JP4092232B2 - プラズマ処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、プラズマCVD等の成膜、表面改質、洗浄、その他のプラズマ表面処理を行なう装置に関し、特に、処理ガスを電界印加にてプラズマ化(活性化、ラジカル化を含む)し被処理体へ吹き付けるヘッド部を有するプラズマ処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば特許文献1には、ヘッド部に一対の電極を対向させて収容したプラズマ処理装置が記載されている。これら電極の互いの対向面には、誘電体の板がそれぞれ設けられ、これら誘電体板の間の空間が処理ガスの通路となっている。誘電体板の下端部どうしは、電極よりまっすぐに延び出てヘッド部の下端(先端)へ達し、吹出し口を構成している。誘電体板間の通路に導入された処理ガスは、電極間への電界印加によってプラズマ化された後、吹出し口から被処理体へ向けて吹出される。これによって、被処理体のプラズマ処理が行なわれる。
各電極の被処理体側を向く下面は、ヘッド部の底板(先端構成部材)で覆われている。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−92493号公報(第1頁、第2図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ヘッド部の被処理体への対向面は、汚れやすいため、頻繁に洗浄するなどのメンテナンスを要する。ところが、上記特許文献1では、ヘッド部の底板(先端構成部材)だけでなく、電極用の誘電体板の下端部(吹出し口構成部材)までもが、被処理体への対向部材を構成しているため、メンテナンスが煩雑である。これを免れるには、ヘッド部の底板で吹出し口を構成すればよい。一方、そうすると、吹出し口が、それの連なるべき処理ガス通路とは別の部材で構成されることになる。そのため、各部材の寸法精度や部材どうしの組付け精度が十分でないと、処理ガス通路と吹出し口が互いにずれて両者の連通状態が損なわれ、処理結果に影響が出る可能性がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、多少の精度誤差を許容可能で、製造・組付けなどを容易にでき、しかも良好な表面処理を確保できるプラズマ処理装置を提供することになる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の電極を並べて収容し、隣り合う電極間に処理ガス通路を形成してなるヘッド部を備え、このヘッド部において処理ガスを上記処理ガス通路に通してから吹出し、被処理体のプラズマ表面処理を行なう装置であって、上記ヘッド部の被処理体を向くべき先端部には、上記電極の先端面を覆うようにして誘電体からなる先端構成部材が(好ましくは取り外し・組み付け可能に)設けられ、この先端構成部材には、処理ガス通路に対応する吹出し口が形成され、この吹出し口が、ガス流を乱さない程度に処理ガス通路(の少なくとも下流側の流路断面積)より広くなっており、上記複数の電極が、上記並んだ状態でユニットになっており、この電極ユニットが、上記ヘッド部に進退可能に設けられた挟持手段により挟持されるようにして上記ヘッド部に収容されることを特徴とする。これによって、先端構成部材などの寸法精度や組付け精度に多少の誤差があっても、吹出し口が処理ガス通路に十分に連なるようにすることができ、製造・組み付け・メンテナンスなど作業の容易化を図ることができるとともに、良好な表面処理が確保されるようにすることができる。
【0006】
上記複数の電極の各々が、上記ヘッド部の先端面に沿って互いの並び方向と直交する向きに延び、上記先端構成部材の吹出し口が、上記電極と同方向に延びるべきスリット状をなし、この吹出し口が、上記処理ガス通路より幅広であることが望ましい。これによって、電極間の処理ガス通路と吹出し口との延び方向が精度誤差により多少ずれていたとしても、吹出し口の全長域において該通路の略全幅が処理ガス通路に確実に連なるようにすることができ、吹出し口の略全長にわたって処理ガスを可及的に均一に吹出すことができる。
【0007】
ここで、上記吹出し口の幅は、上記処理ガス通路の幅の1.1〜3倍であることが望ましい。これによって、吹出し口の全長域において該通路の略全幅が処理ガス通路に確実に連なるようにすることができるとともに、処理ガスが処理ガス通路から吹出し口へ移るときの断面変化を抑えて急激な圧力変動が起きるのを確実に防止でき、ガス流の乱れが確実に生じないようにすることができる。この結果、吹出し口の延び方向に沿って確実に均一な表面処理を行なうことができる。
