JP4072615B2 - 配位子を有する複素環化合物及びその製造方法、及びこの複素環化合物を用いる金属元素の固定化膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、含窒素複素環に連結された配位子を有する新規化合物とその製造方法及びこの複素環化合物を用いる金属元素の固定化膜に関するものである。この化合物は、金属元素を捕捉することができるものであるのである。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属元素を有機系材料に固定化する方法として、高分子の主鎖または側鎖上の配位性官能基やアニオン性官能基(以下配位子)を使って、配位結合またはイオン結合により金属元素を固定化する方法が行われてきた。具体的には、以下の方法が知られている。
(1)重合性をもつ配位子に金属を結合させた後、重合性官能基を高分子化する方法。
(2)予め高分子化した配位子に金属を結合させる方法。
これらの方法により、金属元素は材料中に安定に固定化されるが、前記(1)の方法では、金属の種類や配位子の構造に制限があったり、重合度が高くならないという欠点がある。
また(2)の方法では配位子の一部だけしか有効に金属と結合しなかったり、高分子鎖のために配位構造が、ゆがむなど欠点がある。
また、(1)と(2)のいずれ方法も金属元素の固定化の密度や間隔を制御することはできない。また金属元素が材料内部に埋め込まれてしまい、金属元素を触媒種として使用するとき有効に働かないなどの欠点がある。いずれも満足する方法ということができない。
金属元素を固定化する他の方法としては、配位性の官能基を導入した両親媒性化合物を利用する方法が知られている。両親媒性化合物を、(1)水中で分散させたり、(2)気水界面に単分子膜を形成させたり、(3)気水界面単分子膜を固体基板上に写し取る(ラングミュアー・ブルジット法ことにより)などの処理をした後、金属元素をその表面上の配位子に固定化する方法である。これらの方法では、金属元素を材料表面に高密度に固定化することが可能である。
しかしながら、配位子は低分子化合物であるところから、配位子と金属元素の液中への脱落や、表面の集合構造の変化(表面に整列した両親媒性化合物の分子の向きの反転)などのために材料としての安定性に欠ける問題がある。
また、シリカなどの無機物上への、ハロシランやエトキシシランなどの、いわゆるシランカップリング剤の反応により配位子と結合させる、又は金基板などへのチオール誘導体などの反応により、配位子と結合させる方法も知られている。この方法では、物理的に構造が安定化された配位子により金属元素を固定化することができる。しかしながら、活性なシランカップリング剤やチオールを使用するために、選択できる配位子の構造に制限があるという問題点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、配位子を有する複素環化合物及びその製造方法、並びにこの複素環化合物を用いる金属元素の固定化膜及び固定膜を用いる金属元素の回収方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題について鋭意研究し、以下の知見を得た。
配位子を有する複素環化合物を新たに製造し、低分子配位子を分子間水素結合により固定化・安定化するとともに、分子間水素結合により配位子相互の間隙や空間的な位置を制御することができること、具体的には、最初に金属を固定化するための配位子を複素環化合物へ共有結合により連結する。ここで用いる複素環化合物として、複数の水素結合により別の分子と選択的に強く形成する構造のものを得る事ができる。この目的では含窒素複素環化合物がもっとも適当である。選択した複素環化合物に対して、複数の水素結合により、特異的に強く相互作用する相補的な構造を持つ第2の別の分子(以後、相補分子)を存在させると、添加した別の分子が、複素環化合物を固定化し、個々の複素環化合物同士が単独で密に集合することを妨げ、配位子の空間的位置関係を大きくすることが可能となる。
