JP4026089B2 - 絶縁電線 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は耐熱性、耐摩耗性に優れているポリアミドイミド樹脂を用いた絶縁電線に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミドイミド樹脂はその電気的性質、機械的性質、耐熱性が優れているため、コーティング剤(例えば特開平3−181511、特開平7−216226)、耐熱繊維(例えば特公昭51−6770、特開平2−1014721)、接着剤(例えば特開平1−284528、特開平1−284529)、成型材(例えば特開平7−150027、特開平7−157646)等として幅広く利用されている。その中でも、特に電線の絶縁皮膜としては種々の樹脂が利用されているが、近年、電子機器の高機能化、高性能化に伴って、電線皮膜に対するより一層の耐熱性、耐摩耗性の向上が要求されるようになってきた。
【0003】
しかし、現在までに知られているポリアミドイミド樹脂では、耐熱性などある程度の性能は発揮するものの耐摩耗性を満足するものはないのが実情である。例えば、特開平7−216226においては、ポリアミドイミド樹脂にシリコーン樹脂、フッ素樹脂あるいは無機微粒子など、種々の滑剤を添加し耐摩耗性を向上させる工夫も行われているが、依然性能は不十分である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記の課題を解決するようなH種(180℃クラス)以上の耐熱性を有し、かつ耐摩耗性にも優れた絶縁電線を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意研究した結果、電線の絶縁皮膜として、特
定の構造のポリアミドイミド樹脂を用いることにより、耐熱性、耐摩耗性の優れた絶縁電
線を得ることを見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は、アミン成分と酸成分との反応によりイミド結合およびアミド結合を形成した一般式(I)のアミン残基成分が全アミン残基に対し100モル%を繰り返し単位として分子鎖中に含有するポリアミドイミド樹脂が導体上に覆われてなることを特徴とする絶縁電線に関するものである。
【0006】
【化2】
【0007】
本発明に用いられるポリアミドイミド樹脂は、通常の方法で製造することができる。例えばイソシアネート法、酸クロリド法などがあるが、工業的にはイソシアネート法が適している。
【0008】
ポリアミドイミドの重合溶媒としては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、テトラメチルウレア、γ−ブチロラクトンなどを用いることができる。これらの一部をトルエン、キシレンなどの炭化水素系有機溶媒、ジグライム、テトラヒドロフランなどのエーテル系有機溶媒、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶媒などで置換えてもよい。
【0009】
反応温度は、通常50〜200℃が好ましい。また3級アミン類、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などの触媒下で行ってもよい。重合濃度については、通常10〜50重量%である。
【0010】
前記一般式(Ι)のアミン残基成分を含めるために使用する原料としては、酸成分としてトリメリット酸無水物、ジフェニルエーテル−3,3’,4’−トリカルボン酸無水物、ジフェニルスルホン−3,3’,4’−トリカルボン酸無水物、ベンゾフェノン−3,3’,4’−トリカルボン酸無水物、ナフタレン−1、2,4−トリカルボン酸、ブタン−1,2,4トリカルボン酸無水物などのトリカルボン酸無水物、および/またはピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物などのテトラカルボン酸無水物とイソフタル酸、テレフタル酸などのジカルボン酸の混合物が、アミン成分としてトリジン、O−トリジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0011】
本発明において一般式(I)のアミン残基成分が含まれる量は、全アミン残基に対し100モル%である。
【0012】
また、ポリアミドイミドの分子量の最適値も共重合組成によって異なるが、N−メチル−2−ピロリドン中、30℃での対数粘度の値にして0.1〜2.5dl/gに相当する分子量の範囲であり、好ましくは0.4〜1.5dl/gである。対数粘度が0.1dl/g以下では耐摩耗性が不十分であり、また2.5dl/g以上では溶液粘度が高くなり、成型加工が困難となる。
【0013】
前記一般式(Ι)のアミン残基成分を含有するポリアミドイミド樹脂において、他の共重合可能な構造単位を形成することができる単量体を酸成分、アミン成分の形で下記に例示するが、アミン成分としてこれらのイソシアネート、酸成分としてこれらの酸無水物や酸塩化物が利用できる。
【0014】
酸成分としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン、ジフエニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフエニルメタン−2,4’−ジカルボン酸、ジフエニルメタン−3,4’−ジカルボン酸、ジフエニルメタンー3,3’−ジカルボン酸1,2−ジフェニルエタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ジフェニルエタン−2,4’−ジカルボン酸、1,2−ジフェニルエタン−3,4’−ジカルボン酸、1,2−ジフェニルエタン−3,3’−ジカルボン酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、2−(2−カルボキシフェニル)2−(4−カルボキシフェニル)プロパン、2−(3ーカルボキシフェニル)2−(4−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)プロパン、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3’−ジカルボン酸、ジフェニルスルフィド−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルフィド−2,4’−ジカルボン酸 ジフェニルスルフィド−3,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルフィド−3,3’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−2,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−3,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−3,3’−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−2,4’−ジカルボン酸、シクロヘキサン−4,4’−ジカルボン酸、シクロヘキサン−2,4’−ジカルボン酸、シクロヘキサン−3,4’−ジカルボン酸、シクロヘキサン−3,3’−ジカルボン酸、トリメリット酸、ジフェニルエーテル−3,3’,4’−トリカルボン酸、ジフェニルスルホン−3,3’,4’−トリカルボン酸、ベンゾフェノン−3,3’,4’−トリカルボン酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンー3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、ビフェニル−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、フェナントレン−1,3,9,10−テトラカルボン酸、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸、ビシクロ−(2,2,2)−オクト−7−エン−2:3:5:6−テトラカルボン酸などのポリカルボン酸、およびこれらの一無水物、二無水物などが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上の混合物として用いられる。
