JP4006513B2 - 材料評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、材料評価方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、高強度鋼を動的強度試験あるいは静的強度試験を行った際の局所的な塑性変形量の分布を微細複相組織と対応づけて定量的に評価するための材料評価方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】
遅れ破壊特性や疲労破壊特性に優れる高強度鋼の実用化を目指して、それら破壊メカニズムの解明は重要な課題と考えられている。遅れ破壊や疲労破壊等においては、粒界・粒内等の様々な破壊形態を取るが、破壊の初期過程では材料組織中の最弱部が、優先的に塑性変形することによって、応力集中を生じ破壊起点になると考えられている。そのため、破壊メカニズムの解明には、微細組織に対応した局所的な塑性変形量の評価が必要である。
【0003】
例えば、遅れ破壊では、試験片切り欠き底部の静水圧最大点の弾塑性境界近傍が破壊起点となるが、主応力方向の最大応力は降伏強度である。また疲労破壊では、弾性域もしくは降伏点近傍での繰返し応力によって破壊が生じる。つまり、いずれも、応力−ひずみ曲線の降伏点近傍か、あるいは、それ以下に対応する変形量における破壊であり、マクロな塑性変形量として、公称歪量が取りうる値は、高々0.2%前後である。このようにマクロな塑性変形量が小さい上に、高強度鋼では、組織が微細で複雑なために、ミクロ組織に対応した局所的な不均一変形量の定量的な評価を行うことは、極めて困難であった。
【0004】
従来の光学顕微鏡(光顕)や二次電子走査型電子顕微鏡(SEM)は、極めて平滑な表面において、垂直分解能の不足から組織形態を観察するには不適切であり、結晶粒や析出物に依存してより大きな表面段差を現出させる化学腐食面を用いている。化学腐食面では、もともと表面凹凸が大きいために、変形前と変形後の微細組織に対応した表面凹凸の微小な差を検出することができない上に、表面凹凸を数値化することも不可能であった。
【0005】
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、平滑面上において高強度鋼微細組織の降伏点近傍における不均一塑性変形量の定量評価に適用することが可能な材料評価方法を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するものとして、この出願の発明においては、第1に、高強度鋼、金属基複合材料、あるいは、マイクロマテリアルなど微細複相組織を有する材料の試験片に平滑な表面を形成した後に、該試験片に対して塑性変形を繰り返し行うとともに、原子間力顕微鏡を用い、平滑な表面上において複数の視野毎に塑性変形の前後の表面凹凸の変形量を測定し、測定した複数の視野間の変形量の分布を求め、該分布から微細複相組織の不均一塑性変形量を評価することを特徴とする材料評価方法を提供する。
【0007】
この出願の発明は、第2の発明の態様として、試験片の平滑な表面を形成するのに電解研磨法を用い、析出物と結晶方位の異なる結晶粒間の段差を30nm以下にすることを、第3の発明の態様として、塑性変形前後においての測定地点を同定するための目印として電解研磨の前あるいは後で、硬さ試験機を用いて圧痕を形成することを、それぞれ特徴とする材料評価方法を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、その実施の形態について説明する。
【0011】
この出願の発明の材料評価方法は、高強度鋼を動的強度試験あるいは静的強度試験を行った際の局所的な塑性変形量の分布を微細複相組織と対応づけて定量的に評価する方法である。この出願の発明の材料評価方法においては、高い垂直分解能により3次元情報を数値化できる原子間力顕微鏡(AFM)を用い、平滑面上においてミクロ組織毎に生じる表面凹凸の微小な違いを、同じ場所で変形前と変形後ならびに変形量を変えて測定することによって、微細複相組織と不均一塑性変形量との対応を定量的に評価することができる。
AFMを用いた高強度鋼微細組織の不均一塑性変形量の評価方法を説明する。
