JP4067044B2 - 振動子および振動型ジャイロスコープ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動子および振動型ジャイロスコープに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、振動型ジャイロスコープを自動車に搭載し、自動車の車体の方向の制御に使用することが検討されている。例えば自動車の車体回転速度フィードバック式の車両制御方法に用いる回転速度センサーに振動型ジャイロスコープを使用するときには、操舵輪の方向自身は、ハンドルの回転角度によって検出する。これと同時に、実際に車体が回転している回転速度を振動ジャイロスコープによって検出する。そして、操舵輪の方向と実際の車体の回転速度を比較して差を求め、この差に基づいて車輪トルク、操舵角に補正を加えることによって、安定した車体制御を実現する。
【0003】
車載用途においては、振動型ジャイロスコープの使用温度範囲がきわめて広く、例えば、−40℃−+85℃の温度範囲において安定に動作することが要求される。そして、室温において、一対の屈曲振動片の共振周波数を一定値に調節していても、周囲温度が高温や低温に大きく変化したときには、共振周波数の変動やバラツキが大きくなることがある。この結果、いわゆるゼロ点温度ドリフトが発生する。
【0004】
本出願人は、特許文献1において、屈曲振動片の両側面の付け根にそれぞれテーパー部を設けることによって、ゼロ点温度ドリフトを抑制することを開示した。
【特許文献1】
特開2001−12952号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、本発明者が更に検討を進めると、振動子の材質などによっては新たな問題点があることが判明してきた。即ち、特開2001−12952号公報に記載されているように、屈曲振動片の両側面の付け根にそれぞれテーパー部を設け、これらのテーパー部の形状をほぼ同じにすることによって、屈曲振動片の振動モードの対称性が高まり、ゼロ点温度ドリフトは減少するものと考えられる。しかし、製造された振動子ごとにゼロ点温度ドリフトを測定すると、各振動子ごとに、ゼロ点温度ドリフトの値にバラツキが発生することがあった。そして、個々の振動子ごとのゼロ点温度ドリフトのバラツキが大きくなり、結果的に不良品の割合が増大することがあった。
【0006】
特に振動子を小型化した場合には、ゼロ点温度ドリフトが大きくなり、また振動子ごとのゼロ点温度ドリフトのバラツキが大きくなる傾向があり、対策が必要であった。
【0007】
本発明の課題は、振動子のゼロ点温度ドリフトを低減するのと共に、個々の振動子ごとのゼロ点温度ドリフトのバラツキを低減することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第一の発明は、基部、基部に連結されている一方の支持部、一方の支持部から延びている一方の駆動振動片、基部に連結されている他方の支持部、他方の支持部から延びている他方の駆動振動片、および基部に連結されている検出振動片を備えており、所定平面に沿って形成されている振動子であって、
駆動振動モードにおいて前記駆動振動片が面内屈曲振動し、検出振動モードにおいて前記検出振動片が面内屈曲振動し、振動子が面外屈曲振動モードで振動し、この面外屈曲振動モードにおいて一方の支持部と他方の支持部とが所定平面に対して略垂直方向に向かって逆相で屈曲振動し、基部、一方の駆動振動片および他方の駆動振動片にそれぞれノードを有しており、前記一方の支持部に前記一方の駆動振動片が複数設けられており、前記他方の支持部に前記他方の駆動振動片が複数設けられており、前記一方の駆動振動片および前記他方の駆動振動片にそれぞれ拡張部が設けられており、前記一方の駆動振動片および前記他方の駆動振動片の厚さが、前記基部の厚さよりも小さいことを特徴とする。
