JP4005756B2 - 冷菓の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、果肉や野菜のフレッシュ感を有する果肉又は野菜入りの冷菓、さらには、冷凍庫から出してすぐに食すことができるスプーン通りのよい柔らかい物性を有する冷菓に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の冷菓市場においては、高級化・グルメ嗜好化に伴ないフルーツ果肉(以下、果肉という。)入りのアイスクリーム類やシャーベット等の氷菓類(以下、冷菓という。)が数多く商品化されている。従来、工業的に生産されている果肉を含有した冷菓、いわゆるハードタイプ製品は、以下のように製造されている。例えば、果肉入りアイスクリームは、通常、生乳、乳製品及び糖類並びに必要に応じてこれらに果汁等の原料を混合して均一にし、フリージングしたものに、果肉に砂糖等の糖類、香料、酸味料、色素等を添加して加工したソースやシロップ、すなわち、フルーツプレパレーションやフルーツプレザーブ(以下、加工果肉という。)を混合して均一にした後、容器に分注し、凍結して製造されている。
【0003】
また、上記のような加工果肉の代わりに新鮮な生(未加工)の果肉やピューレ状の果肉を用いたアイスクリームとして「イタリアンジェラート」と呼ばれる冷菓がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような加工果肉を用いた冷菓は、フルーツ本来のフレッシュ感を有したものとはいえず、風味の点で充分満足できるものではなかった。また、「イタリアンジェラート」は、フルーツ本来のフレッシュ感を有しているものの、生の果肉は保存性が悪いため、工業的な大量生産には向いていない。従って、これまで生の果肉を用いて冷菓を工業的に大量生産することは難しかった。
【0005】
さらに、通常、冷菓は、−18〜−15℃で保存・流通されているが、冷凍庫から出した直後は硬すぎるため、しばらく室温に放置しておくなどして、柔らかくしてから食さなければならなかった。このような冷菓の保存・流通温度帯(−18〜−15℃、以下同じ。)での硬さ(食べにくさ)を解消する方法として、砂糖等の糖類の含量を増加させて、冷菓の全固形分を増加させることにより冷菓の凍結点を下げ、冷菓の保存・流通温度帯での物性を柔らかくすることが知られている。しかし、この冷菓に上記のような加工果肉を添加して、果肉入り冷菓を製造した場合、加工果肉自体が甘いので、冷菓の甘味が強くなりすぎてしまうという問題があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、工業的に生産可能なフルーツや野菜本来のフレッシュ感を有する冷菓、更には、通常の冷菓の保存・流通温度帯で柔らかな物性を有する冷菓の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の冷菓の製造方法は、全固形分が40質量%以上の冷菓ミックスを製造する工程と、前記冷菓ミックスを冷却しながら、又は冷却した後に、前記冷菓ミックスと果肉又は野菜の凍結破砕物を−12〜−5℃で混合する工程と、得られた混合物を整氷混合する工程とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の冷菓の製造方法によれば、生(未加工)の果肉又は野菜の凍結破砕物を用い、また、冷菓ミックスを冷却してから前記凍結破砕物を混合することにより、果肉又は野菜が常に凍結した状態にあり、解凍に伴う離水などの品質劣化が起こらない。さらに、果肉又は野菜の凍結破砕物を冷菓ミックスに混合した後、整氷混合、例えばフリージングすることにより、果肉又は野菜の凍結破砕物の氷の大きさを調整することができ、その食感を一層シャリシャリとしたものにすることができるので、果肉や野菜のフレッシュ感を有し、かつ冷凍庫から出してすぐに食することができる冷菓を工業的に生産することができる。
【0009】
本発明の冷菓の製造方法において、前記冷菓ミックスは、全固形分が40〜60質量%であることが好ましい。全固形分を上記範囲とすることにより、氷点降下作用により、通常の冷菓の保存・流通温度でも柔らかな物性を有し、スプーン通りのよいものとなる。また、柔らかな物性を達成するために砂糖等の糖類を増量した場合、冷菓の甘味が強くなるが、冷菓の中に散在した果肉又は野菜の凍結破砕物が、口腔内で融解して水分を放出するため、その甘味が抑えられ、美味しく食することができる。
【0010】
本発明の冷菓の製造方法において、前記冷菓ミックスを予め−8〜−1℃に冷却しておき、前記果肉又は野菜の凍結破砕物と混合することが好ましい。
【0011】
本発明の冷菓の製造方法において、前記冷菓ミックス100質量部に対して、前記果肉又は野菜の凍結破砕物を15〜70重量部加えて混合することが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明でいう冷菓には、乳等省令で規定されているアイスクリームの他、アイスミルク及びラクトアイス(以下、これらをアイスクリームという。)、さらに、シャーベットや氷水などの氷菓類も含まれる。