【0008】
特に、上記処理ガスが、成膜用であり、上記プラズマ表面処理として成膜を行なうプラズマ処理装置において、上記複数の電極の各々が、上記ヘッド部の先端面に沿って互いの並び方向と直交する向きに延び、上記先端構成部材の吹出し口が、上記電極と同方向に延びるべきスリット状をなし、この吹出し口の幅が、上記処理ガス通路の幅の1.1〜3倍であることが望ましい。これによって、多少の精度誤差があっても、吹出し口の全長域において該通路の略全幅が処理ガス通路に確実に連なるようにすることができるとともに、処理ガスが処理ガス通路から吹出し口へ移るときの断面変化を抑えて急激な圧力変動が起きるのを防止でき、ガス流の乱れが確実に生じないようにすることができ、この結果、吹出し口の延び方向に沿って確実に均一な膜を形成することができる。
【0009】
上記複数の電極が、上記並んだ状態でユニットになっており、この電極ユニットが、上記ヘッド部に進退可能に設けられた挟持手段により挟持されるようにして上記ヘッド部に収容されることによって、電極ユニットをヘッド部に容易に出し入れできる。しかも、上記処理ガス通路と吹出し口の寸法関係が適用されることにより、挟持固定の際に電極ユニットの位置出しにあまり気を配らなくても済む。
【0010】
上記挟持手段が、上記周壁に螺合されたボルトであり、このボルトの先端が、上記電極ユニットに突き当てられることが望ましい。これによって、挟持手段を簡易に構成できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、常圧プラズマCVD装置M1(プラズマ処理装置)を示したものである。装置M1は、架台(図示せず)に支持されヘッドユニット10(ヘッド部)を備えている。ヘッドユニット10の下方には、シリコンウェハや電子基板などのワークW(被処理物)が搬送手段80によって後方(図1において左)から送られて来る。勿論、ワークWが固定されてヘッドユニット10が移動されるようになっていてもよい。プラズマCVD装置M1は、略常圧下においてこのワークWの上面に例えば酸化シリコン(SiO2)等の膜Waを形成するようになっている。
【0012】
ヘッドユニット10について詳述する。
ヘッドユニット10は、図1の紙面と直交する左右方向に長いノズルヘッド20と、このノズルヘッド20を囲む外筐11とを備えている。外筐11は、下端開口の中空になっている。この中空部(ダクト)11aの上端に図示しない真空ポンプ(排気手段)が連ねられることによって、排気機構が構成されている。なお、上記架台には、この外筐11が直接的に支持されている。外筐11の下端の内周縁には、鍔11bが形成されている。この鍔11bに、ノズルヘッド20の後記エンドフレーム24の周縁部が引っ掛けられ、ひいては、ノズルヘッド20が外筐11に支持されている。
【0013】
図1および図2に示すように、ノズルヘッド20は、ノズルヘッド本体21と、この本体21に収容された電極ユニット30とを備えている。ノズルヘッド本体21は、断面コ字状をなす前後の外フレーム22と、左右の外フレーム23と、ノズルヘッド20の下端部(先端部)に配されたエンドフレーム24およびノズルプレート25を有している。
【0014】
エンドフレーム24は、板状をなし、その前後方向の中央には、左右に延びる開口部24aが形成されている。エンドフレーム24は、外フレーム22,23の下端面にボルト締めにて固定されている。
【0015】
図3に示すように、ノズルプレート25は、アルミナ等のセラミック(誘電体)にて構成され、左右へ長く延びている。図1に示すように、ノズルプレート25の周縁部は、エンドフレーム24の開口部24aの周縁部に形成された段差に引っ掛けられている。これによって、ノズルプレート25が、開口部24aに容易に取り外し可能に嵌め込まれている。このノズルプレート25が、ワークWと対向すべき「先端構成部材」となっている。
【0016】
ノズルプレート25には、3条の等幅のスリット状をなす吹出し口25f,25m,25rが形成されている。これら吹出し口25f,25m,25rは、ノズルプレート25の略全長にわたるように左右に延びるとともに、互いに前後に間隔を置いて並べられている。
【0017】
