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JP4016562B2 - 車両用無段変速機の変速制御装置 - Google Patents

車両用無段変速機の変速制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用無段変速機の変速制御装置に係り、特に、回転速度センサが故障した場合でも適正な変速制御が行われる変速制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
走行用の動力源と駆動輪との間の動力伝達経路に無段変速機が配設された車両が知られている。このような無段変速機の変速制御は、一般に、アクセル操作量等の運転者の出力要求量および車速をパラメータとして予め定められたマップ等の変速条件に従って行われるようになっており、変速条件は、出力要求量が大きく車速が低い程、変速比(=入力側回転速度/出力側回転速度)が大きくなるように定められるのが普通である。また、無段変速機の入力側回転速度を検出して、所定の変速比になるように無段変速機の変速制御が行われるようになっているが、回転速度センサが故障した場合に備えて複数の回転速度センサを設けることが考えられている。特開平10−9381号公報に記載の装置はその一例で、無段変速機の入力側回転速度および出力側回転速度をそれぞれ一対の回転速度センサで検出し、それ等の検出値が異なる場合には異常と判断して、正常側の回転速度と変速用ステップモータから推定した変速比とに基づいて異常側の回転速度を求めてフェール判定を行い、異常側の一対の回転速度センサのうち何れが故障かを識別するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように一対の回転速度センサの何れが故障しているかを識別していると、その間の変速制御が適正に行われず、ダウンシフトにより一時的にエンジン回転速度が増大したり、走行安定性が損なわれたりする可能性があった。すなわち、回転速度センサの故障は断線によるものが多いが、入力側回転速度センサの配線が断線した場合には、入力側回転速度=0になるため、入力側回転速度を上昇させるために無段変速機が急にダウンシフトされるのである。
【0004】
また、入力側回転速度を目標回転速度と一致させるように電気的にフィードバック制御して変速制御が行われる場合など、入力側回転速度および出力側回転速度により変速比を推定する手段以外に変速比を推定する手段を備えていない場合は、回転速度センサの故障判定そのものを行うことができないため、適正な変速制御が不能になる。すなわち、変速比は入力側回転速度/出力側回転速度であるため、変速比が分かれば車速等(出力側回転速度)から計算により入力側回転速度を求めることができるが、変速比が分からないと、回転速度センサ以外で入力側回転速度は検出できないため、回転速度センサの故障判定を行うことができないのである。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、変速比を推定する手段を備えていない場合でも回転速度センサの故障に拘らず常に適正な変速制御が行われるようにすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、第1発明は、走行用の動力源と駆動輪との間の動力伝達経路に配設された無段変速機の入力側回転速度を検出してその無段変速機の変速制御を行う変速制御装置において、(a) 前記入力側回転速度を検出する一対の回転速度センサと、(b) その一対の回転速度センサの一方によって検出された入力側回転速度から予め定められた設定値を引き算し、他方の回転速度センサによって検出された入力側回転速度と比較して、大きい方の値を選択する選択手段と、を有し、(c) その選択手段によって選択された入力側回転速度を用いて前記変速制御が行われることを特徴とする。
【0007】
第2発明は、第1発明の車両用無段変速機の変速制御装置において、前記一対の回転速度センサは、前記無段変速機の入力側回転部材の回転速度を検出する入力部材回転速度センサ、およびその無段変速機と前記動力源との間に配設されたトルクコンバータのタービン回転速度を検出するタービン回転速度センサであることを特徴とする。
【0008】
【発明の効果】
このような変速制御装置においては、一対の回転速度センサの一方によって検出された入力側回転速度から予め定められた設定値を引き算し、他方の回転速度センサによって検出された入力側回転速度と比較して、大きい方の値を用いて変速制御が行われるため、何れかの回転速度センサが故障した場合でも、フェール判定を行うことなく適正な変速制御が行われる。すなわち、回転速度センサの故障は断線によるものが多く、故障によって回転速度が上昇する可能性は小さいため、大きい方の値が実際の入力側回転速度と一致する蓋然性が高い一方、仮にノイズ等によって回転速度センサの検出値が高回転になり、その検出値に基づいて変速制御が行われたとしても、無段変速機はアップシフト側へ変速されるため、急ダウンシフトに比較して走行安定性や動力源に対する影響は小さいのである。また、フェール判定を行わないため、変速比を推定する手段が不要であり、例えば入力側回転速度を目標回転速度と一致させるように無段変速機を電気的にフィードバック制御して変速制御が行われる場合にも好適に適用される。
