性を著しく劣化させる要因になる。
図8(a)に示すようにDCオフセット成分が無い場合には、A/D入力信号(IF信号)の中心レベルVcがバイアス電圧Vbと一致し、歪補正特性を劣化させる要因にはならない。VhはA/D入力レンジの上位レベル、VlはA/D入力レンジの下位レベルを表す。
A/D入力信号(IF信号)の中心レベルVcがバイアス電圧Vbと不一致になると、図8(b)に示すようにDCオフセットが生じ、a点の電力スペクトラムは同図(c)に示すようになり、IF信号成分の外にDCオフセット成分が現われる。
A/D変換部76は(IF信号+DC)をサンプリング周波数Fspでアンダーサンプリングするので、b点の電力スペクトラムは図8(d)に示すようになり、第2IF信号成分の外にDCオフセット成分が現われる。
ディジタル直交復調処理部70は、第2IF信号を直交復調処理する際、Lo信号が第2IF信号の周波数(Fsp/4)と等しくなるので、第2IF信号とLo信号の乗算処理をして直交復調処理をすると、デ−タ成分はベースバンド信号に復調され、DCオフセット成分はFsp/4の周波数成分に現われる。さらに、直交復調処理による「0」信号成分がFsp/2の周波数成分に現われる。このため、c、d点の電力スペクトラムは図8(e)に示すようになる。
このため、LPF72、74の通過特性を図8(f)に示すように構成することによって、直交復調処理で発生した「0」信号成分とDCオフセット成分を除去したベースバンド復調信号I5、Q5を得ることができる。
【0030】
前記実施形態例では、歪補正係数算出部の係数テーブルには初期値としてHP(実部)=1、HP(虚部)=0を設定し、電源投入の初期状態には歪補正部が入力ベースバンド変調信号I1、Q1をそのまま補正後のベースバンド変調信号I2、Q2として出力するようにしたが、本発明はこれに限るものでなく、予め歪補正したときの歪補正係数HPを不揮発性の外部メモリに記憶しておき、電源投入時に外部メモリから歪補正係数HPを読み出して内部メモリへ書き込み、歪補正係数算出部の係数テーブルに初期値として書き込むことによって、電源投入時においても隣接チャネル漏洩電力を充分に抑圧するようにしたものにも利用することができる。
また、ディジタル移動通信では移動無線器に対して送信電力を制御するか否かを切り替える電力制御切替機能を具備しているものがある。すなわち、基地局と移動局間の通信距離が短い場合、移動無線器の送信電力を小さくするために電力増幅器の前段に設けた可変減衰器を調整して電力増幅器への入力電力を下げる方法があるが、可変減衰器を調整して電力増幅器への入力電力を下げた時(電源の制御時)と、可変減衰器を調整せずに電力増幅器への入力電力を変えない時(電源の非制御時)とで適切な歪補正係数の値が異なる。このため、送信電力の制御と非制御の切り替え時に一旦隣接チャネル漏洩電力が増大し、歪補正係数が更新されて隣接チャネル漏洩電力を十分に抑圧するのに適した歪補正係数になるまで数十秒の時間がかかる。このような問題を解決するために、外部メモリに送信電力の制御時と非制御時に対応した2種類の歪補正係数HPを予め記憶ししておき、メモリ制御機能によって、電源投入時に外部メモリから内部メモリに書き込んだ2種類の歪補正係数HPのうちの初期状態に対応した1種類の歪補正係数を読み出して係数テーブルに書き込むことによって、電力制御の切り替え直後においても隣接チャネル漏洩電力を充分に抑圧するようにしたものにも利用することができる。
同様に、外部メモリに送信周波数チャネルに対応した複数種類の歪補正係数HPを予め記憶ししておき、メモリ制御機能によって、電源投入時に外部メモリから内部メモリに書き込んだ複数種類の歪補正係数HPのうちの初期状態に対応した1種類の歪補正係数を読み出して係数テーブルに書き込むことによって、送信周波数チャネルの切り替え直後においても隣接チャネル漏洩電力を充分に抑圧するようにしたものにも利用することができる。
【0031】
例えば、図9に示すように、DSP10b内に内部メモリ82を設け、外部に外部メモリとしてのEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)84を設け、このEEPROM84に、送信電力の制御時と非制御時のそれぞれについて、各段階の電力毎(ΔP1、ΔP2、ΔP3、…、ΔPn)に、各送信周波数チャネル(F1、F2、…、Fm)に対応した複数種類の歪補正係数(HP11〜HP1n、HP21〜HP2n、…、HPm1〜HPmn)を予め記憶しておく。そして、メモリ制御機能によって、電源投入時に発生させた制御信号に基づいてEEPROM84から複数種類の歪補正係数の全て(又は所定数)を読み出して内部メモリ82へ書き込むとともに、電力制御情報やチャネル切替制御情報等の制御情報に基づいて内部メモリ82内の対応した歪補正係数を初期値として係数テーブル78に書き込み、さらに、送信電力の制御と非制御の切り替え直後や、送信周波数チャネルの切り替え直後に内部メモリ82内の複数種類の歪補正係数(HP11〜HP1n、HP21〜HP2n、…、HPm1〜HPmn)のうちの対応した1種類の歪補正係数を読み出して係数テーブル78に書き込む。例えば、送信電力の制御時で送信周波数チャネルの周波数がF2のときには、内部メモリ82内の対応した歪補正係数HP21〜HP2n(図9の内部メモリ82内の左側に表示した歪補正係数)が読み出されて係数テーブル78に書き込まれる。
