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JP4082354B2 - 塗装方法 - Google Patents

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JP4082354B2
JP4082354B2 JP2004021592A JP2004021592A JP4082354B2 JP 4082354 B2 JP4082354 B2 JP 4082354B2 JP 2004021592 A JP2004021592 A JP 2004021592A JP 2004021592 A JP2004021592 A JP 2004021592A JP 4082354 B2 JP4082354 B2 JP 4082354B2
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Description

本発明は、自動車ボディ等に適用して好ましい塗装方法に関し、特に、中塗り塗料と上塗り塗料とをウェットオンウェットで塗装し、これらを同時に焼き付ける2コート1ベーク系の塗装方法に関する。
自動車ボディの塗装系は、エポキシ系樹脂を主剤とする電着塗料等が適用される下塗り塗料と、ポリエステル系樹脂を主剤とする中塗り塗料と、同様にポリエステル系塗料を主剤とする上塗り塗料の3種類の塗料を用い、下塗り塗装を施した後にこれを焼き付け、当該硬化した下塗り塗膜層の上に中塗り塗装を施した後にこれを焼き付け、当該硬化した中塗り塗膜層の上に上塗り塗装を施した後にこれを焼き付けることで完成する、所謂、3コート3ベーク系の塗装方法が採用されている。
ところが、こうした3コート3ベーク塗装系では、下塗り塗装工程、中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程に乾燥炉がそれぞれ必要とされるので、乾燥炉を設置するための広い工程スペースが必要となり、また、乾燥炉で消費されるエネルギが自動車の生産コストに反映される。
そこで、これら3つの工程に設けられた乾燥炉を2つ以下に減じて上記問題を解決するために、下塗り塗装と中塗り塗装とをウェットオンウェットで塗装する方法や、中塗り塗装と上塗り塗装とをウェットオンウェットで塗装する方法(例えば、特許文献1参照)が検討されている。
しかしながら、中塗り塗装と上塗り塗装とをウェットオンウェットで塗装し、これらを同時に焼き付ける塗装系では、中塗り塗膜層の表面を平滑化するサンディング工程を設けることが出来ないため、下塗り塗膜層や中塗り塗膜層の表面に形成されたラウンド等の凹凸が上塗り塗膜層の表面に現れ、その結果、鮮映性に代表される上塗り塗膜層の平滑性が低下するという問題があった。
特開2002−153805号公報
本発明は、鮮映性を維持しつつ、中塗り塗装と上塗り塗装とのウェットオンウェット塗装系を実現することが可能な塗装方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明によれば、下塗り塗料を被塗物に塗布して下塗り塗膜層を形成した後に、前記下塗り塗膜層に中塗り塗料を塗布して中塗り塗膜層を形成し、未硬化の前記中塗り塗膜層に上塗り塗料を塗布して上塗り塗膜層を形成する塗装方法であって、少なくとも前記下塗り塗膜層より上層に、着色材として、平均粒子径30nm〜1μmの着色された樹脂粒子のみを含む着色塗膜層を形成し、前記着色塗膜層に含有されている前記樹脂粒子のガラス転移点Tgは、50℃〜120℃であり、前記着色塗膜層を、前記樹脂粒子のガラス転移点以上の焼付温度で焼き付ける塗装方法が提供される。
本発明では、中塗り塗装と上塗り塗装とをウェットオンウェットで塗装するに際して、着色材として、平均粒子径30nm〜1μmの着色された樹脂粒子のみを含む着色塗膜層を少なくとも下塗り塗膜層より上層に形成する。この樹脂粒子は微細化されているので、当該樹脂粒子を含有した着色塗膜層は表面の平滑性に優れている。そのため、この着色塗膜層を下塗り塗膜層より上層に形成することにより、下塗り塗膜層や中塗り塗膜層で生じたラウンドが、当該着色塗膜層で上層に対してリセットされて、上塗り塗膜層の表面へのラウンドの出現が抑制され、この上塗り塗膜層の表面の平滑性が向上するので、鮮映性を維持しつつ、中塗り塗装と上塗り塗装とのウェットオンウェット塗装系を実現することが可能となる。これにより、従来必要とされていた中塗り塗装用の乾燥炉が不要となり、塗装ラインの工程スペースが格段に縮小される。また、当該乾燥炉に使用されていた熱エネルギーも不要となるので生産コストを低減させることが出来る。