第二の発明は、基部、この基部に連結されている一方の支持部、前記一方の支持部から延びている一方の駆動振動片、前記基部に連結されている他方の支持部、前記他方の支持部から延びている他方の駆動振動片、および前記基部に連結されている複数の検出振動片を備えており、所定平面に沿って形成されている振動子であって、
駆動振動モードにおいて前記駆動振動片が面内屈曲振動し、検出振動モードにおいて前記検出振動片が面内屈曲振動し、前記振動子が面外屈曲振動モードで振動し、この面外屈曲振動モードにおいて前記一方の支持部と前記他方の支持部とが前記所定平面に対して略垂直方向に向かって逆相で屈曲振動し、前記基部、前記一方の駆動振動片および前記他方の駆動振動片にそれぞれノードを有しており、前記一方の支持部に前記一方の駆動振動片が複数設けられており、前記他方の支持部に前記他方の駆動振動片が複数設けられており、前記一方の駆動振動片および前記他方の駆動振動片にそれぞれ拡張部が設けられており、前記一方の支持部の厚さおよび前記他方の支持部の厚さが前記基部の厚さよりも小さいことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記振動子を備えていることを特徴とする、振動型ジャイロスコープに係るものである。
【0010】
本発明者は、振動子ごとのゼロ点温度ドリフトのバラツキや増大の原因について検討した結果、上述の面外屈曲振動モードの存在を発見した。そして、この面外屈曲振動モードが他の振動モードと結合することによって、温度ドリフトをもたらしていることを発見した。
【0011】
以下、図面を参照しつつ、更に説明する。図1に示す振動子1Aは、本出願人が提案した振動子である(特開平11−281372号公報)。振動子1Aの形状および動作の詳細な説明は、特開平11−281372号公報に詳細に記載されているので省略し、ここでは要旨を述べる。
【0012】
振動子1Aは、基部6、基部6から突出する一方の支持部5A、一方の支持部5Aから延びている一方の駆動振動片3A、3B、基部6から突出する他方の支持部5B、他方の支持部5Bから延びている他方の駆動振動片3C、3D、および基部6から延びている検出振動片2A、2Bを備えており、所定平面(X−Y面)に沿って形成されている。駆動振動モードにおいては、各駆動振動片3A〜3Dが、それぞれ支持部への付け根を中心としてX−Y面内で屈曲振動する(矢印C)。この状態で振動子をZ軸の周りに回転させると、各支持部5A、5Bが、基部6への付け根を中心として面内で屈曲振動する(矢印D)。これに応じて、各検出振動片2A、2Bが、基部6への付け根を中心として矢印Eのように面内で屈曲振動する。この矢印Eのような面内屈曲振動を、検出振動片2A、2Bに設けられた検出手段によって検出し、回転角速度に対応する信号を得る。
【0013】
ここで、本発明者は、図1〜図3に示すような形態の面外屈曲振動モードを発見した。ただし、図1には、振動子1Aの平面図およびそのA−A断面、B−B断面の概略形態を示し、図2には、振動子1AをY軸方向から見たときの正面図を示し、図3には、面外屈曲振動モードのある時点における振動子1Aの形態を示す。
【0014】
このモードでは、一方の支持部5Aと他方の支持部5Bとが、所定平面(X−Y面)に対して略垂直方向(Z軸方向)に向かって屈曲振動する(矢印A、B参照)。そして、いずれの瞬間においても、X−Y面に対する支持部5Aの変位と支持部5Bの変位とは逆になっている。つまり、矢印Aのような支持部5Aの面外屈曲振動と、矢印Bのような支持部5Bの面外屈曲振動とは、互いに逆相である。そして、この面外屈曲振動モードは、基部に振動のノード(節)10Aを有しており、一方の駆動振動片3A、3Bにノード10Bを有しており、他方の駆動振動片3C、3D上にノード10Cを有している。
【0015】
つまり、このモードにおいては、振動子1Aの全体が、X−Y面からZ軸方向へと向かって、波うつように振動する。
