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JP4090345B2 - 液相結晶成長法 - Google Patents

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JP4090345B2
JP4090345B2 JP2002371754A JP2002371754A JP4090345B2 JP 4090345 B2 JP4090345 B2 JP 4090345B2 JP 2002371754 A JP2002371754 A JP 2002371754A JP 2002371754 A JP2002371754 A JP 2002371754A JP 4090345 B2 JP4090345 B2 JP 4090345B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は液相結晶成長法に関するもので、詳しくは、過飽和状態においた溶液に基板材料を浸せきさせ、基板上に溶質を析出させる液相結晶成長法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液相結晶成長法は従来から広く知られている結晶成長方法の1種である。これは、一般に溶媒となる物質を一定温度の液体状態に保持し、該溶媒に溶質成分を飽和状態に溶解し、しかる後、基板となる材料を溶液中に浸した状態で、徐々に温度を下げていくことで過飽和状態を作り出し、溶解できなくなった溶質成分を基板表面に結晶として析出させるという方法である。
【0003】
この方法は、円盤状の単結晶を基板として用いると、基板表面に析出する結晶が基板結晶と同一の方位を持つ結晶となり、引き上げ法などと比較して成長速度がきわめて小さいという欠点はあるものの、結晶品質のきわめて良い結晶が得られる。このため、発光ダイオードやレーザーダイオードの製造過程で多用されている技術である。
【0004】
液相成長法では、液体状態の溶液を用いるため、何らかの容器を使用する。この容器は溶液に浸食され容器を構成する元素が目的とする結晶中に不純物として析出することが多い。光アイソレーターに用いられる磁性ガーネット膜の成長においては、白金容器に、溶媒となる酸化鉛、酸化硼素を液体状に保持し、そこに、溶質となる各種酸化物を溶かし込む。そして、基板上に磁性カーネット膜を得る。この際、容器が侵され、溶液中に白金が溶出し、磁性ガーネット膜に混入することが知られている。混入する白金は、その濃度により光アイソレーターの基本性能であるファラデー回転角や挿入損失に影響を与えることが知られている。
【0005】
また、本発明者らの検討結果によれば、不純物として存在する白金が同心円状の亀裂を発生させる原因の一つであること、すなわち、YbTbBiFe系ガーネット結晶中に1%以上のPtが混入すると、目的とする磁性ガーネット結晶とは異なった組成となるため、その格子定数が変化し、基板材料との格子定数差が増大し、図1に示すような同心円状の亀裂の発生を引き起こす。
【0006】
こうした液相成長法の欠点を解消すべく主種の検討が行われている。例えば、溶媒に対して、非常に溶解度の低い材質で作られた容器を用いることである。この方法は一般的である。しかし、如何に容器材質の溶液中への溶解度が低くても、熱力学的には混入量がゼロになることはない。このため、どうしても容器からの不純物混入を避けたい場合には、液相成長法ではない方法、たとえば気相成長などにて結晶を成長させる。しかし全ての結晶材料を気相成長で得ることはできない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、液相結晶成長法により磁性ガーネット結晶を得るに際して溶液保持容器の材質が目的とする結晶中に混入し結晶品質を低下させない方法の提供、具体的には溶液保持材としてPt容器を用いて液相結晶成長により磁性ガーネット膜等の結晶成長を行うに際して目的結晶中のPt濃度を低減させる方法の提供を目的とする。
【0008】
【問題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明の第1請求項は白金容器を溶液保持材料とし、白金を、不可避不純物濃度を越えて含まない溶液を用い液相結晶成長法により磁性ガーネット膜を得る方法において、結晶育成中の溶液中の白金濃度を常に飽和濃度以下に抑制するために、容器の一部を強制冷却して容器から溶出したPtを該冷却部に析出させ続けることで、結晶育成時の溶液中の濃度を1mass%未満に維持するものである。
そして、第2請求項に係る発明は、該溶液が、酸化鉛、酸化硼素、酸化テルビウム、酸化イッテルビウム、酸化鉄、酸化ビスマスにて構成されることを特徴とし、この溶液を用いて育成した磁性ガーネットの組成がYbTbBiFeで構成される請求項1記載の液相結晶成長法によるものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
液相結晶成長法において、目的結晶が、磁性ガーネット厚膜結晶のような酸化物結晶の場合、白金坩堝がしばしば用いられる。白金坩堝を用いての液相エピタキシャル成長では、結晶成長温度での溶媒成分への白金の溶解は避けられないことから、目的結晶へ白金が不純物として混入することは避けられない。磁性ガーネット厚膜結晶に、不純物として白金が混入した場合、その割合が0.5mass%を越えると同心円状の亀裂が発生し、歩留まりの低下を引き起こす。
【0010】
図2にこの関係を示す。図2は溶液中の白金濃度を種々の値に保持しつつ基板として3インチ径の、格子定数1.2497±0.0003nmのガーネットウェハーを用い、基板の片面のみを溶液に浸漬し、同時に基板を回転し、溶液温度を1時間当たり0.6℃の割合で降下させつつ、20時間の液相結晶成長を行い、TbTbBiFe系磁性ガーネットエピタキシャル膜(以下FR膜と記す)を作製し、FR膜中の白金濃度と該FR膜の100μm以上のピット状欠陥数と亀裂欠陥の有無との関係を求め、これを示したものである。図2より前記した白金の割合が0.5mass%を越えると同心円状の亀裂が発生し、歩留まりの低下を引き起こすことは明らかである。