まず、試験片表面の処理方法には、AFMが高い垂直分解能を有することを利用して、凹凸の小さい平滑表面が得られる電解研磨法を用いる。電解研磨によって、析出物と結晶方位の異なる結晶粒間の段差を30nm以下にすることができ、その微小な高低差をAFMで精度良く測定できる。また、析出物を母地より高くする場合と低くする場合並びに母地と同じ高さにする場合のいずれについても電解研磨は可能である。
【0012】
同じ場所で、変形前と変形後あるいは変形量を変えて観察できるように、目印として電解研磨の前あるいは後で、硬さ試験機を用いて圧痕を形成する。この圧痕からの距離と方向を決めることで、極めて平滑な電解研磨面上においても同一場所を選択することができる。
あるいは、AFM装置に試験片表面作製装置(電解研磨装置や化学腐食装置)を複合化させることで、AFM観察しながら電解研磨と化学腐食を施すことによって、試験片を移動させることなく、試験片中の同じ場所の電解研磨面と化学腐食面をAFM観察することも可能である。
結晶相や結晶方位に依存して生じた数nmの段差を識別することによって、炭化物サイズやブロックサイズの分布を測定することができる。そして、変形によって生じたわずか10nm程度の表面凹凸の違いを変形前後でAFMを用いて精度良く測定することによって、微細組織に対応した局所的な塑性変形量を評価することができる。
【0013】
微細組織に対応した局所的でしかも微小な塑性変形の分布を捉えることができる理由は、極めて平滑な表面を対象としているからである。このようにして得られた変形前後の電解研磨面のAFM像と、同じ場所で旧オーステナイト(γ)粒界を選択腐食させる化学腐食処理を施した後に取得したAFM像を重ね合せることによって、優先的に変形する微細結晶組織と旧γ粒界との対応を調べることができる。高強度鋼マルテンサイト組織では、旧γ粒界は遅れ破壊やクリープ破壊の起点となることが知られている。以上の評価方法は、高強度鋼のみならず、金属基複合材料、マイクロマテリアルなど微細複相組織を有する材料に適用可能である。
【0014】
一方、光学顕微鏡(光顕)や二次電子走査型電子顕微鏡(SEM)では、この出願の発明が対象とするような極めて平滑な表面では、垂直分解能の不足から組織形態を観察するには不適切である。このため、結晶粒や析出物に依存してより大きな表面段差を現出させる化学腐食面を用いている。化学腐食面では、もともと表面凹凸が大きいために、変形前と変形後の微細組織に対応した表面凹凸の微小な差を検出することができない上に、表面凹凸を数値化することも不可能である。
【0015】
この出願の発明である材料評価方法においては、高強度鋼等の微細複相組織の破壊初期過程での塑性変形量の分布を評価できることによって、最弱組織の同定が容易になり、破壊メカニズム解明に寄与できるものと考えられる。
この出願の発明である材料評価方法により、高強度鋼等の微細複相組織の不均一塑性変形量の評価を行うことで、遅れ破壊や疲労破壊等の特性向上指針を得ることができれば、高強度鋼をはじめ金属基複合材料やマイクロマテリアル等の実用化を促進するものと考えられる。また、この出願の発明である材料評価方法は、高強度鋼等の微細複相組織の破壊初期過程での塑性変形量の分布を評価できることから、最弱組織の同定が容易になり、破壊メカニズム解明に寄与するものと期待される。
【0016】
この出願の発明は、以上の特徴を持つものであるが、以下に実施例を示し、さらに具体的に説明する。
【0017】
【実施例】
1570MPaの引張強度を有する低合金中炭素鋼(JIS−SCM440)の2種類の鋼に対して、本発明による評価方法を実施した。一つは通常の焼入れ・焼もどし材、他方は改良オースフォームを施した加工熱処理材である。通常熱処理材に比べ、改良オースフォーム処理を施した加工熱処理材が優れた遅れ破壊特性と疲労破壊特性を示すことが分かっている。両鋼に対して不均一変形と微細組織を定量評価することによって、遅れ破壊特性と疲労破壊特性に優れた鋼の組織創製指針を与えることから、この出願の発明である材料評価方法の有効性を示すことができる。
【0018】
実施例の詳細を示す前に、参考として、図1(a)に、通常の焼入れ・焼もどし材、図1(b)に改良オースフォーム材のナイタール化学腐食面の光学顕微鏡(光顕)組織を示す。両鋼とも試料全体でラスマルテンサイト組織が得られていることが分かるが、両鋼の差を明らかにすることはできない。
【0019】
この出願の発明である材料評価方法の手順を、流れ図にして図2に示す。
