JP4013596B2 - 製膜装置と製膜方法、およびデバイス製造装置とデバイス製造方法並びにデバイス - Google Patents
製膜装置と製膜方法、およびデバイス製造装置とデバイス製造方法並びにデバイスInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、製膜装置と製膜方法、およびデバイス製造装置とデバイス製造方法並びにデバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子機器、例えばコンピュータや携帯用の情報機器端末の発達に伴い、液晶表示デバイス、特にカラー液晶表示デバイスの使用が増加している。この種の液晶表示デバイスは、表示画像をカラー化するためにカラーフィルタを用いている。カラーフィルタには、基板を有し、この基板に対してR(赤)、G(緑)、B(赤)のインクを所定パターンで供給することで形成されるものがある。このような基板に対してインクを供給する方式としては、例えばインクジェット方式の製膜装置が採用されている。
【0003】
インクジェット方式を採用した場合、製膜装置においてはインクジェットヘッドから所定量のインクを基板に対して吐出して供給するが、この場合、例えば基板はYステージ(Y方向に移動自在なステージ)に搭載され、インクジェットヘッドはXステージ(X方向に移動自在なステージ)に搭載される。そして、Xステージの駆動によりインクジェットヘッドを所定位置に位置決めした後に、Yステージの駆動により基板をインクジェットヘッドに対して相対移動させながらインクを吐出することで、インクジェットヘッドからのインクが基板の所定位置に供給できるようになっている。
【0004】
上記のインクジェットヘッドでは、インクを吐出する手段として、インクタンクを構成する壁面に複数のノズル開口を形成するとともに、各ノズル開口と対向するように伸縮方向を一致させて圧電素子を配設したものが多く用いられている。この種の圧電素子としては、例えば特開昭63−295269号公報に開示されているように、電極と圧電材料とを交互にサンドイッチ状に積層したものが提供されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。複数の圧電素子を同時に駆動した場合、大きなピーク電流を必要とし発熱量も多大になってしまう。特に圧電素子の伸縮時の大きなピーク電流は、配線抵抗等による著しい電圧降下を引き起こすため、選択した圧電素子の数により駆動信号が異なる、いわゆるクロストークが発生することになる。このクロストークは、インク滴の飛翔特性に影響し、製膜品質を劣化させてしまう。
【0006】
このような問題の対策として、例えば特開平5−84902号公報や特開2000−238261号公報が提供されている。特開平5−84902号公報に開示された技術は、圧電素子を複数のブロックに分割して時分割駆動することにより、全圧電素子駆動時に必要とする最大ピーク電流値を低減するものである。また、特開2000−238261号公報に開示された技術は、圧電素子の駆動電圧発生回路を複数具備し、各駆動電圧発生回路の出力をそれぞれアナログスイッチを介して圧電素子に接続することにより、多くのノズルを有するインクジェットヘッドの駆動電圧発生回路を複数に分割して構成できるものである。
【0007】
ところが、これらの技術では、制御が複雑になり機械的な設計負荷が大きくなるという問題に加えて、回路部品等が増えてコストアップを招くという問題も生じてしまう。
【0008】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、簡素な回路構成でピーク電流値を低減できる製膜装置と製膜方法、およびデバイス製造装置とデバイス製造方法並びにデバイスを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
本発明の製膜装置は、複数のノズルに対応させて圧電素子が配設され、圧電素子に供給される駆動波形に応じてノズルから機能性液体を吐出する製膜装置であって、時間差をもって設定された複数の駆動波形からなる波形群を生成する波形生成部と、製膜処理状態に応じて、生成された波形群から所定の駆動波形を選択して圧電素子に供給する波形選択部とを有することを特徴とするものである。
