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JP4094856B2 - 円弧溝の加工方法 - Google Patents

円弧溝の加工方法 Download PDF

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JP4094856B2 JP2002015805A JP2002015805A JP4094856B2 JP 4094856 B2 JP4094856 B2 JP 4094856B2 JP 2002015805 A JP2002015805 A JP 2002015805A JP 2002015805 A JP2002015805 A JP 2002015805A JP 4094856 B2 JP4094856 B2 JP 4094856B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、工作機械を用い、工具とワークとを相対的に移動させて、底面が円弧状凹曲面をなす溝を前記ワークに加工する溝加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、図9及び図10に示すような半円筒状の凹部を有するワーク50の該凹部内面に、底面が円弧状の凹曲面をなす溝(以下、円弧溝という)51を形成する代表的な加工法として、放電電極を用いた放電加工を挙げることができる。
【0003】
この加工法は、加工形状たる円弧溝51に合致した形状の放電部を備えた放電電極を用い、この電極とワーク50とを絶縁性を有する加工液中に浸漬し、電極とワーク50との間に微小な隙間を持たせた状態で両者間に電圧を印加して放電させることにより、ワーク50の放電部を溶融させて、ワーク50に電極の放電部と同形状の円弧溝51を形成するというものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記放電電極を用いた放電加工法は、放電電極とワーク50との間に放電を生起させることにより、ワーク50の放電部を溶融させて、円弧溝51を形成するというものであり、その加工速度が遅いため、生産性が悪く、しかも加工コストが高いという問題がある。また、加工形状に応じた専用の電極が必要であるため、この面でも加工コストが高くなる。
【0005】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、ワークに底面が円弧状凹曲面をなす溝を加工するに当たり、これを低コストでしかも効率良く行うことができる溝加工方法の提供をその目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及びその効果】
上記目的を達成するための本発明の請求項1に記載した発明は、
工具を保持する主軸を備え、該主軸及びワークが直交2軸方向に相対移動可能に、前主軸又はワークが前記直交2軸方向と垂直な揺動中心軸回りに揺動可能に、前記主軸を軸線中心に回転させて割出可能に構成された工作機械を用い、半円筒状をした凹部を有する前記ワークの該凹部内面に底面が円弧状の凹曲面をなす溝を加工する方法であって、
前記工具に、すくい面及び逃げ面を有する1つの刃先を備え、前記主軸の軸線に対して傾いた状態で前記主軸に保持された溝加工用バイトを使用し、
前記ワークを、形成すべき円弧状凹曲面をなす溝の中心軸線と前記揺動中心軸とが平行となるように配置し、
ついで、前記バイトの刃先を、前記ワークに対して所定の切り込み量を有するように位置決めした後、
前記バイト又はワークを前記揺動中心軸回りに揺動させる揺動動作と、前記バイト及びワークを前記直交2軸方向に直線移動させる直線移動動作との複合動作により、前記バイトの刃先が、前記切り込み量に応じて仮想的に設定される円弧状の加工軌跡と所定のすくい角を持って接するように且つ前記加工軌跡に沿って移動するように、更に、仕上げられる円弧溝に沿った一方端から円弧の中央位置まで移動するように、前記バイトをワークに対し非回転で相対的に移動させ、
次に、前記バイトが180度反転するように前記主軸を軸線中心に回転させて割出した後、
前記バイトの刃先を前記円弧溝の一方端から中央位置まで移動させたときと同様に、前記バイトの刃先が、前記円弧溝に沿った他方端から円弧の前記中央位置まで移動するように、前記バイトをワークに対し非回転で相対的に移動させて、
前記ワークに底面が円弧状凹曲面をなす溝を形成するようにしたことを特徴とする円弧溝の加工方法に係る。
