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JP4095392B2 - バイオ燃料の製造方法 - Google Patents

バイオ燃料の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はバイオ燃料の製造方法に関するもので、より詳細には廃白土中の油脂を利用したバイオ燃料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
油脂を利用した環境に優しい燃料が、バイオ燃料、バイオディーゼルなどの名称で知られている。
このバイオディーゼルの典型的な例は、使用済みの天ぷら油に苛性ソーダ及びメチルアルコールを作用させてメチルエステルとしたものである。
【0003】
植物油原油にアルカリ水溶液を加えて加熱し、攪拌後水洗して脱酸処理することにより、ディーゼルエンジン用として使用可能な燃料油を低コスト及び高収率で得ることが記載されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭58−138796号公報(特許請求の範囲)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術に見られるように、油脂類をアルカリで鹸化し、次いで酸で中和して脂肪酸を遊離させる方法では、工程数が多く、用いたアルカリや酸が反応系に残留するため、これを除去するための煩雑な操作が必要となるという問題がある。
【0006】
一方、油脂精製の分野においては、多量の油脂を包蔵した廃白土が副生しており、その有効な処理が求められているが、ポルトランドセメント製造時の混和焼成処理が行われているにすぎない。また、廃白土に含有されている油分をヘキサン等の有機溶媒で抽出除去することも試みられているが、白土の細孔内に存在する油分を除去することは困難であり、未だ有効な処理手段は見出されるに至っていない。
【0007】
本発明の目的は、廃白土を原料として、環境に優しいバイオ燃料を、少ない工程数でしかも面倒な操作を必要とすることなく、製造する方法を提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、有機溶媒中で廃白土中の油脂に酵素を作用させて脂肪酸に分解させ、生成した脂肪酸に炭素数が7以下の低級アルコールを反応させてエステルとすることを特徴とするバイオ燃料の製造方法が提供される。
本発明の製造方法においては、
1. 油脂が植物油であること、
2. 酵素がリパーゼであること、
3. 脂肪酸と低級アルコールとの反応を油脂100重量部当たり25乃至250重量部の水または有機溶媒の存在下に行うこと、
4. 有機溶媒としてヘキサン又は石油エーテルを使用し、且つ低級アルコールを、脂肪酸:低級アルコール(モル比)が1:3乃至1:4となる量で使用すること、
5. 低級アルコールとしてメチルアルコールを使用すること、
6. 脂肪酸と低級アルコールとの反応を20乃至50℃の温度で行うこと、
7. 脂肪酸を分離した後の廃白土残渣に含まれるグリセリドを抽出し、これを脂肪酸への分解工程またはエステル化工程に循環すること、
が好ましい。
【0009】
【発明の実施形態】
[作用]
既に指摘したとおり、油脂類の脱色や精製には、酸性白土或いはこれを化学処理した活性白土が広く使用されているが、この処理に際して廃白土が発生し、その処理が問題となっている。即ち、この廃白土は、分離困難な油脂類を20乃至60重量%程度含有しており、しかもこの廃白土は粘着性のペーストであるので、取り扱いの著しく困難なものである。しかも、この廃白土は、年間5万トンもの多量に達するものであるが、本発明によれば、この廃白土をバイオ燃料の製造に利用することにより、廃白土中の植物油を資源として有効に利用し、更に植物油が取り除かれた白土を再利用することが可能となり、資源の有効再利用を計ることにより自然環境の汚染を有効に防止することが可能となる。
【0010】
本発明によれば、廃白土中の油脂に酵素を作用させて脂肪酸に分解させ、生成した脂肪酸に低級アルコールを反応させてエステルとする。即ち、廃白土中の油脂に酵素を作用させることにより、油脂の脂肪酸への分解が有効に行われるのみならず、酵素反応では比較的低温で反応が進行すると共に、反応の制御が容易であり、しかも分解により生成する脂肪酸を低級アルコールとの反応によりエステルとすることにより、その分離回収も、面倒な操作を必要とせずに至って容易に行うことができる。
【0011】
[廃白土]