【0010】
従って、本発明では、圧電素子が時間差をもって駆動するように駆動波形を選択することで圧電素子駆動時の駆動電流を分散させ、ピーク電流値を低減することができる。この際、駆動波形は一つの波形生成部から生成されるので、圧電素子毎に波形生成用の回路や素子を設ける必要がなく回路構成を簡素化できる。なお、本明細書における機能性液体とは、印字(製膜)を行う比較的粘度の低いインクや潤滑油や樹脂等の高粘度のものも含んでいる。
【0011】
波形群としては、機能性液体がノズルから吐出される吐出用波形と、機能性液体がノズルから吐出されずにメニスカスを振動させる振動用波形とを含むことが好ましい。
【0012】
これにより、本発明では、波形群から吐出用波形が選択された圧電素子に対応したノズルからは機能性液体を吐出することができ、振動用波形が選択された圧電素子に対応したノズルの機能性液体は強制的に撹拌されることにより増粘や物性劣化を防止することができる。
【0013】
また、波形群には略同一の吐出用波形が複数含まれることが好ましい。
【0014】
これにより、本発明では、吐出用波形で圧電素子を駆動した場合、吐出タイミングをずらせても各ノズルから略同一量の機能性液体を吐出することが可能になる。
【0015】
また、波形選択部が隣り合うノズルに対して、選択する駆動波形を異ならせる構成も採用可能である。
【0016】
これにより、本発明では、隣り合うノズルから同時に機能性液体を吐出した場合に生じるクロストークの影響を低減することができる。
【0017】
そして、本発明のデバイス製造装置は、複数のノズルから吐出された機能性液体を基板に供給し基板に製膜処理を施す製膜装置を有するデバイス製造装置であって、製膜装置として上記の製膜装置が用いられることを特徴としている。
【0018】
これにより、本発明では、製膜装置において簡素化された回路構成でピーク電流値を低減できるので、デバイス製造に係るコストアップ及び製膜品質の劣化を防止することができる。
【0019】
また、本発明のデバイスは、上記のデバイス製造装置により製造されたことを特徴としている。
【0020】
これにより、本発明では、デバイス製造に係るコストアップ及び製膜品質の劣化を防止することができる。
【0021】
一方、本発明の製膜方法は、複数のノズルに対応させて圧電素子が配設され、圧電素子に供給される駆動波形に応じてノズルから機能性液体を吐出する製膜方法であって、時間差をもって設定された複数の駆動波形からなる波形群を生成する波形生成工程と、製膜処理状態に応じて、生成された波形群から所定の駆動波形を選択して圧電素子に供給する波形選択工程とを有することを特徴としている。
【0022】
これにより、本発明では、圧電素子が時間差をもって駆動するように駆動波形を選択することで圧電素子駆動時の駆動電流を分散させ、ピーク電流値を低減することができる。この際、駆動波形は一つの波形生成部から生成されるので、圧電素子毎に波形生成用の回路や素子を設ける必要がなく回路構成を簡素化できる。
【0023】
波形群としては、機能性液体がノズルから吐出される吐出用波形と、機能性液体がノズルから吐出されずにメニスカスを振動させる振動用波形とを含むことが好ましい。
【0024】
これにより、本発明では、波形群から吐出用波形が選択された圧電素子に対応したノズルからは機能性液体を吐出することができ、振動用波形が選択された圧電素子に対応したノズルの機能性液体は吐出されずに強制的に撹拌されることにより増粘や物性劣化を防止することができる。
【0025】
また、波形群には略同一の吐出用波形が複数含まれることが好ましい。
【0026】
これにより、本発明では、吐出用波形で圧電素子を駆動した場合、吐出タイミングをずらせても各ノズルから略同一量の機能性液体を吐出することが可能になる。
【0027】
また、波形選択部が隣り合うノズルに対して、選択する駆動波形を異ならせる構成も採用可能である。
【0028】
これにより、本発明では、隣り合うノズルから同時に機能性液体を吐出した場合に生じるクロストークの影響を低減することができる。
【0029】