【0016】
そして、本発明者は、振動子がこのような面外屈曲振動モードを示す場合には、この面外屈曲振動モードの固有共振周波数や振幅を調節することによって、温度ドリフトを最小限に低減可能なことを見出し、本発明に到達した。つまり、このような面外屈曲振動モードの発見、検出によって、温度ドリフトに対して効果的な対策をとることが可能になったという意義を有する。
【0017】
前述のような面外屈曲振動モードは、振動子がX−Y面に対して幾何学的に見て完全に面対称に成形されていれば、発現しないものと考えられる。しかし,現実の振動子の成形プロセスにおいては、図上での設計とは異なる不確定要因によって、振動子の形態がX−Y面に対して対称とならず、このために面外屈曲振動モードが発現する。
【0018】
典型的には以下の原因が考えられる。振動片の外形輪郭を形成するためには、例えば圧電性単結晶からなるウエハーをエッチング処理する。エッチング処理の段階では、ウエハーの表面側と裏面側との双方に例えばホトレジストを塗布し、その上にホトマスクを設置し、表面側ホトマスクと裏面側ホトマスクとのアライメントを行う。そして、ホトレジストを露光して硬化させ、ホトマスクを除去し、ホトレジストのパターニングを行う。そしてウエハーをエッチングし、ホトレジストのパターンに対応した輪郭をウエハーに形成する。
【0019】
ここで、ウエハーの表面側と裏面側との双方にホトマスクを設置し、アライメントする際に、両方のマスクに若干の位置ずれが発生することがある。この場合には、図4に示すように、駆動振動片3の横断面輪郭が平行四辺形となる(破線参照)。3aは駆動振動片の表面、裏面であり、3bは側面である。この状態で駆動振動片3を矢印C方向に駆動すると、Z方向の不要な振動成分が発生する。
【0020】
このように駆動振動片や検出振動片の横断面輪郭が長方形にならず、歪む結果として、前述したような面外屈曲振動モードを発生させたものと考えられる。
【0021】
そして、駆動振動片を駆動したときのZ方向の不要な振動成分が、面外屈曲振動モードと結合し、温度ドリフトを発生させたものと思われる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、更に好適な実施形態について述べる。
「振動子が所定平面に沿って形成されている」とは、幾何学的に厳密な意味ではなく、製造上の誤差は許容される。好適な実施形態においては、振動子の全体が平板状である。支持部や検出振動片が基部に連結されているとは、支持部や検出振動片が基部から直接突出している場合と、支持部や検出振動片が基部に対して他の連結片を介して連結されている場合とを含む。好ましくは、支持部が基部から直接突出しており、あるいは、検出振動片が基部から直接突出している。
【0023】
本発明においては、一方の支持部に一方の駆動振動片が複数設けられており、他方の支持部に他方の駆動振動片が複数設けられている。図1に示すように各支持部に対して一対の駆動振動片を設けることができるが、3つ以上の駆動振動片を設けても良い。
【0024】
好適な実施形態においては、検出振動片が複数設けられている。この場合には、各検出振動片からの出力信号を、数学的に処理(例えば加算あるいは減算)することによって、一層正確な測定値が得られる。
【0025】
本発明においては、一方の駆動振動片および他方の駆動振動片にそれぞれ拡張部が設けられている。
【0026】
好適な実施形態においては、一方の駆動振動片および他方の駆動振動片に励振される駆動振動モードの固有共振周波数fd(Hz)と、面外屈曲振動モードの固有共振周波数fs(Hz)とが、以下の関係を満足する。
fs+4500≧fd≧fs+1500
(あるいは、−1500≧fs−fd≧−4500)
【0027】