[第1実施形態]
以下に本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る塗装方法を示す工程図、図2は図1の中上塗り塗装工程のラインの一例を示す平面図、図3は本発明の第1実施形態に係る積層塗膜を示す断面図である。
以下に説明する本発明の第1実施形態に係る塗装方法は、下塗り塗装、中塗り塗装、及び、上塗り塗装の3コート塗装系において、下塗り塗料を塗布して焼き付けて硬化させた後に、中塗り塗料と上塗り塗料とをウェットオンウェットで塗布し、これらを同時に焼き付けて硬化させる、所謂、3コート2ベークの塗装系である。
中塗り塗装及び上塗り塗装に関して言えば、2コート1ベークの塗装系であり、より詳しくは、例えば、上塗り塗料がソリッド系塗料の場合には2コート1ベークであり、例えば、上塗り塗料がメタリック系塗料等のように上塗りベース塗料と上塗りクリア塗料とを含む場合には3コート1ベークである。以下の第1実施形態では、この上塗り塗料がベース塗料及びクリア塗料を含む場合について説明する。
本実施形態に係る塗装方法では、先ず、ホワイトボディとして組み立てられた自動車ボディBが車体組立工程から塗装工場に搬入され、図1に示すように、最初に前処理工程1において、当該ボディBに付着した油や塵埃が除去されると共に、当該ボディBを構成する鋼板表面に防錆用の化成皮膜が形成される。
前処理工程1を経て洗浄及び化成皮膜が形成される自動車ボディB(被塗物)は、電着塗装工程2において、電着塗料で満たされた電着塗装槽に浸漬される。この電着塗装槽では、電着塗料に例えば300Vの高電圧が印加されることにより、電着塗料が電気泳動し、これによりボディBに未硬化の電着塗膜層20(下塗り塗膜層、図3参照)が形成される。
この電着塗装工程2で塗布される電着塗料としては、エポキシ系樹脂(アミン付加エポキシ樹脂に代表されるポリアミン樹脂を含む。)、アクリル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、アルキド系樹脂、ポリエステル系樹脂等を主成分とし、これに着色材や硬化剤等を添加してなるカチオン型電着塗料又はアニオン型電着塗料を例示することが出来る。アニオン型電着塗料の場合は被塗物側を正極、電着塗料側を陰極とし、カチオン型電着塗料の場合には被塗物側を陰極、電着塗料側を正極とする。また、この電着塗料に添加されている硬化剤としては、ブロックポリイソシアネート化合物、アミノ樹脂等を挙げることが出来る。
次いで、電着塗装工程2の電着塗装槽から出槽したボディBは、電着水洗工程3において、ボディBに付着した余分な電着塗料が洗い流される。
電着水洗を終了したボディBは、次に、下塗り焼付工程4において、電着乾燥炉に搬入され、例えば、160℃〜180℃で15分〜30分焼き付けて電着塗膜層20を硬化させた後に、中上塗り塗装工程5に搬入される。このように形成された電着塗膜層20は、図3に示すように、積層塗膜10の最下層を構成しており、その膜厚は例えば10〜40μmである。
中上塗り塗装工程5では、先ず、中塗り塗装工程6において、図2に示すように、硬化した電着塗膜層20の表面に中塗り塗装装置6aが中塗り塗料を塗布して中塗り塗膜層30(図3参照)を形成し、中塗り用フラッシュオフ装置6bが中塗り塗膜層30をフラッシュオフした後に、当該中塗り塗膜層30を焼き付け硬化させることなく、上塗りベース塗装工程7に搬出する。この中塗り塗装工程5で成膜される中塗り塗膜層30は、図3に示すように、積層塗膜10において電着塗膜層20の上層を形成しており、焼き付け硬化後のその膜厚は、例えば15〜45μmである。
この中塗り塗装工程6で塗布される中塗り塗料としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩ビ酢ビ共重合樹脂、ウレタン樹脂、セルロース樹脂等を主成分とし、これに着色材や添加剤を添加してなる熱硬化型塗料又は常温硬化型塗料若しくは2液硬化型塗料を溶剤で希釈したものや水性タイプを例示することが出来る。
本実施形態に係るこの中塗り塗料には、着色材として、例えば既存の着色材を微細化した、平均粒子径が30nm〜1μmの微粒化着色材のみが添加されている。