そして、本発明のデバイス製造方法は、複数のノズルから吐出された機能性液体を基板に供給し基板に製膜処理を施す製膜処理工程を含むデバイス製造方法であって、上記の製膜方法を用いて製膜処理工程を行うことを特徴としている。
【0030】
これにより、本発明では、製膜処理において簡素化された回路構成でピーク電流値を低減できるので、デバイス製造に係るコストアップ及び製膜品質の劣化を防止することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の製膜装置と製膜方法、およびデバイス製造装置とデバイス製造方法並びにデバイスの実施の形態を、図1ないし図7を参照して説明する。ここでは、本発明の製膜装置を例えば機能性液体としてのインクを用いて、液晶表示デバイスに対して用いられるカラーフィルタ等を製造するためのフィルタ製造装置に適用するものとして説明する。
【0032】
図1は、フィルタ製造装置(デバイス製造装置)を構成する製膜装置(インクジェット装置)10の概略的な外観斜視図である。このフィルタ製造装置は、ほぼ同様の構造を有する3基の製膜装置10を備えており、各製膜装置10は、それぞれR(赤)、G(緑)、B(青)の各色のインクをフィルタ基板に吐出する構成になっている。
【0033】
製膜装置10は、ベース12、第1移動手段14、第2移動手段16、図示しない電子天秤(重量測定手段)、吐出手段としてのインクジェットヘッド20、キャッピングユニット22、クリーニングユニット24等を有している。ベース12の上には、第1移動手段14、電子天秤、キャッピングユニット22、クリーニングユニット24および第2移動手段16が設置されている。
【0034】
第1移動手段14は、好ましくはベース12の上に直接設置されており、しかもこの第1移動手段14は、Y軸方向に沿って位置決めされている。これに対して第2移動手段16は、支柱16A、16Aを用いて、ベース12に対して立てて取り付けられており、しかも第2移動手段16は、ベース12の後部12Aにおいて取り付けられている。第2移動手段16のX軸方向は、第1移動手段14のY軸方向とは直交する方向である。Y軸はベース12の前部12Bと後部12A方向に沿った軸である。これに対してX軸はベース12の左右方向に沿った軸であり、各々水平である。
【0035】
第1移動手段14は、ガイドレール40、40を有しており、第1移動手段14は、例えば、リニアモータを採用することができる。このリニアモータ形式の第1移動手段14のスライダー42は、ガイドレール40に沿って、Y軸方向に移動して位置決め可能である。
【0036】
スライダー42は、θ軸用のモータ44を備えている。このモータ44は、例えばダイレクトドライブモータであり、モータ44のロータはテーブル46に固定されている。これにより、モータ44に通電することでロータとテーブル46は、θ方向に沿って回転してテーブル46をインデックス(回転割り出し)することができる。
【0037】
テーブル46は、基板48を位置決めして、しかも保持するものである。また、テーブル46は、吸着保持手段50を有しており、吸着保持手段50が作動することにより、テーブル46の穴46Aを通して、基板48をテーブル46の上に吸着して保持することができる。テーブル46には、インクジェットヘッド20がインクを捨打ち或いは試し打ち(予備吐出)するための予備吐出エリア52が設けられている。
【0038】
第2移動手段16は、支柱16A,16Aに固定されたコラム16Bを有しており、このコラム16Bは、リニアモータ形式の第2移動手段16を有している。スライダー60は、ガイドレール62Aに沿ってX軸方向に移動して位置決め可能であり、スライダー60は、インク吐出手段としてのインクジェットヘッド20を備えている。
【0039】
インクジェットヘッド20は、揺動位置決め手段としてのモータ62,64,66,68を有している。モータ62を作動すれば、インクジェットヘッド20は、Z軸に沿って上下動して位置決め可能である。このZ軸はX軸とY軸に対して各々直交する方向(上下方向)である。モータ64を作動すると、インクジェットヘッド20は、Y軸回りのβ方向に沿って揺動して位置決め可能である。モータ66を作動すると、インクジェットヘッド20は、X軸回りのγ方向に揺動して位置決め可能である。モータ68を作動すると、インクジェットヘッド20は、Z軸回りのα方向に揺動して位置決め可能である。