【0013】
上記アイスクリームの原料としては、従来より一般的に用いられている原料、すなわち乳、乳製品、糖類、卵、植物油脂、安定剤、乳化剤、着色料、甘味料、香料、果汁、及び風味原料などを適宜選択して用いることができる。
【0014】
また、同様に上記氷菓類の原料としては、従来より一般に用いられている原料、すなわち糖類、乳製品、果汁、安定剤、着色料、甘味料、香料などを適宜選択して用いることができる。
【0015】
なお、本発明において冷菓ミックスとは、上記アイスクリームや氷菓類の原料を混ぜ、均質化したものをいう。
【0016】
本発明において、果肉又は野菜の凍結破砕物とは、保存のために加糖などが行なわれていない生(未加工)のフルーツ果肉又は野菜を洗浄・殺菌した後、そのまま、或いは必要に応じて果皮や種子などを除去してから−40〜−10℃で凍結したものを、氷を細氷、砕氷するアイスクラッシャ、アイススライサー又はフードカッター等(以下、削氷機という。)の適当な手段で破砕したものをいう。また、破砕物の形状は特に制限されるものではなく、削状氷、板状、砕状などであってもよい。なお、上記フルーツ果肉や野菜の代わりに、フルーツや野菜の搾汁液を凍結して破砕したものを使用することもできる。
【0017】
また、上記凍結破砕物は、その平均粒径が0.3〜12mmが好ましく、0.5〜5mmがより好ましい。凍結破砕物の平均粒径が12mmより大きいと食した際に口腔で冷菓と一緒に融解せずに口腔内に残り、冷菓の甘味のみが強調されてしまい、0.3mmより小さいとそのシャリシャリした感触を楽しむことができないため好ましくない。
【0018】
本発明で用いられるフルーツとしては、特に限定されないが、水分含量が多いフルーツほど好ましく、例えば、イチゴ、パイナップル、リンゴ、メロン、柑橘類、ナシ、洋ナシ、スイカ、ブドウ、カキ、モモ等が挙げられ、これらの1種類又は2種類以上が使用できる。
【0019】
また、本発明で用いられる野菜としては、特に限定されないが、例えば、トマト、キュウリ、ニンジン、セロリ、ピーマン、ホウレンソウ等が挙げられ、これらの1種類又は2種類以上が使用できる。
【0020】
また、本発明の冷菓においては、上記凍結破砕物を除いた部分、言いかえると前記冷菓ミックスからなる冷菓のベースとなる部分の全固形分(以下、単に全固形分という。)が40質量%以上であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましく、45〜55質量%であることが特に好ましい。冷菓のベースとなる部分の全固形分を上記範囲とすることにより、氷点降下作用により、通常の冷菓の保存・流通温度帯でも柔らかな物性、例えば、−18℃〜−15℃における冷菓の物性が、−5℃における通常の冷菓と同等の柔らかな物性を有する冷菓とすることができる。
【0021】
本発明において、冷菓の全固形分の調整は、砂糖、水あめ、ブドウ糖、その他の糖化製品(例えば粉末水あめ、デキストリン)、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等の異性化糖類、還元デンプン、オリゴ糖類、ポリデキストリン類、糖アルコール類及びその他の甘味原料から選ばれる1種類又は2種類以上を配合して行なうことができる。
【0022】
本発明の冷菓は、例えば以下のようにして製造することができる。
(1)冷菓ミックスの調製
所定の配合量の冷菓原料を混合し、加熱溶解し、ホモゲナイザーで均質化し、殺菌して冷菓ミックスを調製する。このとき、砂糖、ブドウ糖及び還元水あめ等を増量することで、上記のように全固形分が40質量%以上の冷菓ミックスとすることが好ましい。このような全固形分の多い冷菓ミックスを用いることにより、冷菓の保存・流通温度帯でも柔らかい物性を有する冷菓を得ることができる。さらに、全固形分の多い冷菓ミックスは、氷点降下作用により、−3〜−1℃に冷却しても充分な流動性を有するので、後工程において果肉又は野菜の凍結破砕物を凍結したままの状態で均一に冷菓ミックスに混合することができる。
【0023】
(2)果肉又は野菜の凍結破砕物の調製
洗浄・殺菌し、必要に応じて前処理(例えば果皮や種子の除去等)を行なった新鮮な生の果肉又は野菜を−40〜−10℃で凍結する。完全に凍結した果肉又は野菜を、削氷機にかけて、その凍結破砕物を得る。なお、上記(1)、(2)の工程は、いずれを先に行ってもよく、両者を並行して行ってもよい。
【0024】
(3)冷菓ミックスと果肉又は野菜の凍結破砕物の混合
上記の冷菓ミックス100質量部に対して、果肉又は野菜の凍結破砕物を15〜70質量部、より好ましくは30〜60質量部加え、−12〜−5℃で撹拌混合し、必要に応じて常法に従ってエージングを行なう。
【0025】
このとき、予め冷菓ミックスを−8〜−1℃に冷却しておくことが好ましい。予め冷却した冷菓ミックスに、果肉又は野菜の凍結破砕物を加えることにより、該凍結破砕物がほとんど溶けることなく、或いは凍結したままの状態で混合することができるので、離水等の品質劣化が起こりにくく、果肉や野菜のフレッシュ感を損なうことがない。さらに、上記のような全固形分の高い冷菓ミックスを用いて冷菓を製造した場合でも、該凍結破砕物に保持された水分が口腔内で溶け、その甘味を抑えることができる。
