以下、具体的な実施形態に基づいて説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
まず、植栽マットについて説明する。図1は植栽マットの斜視図、図2(a)はその平面図、同図(b)はその断面図である。植栽マット1は、底面側部から側面下部にかけて開口部6を有する略方形のセル7を互いにリブ5で連設してなるマットフレーム2と、該セル7の底面に敷設されたフィルター3(図示せず)と、該セル7内のフィルター3上に形設された植物育成材4とから構成される。
植栽マット1に用いるマットフレーム2について、図3(a)にその平面図、同図(b)に正面図、同図(c)に断面図を、図4(a)にマットフレーム2の部分平面図、同図(b)にその部分正面図、同図(c)にA−A線断面図を示す。
マットフレーム2には複数個の略方形のセル7が凹設され、隣接するセル7相互は、その上端部を連結リブ5bによって連設されている。マットフレーム2の外周部分には、セル7の上端部に連結リブ5bと略同一高さの周縁リブ5aが設けられている。そして、各セル7底面の各辺の中心付近には、底面側部から側面下部にかけて、4箇所の開口部6が設けられている。
リブ5(周縁リブ5a、連結リブ5b)の厚さは、可撓性を持たせて敷設面の凹凸等(スラブ)の不陸によく追従させると同時に、マットフレーム2に直接又は歩行板を敷いて人が乗っても、つぶれない程度の強度を有すること厚さとすることが必要であり、例えば0.4〜2.0mmとするのが良好である。これにより、マットフレーム2は、複数のセル7底面で支持されて屈曲により安定感を有するとともに、屋上等のスラブ面に敷き詰め可能な形状となる。また、セル7の厚さについても、リブ5の厚さと同様の配慮が必要となる。
マットフレーム2の材質としては合成樹脂製のものが良好であり、塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン等が用いられ、真空成型、ブロー成型、射出成型、押し出し型等の成型方法で形成される。尚、マットフレーム2の大きさは適宜であり、実施例では500×500×100mmとした。
開口部6の大きさは適宜であるが、植栽マット1への潅水に対応できる大きさとしなければならない。即ち、じょうろ等による植栽マット1への潅水の余剰水の排出や後述する保水層からの水の吸水に適したものとするとよい。尚、排出された水は、排水のために傾斜勾配を有するスラブ面上を流れて排水ドレインにより排水される。
植栽マット1のフィルター3と植物育成材4の配置について明らかにするために、本発明による植栽マットの構成図を図5に示す。マットフレーム2の各セル7の底面にフィルター3を敷設し、その上に植物育成材4を形設する。植物育成材4の各セル7内への形設は、敷設面にフレームマット2を敷設する前、後のどちらでもよい。
フィルター3は、土壌流出を防止するために、セル7内の開口部6をふさぐように敷設される。フィルター3には不織布、ネット、チュール等を用いる。
植物育成材4は植物生育の培地となるものであり、本実施形態では予め種子を埋設することができる軽量ブロック資材を使用した。軽量ブロック資材とは、例えば、培養土をでんぷん糊などのバインダと共に型枠に入れ、プレス機によって厚みが約半分になるようにプレスし、熱風を通過させて硬化させたものである。これにより、所望のブロック状の培養土が得られる。
また、植物育成材4として、マットフレーム2上に客土を山積みし、刷毛でならして各セル7内に平らに土詰めしてもよい。この場合客土としては、パーライト、バーミキュウライト、ピートモス、肥土などを混合した、保水性が良く排水が良好な軽量土壌が好ましい。
本実施形態で植物育成材4に植える植物は、芝、アイビー類、フッキソウ類等の地被植物であるが、これに限定されることなく低木等でもよい。これらの植物は、苗又は成育植物の状態で植物育成材4に植えらる。植物育成材4が軽量のブロック材の場合には、該ブロック状の植物育成材4に苗又は成育植物を事前に繁茂させて、セル7内に詰めることもできる。
また、苗等の替わりに種子を使用することもできる。種子は植物育成材4に蒔くことを基本とするが、植物育成材4が軽量ブロック資材の場合には、予めブロックの中に埋め込んでおいてもよい。さらには、一般的なバラバラの種子の他、有機質又は、無機質のシートに種子を付着させた種子シート17を用いることもできる(図17参照)。種子シート17を使用する場合には、植物育成材4の表面にでんぷん質などの溶液を散布し、その上面に種子シート17を貼付しておく。