前述したように、駆動振動片の面外振動(Z軸方向の振動)と、前記面外屈曲振動モードとが結合して温度ドリフトを生じさせた場合には、駆動振動モードの固有共振周波数fdを面外屈曲振動モードの固有共振周波数fsよりもある程度以上大きくすることが有効であることを発見した。通常の設計では、面外屈曲振動モードの固有共振周波数fsがfdよりも高く(fd<fs)なるために、温度ドリフトが上昇する傾向があった。
【0028】
これに対して、例えば図5に示すように、面外屈曲振動モードの固有共振周波数fsを十分に低くすることによって、温度ドリフトの著しい低減が可能であった。
【0029】
ここで、fdとfsとの差は1500Hz以上であることが好ましく、2500Hz以上であることが更に好ましい。ただし、fdとfsとの差が大きくなり過ぎると、かえって温度ドリフトが再上昇する傾向が見られた。このため、fdとfsとの差は、4500Hz以下とすることが好ましく、3500Hz以下とすることが更に好ましい。
【0030】
好適な実施形態においては、振動子が圧電性単結晶からなる。圧電性単結晶としては、水晶、LiNbO3、LiTaO3、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体(Li(Nb,Ta)O3)単結晶、ホウ酸リチウム単結晶、ランガサイト単結晶を例示できる。
【0031】
特に好ましくは、振動子が、所定平面内に3回回転対称のa軸を有し、かつ所定平面に垂直な方向にc軸を有する圧電性単結晶からなる。これは特に好ましくは水晶である。
【0032】
好適な実施形態においては、一方の側面が
【数3】
面であり、他方の側面が
【数4】
面である。
【0033】
本発明の振動子からの出力に基づいたゼロ点温度ドリフトは、振動子がどのような形成方法によって形成されていたとしても、前述したような振動片の横断面形状の影響を受ける。従って、本発明の振動片および振動子の形成方法は特に限定されず、ウエットエッチング法、ドライエッチング法の他、レーザー光線を使用した成形法でもよい。
【0034】
ただし、実際の量産という観点からは、ウエットエッチング法が最も好ましい。この場合、エッチャントは限定されないが、以下のものが好ましい。エッチャントは、ふっ酸を含有していることが好ましく、ふっ酸水溶液か、あるいはふっ酸とフッ化アンモニウムとを任意の割合で混合した水溶液が好ましい。エッチャントの濃度は、40重量%以下が好ましく、エッチャントの温度は、40〜80℃が好ましい。
【0035】
本発明の振動型ジャイロスコープは、前述の振動子を備えている。この振動型ジャイロスコープは、更に駆動手段、検出手段を備えている。駆動手段、検出手段は、一般には振動子上に形成される電極の形態をしている。
【0036】
第一の発明においては、一方の駆動振動片および他方の駆動振動片の厚さが、基部の厚さよりも小さい。これによって、前述した面外屈曲振動モードの固有共振周波数fsを低下させ、温度ドリフトを低減することが可能である。
【0037】
図6は、この実施形態に係る振動子1Bおよび振動型ジャイロスコープ23を示す斜視図である。振動子1Bの各構成部分のうち、図1〜図3に示した構成部分には同じ符号をつけ、その説明を省略する。
【0038】
振動子1Bにおいては、一方の駆動振動片13A、13B、他方の駆動振動片13C、13Dの厚さが、基部6の厚さに比べて薄くなっている。本例では、各拡張部14A、14B、14C、14Dの厚さも、駆動振動片の厚さと同様に、基部6の厚さよりも小さくなっている。支持部5A、5B、検出振動片2A、2B、検出振動片側の拡張部7A、7Bの厚さは、基部6の厚さとほぼ同じである。このように駆動振動片の厚さを小さくすると、前述した面外屈曲振動モードの固有共振周波数fsが若干低下する。27は駆動電極であり、28は検出電極である。
【0039】
fsを低下させるという観点からは、(駆動振動片の厚さ/基部の厚さ)は、0.9以下とすることが好ましく、0.8以下とすることが一層好ましい。しかし、駆動振動片の機械的強度の観点からは、(駆動振動片の厚さ/基部の厚さ)は、0.4以上とすることが好ましい。
