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JP4026394B2 - 自動車の電動パワーステアリング装置 - Google Patents

自動車の電動パワーステアリング装置 Download PDF

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JP4026394B2
JP4026394B2 JP2002096544A JP2002096544A JP4026394B2 JP 4026394 B2 JP4026394 B2 JP 4026394B2 JP 2002096544 A JP2002096544 A JP 2002096544A JP 2002096544 A JP2002096544 A JP 2002096544A JP 4026394 B2 JP4026394 B2 JP 4026394B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の電動パワーステアリング装置に係わり、特に、操舵角と車輪舵角の伝達比を車速に応じて変化させる車両応答可変機構を備えた自動車の電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、例えば、特開平8−332964号公報等に示されているような、電動機の動力をステアリング系に作用させて操作力の低減を図るようにした電動パワーステアリング装置が使用されるようになってきている。この電動パワーステアリング装置は、操舵力検出手段を備え、この操舵力検出手段により運転者の操舵力(操舵トルク)を検出すると共に、同時に車速に基づき所定補正トルクを発生させるように電動機への駆動電流を制御し、運転者の操舵力の軽減を図っている。
さらに、特許第2522785号公報等に示されているように、ハンドルの操舵角と車輪舵角の伝達比を変化させる車両応答可変機構を備えた電動パワーステアリング装置も知られている。この車両応答可変機構には、ハンドル舵角に対して前輪操舵の伝達比を変化させるVGR装置と、後輪操舵角の伝達比を変化させる4WS装置がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような電動パワーステアリング装置を設計する場合、良好な操舵フィーリングと高い操安性能を得るためには、操舵角に対する操舵力の特性(以下「操舵力特性」という)を所望の操舵力特性(目標操舵力特性)となるように設定する必要がある。
【0004】
そして、目標操舵力特性が設定された場合には、ドライバは、この設定された目標操舵力特性により目標通りの操舵力を感じるので確かにほぼ一定の操舵フィーリングを得ることができる。
しなしながら、車両応答可変機構により車両挙動(車両応答遅れ量)が変化すると、ドライバは常にほぼ一定の操舵フィーリングを感じることができず、そのため、違和感が生じる。特に高車速且つほぼ直進状態の走行時の操舵フィーリング(以下、センターフィーリング)において顕著である。このような新たな課題が本件発明者らによって見出されたのである。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、車両応答可変機構により車両挙動が変化してもドライバが常にほぼ一定のフィーリングであると感じる操舵力特性を備えた自動車の電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
また、本発明は、センターフィーリングの向上を図ることができる自動車の電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、電動モータによりハンドルの操舵をアシストする自動車の電動パワーステアリング装置であって、操舵トルクを検出するトルクセンサと、操舵角と車輪舵角の伝達比を車速に応じてステッピングモータにより変化させる車両応答可変機構と、トルクセンサの値を小さくするように電動モータの制御量を設定する第1制御部と、ドライバが感じる操舵力とドライバが感じる車両挙動の車両応答遅れ量との関係が予め設定した関係となるように電動モータの制御量を設定する第2制御部と、これらの第1制御部と第2制御部によるそれぞれの制御量を加算した制御量により電動モータを制御する電動モータ制御部と、を有し、第2制御部は、車両応答可変機構からステッピングモータへ出力される出力信号から操舵角に対する車両応答遅れ量を推定し、この車両応答遅れ量の変化に関係なくドライバが感じる操舵力とドライバが感じる車両挙動の車両応答遅れ量との関係がほぼ一定となるように電動モータの制御量を設定することを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明においては、第2制御部が、車両応答可変機構からステッピングモータへ出力される出力信号から操舵角に対する車両応答遅れ量を推定し、この車両応答遅れ量の変化に関係なくドライバが感じる操舵力とドライバが感じる車両挙動の車両応答遅れ量との関係がほぼ一定となるように電動モータの制御量を設定するようにしているので、車両応答可変機構により車両挙動の車両応答遅れ量が変化してもドライバが常にほぼ一定のフィーリングであると感じることができる。
【0008】
また、本発明において、好ましくは、第2制御部は、操舵角を入力とした操舵力特性モデル及びセンターフィーリングを規定する複数のセンターフィール評価指標の目標値を設定し、これらの評価指標の目標値から操舵力特性モデルの特性パラメータを設定することにより目標操舵力を演算し、この目標操舵力となるように電動モータの制御量を設定する。
【0009】
さらに、本発明において、好ましくは、操舵力特性モデルは、摩擦成分の特性パラメータ(Kf)及びばね成分の特性パラメータ(Tp)を含み、第2制御部は、演算し直されたセンターフィール評価指標の値が目標値の許容範囲外の場合には操舵力特性モデルの少なくとも摩擦成分の特性パラメータ(Kf)の値を変更してこの目標値の許容範囲内とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明が適用される自動車の電動パワーステアリング装置の一例を示す斜視図である。この図1に示すように、自動車の電動パワーステアリング装置1は、ハンドル(ステアリングホィール)2を備え、このハンドル2は、ステアリングシャフト4の上端に連結されており、ハンドル2を操作する操舵力がスタアリングシャフト4に伝達されるようになっている。このステアリングシャフト4の下端部には後述する車両応答可変機構(VGR装置、又は、伝達比可変装置)6を介して中間シャフト8の上端が連結され、この中間シャフト8の下端には、ステアリングギヤボックス10が設けられている。このステアリングギヤボックス10の下端にはピットマンアーム12やタイロッド14等で構成されたリンク機構16が連結されており、このタイロッド14の両端側にはタイヤ(車輪)17が取り付けられている。
なお、本実施形態では、ハンドル舵角に対して前輪操舵の伝達比を変化させるVGR装置を車両応答可変機構の一例として説明しているが、それ以外に、後輪操舵角の伝達比を変化させる4WS装置等でも適用可能である。
【0011】
ここで、ステアリングギヤボックス10の内部には、ラック・ピニオン機構(図示せず)が設けられており、このピニオンには、中間シャフト8の下端が連結されている。ステアリングギヤボックス10には、減速ギヤ(図示せず)を介してピニオン側に力を付与する電動モータ18(図7参照)が設けられ、さらに、減速ギヤと中間シャフト8の間にはトルクセンサ(図示せず)が配置されている。このトルクセンサは、中間シャフト6に作用している操舵力(操舵トルク)を検出するためのものである。
これらの電動モータ18及びトルクセンサは、それぞれ制御ユニット20に接続されている。
この制御ユニット20は、後述する第1制御部(通常のアシスト制御部)22、第2制御部(センターフィール補償制御部)24、及び、モータ電流制御部26から構成されており、トルクセンサの検出値(操舵トルク)及び車速等に基づき、トルクセンサの検出値が小さくなるようにすると共に目標操舵力特性を実現するように、電動モータ18が制御されるようになっている。
【0012】
車両応答可変機構6は、ハンドル2の操舵角(θ)と車輪17の車輪舵角(θw)の比(伝達比:R=θ/θw)を変化させるためのものである。
さらに、この車両応答可変機構10を制御する車両応答可変制御ユニット28が設けられ、この車両応答可変制御ユニット28には、車速を検出する車速センサ30からの車速信号S1と、ハンドル2の操舵角θを検出する操舵角センサ32からの信号S2とが入力されるようになっている。
【0013】