【0015】
またアミン成分としては、例えば1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1、4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノベンズアニリド4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルヘキサフルオロイソプロピリデン、α,α’−ジアミノ−p−キシレン、α,α’−ジアミノ−m−キシレン、1,4−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、2,7−ナフタレンジアミン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,3’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3’−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3’−トリメチルインダン、5−ニトロ−メタフェニレンジアミン,5−クロロ−メタフェニレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノシクロヘキシル、4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタン、あるいはこれらに対応ジイソシアネート等を単独あるいは2種以上の混合物として共重合してもよい。
【0016】
このようにして得られたポリアミドイミド樹脂溶液は、電線被覆がしやすいように適当な溶剤で希釈して溶液粘度、濃度を調節するが、ポリマーを精製し再溶解してもよい。なお、希釈または再溶解に用いる溶剤としては上記の重合溶媒と同様のものが挙げられる。
【0017】
また本発明においては、絶縁皮膜の諸特性、耐熱性、機械特性、電気特性、接着性、滑り性、加工性などを改良する目的で、他の樹脂や有機化合物および無機化合物を混合させたり、あるいは反応させて併用してもよい。例えばシリコーン化合物、フッ素化合物、ポリイソシアネート化合物、イソシアヌレート化合物、ポリオレフィン、二硫化モリブデンなどの樹脂や有機化合物、酸化珪素、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機化合物をこの発明の目的を阻害しない範囲で併用することができる。
【0018】
本発明の絶縁電線は導体上に絶縁物を介して上記ポリアミドイミド樹脂が覆われてなることが好ましい。絶縁物としては、例えばポリエステル、ポリウレタン、ポリエステルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミドなどが挙げられる。絶縁電線の製造条件に関しては特に制限はなく、例えば以下の実施例に示すような通常行われる方法により直接導体上に、あるいは上記の絶縁物からなる樹脂層を介して上記ポリアミドイミド樹脂を塗布することによって得ることができる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。なお、本発明はこれら実施例により特に限定されるものではない。
【0020】
(参考例1)
無水トリメリット酸1モル(192g)、2,4ートリレンジイソシアネート0.2モル(35g)、およびトリジンジイソシアネート0.8モル(211g)をN−メチル−2−ピロリドン1050g中に加え撹拌しながら、150℃まで1時間で昇温し、さらに150℃で5時間反応させた。
得られた樹脂溶液を入れた槽に、直径約1mmの銅線を25mm/min の速度で通過させた。次いで、この銅線をダイスに通して皮膜の厚さが2μmとなるようにして、400℃、風速4m/sec 、炉長4mの熱風循環炉を直ちに通過させた。この操作を10回繰り返し、JIS1種のエナメル線を得た。
次いでJIS C 3003の方法により電線の評価を行った。その結果を表1に示した。
【0021】
(参考例2)
無水トリメリット酸1モル(192g)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート0.5モル(125g)、およびトリジンジイソシアネート0.5モル(132g)をN−メチル−2−ピロリドン1080g中に加え撹拌しながら、150℃まで1時間で昇温し、さらに150℃で3時間反応させた。
得られた樹脂溶液を、参考例1と同様にして皮膜の厚さが2μmとなるように、直径1mmの銅線に焼き付けてJIS1種のエナメル線を得た。次いでJIS C 3003の方法により電線の評価を行った。その結果を表1に示した。
【0022】
(実施例1)
無水トリメリット酸0.8モル(153g)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物0.2モル(64g)、およびトリジンジイソシアネート1モル(264g)をN−メチル−2−ピロリドン1600g中に加え撹拌しながら、150℃まで1時間で昇温し、さらに150℃で3時間反応させた。
得られた樹脂溶液を、参考例1と同様にして皮膜の厚さが2μmとなるように、直径1mmの銅線に焼き付けてJIS1種のエナメル線を得た。次いでJIS C 3003の方法により電線の評価を行った。その結果を表1に示した。
【0023】
(参考例3)
無水トリメリット酸1モル(192g)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート0.7モル(175g)、およびトリジンジイソシアネート0.3モル(79g)をN−メチル−2−ピロリドン1430g中に加え撹拌しながら、150℃まで1時間で昇温し、さらに150℃で5時間反応させた。
得られた樹脂溶液を、参考例1と同様にして皮膜の厚さが2μmとなるように、直径1mmの銅線に焼き付けてJIS1種のエナメル線を得た。次いでJIS C 3003の方法により電線の評価を行った。その結果を表1に示した。
【0024】
(比較例1)
無水トリメリット酸1モル(192g)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート1モル(250g)をN−メチル−2−ピロリドン1400g中に加え撹拌しながら、150℃まで1時間で昇温し、さらに150℃で3時間反応させた。
得られた樹脂溶液を、参考例1と同様にして皮膜の厚さが2μmとなるように、直径1mmの銅線に焼き付けてJIS1種のエナメル線を得た。次いでJIS C 3003の方法により電線の評価を行った。その結果を表1に示した。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】
本発明の絶縁電線は、一般式(I)に示すような構造のポリアミドイミド樹脂を主成分とするため、耐熱性、特に耐摩耗性を著しく向上できるものである。
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