本実施形態では、このような微細化された微粒化着色材のみを着色材として中塗り塗料に含有させることにより、表面の平滑性に優れた中塗り塗膜層30を形成することが出来、この中塗り塗膜層30を下塗り塗膜層20の表面に形成することにより、下塗り塗膜層20で生じたラウンドを当該中塗り塗膜層30で上層に対してリセットすることが出来るので、積層塗膜10の表面へのラウンドの出現が抑制され、この積層塗膜10の平滑性を向上させることが可能となる。
なお、微粒化着色材の平均粒子径を30nmより小さく微細化することは現実的に困難である。また、平均粒子径が1μmを超えると、下塗り塗膜層20に生じているラウンドを上層に対してリセットする程の中塗り塗膜層30の平滑性を確保することが出来ない。
本実施形態に係る中塗り塗料に含有された微粒化着色材は、中塗り塗膜層30の焼き付け温度より低いガラス転移点Tgを有しており、具体的には、10℃〜120℃のガラス転移点Tgを有している。
本実施形態では、中塗り塗料に含有される微粒化着色材が、10℃〜120℃のガラス転移点Tgを有していることにより、中塗り塗膜層30の焼き付け時に微粒化着色材が変形して、当該微粒化着色材の粒子が変形してさらに小さくなり、中塗り塗膜層30の平滑性がさらに向上するので、積層塗膜10の表面の平滑性がさらに向上する。
この中塗り塗料に添加されている添加剤としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のワックス類や、分散剤等を例示することが出来、溶剤としては、水又は芳香族炭化水素系溶剤若しくは炭化水素系溶剤(エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤等)を例示することが出来る。
次いで、上塗りベース塗装工程7において、上塗りベース用塗装装置7aが、未硬化な中塗り塗膜層30の表面に、上塗りベース塗料をウェットオンウェットで塗布して上塗りベース塗膜層60(図3参照)を形成し、上塗りベース用フラッシュオフ装置7bが上塗りベース塗膜層60をフラッシュオフした後に、当該中塗り塗膜及び上塗りベース塗膜層60を焼き付け硬化させることなく、上塗りクリア塗装工程8に搬出する。この上塗りベース塗装工程7で成膜される上塗りベース塗膜層60は、積層塗膜10において中塗り塗膜層30の上層を構成しており、焼き付け硬化後のその膜厚は、例えば15〜45μmである。
この上塗りベース塗装工程7で塗布される上塗りベース塗料としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩ビ酢ビ共重合樹脂、ウレタン樹脂、セルロース樹脂等を主成分とし、これに着色材や添加剤を添加してなる熱硬化型塗料又は常温硬化型塗料若しくは2液硬化型塗料を溶剤で希釈したものや水性タイプを例示することが出来る。
また、この上塗りベース塗料に添加されている添加剤としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のワックス類や、分散剤等を例示することが出来、溶剤としては、水又は芳香族炭化水素系溶剤若しくは炭化水素系溶剤(エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤等)を例示することが出来る。
次いで、上塗りクリア塗装工程8において、上塗りクリア用塗装装置8aが、未硬化の上塗りベース塗膜層60の表面に、上塗りクリア塗料をウェットオンウェットで塗布した後に、中塗り塗膜層30、上塗りベース塗膜層60、及び、上塗りクリア塗膜層70を焼き付け硬化させることなく、セッティングブース8bに搬出する。この上塗りクリア塗装工程8で成膜される上塗りクリア塗膜層70は、図3に示すように、積層塗膜10の最上層を構成しており、焼き付け硬化後のその膜厚は、例えば15〜45μmである。
この上塗りクリア塗装工程8で塗布される上塗りクリア塗料としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩ビ酢ビ共重合樹脂、ウレタン樹脂、セルロース樹脂等を主成分とし、これに着色材や添加剤を添加してなる熱硬化型塗料又は常温硬化型塗料若しくは2液硬化型塗料を溶剤で希釈したものや水性タイプを例示することが出来る。