本発明の方法に用いる廃白土は、脱色乃至精製用白土を油脂類の脱色乃至精製に用い、この工程で分離副生するものであり、油分を包蔵しており、これを廃棄することは環境汚染の点から許されず、その有効利用が熱望されていたものである。
【0012】
即ち、脱色乃至精製すべき油脂に、酸性白土のごときモンモリロナイト族粘土鉱物や、これらの粘土鉱物を酸処理及び/又はアルカリ処理して得られる活性白土を、粉末の状態で脱色剤乃至精製剤として添加し、両者を均一に攪拌することにより、油脂中に含有される着色成分や不純物成分を白土粒子中に吸着させる。脱色乃至精製処理後分離される白土中には、用いた白土の吸油量に相当する量の油脂が保持されている。
【0013】
油脂の脱色処理は、それ自体公知の条件であり、例えば油脂当たり重量基準で0.1乃至5%の白土類を脱色乃至精製剤として添加し、90乃至150℃の温度で5乃至30分間、両者の組成物を撹拌することにより、脱色乃至精製処理を完了することができる。
【0014】
脱色乃至精製処理を終えた混合物は、これを任意の濾過機、例えばフィルタープレス、ベルトフィルター、オリバーフィルター、アメリカンフィルター、遠心濾過機等の減圧乃至は加圧式濾過機に供給して、精製油脂と使用済みの脱色乃至精製剤である所謂廃白土が得られる。この廃白土には、精製する原料油の種類にもよるが、粒子に保持されている油分を、一般に20乃至60重量%程含有している。
【0015】
本発明に用いる廃白土は、酸性白土(モンモリロナイト)、ベントナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト等のスメクタイト粘土鉱物やアタパルジャイトなどの鎖状粘土鉱物、或いはこれらの酸処理物を脱色乃至精製用白土として用いたものである。
これらの粘土鉱物の内でも、モンモリロナイト族粘土鉱物やその酸処理物が油脂類の脱色、精製に広く使用されているものである。
【0016】
酸性白土のようなモンモリロナイト族粘土鉱物は、二つのSiOの四面体層が AlO八面体層を間に挟んでサンドイッチされた三層構造を基本単位としており、この基本単位の三層構造がさらにC軸方向に多数積層されて層状結晶構造を構成しているアルミノケイ酸塩である。この層状結晶構造はモンモリロナイト族粘土鉱物類に共通している。
【0017】
モンモリロナイトの内でも本邦において広く産出する酸性白土は、風化により、モンモリロナイトの基本単位である三層構造中のAlO八面体層のAl原子の一部がマグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属で置換され、その原子価を補うように水素イオンが結合している。したがって、酸性白土を食塩水溶液中に懸濁させてそのpHを測定すると、前記水素イオンがナトリウム(Na)イオンで置換され、酸性を示す。一方、ベントナイトは交換性陽イオンが大部分ナトリウム(Na)であるため、pHも中性から微アルカリ性を示し、水膨潤性も大きいのに対して、酸性白土ではナトリウムイオンがアルカリ土類金属で置換され、アルカリ金属成分が少なく、しかも水膨潤性も低下しており、またケイ酸分の含有量も高いため、吸着性の点で極めて有利である。かくして、モンモリロナイトとしては、本邦で産出する任意の酸性白土が広く使用されており、また、所謂サブベントナイト(Ca型ベントナイト)と呼ばれるモンモリロナイト族粘土鉱物も使用されている。
【0018】
下記表1に酸性白土(100℃乾燥品)の一般的化学組成の一例を示す。
【表1】
Figure 0004095392
【0019】
酸性白土を用いるに際して、その中に含有される岩石類のクリストバライト、石英、長石等は、比重差を利用した分離方法(水簸や風簸等の分級手段)で容易に分離することができる。また、この中で結晶性ケイ酸のクリストバライトはアルカリと容易に反応してケイ酸アルカリに転化できるので、この方法でも除去することができる。これらの方法によって、層状結晶構造物の純度を向上させることができる。
【0020】
一方、酸性白土の酸処理物は、一般に油脂類等の精製剤である活性白土として知られている。この酸処理物は、酸性白土を硫酸や塩酸等の鉱酸溶液で処理して、含有する塩基性成分の一部を溶出せしめ、洗浄することによって容易に調製される。この酸処理によって、本来酸性白土が持っていた層状結晶構造の一部は破壊されるが、ケイ酸 (SiO)の含有率は増加し、このことによって、比表面積は増大し、吸着能等の物性は向上する。酸性白土の酸処理物、一般に市販されている活性白土ならびにその製造中間品は、優れた特性を有する精製剤となる。
【0021】