【0040】
第二の発明においては、一方の支持部の厚さおよび他方の支持部の厚さが基部の厚さよりも小さい。これによって、面外屈曲振動モードの固有共振周波数fsを低下させ、温度ドリフトを低減することが可能である。
【0041】
図7は、この実施形態に係る振動子1Cを示す斜視図である。振動子1Cにおいては、一方の支持部15A、他方の支持部15Bの厚さが、基部6の厚さに比べて薄くなっている。本例では、各駆動振動片3A〜3D、各拡張部4A〜4D、検出振動片2A、2B、検出振動片側の拡張部7A、7Bの厚さは、基部6の厚さとほぼ同じである。このように各支持部の厚さを小さくすると、前述した面外屈曲振動モードの固有共振周波数fsが低下する。
【0042】
fsを低下させるという観点からは、(支持部の厚さ/基部の厚さ)は、0.9以下とすることが好ましく、0.8以下とすることが一層好ましい。支持部の機械的強度の観点からは、(支持部の厚さ/基部の厚さ)は、0.4以上とすることが好ましい。
【0043】
また、好適な実施形態においては、一方の駆動振動片および他方の駆動振動片の厚さを、拡張部の厚さよりも小さくする。これによって、面外屈曲振動モードの固有共振周波数fsを低下させ、温度ドリフトを低減することが可能である。
【0044】
図8は、この実施形態に係る振動子1Dを示す斜視図である。振動子1Dにおいては、一方の駆動振動片13A、13B、他方の駆動振動片13C、13Dの厚さが、基部6の厚さおよび各拡張部4A、4B、4C、4Dの厚さに比べて小さくなっている。本例では、各拡張部4A〜4D、支持部5A、5B、検出振動片2A、2B、検出振動片側の拡張部7A、7Bの厚さは、基部6の厚さとほぼ同じである。このように各駆動振動片の厚さを小さくし、拡張部4A〜4Dの厚さを大きくすると、面外屈曲振動モードの固有共振周波数fsが低下する。
【0045】
fsを低下させるという観点からは、(駆動振動片の厚さ/拡張部の厚さ)は、0.9以下とすることが好ましく、0.8以下とすることが一層好ましい。しかし、駆動振動片の機械的強度の観点からは、(駆動振動片の厚さ/拡張部の厚さ)は、0.4以上とすることが好ましい。
【0046】
好適な実施形態においては、検出振動片が、所定平面に対して略平行な一対の主面を有しており、主面から振動子の厚さ方向に向かって凹部が設けられている。これによって、検出振動片が湾曲変形しにくくなり、面外屈曲振動モードの固有共振周波数fsが低くなり、またその振幅が小さくなる。この結果温度ドリフトが低下する。
【0047】
図9は、この実施形態に係る振動子1Eを示す斜視図である。振動子1Eにおいては、一方の駆動振動片13A、13B、他方の駆動振動片13C、13Dの厚さが、基部6の厚さに比べて小さくなっている。また、各拡張部14A、14B、14C、14Dの厚さが、基部6の厚さに比べて小さい。本例では、支持部5A、5B、検出振動片2A、2B、検出振動片側の拡張部7A、7Bの厚さは、基部6の厚さとほぼ同じである。そして、検出振動片2A、2Bが、X−Y面に対して略平行な一対の主面2aを有しており、主面2aから振動子の厚さ方向に向かって凹部30A、30Bが設けられている。
【0048】
fsを低下させるという観点からは、(凹部30A、30Bの深さ/検出振動片2A、2Bの厚さ)は、0.05以上とすることが好ましく、0.1以上とすることが一層好ましい。
【0049】
図10の振動子1Fにおいては、一方の駆動振動片13A、13B、他方の駆動振動片13C、13D、一方の支持部15A、他方の支持部15Bの厚さが、基部6の厚さよりも小さい。各拡張部4A、4B、4C、4D、7A、7B、検出振動片2A、2Bの厚さは、基部6の厚さとほぼ同じである。
【0050】