図1および図3に示すように、ノズルプレート25の周縁部には、低い壁25aが全周にわたって設けられている。これにより、ノズルプレート25には、上面へ開口する浅い凹部25bが形成されている。この凹部25bに上記電極ユニット30の下側部が、余裕(クリアランス)を持って収容されている。(ノズルプレート25が、電極ユニット30のワークWと対向すべき下面(先端面)を覆っている。)電極ユニット30の上側部は、外フレーム22,23の内部空間に十分な余裕を持って収容されている。外フレーム22,23の内部空間とノズルプレート25の凹部25bとによって、電極ユニット30のための収容部20aが構成されている。この収容部20aを画成する外フレーム22,23の垂直壁とノズルプレート25の低壁25aとは、特許請求の範囲の「周壁」を構成している。
なお、ノズルプレート25から壁25aを無くして単なる板状にし、その上面に浅い凹部を形成して、これに電極ユニット30の下端部を嵌めることにしてもよい。
【0018】
図1および図2に示すように、電極ユニット30は、各々幅方向を上下に向けて左右に延びるとともに互いに前後に平行に並べられた4つ(複数)の長板状の電極31,32と、これら電極31,32を前後から挟むようにして設けられた一対の添えプレート33と、電極31,32の左右長手方向の両端部に設けられた一対の端ホルダ34とを備えている。中側の2つのホット電極31は、左端部(長手方向の一端部)の給電ピン36及び給電線37を介してパルス電源3(電界印加手段)に接続されている。前後両端側の2つのアース電極32は、右端部(長手方向の他端部)の給電ピン38及び接地線39を介して接地されている。なお、図示は省略するが、電極31,32の表面(少なくとも異なる極性の電極との対向面)には、アルミナなどの固体誘電体が溶射にて被膜されている。各電極31,32の面と面とがなす角には、すべてRが施されている。
【0019】
パルス電源3は、電極31にパルス電圧を出力するようになっている。このパルスの立上がり時間・立下り時間は、10μs以下が好ましく、1μs以下がより好ましい。電界強度は1〜1000kV/cmが好ましく、50〜1000kV/cmがより好ましい。周波数は、0.5〜100kHzが好ましい。パルスの幅(継続時間)は、0.5〜200μsが好ましい。パルスと次のパルスとの間のオフ時間は、0.5〜1000μsが好ましく、0.5〜500μsがより好ましい。電極31,32における電流密度は、10〜500mA/cm2が好ましく、50〜500mA/cm2がより好ましい。
【0020】
添えプレート33は、セラミック(絶縁材料)にて構成され、左右に細長く延びている。添えプレート33は、前後のアース電極32の外側面(隣りのホット電極31とは逆側を向く面)に宛がわれている。
端ホルダ34は、セラミック(絶縁材料)にて構成され、4つの電極31,32の端面間に跨っている。端ホルダ34と添えプレート33の端部どうしは、互いに分離可能に噛み合わされるようになっている。
【0021】
端ホルダ34の電極31,32側を向く内側面には、3枚の板状のスペーサ35が取り付けられている。このスペーサ35が、隣り合う電極31,32の間に挟まれている。これによって、スペーサ35の厚さ分の電極間隔が確保されるようになっている。この電極間の空間が、処理ガス通路30f,30m,30rとなっている。
【0022】
すなわち、前側のアース電極32とホット電極31との間に、前側処理ガス通路30fが形成されている。中側の2つのアース電極32どうし間に、中央処理ガス通路30mが形成されている。後側のアース電極32とホット電極31との間に、後側処理ガス通路30rが形成されている。各処理ガス通路30f,30m,30rの幅は、0.1〜50mmが好ましく、0.1〜5mmがより好ましく、0.1〜2mmがより一層好ましい。
【0023】
前側処理ガス通路30fの下端部は、ノズルプレート25の前側の吹出し口25fに連なり、中央処理ガス通路30mの下端部は、中央の吹出し口25mに連なり、後側処理ガス通路30rの下端部は、後側の吹出し口25rに連なっている。
【0024】
中央のガス通路30mの上端部には、原料ガス供給管43を介して原料ガス源41(処理ガス源)が連なり、前後のガス通路30f,30rの上端部には、励起ガス供給管44を介して励起ガス源42(処理ガス源)が連なっている。原料ガス源41には、上記膜Waの原料として、例えばTEOSやTMOSなどが貯えられている。原料の希釈ガス(キャリアガス)には、例えばN2、Ar、Heなどが用いられている。励起ガス源42には、励起(プラズマ化)によって上記原料ガスの反応を起こさせるための励起ガスとしてO2、O3、H2Oなどが貯えられている。
なお、図示は省略するが、ノズルヘッド20の上側部には、各供給管43,44からのガスを左右長手方向に均一化したうえで各対応通路30f,30m,30rの上端部へ導入するガス均一化部が設けられている。
【0025】
電極ユニット30の固定構造について説明する。