この酸処理物の化学組成は、原料酸性白土の種類や酸処理条件等によっても相違するが、一般に下記表2に示す組成を有する。
【表2】
Figure 0004095392
【0022】
また、アタパルジャイトなどの鎖状粘土鉱物は、タルク(滑石)レンガを交互に積み重ねたような三次元の鎖状構造を有しており、この鎖状の隙間に形成された空孔は表面積が大きい。従って、このような鎖状粘土鉱物も吸着作用や吸収作用を示し、油脂を包蔵し得るものであり、本発明において使用可能である。
上述した粘土鉱物及びその酸処理物は、植物油を吸蔵した所謂廃白土の形で本発明に用いる。
【0023】
本発明で、廃白土中に含有される植物油は、天然の植物界に広く存在し、脂肪酸とグリセリンとのエステルを主成分とするものであり、例えばサフラワー油、大豆油、菜種油、パーム油、パーム核油、綿実油、ヤシ油、米糠油、ゴマ油、ヒマシ油、亜麻仁油、オリーブ油、桐油、椿油、落花生油、カポック油、カカオ油、木蝋、ヒマワリ油、コーン油などが挙げられる。
この植物油は、少なくとも一部が不飽和である脂肪酸とグリセリンとのエステルを主体とするものが好ましい。
【0024】
[酵素]
本発明において、酵素としては、油脂を加水分解し、脂肪酸を生成するものであれば、何れをも用いることができ、一般にはリパーゼが用いられる。リパーゼとしては、その由来等は特に限定されず、微生物由来のリパーゼ、植物由来のリパーゼ、動物膵臓由来のリパーゼ等が使用される。また、用いるリパーゼは適切な担体に固定化されたものであってもよい。
【0025】
リパーゼの具体的な例として、
Candida cylindracea由来のリパーゼOF(名糖産業)、
Candida rugosa由来のリパーゼTypeVII(シグマ)、
Rhizopus arrhizus由来のリパーゼType11(シグマ)、
Rhizopus oryzae由来のリパーゼF−AP15(天野エンザイム)、
Rhizopus japonicus NR400由来のリパーゼA−10FG(ナガセ)、
Aspergillus niger由来のSumizymeNLS(新日本化学)、
Phycomyces nitens NRRL 2444由来のリパーゼPN(和光)、
Porcine pancreas由来のリパーゼTypeII(シグマ)、
Pseudomonas cepacia由来のリパーゼ(シグマ)、
Mucor javanicus由来のリパーゼ(シグマ)、
アルカリリパーゼ(NOVO)
などを挙げることができるが、これらは説明のための例示であり、如何なる意味でもこれに限定されない。
【0026】
[酵素反応及びエステル化]
本発明によれば、廃白土中の油脂に酵素を作用させて脂肪酸に分解させ、生成した脂肪酸に低級アルコールを反応させてエステルとする。油脂の酵素反応は、それ自体公知の条件下に行うことができる。この反応は、有機溶媒中で行われ、有機溶媒としては、ヘキサン、石油エーテル、アセトン、ヘプタンが使用でき、特にヘキサン、石油エーテルが好ましい。
【0027】
酵素の使用量は、廃白土中に含有される油脂量に応じて、従来酵素分解に用いられる量であってよいが、廃白土中の油脂グラム当たり30乃至85IU、特に50乃至65IUの量で用いるのがよい。
【0028】
反応系に存在させる有機溶媒の量は、廃白土中の油脂100重量部当り、25乃至250重量部、特に80乃至210重量部の量で使用するのが好適である。油脂の脂肪酸への分解に際して、有機溶媒量が上記範囲よりも多い場合にも、また少ない場合にも、脂肪酸の収量が減少する傾向がある。一般に、有機溶媒量は、廃白土が流動化する量で充分であり、過剰な有機溶媒があると、収率が低下する傾向がある。このため、有機溶媒は、有機溶媒量/廃白土比(重量比)が0.45乃至0.82、特に0.55乃至0.70の範囲となるような量で使用することが最適である。
【0029】
脂肪酸への分解反応は、酵素が活性を保つ温度範囲で行えばよく、例えば一般に20乃至50℃、特に30乃至40℃の温度で行われる。酵素反応の時間は、特に限定されず、所望の分解率が達成される時間でよく、例えば40乃至72時間程度でよい。
【0030】
脂肪酸のエステル化に用いる低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、ヘキシルアルコール、へプチルアルコール、オクチルアルコール等の炭素数8以下のアルコールを挙げることができるが、特に炭素数7以下が好ましく、中でも反応性及びコストの点でメタノールが好ましい。