また、一方の回転速度センサによって検出された入力側回転速度から予め定められた設定値を引き算し、他方の回転速度センサによって検出された入力側回転速度と比較するようになっているため、少なくとも他方の回転速度センサが正常であれば、一方の回転速度センサが正常か否かに拘らず、その他方の回転速度センサによって検出された入力側回転速度を用いて変速制御が行われるようになり、変速制御が安定する。
【0009】
第2発明では、一対の回転速度センサとして入力部材回転速度センサおよびタービン回転速度センサが用いられているため、例えばエンジン回転速度センサ等の動力源回転速度センサを用いる場合に比較して、トルクコンバータの回転速度比を考慮する必要がなく、何れのセンサも入力側回転速度を高い精度で検出できて高い信頼性が得られる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、車速(例えば無段変速機の出力側回転速度)や運転者の出力要求量などの運転状態に基づいて入力側の目標回転速度を求め、実際の入力側回転速度がその目標回転速度と一致するように無段変速機を電気的にフィードバック制御する変速制御装置に好適に適用されるが、入力側回転速度および出力側回転速度をそれぞれ検出して実際の変速比を求め、その変速比が目標変速比になるように無段変速機を制御する場合など、種々の変速制御装置に適用される。出力側回転速度を検出する場合の検出手法は適宜定められ、本発明と同様に複数の回転速度センサを用いて最も高回転の検出値を採用するようにしても良いし、フェール判定を行って正常値を識別するようにしても良い。或いは、単一の回転速度センサを用いるだけであっても良い。なお、本発明の実施に際しても、変速制御とは別に入力側回転速度を検出する複数の回転速度センサのフェール判定を行って異常表示などを行うようにしても良い。
【0011】
選択手段は、通常は他方の回転速度センサの検出値が選択されるように、一方の回転速度センサの検出値から予め定められた設定値だけ引き算して比較するように構成される。設定値は、回転速度センサの検出誤差に拘らず常に他方の回転速度センサの検出値が選択されるように検出精度等を考慮して設定することが望ましいが、他方の回転速度センサが故障して一方の回転速度センサの検出値からその設定値だけ減算した回転速度を用いて変速制御が行われる場合でも支障がないように、例えば100rpm以下、好ましくは50rpm以下の値が適当である。但し、他方の回転速度センサが故障した時には、設定値を引き算する前の一方の回転速度センサの検出値を用いて変速制御が行われるようにすることもできる。また、検出値の1%〜5%など所定の割合を設定値として減算するようにしても良い。
【0012】
第2発明では、入力側回転速度を検出する一対の回転速度センサとして入力部材回転速度センサおよびタービン回転速度センサが用いられるが、第1発明の実施に際しては、例えばトルクコンバータに設けられたロックアップクラッチが係合させられるなどして入力側回転部材が動力源に直結されている時には動力源回転速度を検出するセンサを用いることもできるなど、無段変速機の入力側回転部材の回転速度と同一或いは所定の関係を有する種々の部材の回転速度を検出する回転速度センサを採用することができる。
【0013】
走行用の動力源としては、燃料の燃焼によって作動するガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関、或いは電気エネルギーで作動する電動モータなどが好適に用いられ、内燃機関および電動モータの両方を備えていても良い。内燃機関を用いる場合には、無段変速機との間にトルクコンバータ等の流体継手や伝達トルクを連続的に制御できる摩擦式の発進クラッチ等を配設することが望ましいが、電動モータを用いて発進するハイブリッド車両などでは必ずしも必要でない。無段変速機としては、ベルト式無段変速機やトロイダル型無段変速機など種々の変速機を採用できる。
【0014】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両用駆動装置10の骨子図である。この車両用駆動装置10は横置き型で、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に採用されるものであり、走行用の動力源として用いられる内燃機関としてエンジン12を備えている。エンジン12の出力は、トルクコンバータ14から前後進切換装置16、ベルト式の無段変速機(CVT)18、減速歯車20を介して差動歯車装置22に伝達され、左右の駆動輪24L、24Rへ分配される。