次に、図2乃至図6により、車両応答可変機構6を詳細に説明する。車両応答可変機構6は、中間軸8と同一軸線上に対向配置された入力軸34を有し、この入力軸34に、ステアリングシャフト4の回転が一体の入力ギヤ35,36を介して入力されるようになっている。
この入力軸34と中間軸8との間には遊星歯車機構37が設けられており、この遊星歯車機構37は、入力軸34上に固着されたサンギヤ38と、このサンギヤ38上に配置された複数のピニオンギヤ39と、これらのピニオンギヤ39の外側に配置され且つ中間軸8に固着されたリングギヤ40と、入力軸34上に相対回転自在に嵌合支持されて、ピニオンシャフト41を介して各ピニオンギヤ39を支持するキャリヤ42とで構成されている。
このキャリヤ42に一体的にセクタギヤ43が設けられ、このセクタギヤ43にステッピングモータ44の回転軸44aに固着されたピニオンギヤ45が噛み合されている。
【0014】
ハンドル2の操舵時に、ステッピングモータ44が車両応答可変制御ユニット28からの出力信号S3に応じて回転駆動されることにより、遊星歯車機構37においてはサンギヤ38が操舵角θに対応する量だけ回転されると同時に、キャリヤ42がステッピングモータ44の回転に応じて回転され、これにより車輪舵角θwに対応するリングギヤ40ないし中間軸8の回転量が増減されて、車輪舵角θwに対する操舵角θの伝達比Rが可変制御されるようになっている。
【0015】
一方、図5に示すように、車両応答可変制御ユニット28は、車速センサ30からの信号S1と、操舵角センサ32からの信号S2とが入力される制御量演算部46と、この制御量演算部46で得られた演算値に応じた出力動信号を発生させる出力信号発生部47とを有し、この出力信号発生部47から出力される信号S3が出力信号としてステッピングモータ44に印加されると共に、このステッピング44の回転量はモータ回転角センサ48により検出され、フィードバック信号S4として出力号発生部47にフィードバックされるようになっている。
【0016】
ここで、制御量演算部46は、車速センサ30からの信号S1が示す車速に応じて車輪舵角θwに対する操舵角θの伝達比Rを予め定められた特性に基づいて設定すると共に、この伝達比Rと操舵角θとから車輪舵角θwを演算し、この車輪舵角θwとなるように出力信号発生部47を介してステッピングモータ44に駆動信号S3を出力する。
この場合、図6に示すように、車速に対する伝達比Rの特性は、車速が大きくなるに従って伝達比Rが高くなるように設定されている。これにより、高遠走行時には伝達比Rが高くなって車輪17が切れにくいために、良好な走行安定性が得られると共に、低速走行時には伝達比Rが低くなって車輪17が切れやすいために、車庫入れが容易になる等、操縦性が向上することになる。
【0017】
本実施形態は、高車速且つほぼ直進状態の走行時(以下、「センターフィール感応域」と言う)に適用可能である。ここで、高車速とは、80km/h程度以上の速度であり、ほぼ直進状態とは、ハンドルをゆっくりと操作する状態、具体的には、0.2Hzの正弦波でハンドルを操作し横加速度(横G)が0.2G以下となるような操舵状態を想定している。
【0018】
本実施形態では、詳細は後述するように、高速直進時の操舵力特性を、ばね成分(操舵角を含む線形及び/又は非線形の関数で表される)、粘性成分(操舵角速度に比例する)、摩擦成分(操舵角速度を含む非線形関数で表される)とに分解した操舵力特性モデルで表現すると共に、センターフィーリングを規定した複数のセンターフィール評価指数(CF1,CF2,CF3)に基づいて目標操舵力(目標値)を設定し、この目標操舵力となるように上記操舵力特性モデルの各成分の特性パラメータの値を設定し、さらに、車両応答可変機構による車両挙動(車両応答遅れ量)の変化(位相遅れ又は進み)に対応させて摩擦成分の特性パラメータ(Kf)のみの値を変更する、又は、摩擦成分の特性パラメータ(Kf)及びばね成分の特性パラメータ(Tp)の両方の値を変更するようにしている。
このようにして、本実施形態では、センターフィール感応域において、ドライバが感じる操舵力とドライバが感じる車両挙動との関係が予め設定した関係となるように電動モータ14が制御される。
【0019】
図7は、本実施形態の電動パワーステアリング装置の制御ユニットを示すブロック図である。この図7に示すように、制御ユニット20は、第1制御部(通常のアシスト制御部)22、第2制御部(センターフィール補償制御部)24、及び、モータ電流制御部26から構成されている。