低級アルコールは、脂肪酸に対して当量以上の量で用いるのがよく、特に脂肪酸:アルコール(モル比)が1:3乃至1:6、好ましくは1:3乃至1:4の量がよい。(図6参照)
【0031】
脂肪酸のエステル化も、前述した酵素による油脂の脂肪酸への分解と同様、有機溶媒の存在下で行なわれる。有機溶媒中でエステル化を行なうことにより、水中で行なう場合に比してエステルの収量を増大させることができる。エステル化に際して使用する有機溶媒の量も、油脂の脂肪酸への分解工程と同様、油脂100重量部当り、25乃至250重量部、特に80乃至210重量部の量で使用することが一層好適である。脂肪酸のエステル化に際して、有機溶媒の量が上記範囲よりも多い場合にも、また少ない場合にも、エステルの収量が減少する傾向がある。
【0032】
脂肪酸のエステル化反応は、エステル化反応温度範囲で行えばよく、例えば一般に20乃至50℃、特に30乃至40℃の温度で行われる。エステル化反応の時間は、特に限定されず、所望のエステルの収量が達成される時間でよく、例えば48乃至72時間程度でよい。
【0033】
本発明の酵素反応とエステル化反応とは、ワンポット反応として、同一の反応系で継続的に実施することができ、また二段反応で実施することもできる。即ち、ワンポット反応では、反応系に、廃白土、有機溶媒、酵素及び低級アルコールを仕込み、反応系から生成するエステルを回収する。また、二段反応では、反応系に、廃白土と酵素、有機溶媒を仕込み、次いで反応系に低級アルコールを仕込んで、エステル化反応を行い、反応系から生成するエステルを回収する。
【0035】
生成した脂肪酸のエステルは、蒸留、抽出、油水分離等のそれ自体公知の手段で分離回収することができる。
脂肪酸を分離した後の廃白土残渣には未反応のグリセリド或いは廃白土残渣に酵素が残留する場合がある。この残渣に含まれるグリセリドを抽出し、これを脂肪酸への分解工程またはエステル化工程に循環することもできる。また、必要に応じて廃白土残渣に含まれる酵素は再利用することもできる。
また、油脂含有廃白土に更に油脂又は廃食用油を加え、それに酵素を作用させて脂肪酸に分解させ、生成した脂肪酸と低級アルコールとを反応させてエステルとすることもできるし、更には、廃白土中の油脂に、油脂を脂肪酸に分解させる酵素を生成させる菌を作用させて脂肪酸に分解させ、生成した脂肪酸と低級アルコールとを反応させてエステルとすることも可能である。
【0036】
【実施例】
本発明を次の例で説明する。
(測定方法)
(1)廃白土中の油量測定方法
5リットルフラスコを用い、廃白土とn-ヘキサンを重量比で1:1の割合で混合し、30℃で10分間抽出を行った。得られたヘキサン相を分離し、真空ロータリエバポレーターを用いて油の抽出を行った。この操作を2回行い、得られた油分を回収した後、60℃の乾燥機で恒量になるまで乾燥させ、その重量を測定して油量とした。
【0037】
(2)ケン化価
廃白土から抽出した油1.5gを250mlのフラスコに採取し、0.5-N濃度の水酸化カリウム25mlを加えて混合した後、一定の攪拌速度で37℃に30分間放置した。その後常温まで下げ、1%のフェノールフタレインを滴下し、0.5-N濃度の塩酸溶液で滴定し、ケン化価を求めた。
【0038】
(3)脂肪酸濃度の測定方法
廃白土から抽出した油200mgを採取し2%塩酸−メタノール溶液6mlに溶解し、60〜80℃の水槽に10分間放置した。次に塩酸:メタノールを3:2の比率で混合して作った36%メタノール溶液10mlを加え、10分間沸騰させた後、冷却し、メチルエステルを得る。このメチルエステルをアセトニトリル1mlに溶解させ、4μlをガスクロマトグラフィに注入し分析した。また、ペンタデカノイン酸を内部標準として用いた。
ガスクロマトグラフィは、島津製GC‐14Bを用い、5%Advans DS on 80/100 meshes Chromosorb Wを充填した3mm×2mmのガラスカラム、水素イオン化検出器によって構成されている。カラム、注入部及びオブンの温度は、190、240、250℃に制御されている。脂肪酸の同定はシグマ社から購入した市販の標準脂肪酸を用いて行った。
【0039】
(酵素溶液の調製)
Rhizopus oryzae由来のリパーゼパウダー(F-AP15, 天野製薬製)5gを蒸留水10mlに30分間攪拌しながら溶解し、3,500rpmで10分間遠心分離を行った後、上澄み酵素溶液(試料R−1)とした。酵素の活性(IU/L)は、大日本製薬のリパーゼキットSを用いて分析を行った。
【0040】
尚、以下の実施例1〜20において、実施例1〜4が反応を水中で行なった参考例であり、実施例5〜20が反応を有機溶媒中で行った例である。