【0007】
この発明によれば、半円筒状をした凹部を有するワークが、形成すべき円弧状凹曲面をなす溝の中心軸線と揺動中心軸とが平行となるように配置され、刃先がワークに対して所定の切り込み量を有するように位置決めされた後、当該刃先が前記切り込み量に応じて仮想的に設定される円弧状の加工軌跡と所定のすくい角を持って接するように且つ前記加工軌跡に沿って移動するように、更に、仕上げられる円弧溝に沿った一方端から円弧の中央位置まで移動するように、バイトがワークに対し非回転で相対的に移動せしめられる。この相対移動は、バイト又はワークを揺動中心軸回りに揺動させる揺動動作と、バイト及びワークを直交2軸方向に直線移動させる直線移動動作との複合動作により行われる。これにより、刃先がワークに対して描く円弧状の加工軌跡に沿ってワークが削り取られて、加工軌跡に沿った円弧の一方端から中央位置まで円弧状の溝がワークに形成される。
【0008】
この後、バイトが180度反転するように主軸が軸線中心に回転せしめられて割出された後、刃先を円弧溝の一方端から中央位置まで移動させたときと同様に、刃先が円弧溝に沿った他方端から円弧の中央位置まで移動するように、バイトがワークに対し非回転で相対的に移動せしめられる。これにより、刃先がワークに対して描く円弧状の加工軌跡に沿ってワークが削り取られて、加工軌跡に沿った円弧の他方端から中央位置まで円弧状の溝がワークに形成される。こうして、加工軌跡に沿った円弧の一方端から他方端までの全弧長に渡ってワークが削り取られ、当該加工軌跡に応じた円弧状の形状がワークに形 成される。
【0009】
尚、一度の加工で仕上り寸法の円弧溝を形成することができない場合には、所定の切り込み量で上記動作を繰り返すことにより、仕上がり寸法の円弧溝をワークに形成することができる。
【0010】
斯くして、本発明では、バイトとワークとを、当該バイトの刃先がワークに対して円弧状の加工軌跡を描くように非回転で相対移動させることによってワークを削り取り、円弧状の溝を形成するようにしているので、高精度な加工面を得ることができる。また、放電加工に比べて加工速度が速く、効率的に加工することができるので、生産性を向上させることができ、加工コストを抑制することができる。また、加工形状に応じた専用の電極が不要であり、この点においても、加工コストを抑制することができる。
【0011】
また、主軸の軸線に対して傾いた状態で主軸に保持された溝加工用バイトを工具に使用し、バイトの刃先を、仕上げられる円弧溝に沿った一方端から円弧の中央位置まで移動させた後、バイトを180度反転させ、この後、バイトの刃先を、円弧溝に沿った他方端から円弧の中央位置まで移動させているので、1回の加工動作におけるバイト刃先の移動範囲を狭くすることができ、円弧溝の弧長が長い場合であっても、上記相対移動の際に、バイトとワークとが干渉するといった不都合が生じるのを防止することが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施形態に係る円弧溝の加工方法について添付図面に基づき説明する。尚、以下の説明では、工作機械として図1に示すような5軸制御立形マシニングセンタ1を用いて、図9及び図10に示すような半円筒状の凹部を有するワーク50の該凹部内面に、円弧溝51を形成するものとする。また、前記円弧溝51をワーク50に荒加工なしに加工するものとして説明するが、これに限られるものではなく、荒加工後の仕上げ加工に本例の円弧溝の加工方法を適用しても良い。
【0013】
図1に示すように、前記5軸制御立形マシニングセンタ1は、ベッド2と、該ベッド2上に配設されたコラム3と、該コラム3上に配設され、矢示X軸方向に移動可能になったサドル4と、このサドル4に支持され、矢示Z軸方向に移動可能になった主軸頭5と、工具10を保持するとともに、前記主軸頭5によって支持され、矢示C軸方向に回転,割出し可能になった主軸6と、前記ベッド2上に配設され、矢示Y軸方向に移動可能及び矢示A軸方向に揺動可能になったテーブル7などからなる。
【0014】
また、前記5軸制御立形マシニングセンタ1は、前記サドル4を矢示X軸方向に移動させるX軸送り機構部(図示せず)と、前記主軸頭5を矢示Z軸方向に移動させるZ軸送り機構部(図示せず)と、前記テーブル7を矢示Y軸方向に移動させるY軸送り機構部(図示せず)と、前記主軸6を矢示C軸方向に回転させるC軸回転割出機構部(図示せず)と、前記テーブル7を矢示A軸方向に揺動させるA軸回転送り機構部(図示せず)と、これらX軸送り機構部(図示せず),Z軸送り機構部(図示せず),Y軸送り機構部(図示せず),C軸回転割出機構部(図示せず)及びA軸回転送り機構部(図示せず)の作動を制御する数値制御装置(図示せず)とを備える。また、前記テーブル7は、ワーク50が載置,固定されるように構成されている。