ここで、複素環が2つの相補分子と結合しうる構造を持ち、かつ、相補分子が2つの複素環と結合することが可能な構造を選択するのが特に好ましい。この場合には、個々の複素環は相補分子によって空間的な距離、位置関係が固定化され、同時に、配位子と固定化された金属元素も空間的な位置の制御に特に望ましい。具体的には、複素環化合物については、一般式(1)で表される化合物であり、第2の別の分子として一般式(2)又は(3)で表される化合物から得られる一般式(5)で表される化合物は、前記の作用を有することを見出したものである。
【0005】
また、金属元素の固定化は、以下の方法が見出したものである。
(1)目的とする金属元素の塩、および相補分子を溶かし込んだ水面上に、配位子をもつ複素環化合物をクロロホルム、ヘキサン、ベンゼンなどに溶解し、溶液を水面上に展開して単分子膜を形成させ、金属元素を取り込ませた後に単分子膜を固体基板上に移行させる方法、
(2)予め金属元素を取り込んだ両親媒性物質を調製した後、溶媒に溶かし、相補分子を含む水溶液上に単分子膜を展開し、固体基板上に移行させる方法、(3)配位子をもつ複素環化合物、およびそれと相補分子を含む混合溶液を金属元素を含む水溶液上に滴下し、単分子膜を形成させた後、固体基板上に移行させる方法がある。これらの方法は、以下のような場合に有効であることを見出した。
(1)では、相補分子の水溶性が大きい場合に適用できる。
(2)では、金属元素を取り込んだ配位子をもつ複素環分子の有機溶媒への溶解性が良好な場合に適用できる。
(3)では、相補分子の有機溶媒への溶解性が大きい場合に適用できる。
【0006】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
〔1〕 一般式(1)で表されることを特徴とする含窒素複素環式化合物に連結される配位子を有する化合物。
【化10】
一般式(1)
(式中、X1,X3は、NH又はNR5から選ばれる連結基であって、X2,X4はNHからなる連結基である。ここで、 NR5がY1-R1,Y3-R3と共にイミダゾール骨格を形成し、イミダゾール残基又はメチル基で置換されたもしくは置換されていないベンズイミダゾリル基をあらわす。Y1,Y2,Y3,Y4は配位子と結合する連結基であって、メチレン鎖((CH2)n、nは1から20)から選ばれた基であり、Y1,Y3は水素原子(この場合でY1,Y3とR1,R3は結合されない)であってもよい。R1,R3は水素またはY1,Y3及びNR5と共にイミダゾール骨格を形成してイミダゾール残基又はメチル基で置換されたもしくは置換されていないベンズイミダゾリル基からなる配位子である。R2,R4は配位子または水素であって、R1,R3又はR2,R4の少なくとも一組は配位子となる官能基である。配位子となるR2,R4としては、カルボキシル基(-COOH)、ホスホン酸基(-PO(OH)2)、リン酸基(-OPO(OH)2)、スルホン酸基(-SO3H)、硫酸基(-OSO3H)、フェノール残基(-C6H4OH)、ピリジン残基(-C5H4N)、イミダゾール残基(-C3H2N2)、アミノ基(-NH2)である。
〔2〕 2,4,6,8-テトラクロロ[5,4-d]ピリミドピリミジンとアミノ化合物を反応させることを特徴とする前記〔1〕記載の配位子を有する化合物の製造方法。
〔3〕 一般式(5)で表されることを特徴とする含窒素複素環式化合物に連結された配位子を有する分子集合体。
【化11】
一般式(5)
(式中、 R 7 ,R 8 は水素であり、 X 2 ,X 4 ,Y 2 ,Y 4 及び R 2 ,R 4 は、前記〔1〕に記載の一般式(1)の場合と同じである。)
〔4〕 一般式(3)と分子間水素結合により、下記一般式(1)で表される配位子を有する化合物と反応させることを特徴とする、前記〔3〕記載の一般式(5)で表される分子集合体の製造方法。