また、本実施形態の電動パワーステアリング装置は、中間シャフトに作用している操舵力(操舵トルク)を検出するためのトルクセンサ50、横加速度(横G)を検出する横Gセンサ52、上述した車速を検出する車速センサ30、及び、ハンドルの操舵角を検出する操舵角センサ32を備えており、これらの各センサの出力値が制御ユニット20に入力されるようになっている。
さらに、上述した車両応答可変制御ユニット28からの出力信号S3も制御ユニット20に入力されるようになっている。
【0020】
第1制御部22は、通常のアシスト制御を行なう制御部であり、トルクセンサ50の出力値を小さくするように、即ち、操舵力を減らす方向のアシスト力を発生させるように、電動モータ18を制御するための制御部である。この第1制御部22には、トルクセンサ50からのトルクセンサ値が入力され、フィルタ54によりノイズがカットされ、制御ゲインK1により基準目標電流I0 が演算されるようになっている。ここで、この制御ゲインK1は、横Gセンサ52及び車速センサ30の値に基づいて設定される。
この第1制御部22は、センタフィール感応域では、抑制又は禁止されるようになっている。
【0021】
第2制御部24は、センターフィール補償制御部であり、高車速且つほぼ直進状態(センターフィール感応域)に、予め設定した目標操舵力となるように電動モータ18を制御するための制御部である。
第2制御部24は、目標操舵力演算部56を有し、この目標操舵力演算部56には、操舵角センサ32の出力値がフィルタ58を通って入力される。目標操舵力演算部56は、操舵角により表現された後述する操舵力特性モデルを用いて、目標操舵力を演算するようになっている。
【0022】
第2制御部24は、ローパスフィルタであるフィルタ(フィルタ2)58,60を有し、これらのフィルタ58,60により、センターフィール感応域に対応した帯域(例えば、0.2Hzを含む帯域)のトルクセンサ80の値及び操舵角センサ32の値のみを入手できるようになっている。
また、第2制御部24は、後述するセンターフィール評価指標目標値設定部62及びセンターフィール評価指標演算部64、さらに、車両応答可変制御ユニット28からの出力信号S3に基づいて車両応答遅れ量(λ:度)を推定する車両応答遅れ量推定部66を有し、この車両応答遅れ量の変化(位相遅れ又は位相進み)に伴い、目標操舵力を目標操舵力演算部56で演算し直すようになっている。
【0023】
この第2制御部24では、目標操舵力演算部56から出力された目標操舵力とフィルタ60から出力されたトルクセンサ値(Ts2)との偏差が求められ、この偏差から、制御ゲインK3により補償目標電流If が演算される。ここで、この制御ゲインK3は、横Gセンサ52及び車速センサ30の値に基づいて設定される。
この第2制御部24は、非センターフィール感応域では、抑制又は禁止されるようになっている。
【0024】
次に、第1制御部22から出力された基準目標電流I0 と第2制御部24から出力された補償目標電流If とが加算され、目標電流Iが算出される。具体的には、符号を、操舵力を減少させるためにアシスト力を増大する場合には(+)、操舵力を増大させるためにアシスト力を減少させる場合には(−)としているため、基準目標電流I0 に対して補償目標電流If を減算する演算が行なわれる。
【0025】
モータ電流制御部26は、電動モータ18に供給される電流が目標電流Iとなるようにするためのフィードバック制御を行なうための制御部である。このため、モータ電流制御部26は、制御ゲンンK2、比例積分制御を行なうPI制御部68、モータ特性補償部70を有している。
【0026】
次に、図8及び図9により、第2制御部24の目標操舵力演算部56において使用される目標操舵力特性モデルについて説明する。図8は、操舵力特性モデルを示す図であり、図9は、この操舵力特性モデルにおけるばね成分、粘性成分及び摩擦成分を示す図である。
操舵力特性モデルは、図8に示すように、ばね成分、粘性成分、及び、摩擦成分からなるモデルである。なお、この操舵力特性モデルは、高速直進走行時の操舵力特性を対象したものであるため、ハンドルは、上述したようにゆっくりと操舵される(0.2Hzの正弦波)ため、慣性成分は含まないモデルとなっている。
【0027】