(実施例1)
100mlのフラスコに11.0gの廃白土(菜種油脱色処理後の活性白土;油分33wt%、油分のケン化価181)、上記試料R−1(酵素の活性201 IU/ml)の1ml溶液、1.25mlの緩衝液(pH=7.0)及び4.75ミリモル濃度のメタノールを混合し、35℃、175rpmで72時間反応を行った。反応後200μlを採取し1.0mlのヘキサンを加え、激しく攪拌した後、10,000rpmで5分間遠心分離し、ヘキサン層を分離した。次にアセトニトリル1.0mlに溶解させメチルエステルをガスクロマトグラフィで分析した。その結果を表3、図1(図中の●)に示す。
【0041】
(比較例1)
菜種油(ナカライテスク製試薬、ケン化価188)3gを3.0mlのメタノール‐塩酸及び1.0mlのメタノールを蓋付きの試験管に入れ混合し35℃で72時間加熱した。加熱後常温に冷却し、その後200μlを採取し、1.0mlのヘキサンを加え、はげしく攪拌した後遠心分離し、ヘキサン層を蒸発させ、メチルエステルをガスクロマトグラフィで分析した。その結果を表3、図1(図中の○)に示す。
【0042】
【表3】
Figure 0004095392
【0043】
(実施例2)
100mlのフラスコに11.0gの廃白土(大豆油脱色処理後の活性白土;油分33wt%、油分のケン化価188)、試料R−1(酵素の活性201 IU/ml)の1ml溶液、1.25mlの緩衝液(pH=7.0)及び4.75ミリモル濃度のメタノールを混合し、35℃、175rpmで72時間反応を行った。反応後200μlを採取し1.0mlのヘキサンを加え、激しく攪拌した後、10,000rpmで5分間遠心分離し、ヘキサン層を分離した。次にアセトニトリル1.0mlに溶解させメチルエステルをガスクロマトグラフィで分析した。その結果を表4、図2(図中の●)に示す。
【0044】
(比較例2)
大豆油(和光純薬製試薬、ケン化価193)3gを3.0mlのメタノール‐塩酸及び1.0mlのメタノールを蓋付きの試験管に入れ混合し35℃で72時間加熱した。加熱後常温に冷却し、その後200μlを採取し、1.0mlのヘキサンを加え、はげしく攪拌した後遠心分離し、ヘキサン層を蒸発させ、メチルエステルをガスクロマトグラフィで分析した。その結果を表4、図2(図中の○)に示す。
【0045】
【表4】
Figure 0004095392
【0046】
(実施例3)
100mlのフラスコに11.0gの廃白土(パーム油脱色処理後の活性白土;油分33wt%、油分のケン化価176)、試料R−1(酵素の活性201 IU/ml)の1ml溶液、1.25mlの緩衝液(pH=7.0)及び4.75ミリモル濃度のメタノールを混合し、35℃、175rpmで72時間反応を行った。反応後200μlを採取し1.0mlのヘキサンを加え、激しく攪拌した後、10,000rpmで5分間遠心分離し、ヘキサン層を分離した。次にアセトニトリル1.0mlに溶解させメチルエステルをガスクロマトグラフィで分析した。その結果を表5、図3(図中の●)に示す。
【0047】
(比較例3)
パーム油(Spectrum Chemical Mfg. Corp.製試薬、ケン化価180)3gを3.0mlのメタノール‐塩酸及び1.0mlのメタノールを蓋付きの試験管に入れ混合し35℃で72時間加熱した。加熱後常温に冷却し、その後200μlを採取し、1.0mlのヘキサンを加え、はげしく攪拌した後遠心分離し、ヘキサン層を蒸発させ、メチルエステルをガスクロマトグラフィで分析した。その結果を表5、図3(図中の○)に示す。
【0048】
【表5】
Figure 0004095392
【0049】
(実施例4)
実施例1で用いた廃白土5g、Candida cylindracea由来のリパーゼOF(粉末、名糖産業)(廃白土1gあたり1,000Uになるように調製した量)、リン酸緩衝液(pH=7.0)5ml、メタノール274μlを200mlのフラスコに入れ、ゴム栓でふたをした。(メタノールは、油のケン価から、油:メタノールが1mol:1molになる量を計算して求めた。)次に、37℃、170rpmのロータリー振とう器で48時間又は72時間(24時間と48時間にメタノールを、それぞれ274μl添加)まで振とうを行った。反応終了後、フラスコに蒸留水10mlを添加し、フラスコ内を洗浄しながら、ファルコンチューブに移した。その後、ファルコンチューブを15分間、10,000rpmで遠心し上澄みを取り、上澄みにヘキサンを加え、生産されたメチルエステルを溶かした。次に、ヘキサンを完全にとばし、ガスクロマトグラフィで分析した。その結果を表6、図4(○:72時間反応、●:48時間反応)に示す。