この上塗りクリア塗料に添加されている添加剤としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のワックス類や、分散剤等を例示することが出来、溶剤としては、水又は芳香族炭化水素系溶剤若しくは炭化水素系溶剤(エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤等)を例示することが出来る。
なお、図2に示す各塗装装置6a〜8aは、例えば、自動塗装装置や塗装ロボット等であり、その塗布方法は特に限定されず、ベル式塗装ガンやスプレー式塗装ガン等を用いて塗装する。
中上塗り塗装工程5にて、中塗り塗料、上塗りベース塗料、及び、上塗りクリア塗料がウェットオンウェットで塗布された自動車ボディBは、セッティングブース8bから中上塗り焼付工程9の中上塗り乾燥炉9a内に搬入され熱風が吹き付けられて、例えば80℃〜160℃で10分〜30分焼き付けることで、中塗り塗膜層30、上塗りベース塗膜層60、及び、上塗りクリア塗膜層70が同時に硬化される。
以上のように、本実施形態に係る塗装方法では、既存の着色材の代わりに、平均粒子径が30nm〜1μmの微粒化着色材を中塗り塗料に含有させて、表面の平滑性に優れた中塗り塗膜層を、下塗り塗膜層の表面に形成することにより、下塗り塗膜層で生じたラウンドがこの中塗り塗膜層で上層に対してリセットされ、積層塗膜の表面へのラウンドの出現が抑制され、この積層塗膜の平滑性が向上するので、鮮映性を維持しつつ、中塗り塗装と上塗り塗装とのウェットオンウェット塗装系を実現することが可能となる。これにより、従来必要とされていた中塗り塗装用の乾燥炉が不要となり、塗装ラインの工程スペースが格段に縮小される。また、当該乾燥炉に使用されていた熱エネルギーも不要となるので生産コストを低減させることが出来る。
また、本実施形態に係る塗装方法では、中塗り塗料に含有される微粒化着色材が、10℃〜120℃のガラス転移点Tgを有していることにより、当該中塗り塗膜層の焼き付け時に微粒化着色材が変形して、当該微粒子着色材の粒子が変形してさらに小さくなり、中塗り塗膜層の平滑性がさらに向上するので、積層塗膜の表面の平滑性をさらに向上させることが出来る。
[第2実施形態]
図4は本発明の第2実施形態に係る積層塗膜を示す断面図である。
本実施形態に係る積層塗膜10’は、図4に示すように、自動車ボディBの表面に形成された電着塗膜層20と、この電着塗膜層20の表面に形成された着色塗膜層50と、この着色塗膜層50の表面に形成された中塗り塗膜層40と、この中塗り塗膜層40の表面に形成された上塗りベース塗膜層60と、この上塗りベース塗膜層60の表面に形成された上塗りクリア塗膜層70とから構成されている。
本実施形態に係る積層塗膜10’は、図3に示す第1実施形態に係る積層塗膜10において微粒化着色材を含有した中塗り塗膜層30を、図4に示すように、微粒化着色材を含有した着色塗膜層50、及び、微粒化着色材を含有しない中塗り塗膜層40に変更したものであり、電着塗膜層20、上塗りベース塗膜層60、及び、上塗りクリア塗膜層70は第1実施形態と同様であるため、それらの詳細な説明は省略する。
本実施形態に係る積層塗膜10’の着色塗膜層50及び中塗り塗膜層40は、図1の中塗り塗装工程6において形成される。
本実施形態に係る中塗り塗装工程6では、下塗り焼付工程4において電着塗膜層20が焼き付け硬化された後に、先ず、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩ビ酢ビ共重合樹脂、ウレタン樹脂、セルロース樹脂等を主成分とし、これに着色材や添加剤を添加してなる熱硬化型塗料又は常温硬化型塗料若しくは2液硬化型塗料を溶剤で希釈したものや水性タイプのものが、中塗り用塗装装置6aにより、電着塗膜層20の表面に塗布されて、着色塗膜層50が形成され、次いで、未硬化な着色塗膜層50の表面に中塗り塗料が中塗り用塗装装置6aによりウェットオンウェットで塗布されて、中塗り塗膜層40が形成される。この中塗り塗装工程6で成膜される中塗り塗膜層40の焼き付け硬化後の膜厚は、第1実施形態と同様に、例えば15〜45μmであり、着色塗膜層50の焼き付け硬化後の膜厚は、例えば30〜45μmである。
この着色塗膜層50を形成する塗料には、着色材として、例えば既存の着色材を微細化した、平均粒子径が30nm〜1μmの微粒化着色材のみが添加されている。これに対し、本実施形態に係る中塗り塗料には、微粒化着色材ではなく、平均粒子径が1μmを超える通常の着色材が添加されている。