好適な実施形態においては、一方の駆動振動片および他方の駆動振動片が、所定平面に対して略平行な一対の主面を有しており、主面から振動子の厚さ方向に向かって凹部が設けられている。図11は、この実施形態に係る振動子1Gを示す斜視図である。振動子1Gにおいては、一方の支持部15A、他方の支持部15Bの厚さが、基部6の厚さに比べて小さくなっている。また、各駆動振動片3A〜3D、拡張部4A〜4D、検出振動片2A、2B、検出振動片側の拡張部7A、7Bの厚さは、基部6の厚さとほぼ同じである。そして、駆動振動片3A〜3Dは、X−Y面に対して略平行な一対の主面3aを有しており、主面3aから振動子の厚さ方向に向かって凹部20A、20B、20C、20Dが設けられている。各検出振動片2A、2Bの主面2aには凹部30A、30Bが形成されている。
【0051】
fsを低下させるという観点からは、(凹部20〜20Dの深さ/駆動振動片3A〜3Dの厚さ)は、0.05以上とすることが好ましく、0.1以上とすることが一層好ましい。
【0052】
図12の振動子1Hにおいては、支持部15A、15B、駆動振動片13A〜13D、拡張部14A〜14Dの厚さが、基部6の厚さよりも小さい。そして、検出振動片2A、2B、検出振動片側の拡張部7A、7Bの厚さは、基部6の厚さとほぼ同じである。また、各検出振動片2A、2Bの主面2aには凹部30A、30Bが形成されている。
【0053】
図13の振動子1Jにおいては、各支持部15A、15Bの厚さは基部6の厚さよりも小さい。そして、各駆動振動片3A〜3D、各拡張部4A〜4Dおよび7A、7B、検出振動片2A、2Bの厚さは、基部6の厚さとほぼ同じである。各駆動振動片3A〜3Dには、主面3aから凹んだ凹部20A、20Bが形成されている。
【0054】
図14の振動子1Kにおいては、支持部15A、15Bの厚さは基部6の厚さよりも小さい。駆動振動片3A〜3D、拡張部4A〜4D、7A、7B、検出振動片2A、2Bの厚さは、基部6の厚さとほぼ同じである。各検出振動片2A、2Bには、主面2aから凹んだ凹部20A、20Bが形成されている。
【0055】
図15の振動子1Lにおいては、駆動振動片13A〜13Dの厚さは、基部6の厚さよりも小さい。支持部5A、5B、拡張部4A〜4D、7A、7B、検出振動片2A、2Bの厚さは、基部6の厚さとほぼ同じである。各検出振動片2A、2Bには凹部30A、30Bが形成されている。
【0056】
なお、上記の各振動子においては、駆動電極等の駆動手段や検出電極等の検出手段は図示省略しているが、むろん例えば図6に示すように駆動手段、検出手段を設けることで振動型ジャイロスコープを提供できる。
【0057】
【実施例】
(例1)
図6に示す振動子1Bを製造した。具体的には、所定の厚さの水晶のZ板のウエハーに、スパッタ法によって、厚さ200オングストロームのクロム膜と、厚さ1000オングストロームの金膜とを順番に形成した。ウエハーの両面にレジストをコーティングし、ホトマスクを設置し、露光した。
【0058】
このウエハーを、ヨウ素とヨウ化カリウムとの水溶液に浸漬し、余分な金膜をエッチングによって除去し、更に硝酸セリウムアンモニウムと過塩素酸との水溶液にウエハーを浸漬し、余分なクロム膜をエッチングして除去した。温度80℃の重フッ化アンモニウムに20時間ウエハーを浸漬し、ウエハーをエッチングし、振動子1Bの外形を形成した。メタルマスクを使用して、厚さ2000オングストロームのアルミニウム膜を電極膜27、28として形成した。
【0059】
得られた振動子1Bの基部6の寸法は1.0mm×1.0mmである。各駆動振動片13A〜13Dの長さは2.1mmである。各検出振動片2A、2Bの長さは1.7mmである。基部6、支持部5A、5B、検出振動片2A、2B、拡張部7A、7Bの厚さは0.1mmである。駆動振動片13A〜13D、拡張部14A〜14Dの厚さは0.08mmである。
【0060】
振動子1Bの基部6の中央に0.15mm×0.15mmの正方形の支持孔を形成し、この支持孔にシリコーン樹脂接着剤を注入して接着する。得られた各振動型ジャイロスコープについて、検出信号の測定値の−40℃より+85℃の温度域におけるゼロ点信号の温度変動を測定する。