【0020】
まず、平行部寸法が幅3mm厚さ2mm長さ20mmの引張試験片を作製した。機械研磨を行い、マイクロビッカース試験機で目印の圧痕を付けた。変形前に電解研磨面でAFM像(図3)を取得した。また、電解研磨条件を変えてAFM像(図6)を取得することもできる。その後、引張変形を導入し、図3と同じ場所を、圧痕を目印にしてAFMで観察した(図4)。同じ場所の異なる変形での情報を得るため、所定回数繰返して引張試験とAFM観察を行った。そして、旧γ粒界を選択腐食させた化学腐食面で、圧痕を目印にして電解研磨面と同じ場所のAFM像を取得し、変形前と後の電解研磨面のAFM像と重ね合わせた(図5)。これらのAFM像を用い、組織情報と不均一変形情報を定量化した。組織情報としては、変形前の電解研磨AFM像(図3あるいは図6)と旧γ粒界重ね合わせAFM像(図5参照)から、旧γ粒内と粒界の炭化物分布(図7および8)やブロック幅分布(図9)を測定した。ここで、図5は変形後の重ね合わせ像であるが、変形前の像もほぼ同じであるので、省略した。また、変形後のAFM像(図4)と変形後のAFM像の断面図(図10)から、不均一変形量(図11)や平均粗さ(図12)を測定した。
【0021】
以上の詳細を説明する。図3に変形前の(a)通常の焼入れ・焼もどしと(b)改良オースフォーム材の電解研磨面のAFM組織を示す。黒白のコントラストは表面高低差に対応する。電解研磨速度は、表面の結晶相と結晶方位に依存するために、炭化物とブロック(大角粒界を有する結晶粒の最小単位)を識別することができる。ここで用いた電解研磨条件は、8vol%過塩素酸−70vol%エタノール−12vol%ブトキシエタノール−10vol%水の混液中で、40Vの電圧を10秒間印加したものである。この電解研磨条件では、炭化物が母地から凸状に突き出ており、AFM像上では白い点として識別される。ブロックは黒白のコントラストが一様な領域として識別できる。
【0022】
まず、炭化物の定量評価について述べる。像全体の表面高低差は最大でも30nm以下であるのに対して、炭化物は母地より10−20nmの高さで突き出ている。粒子解析プログラムを用い、炭化物と母地との境界で傾斜が最大の部分で粒子輪郭を決定して、炭化物サイズを測定した。母地の凹凸と区別するために5nm以下の高さのものは除外している。また、炭化物粒子の面積は、カンチレバーの探針先端の影響を除くために、AFM像全体から直接求まる個々の炭化物(=セメンタイト)面積の総和が、計算から求められるセメンタイト粒子の総面積(=AFM走査面積×セメンタイト分率)に等しくなるように補正した。ここで、理論セメンタイト分率はfo=15.3cで与えられ、cは炭素含有量(mass%)である。両鋼ともcは0.4mass%なので、理論値foは6.12%である。従って、AFM探針による炭化物の見かけの膨張率eは、e=fapp/foで求められる。ここで、fappはAFM像で得られる見かけのセメンタイト分率である。fappは通常の焼入れ・焼もどし材で12.5%、改良オースフォーム材で19.1%となるから、膨張率eはそれぞれ2.04と3.12となる。従って、AFM像上で求まった見かけの炭化物粒子の面積Sappから、AFM探針の影響を取り除いた補正面積Sestは、Sest=Sapp/eで与えられる。
【0023】
得られた全ての炭化物サイズ(補正面積Sest)の分布を図7に示す。(b)の改良オースフォーム材の方が、(a)の通常の焼入れ・焼もどし材より炭化物サイズの平均値が小さく、また分布のばらつきも小さいことがわかる。また、旧γ粒界の場所を電解研磨面上で特定できたことにより、粒界炭化物を粒内と区別して、定量評価可能となった。粒界炭化物サイズの分布を図8に示す。(a)の通常の焼入れ・焼もどし材では2000nm2を超える粗大な炭化物が存在するのに対して、改良オースフォーム材では粗大炭化物が存在せずに、400nm2以下の微細な炭化物の占める割合が大きかった。
【0024】
次に、ブロックの測定について述べる。上記の過塩素酸とブトキシエタノールの混合液中の電解研磨を施した直後に、15vol%酢酸−65vol%リン酸−5vol%クロム酸−15vol%水の混液中において40Vで5秒間印加することで、炭化物を母地より凹状に研磨することができる。図6に炭化物を母地より凹状に研磨したAFM像を示す。炭化物が浮き出ていないために、図3より図6のAFM像を用いる方がブロック幅の測定が容易である。得られたブロック幅の分布を図9に示す。(b)の改良オースフォーム材の方が、ブロック幅の平均値が小さく、1μm以上の粗大なブロックが存在しないことがわかる。同様の結果は、過塩素酸とブトキシエタノールの混液中で施した電解研磨面でも得られる。