【0032】
図9に示した実施形態例では、送信電力の制御時が1種類の場合について説明したが、本発明はこれに限るものでなく、送信電力の制御時が複数種類の場合についても利用することができる。この場合、送信電力の第1制御時(例えば可変減衰器による減衰率が1/10の時)、第2制御時(例えば可変減衰器による減衰率が2/10の時)、…のそれぞれについて、各段階の電力毎(ΔP1、ΔP2、ΔP3、…、ΔPn)に、各送信周波数チャネル(F1、F2、…、Fm)に対応した複数種類の歪補正係数(HP11〜HP1n、HP21〜HP2n、…、HPm1〜HPmn)を予め外部メモリに記憶しておく。そして、メモリ制御機能によって対応した読み書き制御をする。
【0033】
図9に示した実施形態例では、送信電力を制御する機能とチャネル切替制御機能の両機能を具備したものに利用できるようにするために、外部メモリに、送信電力の制御時と非制御時のそれぞれについて各送信周波数チャネルに対応した複数種類の歪補正係数を予め記憶した場合について説明したが、本発明はこれに限るものでなく、送信電力を制御する機能とチャネル切替制御機能のいずれか一方の機能を具備したものについても利用することができる。
または、送信電力を制御する機能とチャネル切替制御機能の両機能を具備しないものについても利用することができる。この場合、外部メモリに予め複数段階に区分された電力毎に設定された歪補正係数を記憶しておき、電源投入時に外部メモリに記憶された歪補正係数を読み出して内部メモリへ書き込み歪補正の初期値とするようにしたものについても利用することができる。例えば、電源投入時に外部メモリに記憶された歪補正係数を読み出して内部メモリ82へ書き込むとともに、この内部メモリから対応した歪補正係数を初期値として係数テーブル78に書み込むようにした場合についても利用することができる。
【0034】
【発明の効果】
本発明は、上記のように、フィードバックした送信信号を周波数FifのIF信号に変換する周波数変換部と、IF信号を周波数Fspで標本化してディジタル信号に変換するA/D変換部と、このA/D変換部の出力信号にディジタル直交復調処理をして互いに直交する復調信号を出力するディジタル直交復調処理部と、このディジタル直交復調処理部の出力する復調信号からエンベロープ成分を取り出して歪成分検出用の復調信号とするローパスフィルタとを具備し、A/D変換部のサンプリング周波数Fspを、送信信号を作成するD/A変換部のサンプリング周波数Ftxspの2倍以上で、かつIF信号の周波数Fifの4/m(mは3以上の奇数)倍に設定した。このため、IF信号の情報デ−タ成分が保持されたまま、サンプリング周波数Fspの1/4の周波数にダウンコンバートされた信号をA/D変換部で生成して出力することができ、ディジタル直交復調処理部、ローパスフィルタの処理速度を低く抑えることができ、ディジタル直交復調処理部及びローパスフィルタをDSPで実現することができる。したがって、直交復調処理部の直交誤差やゲイン誤差を皆無として歪補正特性の向上を図ることができるとともに、使用デバイスの軽減等により小型化・省電力化を図ることができる。
【0035】
ローパスフィルタがディジタル直交復調処理部の出力する復調信号のうちの周波数Fsp/2の周波数成分を除去してエンベロープ成分を取り出すように構成した場合には、直交復調処理で現われる「0」信号成分を除去して「0」信号成分による歪補正特性劣化を防止することができる。
【0036】
ローパスフィルタがディジタル直交復調処理部の出力する復調信号のうちの周波数Fsp/2及びFsp/4の周波数成分を除去してエンベロープ成分を取り出すように構成した場合には、直交復調処理で現われる「0」信号成分による歪補正特性劣化を防止するとともに、A/D変換部のDCオフセットの影響を皆無に等しい程度に軽減することができる。
【0037】
予め複数段階に区分された電力毎に設定された歪補正係数を記憶した外部メモリと、電源投入時に外部メモリに記憶された歪補正係数を読み出して内部メモリへ書き込み歪補正の初期値とするメモリ制御機能とを具備した場合には、電源投入の初期時においても、隣接チャネル漏洩電力を充分に抑圧することができ、妨害波が出るのを防止することができる。
