JP4029176B2 - 焼結含油軸受 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は焼結含油軸受およびその製造方法に係り、含油率が高いと共に給油が適切に制御されて耐用性に優れた含油軸受およびその製造方法を提供し、また強度的に優れると共に軸材に対するなじみ性の如きにおいても安定した新規な焼結含油軸受を提供しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
焼結含油軸受は従来から種々に採用されて来たところであるが斯様な焼結含油軸受においては適当な含油率を得しめることが必要であって含油率の低いものにおいては適切な潤滑性、耐用性を得ることができない。ところがこの含油率を高めるには焼結体における孔隙率を高めることが必要で、斯様な要請から孔隙率の高められたものは機械的強度において劣ったものとならざるを得ず、このように基本的に相反するような特性を適切な水準まで高めるための手法の1つとしては特公昭57−45801号公報(特開昭54−103935号)が発表されている。
【0003】
即ち、銅粉に錫粉および潤滑剤として金属石けんを添加混合し、しかも該混合粉を圧粉成形、焼結するに当って原料銅粉としての粒度325メッシュ以下の微粉を30〜60%含有したものを採用し、しかも金属石けんの添加量を3%を超え7%のような範囲とするものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記したような従来一般のものにおいては孔隙率を高めて含油率を高くすることとならざるを得ず、強度的に劣ったものとならざるを得ないが、これを解消する前記特公昭57−45801号公報のものは原料銅粉として325メッシュ以下の微粉を30〜60%のように大量に必要とし、しかも金属石けんを3%以上のように大量に使用して圧粉成形するものであるからラトラ値で代表される圧粉体強度等の低下により生産性の低下を避け得ない。
【0005】
また銅粉と錫粉を主材とし、しかも上記のようにそれらの微粉が相当量必要であると共に金属石けんなどを通常よりも多量に用いることが必要であるから原材料的にも相当のコストアップとならざるを得ないし、製造操作上においても金型への充填性や熱間混練の必要性増大、混練後冷却してから特別な解きほぐしを必要とするなどの製造操作上における困難性増加その他の不利を伴うこととならざるを得ない。
【0006】
更に前記したような従来のものは潤滑特性との関係において圧粉体の強度を高めるために固形潤滑材を3〜7%添加すると共に微粉を多量配合するものであるから含油率に制約があり、また固形潤滑材は焼結金属中に異質材が介入分布することからその多量配合は焼結体の組織や強度その他に悪影響を与えることとならざるを得ない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記したような従来のものにおける技術的課題を解消することについて検討を重ね、特定の含油率と通気度を具備した焼結含油軸受を特定の金属粉末を採用することによって的確に得しめ、また強度その他の特性を適切に具備させることに成功したものであって、以下の如くである。
【0011】
(1)含油率が31〜40容量%、通気度が68×10−3darcy以下、圧環強度が15kgf/mm2以上であって、鉄粉に対して10〜30wt%の銅が被覆された銅被覆鉄粉100重量部に対し錫粉1〜3重量部と亜鉛粉単体もしくは黄銅粉として亜鉛成分が0.1〜12重量部になるように添加した原料粉による圧粉成形焼結体であることを特徴とした焼結含油軸受。
【0012】
(2)含油率が31〜40容量%、通気度が68×10−3darcy以下、圧環強度が15kgf/mm2以上であって、鉄粉に対して10〜30wt%の銅が被覆された銅被覆鉄粉または該銅被覆鉄粉100重量部に対し錫粉1〜3重量部と亜鉛粉単体もしくは黄銅粉として亜鉛成分が0.1〜12重量部になるように添加した原料粉に対し固形潤滑材を2wt%以上含有させた原料紛よる圧粉成形焼結体であることを特徴とした焼結含油軸受。
【0013】
【発明の実施の形態】