【0025】
以上の定量的測定から、改良オースフォームによる加工熱処理は組織を微細・均一化すると結論できる。図3を見ると、定性的にも改良オースフォームを施した加工熱処理材の組織は微細かつ均一に見える。このような組織の微細化および均一化は変形の微細化および均一化をもたらすと考えられるが、この点を次に述べる。
【0026】
図3と同じ場所で引張変形後のAFM像を図4に示す。図4の水平方向に公称塑性歪0.6%を与えている。(a)の通常の焼入れ・焼もどし材に対して、(b)の改良オースフォーム材では、形成された表面段差は小さいことが分かる。この違いを定量的に評価するために、変形後のAFM像の断面を検討した。図10(a)に通常の焼入れ・焼もどし材、(b)に改良オースフォーム材を示す。それぞれ図5(a)と(b)中の変形量が最大の部分を横切るAB線上の断面に相当する。最大の段差は、両鋼共に旧γ粒界の近傍で生じているが、(a)の通常の焼入れ・焼もどし材では50nm、(b)の加工熱処理材では30nmであった。
【0027】
図11は、通常の焼入れ・焼もどし材と改良オースフォーム材の間で公称塑性歪0.6%における20μm×20μm領域の18視野で測定した視野内での最大の表面段差を比較したものである。形成された表面段差は、通常の焼入れ・焼もどし材では大きく、改良オースフォーム材では小さいことが分かる。
【0028】
図12は、図11と同じ視野で測定した平均粗さを両鋼間で比較したものである。平均粗さの18視野の平均値で比較すると、差は小さいが、ばらつきは改良オースフォーム材の方が小さいことが分かる。このことは、変形の不均一性は、通常の焼入れ・焼もどし材より改良オースフォーム材の方が小さいことを意味している。
【0029】
表面段差と破壊メカニズムとの関係を理解するために、引張試験に伴う局所的な不均一変形に伴う表面段差の生成過程を模式図にして図13に示した。引張試験によりマクロスコピックには試験片は引張方向では均一に伸び、負荷垂直方向では均一に縮む。ナノスコピックレベルの局所的な不均一変形はそうした均一変形の上に起きていると仮定できる。
【0030】
図10に示す通り、表面段差は通常の焼入れ・焼もどし材の50nmに対して、加工熱処理材では30nmと小さい。原子数にすると、それぞれ200個、120個に相当する。両鋼間で段差に違いが生じる理由は、結晶方位が同じラスの集団すなわちブロックのサイズがオースフォーム材では小さいので、ブロック境界に集積する転位の数が少ないためである。両鋼とも旧γ粒界に隣接して比較的大きなラスやブロックが存在する傾向にあるが、特に、通常の焼入れ・焼もどし材では旧γ粒界に隣接して幅1μmを超えるような粗大なラスやブロックが存在しており、そのような粗大ラスやブロックが優先的に局所変形している。そして、その段差の原子数に相当する転位が表面内部の境界(=旧γ粒界)に集積すると仮定できる。
【0031】
一方、改良オースフォーム材では、ブロック組織が微細なために境界・粒界上に集積する転位によって生じる表面段差が小さい。両鋼に負荷した外部応力は同じであり、粒界に集積する転位によって生じる応力集中によって、集積転位数の大きい通常の焼入れ・焼もどし材では粒界破壊し易く、集積転位数の小さい改良オースフォーム材では粒界破壊し難いことを、局所的な表面段差の違いから評価できる。実際に、遅れ破壊破面を観察すると、静水圧最大点(弾塑性境界)の破壊起点では、通常の焼入れ・焼もどし材が旧γ粒界を起点とした粒界破壊しているのに対して、改良オースフォーム材は粒内を起点として破壊しており、局所変形の解析から求まる上記の予測と一致する。
【0032】
また、上記の実験をさらに容易にするための装置の概略を図14に示す。AFMと表面作製装置を複合化したもので、試験片を移動することなく電解研磨と化学腐食を行いながらその場でAFM観察可能である。また、荷重負荷装置を付けると、この出願の発明の材料評価方法を行うための実験が、試験片を移動させることなく実施可能である。
【0033】