【化12】
一般式(1)
(式中、 X 1 ,X 3 がそれぞれ NR 5 であって Y 1 -R 1 ,Y 3 -R 3 と共にイミダゾール基を形成しており、 X 2 ,X 4 ,Y 2 ,Y 4 及び R 2 ,R 4 は、請求項 1 に記載の一般式(1)の場合と同じである。)
【化14】
一般式(3)
(式中、R7,R8は水素である。)
〔5〕 前記〔3〕記載の一般式(5)で表される分子集合体に水溶性銅塩を反応させて得られる金属錯体からなる膜。
【化15】
一般式(5)
(式中、R7,R8は水素であり、 X 2 ,X 4 ,Y 2 ,Y 4 及び R 2 ,R 4 は、前記〔1〕に記載の一般式(1)の場合と同じである。)
〔6〕 下記一般式(1)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物と水溶性銅塩を反応させて得られることを特徴とする金属錯体からなる膜。
【化16】
一般式(1)
(式中、 X 1 ,X 3 がそれぞれ NR 5 であって Y 1 -R 1 ,Y 3 -R 3 と共にイミダゾール基を形成しており、 X 2 ,X 4 ,Y 2 ,Y 4 及び R 2 ,R 4 は、前記〔1〕に記載の一般式(1)の場合と同じである。)
【化18】
一般式(3)
(式中、R7,R8は水素である。)
〔7〕 気水界面単分子膜上で金属錯体を製造することを特徴とする前記〔5〕又は〔6〕記載の金属錯体からなる膜。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の化合物は、下記一般式1で表される化合物であり、分子間水素結合の形成が可能な含窒素複素環に連結された配位子を有する化合物である。
【化19】
(1)
前記式中、X1 ,X 3 は、NH 又はNR5から選ばれる連結基であって、X 2 ,X 4 は NH からなる連結基である。ここで、R5は、NR 5 が Y 1 -R 1 ,Y 3 -R 3 と共にイミダゾール骨格を形成し、イミダゾール残基又はメチル基で置換されたもしくは置換されていないベンズイミダゾリル基をあらわす。Y1,Y2,Y3,Y4は配位子と結合する連結基であって、メチレン鎖((CH2)n、nは1から20)から選ばれた基であり、Y 1 ,Y 3 は水素原子(この場合でY1 ,Y 3 とR1 ,R 3 は結合されない)であってもよい。R1 ,R 3 は水素または Y 1 ,Y 3 及び NR 5 と共にイミダゾール骨格を形成してイミダゾール残基又はメチル基で置換されたもしくは置換されていないベンズイミダゾリル基からなる配位子である。R2 ,R 4 は配位子または水素であって、R 1 ,R 3 又は R 2 ,R 4 の少なくとも一組は配位子となる官能基である。配位子となるR2 ,R 4 としては、カルボキシル基(-COOH)、ホスホン酸基(-PO(OH)2)、リン酸基(-OPO(OH)2)、スルホン酸基(-SO3H)、硫酸基(-OSO3H)、フェノール残基(-C6H4OH)、ピリジン残基(-C5H4N)、イミダゾール残基(-C3H2N2)、アミノ基(-NH2 )である。
【0008】
前記一般式(1)で表される化合物は、配位子の作用により金属元素と結合することができる。
前記一般式1で表される化合物は、連結基及び窒素原子の作用により、分子間水素結合により、含窒素複素環化合物と連結させることが可能である。
【0009】
一般式(1)で表される化合物の製造に関し、官能基を導入するには、以下のように行う。
R1とR3に配位性の官能基を導入する反応は、以下のようにして行う。
活性塩素をもつ複素環化合物である、2,4,6,8-テトラクロロピリミド[5,4-d]ピリミジン(以下四塩素化物という)を原料とし、これを不活性溶媒に、溶解または分散させ、室温下または冷却下に四塩素化物に対して2当量のアミノ化合物を溶液として加える。これにより複素環上の4位と8位の塩素に対して第1段目の置換反応を行うことができる。