前後の外フレーム22の垂直壁には、押しボルト28(挟持手段)がそれぞれ前後に進退可能にねじ込まれている。これら押しボルト28の先端部が、電極ユニット30の添えプレート33に突き当てられている。これによって、ノズルプレート25の凹部25bと電極ユニット30との間にクリアランスがあっても、電極ユニット30を前後から押さえて確実に固定できるようになっている。また、前後の押しボルト28のねじ込み量を互いに調節することによって、電極ユニット30の位置出しを行なうことができるようになっている。
なお、この実施形態では、押しボルト28は、各外フレーム22の中間高さに左右長手方向へ離れて2つ設けられているが、勿論これに限定されるものではなく、上下に複数段設けてもよく、長手方向に離して3つ以上(あるいは長手方向の中央に1つ)設けてもよい。
【0026】
本発明における最も特徴的な部分について説明する。
常圧プラズマCVD装置M1においては、ノズルプレート25の吹出し口25f,25m,25rが、処理ガス通路30f,30m,30rより幅広に(流路断面積が大きく)なっている。具体的には、吹出し口25f,25m,25rの幅が、処理ガス通路30f,30m,30rの幅の1.1〜3倍になっている。1.1倍以上としたのは、後述するように、ヘッド20の各部材の寸法精度や組付け精度に多少の誤差があっても、吹出し口25f,25m,25rの全長域において該通路25f,25m,25rの略全幅が、対応する処理ガス通路30f,30m,30rに確実に連なるようにするためである。3倍以下としたのは、吹出し口25f,25m,25rが大きくなり過ぎて成膜の均一性が損なわれないようにするためである。上述した通り、処理ガス通路30f,30m,30rの幅は、0.1〜50mmが好ましく、0.1〜5mmがより好ましく、0.1〜2mmがより一層好ましいので、吹出し口25f,25m,25r幅は、0.11〜150mmが好ましく、0.11〜15mmがより好ましく、0.11〜6mmがより一層好ましい。
【0027】
なお、この実施形態では、3つの処理ガス通路30f,30m,30rの幅は互いに等しくなっているが、必ずしもそれに限定されるものではなく、例えば前後の励起ガス用の通路30f,30rは互いに等幅にする一方、中央の原料ガス用の通路30mは、前後の通路30f,30rとは幅が異なるようにしてもよい。3つとも幅が互いに異なるようにしてもよい。吹出し口25f,25m,25rについても同様である。いずれにせよ、吹出し口25f,25m,25rは、各々対応する処理ガス通路30f,30m,30rに対して幅広に形成する。すなわち、前側吹出し口25fは、前側処理ガス通路30fより幅広に形成し、中央吹出し口25mは、中央処理ガス通路30mより幅広に形成し、後側吹出し口25rは、後側処理ガス通路30rより幅広に形成する。
【0028】
上記のように構成された常圧プラズマCVD装置M1の動作について説明する。
原料ガス源41からの原料ガスが、ノズルヘッド20の上記ガス均一化部によって左右長手方向に均一化されたうえで、2つのホット電極31間の処理ガス通路30mを経て、中央の吹出し口25mから吹出される。また、励起ガス源42からの励起ガスが、左右長手方向に均一化されたうえで前後のアース電極32とホット電極31との間の処理ガス通路30f,30rに導入される。併せて、電圧印加装置3からのパルス電圧がホット電極31に印加される。これによって、異極電極31,32間の処理ガス通路30f,30rにパルス電界が形成される。このパルス電界によって励起ガスが励起・活性化(プラズマ化)される。このプラズマ化された励起ガスが、前後の吹出し口25f,25rから吹出され、この励起ガスに、上記吹出し口25mからの原料ガスが触れる。これによって、原料ガスの反応が起き、ワークWの上面に膜Waが形成される。その後、これらガスは、ダクト11aに吸込まれて排出される。なお、ワークWは、常温のまま、あるいは例えば500℃以下の範囲で適宜加熱されたうえでノズルヘッド20へ供給される。
【0029】
常圧プラズマCVD装置M1によれば、吹出し口25f,25m,25rが処理ガス通路30f,30m,30rより幅広であるので、ノズルプレート25や電極ユニット30などの寸法精度や組付け精度をシビアに要求しなくても、吹出し口25f,25m,25rを処理ガス通路30f,30m,30rに確実に連ねることができる。すなわち、例えば、図4(A)に示すように、電極ユニット30ひいては電極31,32をノズルプレート25に対して前後に平行に多少ずれた状態で組み付けたり、同図(B)に示すように、電極31,32をノズルプレート25に対して多少斜めに傾けた状態で組み付けたりしたとしても、吹出し口25f,25m,25rの全長域において該通路25f,25m,25rの略全幅が、対応する処理ガス通路30f,30m,30rに連なるようにすることができる。