【0015】
前記工具10には、例えば、図2に示すような工具が用いられる。この工具10は、溝加工用バイト20と、このバイト20を前記主軸6の軸線に対して略45度傾いた状態となるように保持,固定するホルダ11などからなる。
【0016】
前記バイト20は、図3及び図4に示すように、シャンク部21と刃部22とからなり、刃部22は、すくい面23と、このすくい面23と角度(刃物角)βで交差する主逃げ面24と、すくい面23の両側に形成された副逃げ面25とから構成される。
【0017】
尚、このバイト20は、例えば、前記ホルダ11に形成された取り付け穴11aに嵌挿された後、そのシャンク部21が固定ボルト12で締められることによって、前記ホルダ11に保持,固定される。
【0018】
そして、このように構成された5軸制御立形マシニングセンタ1及び工具10を用いて、ワーク50に底面が円弧状凹曲面をなす溝51を加工する。まず、前記円弧溝51の中心軸線と前記X軸の軸線とが平行となるように、前記ワーク50を前記テーブル7に載置,固定した後、前記バイト20の突出方向と前記円弧溝51の中心軸線とが直交するように、前記主軸6をその軸中心に前記C軸回転割出機構部(図示せず)により回転させて、これを割出すとともに、図5(a)に示すように、前記テーブル7を前記A軸回転送り機構部(図示せず)により揺動させて、前記ワーク50をバイト20の突出方向に傾斜させる。
【0019】
ついで、前記工具10の刃部22を、前記ワーク50に対して所定の切り込み量dを有するように位置決めした後、前記刃部22が、前記切り込み量dに応じて仮想的に設定される円弧状の加工軌跡Lと接するように、前記工具10とワーク50とを相対的に移動させるべく、前記主軸頭5及びテーブル7を、前記Z軸送り機構部(図示せず)及びY軸送り機構部(図示せず)によりそれぞれ移動させるとともに、テーブル7を前記A軸回転送り機構部(図示せず)により揺動させる。
【0020】
こうして、前記工具10とワーク50との相対的な位置関係が、順次、ワーク50が右に水平より略45度傾いた状態(図5(a)),ワーク50が水平となった状態(図5(b)),ワーク50が左に水平より略45度傾いた状態(図5(c))へと変化して、前記刃部22が、前記加工軌跡Lに沿った円弧の一方端から中央位置まで移動する第1動作が行われる。
【0021】
尚、この時、前記刃部22は、図6及び図7に示すようにして移動する。即ち、前記すくい面23と主逃げ面24との交差部Pを通り、前記ワーク50に対する刃部22の相対的な移動方向と平行な線を線D,直交する線を線Eとすると、前記すくい面23と線Eとの間にすくい角α,前記主逃げ面24と線Dとの間に主逃げ角γ,前記副逃げ面25と溝51の側面部との間に副逃げ角F,Gが形成された状態で、前記交差部Pが前記加工軌跡Lと接するように移動する。これにより、前記加工軌跡Lに沿った円弧の一方端から中央位置までワーク50が削り取られる。
【0022】
そして、上記第1動作を完了した後、図8(a)に示すように、前記工具10を180度反転させるべく、前記主軸6をその軸中心に前記C軸回転割出機構部(図示せず)により回転させて、これを割出す。
【0023】
次に、上記第1動作と同様にして、前記工具10とワーク50との相対的な位置関係が、順次、ワーク50が左に水平より略45度傾いた状態(図8(a)),ワーク50が水平となった状態(図8(b)),ワーク50が右に水平より略45度傾いた状態(図8(c))へと変化して、前記刃部22が、前記加工軌跡Lに沿った円弧の他方端から中央位置まで移動する第2動作を行うように、前記工具10とワーク50とを相対的に移動させる。これにより、前記加工軌跡Lに沿った円弧の他方端から中央位置までワーク50が削り取られる。
【0024】
こうして、前記加工軌跡Lに沿った円弧の一方端から他方端までの全弧長に渡って前記ワーク50が削り取られ、当該加工軌跡Lに応じた円弧状の形状がワーク50に形成される。
【0025】
以降、所定の切り込み量dで上記第1動作及び第2動作を繰り返すことにより、所定の仕上がり寸法の円弧溝51がワーク50に形成される。尚、前記切り込み量dは、前記ワーク50の材質や要求される加工精度などに応じて適宜設定される。
【0026】
