JP4084696B2 - 低温焼成多層セラミック配線基板の製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低温焼成多層セラミック配線基板の製法に関し、特に、集積回路などを実装する半導体素子収納用パッケージなどに適した低温焼成多層セラミック配線基板の製法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、配線基板、例えば、半導体素子収納用パッケージに使用される多層配線基板として、比較的高密度の配線形成が可能な低温焼成多層セラミック配線基板が多用されている。
【0003】
このような低温焼成多層セラミック配線基板は、低温焼成セラミックスからなる絶縁層を複数層重ねた基板であり、その表面および内部にCu、Agなどの金属からなる配線回路層を付与することにより形成される。
【0004】
そして、ここで用いられる配線回路層としては、金属粉末と有機バインダー、セラミックフィラーなどからなる導体ペーストを焼結させて得られる金属焼結体や、電気化学的な製法あるいは圧延法により得られる金属箔等が好適に用いられている。
【0005】
しかし、これら金属焼結体や金属箔は絶縁層を形成する低温焼成セラミックスと収縮開始温度が異なるため、このような収縮開始温度の異なる絶縁層と配線回路層とが混在する低温焼成多層セラミック配線基板では、焼成工程において基板に反りが発生しやすいという問題があった。
【0006】
また、近年では基板内部に誘電率や透磁率などがベースとなる基板材料とは異なる絶縁材料を組み入れ、コンデンサやコイルを形成することにより複数の機能を内蔵した高品質な低温焼成多層セラミック配線基板が要求されている。
【0007】
しかしながら、ベースとなる基板材料と組み入れる他の絶縁材料とは、収縮開始温度が異なることが一般的であり、収縮開始温度の異なる数種類の絶縁層が混在する低温焼成多層セラミック配線基板においても、焼成工程における基板の反りが問題となっていた。
【0008】
このような基板の反りという課題に対して、下記に示す特許文献1、2によれば、基板の表裏両面から等しい距離にある中心線に対して、この中心線より上部の絶縁層と配線回路層との構成と、中心線より下部の絶縁層と配線回路層との構成とを対称となるようにする方法や、中心線より上部の収縮開始温度の異なる数種類からなる絶縁層の層構成と、中心線より下部の収縮開始温度の異なる数種類からなる絶縁層の層構成とを対称となるようにする方法が提案されている。
【0009】
また、下記の特許文献3によれば、上記のような低温焼成多層セラミック配線基板を製造する際に、配線回路層を具備するグリーンシートを複数積層して形成した低温焼成セラミック積層体の少なくとも一方の表面に、この低温焼成セラミック積層体の焼成温度では殆ど収縮しない拘束シートを積層して焼成を行うことにより、基板の寸法精度の向上を図るとともに、反りや変形を抑制できることが記載されている。
【0010】
【特許文献1】
特開平5−110257号公報
【0011】
【特許文献2】
特開平10−308584号公報
【0012】
【特許文献3】
特開2002−198646号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献に開示されている配線基板では、配線回路層の設計や収縮開始温度の異なる数種類からなる絶縁層の層構成に制約が多く、厚み方向中心線に対して上部層および下部層に配された配線回路層あるいは収縮開始温度の異なる数種類からなる絶縁層の層構成を非対称に設定すると、低温焼成セラミック積層体の上下両面に同組成の拘束シートを積層して焼成しても基板に反りが発生するという問題があった。
【0014】
図3は、低温焼成多層セラミック配線基板に、配線回路層の影響により発生する反りを示す断面図である。
【0015】
通常、用いられる低温焼成多層セラミック配線基板は、図3に示すように、絶縁層31を複数積層して形成された絶縁基板33から構成され、各層間および表層に位置する絶縁層31の表面側には、配線回路層35が被着形成されている。
【0016】
また、絶縁基板33内には、絶縁層31の厚み方向に貫通したビアホール導体37が形成されている。
【0017】
このような低温焼成多層セラミック配線基板において、その表面および裏面から等しい距離にある線を中心線Cとし、この中心線Cより上方側の層を上部層41、前記中心線Cより下方側の層を下部層43とする。