得られた中間体に、さらに、配位官能基をもつ2当量または過剰量のアミノ化合物をそのまま、あるいは溶液として加え、80℃から150℃に加熱することのより、2位と6位の2つの塩素を置換することができる。
この際、副生する塩化水素を捕捉するために、反応系中に塩基を添加しておくことが望ましい。このようにして、
前記一般式(1)で表される化合物のうちR1とR3に配位性の官能基が導入されたピリミドピリミジンの4置換体を得ることができる。
この誘導体は、アミノ基、イミノ基、アミノ基という官能基の並びを、それぞれのピリミジン骨核に持つ。
【0010】
本発明の化合物である、下記一般式(1)で表される化合物と、分子間水素結合を形成して含窒素複素環に連結された配位子を有する分子集合体は、一般式(5)で表される。
【化20】
一般式(5)
(式中、R7,R8は水素であり、 X 2 ,X 4 ,Y 2 ,Y 4 及び R 2 ,R 4 は、前記一般式(1)の場合と同じである。)
前記一般式(1)で表される化合物のうちの X 1 ,X 3 がそれぞれ NR 5 であって Y 1 -R 1 ,Y 3 -R 3 と共にイミダゾール基を形成している化合物の中の、複素環上の3位N、X2という官能基の並び、及び、複素環上の7位N、X4の官能基の並びは、バルビツール酸のカルボニル基、アミノ基という官能基の並びと構造的に相補性を有するものであり、それぞれの官能基が一つずつの水素結合を形成するものである。ピリミド[5,4-d]ピリミジンには2つの結合部位があり、また、バルビツール酸にも2つの結合部位があるので、結果として、バルビツール酸は、ピリミド[5,4-d]ピリミジンの間に挟まり、ピリミド[5,4-d]ピリミジン分子同士の固定化を行うとともに、ピリミド[5,4-d]ピリミジンの相互の空間的な距離を適度に離す役割をもつ。
【0011】
前記一般式(5)で表される分子集合体は、前記一般式(1)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物から得られる。
【化21】
一般式(1)
(式中、 X 1 ,X 3 がそれぞれ NR 5 であって Y 1 -R 1 ,Y 3 -R 3 と共にイミダゾール基を形成しており、 X 2 ,X 4 ,Y 2 ,Y 4 及び R 2 ,R 4 は、前記〔1〕に記載の一般式(1)の場合と同じである。)
【化23】
一般式(3)
(式中、R7,R8は水素である。)
【0012】
金属錯体膜の合成は以下の方法により行う。
一般式(1)で表される化合物と構造式(2)又は(3)で表される化合物を反応させる、或いは一般式(5)で表される化合物を用いる。そして、これに金属化合物を反応させる。具体的には以下の方法が行われる。
(1)目的とする金属元素の塩、および相補分子を溶かし込んだ水面上に、配位子をもつ複素環化合物をクロロホルム、ヘキサン、ベンゼンなどに溶解し、溶液を水面上に展開して単分子膜を形成させ、金属元素を取り込ませた後に単分子膜を固体基板上に移行させる方法。
(2)予め金属元素を取り込んだ両親媒性物質を調製した後、溶媒に溶かし、相補分子を含む水溶液上に単分子膜を展開し、固体基板上に移行させる方法。
(3)配位子をもつ複素環化合物、およびそれと相補分子を含む混合溶液を金属元素を含む水溶液上に滴下し、単分子膜を形成させた後、固体基板上に移行させる方法。
この反応では、ピリミド[5,4-d]ピリミジンに結合した配位子、および配位子に結合した金属元素も同時に固定化と空間的な配置の制御が行われることになる。
【0013】
本発明の化合物を用いると、以下の分野におけるは、金属化合物の利用及び回収が可能となる。
鉱工業分野の精錬、廃水処理において、金属元素の捕集、回収を行う。
化学工業において金属触媒を用いた合成反応に利用したり、製品などに含まれる金属成分の各種製品の分析を行う。
電子工業における金属を含有する光機能材料や電子材料を用いる材料の製造する工程に用いる。
【0014】
【実施例】
実施例1
構造式(6)(一般式(1)で置換基が以下の基を表す場合の化合物。X2=NH, X4=NH, Y2= C18H37, Y4= C18H37, R2=H, R4 =H)の合成。
四塩素化物1.0gを乾燥クロロホルム40mlに、分散させ、氷冷下、5℃から10℃に保ちながら、複素環に対してオクタデシルアミン2当量、ジイソプロピルエチルアミン2.2当量、クロロホルム20mlの混合溶液を滴下した。反応溶液を炭酸ナトリウム水溶液で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧下に蒸発留去し、生成物を得、さらに酢酸エチルから再結晶し精製した。この中間体0.5gに、イミダゾール3当量、無水炭酸カリウム3当量、および溶媒1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン10mlを加え、120℃に1日間加熱することのより、目的のピリミドピリミジンの4置換体を得た。
NMR(CDCl3), δ0.87(6H,t, J=7.0 Hz, CH3), 1.24-1.47 (60H, m, CH2), 1.74-1.79 (4H, m, CH2), 3.67-3.71 (4H, m, CH2), 6.90 (2H, t, J=6.0Hz, NH), 7.16 (2H, s, Arom), 7.88 (2H, s, Arom), 8.60 (2H, s, Arom)
【化24】
(6)
【0015】
実施例2
構造式(7)(一般式(1)で置換基が以下の基を表す場合の化合物。X2=NH, X4=NH, Y2= C18H37, Y4= C18H37, R2=H, R4 =H)の合成。
実施例1の中間体0.5gにジメチルベンツイミダゾール3当量を加え、実施例1と同様に反応を行った。
NMR(CDCl3), δ0.87 (6H, t, J = 7.0 Hz, CH3), 1.24-1.46 (60H, m, CH2), 1.84-1.90 (4H, m, CH2), 2.42 (6H, s, CH3), 2.46 (6H, s, CH3), 3.78-3.86 (4H, m, CH2), 6.93 (2H, t, J = 6.0 Hz, NH), 7.61 (2H, s, Arom), 8.31 (2H, s, Arom), 8.97 (2H, s, Arom)
【化25】
(7)
【0016】
実施例3
一般式1(式中、X1, X2, X3, X4=NH, Y1, Y3=(CH2)17, Y4, Y2=(CH2)2 , R1,R3 = H, R2,R4=COOHの化合物の合成)
四塩素化物1.0gをクロロホルム40mlに分散し、これに2-アミノプロピオン酸エチル2当量、ジイソプロピルエチルアミン2.2当量、クロロホルム20mlの混合溶液を滴下した。溶媒を減圧下に蒸発留去し、生成物を得、シリカゲルカラム(溶離液クロロホルム)により精製した。DMF20mlに溶解し、1mol/lの水酸化ナトリウム溶液を加え、40℃に加温し1時間放置し、エステル基を加水分解した。溶液を水に注ぎ、10%酢酸1mlを加え、析出した沈殿(ジカルボン酸)を回収した。
NMR(DMSO), δ2.60 (4H, m, CH2-CO), 3.32 (4H, m, N-CH2)
得られたジカルボン酸に対して、4倍モル量の無水炭酸カリウムと3倍モル量のオタデシルアミンを加え、1,3−ジメチル−イミダゾリンと溶媒中で150℃、24時間加熱することにより目的生成物を得た。
【0017】
実施例4(一般式(5)の化合物及び金属錯体の合成)