【0015】
トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸に連結されたポンプ翼車14p、およびタービン軸34を介して前後進切換装置16に連結されたタービン翼車14tを備えており、流体を介して動力伝達を行うようになっている。また、それ等のポンプ翼車14pおよびタービン翼車14tの間にはロックアップクラッチ26が設けられ、それ等を一体的に連結して一体回転させることができるようになっている。
【0016】
前後進切換装置16は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置にて構成されており、トルクコンバータ14のタービン軸34はサンギヤ16sに連結され、無段変速機18の入力軸36はキャリア16cに連結されている。そして、キャリア16cとサンギヤ16sとの間に配設されたクラッチ38が係合させられると、前後進切換装置16は一体回転させられてタービン軸34が入力軸36に直結され、前進方向の駆動力が駆動輪24R、24Lに伝達される。また、リングギヤ16rとハウジングとの間に配設されたブレーキ40が係合させられるとともに上記クラッチ38が開放されると、入力軸36はタービン軸34に対して逆回転させられ、後進方向の駆動力が駆動輪24R、24Lに伝達される。
【0017】
無段変速機18は、上記入力軸36に設けられた有効径が可変の入力側可変プーリ42と、出力軸44に設けられた有効径が可変の出力側可変プーリ46と、それ等の可変プーリ42、46に巻き掛けられた伝動ベルト48とを備えている。可変プーリ42、46はそれぞれV溝幅が可変で、入力側可変プーリ42に対する油圧が例えば図3に示す変速制御回路50によって制御されることにより、それ等のV溝幅が変化して伝動ベルト48の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ(=入力側回転速度NIN/出力側回転速度NOUT)が連続的に変化させられる。
【0018】
図3の変速制御回路50は、変速比γを小さくするアップシフト用の電磁弁52および流量制御弁54と、変速比γを大きくするダウンシフト用の電磁弁56および流量制御弁58とを備えている。この変速制御回路50は、特開平11−182657号公報に記載のものと同じで、アップシフト用の電磁弁52が変速用コントローラ60(図2参照)によってデューティ制御されると、モジュレータ圧PMを減圧した所定の制御圧が流量制御弁54に出力され、その制御圧に対応して調圧されたライン圧PLが入力側可変プーリ42に供給されることにより、そのV溝幅が狭くなって変速比γが小さくなる。また、ダウンシフト用の電磁弁56が変速用コントローラ60によってデューティ制御されると、モジュレータ圧PMを減圧した所定の制御圧が流量制御弁58に出力され、その制御圧に対応してドレーンポートが開かれることにより、入力側可変プーリ42内の作動油が所定の流量でドレーンされてV溝幅が広くなり、変速比γが大きくなる。なお、出力側可変プーリ46の油圧は、例えば伝達トルクなどに応じて所定のベルト張力が得られるように調圧制御される。
【0019】
図2の変速用コントローラ60はマイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、無段変速機18の変速制御を行うもので、機能的にNINT算出手段62、NIN選択手段64、比較手段65、およびフィードバック制御手段66を備えている。この変速用コントローラ60は変速制御装置の主要部を構成しており、NIN選択手段64は選択手段に相当する。
【0020】
NINT算出手段62には、アクセル操作量センサ68および車速センサ70からアクセルペダルの操作量θACC および車速V(具体的には出力軸44の回転速度NOUT)を表す信号が供給されるようになっており、車両の運転状態であるそれ等のアクセル操作量θACC および車速Vをパラメータとして定められた変速条件に従って入力側回転速度NINの目標値である目標回転速度NINTを算出する。変速条件は、例えば図4に示すように車速Vが小さくアクセル操作量θACC が大きい程大きな変速比γになる目標回転速度NINTが設定されるように、データマップや演算式などで定められており、予めROM等の記憶装置に記憶されている。車速Vは出力側回転速度NOUTに対応するため、入力側回転速度NINの目標値である目標回転速度NINTは目標変速比に対応し、無段変速機18の最小変速比γmin と最大変速比γmax の範囲内で設定される。アクセル操作量θACC は運転者の出力要求量に相当する。
【0021】