【0018】
これら上部層41および下部層43における配線回路層35の総体積を比較した際に、下部層43側の配線回路層35の総体積が大きい場合には、低温焼成多層セラミック配線基板は凹型に反る傾向にある。
【0019】
一方、図4は、低温焼成多層セラミック配線基板に収縮開始温度の異なる絶縁層が介装された場合に通常発生する反りを示す断面図である。
【0020】
このような低温焼成多層セラミック配線基板は、図4の基板を構成する上部層41および下部層43に配された配線回路層35を略同一体積とし、かつ、複数の絶縁層31間の一部を収縮開始温度の低い絶縁層45に置き換えたものである。
【0021】
即ち、このような低温焼成多層セラミック配線基板において、その表面および裏面から等しい距離にある線を中心線Cとし、この中心線Cより上方側の層を上部層41、前記中心線Cより下方側の層を下部層43とする。
【0022】
これら上部層41および下部層43における最も収縮開始温度が低い絶縁層45の総体積を比較した際に、下部層43側の最も収縮開始温度が低い絶縁層45の総体積が大きい場合を想定すると、低温焼成多層セラミック配線基板は凹型に反る傾向にある。
【0023】
図5は、低温焼成セラミック積層体を構成する各材料の加熱による収縮挙動を示す図である。
【0024】
これらの原因は、図5に示すように、低温焼成多層セラミック配線基板を構成する絶縁層31(図5では絶縁層材料A)となるグリーンシートの収縮開始温度に比べて、配線回路層35を形成する導体や、絶縁基板33内に介装される絶縁層45(図5では絶縁層材料B)の収縮開始温度が低いためである。
【0025】
従って本発明は、積層体に配された配線回路層のパターン形状の違いや収縮挙動の異なる数種類からなる絶縁層の層構成にほとんど制約がなく、配線回路層の設計や絶縁層の層構成の自由度を高くできる低温焼成多層セラミック配線基板の製法を提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記のような課題について鋭意検討した結果、(a)低温焼成セラミック組成物を含むグリーンシートを作製する工程と、(b)得られたグリーンシートの表面あるいは表裏面に配線回路層を形成する工程と、(c)前記(a)〜(b)工程を経て作製した複数のグリーンシートを積層し、低温焼成セラミック積層体を作製する工程と、(d)前記低温焼成セラミック積層体の両面に前記低温焼成セラミック積層体の焼成温度では焼結しない難焼結性無機材料と前記セラミック積層体の焼成温度以下の軟化点を有するガラスとを含む拘束シートを積層して積層体を形成する工程と、(e)前記(d)工程で得られた積層体を焼成して、複合基板を形成する工程と、(f)前記(e)工程で得られた複合基板から前記拘束シートを除去する工程と、を具備する低温焼成多層セラミック配線基板の製法において、前記低温焼成多層セラミック積層体の厚み方向の中心線より上方に位置する上部層に配された前記配線回路層の総体積と、前記中心線より下方に位置する下部層に配された前記配線回路層の総体積とを比較した際に、前記配線回路層の総体積が大きい方の前記低温焼成セラミック積層体の上部層表面または下部層裏面に積層する拘束シートに含まれる前記ガラスの量を、前記配線回路層の総体積が小さい方の前記低温焼成セラミック積層体の上部層表面または下部層裏面に積層する拘束シートに含まれる前記ガラスの量よりも多くする方法を見出した。
【0027】
すなわち、低温焼成多層セラミック配線基板の製法において、低温焼成セラミック積層体の中心線より上方に位置する上部層に配された前記配線回路層の総体積と、前記中心線より下方に位置する下部層に配された前記配線回路層の総体積とを比較した際に、下部層側の配線回路層の総体積が大きい場合を想定すると、低温焼成多層セラミック配線基板は凹型に反る傾向にある。
【0028】
そこで、下部層側に積層する拘束シートに含まれる前記ガラスの量を、上部層側に積層する拘束シートに含まれる前記ガラスの量よりも多くすることにより基板の反りを低減することができる。
【0029】
また、前記低温焼成多層セラミック配線基板の厚み方向の中心線より上部に位置する上部層を構成する最も収縮開始温度の低い絶縁層の総体積と、前記中心線より下部に位置する下部層を構成する最も収縮開始温度の低い絶縁層の総体積とを比較した際に、最も収縮開始温度の低い絶縁層の総体積が大きい方の前記低温焼成セラミック積層体の上部層表面または下部層裏面に積層する拘束シートに含まれるガラスの量を、最も収縮開始温度の低い絶縁層の総体積が小さい方の前記低温焼成セラミック積層体の上部層表面または下部層裏面に積層する拘束シートのガラスの量よりも多くする方法を見出した。