【0050】
【表6】
Figure 0004095392
尚、生成メチルエステル量(g)と変換率(%)の数値は、括弧なしが48時間反応の場合で、括弧中の数値は72時間反応の値。
【0051】
(実施例5)
実施例3で用いた廃白土10g、Candida cylindracea由来のリパーゼOF(粉末、名糖産業)(廃白土1gあたり238Uになるように調製した量)、ヘキサン10ml及びメタノール274μlを500mlのフラスコに入れ、ゴム栓でふたをした。(メタノールは、油のケン価から、油:メタノールが1mol:4molになる量を計算して求めた。)次に、37℃、120rpmの往復振とう器で0.5時間、2時間、4時間、6時間、8時間まで振とうを行った。反応終了後、反応液をファルコンチューブに移した。その後、ファルコンチューブを15分間、10,000rpmで遠心し上澄みを取り、上澄みにヘキサンを加え、生産されたメチルエステルを溶かした。次に、ヘキサンを完全にとばしてから、得られたメチルエステルにクロロホルムを加え溶解しガスクロマトグラフィで分析した。その結果を表7、図5に示す。
【0052】
(実施例6)
実施例3で用いた廃白土10g、Candida cylindracea由来のリパーゼOF(粉末、名糖産業)(廃白土1gあたり238Uになるように調製した量)、ヘキサン10ml及び油分の4モル倍量のエタノールを500mlのフラスコに入れ、ゴム栓でふたをした。(エタノール量は、油のケン価から計算して求めた。)
次に、37℃、120rpmの往復振とう器で0.5時間、2時間、4時間、6時間、8時間まで振とうを行った。反応終了後、反応液をファルコンチューブに移した。その後、ファルコンチューブを15分間、10,000rpmで遠心し上澄みを取り、上澄みにヘキサンを加え、生産されたエチルエステルを溶かした。次に、ヘキサンを完全にとばしてから、得られたエチルエステルにクロロホルムを加え溶解しガスクロマトグラフィで分析した。その結果を表7、図5に示す。
【0053】
(実施例7)
実施例3で用いた廃白土10g、Candida cylindracea由来のリパーゼOF(粉末、名糖産業)(廃白土1gあたり238Uになるように調製した量)、ヘキサン10ml及び油分の4モル倍量のブタノールを500mlのフラスコに入れ、ゴム栓でふたをした。(ブタノール量は、油のケン価から計算して求めた。)
次に、37℃、120rpmの往復振とう器で0.5時間、2時間、4時間、6時間、8時間まで振とうを行った。反応終了後、反応液をファルコンチューブに移した。その後、ファルコンチューブを15分間、10,000rpmで遠心し上澄みを取り、上澄みにヘキサンを加え、生産されたブチルエステルを溶かした。次に、ヘキサンを完全にとばしてから、得られたブチルエステルにクロロホルムを加え溶解しガスクロマトグラフィで分析した。その結果を表7、図5に示す。
【0054】
(実施例8)
実施例3で用いた廃白土10g、Candida cylindracea由来のリパーゼOF(粉末、名糖産業)(廃白土1gあたり238Uになるように調製した量)、ヘキサン10ml及び油分の4モル倍量のn−プロピルアルコールを500mlのフラスコに入れ、ゴム栓でふたをした。(n−プロピルアルコール量は、油のケン価から計算して求めた。)
次に、37℃、120rpmの往復振とう器で0.5時間、2時間、4時間、6時間、8時間まで振とうを行った。反応終了後、反応液をファルコンチューブに移した。その後、ファルコンチューブを15分間、10,000rpmで遠心し上澄みを取り、上澄みにヘキサンを加え、生産されたn−プロピルエステルを溶かした。次に、ヘキサンを完全にとばしてから、得られたn−プロピルエステルにクロロホルムを加え溶解しガスクロマトグラフィで分析した。その結果を表7、図5に示す。
【0055】
(実施例9)
実施例3で用いた廃白土10g、Candida cylindracea由来のリパーゼOF(粉末、名糖産業)(廃白土1gあたり1,000Uになるように調製した量)、ヘキサン10ml及び油分の4モル倍量のイソプロピルアルコールを500mlのフラスコに入れ、ゴム栓でふたをした。(イソプロピルアルコールは、油のケン価から、計算して求めた。)
次に、37℃、120rpmの往復振とう器で0.5時間、2時間、4時間、6時間、8時間まで振とうを行った。反応終了後、反応液をファルコンチューブに移した。その後、ファルコンチューブを15分間、10,000rpmで遠心し上澄みを取り、上澄みにヘキサンを加え、生産されたイソプロピルエステルを溶かした。次に、ヘキサンを完全にとばしてから、得られたイソプロピルエステルにクロロホルムを加え溶解しガスクロマトグラフィで分析した。その結果を表7、図5に示す。