【0040】
このように、図1のインクジェットヘッド20は、スライダー60において、Z軸方向に直線移動して位置決め可能で、α、β、γに沿って揺動して位置決め可能であり、インクジェットヘッド20のインク吐出面20Pは、テーブル46側の基板48に対して正確に位置あるいは姿勢をコントロールすることができる。なお、インクジェットヘッド20のインク吐出面20Pには、それぞれがインクを吐出する複数(ここでは、例えば120個)のノズル(吐出口)が設けられている。
【0041】
インクジェットヘッド20は、圧電素子としてピエゾ素子を用いたヘッドであり、複数のノズルに対してそれぞれこのピエゾ素子が設けられている。そして、各ピエゾ素子に駆動信号が印加されて各ノズル毎にインク室を拡大または縮小することで、ノズルからのインク吐出を制御できる構成になっている。
【0042】
図2に、インクジェットヘッド20のインク吐出に関する制御系を示す。
このインクジェットヘッド20では、各ノズル11(ノズル番号を#1、#2、…で示す)に対応させてピエゾ素子PZ(PZ1、PZ2、…で示す)が設けられている。そして、各ピエゾ素子PZには波形選択部13がそれぞれ接続されており、これら波形選択部13は波形生成部15に接続されている。
【0043】
波形生成部15は、ピエゾ素子PZを駆動するために印加する電圧の駆動波形(以下、単に波形と称する)を生成するものであり、本実施形態では、図3(a)に示すように、時間差をもって設定(定義)される複数(ここでは4つ)の波形0〜3からなる波形群Pが生成される構成になっている。ここで、波形0は、インクがノズル11から吐出されない大きさに設定される。すなわち、この波形0は、駆動電圧をピエゾ素子PZに印加したときに、ノズル面に対してメニスカスが離間・接近を繰り返すように微振動する大きさに設定された振動用波形とされている。また、波形1〜3は、駆動電圧をピエゾ素子PZに印加したときに、インク室が縮小・加圧されて所定量のインクを吐出する大きさに設定された吐出用波形とされている。なお、波形1〜3は略同一の吐出用波形であり、この波形が印加されたピエゾ素子PZに対応するノズル11からは、ほぼ同一量のインクが吐出される構成になっている。
【0044】
波形選択部13は、波形生成部15で生成された波形群Pの中から、製膜処理状態に応じて、且つノズルの位置(ノズル番号)に応じた波形を選択してピエゾ素子PZに供給するものである。具体的には、図3(b)に示すように、4つの波形に対して、2ビットのデータで制御し、セレクタ値“00”で波形0、“01”で波形1、“10”で波形2、“11”で波形3が選択される。
【0045】
図1に戻り、電子天秤は、インクジェットヘッド20のノズルから吐出されたインク滴の1滴の重量を測定して管理するために、例えば、インクジェットヘッド20のノズルから、5000滴分のインク滴を受ける。電子天秤は、この5000滴のインク滴の重量を5000で割ることにより、インク滴1滴の重量をほぼ正確に測定することができる。このインク滴の測定量に基づいて、インクジェットヘッド20から吐出するインク滴の量を最適にコントロールすることができる。
【0046】
クリーニングユニット24は、インクジェットヘッド20のノズル等のクリーニングをフィルタ製造工程中や待機時に定期的にあるいは随時に行うことができる。キャッピングユニット22は、インクジェットヘッド20のノズル内のインクが乾燥しないようにするために、フィルタを製造しない待機時にこのインク吐出面20Pを外気に触れさせないようにするものである。
【0047】
上記の構成の製膜装置10の中、インクジェットヘッド20の駆動に関して説明する。
上述したように、波形生成部15は予め設定された波形0〜3からなる波形群Pを生成するが(波形生成工程)、メンテナンスや待機時等、インクを吐出しない工程では波形選択部13は振動用波形0を選択して(波形選択工程)、ピエゾ素子PZに供給する。そして、ピエゾ素子PZはインクが吐出しない大きさで駆動(伸縮)し、インクはインクジェットヘッド20内で微振動する。これにより、インクは撹拌され、非吐出時においてもインクの増粘や物性劣化が抑制される。