【0011】
本第1の請求項に係る発明において、結晶育成時の溶液中の白金濃度を飽和濃度以下、好ましくは1mass%未満に維持するのは、目的結晶への白金混入量は溶液中の白金濃度に比例することから、白金濃度を低下させた溶液を用いることにより、目的結晶中への白金混入量を低減させるためである。ここで重要なことは、目的結晶が成長する間、溶液中の白金濃度を1mass%未満に維持することである。
【0012】
溶液中のPt濃度低減化の方法は特に制限はない。基本的には請求項に記載したように、溶液の一部を冷却し、その冷却部に溶解したPtを凝集させることで溶液中の白金濃度を1mass%未満に維持しうる。ここで重要なことは、前と同様に、このような凝集過程を目的結晶が成長する間維持することである。すなわち、白金容器からの溶液中への白金の溶出は目的結晶の成長期間中継続されるからである。
【0013】
本発明は、白金容器を用いて、目的結晶中に白金を含まないような液相結晶成長法において有効であるが、とくに、酸化鉛、酸化硼素、酸化テルビウム、酸化イッテルビウム、酸化鉄、酸化ビスマスを溶融させた溶液から、磁性ガーネット厚膜結晶を成長させる場合に有効である。
【0014】
本発明において、溶液の一部を冷却する方法として用いうるものは不活性気体の吹きつけ、ヒートポンプの採用等があり、溶液の一部を直接冷却しても、溶液が入っている容器部の一部を冷却しても良い。
【0015】
【実施例】
以下に本発明を磁性ガーネット厚膜結晶に適用した実施例及び比較例を示す。
(実施例1〜7)
白金容器に、酸化鉛2300g、酸化硼素140g、酸化ビスマス3100g、酸化鉄460g、酸化テルビウム56.6g、酸化イッテルビウム4.4gを仕込んだ。これを縦型管状炉内に設置し、全体を950℃まで加熱して、十分撹拌し均一に混合し、磁性ガーネットエピタキシャル膜成長溶液とした。
【0016】
この溶液の温度を結晶成長温度まで低下させ、同時に、図3に示すように、溶液表面の一部に窒素ガスを吹き付け、当該部位を強制的に冷却し、溶解している白金の一部を析出させ、溶液内の白金濃度が1mass%以下となっている溶液1(実施例1)、2(実施例2)、3(実施例3)、4(実施例4)、5(実施例5)、6(実施例6)、7(実施例7)を作製した。
【0017】
次に、基板として3インチ径の、格子定数1.2497±0.0003nmのガーネットウェハーを用い、基板の片面のみを溶液に浸漬し、同時に基板を回転した。
この状態にて、溶液温度を1時間当たり0.6℃の割合で降下させつつ、20時間のエピタキシャル成長を行い、FR膜1(実施例1)、2(実施例2)、3(実施例3)、4(実施例4)、5(実施例5)、6(実施例6)、7(実施例7)を作製した。
【0018】
いずれのFR膜1〜7にも同心円状の亀裂は発生しなかった。また、各FR膜に全面に存在する100μm以上のピット状欠陥数を求めた。また、結晶成長中の溶液中の白金濃度とFR膜の白金濃度を求めた。これらの結果を表1に示した。
【0019】
【表1】
Figure 0004090345
表からわかる通り、本発明に従って結晶成長中の溶液中の白金濃度を1mass%以下とすれば、得られる結晶中の白金濃度を0.5mass%以下とすることができ、100μm以上のピット数も少なく、割れのないFR膜を得ることが可能である。
【0020】
(比較例1〜7)
溶液の一部に窒素を吹き当てることなく実施例1と同様にしてFR膜11(比較例1)、12(比較例2)、13(比較例3)、14(比較例4)、15(比較例5)、16(比較例6)、17(比較例7)を作製した。
【0021】
いずれのFR膜11〜17にも同心円状の亀裂が見られた。また、各FR膜に全面に存在する100μm以上のピット状欠陥数を求めた。また、結晶成長中の溶液中の白金濃度とFR膜の白金濃度とを求めた。これらの結果を表2に示した。
【0022】
【表2】
Figure 0004090345
【0023】
表2よりわかる通り、本発明に従って結晶成長中の溶液中の白金濃度を1mass%以下としなければ、良好なFR膜が得られない。
【0024】
【発明の効果】
本発明は白金容器を用いて液相結晶成長する際に、溶液の一部の温度を冷却することにより溶液中の白金濃度を低減させ、もって目的結晶中への白金混入量を低減化させ、目的結晶の結晶品質を向上させる。本発明を、磁性ガーネット結晶に適用した実施例の結果からわかるように、本発明による溶液から成長した磁性ガーネット結晶の品質が向上することは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】液相エピタキシャル成長にて得られる磁性ガーネット厚膜結晶に見られる同心円状の亀裂の様子を表す模式図である。
【図2】本発明の検討で得られたFR膜における、同心円状亀裂、ピット状欠陥とFR膜中の白金濃度との関係を示す図である。
【図3】実施例の磁性ガーネット厚膜結晶成長に用いた成長炉の構成図である。
【符号の説明】
1:FR膜
2:割れ
3:Pt製坩堝
4:成長溶液
5:耐火物
6:電熱ヒーター
7:窒素ガス導入管

Claims (2)

  1. 白金容器を溶液保持材料とし、白金を、不可避不純物濃度を越えて含まない溶液を用い液相結晶成長法により磁性ガーネット膜を得る方法において、結晶育成中の溶液中の白金濃度を常に飽和濃度以下に抑制するために、容器の一部を強制冷却して容器から溶出したPtを該冷却部に析出させ続けることで、結晶育成時の溶液中の濃度を1mass%未満に維持することを特徴とする液相結晶成長法。
  2. 該溶液が、酸化鉛、酸化硼素、酸化テルビウム、酸化イッテルビウム、酸化鉄、酸化ビスマスにて構成されることを特徴とし、この溶液を用いて育成した磁性ガーネットの組成がYbTbBiFeで構成される請求項1記載の液相結晶成長法。
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