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JP4004675B2 - 酸化物被覆金属微粒子の製造方法 - Google Patents

酸化物被覆金属微粒子の製造方法 Download PDF

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JP4004675B2 JP02161099A JP2161099A JP4004675B2 JP 4004675 B2 JP4004675 B2 JP 4004675B2 JP 02161099 A JP02161099 A JP 02161099A JP 2161099 A JP2161099 A JP 2161099A JP 4004675 B2 JP4004675 B2 JP 4004675B2
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  • Oxygen, Ozone, And Oxides In General (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属微粒子を芯粒子とし、この芯粒子をこの金属と異なる異種酸化物または複酸化物または酸素酸の塩、もしくはこの金属の酸化物と異種酸化物との複酸化物または複塩で被覆した酸化物被覆金属微粒子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、芯粒子をダイヤモンド粒子やセラミックス粒子などの無機材料粒子や金属粒子とし、この芯粒子に焼結助剤や溶射助剤となる種々の金属材料やセラミックスや酸化物や炭化物や窒化物等の無機材料を被覆した被覆金属粒子が、半導体基板、プリント基板、各種電気絶縁部品などの電気絶縁材料や、切削工具、ダイス、軸受などの高硬度高精度の機械工作材料や粒界コンデンサ、湿度センサなどの機能性材料や、精密焼結成形材料などの焼結体製造や、エンジンのバルブなどのような高温耐磨耗性が要求される材料などの溶射部品製造などの分野で用いられている。このような被覆粒子を用いることにより、焼結体や溶射部品などにおける異種セラミックス同士や異種金属同士の接合強度や緻密性を向上させている。
【0003】
例えば、特開平8‐253851号公報には、Ti粉末の表面に5μm以上のNi層を被覆し、Ti粉末の粒径とNi層の厚みの比が10以下である平均粒径10〜150μmの溶射用複合粉末を開示している。また、特開平8‐253853号公報には、平均粒径20〜99μmのCo‐Cr系合金粉末の表面に、平均粒径0.5〜20μmのWC粉末の一部が埋め込まれた状態で被覆されている溶射用複合粉末を開示している。そして、これらの溶射用複合粉末は、両原料の粉末を直接、または混合器により均一に混合した後、攪拌容器に封入して、攪拌棒で攪拌して被覆される粉末を芯粒子となる粉末に機械的に押し付け、圧着して機械的に被覆することにより製造している。
【0004】
また、本出願人の出願に係る特開平3−75302号公報、特開平7−53268号公報〜同7−54008号公報他には、平均粒径0.1μm〜100μmの無機材料または金属材料の粒子を、平均粒径0.005μm〜0.5μmの同種または異種の無機材料または金属材料の超微粒子で被覆した被覆粒子およびその製造方法を開示している。ここに開示された被覆粒子の製造方法は、熱プラズマ法などの気相法によってこの超微粒子を生成した後、生成された超微粒子の流れの中に被覆されるべき芯粒子を導入して、または、この超微粒子が生成される空間に被覆されるべき芯粒子を導入して、両者を流動状態で接触させることにより、超微粒子を芯粒子の表面に被覆するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特開平8−253851号公報および同8−253853号公報に開示された溶射用複合粉末は、Ti粉末やCo−Cr系合金粉末などの芯粒子にNi粉末やWC粉末などの被覆用粉末を単に機械的に押し付け、圧着して機械的に被覆したものに過ぎず、その界面の接着は弱く、さらに、芯粒子の粒径が数μm〜百数十μmと大きく、被覆用粉末も0.5〜20μmと大きいものに限られているという問題があった。また、芯粒子は金属であるが、被覆用粉末も金属またはその炭化物が開示されているに過ぎず、芯粒子となる金属粒子の表面を異種の酸化物で被覆するものではない。
【0006】
また、本出願人の出願に係る特開平3−75302号公報他に開示された被覆粒子は、被覆用粒子こそ、被覆用粉末を熱プラズマなどの気相法によって生成しているので、平均粒径0.005μm〜0.5μmの超微粒子であるが、芯粒子が、例えば1μm以下の微細な微粒子であると、凝集しやすく単分散化するのは困難であるため、個々の芯粒子にうまく被覆できないことから、芯粒子そのものは、微細化せず、平均粒径0.1μm〜100μmと大きいまま超微粒子を被覆しているに過ぎず、大きい粒径の被覆粒子しか得ることができないという問題があり、また、完全な膜状に被覆された被覆粒子を得ることができないという問題があった。
【0007】
また、これらに開示されているのは、基本的に芯粒子が金属粒子である場合においては被覆用粒子も金属超微粒子の場合がほとんどで、金属微粒子に異種酸化物を被覆した酸化物被覆金属微粒子を得るものではない。なお、特開平7−54008号公報には、平均粒径40μmのTiAl準微粒子を芯粒子として、この芯粒子に同種の酸化物であるアルミナ(Al2 3 )超微粒子を被覆したアルミナ被覆TiAl準微粒子が開示されているが、芯粒子は1μm以下の微粒子ではないし、被覆される酸化物のアルミナも芯粒子の主成分となる金属の1種であり、異種の酸化物でない。
【0008】