ばね成分は、電動パワーステアリング装置の軸(ステアリングシャフト、中間シャフト、タイロッド等)の剛性、さらに、操舵角に応じてタイヤから発生する力やサスペンションによる力、電動パワーステアリング装置の電動モータによるアシスト力を含めた成分であり、以下の式(数1)に示す指数関数として設定する。この式(数1)において、θは操舵角であり、Kp及びTpは、ばね成分の特性パラメータである。ばね成分は、基本的には、操舵角にほぼ比例するが、所定の操舵角以上となると飽和状態となるため、特性パラメータKpはこの飽和状態に対応し、特性パラメータTpは、指数関数の時定数を示している。このように、ばね成分を示す式(数1)は、非線形関数となっている。このように、ばね成分は、操舵角を含む線形及び/又は非線形の関数で表されるものと定義される。
【数1】
Figure 0004026394
【0028】
粘性成分は、操舵角速度に比例した力であり、以下の式(数2)により示されている。この式(数2)において、Kdは、粘性成分の特性パタメータである。このように粘性成分は、操舵角速度に比例するものとして定義される。
【数2】
Figure 0004026394
【0029】
摩擦成分は、操舵角速度が舵角が小さいときは操舵角速度にほぼ比例した力であり、操舵角速度が大きくなると一定の大きさの摩擦力(飽和状態)となる。この摩擦成分は、以下の式(数3)に示す指数関数として設定する。この式(数3)において、Kf及びTfが摩擦成分の特性パラメータである。特性パラメータKfはこの飽和状態に対応し、特性パラメータTfは、指数関数の時定数を示している。このように、ばね成分を示す式(数3)は、非線形関数となっている。このように、摩擦成分は、操舵角速度を含む非線形関数として定義される。
【数3】
Figure 0004026394
【0030】
このようにして、操舵力特性モデルにおいて、ばね成分、粘性成分、摩擦成分が設定され、操舵力(操舵トルク:Torque)はこれらの各成分の合計値として設定される。即ち、操舵力特性モデルは、以下の式(数4)となる。
【数4】
Figure 0004026394
【0031】
次に、図10及び図11により、センターフィール評価指標(CF1,CF2,CF3)を説明する。センターフィール評価指標は、不感帯(CF1)、ステアリング剛性(CF2)及び動き易さ(CF3)の3つの評価指標からなり、これらの評価指標により、自動車のセンターフィール感応域におけるセンターフィーリングの味付けが決めるようになっている。ここで、不感帯(CF1)は、操舵角変化に対してドライバが操舵力を感じない範囲を定義し、ステアリング剛性(CF2)は、操舵角変化に対する操舵力の変化率を定義し、動き易さ(CF3)は、操舵力に対する車両挙動の位相遅れ量を定義している。
【0032】
これらのセンターフィール評価指標(CF1,CF2,CF3)と、上述した操舵力特性モデルの各成分の特性パラメータ(Kp,Tp,Kd,Kf、Tf)との間には所定の関係式が成立しており、一方が決れば他方も決定される関係がある。具体的には、以下の式(数5)の関係がある。
【数5】
Figure 0004026394
この式(数5)において、λは車両挙動の応答遅れ量(λ:度)であり、h1a,h1b,h1c,h2a,h2b,h3aは、定数である。
【0033】
センターフィール評価指標(CF1,CF2,CF3)の各目標値(CF1t,CF2t,CF3t)及び後述するこれらの各目標値の許容範囲(±α1、±α2,±α3)は、車両実験により予め決定されており、図7に示す第2制御部24のセンターフィール評価指標設定部62に事前に記憶されている。
また、第2制御部24の目標操舵力演算部56では、このセンターフィール評価指標の目標値(CF1t,CF2t,CF3t)に基づいて、各成分の特性パラメータ(Kp,Tp,Kd,Kf、Tf)の値が設定される。さらに、この目標操舵力演算部56には、操舵角センサ30からのフィルタ処理された操舵角センサ値が入力され、これにより、目標操舵力が演算される。
【0034】
図10及び図11から理解可能なように、センターフィール評価指標(CF1,CF2,CF3)のうち、評価指標(CF3)のみが、車両応答に依存している。即ち、車両応答の変化に対し、動き易さ(CF3)のみが変動する。そこで、本実施形態では、車両応答可変機構6により車両応答遅れ量が変化(位相遅れ又は位相進み)する場合、車両応答可変制御ユニット28からの出力信号から車両応答遅れ推定部66が車両応答遅れ量(λ:度)を推定し、この推定された車両応答遅れ量(λ)をセンターフィール評価指標演算部62に出力する。このセンターフィール評価指標演算部64では、動き易さ(CF3)がその目標値(CF3t)の許容範囲(±α3)内に収まるように、操舵力特性モデルの摩擦成分の特性パラメータであるKf、又は、このKf及びばね成分の特性パラメータであるTpを補正する。
