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JP4008254B2 - ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物 - Google Patents

ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物 Download PDF

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JP4008254B2
JP4008254B2 JP2002034974A JP2002034974A JP4008254B2 JP 4008254 B2 JP4008254 B2 JP 4008254B2 JP 2002034974 A JP2002034974 A JP 2002034974A JP 2002034974 A JP2002034974 A JP 2002034974A JP 4008254 B2 JP4008254 B2 JP 4008254B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境面で好ましく、流動性と耐衝撃性と難燃性と電気特性と耐熱性と機械特性のバランスに優れたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
易燃性合成樹脂の難燃化法としては、一般には従来よりハロゲン系化合物、リン系化合物、およびこれらの併用やさらには三酸化アンチモンとを添加する等の難燃化手法が用いられてきた。
【0003】
しかしながら、これら従来よりの難燃剤は有害であると言われており、最近では特に環境面からハロゲン、アンチモン、リンなどを含有しない難燃性樹脂組成物が求められている。
【0004】
環境に好ましい難燃性樹脂組成物としては、従来より金属水酸化物を多量に配合した材料が開発されているが材料の比重が大幅にアップするだけでなく、耐衝撃性や成形流動性の低下が大きく実用性に乏しいのが現状である。
【0005】
一方、特公昭62−60421号公報、登録特許第1684119号、登録特許第1935582号、特開平10−139964号公報、特開平11−140294号公報、特開平11−222559号公報等には特定のシリコーン化合物を配合することにより難燃化された樹脂組成物が開示されている。さらに、シリコーン化合物を添加しても難燃性が得られ難いために、登録特許第2719486号、登録特許第2746519号、特開平11−217494号公報等には、シリコーン化合物とパーフルオロアルカンスルホン酸金属塩とを併用したポリカーボネート樹脂系の難燃性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩はフッ素を含んでおり、ハロゲンを用いない難燃樹脂組成物とは言えないだけでなく、ポリカーボネート樹脂以外では難燃効果がほとんど見られない。
【0006】
ポリカーボネート樹脂以外のハロゲン系難燃剤を含まない代表的難燃樹脂として、リン系難燃剤を添加したポリフェニレンエーテルおよびそれとポリスチレンとのポリマーブレンド物が知られている。また、シリコーン化合物を配合したポリフェニレンエーテル系樹脂の難燃樹脂組成物が登録特許第1935582号や特公平8−32825号公報に開示されているが、難燃性、流動性、耐衝撃性、耐熱性などのバランスにおいて、満足できるものではなかった。
【0007】
一方、例えば特開昭56−115357号公報に、ポリフェニレンエーテルなどの重合体に液晶ポリエステルを配合し、ポリフェニレンエーテルの溶融加工性を改良することが提案されているが、難燃性、その他の性能バランスについては、十分とはいえない。また特開平2−97555号公報には、はんだ耐熱性を向上させる目的で液晶ポリエステルに各種のポリアリレンオキサイドを配合することこが提案され、さらには特開平6−122762号公報には、アミン類で変性したポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルを配合することが提案されているが、いずれも難燃性、その他の性能においては十分とはいえない。
【0008】
また、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルをアロイ化する際に、有機シランカップリング剤を添加することが、特開平5−117505号公報、特開平9−111103号公報に提案されているが、流動性、難燃性において十分とはいえない。また、特開平5−86288号公報に強度、剛性のリサイクル保持性を高める方法が提案されているが、流動性、難燃性、耐熱性のバランスにおいて十分とはいえない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ハロゲン化合物やリン化合物を含まず、環境上好ましく、流動性と耐衝撃性と難燃性と電気特性と耐熱性と機械特性が同時に高いレベルで達成され、特に流動性と耐衝撃性と難燃性が大きく改良されたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を達成する技術を鋭意検討した結果、ポリフェニレンエーテル系樹脂と液晶ポリエステルに、特定構造の籠状シルセスキオキサンまたはその部分開裂構造体を添加することによって、流動性と耐衝撃性と難燃性と電気特性と耐熱性と機械特性が同時に高いレベルで達成され、特に流動性と耐衝撃性と難燃性が大きく改良されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、
1.(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂30〜99重量部と、(b)液晶ポリエステル70〜1重量部とからなる樹脂成分100重量部に対して、(c)籠状シルセスキオキサンまたはその部分開裂構造体0.1〜30重量部を配合することにより得られるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物、