このように、従来、得られている被覆粒子は、芯粒子の粒径が大きく、また金属芯粒子には金属を被覆するものであり、無機材料粒子には無機材料を被覆するもので、上述した従来の焼結体や溶射部品には有用なものであるものの、強度と生体との親和性などが問題となる人工骨や、強度と様々な無機材料との密着性が要求される燃料電池の電極材料などに用いるには適していないため、金属微粒子に異種酸化物を被覆した酸化物被覆金属微粒子が強く求められていた。
【0009】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解消し、芯粒子となる金属微粒子にこの金属微粒子を構成する主成分となる金属元素を主成分として含まない酸化物を堅固に、好ましくは全表面完全に被覆した新規な酸化物被覆金属微粒子を、確実かつ容易に製造することができる酸化物被覆金属微粒子の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、金属粉末原料と、この金属粉末原料の主成分となる金属元素を主成分として含まない酸化物または複酸化物または酸素酸の塩の少なくともいずれか1つからなる被覆層粉末原料とを混合して、前記金属粉末原料の個々の粒子の凝集、および前記被覆層粉末原料の個々の粒子の凝集、をそれぞれ分散し、分散化された前記金属粉末原料の個々の粒子それぞれの外周に、前記被覆層粉末原料の複数の粒子が分散付着した複合化粒子の集合体である、原料混合物を得て、前記金属粉末原料および前記被覆層粉末原料の沸点よりも高い温度の雰囲気に、前記得られた原料混合物を供給して、前記原料混合物中の前記金属粉末原料と前記被覆層粉末原料とが共に気相状態となった混合物にした後、この気相状態の混合物を急冷して、前記金属粉末原料より微細化された金属微粒子を芯粒子とし、前記酸化物または複酸化物または酸素酸の塩、もしくは前記酸化物または複酸化物または酸素酸の塩と前記金属の酸化物との複酸化物または複塩からなる、前記芯粒子を被覆する被覆層を形成する酸化物被覆金属微粒子を製造することを特徴とする酸化物被覆金属微粒子の製造方法を提供する。
【0011】
ここで、前記芯粒子の平均粒径が0.01μm〜1μmであり、前記被覆層の平均厚みが1nm〜10nmであるのが好ましい。
また、前記金属微粒子を構成する主成分となる金属元素は、Al,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Mn,Cu,Zn,Zr,Ru,Pd,Ag,In,Pt,AuおよびSmよりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素であるのが好ましく、また、前記金属微粒子を被覆する酸化物または複酸化物または酸素酸の塩が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化銀、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化サマリウム、酸化ベリリウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、アルミン酸リチウム、バナジウム酸イットリウム、リン酸カルシウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸チタン鉛、酸化チタン鉄、酸化チタンコバルトおよび錫酸バリウムよりなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
【0012】
また、前記金属粉末原料および前記被覆層粉末原料の沸点よりも高い前記雰囲気は、熱プラズマ雰囲気であることが好ましい。
【0013】
また、前記金属粉末原料の平均粒径は、0.5μm〜20μmであり、より好ましくは全粒径が20μm以下であり、前記被覆層粉末原料の平均粒径は、0.1μm〜1μmであることが好ましい。また、前記金属粉末原料と前記被覆層粉末原料との混合は、高速剪断・衝撃型混合機または摩砕型混合機によって行われることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に係る酸化物被覆金属微粒子の製造方法を添付の図面に示す好適な実施の形態に基づいて、以下に詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の酸化物被覆金属微粒子の製造方法によって製造された酸化物被覆金属微粒子の一例の構成を示す模式的断面図である。同図に示すように、酸化物被覆金属微粒子(以下、単に被覆粒子という)10は、芯粒子となる金属微粒子12と、この金属微粒子12を構成する主成分となる金属元素を主成分として含まない酸化物またはこの酸化物とこの金属元素の酸化物との複合酸化物からなる酸化物被覆層14とを有する。
【0016】
ここで、金属微粒子12は、被覆粒子10の芯粒子となるもので、1種の金属の微粒子であっても、複数の金属の合金の微粒子であってもよく、被覆粒子10の用途に合わせて適宜選択することができる。例えば、金属微粒子12を構成する主成分となる金属元素は、Al,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Mn,Cu,Zn,Zr,Ru,Pd,Ag,In,Pt,AuおよびSmよりなる群から選択される少なくとも1種の金属元素をあげることができる。より具体的には、上記の金属元素などの単体金属やこれらの金属元素の種々の金属間化合物やこれらの金属元素の2種以上の合金、例えば、Fe−Co−Ni合金、Ni−Fe合金、Ni−Cu合金、Ni−Mn合金、In−Ni合金、Al−Ti合金、Ti−Cu合金などの種々の合金ならびにこれらの複合材料などを挙げることができる。特に、人工骨の用途ではTiが好ましく、化粧品添加物や触媒の用途ではFeが好ましく、燃料電池等の電極材料への用途ではNiが好ましい。
【0017】