次に、植栽マットの他の実施形態について説明する。図6(a)は他の実施形態のマットフレームの部分平面図、同図(b)はその部分正面図、同図(c)はB−B線断面図、図7は当該実施形態の構成図である。
本実施形態では、セル7の底面に十字型の凸状の底部リブ5cが形設されており、底部リブ5cの内部は、セル7の底部中心から側面下部にかけて連なる空間状態になっている。底部リブ5cには、4箇所の底部リブ開口部6aが設けられている。セル7とフィルター3と植物育成材4の組み合わせは、図7に示す如く、上記実施形態と同様である。従って、潅水された余剰水は、底部リブ開口部6aから底部リブ5c内部の空間を通って、セル7の側面下端部に導かれ排出される。
さらに、マットフレーム2の周縁リブ5aと連結リブ5bの高さが異なる実施形態について示す。図8(a)は本発明による他の実施形態の植栽マットの斜視図、同図(b)はその周縁リブの部分断面図である。
本実施形態では、周縁リブ5aと連結リブ5bの高さを同じにせず、周縁リブ5aの高さよりも連結リブ5bの高さを低く形成してある。周縁リブ5aと連結リブ5bの高さの相違については特に限定するものではないが、例えば10〜20mm低く形成すると良好である。尚、本実施形態では、周縁リブ5aは外側に折れ曲がる鍵上のものとした。
かかる構成により、客土を周縁リブ5aの高さまで詰めて植物を育成するにあたり、潅水により客土が沈下した際に、該客土の上面と連結リブ5bとの高さが略同一平面になる、また、客土を連結リブ5bの高さまで詰めた後に、切芝をその上面に並べて目土仕上げした際に、周縁リブ5aと略同一平面になるので、仕上がりの状態がよくなる作用がある。また、植栽マット1相互間の根の絡み合いが防止できるので、植栽マット1の移設のとき便利である。
ここで、図9に周縁リブ5aの連設状態を例を示す。敷設によるマットフレーム2の側面上端部にある周縁リブ5aは、上記実施形態では全周に設けているが、所要辺にのみ設ける、全く設けない等でもよい。
そして、隣接するマットフレーム2の周縁リブ5a相互の連設手段も適宜で、図9(a)は外向きの水平な周縁リブ5aを有し、隣接するマットフレーム2の周縁リブ5a相互を重ね合わせたもの、同図(b)は外向きに垂下げた構造の周縁リブ5aを有し、隣接するマットフレーム2の該周縁リブ5a相互を重ね合わせ係合させたもの、同図(c)は外向きの水平な周縁リブ5aを有し、隣接するマットフレーム2の周縁リブ5a相互を突き合わせたもの、図7(d)は周縁リブ5aを形成せず、隣接するマットフレーム2の側面上端の周縁部相互を突き合わせたもの等がある。
次に、植栽マット1に用いるマットフレーム2の適宜箇所のリブ5を幅広にした実施形態について説明する。図10(a)は幅広リブを有する実施形態のマットフレームの平面図、同図(b)はその正面図、同図(c)はその断面図であり、図11(a)は該幅広リブを有する実施形態の植栽マットの平面図、同図(b)はその正面図、同図(c)はその断面図である。
本実施形態では、マットフレーム2の縦横中心で、連結リブ5bが十字型に幅広に形成されているが、これに限定されるものではない。即ち、適宜箇所の縦方向や横方向の周縁リブ5a、連結リブ5bを幅広に形成することが可能であり、縦方向のみ、横方向のみ、又は縦横方向など適宜にリブ5を幅広にして良い。また、リブ5の幅は、必要に応じて適宜決定される。
そして、幅広にしたリブ5を有する植栽マット1のみを組み合わせて使用しても、幅広にしたリブ5を有しない植栽マット1と組み合わせて使用してもよい。
幅広にしたリブ5を有する植栽マット1は、後述の潅水装置の配設において、給水管の設置を容易にすることができる作用がある。
次に、植栽マット1に用いるマットフレーム2のセル7に、仕切部材8を形成する実施形態について説明する。図12は仕切部材8を一体成形したマットフレームの斜視図であり、各セル7は壁型の仕切部材8によって画成部7aに分けられている。
本実施形態では、壁型の仕切部材8はマットフレーム2の製造時に一体成型される。仕切部材8の形状はクロス状としたが、これに限定されるものではなく、格子状等、形状は適宜である。仕切部材8の高さは、セル7を連結するリブ5の高さとほぼ同一の高さとした。
また、セル7内にある仕切部材8の中央部及び端部4箇所の上部に肉厚部9が形成され、その頂面に小穴10を設けてある。この小穴10は種子シート17を使用する場合に、種子シート17を固定する役割を果たす。
壁型の仕切部材8によりセル7を画成部7aに分ける場合には、通水のために画成部7aごとに開口部6をセル7の底面付近に設けることが好ましいが、画成部7aごとには設けず、仕切部材8の下部に画成部7a相互の連通用切り欠きを形成して、セル7の一箇所等の開口部6で通水を行ってもよい。
