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JP4019170B2 - 船舶推進機のエンジン制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、船舶推進機のエンジン制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
船舶に備えられる船舶推進機には、エンジンが搭載され、このエンジンの動力によりプロペラを回転して推進力を得ている。この船舶推進機には、エンジン制御装置を備え、吸気圧、スロットル開度及びエンジン回転速度に基づき燃料噴射量を制御するものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
例えば車両に搭載されるエンジンでは、常用域が低速低負荷であり、高速高負荷でリーンバーンを行っても燃費低減率が少ないため、図5に示すように、低速低負荷域でリーンバーンを行ない、高速高負荷ではリーンバーンを行っていない。
【0004】
ところで、船舶推進機に搭載されるエンジンでは、航走開始直後から高速高負荷で運転され、常用域が高速高負荷であることから、高速高負荷でリーンバーンを行うことができれば燃費低減率が大きい。
【0005】
また、船舶推進機でも車両と同様に低速低負荷域でリーンバーンを行なうことが考えられるが、安定燃焼させるためにスワール、タンブル等を強化するデバイス(例えばスワールコントロールバルブ、バルブ休止)やデザイン(ヘリカルポート、タンブルポート)が必要となる。
【0006】
この発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、リーンバーンで燃費低減を行うと共に、アイドル及びトロールでの安定性を確保することが可能な船舶推進機のエンジン制御装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0008】
請求項1に記載の発明は、
『吸気圧を検出する吸気圧検出手段と、スロットル開度を検出するスロットル開度検出手段と、エンジン回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段とを備え、吸気圧、スロットル開度及びエンジン回転速度に基づき燃料噴射量を制御する船舶推進機のエンジン制御装置において、
前記スロットルを全閉から所定開度までの極低負荷域では、予め設定された一定の空燃比になるように前記燃料噴射量を制御し、
前記所定開度から前記吸気圧が略一定になる前の所定吸気圧までのスロットル開度範囲及び前記所定吸気圧から吸気圧が略一定になる領域までのスロットル開度範囲は、徐々に前記燃料噴射量を調整して略リーン限界になるように制御し、
前記吸気圧が略一定になってから全開までの、前記スロットルを開いても前記吸気圧が変化しない領域では、前記スロットル開度と前記エンジン回転速度に基づいて前記燃料噴射量を制御することを特徴とする船舶推進機のエンジン制御装置。』である。
【0009】
この請求項1に記載の発明によれば、極低負荷域ではリーンバーンを行わず、予め設定された一定の空燃比になるように燃料噴射量に制御し、所定吸気圧から吸気圧が略一定になる前の所定吸気圧までのスロットル開度範囲は、徐々に燃料噴射量を制御し、徐々に空燃比を濃くし、WOT(スロットル全開)では出力空燃比で運転する。
【0010】
所定吸気圧から吸気圧が略一定になる領域までのスロットル開度範囲は、徐々に燃料噴射量を調整して徐々に略リーン限界になるように制御し、さらに吸気圧が略一定になってから全開までの、スロットルを開いても吸気圧が変化しない領域では、スロットル開度とエンジン回転速度に基づいて燃料噴射量を制御し、全負荷は出力空燃比で運転することで、既存のエンジンのシリンダヘッドや吸気ポートの変更を行わずに、中負荷以上でリーンバーンを行い、大きな燃費低減ができ、全負荷は出力空燃比で運転し大きなトルクを得ることができ、しかもアイドル及びトロールでの安定性を確保することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の船舶推進機のエンジン制御装置の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は船外機の側面図、図2は船舶推進機のエンジン制御装置の概略構成図である。
【0012】
この実施の形態では、船舶に搭載される船舶推進機として船外機を示すが、船内機にも同様に適用される。船外機1は、船体2の船尾2aにクランプブラケット3を介して上下、左右に揺動可能に支持されている。この船外機1は、トップカウリング4a、ボトムカウリング4b、上部ケース5及び下部ケース6を有し、トップカウリング4a及びボトムカウリング4b内にエンジン7が配置され、上部ケース5及び下部ケース6内に推進ユニット8が配設された構造のものである。