【0038】
送信電力を制御する機能を具備しているものにおいて、外部メモリに送信電力の制御時と非制御時に対応した2種類の歪補正係数を予め記憶し、メモリ制御機能によって、電源投入時に外部メモリから内部メモリに書き込んだ2種類の歪補正係数のうちの初期状態に対応した一方の歪補正係数を読み出して歪補正の初期値とするとともに、電力制御の切り替え時に内部メモリから対応した歪補正係数を読み出して歪補正の初期値とするように構成した場合には、送信電力の制御と非制御の切り替え直後においても、隣接チャネル漏洩電力を充分に抑圧することができ、妨害波が出るのを防止することができる。
【0039】
送信周波数チャネルの切り替えを制御するチャネル切替制御機能を具備したものにおいて、外部メモリに各送信周波数チャネルに対応した複数種類の歪補正係数を予め記憶し、メモリ制御機能によって、電源投入時に外部メモリから内部メモリへ書き込んだ複数種類の歪補正係数のうちの初期状態に対応した1種類の歪補正係数を読み出して歪補正の初期値とするとともに、送信周波数チャネルの切り替え時に内部メモリから対応した歪補正係数を読み出して歪補正の初期値とするように構成した場合には、送信周波数チャネルの切り替え直後においても、隣接チャネル漏洩電力を充分に抑圧することができ、妨害波が出るのを防止することができる。
【0040】
送信電力を制御する機能とチャネル切替制御機能を具備したものにおいて、外部メモリに、送信電力の制御時と非制御時のそれぞれについて各送信周波数チャネルに対応した複数種類の歪補正係数を予め記憶し、メモリ制御機能によって、電源投入時に外部メモリから内部メモリに書き込んだ複数種類の歪補正係数のうちの初期状態に対応した1種類の歪補正係数を読み出して歪補正の初期値とするとともに、電力制御の切り替え時と送信周波数チャネルの切り替え時に内部メモリから対応した歪補正係数を読み出して歪補正の初期値とするように構成した場合には、送信電力の制御と非制御の切り替え直後においても、送信周波数チャネルの切り替え直後においても、隣接チャネル漏洩電力を充分に抑圧することができ、妨害波が出るのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるディジタル無線装置の歪補正回路の一実施形態例を示すブロック図である。
【図2】図1の歪補正係数算出部20の具体例を示すブロック図である。
【図3】図1のA/D変換部76におけるアンダーサンプリングの説明図である。
【図4】図1のディジタル直交復調処理部70の直交復調処理に用いられるLo信号(ディジタルローカル信号)を示す図で、(a)はI側Lo信号の波形図、(b)はQ側Lo信号の波形図である。
【図5】図1のディジタル直交復調処理部70で直交復調処理された復調信号の波形図である。
【図6】図1のA/D変換部76のサンプリング周波数FspがD/A変換部24、26のサンプリング周波数Ftxspの2倍以上の周波数でなければならないことを説明する図で、(a)は送信デ−タの信号帯域を示す電力スペクトラム、(b)は復調デ−タの信号帯域を示す電力スペクトラムである。
【図7】図1のLPF72、74の作用を説明する図で、(a)は入力波形(I4、Q4)、(b)はLPF直後の出力波形、(c)は図示を省略した回路でLPF直後の信号振幅を2倍にした出力波形(I5、Q5)を示す図である。
【図8】図1のA/D変換部76の入力側のa点にバイアス電圧を加えることによって生じたDCオフセット成分をLPF72、74で除去する作用を説明する図で、(a)はDCオフセット無のときのA/D入力信号波形、(b)DCオフセット有のときのA/D入力信号波形、(c)はDCオフセット有のときのa点の電力スペクトラム、(d)はDCオフセット有のときのb点の電力スペクトラム、(e)はDCオフセット有のときのc、d点の電力スペクトラム、(f)はLPF72、74のLPF通過特性を示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態例の要部を示すブロック図である。
【図10】従来例を示すブロック図である。
【図11】図10のアナログ直交復調部40の具体例を示すブロック図である。
【図12】他の従来例を示すブロック図である。
【符号の説明】
10、10a、10b…DSP、 12、12a、12b…送信側RF部、 14…π/4-QPSKマッピング部(ディジタル直交変調処理部の一例)、 16…ルートナイキストフィルタ(ルートナイキスト処理部の一例)、 18…電力計算部、 20…歪補正係数算出部、 22…歪補正部、 24、26…D/A変換部、 28…アナログ直交変調部、 30、52…周波数変換部、 34、53…局部発振器、 36…PA(電力増幅器)、 38…方向性結合器、50…アンテナ、 70…ディジタル直交復調処理部、 72、74…LPF(ローパスフィルタ)、 76…A/D変換部、 77…誤差検出部、 78…係数テーブル、 80…係数演算部、 82…内部メモリ、 84…EEPROM(外部メモリの一例)、 Fsp…A/D変換部76のサンプリング周波数(アンダーサンプリング周波数)、 Ftxsp…D/A変換部24、26のサンプリング周波数。