【0012】
2.籠状シルセスキオキサンまたはその部分開裂構造体が、下記一般式(A)又は一般式(B)で示されるケイ素化合物であることを特徴とする上記1に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
(RSiO1.5n (A)
(RSiO1.5l(RXSiO)k (B)
[一般式(A)、(B)において、Rは水素原子、炭素原子数1から20の置換又は非置換の炭化水素基又はケイ素原子数1から10のケイ素原子含有基から選ばれ、Rは全て同一でも複数の基で構成されていても良い。一般式(B)においてXはOR1(R1は水素原子、アルキル基、アリール基、第4級アンモニウムラジカル)、ハロゲン原子及び上記Rの中から選ばれる少なくとも一つの官能基であり、(RXSiO)k中のXは全て同じでも異なっていても良い。又(RXSiO)k中の2個のXが互いに連結して下記一般式(C)で表される連結構造を形成しても良い。
【0013】
【化2】
Figure 0004008254
Y及びZは、Xと同じ基の群の中から選ばれ、YとZは同じでも異なっていても良い。nは6から14の整数、lは2から12の整数、kは2又は3である。]
【0014】
3.(d)環状窒素化合物を含有し、(c)成分と(d)成分との重量比(c/d)が0.1〜10であることを特徴とする上記1または2に記載の樹脂組成物、
【0015】
4.(d)環状窒素化合物が、メラミンおよび/またはメレムおよび/またはメロンであることを特徴とする上記3に記載の樹脂組成物。
【0016】
5.(a)成分と(b)成分の合計100重量部に対して、(e)無機充填剤が0.1〜50重量部添加されることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物、
を提供するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明について具体的に説明する。
本発明の(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂とは、下記式(1)の繰り返し単位構造からなり、還元粘度(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)が、0.15〜1.0dl/gの範囲にあるホモ重合体及び/または共重合体である。さらに好ましい還元粘度は、0.20〜0.70dl/gの範囲、最も好ましくは0.40〜0.60の範囲である。
【0018】
【化3】
Figure 0004008254
【0019】
(R1、R4は、それぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニル、アミノアルキル、炭化水素オキシを表わす。R2、R3は、それぞれ独立して、水素、第一級もしくは第二級の低級アルキル、フェニルを表わす。)
【0020】
このポリフェニレンエーテル系樹脂の具体的な例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体のようなポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、さらにポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。
【0021】
本発明で使用する(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の製造方法の例として、米国特許第3306874号明細書記載の第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、2,6−キシレノールを酸化重合する方法がある。
【0022】
米国特許第3306875号、同第3257357号および同第3257358号の明細書、特公昭52−17880号および特開昭50−51197号および同63−152628号の各公報等に記載された方法も(a)ポリフェニレンエーテルの製造方法として好ましい。
【0023】
本発明の(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、重合工程後のパウダーのまま用いてもよいし、押出機などを用いて、窒素ガス雰囲気下あるいは非窒素ガス雰囲気下、脱揮下あるいは非脱揮下にて溶融混練することでペレット化して用いてもよい。
【0024】
本発明の(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、種々のジエノフィル化合物により官能化されたポリフェニレンエーテルも含まれる。種々のジエノフィル化合物には、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、フェニルマレイミド、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアリレート、メチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンなどの化合物が挙げられる。さらにこれらジエノフィル化合物により官能化する方法としては、ラジカル発生剤存在下あるいは非存在下で押出機などを用い、脱揮下あるいは非脱揮下にて溶融状態で官能化してもよい。あるいはラジカル発生剤存在下あるいは非存在下で、非溶融状態、すなわち室温以上、かつ融点以下の温度範囲にて官能化してもよい。この際、ポリフェニレンエーテルの融点は、示差熱走査型熱量計(DSC)の測定において、20℃/分で昇温するときに得られる温度−熱流量グラフで観測されるピークのピークトップ温度で定義され、ピークトップ温度が複数ある場合にはその内の最高の温度で定義される。
【0025】