上記の仕切部材8はマットフレーム2と一体成型したが、仕切部材8とマットフレーム2は別体でもよく、その例として、図13(a)に別体の仕切部材を配置したマットフレームの拡大平面図、同図(b)にC−C線断面図を示す。
本実施形態では、セル7内に別部材としてクロス状の仕切部材8を配設し、仕切部材8の中央部及び端部4箇所の上部には、上記と同様に肉厚部9が形成され、その頂面に小穴10を設けてある。仕切部材8の高さは、セル7のリブ5の高さと略同一であるが、これに限定されるものではない。
そして、セル7の側面下部から底面中心に向かって隆起部11が形成され、該隆起部11のセル7中心方向への端部の上面には、通水のための開口部6が設けられている。隆起部11の内側は逆U字型の空間である凹溝11aになっており、開口部6を通った余剰水は凹溝11aから排出される。
別体の仕切部材8の例を図14乃至16に示す。図14(a)は上下に一体に嵌合する仕切部材8の斜視図、同図(b)は嵌合状態にある上記仕切部材の斜視図である。2枚の平板8aを切り欠き12で上下に一体に嵌合させて、仕切部材8とする。図15は凹凸に嵌合する仕切部材8の斜視図であり、2枚の略直角板8の中央部平面において、凸部13と凹部14で凹凸に嵌合させて、仕切部材8とする。図16は円弧部を凹凸に係合する仕切部材8の斜視図であり、2枚の湾曲板8bの中央部において、円弧凸部15と円弧凹部16で凹凸に係合させて仕切部材8とする。
これらの仕切部材8は、いずれも分離可能であることから、保管・搬入時に場所をとらず、さらに、図14の仕切部材8は、嵌合状態で矢印の方向に回転させて折りたたむことが可能であり、分離せずともある程度上記と同様の作用がある。
実際に仕切部材8を植栽マット1の例を図17に示す。マットフレーム2の各セル7内にフィルター3(図示せず)を敷設し、フィルター3の上に別体のクロス状の仕切部材8を配設する。仕切部材8の配設でセル7は画成部7aに分割されている。各画成部7aには、植物育成材4がリブ5の上端部まで詰められている。
そして、マットフレーム2の上部開口19に種子シート17が載置され、種子シート17は、ピン・釘等の止め具18と、仕切部材8の中央部・各端部に設けられた小穴10によってマットフレーム2に止められる。
種子シート17の固定により、種子シート17は植物育成材4に面接触し、浮き上がったり、飛ぶことなく、水分を吸収して発芽することができる。
仕切部材8を用いた場合には、マットフレーム2の上部からの圧力に対する強度を上げて補強するので、マットフレーム2の敷き詰め時、植栽マット1の敷き詰め時、又は敷設完了後の保守、点検時等において、その上部を歩行した際に、マットフレーム2の破損を防止し、植栽マット1の芝等の植物の根へのダメージを和らげる作用がある。
また、各セル7内の植物育成材4につき、客土の場合は長期間における中央部の沈下を防止し、軽量土壌・軽量ブロック資材の場合はその移動を防止するので、植物育成材4を植物の育成に対し常に好条件に保つ作用がある。
尚、仕切部材8は図8の連結リブ5bが周縁リブ5aより低いマットフレーム2にも適用できるもので、植物育成材4を連結リブ5bの高さまで詰めた後に、切り芝をその上面に並べて目土仕上げした際に、周縁リブ5aと略同一平面とすることもできる。
次に、保水層21を用いて、本発明による植栽マット1を敷設する方法(植栽設備)について説明する。
図18(a)は保水層の上部に植栽マットを敷設した場合の平面図、同図(b)はD−D線断面図である。本敷設方法は、敷設面20にスクリーン状(平面状)の保水層21を形成し、保水層21の上に植裁マット1の所要数を敷き詰めるものである。保水層21には、化学繊維や天然繊維を使用した織布・不織布、フェルト、吸水ポリマーをシートに加工したもの、或いはそれらの複合物等を用いる。
上記敷設方法を採用することにより、ジョウロ等による上部からの潅水、降雨などの余剰水の一部は、排水ドレインに排水されることなく、保水層21に貯水され、セル7内の植物育成材4が水不足となった場合に保水層21の水分は底部の開口部6から毛細管現象によって吸水される。従って、保水層21は植物育成材4への水分補給源となって水枯れの心配がなく、植物の育成に大きく貢献し、管理も容易になる。
そして、保水層21の存在により、植物の生育の培地となる植物育成材4を少なくしても、植物の水分の育成条件を好適に保持することができるので、ビル屋上等の敷設面への荷重負担を軽減できる作用がある。