このようにして、第2制御部24の目標操舵力演算部56は、操舵力の変化に対する車両挙動の応答遅れの関係がほぼ一定となるように目標操舵力を設定しているので、車両応答可変機構6により車両応答遅れ量が変化しても、ドライバは常にほぼ一定のセンターフィーリングを感じることができる。
【0035】
次に、図12により、本実施形態による制御フローを説明する。なお、図12における「S」は、各ステップを示している。
この制御フローにおいては、先ず、S1において、各センサの入力値を更新する。具体的には、トルクセンサ50、横Gセンサ52、車速センサ30、操舵角センサ32からの各入力値を更新する。次に、S2において、以下の式(数6)により、操舵力特性モデルのばね成分、粘性成分及び摩擦成分の各特性パラメータ(Kp,Tp,Kd,Kf,Tf)を設定する(目標操舵力演算部56)。
ここで、以下の式(数6)で示すように、操舵力特性モデルの特性パラメータ(Kp,Tp,Kd,Kf,Tf)は、ぞれぞれ、センターフィール評価指標の目標値(CF1t,CF2t,CF3t)及び車両挙動の応答遅れ量(λ)をパラメータとした関数として設定される。
【数6】
Figure 0004026394
ここで、式(数6)において、a,bは、定数である。
【0036】
次に、S3に進み、車速及び横Gの値に基づき、自動車の走行状態が、センターフィール感応域か否かを判定する。センターフィール感応域でなければ、S4に進み、第2制御部における補償電流Ifを0と設定する。
一方、センターフィール感応域であれば、S5に進み、車両応答可変制御ユニット28からの出力信号S3から車両応答遅れ量(λ)を推定する(車両応答遅れ量推定部66)。次に、S6に進み、センターフィール評価指標の内の動き易さ(CF3)を演算する(センタフィール評価指標演算部64)。
【0037】
次に、S7に進み、動き易さの値(CF3)がその目標値(CF3t)の許容値(±α3)の範囲内か否かを判定する。CF3tの許容値(±α3)の範囲内の場合には、S8に進み、操舵力特性モデルの摩擦成分の特性パラメータKf及びばね成分の特性パラメータTpの値は減少補正しない。CF3tの許容値(±α3)の範囲内でない場合には、S9に進み、操舵力特性モデルの摩擦成分の特性パラメータKfの減少補正値Kf1を算出する。
次に、S10に進み、この摩擦成分の特性パラメータKfの減少補正値Kf1が、Kfの最小値Kfminと最大値Kmaxの間の値か否かを判定する。
【0038】
S10において、減少補正値Kf1が、予め設定されたKfの最小値Kfminと最大値Kmaxの間の値であれば、S11に進み、不感帯CF1及びステアリング剛性CF2を演算する。ここで、不感帯CF1及びステアリング剛性CF2は、上述した式(数5)により表された関数である。次に、S12に進み、不感帯の値(CF1)がその目標値(CF1t)の許容値(±α1)の範囲内か否か、又は、ステアリング剛性の値(CF2)がその目標値(CF2t)の許容値(±α2)の範囲内か否かを判定する。不感帯CF1又はステアリング剛性CF2の少なくとも何れか一方が許容値の範囲内でない場合には、S8に進み、操舵力特性モデルの摩擦成分の特性パラメータKf及びばね成分の特性パラメータTpの値は減少補正しない。S12において、不感帯CF1及びステアリング剛性CF2の両方が許容値の範囲内の場合には、S13に進み、摩擦成分の特性パラメータKfのみ減少補正し、Kf=Kf1と設定する。
【0039】
一方、S10において、減少補正値Kf1が、Kfの最小値Kfminと最大値Kmaxの間の値でなければ、S14に進み、操舵力特性モデルのばね成分の特性パラメータTpの減少補正値Kp1を算出する。次に、S15に進み、不感帯CF1及びステアリング剛性CF2を演算する。さらに、S16に進み、不感帯の値(CF1)がその目標値(CF1t)の許容値(±α1)の範囲内か否か、又は、ステアリング剛性の値(CF2)がその目標値(CF2t)の許容値(±α2)の範囲内か否かを判定する。不感帯CF1又はステアリング剛性CF2の少なくとも何れか一方が許容値の範囲内でない場合には、S8に進み、操舵力特性モデルの摩擦成分の特性パラメータKf及びばね成分の特性パラメータTpの値は減少補正しない。S16において、不感帯CF1及びステアリング剛性CF2の両方が許容値の範囲内の場合には、S17に進み、摩擦成分の特性パラメータKf及びばね成分の特性パラメータTpの両方を減少補正する。具体的には、摩擦成分の特性パラメータKfは、Kf=Kfmin(Kfの最小値)又はKf=Kfmax(Kfの最大値)と設定し、ばね成分の特性パラメータTpは、Tp=Tp1と設定する。