本発明の(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリフェニレンエーテル樹脂単独又はポリフェニレンエーテル樹脂と芳香族ビニル系重合体との混合物であり、さらに他の樹脂が混合されたものも含まれる。芳香族ビニル系重合体とは、例えば、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体などが挙げられる。ポリフェニレンエーテル樹脂と芳香族ビニル系重合体との混合物を用いる場合は、ポリフェニレンエーテル樹脂と芳香族ビニル系重合体との合計量に対して、ポリフェニレンエーテル樹脂が70wt%以上、好ましくは80wt%以上、さらに好ましくは90wt%以上である。
【0026】
本発明の(b)液晶ポリエステルはサーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルで、公知のものを使用できる。例えば、p−ヒドロキシ安息香酸およびポリエチレンテレフタレートを主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸および2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸を主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニルならびにテレフタル酸を主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステルなどが挙げられ、特に制限はない。本発明で使用される(b)液晶ポリエステルとしては、下記構造単位(イ)、(ロ)、および必要に応じて(ハ)および/または(ニ)からなるものが好ましく用いられる。
【0027】
【化4】
Figure 0004008254
【0028】
【化5】
Figure 0004008254
【0029】
【化6】
Figure 0004008254
【0030】
【化7】
Figure 0004008254
【0031】
ここで、構造単位(イ)、(ロ)はそれぞれ、p−ヒドロキシ安息香酸から生成したポリエステルの構造単位と、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸から生成した構造単位である。構造単位(イ)、(ロ)を使用することで、優れた耐熱性、流動性や剛性などの機械的特性のバランスに優れた本発明の熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。上記構造単位(ハ)、(ニ)中のXは、下記式(2)よりそれぞれ任意に1種あるいは2種以上選択することができる。
【0032】
【化8】
Figure 0004008254
【0033】
構造式(ハ)において好ましいのは、エチレングリコール、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールAそれぞれから生成した構造単位であり、さらに好ましいのは、エチレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンであり、特に好ましいのは、エチレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニルである。構造式(ニ)において好ましいのは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ジカルボキシナフタレンそれぞれから生成した構造単位であり、さらに好ましいのは、テレフタル酸、イソフタル酸である。
【0034】
構造式(ハ)および構造式(ニ)は、上記に挙げた構造単位を少なくとも1種あるいは2種以上を併用することができる。具体的には、2種以上併用する場合、構造式(ハ)においては、1)エチレングリコールから生成した構造単位/ハイドロキノンから生成した構造単位、2)エチレングリコールから生成した構造単位/4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、3)ハイドロキノンから生成した構造単位/4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、などを挙げることができる。
【0035】
また、構造式(ニ)においては、1)テレフタル酸から生成した構造単位/イソフタル酸から生成した構造単位、2)テレフタル酸から生成した構造単位/2,6−ジカルボキシナフタレンから生成した構造単位、などを挙げることができる。ここでテレフタル酸量は2成分中、好ましくは40wt%以上、さらに好ましくは60wt%以上、特に好ましくは80wt%以上である。テレフタル酸量を2成分中40wt%以上とすることで、流動性、耐熱性が比較的良好な樹脂組成物となる。液晶ポリエステル(b)成分中の構造単位(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の使用割合は特に限定されない。ただし、構造単位(ハ)と(ニ)は基本的にほぼ等モル量となる。
【0036】
また、構造単位(ハ)、(ニ)からなる下記構造単位(ホ)を、(b)成分中の構造単位として使用することもできる。具体的には、1)エチレングリコールとテレフタル酸から生成した構造単位、2)ハイドロキノンとテレフタル酸から生成した構造単位、3)4,4’−ジヒドロキシビフェニルとテレフタル酸から生成した構造単位、4)4,4’−ジヒドロキシビフェニルとイソフタル酸から生成した構造単位、5)ビスフェノールAとテレフタル酸から生成した構造単位、などを挙げることができる。
【0037】
【化9】
Figure 0004008254
【0038】