Claims (7)

  1. 送信デ−タに対してディジタル直交変調処理部によってディジタル直交変調処理をし、かつ、ルートナイキストフィルタによってルートナイキスト処理をしてベースバンド変調信号を作成し、このベースバンド変調信号をD/A変換部(サンプリング周波数Ftxsp)でアナログ信号に変換し電力増幅器で増幅して送信信号を作成し、この送信信号の一部をフィードバックして復調し、復調信号から前記電力増幅器で生じた歪成分を検出して歪成分を打ち消すための歪補正係数を歪補正係数算出部によって算出し、この歪補正係数を歪補正部によって前記ベースバンド変調信号に乗算して前記送信信号の隣接チャネル漏洩電力を抑圧するようにしたディジタル無線装置の歪補正回路において、前記フィードバックした送信信号を周波数FifのIF信号(中間周波数信号)に変換する周波数変換部と、前記IF信号を周波数Fsp(FspはFtxspの2倍以上でFif×4/mに等しい条件を満たす周波数を表す。mは3以上の奇数を表す。)で標本化してディジタル信号に変換するA/D変換部と、このA/D変換部の出力信号にディジタル直交復調処理をして互いに直交する復調信号を出力するディジタル直交復調処理部と、このディジタル直交復調処理部の出力する復調信号からエンベロープ成分を取り出して歪成分検出用の復調信号とするローパスフィルタとを具備してなり、前記ディジタル直交変調処理部、ルートナイキストフィルタ、歪補正係数算出部、歪補正部、ディジタル直交復調処理部、及び、ローパスフィルタをディジタル信号処理プロセッサ(DSP)によって構成したことを特徴とするディジタル無線装置の歪補正回路。
  2. ローパスフィルタはディジタル直交復調処理部の出力する復調信号のうちの周波数Fsp/2の周波数成分を除去してエンベロープ成分を取り出してなる請求項1記載のディジタル無線装置の歪補正回路。
  3. ローパスフィルタはディジタル直交復調処理部の出力する復調信号のうちの周波数Fsp/2及びFsp/4の周波数成分を除去してエンベロープ成分を取り出してなる請求項1記載のディジタル無線装置の歪補正回路。
  4. 予め複数段階の電力毎に設定された歪補正係数を記憶した外部メモリと、電源投入時に前記外部メモリに記憶された歪補正係数を読み出して内部メモリへ書き込み歪補正の初期値とするメモリ制御機能とを具備してなる請求項1、2又は3記載のディジタル無線装置の歪補正回路。
  5. 送信電力を制御するか否かを切り替える電力制御切替機能を具備し、外部メモリは送信電力の制御時と非制御時に対応した2種類の歪補正係数を予め記憶してなり、メモリ制御機能は、電源投入時に前記外部メモリから内部メモリに書き込んだ2種類の歪補正係数のうちの初期状態に対応した一方の歪補正係数を読み出して歪補正の初期値とするとともに、電力制御の切り替え時に前記内部メモリから対応した歪補正係数を読み出して切り替え直後の歪補正の初期値としてなる請求項4記載のディジタル無線装置の歪補正回路。
  6. 送信周波数チャネルの切り替えを制御するチャネル切替制御機能を具備し、外部メモリは各送信周波数チャネルに対応した複数種類の歪補正係数を予め記憶してなり、メモリ制御機能は、電源投入時に前記外部メモリから内部メモリへ書き込んだ複数種類の歪補正係数のうちの初期状態に対応した1種類の歪補正係数を読み出して歪補正の初期値とするとともに、送信周波数チャネルの切り替え時に前記内部メモリから対応した歪補正係数を読み出して切り替え直後の歪補正の初期値としてなる請求項4記載のディジタル無線装置の歪補正回路。
  7. 送信電力を制御するか否かを切り替える電力制御切替機能と送信周波数チャネルの切り替えを制御するチャネル切替制御機能とを具備し、外部メモリは、送信電力の制御時と非制御時のそれぞれについて各送信周波数チャネルに対応した複数種類の歪補正係数を予め記憶してなり、メモリ制御機能は、電源投入時に前記外部メモリから内部メモリに書き込んだ複数種類の歪補正係数のうちの初期状態に対応した1種類の歪補正係数を読み出して歪補正の初期値とするとともに、電力制御の切り替え時と送信周波数チャネルの切り替え時に前記内部メモリから対応した歪補正係数を読み出して切り替え直後の歪補正の初期値としてなる請求項4記載のディジタル無線装置の歪補正回路。
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