また、この金属微粒子12は、微粒子であればその平均粒径は、特に制限的ではないが、平均粒径が0.01μm〜1μmの範囲である微粒子がよく、より好ましくは、0.1μm〜0.5μmの範囲である微粒子がよい。
また、この金属微粒子12の粒度分布は、特に制限的ではなく、粒度のバラツキは少ない、すなわち粒度分布の半値幅は狭いほうがよい。
【0018】
また、酸化物被覆層(以下、単に被覆層という)14は、金属微粒子12を芯粒子としてその外周面を、好ましくは全外周面完全に被覆するもので、この金属微粒子12を構成する主成分となる金属元素を主成分として含まない酸化物、すなわち異種酸化物の層または複酸化物の層または酸素酸の塩の層、もしくはこの異種酸化物または複酸化物または酸素酸の塩を構成する元素と金属微粒子12を構成する金属元素と酸素との複酸化物の層または複塩の層である。
【0019】
ここで、本発明において酸化物被覆層14に用いられる異種酸化物または複酸化物または酸素酸の塩、もしくはその複酸化物または複塩(以下、これらを総称して単に酸化物と称することもある)は、特に制限的ではなく、どのような酸化物、複酸化物、酸素酸の塩、複塩であってもよく、被覆される金属微粒子12や被覆粒子10に対して適宜選択すればよい。例えば、酸化チタン(TiO2 )、酸化ジルコニウム(ZrO2 )、酸化カルシウム(CaO)、酸化珪素(SiO2 )、酸化アルミニウム(アルミナ:Al2 3 )、酸化銀(Ag2 O)、酸化鉄、酸化マグネシウム(MgO)、酸化マンガン(Mn2 7 )、酸化イットリウム(Y2 3 )、酸化セリウム、酸化サマリウム、酸化ベリリウム(BeO)などの酸化物、(メタ)チタン酸バリウム(BaTiO3 )、チタン酸鉛(PbTiO3 )、アルミン酸リチウム、バナジウム酸イットリウム、リン酸カルシウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸チタン鉛、酸化チタン鉄(FeTiO3 )、酸化チタンコバルト(CoTiO3 )、錫酸バリウム(BaSnO3 )などの複酸化物または酸素酸の塩などを挙げることができるが、特に、人工骨の用途ではTiに対してCaOまたはSiO2 またはリン酸カルシウムが好ましく、化粧品添加物や触媒の用途ではFeに対してTiO2 が好ましく、燃料電池等の電極材料への用途ではNiまたはCuに対してZrO2 またはBaTiO3 が好ましい。
【0020】
また、この被覆層14の平均厚みは、特に制限的ではなく、金属微粒子12の平均粒径や被覆粒子10のサイズや用途などに応じて適宜選択すればよいが、1nm〜10nmであるのが好ましく、より好ましくは、3nm〜5nmの範囲がよい。なお、本発明においては、この被覆層14の厚みは、金属微粒子12の全外周面全体で均一または略均一であることを特徴の1つとするものであり、均一であればあるほど、または均一に近ければ近いほど、もちろん好ましいが、本発明はこれに限定されず、厚さに多少のムラがあってもよく、この場合にも全外周面全体での平均厚さが上記範囲を満足するようにするのがよい。
本発明に係る酸化物被覆金属微粒子は、基本的に以上のように構成される。
【0021】
次に、図2〜図5を参照して、本発明の酸化物被覆金属微粒子の製造方法について以下に説明する。
図2は、本発明の酸化物被覆金属微粒子の製造方法の一例を示すブロック図である。図3は、図2に示す酸化物被覆金属微粒子の製造方法の混合処理ブロックの一例を示すブロック図である。図4は、図3に示す混合処理ブロックで実施される粒子が複合化される状態を説明する説明図である。図5は、図2に示す本発明の酸化物被覆金属微粒子の製造方法の熱プラズマ処理を実施する酸化物被覆金属微粒子製造装置の一実施例の線図的断面図である。本発明の酸化物被覆金属微粒子の製造方法は、これらの図示例に限定されるわけではない。
【0022】
図2に示すように、本発明の酸化物被覆金属微粒子の製造方法を実施する酸化物被覆金属微粒子製造過程20は、芯粒子となる金属微粒子12を形成するための金属粉末原料22と酸化物被覆層14を形成するための酸化物粉末原料24とを混合する混合処理工程26と、この混合工程26で得られた芯粒子金属粉末原料22と酸化物粉末原料24との混合物を熱プラズマ処理して、金属粉末原料22から微細化された金属微粒子12を緻密な被覆層14で被覆した本発明の被覆粒子10を製造する熱プラズマ処理工程28とによって構成される。
【0023】
本発明に用いられる金属粉末原料22は、被覆粒子10の芯粒子となる金属微粒子12を構成する金属を供給するもので、上述した金属微粒子12の金属の粉末原料であれば、特に制限的ではない。この金属粉末原料22の平均粒径は、特に制限的ではないが、金属微粒子12の平均粒径が0.05μm〜1μmの範囲である場合には、0.5μm〜20μmの範囲であるのが好ましく、より好ましくは、全粒子が20μm以下の範囲であるのがよい。
【0024】
本発明に用いられる酸化物粉末原料24は、被覆粒子10の酸化物被覆層14を構成する上記金属粉末原料22の主成分となる金属元素を主成分として含まない酸化物または複酸化物または酸素酸の塩を供給するもので、上述した酸化物または複酸化物または酸素酸の塩の粉末原料であれば、特に制限的ではない。この酸化物粉末原料24の平均粒径は、特に制限的ではないが、被覆層14の平均厚みが1nm〜10nmの範囲である場合には、0.1μm〜1μmの範囲であるのが好ましく、より好ましくは、0.2μm〜0.5μmの範囲であるのがよい。
【0025】
図2に示す混合処理工程26は、芯粒子12となる金属粉末原料22と被覆層14となる酸化物粉末原料24とを混合する工程である。この混合処理工程26においては、両粉末原料22と24とを混合できればどのように混合してもよいが、両粉末原料22と24とを均一に混合するのが好ましい。ここで、この混合処理工程26において用いられる混合機は、特に制限的ではないが、高速剪断・衝撃型混合機、摩砕型混合機などの従来公知の混合機を挙げることができる。
【0026】