【0030】
これによって、多少の精度誤差に拘わらず、各吹出し口25f,25m,25rの全長にわたって均一に処理ガスを吹出すことができる。しかも、吹出し口25f,25m,25rの幅は、処理ガス通路30f,30m,30rの幅の3倍以下であるので、処理ガスが、処理ガス通路30f,30m,30rから吹出し口25f,25m,25rへ移るときの断面変化を抑えて急激な圧力変動を防止でき、ガス流が乱れないようにすることができる。この結果、処理ガスをワークWの左右長手方向に均一に吹き付けることができ、全体的に均一に成膜を行なう(膜Waの厚さを均一にする)ことができる。
【0031】
したがって、電極ユニット30の位置出しのために押しボルト28の締め具合をシビアに調節する必要はない。
【0032】
一方、押しボルト28を緩めると、ノズルプレート25の凹部25bと電極ユニット30との間のクリアランスによって電極ユニット30を収容部20aから簡単に取り出すことができる。そして、ノズルプレート25をヘッド20から簡単に取り外すことができる。これによって、電極31,32やノズルプレート25の洗浄などのメンテナンス作業の容易化を図ることができる。その後、組み付けの際は、上記のクリアランスによって、電極ユニット30を凹部25bに簡単に嵌め込むことができる。そして、上述の通り、押しボルト28によって電極ユニット30を位置精度にそれほど気を配ることなく簡易に固定することができる。
【0033】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の改変が可能である。
例えば、電極構造は、平行平板形状に限らず、同心円筒形状、その他種々の形状をなしていてもよい。吹出し口は、スリット状に限らず、円形状や環形状になっていてもよい。吹出し口は、処理ガス通路の少なくとも下流側(吹出し口へ連なる部位)の流路断面積より広ければよい。
電極は、複数であればよく、2つ(一対)でもよく、3つでもよく、5つ以上でもよい。電極が2つの場合は、処理ガス通路は当然1つであり、この1つの処理ガス通路に1つの吹出し口が対応する。処理ガス通路が複数の場合、これら処理ガス通路に吹出し口が一対一に対応していてもよく、全部または一部の複数の処理ガス通路に1つの吹出し口が対応してもよい。
処理ガス供給構造は、励起ガスを印加電界で励起させた後、それと原料ガスを混ぜる所謂ポストミックス方式に限らず、励起ガスと原料ガスを予め混ぜておきこの混合ガスに電界を印加する所謂プレミックス方式であってもよい。ポストミックス方式においては、原料ガスと励起ガスがヘッド部からの吹出し後に合流される場合(原料ガスと励起ガスが別々の吹出し口から吹出される場合)に限らず、印加電界で励起した励起ガスに原料ガスを合流させたうえで吹出す(原料ガスと励起ガスが共通の吹出し口から吹出される)ことにしてもよい。
酸化シリコンの他、窒化シリコン、アモルファスシリコンなどの種々の成膜に適用できることは当然である。
本発明は、成膜(CVD)に限らず、表面改質(親水化、撥水化など)、洗浄、エッチングなどの種々のプラズマ表面処理にあまねく適用できる。
本発明は、略常圧下に限らず、減圧下(例えば1Pa程度)でのプラズマ処理にも適用できる。
【0034】
【実施例】
本発明の実施例を説明する。本発明がこの実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。
(1)実施例1
図1および図2に示すCVD装置M1を用い、常圧プラズマCVDを行ない、SiO2を成膜した。実験条件は下記の通りである。
原料ガス:TMOS(N2で希釈)
励起ガス:O2
処理ガス総供給量:20L/min
処理雰囲気圧力:95kPa
ワーク温度:350℃
ヘッド高(ノズルプレート25とワークW間の距離):4mm
電極間距離すなわち処理ガス通路30f,30m,30rの幅:2mm
吹出し口25f,25m,25rの幅:4mm
したがって、吹出し口幅は、処理ガス通路幅の2倍であった。なお、ワークWは装置M1に対して静止させた状態で成膜を実行した。成膜後、左右長手方向に沿って11箇所において膜厚を測定し、これら11の測定値の平均と、これら11の測定値の最大値および最小値とにより、次式にしたがって「膜厚均一性」を算出した。
「膜厚均一性」%=((最大値−最小値)÷平均値)×100
結果は、4.34%であった。なお、この数値が小さい程、均一性が高い。
【0035】