【0048】
一方、インクを吐出する際には、波形選択部13はノズル番号に応じて波形1〜3の一つを選択し(波形選択工程)ピエゾ素子PZに供給する。具体的には、図4に示すように、一列に並ぶ複数のノズル11は、波形1を選択するノズル番号#1、#4、#7…のグループ、波形2を選択するノズル番号#2、#5、#8…のグループ、及び波形3を選択するノズル番号#3、#6、#9…のグループに分けられ、各グループ毎にほぼ同時に、且つほぼ同一量のインクを吐出する。なお、このグループ分けは、隣り合うノズル(例えば#1と#2や#2と#3)に対して異なる波形が選択されるように設定される。これにより、隣り合うノズルからは時間差をもってインクが吐出されることになり、同時にインクを吐出した場合に生じるクロストークの影響を低減することが可能になる。
【0049】
続いて、製膜処理工程について説明する。
作業者がテーブル46の前端側から基板48を第1移動手段14のテーブル46の上に給材すると、この基板48はテーブル46に対して吸着保持されて位置決めされる。そして、モータ44が作動して、基板48の端面がY軸方向に並行になるように設定される。
【0050】
次に、インクジェットヘッド20がX軸方向に沿って移動して、電子天秤の上部に位置決めされる。そして、指定滴数(指定のインク滴の数)の吐出を行う。これにより、電子天秤は、たとえば5000滴のインクの重量を計測して、インク滴1滴当たりの重量を計算する。そして、インク滴の1滴当たりの重量が予め定められている適正範囲に入っているかどうかを判断し、適正範囲外であればピエゾ素子に対する印加電圧の調整等を行って、インク滴の1滴当たりの重量を適正に収める。
【0051】
インク滴の1滴当たりの重量が適正な場合には、基板48が第1移動手段14よりY軸方向に適宜に移動して位置決めされるとともに、インクジェットヘッド20が第2移動手段16によりX軸方向に適宜移動して位置決めされる。そして、インクジェットヘッド20は、予備吐出エリア52(吸収材54)に対して全ノズルからインクを予備吐出した後に、基板48に対してY軸方向に相対移動して(実際には、基板48がインクジェットヘッド20に対してY方向に移動する)、基板48上の所定領域に対して所定のノズルから所定幅でインクを吐出する。インクジェットヘッド20と基板48との一回の相対移動が終了すると、インクジェットヘッド20が基板48に対してX軸方向に所定量ステップ移動し、その後、基板48がインクジェットヘッド20に対して移動する間にインクを吐出する。そして、この動作を複数回繰り返すことにより、製膜領域全体にインクを吐出して製膜することができる。
【0052】
続いて、図5および図6を参照して、製膜処理によりカラーフィルタを製造する例について説明する。
【0053】
図5の基板48は、透明基板であり適度の機械的強度と共に光透過性の高いものを用いる。基板48としては、例えば、透明ガラス基板、アクリルガラス、プラスチック基板、プラスチックフィルム及びこれらの表面処理品等が適用できる。
【0054】
たとえば、図6に示すように長方形形状の基板48上に、生産性をあげる観点から複数個のカラーフィルタ領域105をマトリックス状に形成する。これらのカラーフィルタ領域105は、後でガラス48を切断することで、液晶表示装置に適合するカラーフィルタとして用いることができる。
【0055】
カラーフィルタ領域105には、たとえば図6に示すように、RのインクとGのインクおよびBのインクを所定のパターンで形成して配置している。この形成パターンとしては、図に示すように従来公知のストライプ型のほかに、モザイク型やデルタ型あるいはスクウェアー型等がある。特に、ヘッド20を傾けることで画素部の配列ピッチにノズル間隔を対応させる場合、ストライプ型では一度に吐出できるノズルの数が多いため効果的である。
【0056】
図5は、基板48に対してカラーフィルタ領域105を形成する工程の一例を示している。
【0057】