そして、植裁マット1の底部にある開口部6から出た植物の根張りは、保水層21上又は保水層21内に位置して、敷設面20を劣化させることがなく、防根の作用を果たす。
さらに、上記保水層21上に給水管を配設する実施形態について説明する。図19(a)は保水層上に植栽マットを敷設して給水管を配設する場合の平面図、同図(b)は上記実施形態のE−E線断面図である。
本敷設方法では、敷設面20に平面状の保水層21を形成した後、植栽マット1を敷き詰める際に、隣接する植栽マット1の相互間に所用経路の給水管配設用空間部22を形成するように敷き詰める。そして、該空間部22の保水層21上に該空間部22に沿うように給水管24を配設し、該空間部22にマットフレーム2のリブ5、即ち、植栽マット1の上端部と同一平面を形成する逆U字型のカバー部材25を給水管24を覆うように設ける。
給水管24は潅水用加圧装置等に接続され、全体として潅水装置を構成する。潅水の種類には、保水層21の乾燥状況に合わせて潅水装置のセット及び作動を人が行う手動潅水、或いは、保水層21内に湿気センサーを設置した(完全)自動潅水があるが、そのどちらでも構わない。また、給水管24による潅水用装置としては、散水方式、ドリッパー方式及び浸み出し方式があるが、カバー部材25により水の飛散を防止できるので、いずれでもよい。
図20は給水管を配設する場合の施工概念図の一例であり、保水層上に設ける所要経路の給水管配設用空間を形成する場合を示す。図20の如く、給水管配設用空間部22に曲がり部22aを有する場合、所定の大きさである1種類の植裁マット1により敷設していくと、曲がり部22aにおいて、給水管配設用空間22幅分の空隙23が形成される。この空隙23には、図21に示す細長のセル7をリブ5により連設した細長のマットフレーム2aを敷設し、又は後述の図22(b)のカバー部材25を配設する。尚、図20の施工概念図の別の例として、1種類の植栽マット1を相互間に空隙23を設けることなく並設しても差し支えない。
図22(a)は給水管の部分拡大図である。給水管24は円筒形であるが、かかる形状に限定されるものではない。給水管24の周囲には、潅水時に水を流出させるための小孔26が適宜箇所に多数設けられている。
図22(b)はカバー部材の部分拡大図である。カバー部材25の形状は、逆U字型の溝(チャンネル状)であるが、かかる形状に限定されるものではなく、後述する係合平板上のカバー部材25aでもよい(図38(a)参照)。カバー部材25の側面下部には、給水管24から保水層21へ通水するための略逆U字形の通水孔27が適宜箇所に設けられている。
本実施形態では給水管24による潅水装置により、上述の水分補給、敷設面への荷重負担軽減、防根に加えて、給水を均一に、さらには自動化して行うとともに、外部への水の飛散がなく有効な水資源の利用に資することが可能になる。
また、植裁マット1の上端部と略同一平面を形成するカバー部材25により、植栽マット1による設備が全体として平面的に形成され、見栄えが非常に良くなる。
上記実施形態ではカバー部材25により給水管24を配設しているが、幅広リブ24により、給水管24を配設する実施形態について説明する。図23(a)は保水層上に幅広リブを有する植栽マットを敷設して給水管を配設した場合の平面図、同図(b)は上記実施形態のF−F線断面図、図24は保水層上に幅広リブを有する植栽マットを敷設して給水管を配設する場合の施工概念図である。
本敷設方法は、敷設面20に平面状の保水層21を形成した後、植栽マット1を敷き詰める際に、幅広のリブ5を有する植栽マット1を用い、幅広リブ5とセル7側面と保水層21に囲まれた空間で所要経路の給水管配設用空間部22を形成するように、植栽マット1を連続して敷設するとともに、該空間部22に沿うように給水管24を配設する。
図23では、マットフレーム2の連結リブ5bが幅広になっているが、これに限定されるものではなく、周縁リブ5aでもよく、又その両方でもよい。
本敷設方法により、1種類のマットフレーム2で給水管を用いた潅水装置を配設でき、さらに、潅水装置配設用空間部22に曲がり部22aを有する場合でも、給水管24は植裁マット1の幅広リブ5内に位置しているので、1種類のマットフレームで足りる作用がある。
次に、貯水槽トレー28を用いて、植栽マット1を敷設する方法(植栽設備)について説明する。
図25は貯水槽トレー、マットフレーム、フィルター層及び植物育成材の構成図である。本実施形態による植栽マット1の敷設方法は、植栽マット1の敷設面上20に、植栽マット1が収納可能な凹型の貯水槽トレー28を所要数敷き詰め、その貯水槽トレー28内に植栽マット1を敷設するものである。