上記したような本発明によるのの具体的な実施態様について説明すると、本発明においては含油率が31%以上のように高く、しかも通気度が68×10-3darcy 以下のように低くされた焼結含油軸受を提供するものであって、用いる原料粉としては鉄粉に対し少くとも10wt%以上30wt%程度の銅が無電解メッキ法によって被覆された銅被覆鉄粉が採用される。即ち強度的主体は鉄粉であるがメッキその他によって銅被覆が完全状態に施されたものが用いられることによりなじみ性や耐食性などにおいて鉄粉とは本質的に異なったものである。
【0014】
また本発明においては上記のような銅被覆鉄粉に錫粉および亜鉛粉単体もしくは黄銅粉を添加することを提案するものであって、上記のような銅被覆鉄粉に対し錫粉と共に亜鉛粉単体もしくは黄銅粉の適量が添加されることによって該原料粉による圧粉成形焼結体の強度を更に高めた製品を得しめたもので、耐用性その他においてより好ましい焼結含油軸受を提供せしめる。
【0015】
更に本発明では上記のような原料粉に対し固形潤滑材を3wt%の範囲で添加することにより上述したような焼結含油軸受における強度性を確保しながら固形潤滑材による軸受性能の向上を適切に図らしめる。前記のような固形潤滑材の添加は圧粉成形時に行われ、即ち均等状に添加混合されたものとして圧粉成形される。
【0016】
上記したような銅被覆鉄粉または銅被覆鉄粉に錫粉と亜鉛粉単体もしくは黄銅粉を添加混合した原料を用いて圧粉成形、焼結された本発明の含油軸受は圧粉体強度の指標であるラトラ値が一般的に0.06〜0.08g程度として強度が得られ、焼結体における圧環強度としては15〜26 kgf/mm2 程度となる。また前記のようなメッキ法によるものの通気度は一般的に45〜70×10-3darcy のものとして得られる。なおこのものに潤滑油を含浸せしめたときの含油率としては25〜43 vol%となり、圧環強度は17〜28 kgf/mm2 であるが、必要に応じて固体潤滑剤を1〜3重量%の範囲で含有せしめ得る。
【0017】
【実施例】
本発明によるものの具体的な実施例について説明すると、本発明者等は0.04〜0.15mmの鉄粉に対し20重量%程度のCuを前述したメッキ法によって被覆せしめた圧粉成形焼結用粉体を準備し、この銅被覆鉄粉を用いて後述する参考例1〜4のように各軸受体を製造した。なお前記したメッキ法による原料粉は銅被覆層がポーラス状になっていて比表面積が大であり、粉末状態で通気度を低くする特質を有しているものであった。
【0018】
また、本発明者等は上記したような銅被覆鉄粉に対して錫粉および亜鉛粉単体もしくは黄銅粉を添加混合した圧粉成形焼結用粉体を準備し、このような錫粉と亜鉛粉単体もしくは黄銅粉配合原料粉末を用いて後述する実施例1以下のような各軸受体を製造した。
【0019】
〔参考例1〕上記の原料粉末を用いて、軸受体の含油率を31容量%とし内径2mm、外径5mmで高さが3mmの軸受体を作製した。なお、得られた軸受体は、圧粉体のラトラ値(圧粉体の強度)が0.06g、焼結体の圧環強度が22kgf/mm2であり、通気度が48×10−3darcyであった。
【0020】
〔参考例2〕前記した参考例1と同様の原料粉末を用いて、軸受体の含油率を40容量%とした実施例1と同様な軸受材を作製した。なお、このようにして得られた軸受体は、該圧粉体のラトラ値が0.07gで、焼結体の圧環強度が18kgf/mm2であり、通気度が57×10−3darcyであった。
【0021】
〔参考例3〕上記参考例1の原料粉末に潤滑材を3重量%以下添加すると共に、実施例1と同形状の焼結体とし、該軸受体の含油率を32容量%とした軸受試料を作製した。なお、得られた軸受体は、圧粉体のラトラ値が0.065g、焼結体の圧環強度が21kgf/mm2であり、通気度が55×10−3darcyであった。
【0022】
〔参考例4〕参考例1の原料粉末に圧粉成形時に固形潤滑材を2重量%添加し、実施例1と同じ形状、寸法の焼結体とし、軸受体の含油率を39容量%とした軸受試料を作製した。またこのようにして得られた軸受体は、圧粉体のラトラ値が0.075g、焼結体の圧環強度が15kgf/mm2であり、通気度が62×10−3darcyであった。
【0023】