図5(a)では、透明の基板48の一方の面に対して、ブラックマトリックス110を形成したものである。カラーフィルタの基礎となる基板48の上には、光透過性のない樹脂(好ましくは黒色)を、スピンコート等の方法で、所定の厚さ(たとえば2μm程度)に塗布して、フォトリソグラフィー法等の方法でマトリックス状にブラックマトリックス110を設ける。ブラックマトリックス110の格子で囲まれる最小の表示要素がフィルタエレメントとなり、たとえばX軸方向の巾30μm、Y軸方向の長さ100μm程度の大きさの窓である。
【0058】
ブラックマトリックス110を形成した後は、たとえば、ヒータにより熱を与えることで、基板48の上の樹脂を焼成する。
【0059】
図5(b)に示すように、インク滴99は、フィルタエレメント112に供給される。インク滴99の量は、加熱工程におけるインクの体積減少を考慮した充分な量である。
【0060】
図5(c)の加熱工程では、カラーフィルタ上のすべてのフィルタエレメント112に対してインク滴99が充填されると、ヒータを用いて加熱処理を行う。基板48は、所定の温度(例えば70℃程度)に加熱する。インクの溶媒が蒸発すると、インクの体積が減少する。体積減少の激しい場合には、カラーフィルタとして充分なインク膜の厚みが得られるまで、インク吐出工程と、加熱工程とを繰り返す。この処理により、インクの溶媒が蒸発して、最終的にインクの固形分のみが残留して膜化する。
【0061】
図5(d)の保護膜形成工程では、インク滴99を完全に乾燥させるために、所定の温度で所定時間加熱を行う。乾燥が終了するとインク膜が形成されたカラーフィルタの基板48の保護及びフィルタ表面の平坦化のために、保護膜120を形成する。この保護膜120の形成には、たとえば、スピンコート法、ロールコート法、リッピング法等の方法を採用することができる。
【0062】
図5(e)の透明電極形成工程では、スパッタ法や真空蒸着法等の処方を用いて、透明電極130を保護膜120の全面にわたって形成する。
【0063】
図5(f)のパターニング工程では、透明電極130は、さらにフィルタエレメント112の開口部に対応させた画素電極にパターニングされる。
【0064】
なお、液晶の駆動にTFT(Thin Film Transistor)等を用いる場合ではこのパターニングは不用である。また、上記製膜処理の間には、定期的あるいは随時クリーニングユニット24を用いてインクジェットヘッド20のインク吐出面20Pをワイピングすることが望ましい。
【0065】
以上のように、本実施の形態では、ピエゾ素子PZを3つのグループに分けて異なるタイミングで駆動しているので、駆動時に必要とする最大ピーク電流値をほぼ1/3に低減できることに加えて、一つの波形生成部15により全てのピエゾ素子PZに供給される駆動波形を生成することで、個別に波形生成用の回路を設けることなく、回路構成の簡素化を実現している。結果として、装置の軽量化やトランジスタ等のアナログ回路部品等が減りコストダウンを実現することができる。
【0066】
また、本実施の形態では、振動用波形0でピエゾ素子PZを駆動することで、インク吐出動作の停止中であっても微振動によりインクジェットヘッド20内のインクを撹拌できるため、インクの増粘やインク物性の劣化を抑制することができる。そのため、インク吐出動作再開後でもインク吐出不良や吐出重量の変動等を防止することができ、スループット低下や無駄なインク消費を防ぐことが可能になる。
【0067】
さらに、本実施の形態では、駆動波形1〜3を略同一波形とすることで、上記グループ間でインク吐出量をほぼ同一にすることができ、ノズル間のインク吐出量のバラツキによる製膜品質の低下を防止することが可能になる。また、本実施の形態では、隣り合うノズル間でインク吐出に時間差を設けているので、同時にインクを吐出した場合に生じるクロストークの影響を低減することもできる。
【0068】
なお、上記実施の形態において、波形選択部がピエゾ素子毎に設けられる構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば上記グループ毎に波形選択部を設ける構成としてもよい。また、上記実施の形態では、吐出用波形を3つ設定するものとして説明したが、隣り合うノズルでインク吐出に時間差が設けられれば、図7に示すように、吐出用波形を2つ設定して2つのグループに分ける構成としてもよい。