本発明の(b)液晶ポリエステル成分には、必要に応じて本発明の特徴と効果を損なわない程度の少量の範囲で、他の芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸から生成する構造単位を導入することができる。本発明の(b)成分の溶融時での液晶状態を示し始める温度(以下、液晶開始温度という)は、好ましくは150〜350℃、さらに好ましくは180〜320℃である。液晶開始温度をこの範囲にすることは、得られる樹脂組成物を好ましい色調と耐熱性と成形加工性バランスの良いものとする。
【0039】
本発明の(b)液晶ポリエステル成分の25℃、1MHzにおける誘電正接(tanδ)は、好ましくは0.03以下であり、さらに好ましくは0.025以下である。この誘電正接の値が小さければ小さいほど、誘電損失は小さくなり、この樹脂組成物を電気・電子部品の原料として用いる時、発生する電気的ノイズが抑制され好ましい。特に25℃、高周波数領域下、すなわち1〜10GHz領域において、誘電正接(tanδ)は、好ましくは0.03以下であり、さらに好ましくは0.025以下である。
【0040】
本発明の(b)液晶ポリエステル成分の見かけの溶融粘度(液晶開始温度+30℃でずり速度100/秒)は、好ましくは10〜3,000Pa・s、さらに好ましくは10〜2,000Pa・s、特に好ましくは10〜1,000Pa・sである。見かけの溶融粘度をこの範囲にすることは、得られる組成物の流動性を好ましいものとする。本発明の(b)成分の溶融状態(液晶状態)における熱伝導率は、好ましくは0.1〜2.0W/mK、さらに好ましくは0.2〜1.5W/mK、特に好ましくは0.3〜1.0W/mKである。溶融状態(液晶状態)での熱伝導率をこの範囲にすることで、得られる組成物の射出成形サイクルを比較的短縮化することができる。
【0041】
次に、本発明における(c)籠状シルセスキオキサンまたはその部分開裂構造体について説明する。
シルセスキオキサンはTレジンとも呼ばれるもので、通常のシリカが(SiO2)の一般式で表されるのに対し、シルセスキオキサンは(RSiO1.5)で表される化合物であり、通常はテトラエトキシシランのようなテトラアルコキシシランの1つのアルコキシ基をアルキル基またはアリール基に置き換えた化合物の加水分解−重縮合で合成されるポリシロキサンであり、分子配列の形状として、代表的には無定形、ラダー状、籠状(完全縮合ケージ状)や完全縮合ケージ状からケイ素原子が一原子少ないタイプや一部ケイ素−酸素結合が切断されたタイプが知られているが、本発明に用いるのは前記分子配列形状のうち籠状のものまたはその部分開裂構造体である。
【0042】
本発明に使用される籠状シルセスキオキサンまたはその部分開裂構造体は、籠が閉じた構造のシルセスキオキサンでも籠の一部が開いた構造のシルセスキオキサンでもよい。したがって、本発明には多様な構造の籠状シルセスキオキサンまたはその部分開裂構造体が使用可能であり、その具体例としては、例えば以下の一般式(A)及び一般式(B)で示される化合物が挙げられる。
(RSiO1.5n (A)
(RSiO1.5l(RXSiO)k (B)
[一般式(A)、(B)において、Rは水素原子、炭素原子数1から20の置換又は非置換の炭化水素基又はケイ素原子数1から10のケイ素原子含有基から選ばれ、Rは全て同一でも複数の基で構成されていても良い。一般式(B)においてXはOR1(R1は水素原子、アルキル基、アリール基、第4級アンモニウムラジカル)、ハロゲン原子及び上記Rの中から選ばれる少なくとも一つの官能基であり、(RXSiO)k中のXは全て同じでも異なっていても良い。又(RXSiO)k中の2個のXが互いに連結して一般式(C)で表される連結構造を形成しても良い。
【0043】
【化10】
Figure 0004008254
Y及びZはXと同じ基の群の中から選ばれ、YとZは同じでも異なっていても良い。nは6から14の整数、lは2から12の整数、kは2又は3である。]
【0044】
なお、一般式(A)及び/又は一般式(B)において、R、X、Y、Zの少なくとも一つは、1)不飽和炭化水素結合含有基(たとえば、ビニル基やアリル基等)、2)窒素原子及び酸素原子の少なくとも1つを含有する極性基を有する基(たとえば、−CH2CH2CH2NH2等のアミノ基置換炭化水素基、−CH2CH2CH2−NH−CH2CH2NH2等のジアミノ基、あるいは、グリシジル基のようなエポキシ結合含有基等)、であることが好ましい。
【0045】
一般式(A)で表される籠状シルセスキオキサンの具体例としては、(RSiO1.56の化学式で表されるタイプ(下記式(3))、(RSiO1.58の化学式で表されるタイプ(下記式(4))、(RSiO1.510の化学式で表されるタイプ(下記式(5))、(RSiO1.512の化学式で表されるタイプ(下記式(6))がある。
【0046】
【化11】
Figure 0004008254
【0047】
【化12】
Figure 0004008254
【0048】
【化13】
Figure 0004008254
【0049】
【化14】
Figure 0004008254
【0050】
流動性、難燃性の観点から、Rはイソブチル基、イソオクチル基のようなアルキル基が好ましく、さらにはイソブチル基が好ましい。
また、これらの籠状シルセスキオキサンのうち、Rのうち少なくとも1〜3個が、窒素原子及び酸素原子の少なくとも1つを含有する極性基を有する基であるものが好ましく、特にアミノ基置換炭化水素基、中でも下記式(7)で表されるジアミノ構造を含有する基が、難燃性、流動性、耐熱性、昇華のしにくさの観点から好ましい。
−CH2CH2CH2−NH−CH2CH2NH2 …式(7)
【0051】