【0056】
(実施例10)
実施例3で用いた廃白土10g、Candida cylindracea由来のリパーゼOF(粉末、名糖産業)(廃白土1gあたり238Uになるように調製した量)、ヘキサン10ml及び油分の4モル倍量のイソアミルアルコールを500mlのフラスコに入れ、ゴム栓でふたをした。(イソアミルアルコール量は、油のケン価から計算して求めた。)次に、37℃、120rpmの往復振とう器で0.5時間、2時間、4時間、6時間、8時間まで振とうを行った。反応終了後、反応液をファルコンチューブに移した。その後、ファルコンチューブを15分間、10,000rpmで遠心し上澄みを取り、上澄みにヘキサンを加え、生産されたイソアミルエステルを溶かした。次に、ヘキサンを完全にとばしてから、得られたイソアミルエステルにクロロホルムを加え溶解しガスクロマトグラフィで分析した。その結果を表7、図5に示す。
【0057】
(実施例11)
実施例3で用いた廃白土10g、Candida cylindracea由来のリパーゼOF(粉末、名糖産業)(廃白土1gあたり238Uになるように調製した量)、ヘキサン10ml及び油分の4モル倍量のn−オクチルアルコールを500mlのフラスコに入れ、ゴム栓でふたをした。(n−オクチルアルコール量は、油のケン価から計算して求めた。)
次に、37℃、120rpmの往復振とう器で0.5時間、2時間、4時間、6時間、8時間まで振とうを行った。反応終了後、反応液をファルコンチューブに移した。その後、ファルコンチューブを15分間、10,000rpmで遠心し上澄みを取り、上澄みにヘキサンを加え、生産されたn−オクチルエステルを溶かした。次に、ヘキサンを完全にとばしてから、得られたn−オクチルエステルにクロロホルムを加え溶解しガスクロマトグラフィで分析した。その結果を表7、図5に示す。
【0058】
(実施例12〜15)
実施例3で用いた廃白土10g、Candida cylindracea由来のリパーゼOF(粉末、名糖産業)(廃白土1gあたり238Uになるように調製した量)、ヘキサン10ml及びメタノールを200mlのフラスコに入れ、ゴム栓でふたをした。(メタノールは、油のケン価から、油:メタノールが1mol:3mol、1mol:4mol、1mol:5mol、1mol:6mol、になる量を計算して求めた。)次に、37℃、120rpmの往復振とう器で24時間まで振とうを行った。反応終了後、反応液をファルコンチューブに移した。その後、ファルコンチューブを15分間、10,000rpmで遠心し上澄みを取り、上澄みにヘキサンを加え、生産されたメチルエステルを溶かした。次に、ヘキサンを完全にとばしてから、得られたメチルエステルにクロロホルムを加え溶解しガスクロマトグラフィで分析した。その結果を表8に示す。尚、表8中、変換率(%)は最大値で示した。
【0059】
(実施例16〜18)
実施例3で用いた廃白土10g、Candida cylindracea由来のリパーゼOF(粉末、名糖産業)(廃白土1gあたり238Uになるように調製した量)と、溶媒としてヘキサン、石油エーテル、ジエチルエーテル各9ml及びメタノール274μlを200mlのフラスコに入れ、ゴム栓でふたをした。次に、37℃、120rpmの往復振とう器で2時間、4時間、6時間、8時間まで振とうを行った。反応終了後、反応液をファルコンチューブに移した。その後、ファルコンチューブを15分間、10,000rpmで遠心し上澄みを取り、上澄みにヘキサンを加え、生産されたメチルエステルを溶かした。次に、ヘキサンを完全にとばしてから、得られたメチルエステルにクロロホルムを加え溶解しガスクロマトグラフィで分析した。その結果を表9、図6に示す。
【0060】
(実施例19)
実施例3で用いた廃白土1.0kg、Candida cylindracea由来のリパーゼOF(粉末、名糖産業)(廃白土1gあたり238Uになるように調製した量)、ヘキサン600ml及び油分の4モル倍量のブタノールを5Lのフラスコに入れ、ゴム栓でふたをした。(ブタノール量は、油のケン価から計算して求めた。)
次に、37℃、170rpmのロータリー振とう器で4時間、8時間、24時間まで振とうを行った。反応終了後、反応液をファルコンチューブに移した。その後、ファルコンチューブを15分間、10,000rpmで遠心し上澄みを取り、上澄みにヘキサンを加え、生産されたブチルエステルを溶かした。次に、ヘキサンを完全にとばしてから、得られたブチルエステルにクロロホルムを加え溶解しガスクロマトグラフィで分析した。その結果を表10、図7に示す。