斯して、この円弧溝の加工方法によれば、非回転の工具10とワーク50とを、当該工具10の刃部22がワーク50に対して円弧状の加工軌跡Lを描くように相対移動させることによってワーク50を削り取り、円弧状の溝51を形成するようにしているので、高精度な加工面を得ることができる。
【0027】
また、放電加工に比べて加工速度が速く、効率的に加工することができるので、生産性を向上させることができ、加工コストを抑制することができる。また、加工形状に応じた専用の電極が不要であり、この点においても、加工コストを抑制することができる。
【0028】
また、前記円弧溝51の弧長が長い本例においては、前記刃部22を前記加工軌跡Lに沿った円弧の一方端から他方端まで連続的に移動させるようにすると、工具10とワーク50とが干渉するといった不都合を生じるが、第1動作及び第2動作の2つの動作に分けることで、前記干渉を防止することが可能となる。
【0029】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の取り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではない
【0030】
上述の例では、5軸制御立形マシニングセンタ1を用いた際の円弧溝の加工方法をその一例として説明したが、これに限られるものではなく、例えば、5軸制御横形マシニングセンタ、或いはB,C軸旋回機能を備えた複合加工旋盤を用いた加工にも、これを適用することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る円弧溝加工を実施するための工作機械を示した斜視図である。
【図2】 本実施形態の円弧溝加工で使用する工具を示した正面図である。
【図3】 本実施形態に係る溝加工用バイトを示した正面図である。
【図4】 図3に示した溝加工用バイトの側面図である。
【図5】 本実施形態に係る工具とワークとの相対移動を説明するための説明図である。
【図6】 図5におけるB部を拡大して示した詳細図である。
【図7】 図6における矢示C方向の正面図である。
【図8】 本実施形態に係る工具とワークとの相対移動を説明するための説明図である。
【図9】 ワークの一例を説明するための説明図である。
【図10】 図9における矢示A−A方向の断面図である。
【符号の説明】
1 5軸制御立形マシニングセンタ
2 ベッド
3 コラム
4 サドル
5 主軸頭
6 主軸
7 テーブル
10 工具
11 ホルダ
20 溝加工用バイト
22 刃部
23 すくい面
24 主逃げ面
50 ワーク
51 溝形状

Claims (1)

  1. 工具を保持する主軸を備え、該主軸及びワークが直交2軸方向に相対移動可能に、前主軸又はワークが前記直交2軸方向と垂直な揺動中心軸回りに揺動可能に、前記主軸を軸線中心に回転させて割出可能に構成された工作機械を用い、半円筒状をした凹部を有する前記ワークの該凹部内面に底面が円弧状の凹曲面をなす溝を加工する方法であって、
    前記工具に、すくい面及び逃げ面を有する1つの刃先を備え、前記主軸の軸線に対して傾いた状態で前記主軸に保持された溝加工用バイトを使用し、
    前記ワークを、形成すべき円弧状凹曲面をなす溝の中心軸線と前記揺動中心軸とが平行となるように配置し、
    ついで、前記バイトの刃先を、前記ワークに対して所定の切り込み量を有するように位置決めした後、
    前記バイト又はワークを前記揺動中心軸回りに揺動させる揺動動作と、前記バイト及びワークを前記直交2軸方向に直線移動させる直線移動動作との複合動作により、前記バイトの刃先が、前記切り込み量に応じて仮想的に設定される円弧状の加工軌跡と所定のすくい角を持って接するように且つ前記加工軌跡に沿って移動するように、更に、仕上げられる円弧溝に沿った一方端から円弧の中央位置まで移動するように、前記バイトをワークに対し非回転で相対的に移動させ、
    次に、前記バイトが180度反転するように前記主軸を軸線中心に回転させて割出した後、
    前記バイトの刃先を前記円弧溝の一方端から中央位置まで移動させたときと同様に、前記バイトの刃先が、前記円弧溝に沿った他方端から円弧の前記中央位置まで移動するように、前記バイトをワークに対し非回転で相対的に移動させて、
    前記ワークに底面が円弧状凹曲面をなす溝を形成するようにしたことを特徴とする円弧溝の加工方法。
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