(2)実施例2
装置M1の吹出し口25f,25m,25rの幅を6mmに変え、処理ガス通路幅の3倍とした。それ以外の条件はすべて実施例1と同一にして成膜を行ない、同様にして「膜厚均一性」を算出した。
結果は、5.89%であった。
【0036】
(3)比較例1
装置M1の吹出し口25f,25m,25rの幅を2mmに変え、処理ガス通路幅の1倍とした。それ以外の条件はすべて実施例1と同一にして成膜を行ない、同様にして「膜厚均一性」を算出した。
結果は、6.02%であった。
【0037】
(4)比較例2
装置M1の吹出し口25f,25m,25rの幅を10mmに変え、処理ガス通路幅の5倍とした。それ以外の条件はすべて実施例1と同一にして成膜を行ない、同様にして「膜厚均一性」を算出した。
結果は、10.12%であった。
【0038】
以上の結果を図5のグラフに示す。吹出し口幅が処理ガス通路幅の1倍以下のときは、部材の寸法精度や組付け精度をシビアにしないと均一性を確保できないことが判明した。また、吹出し口幅が処理ガス通路幅の3倍を超えると、均一性が悪くなっていくことが判明した。これは、吹出し口が広くなり過ぎてガス流が乱れてくるためと考えられる。
【0039】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、各部材の寸法精度や組付け精度に多少の誤差があっても、吹出し口が処理ガス通路に十分に連なるようにすることができ、製造・組み付け・メンテナンスなど作業の容易化を図ることができるとともに、良好な表面処理が確保されるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るプラズマCVD装置の側面断面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う上記プラズマCVD装置の平面断面図である。
【図3】上記プラズマ処理CVD装置のノズルプレートの平面図であり、正しく位置出しされた電極を仮想線で示す。
【図4】(A)上記電極が平行にずれて組付けられた状態のノズルプレートの平面図である。
(B)上記電極が斜めに傾いて組付けられた状態のノズルプレートの平面図である。
【図5】本発明の実施例と比較例の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
M1 常圧プラズマCVD装置(プラズマ処理装置)
W ワーク(被処理体)
Wa 膜
10 ヘッドユニット(ヘッド部)
20 ノズルヘッド
20a 収容部
21 ノズルヘッド本体
22,23 外フレーム(収容部の周壁の構成要素)
25,25X ノズルプレート(先端構成部材)
25a 低壁(収容部の周壁の構成要素)
25f,25m,25r 吹出し口
28 押しボルト(挟持手段)
30 電極ユニット
30f,30m,30r 処理ガス通路
31 ホット電極
32 アース電極
Claims (4)
- 複数の電極を並べて収容し、隣り合う電極間に処理ガス通路を形成してなるヘッド部を備え、このヘッド部において処理ガスを上記処理ガス通路に通してから吹出し、被処理体のプラズマ表面処理を行なう装置であって、
上記ヘッド部の被処理体を向くべき先端部には、上記電極を覆うようにして誘電体からなる先端構成部材が設けられ、この先端構成部材には、処理ガス通路に対応する吹出し口が形成され、この吹出し口が、ガス流を乱さない程度に処理ガス通路より広くなっており、
上記複数の電極が、上記並んだ状態でユニットになっており、この電極ユニットが、上記ヘッド部に進退可能に設けられた挟持手段により挟持されるようにして上記ヘッド部に収容されることを特徴とするプラズマ処理装置。 - 上記複数の電極の各々が、上記ヘッド部の先端面に沿って互いの並び方向と直交する向きに延び、上記先端構成部材の吹出し口が、上記電極と同方向に延びるべきスリット状をなし、この吹出し口が、上記処理ガス通路より幅広であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
- 上記吹出し口の幅が、上記処理ガス通路の幅の1.1〜3倍であることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
- 上記挟持手段が、上記周壁に螺合されたボルトであり、このボルトの先端が、上記電極ユニットに突き当てられることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のプラズマ処理装置。
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