本実施形態では、着色塗膜層50に30nm〜1μmの微粒化着色材を含有させることにより、表面の平滑性に優れた着色塗膜層50が得られ、この着色塗膜層50を電着塗膜層20の表面に形成することにより、電着塗膜層20で生じたラウンドがこの着色塗膜層50で上層に対してリセットされるので、積層塗膜10’の表面へのラウンドの出現が抑制され、この積層塗膜10’の表面の平滑性が向上する。
なお、微粒化着色材の平均粒子径を30nmより小さく微細化することは現実的に困難である。また、平均粒子径が1μmを超えると、電着塗膜層20で生じたラウンドを上層に対してリセットする程の着色塗膜層50の平滑性を確保することが出来ない。
また、本実施形態に係る着色塗膜層50に含有された微粒化着色材は、着色塗膜層50の焼き付け温度より低いガラス転移点Tgを有しており、具体的には10℃〜120℃のガラス転移点Tgを有している。
このように本実施形態では、着色塗膜層50に含有される微粒化着色材が、10℃〜120℃のガラス転移点Tgを有していることにより、この着色塗膜層50の焼き付け時に微粒化着色材が変形して、当該微粒化着色材の粒子が変形してさらに小さくなり着色塗膜層50の平滑性がさらに向上するので、積層塗膜10’の表面の平滑性がさらに向上する。
この着色塗膜層50を形成する塗料に添加されている添加剤としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のワックス類や、分散剤等を例示することが出来、溶剤としては、水又は芳香族炭化水素系溶剤若しくは炭化水素系溶剤(エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤等)を例示することが出来る。
中塗り塗膜層40が形成されて中塗り用フラッシュオフ装置6bによりフラッシュオフされた後は、上塗りベース塗装工程7に搬出されて、以降、第1実施形態と同様に、上塗りベース塗装工程7にて、未硬化の中塗り塗膜層40の表面に上塗りベース塗料がウェットオンウェットで塗布されて上塗りベース塗膜層60が形成され、上塗りクリア塗装工程8にて、未硬化の上塗りベース塗膜層60の表面に上塗りクリア塗料がウェットオンウェットで塗布されて上塗りクリア塗膜層70が形成され、中上塗り焼付工程9にて、着色塗膜層50、中塗り塗膜層40、上塗りベース塗膜層60、及び、上塗りクリア塗膜層70が同時に焼き付けられて硬化される。従って、本実施形態に係る塗装方法では、中上塗り塗装系に関して言えば4コート1ベークとなっている。
以上のように、本実施形態に係る塗装方法では、平均粒子径が30nm〜1μmの微粒化着色材を含有した着色塗膜層を、下塗り塗膜層の表面に形成することにより、下塗り塗膜層で生じたラウンドがこの着色塗膜層で上層に対してリセットされ、積層塗膜の表面へのラウンドの出現が抑制され、この積層塗膜の表面の平滑性が向上するので、鮮映性を維持しつつ、中塗り塗装と上塗り塗装とのウェットオンウェット塗装系を実現することが可能となる。これにより、従来必要とされていた中塗り塗装用の乾燥炉が不要となり、塗装ラインの工程スペースが格段に縮小される。また、当該乾燥炉に使用されていた熱エネルギーも不要となるので生産コストを低減させることが出来る。
また、本実施形態に係る塗装方法では、着色塗膜層に含有される微粒化着色材が、10℃〜120℃のガラス転移点Tgを有していることにより、この着色塗膜層の焼き付け時に微粒化着色材が変形して、当該微粒化着色材の粒子が変形してさらに小さくなり、着色塗膜層の平滑性がさらに向上するので、積層塗膜の表面の平滑性をさらに向上させることが出来る。
[第3実施形態]
図5は本発明の第3実施形態に係る積層塗膜を示す断面図である。
本実施形態に係る積層塗膜10”は、図5に示すように、自動車ボディBの表面に形成された電着塗膜層20と、この電着塗膜層20の表面に形成された中塗り塗膜層40と、この中塗り塗膜層40の表面に形成された着色塗膜層50と、この着色塗膜層40の表面に形成された上塗りベース塗膜層60と、この上塗りベース塗膜層60の表面に形成された上塗りクリア塗膜層70とから構成されている。