【0069】
また、上記実施の形態では、製膜装置をフィルタ製造装置に適用する構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば用紙等に印字・製膜するプリンタ(プロッタ)にも適用可能である。
【0070】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができ、例えば、上記実施形態においては、最初にR(赤色)のパターン形成を行い、続いてG(緑色)のパターン形成、そして最後にB(青色)のパターン形成を行うものとしたが、これに限らず、必要に応じてその他の順番でパターン形成するものとしても良い。
また、本発明のデバイス製造装置は、たとえば液晶表示デバイス用のカラーフィルタの製造に限定されるものではなく、たとえば、EL(エレクトロルミネッセンス)表示デバイスに応用が可能である。EL表示デバイスは、蛍光性の無機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。こうしたEL表示素子に用いられる蛍光性材料のうち、赤、緑および青色の各発光色を呈する材料すなわち発光層形成材料及び正孔注入/電子輸送層を形成する材料をインクとし、各々を本発明のデバイス製造装置を用いて、TFT等の素子基板上にパターニングすることで、自発光フルカラーELデバイスを製造することができる。本発明におけるデバイスの範囲にはこのようなELデバイスをも含むものである。
この場合、例えば、上記のカラーフィルタのブラックマトリクスと同様に樹脂レジストを用いて1ピクセル毎に区画する隔壁を形成するとともに、下層となる層の表面に吐出された液滴が付着しやすいように、且つ、隔壁が吐出された液滴をはじき隣接する区画の液滴と混じり合うことを防止するため、液滴の吐出の前工程として、基板に対し、プラズマ、UV処理、カップリング等の表面処理を行う。しかる後に、正孔注入/電子輸送層を形成する材料を液滴として供給し製膜する第1の製膜工程と、同様に発光層を形成する第2の製膜工程とを経て製造される。
こうして製造されるELデバイスは、セグメント表示や全面同時発光の静止画表示、例えば絵、文字、ラベル等といったローインフォメーション分野への応用、または点・線・面形状をもった光源としても利用することができる。さらに、パッシブ駆動の表示素子をはじめ、TFT等のアクティブ素子を駆動に用いることで、高輝度で応答性の優れたフルカラー表示デバイスを得ることが可能である。
また、本発明の製膜装置に金属材料や絶縁材料を供すれば、金属配線や絶縁膜等のダイレクトな微細パターニングが可能となり、新規な高機能デバイスの作製にも応用できる。
なお、上記の実施形態では、便宜的に「インクジェット装置」ならびに「インクジェットヘッド」と呼称し、吐出される吐出物を「インク」として説明したが、このインクジェットヘッドから吐出される吐出物は所謂インクには限定されず、ヘッドから液滴として吐出可能に調整されたものであればよく、例えば、前述のELデバイスの材料、金属材料、絶縁材料、又は半導体材料等様々な材料が含まれることはいうまでもない。
【0071】
また、本発明における製膜装置は、対象物上に特定のパターンを形成する用途に限らず、例えば半導体装置の製造工程におけるレジスト膜の形成など、対象物全体を覆う用途にも適用可能である。
また、図示した製膜装置のインクジェットヘッド20は、R(赤).G(緑).B(青)の内の1つの種類のインクを吐出することができるようになっているが、この内の2種類あるいは3種類のインクを同時に吐出することももちろんできる。また、製膜装置10の第1移動手段14と第2移動手段16はリニアモータを用いているがこれに限らず他の種類のモータやアクチュエータを用いることもできる。