【0030】
すなわち、低温焼成多層セラミック配線基板となる低温焼成セラミック積層体の表面および裏面から等しい距離にある線を中心線とし、この中心線より上部に位置する上部層を構成する最も収縮開始温度の低い絶縁層の総体積と、この中心線より下部に位置する下部層を構成する最も収縮開始温度の低い絶縁層の総体積とを比較した際に、下部層側の最も収縮開始温度が低い絶縁層の総体積が大きい場合を想定すると、低温焼成多層セラミック配線基板は凹型に反る傾向にある。
【0031】
そこで、最も収縮開始温度が低い絶縁層の総体積が大きい方の低温焼成セラミック積層体の上部層表面または下部層裏面に積層する拘束シートに含まれるガラスの量を、最も収縮開始温度の低い絶縁層の総体積が小さい方の低温焼成セラミック積層体の上部層表面または下部層裏面に積層する拘束シートのガラスの量よりも多くすることにより反りを低減することができる。
【0032】
なお、低温焼成セラミック積層体の表裏面に積層する拘束シートの総厚みは、拘束シート1枚あたりの厚みあるいは層数によって調整できる。
【0033】
上記低温焼成多層セラミック配線基板の製法で用いる前記拘束シートは、該拘束シートに含まれる無機成分が難焼結性セラミック材料を主成分とするものであり、かつ前記低温焼成セラミック積層体の焼成温度以下の軟化点を有するガラス成分を前記拘束シートに含まれる無機成分の0.5〜15体積%含有することが望ましい。
【0034】
また、上記低温焼成多層セラミック配線基板では、前記配線回路層が、Au、Ag、Cu、Pd、Ptの少なくとも1種を含有する金属焼結体あるいは金属箔からなることが望ましい。
【0035】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の低温焼成多層セラミック配線基板の製法ついて詳細に説明する。
【0036】
本発明の製法は、前記の図3および4に示した低温焼成多層セラミック配線基板に適用できるものである。
【0037】
即ち、前記した低温焼成多層セラミック配線基板において配線回路層35の配置が積層方向に均等でないか、または、絶縁基板33内に一部異種の絶縁層45を介装させた低温焼結多層セラミック配線基板を、拘束シートを用いた焼成方法に適用されるものである。
【0038】
図1は、配線回路層35の配置が積層方向に均等でない低温焼成多層セラミック配線基板に適用される本発明の製法を示す概略断面図である。
【0039】
この場合、配線回路層35の総体積が大きい方の下部層43の裏面に積層される拘束シート51aに含まれるガラスの量が、配線回路層35の総体積が小さい方の上部層41の表面に積層される拘束シート51bに含まれるガラスの量より多いことが重要である。
【0040】
一方、図2は、絶縁基板33内に一部異種の絶縁層31を介装させた低温焼成多層セラミック配線基板の製法を示す概略断面図である。
【0041】
この場合、収縮開始温度の最も低い絶縁層45の総体積が大きい方の下部層43の裏面に積層する拘束シート51aに含まれるガラスの量が、収縮開始温度が最も低い絶縁層45の総体積が小さい方の上部層41の表面に積層する拘束シート51bに含まれるガラスの量よりも多いことが重要である。
【0042】
一方、低温焼成セラミック積層体の上下両面に、ガラス量が同一の拘束シートを積層して焼成した場合には、基板には規定値よりも大きな反りが発生する。
【0043】
この場合、本発明の製法に適用される低温焼成セラミック積層体を構成する各材料の加熱による収縮挙動は、図5の挙動に他ならないが、本発明では、このように各材料の焼結終了温度の順序が、前記収縮開始温度の順序と同じであることが望ましい。なお、ここで言う焼結終了温度とは、図5において各材料の収縮率が急激に小さくなる温度をいい、例えば、収縮曲線に沿って低温側および高温側から延びた直線の交差点(X)の温度をいう。
【0044】
以下、本発明の低温焼成多層セラミック配線基板の製法について説明する。本発明の低温焼成多層セラミック配線基板を構成する絶縁層31は、ガラス成分、あるいはガラス成分とセラミックフィラー成分によって構成される。
【0045】
前記のような構成成分を混合して低温焼成セラミック組成物を調整し、その混合物に有機バインダーなどを加えた後、ドクターブレード法、圧延法、プレス法などにより所望する厚さのシート状に成形し切断することにより、グリーンシートを作製する。