特に、本混合処理工程26においては、両粉末原料22と24とを複合化処理して、金属粉末原料22の個々の粒子が分散され、分散された金属粉末原料22の個々の粒子の全外周に酸化物粉末原料24の多数の粒子が均一に被覆されるように分散付着した複合化粒子とするのがより好ましい。
ここで、図3に、複合化粒子を得るための混合処理工程ブロックの一例を示すブロック図を示す。
同図に示すように、混合処理工程26は、複合化処理に先立って、予め金属粉末原料22と酸化物粉末原料24とを予備混合する、好ましくは均一に混合する予備混合処理工程30と、予備混合された粉末原料混合物を複合化して、複合化粒子34を製造する粒子複合化処理工程32とから構成される。
【0027】
予備混合処理工程30は、金属粉末原料22と酸化物粉末原料24とを予め均一に混合するための工程である。この予備混合処理工程30では、例えば、V型混合機、二重円錐型混合機などを用いることができるが、この他、従来公知のどのような混合機も用いることができる。
ところで、予備混合処理工程30においては、金属粉末原料22と酸化物粉末原料24とを上述した混合機によって混合することにより、図4(a)に示すように、金属粉末原料22と酸化物粉末原料24とは、いわゆる通常の混合の如く均一に混合されるが、金属粉末原料22同士、特に微細な粒子である酸化物粉末原料24同士が多少凝集している状態で両原料22と24とが均等に混合した状態となる。
【0028】
次に、予備混合処理工程30において均一混合された金属粉末原料22と酸化物粉末原料24との原料混合物は、粒子複合化処理工程32において両粉末原料22および24を複合化して、複合化粒子34を製造する。
本発明において、複合化とは、図4(b)に示すように、金属粉末原料22同士が凝集することなく、金属粉末原料22の個々の粒子の全外周に酸化物粉末原料24の多数の粒子が分散して単に付着した状態で被覆される複合化粒子34a、または図4(c)に示すように、酸化物粉末原料24の粒子の一部分または全体が金属粉末原料22の個々の粒子の内部に埋設されるように酸化物粉末原料24の多数の粒子が金属粉末原料22の個々の粒子の全外周に分散して、好ましくは均等に分散して固着した状態で被覆、好ましくは均一に被覆される複合化粒子34b、もしくはこれらの中間の種々の状態の複合化粒子34を製造することをいう。
【0029】
なお、本発明の粒子複合化処理工程32においては、全ての両粉末原料22および24を複合化して、全てを複合化粒子34にするのがよいが、本発明はこれに限定されず、一部に複合化されない粉末原料混合物が含まれていてもよいことはもちろんである。
この粒子複合化処理工程32では、剪断力や衝撃力、あるいは摩砕力を利用して粒子複合化を行うものであれば、特に制限的ではなく、例えば、高速剪断・衝撃型混合機、摩砕型混合機などを用いることができる。
【0030】
こうして混合処理工程26で得られた粉末原料混合物(複合化粒子34を含むものが好ましい)は、熱プラズマ処理工程28に送られる。
熱プラズマ処理工程28は、図5に示す酸化物被覆金属微粒子製造装置において実施される。
図5に示す酸化物被覆金属微粒子製造装置40は、プラズマ室42aを持つプラズマトーチ42と、石英二重管44と、冷却二重管46と、急冷管48と、粉末原料混合物供給装置50と、製品回収部52とを有する。
【0031】
ここで、プラズマトーチ42は、内部に熱プラズマ(プラズマ焔)43を発生させるプラズマ室42aを構成する石英管42bと、この石英管42bの外側に取り付けられる高周波発信用コイル42cと、この高周波発信用コイル42cの外側に設けられる冷却用外套管42dと、この石英管42bの上部に設けられ、噴出方向が接線方向、軸方向および半径方向の3方向にプラズマ用ガスを噴出するガス噴出口42eと、プラズマ室42a内に形成された熱プラズマ43に粉末原料混合物を供給する供給口42fとを有する。
プラズマトーチ42は、石英管42bと外套管42dとの二重管で、その間にコイル42cを介挿する構成となっているが、本発明はこれに限定されず、コイル42cは外側に回してもよいし、3以上の多重管構成であってもよく、またそのサイズも特に制限的ではない。また、ガス噴出口42eのプラズマ用ガスの噴出方向も3方向に限定されず、種々の方向に噴出させるようにしてもよい。
【0032】
ガス噴出口42eは、プラズマトーチ42の外上側で1つまたは複数のガス供給源42gに接続される。
ガス供給源42gからガス噴出口42eにプラズマ用ガスが供給されると、ガス噴出口42eからプラズマ室42aに上記3方向からプラズマ用ガスが噴出し、この噴出したプラズマ用ガスは、高周波(RF)電源から高周波電圧が印加された高周波発信用コイル42cによってプラズマ化され、プラズマトーチ42のプラズマ室42a内に熱プラズマ43を形成する。
なお、ガス噴出口42eから供給されるプラズマ用ガスは、アルゴン、ヘリウム等の希ガス、水素、窒素などのガス、およびこれらの混合ガスに制限される。また、ガス噴出口42eから供給される上記ガスの供給量は、プラズマ室42aのサイズや、熱プラズマ43の性状や、粉末原料混合物の処理量などに応じて適宜選択すればよい。
また、高周波発信用コイル42cに印加される高周波電圧の高周波(周波数)および電圧(または電力)は、特に制限的ではなく、熱プラズマ43の温度などの性状などに応じて適宜選択すればよい。
【0033】
ここで、こうして形成される熱プラズマ43の温度は、金属粉末原料22と酸化物粉末原料24との粉末原料混合物を気相化する必要があるので、これらの粉末原料22および24の混合物の共沸点以上である必要がある。なお、熱プラズマ43の温度が高いほど両粉末原料22および24の混合物の気相化が容易となるので、熱プラズマ43の温度は高ければ高いほど好ましいが、特に制限的ではない。例えば、金属粉末原料22および酸化物粉末原料24の沸点以上でもよいし、金属粉末原料22および酸化物粉末原料24に応じて適宜選択すればよい。例えば、具体的には、熱プラズマ43の温度を6000℃以上とすることも可能である。一方、上限も特に制限はなく、計測が困難であるので、上限を決めることは困難であるが、理論上は10000℃程度に達するものと考えられる。