本実施形態に係る積層塗膜10”は、図3に示す第1実施形態に係る積層塗膜10において微粒化着色材を含有した中塗り塗膜層30を、図5に示すように、微粒化着色材を含有しない中塗り塗膜層40、及び、微粒化着色材を含有した着色塗膜層50に変更したもの、即ち、図4に示す第2実施形態に係る着色塗膜層50と中塗り塗膜層40との積層順序を入れ替えたものであり、電着塗膜層20、上塗りベース塗膜層60、及び、上塗りクリア塗膜層70は第1実施形態と同様であるため、それらの詳細な説明は省略する。
本実施形態に係る積層塗膜10”の中塗り塗膜層40は、図1の中塗り塗装工程6にて形成され、着色塗膜層50は、図1の上塗りベース塗装工程7にて形成される。
本実施形態に係る中塗り塗装工程6では、下塗り焼付工程4において電着塗膜層20が焼き付け硬化された後に、中塗り用塗装装置6aが電着塗膜層20の表面に中塗り塗料を塗布して中塗り塗膜層40を形成し、中塗り用フラッシュオフ装置6bが中塗り塗膜層40をフラッシュオフした後に、当該中塗り塗膜層40を焼き付け硬化させることなく、上塗りベース塗膜工程7に搬出する。なお、この中塗り塗膜層40を形成する中塗り塗料は、第2実施形態と同様の塗料である。
そして、上塗りベース塗装工程7において、先ず、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩ビ酢ビ共重合樹脂、ウレタン樹脂、セルロース樹脂等を主成分とし、これに着色材や添加剤を添加してなる熱硬化型塗料又は常温硬化型塗料若しくは2液硬化型塗料を溶剤で希釈したものや水性タイプのものが、上塗りベース用塗装装置7aにより、未硬化な中塗り塗膜層40の表面に塗布されて、着色塗膜層50が形成され、次いで、未硬化な着色塗膜層50の表面に上塗りベース塗料が上塗りベース用塗装装置7aによりウェットオンウェットで塗布されて、上塗りベース塗膜層60が形成される。なお、中塗り塗装工程6で成膜される中塗り塗膜層40の焼き付け硬化後の膜厚は、第2実施形態と同様に、例えば15〜45μmであり、上塗りベース塗装工程7で成膜される着色塗膜層50の焼き付け硬化後の膜厚は、第2実施形態と同様に例えば30〜45μmである。
この着色塗膜層50を形成する塗料には、着色材として、例えば既存の着色材を微細化した、平均粒子径が30nm〜1μmの微粒化着色材のみが添加されている。これに対し、本実施形態に係る中塗り塗料には、微粒化着色材ではなく平均粒子径が1μmを超える通常の着色材が添加されている。
本実施形態では、着色塗膜層50に30nm〜1μmの微粒化着色材を含有させることにより、表面の平滑性に優れた着色塗膜層50が得られ、この着色塗膜層50を中塗り塗膜層40の表面に形成することにより、電着塗膜層20や中塗り塗膜層40で生じたラウンドがこの着色塗膜層50で上層に対してリセットされるので、積層塗膜10”の表面へのラウンドの出現が抑制され、この積層塗膜10”の表面の平滑性が向上する。
なお、この微粒化着色材の平均粒子径を30nmより小さく微細化することは現実的に困難である。また、平均粒子径が1μmを超えると、電着塗膜層20や中塗り塗膜層40で生じたラウンドを上層に対してリセットする程の着色塗膜層50の平滑性を確保することが出来ない。
また、本実施形態に係る着色塗膜層50に含有された微粒化着色材は、着色塗膜層50の焼き付け温度より低いガラス転移点Tgを有しており、具体的には10℃〜120℃のガラス転移点Tgを有している。
このように本実施形態では、着色塗膜層50に含有される微粒化着色材が、10℃〜120℃のガラス転移点Tgを有していることにより、この着色塗膜層50の焼き付け時に微粒化着色材が変形して、当該微粒化着色材の粒子が変形してさらに小さくなり着色塗膜層50の平滑性がさらに向上するので、積層塗膜10”の表面の平滑性がさらに向上する。
この着色塗膜層50を形成する塗料に添加されている添加剤としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のワックス類や、分散剤等を例示することが出来、溶剤としては、水又は芳香族炭化水素系溶剤若しくは炭化水素系溶剤(エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤等)を例示することが出来る。