【0013】
エンジン7は、4サイクルの直列4気筒のエンジンであり、このエンジン7により推進ユニット8が駆動される。推進ユニット8は、垂直方向に延びるドライブシャフト9の下端に傘歯車機構10を介して推進軸11を連結し、この推進軸11の後端にプロペラ12を結合した構成となっている。
【0014】
この船外機1には、シフトケーブル60がスライダー64を介してシフト操作軸62に連結されている。遠隔のシフト操作によってシフトケーブル60を作動することで、スライダー64が移動し、図示しないリンク機構を介して連結されたシフト操作軸62を作動し、これによりシフト切替手段63が傘歯車機構10を制御して前進、ニュートラル、後進のシフト切替が行なわれる。
【0015】
エンジン7は、排気ガイド13上に配置され、クランク軸20を航走時に略垂直をなすように縦向きに配置して構成されており、クランク軸20の下端にドライブシャフト9の上端が連結されている。
【0016】
エンジン7は、シリンダブロック21、クランクケース22によりクランク軸20が軸支されている。排気ガイド13の下面には、オイルパン90が吊り下げ支持される。シリンダブロック21には、シリンダヘッド24が締結され、シリンダヘッド24には、ヘッドカバー25が取り付けられている。
【0017】
シリンダブロック21に往復動可能に設けられたピストン50は、コンロッド51を介してクランク軸20に連結され、ピストン50の往復動でコンロッド51を介してクランク軸20が回転する。
【0018】
シリンダブロック21、ピストン50及びシリンダヘッド24で燃焼室52が形成され、シリンダヘッド24には燃焼室52に臨むように点火プラグ53が取り付けられている。また、シリンダヘッド24には、燃焼室52に開口して吸気通路45及び排気通路46が形成されている。
【0019】
シリンダヘッド24には、動弁機構のカム軸26a,26bが軸支され、クランク軸20の回転力が図示しないタイミングベルトにより伝達され、このカム軸26a,26bの回転でカム26a1,26b1により吸気弁30及び排気弁31を駆動し、吸気通路45及び排気通路46を開閉する。
【0020】
エンジン7には、船体前方向にサージタンク40が配置されている。このサージタンク40の上流側には、スロットルボディ42が接続され、サージタンク40の上流側は吸気管41を介してシリンダヘッド24の吸気通路45に接続されている。シリンダヘッド24には、それぞれの気筒に応じてインジェクタ43が設けられ、このインジェクタ43により燃料が吸気通路45に供給される。
【0021】
スロットルボディ42には、アイドルスピードコントロールバルブ420、スロットル421及びスロットルポジションセンサS1で構成されるスロットル開度を検出するスロットル開度検出手段が備えられ、スロットル開度情報を制御装置ECUに送る。制御装置ECUは、アイドルスピードコントロールバルブ420を制御して安定したアイドル運転を行なう。
【0022】
サージタンク40には、圧力センサS2及び吸気温センサS3が備えられ、吸気圧情報及び吸気温度情報を制御装置ECUに送る。圧力センサS2は、吸気圧を検出する吸気圧検出手段を構成する。
【0023】
制御装置ECUは、運転状態に応じてインジェクタ43を制御する。インジェクタ43には、燃料供給装置48から燃料が供給される。燃料供給装置48は、燃料タンク480、フィルタ481、低圧ポンプ485、ベーパーセパレータ482、高圧ポンプ483及び圧力調整装置484から構成される。
【0024】
低圧ポンプ485の駆動で燃料タンク480から燃料がフィルタ481を介してベーパーセパレータ482に供給される。高圧ポンプ483は、ベーパーセパレータ482内に配置され、高圧ポンプ483の駆動で供給管43a,43bを介して加圧した燃料をインジェクタ43へ供給する。
【0025】
余剰燃料は、戻し管43c、圧力調整装置484、戻し管43dを介してベーパーセパレータ482へ戻される。圧力調整装置484は、連結管484aを介してサージタンク40に接続され、吸気圧で作動して余分な燃料をベーパーセパレータ482へ戻す。
【0026】
また、シリンダヘッド24には、水温センサS4及びカム角センサS5が設けられ、エンジン水温情報及びカム角情報を制御装置ECUに送る。カム角センサS5は、給排気のカム角度を検出するカム角度検出手段を構成する。さらに、排気通路46には、A/FセンサS6が備えられ、A/F情報を制御装置ECUに送る。
【0027】
制御装置ECUには、エンジン回転速度検出手段49が備えられ、カム角度情報に基づき演算してエンジン回転速度を検出する。エンジン7には、点火装置55が備えられている。点火装置55は、パワートランジスタ550、イグッションコイル551を備え、制御装置ECUの制御によりパワートランジスタ550を作動してイグニッションコイル551を介して運転状態に応じて点火プラグ53をスパークさせる。