一般式6(X2=NH, X4=NH, Y2= C18H37, Y4= C18H37, R2=H, R4 =H)のクロロホルム-メタノール(9:1)混合溶液に溶かし(濃度約0.1から0.5mg/ml)、マイクロシリンジを用いて、バルビツール酸(0.01mol/l)と酢酸銅(0.001mol/l)を含む水面上に滴下し、単分子膜を形成させた(極限分子占有面積1.20nm2/分子)。15mN/mの表面圧力のもとでフッ化カルシウム基板上に単分子膜を累積した。透過法による赤外分析では、バルビツール酸のカルボニル基の吸収が1700cm-1に現れ、また累積された単分子膜中の銅の含量は0.5-1.0/分子であった。
【0018】
【発明の効果】
本発明の化合物は、配位子を有する複素環化合物であり、低分子配位子を分子間水素結合により固定化・安定化することができ、分子間水素結合により配位子相互の間隙や空間的な位置を制御することができるものであり、具体的には、最初に金属を固定化するための配位子を複素環化合物へ共有結合により連結することができる。この化合物を用いて金属錯体を有する膜を得ることができる。また、金属元素及び金属化合物の各種の利用が可能となる。
Claims (7)
- 一般式(1)で表されることを特徴とする含窒素複素環式化合物に連結される配位子を有する化合物。
【化1】
一般式(1)
(式中、X1,X3は、NH又はNR5から選ばれる連結基であって、X2,X4はNHからなる連結基である。ここで、 NR5がY1-R1,Y3-R3と共にイミダゾール骨格を形成し、イミダゾール残基又はメチル基で置換されたもしくは置換されていないベンズイミダゾリル基をあらわす。Y1,Y2,Y3,Y4は配位子と結合する連結基であって、メチレン鎖((CH2)n、nは1から20)から選ばれた基であり、Y1,Y3は水素原子(この場合でY1,Y3とR1,R3は結合されない)であってもよい。R1,R3は水素またはY1,Y3及びNR5と共にイミダゾール骨格を形成してイミダゾール残基又はメチル基で置換されたもしくは置換されていないベンズイミダゾリル基からなる配位子である。R2,R4は配位子または水素であって、R1,R3又はR2,R4の少なくとも一組は配位子となる官能基である。配位子となるR2,R4としては、カルボキシル基(-COOH)、ホスホン酸基(-PO(OH)2)、リン酸基(-OPO(OH)2)、スルホン酸基(-SO3H)、硫酸基(-OSO3H)、フェノール残基(-C6H4OH)、ピリジン残基(-C5H4N)、イミダゾール残基(-C3H2N2)、アミノ基(-NH2)である。 - 2,4,6,8-テトラクロロ[5,4-d]ピリミドピリミジンと「H-X1-Y1-R1、H-X2-Y2-R2、H-X3-Y3-R3、H-X4-Y4-R4」で表されるアミノ化合物を反応させる際に、1段階目でH-X2-Y2-R2及び H-X4-Y4-R4を反応させ、次いで、2段階目でH-X1-Y1-R1及び H-X3-Y3-R3を反応させることを特徴とする請求項1の一般式(1)で表される化合物の製造方法。
(ここで、R 1 ,R 2 ,R 3 ,R 4 ,X 1 ,X 2 ,X 3 ,X 4 及び Y 1 ,Y 2 ,Y 3 ,Y 4 の定義は請求項1に記載の一般式(1)の場合と同じ) - 一般式(3)で表されるバルビツール酸誘導体と、分子間水素結合により、請求項 1 に記載の一般式(1)で表される配位子を有する化合物のうちで X 1 ,X 3 がそれぞれ NR 5 であって Y 1 -R 1 ,Y 3 -R 3 と共にイミダゾール基を形成している化合物と反応させて得られる一般式(5)で表されることを特徴とする分子集合体の製造方法。
【化4】
一般式(3)
【化5】
一般式(5)
一般式(3)及び一般式(5)のバルビツール酸誘導体において、式中、R7,R8は水素であり、 X 2 ,X 4 ,Y 2 ,Y 4 及び R 2 ,R 4 は、請求項 1 に記載の一般式(1)の場合と同じである。 - 気水界面単分子膜上で金属錯体を製造することを特徴とする請求項5記載の金属錯体を含む分子集合体からなる膜。
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