また、熱プラズマ43の雰囲気は、特に制限的ではないが、大気圧以下の雰囲気、すなわち大気圧雰囲気または減圧雰囲気であるのが好ましい。熱プラズマ43の大気圧以下の雰囲気としては、特に制限的ではないが、200Torr〜600Torrであるのが好ましい。
【0034】
粉末原料混合物の供給口42fも、プラズマトーチ42の外上側で粉末原料混合物供給装置50に接続される。
粉末原料混合物供給装置50から供給口42fに粉末原料混合物、例えばFe−TiO2 粉末混合物、好ましくは複合化粒子34は、キャリアガスに担持されて、熱プラズマ中に導入される。粉末原料混合物の担持用キャリアガスは、アルゴン、ヘリウム等の希ガス、水素、窒素などのガス、およびこれらの混合ガスに制限される。なお、プラズマ用ガスまたはその一部(混合前のガスの1つまたは2つ以上)を粉末原料混合物の担持用キャリアガスとして用いてもよい。
こうして、熱プラズマ43中に導入された粉末原料混合物は、熱プラズマ43の熱によって加熱されて、一瞬の内に気体化し、熱プラズマ43中では、粉末原料混合物の金属粉末原料22と酸化物粉末原料24とは共に気相状態で存在することになる。ここで、供給口42fから供給される粉末原料混合物の供給量、および粉末原料混合物を担持するキャリアガスの種類や供給量も、特に制限的ではなく、熱プラズマ43の性状や、粉末原料混合物の処理量などに応じて適宜選択すればよい。
【0035】
石英二重管44は、プラズマトーチ42の下側に設けられ、内部に、熱プラズマ43によって気相化された金属粉末原料22と酸化物粉末原料24との混合ガスを熱プラズマ43から導出させ、第1次冷却する冷却室44aを構成する、プラズマトーチ42の石英管42bより少し大径の石英管44bと、この石英管44bの外側に設けられる冷却用外套管44cとを有する。
冷却二重管46は、石英二重管44の下側に設けられ、内部に、石英二重管44において第1次冷却された気相、液相または固相の金属粉末原料22と酸化物粉末原料24とをさらに第2次冷却する冷却室46aを構成する、石英二重管44の石英管44bと略同径の内管46bと、この内管46bの外側に設けられる冷却用外套管46cとを有する。
【0036】
急冷管48は、冷却二重管46の下側に設けられ、内部に、冷却二重管46において第2次冷却された気相、液相または固相の金属粉末原料22と酸化物粉末原料24とを急冷却して、本発明の被覆粒子10を生成する被覆粒子生成室48aを構成する、冷却二重管46の石英管46bより大幅に大径の内管48bと、この内管48bの外側に設けられる冷却用外套管48cとを有する。
この急冷管48の被覆粒子生成室48aにおいては、冷却二重管46において第2次冷却された気相または液相の金属粉末原料22と酸化物粉末原料24との原料混合物を急冷却して、気相または液相金属粉末原料22と酸化物粉末原料24との原料混合物から一気に、固相の金属粉末原料22より微細化された、すなわち金属粉末原料22の粒子の粒径より小さい、好ましくは数分の1から数十分の1の粒径の金属微粒子12を芯粒子とし、この芯粒子を酸化物粉末原料24から形成される緻密で均一な厚みの酸化物の被覆層14で被覆した本発明の被覆粒子10が生成される。ここで、被覆層14は、金属微粒子12の主成分となる金属元素を主成分として含まない酸化物または複酸化物または酸素酸の塩の層であるが、これらとともに緻密に接合(接着)または被覆していれば、同時に金属微粒子12の主成分となる金属元素の酸化物または複酸化物または酸素酸の塩を含んでいてもよい。
【0037】
ここで、気相または液相状態の原料混合物を急冷する急冷管48の被覆粒子生成室48a内の雰囲気は、芯粒子となる金属微粒子の酸化、すなわちその構成金属元素の酸化物の生成を抑制もしくは防止するため、不活性雰囲気あるいは還元性雰囲気であるのが好ましい。ここで、不活性雰囲気あるいは還元性雰囲気としては、特に制限的ではないが、例えば、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、窒素(N2 )の少なくとも1種の不活性ガス雰囲気、またはこれらの不活性ガスに水素(H2 )を含む雰囲気、具体的には、アルゴン雰囲気やヘリウム雰囲気などの希ガス雰囲気を始めとして、窒素ガス雰囲気やアルゴンまたはヘリウムと窒素ガスの混合ガス雰囲気などの不活性雰囲気や、水素を含むアルゴン雰囲気、水素を含むヘリウム雰囲気、水素を含む窒素ガス雰囲気などの還元性雰囲気を挙げることができ、また、その還元性の度合いも制限的ではない。
さらに、石英二重管44、冷却二重管46および急冷管48も、プラズマトーチ42と同様に二重管構成となっているが、本発明はこれに限定されず、3以上の多重管構成であってもよく、またそのサイズも特に制限的ではない。
【0038】
製品回収部52は、急冷管48の被覆粒子生成室48aにおいて生成された本発明の被覆粒子10を回収する部分で、急冷管48の外側下部に設けられ、被覆粒子生成室48aに連通する回収室52aと、回収室52aと被覆粒子生成室48aの連通部との間に設けられ、本発明の被覆粒子10をキャリアガスやプラズマ用ガスなどの流動化ガスと分離して、回収するフィルタ52bと、被覆粒子生成室48a内の本発明の被覆粒子10を上記流動化ガスとともに吸引し、フィルタ52bによって分離された上記流動化ガスのみを吸引排出するガス吸引排出口52cとを有する。
【0039】
このガス吸引排出口52cは、製品回収部52の外上側でガス吸引源52dに接続される。