【0028】
この実施の形態の船舶推進機のエンジン制御装置は、図3及び図4に示すように構成され、図3はスロットルの構成図、図4はエンジン特性を示す図である。
【0029】
図3のようにスロットルレバー422の操作でスロットル421を開いて、図4のスロットル421を全閉から第1の所定吸気圧b1の極低負荷域では、即ち、スロットル開度a1点までの領域E1は、予め設定された一定の空燃比になるようにエンジン回転数と吸気圧に基づいて燃料噴射量に制御し、アイドル運転時の安定性を確保する。
【0030】
そして、第1の所定吸気圧b1から吸気圧が略一定になる前の第2の所定吸気圧b2までは、エンジン回転数と吸気圧に基づいて燃料噴射量を制御し、空燃比を領域E1の一定の空燃比と領域E3のリーン限界の間で徐変させる。
【0031】
このように、極低負荷域ではリーンバーンを行わず、予め設定された一定の空燃比になるように燃料噴射量に制御し、第1の所定吸気圧b1から吸気圧が略一定になる前の第2の所定吸気圧b2までは、燃料噴射量を制御し、空燃比を領域E1の一定の空燃比と領域E3のリーン限界の間で徐変させる。
【0032】
そして、第2の所定吸気圧b2から吸気圧が略一定になる領域E3は、エンジン回転数と吸気圧に基づいて燃料噴射量を制御し略リーン限界になるように制御し、これにより燃費低減が可能である。
【0033】
さらに、スロットル421を開いても吸気圧が変化しない領域E4では、エンジン回転数と吸気圧に基づいた燃料噴射量に、エンジン回転速度とスロットル開度に基づいて補正燃料噴射量を加えて制御し、吸入空気量が最大近くになったらA/Fを徐々にリッチにして全負荷では出力A/Fで運転する。
【0034】
このように、燃料噴射量を制御することで、既存のエンジンのシリンダヘッドや吸気ポートの変更を行わずに、中負荷以上でリーンバーンを行い、大きな燃費低減ができ、全負荷では出力空燃比で運転することにより大きなトルクを得ることができ、しかもアイドル及びトロールでの安定性を確保することができる。
【0035】
前記したように、請求項1に記載の発明では、エンジン回転数と吸気圧に基づいて燃料噴射量を制御し極低負荷域ではリーンバーンを行わず、予め設定された一定の空燃比になるように制御し、所定吸気圧から吸気圧が略一定になる前の所定吸気圧までのスロットル開度範囲は、予め設定された一定の空燃比とリーン限界の間で空燃比を徐変させる。
【0036】
所定吸気圧から吸気圧が略一定になる領域までのスロットル開度範囲は、徐々に略リーン限界になるように制御し、さらに吸気圧が略一定になってから全開までの、スロットルを開いても吸気圧が変化しない領域では、スロットル開度とエンジン回転速度に基づいて燃料噴射量を補正し、全負荷は出力空燃比で運転することで、既存のエンジンのシリンダヘッドや吸気ポートの変更を行わずに、中負荷以上でリーンバーンを行い、大きな燃費低減ができ、全負荷は出力空燃比で運転し大きなトルクを得ることができ、しかもアイドル及びトロールでの安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】船外機の側面図である。
【図2】船舶推進機のエンジン制御装置の概略構成図である。
【図3】スロットルの構成図である。
【図4】エンジン特性を示す図である。
【図5】車両のエンジン特性を示す図である。
【符号の説明】
1 船外機
7 エンジン
43 インジェクタ
421 スロットル
422 スロットルレバー
S1 スロットルポジションセンサ
S20 カム角センサ
ECU 制御装置

Claims (1)

  1. 吸気圧を検出する吸気圧検出手段と、スロットル開度を検出するスロットル開度検出手段と、エンジン回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段とを備え、吸気圧、スロットル開度及びエンジン回転速度に基づき燃料噴射量を制御する船舶推進機のエンジン制御装置において、
    前記スロットルを全閉から所定開度までの極低負荷域では、予め設定された一定の空燃比になるように前記燃料噴射量を制御し、
    前記所定開度から前記吸気圧が略一定になる前の所定吸気圧までのスロットル開度範囲及び前記所定吸気圧から吸気圧が略一定になる領域までのスロットル開度範囲は、徐々に前記燃料噴射量を調整して略リーン限界になるように制御し、
    前記吸気圧が略一定になってから全開までの、前記スロットルを開いても前記吸気圧が変化しない領域では、前記スロットル開度と前記エンジン回転速度に基づいて前記燃料噴射量を制御することを特徴とする船舶推進機のエンジン制御装置。
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