NIN選択手段64には、入力側回転速度を検出する複数の回転速度センサとして配設された入力部材回転速度センサ72およびタービン回転速度センサ74から入力部材回転速度NINMSおよびタービン回転速度NTを表す信号が供給されるようになっており、変速制御に用いる入力側回転速度NINを図5に示すフローチャートに従って選択する。入力部材回転速度センサ72およびタービン回転速度センサ74は、具体的には図1に示すように入力側可変プーリ42およびクラッチ38の回転速度を検出するように配設されているが、入力側可変プーリ42の代わりに入力軸36やキャリア16cの回転速度を検出するようにしても良いし、クラッチ38の代わりにタービン軸34の回転速度を検出するようにしても良い。また、ロックアップクラッチ26の係合時には、エンジン12の回転速度を変速制御に用いることも可能である。本実施例では入力側可変プーリ42が入力側回転部材に相当する。
【0022】
図5のステップS1では、入力部材回転速度センサ72から入力部材回転速度NINMSを表す信号を読み込み、ステップS2では、タービン回転速度センサ74からタービン回転速度NTを表す信号を読み込む。ステップS3では、タービン回転速度NTから所定の設定値αを引き算してタービン回転速度NTMSを算出し、ステップS4で、そのタービン回転速度NTMSおよび入力部材回転速度NINMSの大きさを比較する。そして、NINMS≧NTMSの場合はステップS5で入力側回転速度NIN=NINMSとし、NINMS<NTMSの場合はステップS6で入力側回転速度NIN=NTMSとする。すなわち、入力部材回転速度NINMSおよびタービン回転速度NTMSのうち大きい方の値が入力側回転速度NINとされるのである。
【0023】
ここで、タービン回転速度NTMSは実際のタービン回転速度NTから設定値αを引き算したものであるため、通常はNINMS≧NTMSになり、ステップS5で入力部材回転速度NINMSが入力側回転速度NINとされるが、入力部材回転速度NINMSは無段変速機18の構成要素である入力側可変プーリ42の回転速度であるため、無段変速機18の変速制御に用いるのに最も適している。設定値αは、回転速度センサ72、74の検出誤差に拘らず常に入力部材回転速度センサ72の検出値NINMSが選択されるように、それ等の検出精度等を考慮して設定されるとともに、その入力部材回転速度センサ72が故障してタービン回転速度NTMSを用いて変速制御が行われる場合でも支障がないように、例えば50rpm程度の値が定められている。このため、仮に入力部材回転速度センサ72が故障してNINMS<NTMSとなり、入力側回転速度NINとしてタービン回転速度NTMSを用いる場合であっても、無段変速機18の変速制御に支障が生じる恐れはない。但し、前記ステップS6では、設定値αを引き算する前のタービン回転速度NTを入力側回転速度NINに設定するようにしても良く、その場合は変速制御に差し障りがない範囲で設定値αとして比較的大きな値を設定できる。
【0024】
また、前進走行時には、前後進切換装置16が一体回転するため、タービン回転速度NTは基本的に入力部材回転速度NINMSと一致し、そのまま用いることができるが、後進走行時には、遊星歯車装置の歯数比(=サンギヤ16sの歯数/リングギヤ16rの歯数)をρとすると|(α−1)/α|の変速比(=NT/NINMS)で変速される。このため、前記ステップS2では、後進走行時にはタービン回転速度NTを変速比|(α−1)/α|で割算して補正するようになっている。但し、α=0.5の場合は変速比が1になるため、タービン回転速度NTをそのまま用いることができる。
【0025】
図2に戻って、前記比較手段65は、NINT算出手段62から供給される目標回転速度NINTとNIN選択手段64から供給される入力側回転速度NINとの速度偏差ΔNINを算出してフィードバック制御手段66に出力する。フィードバック制御手段66は、上記速度偏差ΔNINが0になるように前記変速制御回路50の電磁弁52、56をフィードバック制御するもので、実際の入力側回転速度NINが目標回転速度NINTと略一致させられる。具体的には、少なくとも入力部材回転速度センサ72が正常であれば、タービン回転速度センサ74が正常か否かに拘らず、入力部材回転速度NINMSが目標回転速度NINTと略一致するように変速制御が行われる。すなわち、タービン回転速度センサ74が断線などで故障した場合には、通常はその信号出力が0になってNINMS≧NTMSの状態が維持されるため、入力部材回転速度NINMSが入力側回転速度NINとされるのである。また、入力部材回転速度センサ72が断線などで故障して信号出力が0になった場合には、タービン回転速度センサ74の検出値NTから設定値αを引き算したタービン回転速度NTMSが目標回転速度NINTと略一致するように変速制御が行われる。これにより、回転速度センサ72または74が故障しても、アクセル操作量θACC および車速Vに応じて無段変速機18の変速比γが適切に制御される。
【0026】