なお、実施の形態においては、非吐出のノズルに振動用波形0を印加する構成としたが、必ずしもこの必要はなく、振動により機能性液体が物性の変化を起こす場合には、非吐出時に電圧変動のない駆動電圧を印加することとしてもよい。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、駆動時に必要とする最大ピーク電流値を低減できることに加えて、回路構成の簡素化を実現し、装置の軽量化やコストダウンに寄与するという効果が得られる。また、本発明では、スループット低下や無駄な消費を防ぐとともに、製膜品質の低下防止やクロストークの影響低減という効果も得られる。さらに、発熱量が抑制され、ヘッドの温度特性が向上するので吐出安定性が増すという効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のフィルタ製造装置を構成する製膜装置の概略的な外観斜視図である。
【図2】 インクジェットヘッドのインク吐出に関する制御系を示す図である。
【図3】 (a)は波形生成部で生成された波形群の図であり、(b)はセレクタ値と波形の関係を示す図である。
【図4】 ノズル番号と波形との関係を示す図表である。
【図5】 (a)〜(f)は、基板を用いてカラーフィルタを製造する手順の一例を示す図である。
【図6】 基板と基板上のカラーフィルタ領域の一部を示す図である。
【図7】 別の形態のノズル番号と波形との関係を示す図表である。
【符号の説明】
P 波形群
PZ ピエゾ素子(圧電素子)
0 駆動波形(振動用波形)
1〜3 駆動波形(吐出用波形)
10 製膜装置(インクジェット装置)
11 ノズル
13 波形選択部
15 波形生成部
48 基板
Claims (11)
- 複数のノズルに対応させて圧電素子が配設され、該圧電素子に供給される駆動波形に応じて前記ノズルから機能性液体を吐出する製膜装置であって、
時間差をもって設定された複数の前記駆動波形からなる波形群を生成する波形生成部と、
製膜処理状態に応じて、前記生成された波形群から所定の前記駆動波形を選択して前記圧電素子に供給する波形選択部とを有することを特徴とする製膜装置。 - 請求項1記載の製膜装置において、
前記波形群は、前記機能性液体が前記ノズルから吐出される吐出用波形と、
前記機能性液体が前記ノズルから吐出されずに振動する振動用波形とを含むことを特徴とする製膜装置。 - 請求項2記載の製膜装置において、
前記波形群には、略同一の前記吐出用波形が複数含まれることを特徴とする製膜装置。 - 請求項1から3のいずれかに記載の製膜装置において、
前記波形選択部は、隣り合う前記ノズルに対して選択する前記駆動波形を異ならせることを特徴とする製膜装置。 - 複数のノズルから吐出された機能性液体を基板に供給し前記基板に製膜処理を施す装置を有するデバイス製造装置であって、
前記製膜装置として、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載された製膜装置が用いられることを特徴とするデバイス製造装置。 - 請求項5記載のデバイス製造装置により製造されたことを特徴とするデバイス。
- 複数のノズルに対応させて圧電素子が配設され、該圧電素子に供給される駆動波形に応じて前記ノズルから機能性液体を吐出する製膜方法であって、
時間差をもって設定された複数の前記駆動波形からなる波形群を生成する波形生成工程と、
製膜処理状態に応じて、前記生成された波形群から所定の前記駆動波形を選択して前記圧電素子に供給する波形選択工程とを有することを特徴とする製膜方法。 - 請求項7記載の製膜方法において、
前記波形群は、前記機能性液体が前記ノズルから吐出される吐出用波形と、
前記機能性液体が前記ノズルから吐出されずに振動する振動用波形とを含むことを特徴とする製膜方法。 - 請求項8記載の製膜方法において、
前記波形群は、略同一の前記吐出用波形を複数含むことを特徴とする製膜方法。 - 請求項7から9のいずれかに記載の製膜方法において、
隣り合う前記ノズルに対して、選択する前記駆動波形を異ならせることを特徴とする製膜方法。 - 複数のノズルから吐出された機能性液体を基板に供給し前記基板に製膜処理を施す製膜処理工程を含むデバイス製造方法であって、
請求項7から請求項10のいずれか1項に記載された製膜方法を用いて前記製膜処理工程を行うことを特徴とするデバイス製造方法。
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