【0026】
なお、上記工程(2)を簡略化するために、凍結した果肉又は野菜を適当な大きさにカットして、予め冷却した冷菓ミックスに加え、この混合物を削氷機で処理して両者を混合すると同時に、凍結した果肉又は野菜の破砕を行なってもよい。
【0027】
(4)整氷混合
得られた冷菓ミックスと果肉又は野菜の凍結破砕物の混合物を、常法に従って整氷混合し、容器等に分注して凍結させる。
【0028】
ここで、整氷混合とは冷却・撹拌により氷結晶を均一に混合することを意味し、オーバーランによるエアーを含ませたいに場合は、フリーザーによるフリージングをすることもできる。このときオーバーランは製品に合わせて適宜行なえばよく、例えばアイスクリームの場合は40〜60%、シャーベットの場合は20〜45%である。
【0029】
一方、オーバーランによるエアーを含ませないことが好ましい場合には、撹拌タンク(サージタンク)で混合してもよい。
【0030】
本発明においては、エアーを含ませないように撹拌タンク(サージタンク)で冷却・撹拌することが好ましい。
【0031】
この整氷混合工程においては、果肉又は野菜の凍結破砕物の氷の大きさを調整することができるので、その食感を一層シャリシャリとしたものにすることができる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例及び比較例においては、「質量部」を単に「部」と表す。
【0033】
実施例1
全脂粉乳9.8部、脱脂粉乳3.2部、無塩バター6部、砂糖12.4部、ブドウ糖果糖液糖8.0部、還元水あめ20部、デキストリン2.5部、乳化安定剤0.7部に水を加えて100部とし、常法に従って均質化し、殺菌を行ないアイスクリームミックスを調製した。
【0034】
−20℃(品温)で凍結しておいたイチゴを、削氷機(アイスクラッシャ)で破砕し、平均粒径2.0〜5.0mmのイチゴの凍結破砕物を得た。
【0035】
予め冷却しておいた上記アイスクリームミックス(100部)に、上記イチゴの凍結破砕物50部を加えて、−10℃で撹拌混合した後、常法に従ってフリージングを行ない、イチゴ果肉入りアイスクリームを得た。
【0036】
実施例2
全脂粉乳9.8部、脱脂粉乳3.2部、無塩バター6部、砂糖12.4部、ブドウ糖果糖液糖3.0部、還元水あめ7.0部、デキストリン2.5部、乳化安定剤0.5部に水を加えて100部とし、後は実施例1と同様にしてイチゴ果肉入りアイスクリームを得た。
【0037】
比較例
全脂粉乳9.8部、脱脂粉乳3.2部、無塩バター6部、砂糖12.4部、ブドウ糖果糖液糖3.0部、還元水あめ7.0部、デキストリン2.5部、乳化安定剤0.5部に水を加えて100部とし、実施例1と同様にしてアイスクリームミックスを調製した。このアイスクリームミックス100部に、糖分及びイチゴフレーバーの入ったイチゴプレザーブ加工品を50部添加・混合した後、常法に従ってフリージングを行ない、イチゴ果肉入りアイスクリームを得た。
【0038】
そして、専門パネラー5名により、上記の各実施例及び比較例で得られたアイスクリームの官能検査を行なった。その結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1から分かるように、実施例1及び2の冷菓は、フレッシュなイチゴの風味を有していることが分かる。特に、全固形分の多い実施例1の冷菓は、冷凍庫から出した直後でも柔らかく、食べやすいことが分かる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、フルーツや野菜本来のフレッシュ感を有した冷菓を提供することができる。さらに、冷菓の全固形分が40質量%以上ある場合、冷菓の保存・流通温度帯(−18〜−15℃)においても柔らかな物性を有し、冷凍庫から出してすぐに食すことができる冷菓を提供することができる。
【0042】
本発明の冷菓は、果肉又は野菜の凍結破砕物に含まれる水分により、食した際に冷菓の甘味が抑えられるので、上記のように全固形分の高い冷菓であっても美味しく食すことができる。
【0043】
また、本発明の冷菓の製造方法によれば、果肉や野菜のフレッシュ感を有し、かつ冷凍庫から出してすぐに食すことができる冷菓を工業的に大量生産することができる。
Claims (4)
- 全固形分が40質量%以上の冷菓ミックスを製造する工程と、前記冷菓ミックスを冷却しながら、又は冷却した後に、前記冷菓ミックスと果肉又は野菜の凍結破砕物を−12〜−5℃で混合する工程と、得られた混合物を整氷混合する工程とを有することを特徴とする冷菓の製造方法。
- 前記冷菓ミックスは、全固形分が40〜60質量%である請求項1記載の冷菓の製造方法。
- 前記冷菓ミックスを予め−8〜−1℃に冷却しておき、前記果肉又は野菜の凍結破砕物と混合する請求項1又は2記載の冷菓の製造方法。
- 前記冷菓ミックス100質量部に対して、前記果肉又は野菜の凍結破砕物を15〜70重量部加えて混合する請求項1〜3のいずれか1つに記載の冷菓の製造方法。
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