以上の結果より、組織を微細・均一化させることによって塑性変形分布を均一化し、局所的な不均一変形に伴う表面段差を生じさせないことが、遅れ破壊特性を向上させる材料設計指針であることがわかる。同様な考え方は、表面破壊を起点とする疲労破壊メカニズムについても適用することが可能である。従って、この出願の発明の材料評価方法は、微細複相材料の遅れ破壊や疲労破壊特性をはじめ各種破壊特性の向上指針につながる有効な評価方法であると考えられる。
【0034】
【発明の効果】
この出願の発明によって、以上詳しく説明したとおり、平滑面上において高強度鋼微細組織の降伏点近傍における不均一塑性変形量の定量評価に適用することが可能な材料評価方法が提供される。
【0035】
高い垂直分解能と3次元情報を数値化できるSPM(AFM)と、表面高低差がほとんど無い電解研磨面上で、変形前後で同じ場所の観察を可能にしたことにより、変形前後の高強度鋼微細複相組織の局所的なせん断変形量、平均粗さを解析することができる。これにより、降伏点近傍でのわずかな公称歪量高々0.2%前後においてさえ、微細結晶相に対応した局所的な不均一塑性変形量を定量評価することが可能となる。
【0036】
遅れ破壊特性や疲労破壊特性に優れる高強度鋼の実用化を目指して、それら破壊メカニズムの解明は重要な課題であり、この出願の発明である材料評価方法は、新しい高強度鋼の開発の指針を与えるものとして、その実用化が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】JIS−SCM440鋼の(a)通常の焼入れ・焼もどし材と(b)改良オースフォーム材のラスマルテンサイトの光学顕微鏡組織を示した図である。
【図2】この出願の発明である材料評価方法の手順について示した流れ図である。
【図3】(a)通常の焼入れ・焼もどし材と(b)改良オースフォーム材の変形前の電解研磨面AFM組織像を示した図である。
【図4】(a)通常の焼入れ・焼もどし材と(b)改良オースフォーム材の公称塑性歪0.6%変形後の電解研磨面AFM組織像を示した図である。
【図5】(a)通常の焼入れ・焼もどし材と(b)改良オースフォーム材の公称塑性歪0.6%変形後の電解研磨面と旧γ粒界エッチング面のAFM組織の重合について示した図である。
【図6】クロム酸溶液による電解研磨面のAFM組織像である。
【図7】(a)通常の焼入れ・焼もどし材、および、(b)改良オースフォーム材の全炭化物サイズを示したヒストグラムである。
【図8】(a)通常の焼入れ・焼もどし材、および、(b)改良オースフォーム材の粒界炭化物サイズを示したヒストグラムである。
【図9】(a)通常の焼入れ・焼もどし材、および、(b)改良オースフォーム材のブロック幅を示したヒストグラムである。
【図10】(a)通常の焼入れ・焼もどし材、および、(b)改良オースフォーム材の公称塑性歪0.6%変形後におけるAFM像の断面図である。
【図11】通常の焼入れ・焼もどし材と改良オースフォーム材の公称塑性歪0.6%のAFM像(20μm×20μm領域)について最大表面段差の比較について示したグラフである。
【図12】通常の焼入れ・焼もどし材と改良オースフォーム材の公称塑性歪0.6%のAFM像(20μm×20μm領域)の平均粗さの比較について示したグラフである。
【図13】引張変形に伴うナノスコピックスケールでの局所的な表面段差の生成過程について示した概要図である。
【図14】AFM装置と表面作製装置の複合システムの構成について示した概要図である。
Claims (3)
- 高強度鋼、金属基複合材料、あるいは、マイクロマテリアルなど微細複相組織を有する材料の試験片に平滑な表面を形成した後に、該試験片に対して塑性変形を繰り返し行うとともに、原子間力顕微鏡を用い、平滑な表面上において複数の視野毎に塑性変形の前後の表面凹凸の変形量を測定し、測定した複数の視野間の変形量の分布を求め、該分布から微細複相組織の不均一塑性変形量を評価することを特徴とする材料評価方法。
- 試験片の平滑な表面を形成するのに電解研磨法を用い、析出物と結晶方位の異なる結晶粒間の段差を30nm以下にすることを特徴とする請求項1記載の材料評価方法。
- 塑性変形前後においての測定地点を同定するための目印として電解研磨の前あるいは後で、硬さ試験機を用いて圧痕を形成することを特徴とする請求項2記載の材料評価方法。
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