【0046】
次に、前記グリーンシートにレーザーやマイクロドリル、パンチングなどにより貫通孔を形成し、その内部に導体ペーストを充填してビアホール導体37を形成する。
【0047】
導体ペースト中には、Cu、Ag等の金属成分、それ以外にアクリル樹脂などからなる有機バインダー、トルエン、イソプロピルアルコール、アセトンなどの有機溶剤が含まれ、これらを混合して作製される。
【0048】
なお、この導体ペースト中には若干のガラス成分等を添加してもよい。配線回路層35として、適当な金属粉末にこれも有機バインダー、溶剤、可塑剤を添加混合して得た導体ペーストを前記グリーンシートの一方主面上あるいは両面に周知の印刷法を用いて所定のパターンを印刷する。場合によっては、この配線回路層35を金属箔により形成することも可能である。その後、同様にして得られた複数のグリーンシートを積層圧着して積層体を形成する。
【0049】
次に、平面方向の収縮を抑制するため、グリーンシートを積層した低温焼成セラミック積層体の焼成温度で難焼結性のセラミック材料を主成分とする拘束シート51を、前記低温焼成セラミック積層体の両面に加圧積層して積層体を作製する。
【0050】
この工程において、本発明では配線回路層35の構成、あるいは収縮開始温度の異なる絶縁層31の層構成によって、拘束シート51a、51bに含まれる前記ガラス量を積層体の表裏面で変えることを特徴としている。
【0051】
そして、拘束シート51a、51bに含まれる無機成分は、Al2O3、SiO2、MgO、ZrO2、TiO2、MgAl2O3、ZnAl2O4、Mg2SiO4の群から選ばれる少なくとも1種の難焼結性セラミック材料を主成分とし、かつ前記ガラス成分を0.5〜15体積%含有することが望ましいが、拘束力を高めるとともに、焼成後にこの拘束シート51a、51bを除去しやすくするという点で、ガラス成分比率は、特に、2〜10体積%であることが望ましい。また、ガラス成分は低温焼成セラミック組成物中のガラス成分と同一であることが望ましい。
【0052】
焼成工程においては、成形のために配合したバインダー成分を除去するが、バインダー除去は、導体配線層35を形成する金属として、例えば、銅を用いる場合には、100〜800℃の水蒸気を含有する窒素雰囲気中で行われる。
【0053】
焼成後、平面方向の収縮を抑制するために積層していた拘束シート51a、51bを、超音波洗浄、研磨、ウォータージェット、ケミカルブラスト、サンドブラスト、ウェットブラスト等で除去する。
【0054】
最後に、基板表面の電極保護あるいは半田濡れ性向上を図るためのAuめっきを施すことにより、本発明の低温焼成多層セラミック配線基板を作製することができる。
【0055】
【実施例】
実施例1
本発明の低温焼成多層セラミック配線基板について、一実施例に基づき評価する。
【0056】
ガラスセラミック成分として、SiO2−MgO−CaO−Al2O3系ガラス粉末60重量%、Al2O3粉末40重量%を使用した。このガラスセラミック成分100重量部に有機バインダーとしてアクリル樹脂12重量部、フタル酸系可塑剤4.5重量部および溶剤としてトルエン30重量部を加え、ボールミル法により混合しスラリーとした。このスラリーをドクターブレード法により厚さ300μmのグリーンシートに成形した。
【0057】
次に、前記グリーンシートの所定箇所にビアホールを形成しその中に銅を含む導体ペーストを充填し、表面に銅を含む導体ペーストをスクリーン印刷法により塗布した。その後、印刷後のグリーンシートを用いて、図1に示す低温焼成セラミック積層体を作製した。
【0058】
ここで、低温焼成セラミック積層体の厚み方向の中心線より上方に位置する上部層に配された配線回路層の総体積と、前記中心線より下方に位置する下部層に配された前記配線回路層の総体積とは、4:6の比率とした。
【0059】
一方、無機成分としてAl2O3粉末と軟化点810℃のSiO2−MgO−CaO−Al2O3系ガラス粉末をそれぞれ表1に示す割合で用いて、前記グリーンシートの場合と同様にしてスラリーを作製し、ついで成形して厚さ300μmの拘束シートを得た。
【0060】
この低温焼成セラミック積層体の表裏面に拘束シートを積層した後、この低温焼成セラミック積層体を所望する大きさに切断し、分割された低温焼成セラミック積層体を作製した。
【0061】