図26(a)は貯水槽トレーを使用する実施形態のマットフレームの部分平面図、同図(b)はその断面図、同図(c)は上記実施形態の貯水槽トレーの断面図である。図26(c)の貯水槽トレー28は、1つの凹型の貯水槽29からなるが、複数の貯水槽29に区画されたものであってもよい。そして、マットフレーム2を1個又は複数を収納する、或いは1つのマットフレーム2を複数の貯水槽トレー28で受ける大きさの方形の形状である。
貯水槽トレー28の材質、成型方法は特に限定するものではなく、合成樹脂製成型品やマットフレーム2と同一の材質のものを使用できる。厚さは、貯水槽トレー28が敷設面20の不陸に適応する程度のものとすると良好である。貯水槽トレー28の大きさは適宜であるが、マットフレーム2の高さの1/2〜1/10の高さ程度のものがよく、実験例として1000×1000×10〜50mmの大きさの貯水槽トレー28を使用した。
貯水槽トレー28を用いた実施形態では、潅水による余剰水は貯水槽トレー28に貯水されて底面から潅水される、即ち、植物育成材4に毛細管現象によって水分を供給することが可能であり、水枯れの心配がなく、管理が容易になる。
以下、貯水槽トレー28の例を示す。
図27はマットフレーム及び貯水槽トレーの斜視図、図28はマットフレームを貯水槽トレーに敷設した状態の斜視図である。マットフレーム2と貯水槽トレー28の組み合わせの一例であり、16個のセルを有するマットフレーム2を4個収納できる貯水槽トレー28に敷設したものである。尚、マットフレーム2の敷き詰めた時の、隣接する周縁リブ5aの連接手段は、図9(a)〜(d)に示したものと同様である。
図29は、16個のセル7を有するマットフレーム2と、それを4枚収容できる貯水槽トレー28の斜視図であり、説明の便宜上、貯水槽トレー28は4つのブロック30に分けて、各々異なる大きさの貯水槽29を画成してある。
ブロック30aは、16個のセル7を有するマットフレーム2の1つに対し、1つの貯水槽29で収容する。ブロック30bは、8個のセル7を1つの貯水槽29に収容するもので、16個のセルを有するマットフレーム2の1つを、2つの貯水槽29で収容する。ブロック30cは、4個のセル7を1つの貯水槽29で収容するもので、16個のセル7を有するマットフレーム2の1つに対し、4つの貯水槽29で収容する。ブロック30dは、1個のセル7を1つの貯水槽29で収容するもので、16個のセル7を有するマットフレーム2の1つに対し、16個の貯水槽29で収容する。
ブロック30aとブロック30c間の貯水槽画成部29aの上部には、各貯水槽29ごとに連通するように、1部を切り欠いた通水凹部27aを形成してある。他の部分においても、鎖線のごとく通水凹部27aを形成することにより、各貯水槽29への通水を容易にすることができる。
図30は複数の貯水槽が設けられた貯水槽トレーの斜視図である。この貯水槽トレー28は複数の貯水槽29に区画され、1つの貯水槽29に1つのセル7を対応させることが可能である。
貯水槽291つに対し割り当てられるセル7の数を少なくすれば、各セル7内の植物育成材4に対する水分補給が確実になり、本実施形態で、貯水槽29とセル7を1対1で対応させるとより良好になる。この場合に、上述の貯水槽29の画成部29a上端部に通水凹部27aを形成して、各貯水槽29への通水を容易にすれば、一層水分補給が確実になる。さらに、植栽マット1の敷設面20の排水用傾斜勾配を利用すれば、より有効で効率的な水分補給が実現できる。
次に、隣接する貯水槽トレー28同士を連結する例を示す。
図31は貯水槽トレー相互の連結状態を示す斜視図である。本実施形態による植栽マット1の敷設方法は、植栽マット1の敷設面上20に、植栽マット1が収納可能な凹型の貯水槽トレー28を所要数敷き詰め、その貯水槽トレー28内に植栽マット1を敷設し、貯水槽トレー28相互の側面上端部28aを連結部材31で連結する。
各貯水槽トレー28は、隣接する側面上端部28aの全長に亘り、合成樹脂製等の連結部材31、具体的には略逆U字状の直線連結部材31a、略十字型の連結部材31b、略T字型の連結部材31cを嵌合され、相互を嵌着される。
貯水槽トレー28同士を連結する場合は、隣接する貯水槽トレー28相互で、貯水された余剰水の交換が可能であり、この点から、貯水槽トレー28の側面上端部28aに通水凹部27aを設けると、より有利になる。
ここで、貯水槽トレー28に切り欠け凹部34を形成した例について示す。図32は貯水槽トレー相互の連結状態の変更例を示す斜視図である。