また、一般式(B)で表される籠状シルセスキオキサンの部分開裂構造体の具体例としては、以下の構造が例示される。例えば、一般式(4)の一部が脱離した構造であるトリシラノール体あるいはそれから誘導される(RSiO1.54(RXSiO)3の化学式で表されるタイプ(下記一般式(8):前記トリシラノール体はX=OHの場合)、一般式(8)で示される3個のXのうち2個のXが一般式(C)で示される構造で連結される部分開裂構造体(RSiO1.54(RXSiO)3の化学式で表されるタイプ(下記一般式(8−1))、一般式(4)の一部が開裂したジシラノール体あるいはそれから誘導される(RSiO1.56(RXSiO)2の化学式で表されるタイプ(下記一般式(9)及び(10):前記ジシラノール体は一般式(9)においてX=OHの場合)等が挙げられる。一般式(8)、(8−1)、(9)及び(10)中の同一ケイ素原子に結合しているRとXあるいはYとZはお互いの位置を交換したものでもよい。
【0052】
【化15】
Figure 0004008254
【0053】
【化16】
Figure 0004008254
【0054】
【化17】
Figure 0004008254
【0055】
【化18】
Figure 0004008254
【0056】
式(3)〜(6)、および式(8)〜(10)中のRとしては1種類で籠状シルセスキオキサンを構成しても良いし、2種類以上の置換基で構成しても良い。籠状シルセスキオキサンの合成法としては例えばBrownらのJ.Am.Chem.Soc.1965,87,4313や、FeherらのJ.Am.Chem.Soc.1989,111,1741あるいはOrganometallics 1991,10,2526などが報告されている。例えばシクロヘキシルトリエトキシシランを水/メチルイソブチルケトン中で触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドを加えて反応させることにより結晶として得られる。
【0057】
また一般式(8)から(10)で表されるトリシラノール体及びジシラノール体は完全縮合型の籠状シルセスキオキサンを製造する際に同時に生成するか、完全縮合型の籠状シルセスキオキサンからトリフルオロ酸やテトラエチルアンモニウムヒドロキサイドによって部分切断することにより合成できることがFeherらのChem.Commun.,1998,1279によって報告されている。
【0058】
籠状シルセスキオキサンの構造解析としては例えばLarssonらのAlkiv Kemi,16,209(1960)によってX線構造解析が行われ、構造の同定が行われている。またこれらの籠状シルセスキオキサンは簡易的に赤外吸収スペクトルやNMRを用いて同定を行うことができ、例えばVogtらのInnorag.Chem.2,189(1963)によって示されている。
【0059】
(d)環状窒素化合物は、窒素元素を含有する環状の有機化合物である。具体的にはメラミン誘導体である、メラミン、メレム、メロンなどが例示される。揮発性の観点から、メレム、メロンが好ましい。これらの化合物は本発明の組成物において(c)籠状シルセスキオキサンまたはその部分開裂構造体を用いる際、難燃助剤としての効果が非常に優れることがわかった。すなわち、燃焼試験における平均燃焼時間が大幅に小さくなる。
【0060】
本発明における(e)無機充填剤とは、強度付与剤として、ガラス繊維、金属繊維、チタン酸カリウム、炭素繊維、炭化ケイ素、セラミック、窒化ケイ素、マイカ、ネフェリンシナイト、タルク、ウオラストナイト、スラグ繊維、フェライト、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ガラスバルーン、石英、石英ガラスなどの無機化合物があげられる。中でも、流動性、耐熱性、機械特性、のバランスからガラス繊維、炭素繊維が好ましく用いられ、さらに好ましくはガラス繊維が用いられる。これら無機系の充填剤の形状は限定されるものではなく、繊維状、板状、球状などが任意に選択できる。
また、これらの無機系の充填剤は、2種類以上併用することも可能である。また、必要に応じて、シラン系、チタン系などのカップリング剤で予備処理して使用することができる。
【0061】
本発明における(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の配合量は、30〜99重量部で、好ましくは50〜98重量部で、さらに好ましくは70〜97重量部である。この配合量が99重量部より多いと、流動性と耐衝撃性が十分ではない。この配合量が30重量部より少ないと、十分な電気特性が得られない。
【0062】
本発明における(b)成分の液晶ポリエステルの配合量は、70〜1重量部で、好ましくは50〜2重量部で、さらに好ましくは3〜30重量部である。この配合量が70重量部より多いと、比重が大きくなってしまい、電気特性の低下を招く。この配合量が1重量部より少ないと、十分な耐衝撃性と流動性が得られない。
【0063】
本発明で用いられる(c)籠状シルセスキオキサンまたはその部分開裂構造体の添加量は、(a)成分と(b)成分の合計100重量部に対し、0.1〜30重量部であり、0.3〜10重量部が好ましく、さらに0.5〜5重量部がより好ましい。この添加量が、0.1重量部より少ないと、流動性と難燃性が十分向上されない。また30重量部より多いと、剛性の低下やコスト高を招くだけである。
【0064】
(d)環状窒素化合物の含有量は、(c)成分と(d)成分との重量比(c/d)0.1〜10の割合で含有されることが好ましく、0.5〜5の割合がより好ましく、1〜3の割合が特により好ましい。(d)が含有される割合、すなわち(c)成分と(d)成分との重量比(c/d)が0.1より小さいと表面外観を損なう傾向があり、10より大きいと、難燃性向上効果が小さい傾向がある。(d)成分を含む場合、難燃性向上効果に加え、耐熱性を低下させない、流動性を低下させないという効果がある。
【0065】
本発明の(e)無機充填剤の添加量は、(a)成分と(b)成分の合計100重量部に対して、0.1〜50重量部であり、好ましくは1〜20重量部であり、さらに好ましくは3〜10重量部である。その添加量が0.1重量部より少ないと強度付与効果と耐熱保持効果が十分発揮されず、50重量部より多いと、流動性の低下を招く。
【0066】