次いで、分割された低温焼成セラミック積層体をアルミナセッターに載置し、連続式焼成炉の可動ベルトに載せ焼成を行った。焼成条件は、まず、低温焼成セラミック積層体を720℃の水蒸気を含有する窒素雰囲気中にて脱バインダー処理後、900℃×1時間の窒素雰囲気中にて加熱した。
【0062】
次に、拘束シートをウェットブラストにて除去し、低温焼成多層セラミック配線基板を作製した。
【0063】
表1に低温焼成セラミック積層体の表裏面に積層した拘束シートの無機成分に含まれるガラスの量と、低温焼成セラミック配線基板(75mm×75mm×0.5mm)対角線上の基板反りの測定結果を示した。
【0064】
【表1】
表1の結果から明らかなように、基板下層側の表面に積層する拘束シートの無機成分に含まれるガラスの量を、上層側に積層する拘束シートの無機成分に含まれるガラスの量よりも多くした試料No.4、5では基板反りが40μm以下であった。比較例として、同組成の拘束シートを用いて拘束シートの積層位置を変えた試料No.1〜3では、基板反りが110μm以上であった。
【0065】
実施例2
本実施例は、収縮開始温度が異なる2種のグリーンシートを用いて形成される低温焼成多層セラミック配線基板の場合である。収縮開始温度が異なる材料としては、比誘電率の異なる組成物を用いた。
【0066】
収縮開始温度が高い材料(750℃)として、実施例1で使用したグリーンシートを準備した。
【0067】
次に、収縮開始温度が低い材料(700℃)として、SiO2−TiO2−BaO系ガラス粉末70質量%、Al2O3粉末30質量%を使用し、同様にグリーンシートを準備した。
【0068】
次に、これらグリーンシートの所定箇所にビアホールを形成しその中に銅を含む導体ペーストを充填し、表面に銅を含む導体ペーストをスクリーン印刷法により塗布し、図2に示す低温焼成セラミック積層体を作製した。
【0069】
ここで、低温焼成多層セラミック配線基板の厚み方向の中心線より上部に位置する上部層を構成する焼結開始温度の最も低い絶縁層の総体積と、中心線より下部に位置する下部層を構成する焼結開始温度の最も低い絶縁層の総体積は、低温焼成セラミック積層体に対する比率で上部層を0%、下部層を15%とした。
【0070】
また、実施例1で使用した拘束シートを同様に、この低温焼成セラミック積層体の表裏面に積層、その後、この低温焼成セラミック積層体を所望する大きさに切断し、分割された低温焼成セラミック積層体を作製した。
【0071】
次いで、分割された低温焼成セラミック積層体をアルミナセッターに載置し、連続式焼成炉の可動ベルトに載せ焼成を行った。焼成条件は、まず、積層体を720℃の水蒸気を含有する窒素雰囲気中にて脱バインダー処理後、900℃×1時間の窒素雰囲気中にて加熱した。次に、拘束シートをウェットブラストにて除去し、低温焼成多層セラミック配線基板を作製した。
【0072】
焼成条件およびウェットブラストは実施例1と同一条件として低温焼成多層セラミック配線基板を作製した。
【0073】
表2に分割された低温焼成セラミック積層体の表裏面に積層した拘束シートの無機成分に含まれるガラスの量と、低温焼成セラミック配線基板(75mm×75mm×0.5mm)対角線上の基板反りの測定結果を示した。
【0074】
【表2】
表2の結果から明らかなように、基板下層側の表面に積層する拘束シートの無機成分に含まれるガラスの量を、上層側に積層する拘束シートの無機成分に含まれるガラスの量よりも多くした試料No.9、10では基板反りが50μm以下であった。比較例として、同組成の拘束シートを用いて拘束シートの積層位置を変えた試料No.6〜8では、基板反りが120μm以上であった。
【0075】
【発明の効果】
以上詳述したように、複数の絶縁層からなる低温焼成多層セラミック配線基板において、配線回路層の配設比率あるいは収縮挙動の異なる数種類の絶縁層が混在することにより発生する配線基板の反りを、低温焼成セラミック積層体の表裏面に積層する拘束シートに含まれるそれぞれのガラス量を調整することにより抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の、配線回路層の配置が積層方向に均等でない低温焼成多層セラミック配線基板の製法を示す概略断面図である。
【図2】 本発明の、絶縁基板内に一部異種の絶縁層を介装させた低温焼成多層セラミック配線基板の製法を示す概略断面図である。