本実施形態による植栽マット1の敷設方法は、側面上端部28aに切り欠き凹部32を形成した貯水槽トレー28を用い、敷設面上20に貯水槽トレー28相互の切り欠き凹部32が隣接するように貯水槽トレー28を敷き詰めるとともに、切り欠き凹部32同士に連結部材31dを嵌合し、貯水槽トレー28を嵌着する。そして、貯水槽トレー28内に植栽マット1を敷設する。
切り欠き凹部32の大きさ、形状は、適宜である。そして、隣接する切り欠き凹部32に嵌合する連結部材31dは、該凹部32の形状に合致する形状であり、該凹部32に凹凸係合等して部分連結する。また、連結部材31dは切り欠き凹部32以外の部分で、隣接する貯水槽トレー28を連結するものであってもよい。
切り欠き凹部32を有する貯水槽トレー28を用いた場合は、切り欠き凹部32の高さが貯水槽トレー28の側面より低いことから、貯水槽トレー28同士の水分交換がより有効に行われる。
これら貯水槽トレー28を用いた植栽マット1の敷設では、ジョウロ等による上部からの潅水、降雨などの余剰水は、マットフレーム2の各セル7の開口6から流出して、貯水槽トレー28に貯水される。その貯水高さは、貯水槽トレー28の側面上端部28a、通水凹部27a或いは連結部材31dを嵌合された切り欠き凹部32の位置までである。これ以上の余剰水は、隣接貯水槽トレー28に流入し、最終的には貯水槽トレー28からあふれ、敷設面20上を流れて排水ドレインより排出される。
次に、貯水槽トレー28を用い、給水管24による潅水装置を設ける植栽マット1の敷設方法(植栽設備)について説明する。
図33は3種類のマットフレームを敷設して給水管配設空間を形成した概念図の一例、図34(a)は3種類のマットフレームを敷設して給水管配設空間を形成した実施形態の平面図、同図(b)はその断面図である。
本敷設方法は、敷設面20に貯水槽トレー28を敷設した後、植栽マット1を貯水槽トレー28内に敷き詰める際に、植栽マット1の隣接相互間に所用経路の給水管配設用空間部22を形成するように敷き詰め、該空間部22に貯水槽トレー28の側面上端部28a又は切り欠き凹部32(図示せず)で保持して給水管24を配設し、該空間部22の給水管24の上方から、マットフレーム2のリブ5と略同一平面を形成するカバー部材25を設けるものである。給水管24による潅水装置は、上述のものと同様であり、給水方式は問わない。
カバー部材25は、上述したチャンネル状のカバー部材25であり、該カバー部材25の下側には、略U字状の通水孔27が設けられ、通水孔27を通して給水管24から貯水槽トレー28へ通水が行われる(図22参照)。かかるカバー部材25は、後述する係合部を有する平板状カバー部材25aでもよい。
図33の如く、給水管配設用空間部22を形成したときに曲がり部22aを有する場合、所定の大きさである1種類の貯水槽トレー28を敷き詰めた後、その貯水槽トレー28内に給水管配設用空間部22を形成し得る3種類の大きさのA、B、Cのマットフレーム2を組み合わせて敷設することにより、潅水装置配設用空間22以外の空隙を生ずることなく、マットを敷き詰めることができる。
また、図19の如く基本的に1種類のマットフレーム2を敷設する場合は、所定の大きさの貯水槽トレー28を敷設し(図示せず)、貯水槽トレー28内に所定大きさであるマットフレーム2を図示の如く敷設すると、空隙23が形成される。この空隙23には、上記と同様に図21の細長のマットフレーム2aを用いた植裁マット1や図22(b)のチャンネル状のカバー部材25を配設する。
尚、上記の敷設方法の別の例として、空隙23を設けることなく、1種類の貯水槽トレー28内に1種類のマットフレーム2を並設しても差し支えない。
本実施形態では、給水管による潅水装置を用いて、有効な水資源の利用が図られる。即ち、給水すると通水孔27から水が流出し、貯水槽トレー28の側面上端部28aまで貯水され、その貯水レベルを超えると上端連結部28aを乗り越えて隣接する貯水槽トレー28に流入し、順次各貯水槽トレー28の貯水レベルまで貯水される。
図35は幅広リブを有する1種類のマットフレームを敷設して給水管配設空間を形成した概念図、図36(a)は幅広リブを有する1種類のマットフレームを敷設して給水管配設空間を形成した実施形態の平面図、同図(b)はその断面図である。