ガス吸引源52dによってガス吸引口52cを経て吸引される流動化ガスは、熱プラズマ43を発生するのに用いられたアルゴンや窒素などのプラズマ用ガスおよびアルゴンなどの粉末原料混合物のキャリアガスからなり、被覆粒子生成室48aから本発明の被覆粒子10とともに製品回収部52に吸引されるが、被覆粒子生成室48aで生成される粒子が、本発明の被覆粒子10の他に完全な被覆粒子でないもの、金属粒子、酸化物粒子等を含んでいたとしても、これらの粒子は、フィルタ52bによって回収室52aに完全に回収され、ガス吸引口52cからは、フィルタ52bによって分離された流動化ガスのみが排出される。
【0040】
粉末原料混合物供給装置50は、図示しないが、混合処理工程26の種々の混合装置によって混合された金属粉末原料22と酸化物粉末原料24との粉末原料混合物をアルゴンなどのキャリアガスに担持させてプラズマトーチ42の熱プラズマ43に供給するためのもので、粉末原料混合物を貯留する貯留室と、この貯留室に貯留された粉末原料混合物をキャリアガスに担持させる混合室と、この混合室にキャリアガスを供給するガス供給源等とを有する。
図示例の酸化物被覆金属微粒子製造装置40は、金属粉末原料22と酸化物粉末原料24との粉末原料混合物を気相化するプラズマトーチ42と気相の粉末原料混合物を急冷して本発明の被覆粒子10を生成する急冷管48との間に中間冷却を行うための第1次および第2次冷却の2段冷却を行う石英二重管44および冷却二重管46を有しているが、本発明はこれに限定されず、これらの中間冷却手段を全く有していなくても良いし、1段の中間冷却を行う手段を有していてもよいし、3段以上の中間冷却を行う手段を有していてもよい。
【0041】
本発明の酸化物被覆金属微粒子製造過程の熱プラズマ処理工程28を実施する酸化物被覆金属微粒子製造装置は基本的に以上のように構成されるが、以下にその作用および本発明の酸化物被覆金属微粒子製造のための熱プラズマ処理工程28について説明する。
【0042】
始めに、混合処理工程26で得られた粉末原料混合物(好ましくは複合化粒子34)が熱プラズマ処理工程28に送られ、図5に示す酸化物被覆金属微粒子製造装置40の粉末原料混合物供給装置50に供給される。この時、酸化物被覆金属微粒子製造装置40においては、プラズマトーチ42の高周波発信用コイル42cには所定の高周波電圧が印加され、ガス噴出口42eからはガス供給源42gより供給されたプラズマ用ガスが噴出しており、プラズマ室42a内には熱プラズマ(プラズマ焔)43が発生し、維持されている。
【0043】
続いて、粉末原料混合物供給装置50から供給口42fを通ってプラズマ室42a内に形成された熱プラズマ43に粉末原料混合物が供給されると、粉末原料混合物中の金属粉末原料22と酸化物粉末原料24とが蒸発して共に気相状態となる。
こうして熱プラズマ43によって気相状態になった金属粉末原料22と酸化物粉末原料24との両原料は、プラズマ室42aから下降して熱プラズマ43から抜け出し、石英二重管44の冷却室44aに入り、第1次冷却され、さらに下降して冷却二重管46の冷却室46aに入り、第2次冷却される。
【0044】
続いて、第2次冷却されて気相状態または一部液相状態になった金属粉末原料22と酸化物粉末原料24との両原料は、さらに下降して急冷管48の被覆粒子生成室48aに入る。被覆粒子生成室48aのサイズは、冷却二重管46の冷却室46aサイズに比べて極めて大きいので、被覆粒子生成室48aに入った気相状態または一部液相状態になった金属粉末原料22と酸化物粉末原料24との両原料は、急冷され、一気に凝固して、金属粉末原料22より微細化された、すなわち金属粉末原料22の粒子の粒径より小さい、例えば十数分の1の粒径の金属微粒子12を芯粒子とし、この芯粒子を酸化物粉末原料24から形成される緻密な、かつ均一な厚みの酸化物の被覆層14で被覆した本発明の被覆粒子10が生成される。
【0045】
こうして、微細化された芯粒子の金属微粒子12の全外周に、金属微粒子12の主成分となる金属元素を主成分として含まない酸化物または複酸化物または酸素酸の塩からなり、さらには必要に応じてこれらに金属微粒子12の主成分となる金属元素の酸化物または複酸化物または酸素酸の塩を含む被覆層14が緻密に被覆された本発明の酸化物被覆金属微粒子10を得ることができる。
なお、熱プラズマ処理工程28において、酸化物被覆金属微粒子製造装置40の粉末原料混合物供給装置50から供給される粉末原料混合物を、上述した混合処理工程26の粒子複合化処理工程32にて製造した複合化粒子34にすることにより、生成される本発明の被覆粒子10の歩留りを著しく向上させることができる。
上述したように、本発明の酸化物被覆金属微粒子の製造方法においては、石英二重管44および冷却二重管46による2段の中間冷却に限定されず、1段の中間冷却でも、3段以上の中間冷却であってもよい。
本発明の酸化物被覆金属微粒子の製造方法は、基本的に以上のように構成される。
【0046】
【実施例】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
(実施例1)
平均粒径5μmのFe粉末原料22と平均粒径1μmのTiO2 粉末原料24とを、図1および図3に示す酸化物被覆金属微粒子製造過程20に従い、図5に示す酸化物被覆金属微粒子製造装置40を用いて、TiO2 で被覆されたFe微粒子10を製造した。
ここで、図3に示す混合処理工程26の予備混合処理工程30では高速撹拌型混合機Hi−X(日清エンジニアリング(株)製)を、粒子複合化処理工程32では粒子複合化装置シータ・コンポーザ((株)徳寿工作所製)を用いた。
また、図5に示す酸化物被覆金属微粒子製造装置40において、プラズマトーチ42の石英管42b、石英二重管44の石英管44b、冷却二重管46の内管46bおよび急冷管48の内管48bの寸法は、それぞれ内径55mmで長さ220mm、内径120mmで長さ250mm、内径120mmで長さ100mmおよび内径400mmで長さ900mmであった。