【0040】
次に、S18に進み、第2制御部における補償電流をIf =(f(θ)−Ts2)*K3と設定する。ここで、(f(θ))は上述した(数4)により表現された操舵力特性モデル出力、(Ts2)はフィルタ60を通ったトルクセンサ値、K3は第2制御部24の制御ゲインである。
【0041】
次に、S19に進み、第1制御部における基準目標電流がI0 =Ts1*K1と設定する。ここで、(Ts1)はフィルタ54を通ったトルクセンサ値、(K1)は第1制御部22の制御ゲインである。
次に、S20に進み、目標電流をI=I0 −If と設定する。さらに、S21に進み、この目標電流Iを電動モータ18に提供し、電動モータ18の電流制御を実行する。
【0042】
次に、図13乃至図15により、本実施形態の作用効果を説明する。図13は、車両応答遅れ量が変化(位相進み)した場合の車両応答特性の変化を示す線図である。図14は、車両応答遅れ量が変化(位相進み)した場合の操舵力特性(横Gと操舵力の関係)の変化を示す線図である。図15は、車両応答遅れ量が変化(位相進み)した場合の操舵力特性(操舵角と操舵力の関係)の変化を示す線図である。
図13において、実線Aは操舵力特性の目標値(初期値)を示し、破線Bは車両応答可変機構6により車両応答遅れ量が変化(位相進み)しても特性パラメータKfを補正しない場合の操舵力特性(パラメータ補正なし)を示している。図14において、実線Aは車両応答特性の初期値を示し、破線Bは車両応答可変機構6により車両応答遅れ量が変化(位相進み)した場合の車両応答特性を示し、鎖線Cは車両応答可変機構6により車両応答遅れ量が変化(位相進み)し特性パラメータKfを補正した場合の操舵力特性(パラメータ補正あり)を示している。図15において、実線Aは操舵力特性の目標値(初期値)を示し、鎖線Cは車両応答可変機構6により車両応答遅れ量が変化(位相進み)し特性パラメータKfを補正した場合の操舵力特性(パラメータ補正あり)を示している。
【0043】
先ず、図13に示すように、車両応答可変機構6により車両応答遅れ量が変化(位相進み)すると、図14に示すように、動き易さ(CF3)は、実線Aから破線Bに変動する。この場合、本実施形態では、操舵力特性の摩擦成分の特性パラメータKfのみを補正することにより、又は、摩擦成分の特性パラメータKf及びばね成分の特性パラメータTpの両方を補正することにより、動き易さ(CF3)を、鎖線Cとなり、目標値(CF3t)の許容範囲内に収めることができる。
また、本実施形態では、このように車両応答遅れ量が変化(位相進み)した場合、図15に示すように、不感帯(CF1)及びステアリング剛性(CF2)も、操舵力特性の特性パラメータKfのみを補正することにより、又は、摩擦成分の特性パラメータKf及びばね成分の特性パラメータTpの両方を補正することにより、実線Aから鎖線Cに変化するが、不感帯CF1及びステアリング剛性CF2の両方を目標値(CF1t)及び(CF2t)のぞれぞれの許容範囲内に収めることができる。
【0044】
このように本実施形態では、センターフィール感応域では、車両応答可変機構6により車両挙動の応答遅れ量(λ)が変化(位相遅れ、又は、位相進み)しても、この応答遅れ量の変化に基づいて操舵力特性の摩擦成分の特性パラメータKfのみを補正して、又は、摩擦成分の特性パラメータKf及びばね成分の特性パラメータTpの両方を補正することにより、ドライバの感じる操舵力とドライバが感じる車両挙動(車両応答遅れ量)とが常に予め設定された所定の関係となり、センターフィーリングを向上させることができる。