本敷設方法は、敷設面20に貯水槽トレー28を敷設した後、植栽マット1を貯水槽トレー28内に敷き詰める際に、幅広リブ5を有する植栽マット1を用い、幅広リブ5とセル7側面と貯水槽トレー28の底面に囲まれた空間で所要経路の給水管配設用空間部22を形成するように、植栽マット1を連続して敷設するとともに、該空間部22に貯水槽トレー28の側面上端部28a又は切り欠き凹部32(図示せず)で保持して給水管24を所要経路に配設するものである。給水管24による潅水装置は、上述のものと同様であり、給水方式は問わない。
この場合は、、潅水装置に曲がり部22aを有する場合でも、給水管24は植裁マット1の幅広リブ5内に位置しているので、マットフレーム2は1種類の大きさで足りる。
次に、貯水槽トレー28と貯水樋33を用いて、本発明による植栽マット1を敷設する方法(植栽設備)について説明する。
図37は2種類の貯水槽トレーを敷設して給水管配設空間を形成した概念図の一例、図38(a)は2種類の貯水槽トレーを敷設して給水管配設空間を形成した実施形態の斜視図、同図(b)は上記実施形態の貯水樋の斜視図、図39は2種類の貯水槽トレーを敷設して潅水装置配設空間を形成した実施形態の部分断面図である。
本敷設方法は、貯水槽トレー28の間に所要経路の給水管配設用空間部22を形成するように貯水槽トレー28を敷設面20に敷き詰め、該空間部22に貯水槽トレー28と同一高さの貯水樋33を配設し、貯水槽トレー28の側面上端部28aと貯水樋33の側面上端部33cを連結部材31で連結し、該空間部22に貯水樋33の側面上端部33cの給水管位置決め凹部34で保持して給水管24を配設し、その上方にマットフレーム2のリブ5と略同一平面を形成するカバー部材25をリブ5に嵌合する。そして、貯水槽トレー28内に植栽マット1を載置するものである。尚、給水管24を貯水槽トレー28内に設ける上記に実施形態との併用も可能であり、また、潅水方式は問わない。
形成した給水管配設用空間22に曲がり部22aを有する場合、所定の大きさ2種類のD、Eの貯水槽トレー28を敷き詰めて給水管配設用空間22を形成した後、そのD、E内に、所定大きさの2種類の植裁マット1を敷設する。そして、該空間部22には、直線33aと曲がり部33bの貯水樋33を配設する。
また、1種類の貯水槽トレー28を用いて、給水管配設用空間22を形成した結果できた空隙には、図20の細長のマットフレーム2a又は図22(b)のチャンネル状カバー部材25と、これを受ける貯水槽トレー28を準備して対処してもよい。また、空隙を設けることなく、1種類の貯水槽トレー28を並設しても差し支えない。
貯水樋33は、貯水槽トレー28相互間に形成される給水管配設用空間22に適合する大きさ、形状のものであり、また、該空間部22に適応して、直線33aや曲がり部33bの貯水樋33を用いる。貯水樋33の側面上端部33cのうち、給水管24を配設する部分には、給水管の位置決め凹部34が形成してあり、その内部は貯水用に凹型の空間になっている。
貯水樋33の両側に位置する貯水槽トレー28の側面上端部28aと、貯水樋33の側面上端部33cは、図31又は図32の連結部材31で連結される。
カバー部材25には、両側の植裁マット1の上端部への係合する平板状のカバー部材25aを用いるが(図38(a)参照)、図22のチャンネル状のカバー部材25を用いて、カバー部材25の下端部を貯水樋33の上端部33cに載置してもよい。
本敷設方法により、貯水樋を介して隣接する貯水槽トレー28に順次通水され、各貯水槽トレー28の貯水レベルまで貯水される。
上記の各施工方法(植栽設備)は具体例にして、図面及び説明文に限定されるものではなく、その他、請求の範囲内における種々の施工方法(植栽設備)を含むものである。
次に、マットフレーム2に給水口(K)と点検口(T)を設けて、植栽マット1を敷設する方法(植栽設備)について説明する。
図40は傾斜勾配を有するスラブ面上に植栽マットを敷設して給水口(K)及び点検口(T)を設けた場合の概念図である。同図の植栽マット1は、中心付近の高さが最も高く、周辺に行くに従って低くなる傾斜勾配を有する。
本敷設方法(植栽設備)は、植栽マット1を敷設する際に、植物育成材4を形設しないマットフレーム2の所要箇所のセル7を切除し、その部分に開閉又は着脱可能な蓋(図示せず)を設け、水量の点検口T又は給水口Kとするものである。
ホース、自動潅水装置等による潅水を、合成樹脂製等のマットフレーム2の下に敷設されている保水層21又は貯水槽トレー28から行う場合に、排水のための傾斜勾配を有する敷設面20の高所・低所等、所要箇所でマットフレーム2のセル7を切除し給水口Kや貯水量の点検口Tとする。セル7の切除は、植栽マット1の敷設時、敷設後はもとより、製造工場で事前に処理をしてもよい。そして、該セル7の切除部分35の上面には、開閉又は着脱可能な蓋を設けて、異物の侵入を防止する。