上塗りベース塗膜層70が形成されて上塗りベース用フラッシュオフ装置7bによりフラッシュオフされた後は、上塗りクリア塗装工程8に搬出されて、以降、第1実施形態と同様に、上塗りクリア塗装工程8にて、未硬化の上塗りベース塗膜層70の表面に上塗りクリア塗料がウェットオンウェットで塗布されて上塗りクリア塗膜層80が形成され、中上塗り焼付工程9にて、中塗り塗膜層40、着色塗膜層50、上塗りベース塗膜層60、及び、上塗りクリア塗膜層70が同時に焼き付けられて硬化される。従って、本実施形態に係る塗装方法では、中上塗り塗装系に関して言えば4コート1ベークとなっている。
以上のように、本実施形態に係る塗装方法では、平均粒子径が30nm〜1μmの微粒化着色材を含有した着色塗膜層を、中塗り塗膜層の表面に形成することにより、下塗り塗膜層や中塗り塗膜層で生じたラウンドがこの着色塗膜層で上層に対してリセットされ、積層塗膜の表面へのラウンドの出現が抑制され、この積層塗膜の表面の平滑性が向上するので、鮮映性を維持しつつ、中塗り塗装と上塗り塗装とのウェットオンウェット塗装系を実現することが可能となる。これにより、従来必要とされていた中塗り塗装用の乾燥炉が不要となり、塗装ラインの工程スペースが格段に縮小される。また、当該乾燥炉に使用されていた熱エネルギーも不要となるので生産コストを低減させることが出来る。
また、本実施形態に係る塗装方法では、着色塗膜層に含有される微粒化着色材が、10℃〜120℃のガラス転移点Tgを有していることにより、この着色塗膜層の焼き付け時に微粒化着色材が変形して、当該微粒化着色材の粒子が変形してさらに小さくなり、着色塗膜層の平滑性がさらに向上するので、積層塗膜の表面の平滑性をさらに向上させることが出来る。
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、上述の実施形態では、中塗り塗膜層及び上塗りベース塗膜層を形成直後にそれぞれフラッシュオフするように説明したが、本発明では特にこれに限定されず、中塗り塗膜層を形成直後にフラッシュオフせずに上塗りベース塗膜層を形成し、及び/又は、上塗りベース塗膜層を形成直後にフラッシュオフせずに上塗りクリア塗膜層を形成しても良い。
以下、本発明をさらに具体化した実施例及び比較例により本発明の効果を確認した。以下の実施例は、上述した実施形態に係る塗装方法の効果を確認するためのものである。
実施例1
板厚0.8mm、大きさ70mm×150mmのダル鋼板を被塗物として、これにリン酸亜鉛処理を施してリン酸亜鉛皮膜を形成した後、カチオン型電着塗料(日本ペイント社製パワートップU−600M)を用いて膜厚が20μmとなるように電着塗装を行い、160℃で30分焼き付け硬化させることで電着塗膜層を形成した。
平均粒子径が30nm、ガラス転移点Tgが50℃の微粒化着色材(日本合成化学社製ゴーセプレンA1001)を中塗り塗料(日本油脂社製ハイエピコQX1)に添加し、乾燥膜厚で30±10μmとなるように、電着塗膜層の表面にスプレー塗装して、中塗り塗膜層を形成した。
この未硬化な中塗り塗膜層の表面に、上塗りベース塗料(日本ビーケミカル社製アクリル・メラミン系樹脂)を、乾燥膜厚で15±5μmとなるようにウェットオンウェットでスプレー塗装して、上塗りベース塗膜層を形成した。
さらに、この未硬化な上塗りベース塗膜層の表面に、上塗りクリア塗料(日本ビーケミカル社製2Kクリアー)を、乾燥膜厚で35±5μmとなるようにウェットオンウェットでスプレー塗装して、上塗りクリア塗膜層を形成し、これら中塗り塗膜層、上塗りベース塗膜層、及び、上塗りクリア塗膜層を140℃で30分同時に焼き付け硬化させた。この実施例1で作製したテストピースの作製条件を表1に示す。
Figure 0004082354
得られた積層塗膜につき、平滑性を目視で評価し、後述する比較例1の積層塗膜と比較して平滑性が向上しているものを「○」とし、平滑性の向上が見られないものを「×」とした。その評価結果を表2に示す。
Figure 0004082354
実施例2
中塗り塗料に含有される微粒化着色材の平均粒子径を150nmとしたこと以外は、実施例1と同じ条件でテストピースを作製した。この実施例2で作製したテストピースの作製条件を表1に示す。この実施例2で作製したテストピースに対して実施例1と同様の平滑性の評価を行った。その評価結果を表2に示す。
実施例3
中塗り塗料に含有される微粒化着色材の平均粒子径を1000nmとしたこと以外は、実施例1と同じ条件でテストピースを作製した。この実施例3で作製したテストピースの作製条件を表1に示す。この実施例3で作製したテストピースに対して実施例1と同様の平滑性の評価を行った。その評価結果を表2に示す。
実施例4