このように、本実施例では入力側回転速度NINを検出する回転速度センサとして一対の入力部材回転速度センサ72およびタービン回転速度センサ74が配設され、それ等によって検出された入力部材回転速度NINMSおよびタービン回転速度NTMSのうち大きい方の値を入力側回転速度NINとして用いて変速制御が行われるため、回転速度センサ72および74の何れか一方が故障した場合でも、フェール判定を行うことなく適正な変速制御が行われる。
【0027】
すなわち、回転速度センサ72、74の故障は断線によるものが多く、故障によって回転速度NINMS、NTMSが上昇する可能性は小さいため、大きい方の値が実際の入力側回転速度と一致する蓋然性が高い一方、仮にノイズ等によって回転速度センサ72、74の検出値NINMS、NTMSが高回転になり、その検出値NINMSまたはNTMSに基づいて変速制御が行われたとしても、無段変速機18はアップシフト側へ変速されるため、急ダウンシフトに比較して走行安定性やエンジン12に対する影響は小さいのである。
【0028】
また、本実施例ではタービン回転速度センサ74の実際の検出値NTから所定の設定値αを減算したタービン回転速度NTMSを用いて入力部材回転速度NINMSと比較するようになっているため、少なくとも入力部材回転速度センサ72が正常であれば、タービン回転速度センサ74が正常か否かに拘らず、その入力部材回転速度センサ72の検出値である入力部材回転速度NINMSが目標回転速度NINTと一致するように変速制御が行われるようになり、変速制御が安定する。特に、入力部材回転速度センサ72は、無段変速機18の構成要素である入力側可変プーリ42そのものの回転速度を検出するように配設されているため、無段変速機18の入力側回転速度が高い精度で検出されて優れた制御精度が得られる。
【0029】
また、回転速度センサ72、74のどちらが故障かといったフェール判定が必要ないため、特開平10−9381号公報に記載のフェイルセーフ装置のように変速比γを推定する手段が不要である。これにより、本実施例のように入力側回転速度NINを目標回転速度NINTと一致させるように無段変速機18を電気的にフィードバック制御して変速制御が行われる場合でも、回転速度センサ72または74の故障に拘らず変速制御を適正に行うことができる。
【0030】
また、複数の回転速度センサとして入力部材回転速度センサ72およびタービン回転速度センサ74が用いられているため、例えばエンジン回転速度センサを用いる場合に比較して、トルクコンバータ14の回転速度比を考慮する必要がないなど、何れの回転速度センサ72、74も無段変速機18の入力側回転速度を高い精度で検出できて高い信頼性が得られる。
【0031】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された車両用駆動装置の骨子図である。
【図2】図1の車両用駆動装置における無段変速機の変速制御装置を説明するブロック線図である。
【図3】図2の変速制御回路の一例を具体的に示す油圧回路図である。
【図4】図2のNINT算出手段が目標回転速度NINTを求める際に用いられる変速条件の一例を示す図である。
【図5】図2のNIN選択手段の具体的な処理内容を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
12:エンジン(動力源) 14:トルクコンバータ 18:無段変速機
42:入力側可変プーリ(入力側回転部材) 60:変速用コントローラ(変速制御装置) 64:NIN選択手段(選択手段) 72:入力部材回転速度センサ(他方の回転速度センサ) 74:タービン回転速度センサ(一方の回転速度センサ) NIN:入力側回転速度 NINT:目標回転速度 NINMS:入力部材回転速度 NT、NTMS:タービン回転速度 α:設定値

Claims (2)

  1. 走行用の動力源と駆動輪との間の動力伝達経路に配設された無段変速機の入力側回転速度を検出して該無段変速機の変速制御を行う変速制御装置において、
    前記入力側回転速度を検出する一対の回転速度センサと、
    該一対の回転速度センサの一方によって検出された入力側回転速度から予め定められた設定値を引き算し、他方の回転速度センサによって検出された入力側回転速度と比較して、大きい方の値を選択する選択手段と、
    を有し、該選択手段によって選択された入力側回転速度を用いて前記変速制御が行われる
    ことを特徴とする車両用無段変速機の変速制御装置。
  2. 前記一対の回転速度センサは、前記無段変速機の入力側回転部材の回転速度を検出する入力部材回転速度センサ、および該無段変速機と前記動力源との間に配設されたトルクコンバータのタービン回転速度を検出するタービン回転速度センサである
    ことを特徴とする請求項1に記載の車両用無段変速機の変速制御装置。
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