【図3】 低温焼成多層セラミック配線基板に、配線回路層の影響により通常発生する反りを示す断面図である。
【図4】 低温焼成多層セラミック配線基板に収縮開始温度の異なる絶縁層が介装された場合に通常発生する反りを示す断面図である。
【図5】 低温焼成セラミック積層体を構成する各材料の加熱による収縮挙動を示す図である。
【符号の説明】
31 絶縁層
33 絶縁基板
35 配線回路層
37 ビアホール導体
41 上部層
43 下部層
45 絶縁層31の材料より収縮開始温度の低い材料からなる絶縁層
51a 低温焼成セラミック積層体の下部層の裏面に積層された拘束シート
51b 低温焼成セラミック積層体の上部層の表面に積層された拘束シート
Claims (4)
- (a)低温焼成セラミック組成物を含むグリーンシートを作製する工程と、(b)得られたグリーンシートの表面あるいは表裏面に配線回路層を形成する工程と、(c)前記(a)〜(b)工程を経て作製した複数のグリーンシートを積層し、低温焼成セラミック積層体を作製する工程と、(d)前記低温焼成セラミック積層体の両面に前記低温焼成セラミック積層体の焼成温度では焼結しない難焼結性無機材料と前記低温焼成セラミック積層体の焼成温度以下の軟化点を有するガラスとを含む拘束シートを積層して積層体を形成する工程と、(e)前記(d)工程で得られた積層体を焼成して、複合基板を形成する工程と、(f)前記(e)工程で得られた複合基板から前記拘束シートを除去する工程と、を具備する低温焼成多層セラミック配線基板の製法において、前記低温焼成多層セラミック積層体の厚み方向の中心線より上方に位置する上部層に配された前記配線回路層の総体積と、前記中心線より下方に位置する下部層に配された前記配線回路層の総体積とを比較した際に、前記配線回路層の総体積が大きい方の前記低温焼成セラミック積層体の上部層表面または下部層裏面に積層する拘束シートに含まれる前記ガラスの量が、前記配線回路層の総体積の小さい方の前記低温焼成セラミック積層体の上部層表面または下部層裏面に積層する拘束シートに含まれる前記ガラスの量よりも多いことを特徴とする低温焼成多層セラミック配線基板の製法。
- (a)低温焼成セラミック組成物からなり、収縮開始温度の異なる少なくとも2種類のグリーンシートを作製する工程と、(b)得られたグリーンシートの表面あるいは表裏面に配線回路層を形成する工程と、(c)前記(a)〜(b)工程を経て作製したグリーンシートを積層し、低温焼成セラミック積層体を作製する工程と、(d)前記低温焼成セラミック積層体の両面に前記低温焼成セラミック積層体の焼成温度では焼結しない難焼結性無機材料と前記低温焼成セラミック積層体の焼成温度以下の軟化点を有するガラスとを含む拘束シートを積層して積層体を形成する工程と、(e)前記(d)工程で得られた積層体を焼成して、複合基板を形成する工程と、(f)前記(e)工程で得られた前記複合基板から前記拘束シートを除去する工程と、を具備する低温焼成多層セラミック配線基板の製法において、前記低温焼成多層セラミック積層体の厚み方向の中心線より上部に位置する上部層を構成する収縮開始温度の最も低い絶縁層の総体積と、前記中心線より下部に位置する下部層を構成する収縮開始温度の最も低い絶縁層の総体積とを比較した際に、最も収縮開始温度の低い絶縁層の総体積が大きい方の前記低温焼成セラミック積層体の上部層表面または下部層裏面に積層する拘束シートに含まれる前記ガラスの量が、最も収縮開始温度の低い絶縁層の総体積が小さい方の前記低温焼成セラミック積層体の上部層表面または下部層裏面に積層する拘束シートの前記ガラスの量よりも多いことを特徴とする低温焼成多層セラミック配線基板の製法。
- 前記拘束シートとして、該拘束シートに含まれる無機成分が難焼結性セラミック材料を主成分とするものであり、かつ前記低温焼成セラミック積層体の焼成温度以下の軟化点を有するガラス成分を前記拘束シートに含まれる無機成分の0.5〜15体積%含有するものを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の低温焼成多層セラミック配線基板の製法。
- 前記配線回路層が、Au、Ag、Cu、Pd、Ptの少なくとも1種を含有する金属焼結体あるいは金属箔からなることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載の低温焼成多層セラミック配線基板の製法。
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