【0047】
また、TiO2 粉末原料24とFe粉末原料22との供給比率は、TiO2 粉末原料24の混合割合として4.5wt%(8vol%)であった。
また、プラズマトーチ42の高周波発信用コイル42cには、約4MHz、約6kVの高周波電圧を印加し、ガス噴出口42eから噴出されるプラズマ用ガスには、アルゴン100リットル/分、水素10リットル/分の混合ガスを用いた。この時、プラズマトーチ42のプラズマ室42aに形成された熱プラズマ43の雰囲気は約450Torrの減圧雰囲気であった。
また、粉末原料混合物(Fe−TiO2 複合化粒子34)は、プラズマトーチ42の供給口42fからキャリアガスである5リットル/分のアルゴンに担持されて、10g/時の割合で熱プラズマ43中に供給された。
また、急冷管48の被覆粒子生成室48a内の雰囲気は水素を含むアルゴンからなる還元性雰囲気とした。
【0048】
こうして、酸化物被覆金属微粒子10を歩留り良く製造することができた。
こうして製造された酸化物被覆金属微粒子10は、芯粒子となるFe微粒子12の平均粒径が0.3μmであり、酸化物被覆層14の平均厚みが5nmであり、Fe微粒子12の外周面と酸化物被覆層14とは緻密かつ強固(堅固)に接合された酸化物被覆金属微粒子であった。
本実施例で得られた酸化物被覆金属微粒子10のTEM(走査型透過電子顕微鏡)写真を図6に示し、図6のTEM写真の酸化物被覆金属微粒子10のポイントNo.5およびNo.6のEDX(エネルギー分散形X線分析法)分析チャートを図7および図8に示す。
図6から1つの被覆粒子は、核部分(芯粒子)と数nmの被覆層(膜)部分で構成されていることが分かり、図8のNo.6のEDX分析チャートから核部分(芯粒子)は、数十nmのFe粒子であり、TiやOは含まれていないことが分かり、さらに、図7のNo.5のEDX分析チャートには、Fe,Ti,Oが現れていることから、膜部分(被覆層)は、数nmのFeおよびTiの酸化物、すなわち単なるFeの酸化物層ではなく、主として芯粒子の成分Feと被覆酸化物TiO2 とが融合した複酸化物からなる層であるものと結論される。
【0049】
その結果、本実施例によれば、得られた酸化物被覆金属微粒子10は、Fe微粒子12の全外周がFe−Ti−O複酸化物を主として含む被覆層14で緻密かつ均一に被覆され、Fe−Ti−O複酸化物の被覆層14の厚みが極めて均一であることがわかる。
また、本発明によって、図6に示すような本発明の酸化物被覆金属微粒子10を極めて確実かつ容易に、歩留り良く製造することができることがわかる。
【0050】
(実施例2)
平均粒径6μmのNi粉末原料22と平均粒径0.5μmのBaTiO3 粉末原料24とを、実施例1と同様な酸化物被覆金属微粒子製造過程20に従い、実施例1と同様な酸化物被覆金属微粒子製造装置40を用い、実施例1と同様にして、BaTiO3 で被覆されたNi微粒子10を製造した。
ここで、BaTiO3 粉末原料24とNi粉末原料22との供給割合は、BaTiO3 粉末原料24の混合比率として5wt%(7.3vol%)であった。また、本実施例における上記以外の製造条件は、実施例1と全く同様にした。
【0051】
こうして、酸化物被覆金属微粒子10を歩留り良く製造することができた。
こうして製造された酸化物被覆金属微粒子10は、芯粒子となるNi微粒子12の平均粒径が0.3μmであり、酸化物被覆層14の平均厚みが3nmであり、Ni微粒子12の外周面と酸化物被覆層14とは緻密かつ強固(堅固)に接合された酸化物被覆金属微粒子であった。
本実施例で得られた酸化物被覆金属微粒子10のTEM(走査型透過電子顕微鏡)写真を図9に示し、図9のTEM写真の酸化物被覆金属微粒子10のポイントB1およびB6のEDX(エネルギー分散形X線分析法)分析チャートを図10および図11に示す。
図9から1つの被覆粒子は、核部分(芯粒子)と数nmの被覆層(膜)部分で構成されていることが分かり、図10のB1のEDX分析チャートから核部分(芯粒子)は、数百nmのNi粒子であり、BaやTiやOは含まれていないことが分かり、さらに、図11のB6のEDX分析チャートには、Ba,Ti,Oが現れていることから、膜部分(被覆層)は、数nmのBaおよびTiの酸化物、すなわち芯粒子のNi成分を含まない被覆酸化物のみのBaTiO3 の複酸化物層であることが分かる。
【0052】
その結果、本実施例によれば、得られた酸化物被覆金属微粒子10は、Ni微粒子12の全外周がBa−Ti−O複酸化物の被覆層14で緻密かつ均一に被覆され、Ba−Ti−O複酸化物の被覆層14の厚みが極めて均一であることがわかる。
また、本発明によって、図9に示すような本発明の酸化物被覆金属微粒子10を極めて確実かつ容易に、歩留り良く製造することができることがわかる。
【0053】
以上、本発明の酸化物被覆金属微粒子の製造方法について詳細に説明したが、本発明は以上の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0054】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の酸化物被覆金属微粒子の製造方法によれば、芯粒子となる金属微粒子にこの金属微粒子を構成する主成分となる金属元素を主成分として含まない酸化物(普通の酸化物または複酸化物または酸素酸の塩を含む)からなる酸化物被覆層が堅固に、好ましくは全表面を完全に被覆された新規な酸化物被覆金属微粒子を提供することができるという効果を奏する。その結果、本発明の酸化物被覆金属微粒子の製造方法によって製造された酸化物被覆金属微粒子は、人工骨や化粧品添加物あるいは触媒の用途等のように金属の持つ機能(強度、磁性等)と酸化物の持つ機能(環境適正、光活性等)との融合や、燃料電池等の電極材料への用途等のように金属と酸化物との密着性等が必要となる分野への用途を開くことができるという効果も奏する。
【0055】