【0061】
10個の振動子を上記のようにして作製し、−40℃より+85℃の温度域におけるゼロ点信号の最大値と最小値との差をゼロ点温度ドリフトとした。そして、ゼロ点温度ドリフトの平均値(n=10)を算出し、表1に示した。また、fsおよびfdを測定し、表1に示した。
【0062】
【表1】
【0063】
実施例1の振動子1Bにおいては、fd=fs+1782である。このように設計することで、温度ドリフト量を4.0に低減することができた。
【0064】
(例2)
例1と同様にして、図7に示す振動子1Cを製造した。ただし、支持部15A、15Bの厚さは0.08mmとした。この測定結果を表1に示す。
【0065】
(例3)
例1と同様にして、図8に示す振動子1Dを製造した。ただし、駆動振動片13A〜13Dの厚さは0.08mmとした。この測定結果を表1に示す。
【0066】
(例4)
例1と同様にして、図9に示す振動子1Eを製造した。ただし、駆動振動片13A〜13Dの厚さ、拡張部14A〜14Dの厚さは0.08mmとした。凹部30A、30Bの深さは0.01mmとした。この測定結果を表1に示す。
【0067】
(例5)
例1と同様にして、図16に示す形状の振動子25Aを作製した。この測定結果を表1に示す。
【0068】
(例6)
例1と同様にして、図17に示す形状の振動子25Bを作製した。この測定結果を表1に示す。
【0069】
(例7)
例1と同様にして、図18に示す形状の振動子25Cを作製した。この測定結果を表1に示す。
【0070】
(例8)
例1と同様にして、図19に示す形状の振動子25Dを作製した。この測定結果を表1に示す。
【0071】
これらの結果から分かるように、面外屈曲振動モードの存在、および面外屈曲振動モードの固有共振周波数fsと駆動振動モードの固有共振周波数fdとの関係が、温度ドリフト量に対して顕著な影響を与えている。従って、面外屈曲振動モードの固有共振周波数fsが適切な範囲となるように振動子を設計することによって、温度ドリフトを低減可能である。
【0072】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、振動子のゼロ点温度ドリフトを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】振動子1Aの面外屈曲振動モードを説明するための平面図である。
【図2】支持部1Aの面外屈曲振動モードを説明するためのY軸側から見た図である。
【図3】振動子1Aの面外屈曲振動モードの形状を示す斜視図である。
【図4】駆動振動片におけるZ軸方向の振動成分の発生プロセスを説明するための模式図である。
【図5】周波数差(fs−fd)と温度ドリフトとの関係を示すグラフである。
【図6】振動子1Bの斜視図である。
【図7】振動子1Cの斜視図である。
【図8】振動子1Dの斜視図である。
【図9】振動子1Eの斜視図である。
【図10】振動子1Fの斜視図である。
【図11】振動子1Gの斜視図である。
【図12】振動子1Hの斜視図である。
【図13】振動子1Jの斜視図である。
【図14】振動子1Kの斜視図である。
【図15】振動子1Lの斜視図である。
【図16】振動子25Aの斜視図である。
【図17】振動子25Bの斜視図である。
【図18】振動子25Cの斜視図である。
【図19】振動子25Dの斜視図である。
【符号の説明】
1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1J、1K、1L、25A、25B、25C、25D 振動子 2A、2B 検出振動片 2a 検出振動片の主面 3A、3B 一方の駆動振動片
3C、3D 他方の駆動振動片 3a 駆動振動片の主面