〔実施例1〕上記した銅被覆鉄粉による原料粉末100重量部に対して錫粉1.5重量部と亜鉛粉単体もしくは黄銅粉として亜鉛成分が5重量部になるように添加混合した圧粉成形用原料粉を用いて、軸受体の含油率を30容量%とし内径2mm、外径5mmで高さが3mmの軸受体を作製した。なお得られた軸受体は、圧粉体のラトラ値(圧粉体の強度)が0.06g、焼結体の圧環強度が24kgf/mm2であり、通気度が47×10−3darcyであった。
【0024】
〔実施例2〕前記した実施例1と同様の銅被覆鉄粉100重量部に対して錫粉2.5重量部と亜鉛粉単体もしくは黄銅粉として亜鉛成分が10.5重量部になるように添加混合した原料粉末を用いて、軸受体の含油率を38容量%とした実施例5と同様な軸受材を作製した。なお、このようにして得られた軸受体は、該圧粉体のラトラ値が0.07gで、焼結体の圧環強度が20.5kgf/mm2であり、通気度が58×10−3darcyであった。
【0025】
〔実施例3〕上記した銅被覆鉄粉による原料粉末100重量部に対して錫粉1.2重量部と亜鉛粉単体もしくは黄銅粉として亜鉛成分が0.5重量部になるように添加混合した金属粉末に固形潤滑材を1.5重量%以下添加すると共に、実施例5と同形状の焼結体とし、該軸受体の含油率を30容量%とした軸受試料を作製した。なお、得られた軸受体は、圧粉体のラトラ値が0.065g、焼結体の圧環強度が21kgf/mm2であり、通気度が55×10−3darcyであった。
【0026】
〔実施例4〕実施例1の原料粉末に圧粉成形時に固形潤滑材を2重量%添加し、実施例5と同じ形状、寸法の焼結体とし、軸受体の含油率を39容量%とした軸受試料を作製した。またこのようにして得られた軸受体は、圧粉体のラトラ値が0.075g、焼結体の圧環強度が15kgf/mm2であり、通気度が62×10−3darcyであった。
【0027】
上記のような本発明の各実施例に対する比較例として本発明者等が準備したものは、以下の通りである。
比較例1−電解銅粉に対し、8〜11重量%の錫粉を添加した原料粉を用いて上記実施例と同様の条件で軸受試料を作製した。即ちこのようにして得られた軸受体は、含油率が約20容量%であり、圧粉体のラトラ値が0.065g、焼結体の通気度が70×10-3darcy であった。
比較例2−比較例1の粉末に潤滑材を3重量%以下添加した原料粉を用いて、上記実施例と同様の条件で軸受試料を作製したが、このようにして得られた軸受体は、含油率が約20容量%であり、焼結体の圧環強度が18 kgf/mm2 であった。
【0028】
上記したような本発明の実施例1〜8による製品と比較例1、2による製品について検討した結果によると、本発明の実施例によるものは含油量において比較例のものの1.5〜2.0倍であり、また通気度は比較例より10〜30%程度低いものであるから耐用性において少なくとも50%以上で場合によっては150%超に達するものであることが確認された。
【0029】
【発明の効果】
上記したような本発明によるときは圧環強度が高くて機械的強度に優れ、また含油率が一般的な20容量%前後に対し2倍前後と比較的高いにも拘わらず通気度が低目であって長期に亘って好ましい潤滑作用を実現し、耐用性に優れた焼結含油軸受を提供し得るものであるから工業的にその効果の大きい発明である。
Claims (2)
- 含油率が31〜40容量%、通気度が68×10 −3 darcy以下、圧環強度が15kgf/mm 2 以上であって、鉄粉に対して10〜30wt%の銅が被覆された銅被覆鉄粉100重量部に対し錫粉1〜3重量部と亜鉛粉単体もしくは黄銅粉として亜鉛成分が0.1〜12重量部になるように添加した原料粉による圧粉成形焼結体であることを特徴とした焼結含油軸受。
- 含油率が31〜40容量%、通気度が68×10 −3 darcy以下、圧環強度が15kgf/mm 2 以上であって、鉄粉に対して10〜30wt%の銅が被覆された銅被覆鉄粉または該銅被覆鉄粉100重量部に対し錫粉1〜3重量部と亜鉛粉単体もしくは黄銅粉として亜鉛成分が0.1〜12重量部になるように添加した原料粉に対し固形潤滑材を3wt%以下含有させた原料粉による圧粉成形焼結体であることを特徴とした焼結含油軸受。
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