また、本発明の酸化物被覆金属微粒子の製造方法によれば、このような多大な効果を持つ新規な酸化物被覆金属微粒子を確実かつ容易に、好ましくは歩留り良く製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の酸化物被覆金属微粒子の一例の構成を示す模式的断面図である。
【図2】 本発明の酸化物被覆金属微粒子の製造方法の一例を示すブロック図である。
【図3】 図2に示す酸化物被覆金属微粒子の製造方法の混合処理ブロックの一例を示すブロック図である。
【図4】 (a)、(b)および(c)は、それぞれ図3に示す混合処理ブロックで実施される粒子が複合化される状態を説明する説明図である。
【図5】 図2に示す本発明の酸化物被覆金属微粒子の製造方法の熱プラズマ処理を実施する酸化物被覆金属微粒子製造装置の一実施例の線図的断面図である。
【図6】 本発明の実施例1で得られた酸化物被覆金属微粒子の一例のTEM写真である。
【図7】 図6に示すTEM写真の酸化物被覆金属微粒子のポイントNo.5のEDX分析チャートである。
【図8】 図6に示すTEM写真の酸化物被覆金属微粒子のポイントNo.6のEDX分析チャートである。
【図9】 本発明の実施例2で得られた酸化物被覆金属微粒子の一例のTEM写真である。
【図10】 図9に示すTEM写真の酸化物被覆金属微粒子のポイントB1のEDX分析チャートである。
【図11】 図9に示すTEM写真の酸化物被覆金属微粒子のポイントB6のEDX分析チャートである。
【符号の説明】
10 酸化物被覆金属微粒子
12 金属微粒子
14 酸化物被覆層
20 酸化物被覆金属微粒子製造過程
22 金属粉末原料
24 酸化物粉末原料
26 混合処理工程
28 熱プラズマ処理工程
30 予備混合処理工程
32 粒子複合化処理工程
34,34a,34b 複合化粒子
40 酸化物被覆金属微粒子製造装置
42 プラズマトーチ
42a プラズマ室
42b 石英管
42c 高周波発信用コイル42c
42d 冷却用外套管
42e ガス噴出口
42f 供給口
42g ガス供給源
43 熱プラズマ(プラズマ焔)
44 石英二重管
44a 冷却室
44b 石英管
44c 冷却用外套管
46 冷却二重管
46a 冷却室
46b 内管
46c 冷却用外套管
48 急冷管
48a 被覆粒子生成室
48b 内管
48c 冷却用外套管
50 粉末原料混合物供給装置
52 製品回収部
52a 回収室
52b フィルタ
52c ガス吸引排出口
52d ガス吸引源

Claims (6)

  1. 金属粉末原料と、この金属粉末原料の主成分となる金属元素を主成分として含まない酸化物または複酸化物または酸素酸の塩の少なくともいずれか1つからなる被覆層粉末原料とを混合して、前記金属粉末原料の個々の粒子の凝集、および前記被覆層粉末原料の個々の粒子の凝集、をそれぞれ分散し、分散化された前記金属粉末原料の個々の粒子それぞれの外周に、前記被覆層粉末原料の複数の粒子が分散付着した複合化粒子の集合体である原料混合物を得て、
    前記金属粉末原料および前記被覆層粉末原料の沸点よりも高い温度の雰囲気に、前記得られた原料混合物を供給して、前記原料混合物中の前記金属粉末原料と前記被覆層粉末原料とが共に気相状態となった混合物にした後、
    この気相状態の混合物を急冷して、
    前記金属粉末原料より微細化された金属微粒子を芯粒子とし、前記酸化物または複酸化物または酸素酸の塩、もしくは前記酸化物または複酸化物または酸素酸の塩と前記金属の酸化物との複酸化物または複塩からなる、前記芯粒子を被覆する被覆層を形成する酸化物被覆金属微粒子を製造することを特徴とする酸化物被覆金属微粒子の製造方法。
  2. 前記芯粒子の平均粒径が0.01μm〜1μmであり、前記被覆層の平均厚みが1nm〜10nmである請求項1記載の酸化物被覆金属微粒子の製造方法。
  3. 前記金属微粒子を構成する主成分となる金属元素は、Al,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Mn,Cu,Zn,Zr,Ru,Pd,Ag,In,Pt,AuおよびSmよりなる群から選ばれる少なくとも1種であり、前記金属微粒子を被覆する酸化物または複酸化物または酸素酸の塩が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化銀、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化サマリウム、酸化ベリリウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、アルミン酸リチウム、バナジウム酸イットリウム、リン酸カルシウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸チタン鉛、酸化チタン鉄、酸化チタンコバルトおよび錫酸バリウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の酸化物被覆金属微粒子の製造方法。
  4. 前記金属粉末原料および前記被覆層粉末原料の沸点よりも高い前記雰囲気は、熱プラズマ雰囲気である請求項1〜3のいずれかに記載の酸化物被覆金属微粒子の製造方法。
  5. 前記金属粉末原料の平均粒径は、0.5μm〜20μmであり、前記被覆層粉末原料の平均粒径は、0.1μm〜1μmである請求項1〜4のいずれかに記載の酸化物被覆金属微粒子の製造方法。
  6. 前記金属粉末原料と前記被覆層粉末原料との混合は、高速剪断・衝撃型混合機または摩砕型混合機によって行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の酸化物被覆金属微粒子の製造方法。
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