3b 側面 4A、4B、4C、4D 駆動振動片側の拡張部 5A 一方の支持部 5B 他方の支持部 6 基部 7A、7B 検出振動片側の拡張部 10A 基部6上の振動ノード 10B 一方の駆動振動片上の振動ノード 10C 他方の駆動振動片上の振動ノード 13A、13B、13C、13D 基部に比べて厚さの小さい駆動振動片 14A、14B、14C、14D 基部に比べて厚さの小さい拡張部 15A 基部に比べて厚さの小さい一方の支持部
15B 基部に比べて厚さの小さい他方の支持部 20A、20B、20C、20D 駆動振動片の主面からへこんだ凹部 30A、30B 検出振動片の主面からへこんだ凹部 A、B 面外屈曲振動モード
Claims (9)
- 基部、この基部に連結されている一方の支持部、前記一方の支持部から延びている一方の駆動振動片、前記基部に連結されている他方の支持部、前記他方の支持部から延びている他方の駆動振動片、および前記基部に連結されている複数の検出振動片を備えており、所定平面に沿って形成されている振動子であって、
駆動振動モードにおいて前記駆動振動片が面内屈曲振動し、検出振動モードにおいて前記検出振動片が面内屈曲振動し、前記振動子が面外屈曲振動モードで振動し、この面外屈曲振動モードにおいて前記一方の支持部と前記他方の支持部とが前記所定平面に対して略垂直方向に向かって逆相で屈曲振動し、前記基部、前記一方の駆動振動片および前記他方の駆動振動片にそれぞれノードを有しており、前記一方の支持部に前記一方の駆動振動片が複数設けられており、前記他方の支持部に前記他方の駆動振動片が複数設けられており、前記一方の駆動振動片および前記他方の駆動振動片にそれぞれ拡張部が設けられており、前記一方の駆動振動片および前記他方の駆動振動片の厚さが、前記基部の厚さよりも小さいことを特徴とする、振動子。 - 基部、この基部に連結されている一方の支持部、前記一方の支持部から延びている一方の駆動振動片、前記基部に連結されている他方の支持部、前記他方の支持部から延びている他方の駆動振動片、および前記基部に連結されている複数の検出振動片を備えており、所定平面に沿って形成されている振動子であって、
駆動振動モードにおいて前記駆動振動片が面内屈曲振動し、検出振動モードにおいて前記検出振動片が面内屈曲振動し、前記振動子が面外屈曲振動モードで振動し、この面外屈曲振動モードにおいて前記一方の支持部と前記他方の支持部とが前記所定平面に対して略垂直方向に向かって逆相で屈曲振動し、前記基部、前記一方の駆動振動片および前記他方の駆動振動片にそれぞれノードを有しており、前記一方の支持部に前記一方の駆動振動片が複数設けられており、前記他方の支持部に前記他方の駆動振動片が複数設けられており、前記一方の駆動振動片および前記他方の駆動振動片にそれぞれ拡張部が設けられており、前記一方の支持部の厚さおよび前記他方の支持部の厚さが前記基部の厚さよりも小さいことを特徴とする、振動子。 - 前記一方の駆動振動片および前記他方の駆動振動片の厚さが、前記拡張部の厚さよりも小さいことを特徴とする、請求項1または2記載の振動子。
- 前記一方の駆動振動片および前記他方の駆動振動片が、前記所定平面に対して略平行な一対の主面を有しており、前記主面から前記振動子の厚さ方向に向かって凹部が設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の振動子。
- 圧電性単結晶からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の振動子。
- エッチングによって形成されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の振動子。
- 請求項1〜7のいずれか一つの請求項に記載の振動子を備えていることを特徴とする、振動型ジャイロスコープ。
- 検出回転軸が前記所定平面に略垂直であることを特徴とする、請求項8記載の振動型ジャイロスコープ。
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