中塗り塗料に含有される微粒化着色材のガラス転移点Tgを100℃としたこと以外は、実施例1と同じ条件でテストピースを作製した。この実施例4で作製したテストピースの作製条件を表1に示す。この実施例4で作製したテストピースに対して実施例1と同様の平滑性の評価を行った。その評価結果を表2に示す。
比較例1
中塗り塗料に含有される微粒化着色材の代わりに、平均粒子径が5000nmの既存の着色材(クラリアント社製Permanent Orange 3RTN)を添加したこと以外は、実施例1と同じ条件でテストピースを作製した。この比較例1で作製したテストピースの作製条件を表1に示す。この比較例1で作製したテストピースに対して実施例1と同様の平滑性の評価を行った。その評価結果を表2に示す。
比較例2
中塗り塗料に含有される微粒子着色材の平均粒子径を1500nmとしたこと以外は、実施例1と同じ条件でテストピースを作製した。この比較例2で作製したテストピースの作製条件を表1に示す。この比較例2で作製したテストピースに対して実施例1と同様の平滑性の評価を行った。その評価結果を表2に示す。
比較例3
中塗り塗料に含有される微粒化着色材のガラス転移点Tgを180℃としたこと以外は、実施例3と同じ条件でテストピースを作製した。この比較例3で作製したテストピースの作製条件を表1に示す。この比較例3で作製したテストピースに対して実施例1と同様の平滑性の評価を行った。その評価結果を表2に示す。
考察
実施例1〜4及び比較例1より、既存の着色材の代わりに、平均粒子径30nm〜1μmの微粒化着色材を中塗り塗料に含有させることにより、積層塗膜の表面の平滑性が向上した。
また、実施例1〜4及び比較例2より、中塗り塗料に含有される微粒化着色材の平均粒子径が1000nm(1μm)を超えると積層塗膜の表面の平滑性の向上が見られなかった。
さらに、実施例1〜4及び比較例3より、中塗り塗料に含有される微粒化着色材のガラス転移点Tgを120℃より大きくすると積層塗膜の表面の平滑性の向上が見られなかった。
図1は、本発明の第1実施形態に係る塗装方法を示す工程図である。 図2は、図1の中上塗り塗装工程のラインの一例を示す平面図である。 図3は、本発明の第1実施形態に係る積層塗膜を示す断面図である。 図4は、本発明の第2実施形態に係る積層塗膜を示す断面図である。 図5は、本発明の第3実施形態に係る積層塗膜を示す断面図である。
符号の説明
1…前処理工程
2…電着塗装工程
3…電着水洗工程
4…下塗り焼付工程
5…中上塗り塗装工程
6…中塗り塗装工程
7…上塗りベース塗装工程
8…上塗りクリア塗装工程
9…中上塗り焼付工程
9a…中上塗り乾燥炉
10、10’、10”…積層塗膜
20…電着塗膜層
30、40…中塗り塗膜層
50…着色塗膜層
60…上塗りベース塗膜層
70…上塗りクリア塗膜層
B…自動車ボディ(被塗物)

Claims (6)

  1. 下塗り塗料を被塗物に塗布して下塗り塗膜層を形成した後に、前記下塗り塗膜層に中塗り塗料を塗布して中塗り塗膜層を形成し、未硬化の前記中塗り塗膜層に上塗り塗料を塗布して上塗り塗膜層を形成する塗装方法であって、
    少なくとも前記下塗り塗膜層より上層に、着色材として、平均粒子径30nm〜1μmの着色された樹脂粒子のみを含む着色塗膜層を形成し、
    前記着色塗膜層に含有されている前記樹脂粒子のガラス転移点Tgは、50℃〜120℃であり、
    前記着色塗膜層を、前記樹脂粒子のガラス転移点以上の焼付温度で焼き付ける塗装方法。
  2. 前記着色塗膜層は、前記中塗り塗膜層である請求項1記載の塗装方法。
  3. 前記着色塗膜層は、前記下塗り塗膜層と前記中塗り塗膜層との間に形成されている請求項1記載の塗装方法。
  4. 前記着色塗膜層は、前記中塗り塗膜層と前記上塗り塗膜層との間に形成されている請求項1記載の塗装方法。
  5. 前記焼付温度は80℃〜160℃である請求項1〜4の何れかに記載の塗装方法。
  6. 前記上塗り塗料は、上塗りベース塗料と上塗りクリア塗料とを含み、
    未硬化の前記中塗り塗膜層に前記上塗りベース塗料を塗布して上塗りベース塗膜層を形成し、さらに、未硬化の前記上塗りベース塗膜層に前記上塗りクリア塗料を塗布して上塗りクリア塗膜層を形成する請求項1〜5の何れかに記載の塗装方法。
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