本発明では、上記の成分の他に、本発明の特徴および効果を損なわない範囲で必要に応じて他の附加的成分、例えば、酸化防止剤、エラストマー(エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ABSなどのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物)、可塑剤(オイル、低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、難燃助剤、耐候(光)性改良剤、ポリオレフィン用造核剤、スリップ剤、各種着色剤、離型剤等を添加してもかまわない。
【0067】
本発明の樹脂組成物は種々の方法で製造することができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練方法が挙げられるが、中でも二軸押出機を用いた溶融混練方法が最も好ましい。この際の溶融混練温度は特に限定されるものではないが、通常150〜350℃の中から任意に選ぶことができる。
【0068】
このようにして得られる本発明の樹脂組成物は、従来より公知の種々の方法、例えば、射出成形、押出成形、中空成形により各種部品の成形体として成形できる。これら成形体は、特に難燃性と耐熱性が要求される用途、例えば、自動車用耐熱部品あるいは事務機器用耐熱部品に好適である。自動車用耐熱部品は例えば、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウウォッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの部品、ホイールキャップ、ランプソケット、ランプハウジング、ランプエクステンション、ランプリフレクターなどが好適である。中でも軽量性、耐熱性、難燃性、機械特性のバランスからランプエクステンション、ランプリフレクターが好適である。また、事務機器用耐熱部品は、例えば、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品などに好適である。
【0069】
本発明を以下、実施例に基づいて説明する。但し本発明はその主旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
【製造例1】
〈ポリフェニレンエーテル(PPE-1)の製造例〉
2,6−ジメチルフェノールを酸化重合して還元粘度0.42のパウダー状のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を得た。
【0071】
【製造例2】
〈非溶融状態下で官能化されたポリフェニレンエーテル(PPE-2)の製造例〉 2,6−ジメチルフェノールを酸化重合して得た還元粘度0.44のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)(以下(a−1)と略す。)を原料として用いる。またこのパウダーは、走査型熱量計(DSC)の測定を行い、20℃/分で昇温するときに得られる温度−熱流量グラフのピークトップ温度を融点とした時に、単一のピークを示し、その融点は250℃であった。
【0072】
ポリフェニレンエーテル(a−1)10kgとジエノフィル化合物として無水マレイン酸(以下(b−1)と略す。)0.05kgとを内部の温度を測定する温度計、オイルジャケット、攪拌機付きのガス注入口がついたオートクレーブ中に入れた。室温にて、ガス注入口を通して、内部を10mmHgまで減圧にした後に、大気圧の窒素を導入し、内部を窒素置換した。
【0073】
この操作を三回繰り返し、オートクレーブを密封した。減圧・窒素置換時に、系外に出る(a−1)、(b−1)を捕集したところ、系外に出た(a−1)、(b−1)は、それぞれ、0.1kg、及び、0.008kgであった。
【0074】
オイルジャケットに200℃に設定したオイルを循環し、攪拌機を作動し、1時間攪拌を継続した。オイル循環を止め、内温が室温になるまで放置した後、オートクレーブを開放し、パウダー状の内容物(c−1)を採取した。内容物(c−1)は溶融物を混入しておらず、内容物(c−1)の質量は、10.0kgであった。
【0075】
内容物(c−1)を50リットルのアセトンで洗浄しフィルターを用いて濾別した。この操作を5回繰り返し、洗浄された洗浄物1(d−1)及び、濾液1(e−1)を得た。ガスクロマトグラム分析した結果、濾液1(e−1)中に含まれる無水マレイン酸(b−1)は、0.005kgであった。洗浄物1(d−1)を乾燥した乾燥物1(f−1)から20g分取したものを、ソックスレー抽出器を用いて40mlのアセトンで還流抽出した。熱アセトンで洗浄された洗浄物2(g−1)及び、抽出液(h−1)を得た。ガスクロマトグラム分析した結果、抽出液(h−1)中に無水マレイン酸(b−1)は含まれなかった。
【0076】
乾燥物1(f−1)1gを内側からポリテトラフロロエチレンシート、アルミシート、鉄板の順に重ねたものの間にはさみ、280℃に温度設定したプレス成形機を用い、10MPaで圧縮成形しフィルム(i−1)を得た。同様の操作で、ポリフェニレンエーテル(a−1)から、フィルム(a−1)を得た。得られたフィルム(i−1)について、日本分光社製FT/IR−420型フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、赤外分光測定を行ったところ、(i−1)に対する測定では、1790cm-1に、ポリフェニレンエーテルに付加したマレイン酸由来のピークが観測され、無水マレイン酸(b−1)の付加量は0.31重量部であることが確認された。
【0077】
この乾燥物1(f−1)を官能化されたポリフェニレンエーテル(PPE−2)として、実施例に供した。
【0078】
【製造例3】
〈液晶ポリエステル(LCP−1)の製造例〉
窒素雰囲気下において、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、無水酢酸を仕込み、加熱溶融し、重縮合することにより、以下の理論構造式を有する液晶ポリエステル(LCP−1)を得た。なお、組成の成分比はモル比を表す。