【0061】
(実施例20)
実施例1で用いた廃白土10g、Candida cylindracea由来のリパーゼOF(粉末、名糖産業)(廃白土1gあたり238Uになるように調製した量)、ヘキサン10ml及び油分の4モル倍量のブタノールを200mlのフラスコに入れ、ゴム栓でふたをした。(ブタノール量は、油のケン価から計算して求めた。)
次に、37℃、120rpmの往復振とう器で8時間まで振とうを行った。反応終了後、反応液をファルコンチューブに移した。その後、ファルコンチューブを15分間、10,000rpmで遠心し上澄みを取り、上澄みにヘキサンを加え、生産されたブチルエステルを溶かした。次に、ヘキサンを完全にとばしてから、得られたブチルエステルにクロロホルムを加え溶解しガスクロマトグラフィで分析した。その結果を表11、図8に示す。
【0062】
【表7】
Figure 0004095392
【0063】
【表8】
Figure 0004095392
【0064】
【表9】
Figure 0004095392
【0065】
【表10】
Figure 0004095392
【0066】
【表11】
Figure 0004095392
【0067】
【発明の効果】
本発明によれば、廃白土中の油脂に酵素を作用させて脂肪酸に分解させ、生成した脂肪酸と低級アルコールとを反応させてモノエステルとすることにより、廃白土を原料として、環境に優しいバイオ燃料を、少ない工程数でしかも面倒な操作を必要とすることなく、製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1(図中の●)と比較例1(図中の○)の反応時間と生成エステル量との関係をプロットしたグラフである。
【図2】実施例2(図中の●)と比較例2(図中の○)の反応時間と生成エステル量との関係をプロットしたグラフである。
【図3】実施例3(図中の●)と比較例3(図中の○)の反応時間と生成エステル量との関係をプロットしたグラフである。
【図4】実施例4の反応時間と生成エステル量との関係をプロットしたグラフである。(○:72時間反応、●:48時間反応)
【図5】実施例5(○)、実施例6(●)、実施例7(▲)、実施例8(■)、実施例9(□)、実施例10(△)、実施例11(◇)の反応時間と生成エステル量との関係をプロットしたグラフである。
【図6】実施例16〜18の反応時間と生成エステル量との関係をプロットしたグラフである。用いた溶媒はヘキサン(▲)、ジエチルエーテル(●)および石油エーテル(□)である。
【図7】実施例19の反応時間と生成エステル量との関係をプロットしたグラフである。
【図8】実施例20の反応時間と生成エステル量との関係をプロットしたグラフである。

Claims (8)

  1. 有機溶媒中で廃白土中の油脂に酵素を作用させて脂肪酸に分解させ、生成した脂肪酸に炭素数が7以下の低級アルコールを反応させてエステルとすることを特徴とするバイオ燃料の製造方法。
  2. 油脂が植物油であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 酵素がリパーゼであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  4. 脂肪酸と低級アルコールとの反応を、油脂100重量部当たり25乃至250重量部の有機溶媒の存在下に行うことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  5. 有機溶媒としてヘキサン又は石油エーテルを使用し、且つ低級アルコールを、脂肪酸:低級アルコール(モル比)が1:3乃至1:4となる量で使用する請求項1に記載の製造方法。
  6. 低級アルコールとしてメチルアルコールを使用する請求項5に記載の製造方法。
  7. 脂肪酸と低級アルコールとの反応を20乃至50℃の温度で行うことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  8. 脂肪酸を分離した後の廃白土残渣に含まれるグリセリドを抽出し、これを脂肪酸への分解工程またはエステル化工程に循環することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
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