さらに、点検口T内の適宜箇所に、水又は湿気を感知するセンサを設置し、これを自動潅水装置に連動させ、感知センサの作動により、給水口からの潅水作業を自動的に始動させる装置とすることもできる。
本敷設方法により、点検口Tを目視確認し又はセンサが自動的に水又は湿気の不足を感知することにより、貯水量が不足の場合は、給水口Kによりホース又は自動潅水装置等で、望ましい水位レベル等まで給水する。従って、水位レベル等の管理が容易になる。
また、植栽マット1の一部に植桝36を配置して、植栽マット1を敷設する方法(植栽設備)について説明する。
図41はマットフレームのセルの適宜箇所を切除した実施形態の概念図、図42は植桝に低木を植栽した場合の斜視図である。
本敷設方法は、植栽マット1を敷設面20に敷設するに際し、少なくともマットフレーム2の一部を除去し、その箇所に植桝36を配置するものである。即ち、マットフレーム2の適宜箇所を除去してセル切除空間35を形成し、その空間35に、低木37などを植えた植桝36を配設する。
この植桝36の下部には開口6が設けられ、その上部には土壌流出防止用フィルター3を介して植物育成材4が配設され、植栽が行われる。
マットフレーム2のみを切除する場合は、セル切除空間35の下部は実施形態に応じて、敷設面20、保水層21又は貯水槽トレー28となる。また、マットフレーム2の下に保水層21又は貯水槽トレー28を敷設して、両者を除去してセル切除空間35を形成してもよい。この場合、該空間35に設置された植桝36の下部は敷設面20となる。
尚、貯水槽トレー28の中に植桝36を配置する場合に、植桝36の高さに対して貯水槽トレー28の貯水レベルが低くなるときには、その分、毛細管現象による吸水の良好な植物育成材4を選定使用するとよい。
本敷設方法を採用することにより、低木用の植桝等を配置することが可能になるので、景観をより自然な状態とすることができる。
また、位置ずれ防止部材40を用いて、植栽マット1を敷設する方法(植栽設備)について説明する。
図43は敷設した植栽マットと建築物の側壁、ボーダー、スロープ(又は框)との位置関係を示す概念図である。
本敷設方法(植栽設備)は、植栽マット1を敷設面20に敷設する際に、敷き詰めた植栽マット1の全周の内、植栽マット1と建物の側壁38の間の空間部39にマットフレーム2のリブ5と略同一高さの位置ずれ防止部材40を配設し、該空間部39以外の植栽マット1の側端部には、マットフレーム2の上部から敷設面20に亘って一端を敷設面20に固定するスロープ41または框42を配設するものである。
側壁38と植栽マット1、保水層21若しくは貯水槽トレー28との間の空間部39には、植栽マットの位置ずれ防止部材40が配置される。この位置ずれ防止部材40の高さは、植栽マット1の上端部にあるリブ5等と略同一平面を形成する。図44(a)は空間部39に位置ずれ防止部材40としてボーダー40aを配置した例を示す。
また、図44(b)の如く、該空間部39に位置決め用のコンクリートブロック40bを配設し、このコンクリートブロック40bと植栽マット1、保水層21若しくは貯水槽トレー28との間に、所要幅、所要長さのフレキシブルコンクリートマット40cを配置し、寸法調整を行ってもよい。
ここで、位置決め部材40の材質は、木材、プラスチック製・コンクリート製等のブロック、フレキシブルコンクリートマット、発泡スチロール、コンクリート、又はそれらの組み合わせなど適宜である。
上記の空間部39は、屋上の側壁38付近にある排水用の凹溝を考慮して、あえて設けてもよい。即ち、該排水溝の部分には、植栽マット1による人工地盤の形成が困難であり、側壁38からある程度離れた位置から人工地盤を形成するのが安全かつ有効である。一例として、側壁38から20cm〜60cm離れた位置に植栽マット1を敷設したものが良好であった。
植栽マット1の全周の内、側壁39と植栽マット1の間以外の場所においては、マットフレーム2の上端部付近から敷設面20に亘るスロープ41又は框42を配設して、スロープ41や框42の少なくとも一端を止め具18で敷設面20に固定する(図44(c)、同図(d))。
ここで、スロープ41、框42の材質は適宜であるが、スロープ41の材質の例として、アルミニウム、木材などが、框42の材質の例としてアルミニウム、ステンレスなどがある。
植栽マット1を本実施形態で敷設することにより、植栽マット1の全周のうち、建物の側壁38付近やそれ以外の場所での位置ずれを防止でき、かつ、植栽マット1による人工地盤の見栄えを向上させることができる。