【0079】
【化19】
Figure 0004008254
【0080】
【製造例4】
〈液晶ポリエステル(LCP−2)の製造例〉
窒素雰囲気下において、p−ヒドロキシ安息香酸、ポリエチレンテレフタレート、無水酢酸を仕込み、加熱溶融し、重縮合することにより、以下の理論構造式を有する液晶ポリエステル(LCP−2)を得た。なお組成の成分比はモル比を表す。
【0081】
【化20】
Figure 0004008254
【0082】
各樹脂組成物の成形と物性評価を、以下の方法に従って実施した。
(1)成形
得られたペレットを、シリンダー温度330/330/320/310℃、射速85%、金型温度90℃に設定した射出成形機[IS−80EPN:東芝機械(株)社製]を用いて成形を行った。ただし、比較例3についての厚み1.6mmの難燃試験用のたんざく試験片に関しては、上記条件では最高射出ゲージ圧(13MPa)でもショートしたので、金型温度を140℃にて設定して、成形を行った。実施例8および比較例4については、シリンダー温度275/275/265/255℃、射速60%、金型温度70℃に設定して成形を行った。
【0083】
(2)流動性
得られたペレットを、上記(1)の成形条件にて、厚み1.6mm×長さ127mm×幅12.7mmのASTMタンザク試験片を成形するに際し、1mmショートするときのゲージ圧力を測定した。この圧力をSSP(MPa)(「Short Shot Pressure」を略した。)とし、この値が小さいほど流動性に優れる。
【0084】
(3)耐衝撃性
ASTM D256に準拠した厚み3.2mmの成形片に成形した。得られた成形片を用いて、ノッチ付きアイゾット衝撃強さを測定した。「Izod」と略すことがある。
【0085】
(4)難燃性
(4−1)平均燃焼時間
厚み1.6mm×長さ127mm×幅12.7mmのASTMタンザク試験片に成形し、Underwriters LaboratoriesのUL−94垂直燃焼試験に基づき、燃焼試験を実施した。すなわち、5本の試験片について燃焼試験を実施し、10秒間の接炎後、炎を離してから炎が消えるまでの燃焼時間をt1(秒)とし、再び10秒間の接炎後、炎を離してから炎が消えるまでの燃焼時間をt2(秒)とし、各5本について、t1とt2の平均燃焼時間を求めた。
【0086】
(4−2)最大燃焼時間
上記燃焼試験時、各5本のt1とt2、すなわちあわせて10点の中から最大の燃焼時間を選んだ。
【0087】
(5)電気特性
上記(1)の成形条件にて、50×90×2mmの平板を成形した。これを50×70×2のサイズに切り出し、JIS−K6911に準拠した試験方法により、誘電率(「ε」と略すことがある。)と誘電正接(「tanδ」と略すことがある。)を測定した。測定雰囲気の温度は22℃、測定周波数は1MHzであった。いずれもその値が小さいほど、誘電損失が少なく、優れた電気特性といえ
る。
【0088】
(6)耐熱性(HDT)
厚み3.2mm×長さ127mm×幅12.7mmのASTMタンザク試験片に成形した。得られた成形片を用いて、1.82MPa荷重下での加熱変形温度を測定した。
【0089】
(7)引張特性
オートグラフ(AG−5000、島津製作所(株)社製)、厚み3.2mmのASTMダンベル試験片を用い、チャック間距離115mm、試験速度20mm/minで引っ張り試験を実施し、引張弾性率(TM)及び引張強度(TS)を測定した。
【0090】
【実施例1】
ポリフェニレンエーテル(PPE−1)と液晶ポリエステル(LCP−1)と籠状シルセスキオキサンとして、オクタイソブチル−オクタシルセスキオキサン[Octaisobutyl-octasilsesquioxane(式(4)において、R=イソブチル、白色固体、以下「Si−1」と略すことがある。)]を、表1に示す割合(重量部)で配合し、250〜300℃に設定したベントポート付き二軸押出機(ZSK−25;WERNER&PFLEIDERER社製)を用いて溶融混練し、ペレットとして得た。このペレットを用い、上に示した方法により、成形加工し、物性評価を実施した。その結果を表1に示した。
【0091】
【実施例2】
籠状シルセスキオキサンとして、オクタイソオクチル−オクタシルセスキオキサン[Octaisooctyl-octasilsesquioxane(式(2)において、R=イソオクチル)]とドデカイソオクチル−ドデカシルセスキオキサン[Dodecaisooctyl-dodecasilsesquioxane(式(4)において、R=イソオクチル)の混合物(やや濁った粘性液体、以下「Si−2」と略すことがある。)]を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施し、成形加工し、物性評価を実施した。その結果を表1に示した。
【0092】
【実施例3】
籠状シルセスキオキサンとして、トリシラノール体(式(8)において、R=isobutyl、白色固体、以下「Si−3」と略すことがある。)を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施し、成形加工し、物性評価を実施した。その結果を表1に示した。
【0093】
【実施例4】
液晶ポリエステル(LCP−1およびLCP−2)と(e)成分として、ガラス繊維(平均長さ3mm、チョップドファイバー。以下「GF」と略すことがある。)を用い、表1に示す割合に配合すること以外は、実施例1と同様に実施し、成形加工し、物性評価を実施した。その結果を表1に示した。
【0094】
【実施例5】
ポリフェニレンエーテル(PPE−2)を用い、表1に示す割合に配合すること以外は、実施例1と同様に実施し、成形加工し、物性評価を実施した。その結果を表1に示した。
【0095】
【比較例1】