さらに、本実施形態によれば、車両応答可変機構6により車両挙動(車両応答)が変化してもドライバは常にほぼ一定のフィーリングを感じることができる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の自動車の電動パワーステアリング装置によれば、車両応答可変機構により車両挙動(車両応答)が変化してもドライバは常にほぼ一定のフィーリングであると感じることができ、さらに、センターフィーリングも向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される電動パワーステアリング装置の一例を示す斜視図である。
【図2】本実施形態の電動パワーステアリング装置の車両応答可変機構を示す拡大縦断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図2のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】車両応答可変制御ユニットを示すブロック図である。
【図6】車両応答可変機構の伝達比を示すマップである。
【図7】本発明の実施形態の電動パワーステアリング装置の制御ユニットを示すブロック図である。
【図8】操舵力特性モデルを示す図である。
【図9】操舵力特性モデルにおけるばね成分、粘性成分及び摩擦成分を示す図である。
【図10】センターフィール評価指標(CF1,CF2)を示す図である。
【図11】センターフィール評価指標(CF3)を示す図である。
【図12】本発明の実施形態による制御フローを示すフローチャートである。
【図13】車両応答遅れ量が変化(位相進み)した場合の車両応答特性の変化を示す線図である。
【図14】車両応答遅れ量が変化(位相進み)した場合の操舵力特性(横Gと操舵力の関係)の変化を示す線図である。
【図15】車両応答遅れ量が変化(位相進み)した場合の操舵力特性(操舵角と操舵力の関係)の変化を示す線図である。
【符号の説明】
1 電動パワーステアリング装置
2 ハンドル
4 ステアリングシャフト
6 車両応答可変機構
8 中間シャフト
17 タイヤ(車輪)
18 電動モータ
20 制御ユニット
22 第1制御部
24 第2制御部
26 モータ電流制御部
28 車両応答可変制御ユニット
30 車速センサ
32 操舵角センサ
44 ステッピィグモータ
50 トルクセンサ
52 横Gセンサ
54,59,60 フィルタ
56 目標操舵力演算部
62 センターフィール評価指標目標値設定部
64 センターフィール評価指標演算部
66 車両応答遅れ量推定部

Claims (3)

  1. 電動モータによりハンドルの操舵をアシストする自動車の電動パワーステアリング装置であって、
    操舵トルクを検出するトルクセンサと、
    操舵角と車輪舵角の伝達比を車速に応じてステッピングモータにより変化させる車両応答可変機構と、
    上記トルクセンサの値を小さくするように上記電動モータの制御量を設定する第1制御部と、
    ドライバが感じる操舵力とドライバが感じる車両挙動の車両応答遅れ量との関係が予め設定した関係となるように上記電動モータの制御量を設定する第2制御部と、
    これらの第1制御部と第2制御部によるそれぞれの制御量を加算した制御量により上記電動モータを制御する電動モータ制御部と、を有し、
    上記第2制御部は、上記車両応答可変機構から上記ステッピングモータへ出力される出力信号から操舵角に対する車両応答遅れ量を推定し、この車両応答遅れ量の変化に関係なく上記ドライバが感じる操舵力とドライバが感じる車両挙動の車両応答遅れ量との関係がほぼ一定となるように上記電動モータの制御量を設定することを特徴とする自動車の電動パワーステアリング装置。
  2. 上記第2制御部は、操舵角を入力とした操舵力特性モデル及び複数のセンターフィール評価指標の目標値を設定し、これらの評価指標の目標値から上記操舵力特性モデルの特性パラメータを設定することにより目標操舵力を演算し、この目標操舵力となるように上記電動モータの制御量を設定する請求項1記載の自動車の電動パワーステアリング装置。
  3. 上記操舵力特性モデルは、摩擦成分の特性パラメータ(Kf)及びばね成分の特性パラメータ(Tp)を含み、上記第2制御部は、上記演算し直されたセンターフィール評価指標の値が上記目標値の許容範囲外の場合には上記操舵力特性モデルの少なくとも摩擦成分の特性パラメータ(Kf)の値を変更してこの目標値の許容範囲内とする請求項2記載の自動車の電動パワーステアリング装置。
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