籠状シルセスキオキサンとして、「Si−1」を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に実施し、成形加工し、物性評価を実施した。その結果を表1に示した。
【0096】
【比較例2】
液晶ポリエステル(LCP−1)を用いなかったことと、各成分を表1に示す割合にすること以外は、実施例1と同様に実施し、成形加工し、物性評価を実施した。その結果を表1に示した。
【0097】
【比較例3】
籠状シルセスキオキサン(Si−1)の代わりに、架橋タイプシリコンパウダー(東レダウコーニング・シリコーン社製、R−900、表中「シリコンパウダー」と略す。)を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施し、成形加工し、物性評価を実施した。その結果を表1に示した。
【0098】
【実施例6、7、8】
ポリフェニレンエーテル(PPE−1,PPE−2)、液晶ポリエステル(LCP−1、LCP−2)、籠状シルセスキオキサン(Si−1、Si−2、Si−3)、ガラス繊維(GF)を表1に示す割合に配合すること以外は、実施例1と同様に実施し、成形加工し、物性評価を実施した。その結果を表1に示した。
【0099】
【比較例4】
籠状シルセルキオキサン(Si−2)を用いなかったこと以外は、実施例8と同様に実施し、成形加工し、物性評価を実施した。その結果を表1に示した。
【0100】
【表1】
Figure 0004008254
【0101】
【実施例9】
籠状シルセスキオキサンとして、ジアミノ構造含有基を有する籠状シルセスキオキサン、N(2−アミノエチル)プロピルアミノ(ヘプタイソブチル)オクタシルセスキオキサン[N(2-Aminoethyl)Propylamino(heptaisobutyl)-Octasilsesquioxane(式(4)において、R=isobutyl、さらにRのうち一個だけが式(7)の基に置換されたもの、白色固体、以下「Si−4」と略すことがある。)]を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施し、成形加工し、物性評価を実施した。その結果を表2に示した。
【0102】
【比較例5】
籠状シルセスキオキサン(Si−4)の代わりに、リン系難燃剤(CR−741、大八化学工業(株)製、以下「P−1」と略すことがある。)を用いたこと以外は、実施例9と同様に実施し、成形加工し、物性評価を実施した。その結果を表2に示した。
【0103】
【実施例10、11】
窒素環状化合物として、メレム(日産化学(株)製、以下「N−1」と略すことがある。)を用い、表2に示す割合に配合したこと以外は、実施例1と同様に実施し、成形加工し、物性評価を実施した。その結果を表2に示した。
【0104】
【実施例12】
窒素環状化合物の代わりに、ポリアミド6,6(レオナ1300S、旭化成(株)製、以下「PA−1」と略すことがある。)を用いたこと以外は、実施例10と同様に実施し、成形加工し物性評価を実施した。その結果を表2に示した。
【0105】
【表2】
Figure 0004008254
【0106】
【発明の効果】
本発明により、ハロゲン化合物やリン化合物を含まず、環境上好ましく、流動性と耐衝撃性と難燃性と電気特性と耐熱性と機械特性が同時に高いレベルで達成され、特に流動性と耐衝撃性と難燃性が大きく改良されたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を提供することが可能となった。

Claims (5)

  1. (a)ポリフェニレンエーテル系樹脂30〜99重量部と、(b)液晶ポリエステル70〜1重量部とからなる樹脂成分100重量部に対して、(c)籠状シルセスキオキサンまたはその部分開裂構造体0.1〜30重量部を配合することにより得られるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
  2. 籠状シルセスキオキサンまたはその部分開裂構造体が、下記一般式(A)又は一般式(B)で示されるケイ素化合物であることを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
    (RSiO1.5n (A)
    (RSiO1.5l(RXSiO)k (B)
    [一般式(A)、(B)において、Rは水素原子、炭素原子数1から20の置換又は非置換の炭化水素基又はケイ素原子数1から10のケイ素原子含有基から選ばれ、Rは全て同一でも複数の基で構成されていても良い。一般式(B)においてXはOR1(R1は水素原子、アルキル基、アリール基、第4級アンモニウムラジカル)、ハロゲン原子及び上記Rの中から選ばれる少なくとも一つの官能基であり、(RXSiO)k中のXは全て同じでも異なっていても良い。又(RXSiO)k中の2個のXが互いに連結して下記一般式(C)で表される連結構造を形成しても良い。
    Figure 0004008254
    Y及びZは、Xと同じ基の群の中から選ばれ、YとZは同じでも異なっていても良い。nは6から14の整数、lは2から12の整数、kは2又は3である。]
  3. (d)環状窒素化合物を含有し、(c)成分と(d)成分との重量比(c/d)が0.1〜10であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
  4. (d)環状窒素化合物が、メラミンおよび/またはメレムおよび/またはメロンであることを特徴とする請求項3に記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
  5. (a)成分と(b)成分の合計100重量部に対して、(e)無機充填剤が0.1〜50重量部添加されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
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